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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ALDHアイソザイムの特異的基質
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/32 20060101AFI20220401BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20220401BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220401BHJP
   C12P 17/18 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C12Q1/32
G01N33/48 M
G01N33/68
C12P17/18 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019503937
(86)(22)【出願日】2017-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2017068985
(87)【国際公開番号】W WO2018019927
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-27
(31)【優先権主張番号】1657324
(32)【優先日】2016-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518443845
【氏名又は名称】アドヴァンスト・バイオデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セイラン、イズマル
(72)【発明者】
【氏名】マルタン、ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】カーシュ、ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ペレズ-アレア、ミレイディズ
(72)【発明者】
【氏名】フールネ、ギュイ
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506439(JP,A)
【文献】特表2012-506856(JP,A)
【文献】特開2011-184303(JP,A)
【文献】特表2010-523476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0369738(US,A1)
【文献】Jacek Wierzchowski,Anal Biochem,1997年,245(1),69-78
【文献】Hossein Eshghi,Dyes and Pigments,2011年,89 ,120-126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)対応酸RCOOHから誘導されたアシル化剤との蛍光トレーサーA-OHのエステル化から生じる式(I)R-COO-A(I)の化合物(式中、Rはプロピオネート、レチノエート、オクタノエート、ベンゾエート、4-アミノブチレート、ヘキサノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートもしくは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートを形成するために選択される)、または、
(b)式(II)の化合物
【化1】
(式中、同一のまたは異なるRおよびR’は、プロピオネート、レチノエート、オクタノエート、ベンゾエート、4-アミノブチレート、ヘキサノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートもしくは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートを形成するために選択される)、
を含む、ALDHアイソザイムの特異的基質。
【請求項2】
A-OHは、7-ヒドロキシクマリン、トーキョーグリーンファミリーの発蛍光団、特に2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン(Tokyo Green)、レゾルフィンおよびフルオレセインから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の特異的基質。
【請求項3】
前記ALDHアイソザイムは、ALDH1であり、式中、同一のまたは異なるRおよびR’は、プロピオネート、レチノエートまたはヘキサノエートを形成するために選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の特異的基質。
【請求項4】
前記ALDHアイソザイムは、ALDH3であり、式中、同一のまたは異なるRおよびR’は、オクタノエート、4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートまたはベンゾエートを形成するために選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の特異的基質。
【請求項5】
前記ALDHアイソザイムは細胞集団で検出されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の特異的基質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの特異的基質を含む組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の特異的基質を含む診断用組成物
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの特異的基質を含む、細胞集団中の少なくとも1つのALDHアイソザイムを定量するための組成物
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの特異的基質を含む、少なくとも1つのALDHアイソザイムの発現に従って細胞集団の全部または一部を選別するための組成物
【請求項10】
ALDHアイソザイムのデレギュレーションを伴う疾患の診断のための請求項7に記載の診断用組成物
【請求項11】
前記疾患が、癌、精子運動障害、虚血、頭部外傷または膵炎の中から選択される、請求項10に記載の診断用組成物
【請求項12】
対象がALDHアイソザイムの活性を阻害する療法および/または癌幹細胞に対する療法に応答することができるかどうかを決定するための、請求項7に記載のマーカーの診断用組成物
【請求項13】
請求項1から5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの特異的基質を含む、健常な幹細胞を癌幹細胞と区別するための組成物
【請求項14】
幹細胞を固形癌および/または血液悪性腫瘍と区別するための請求項13に記載の組成物
【請求項15】
請求項1から5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの特異的基質を含む、癌の異なる段階または幹細胞の分化の異なる段階を特徴付けるための組成物
【請求項16】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの特異的基質を含む、細胞集団において少なくとも1つのALDHアイソザイムを発現している細胞を識別する方法に使用するための組成物であって、前記方法が、
(a)前記細胞集団を前記少なくとも1つの特異的基質と接触させること、
(b)前記細胞集団の蛍光を測定すること、および、
(c)この集団が前記少なくとも1つの特異的基質と接触させられる前の前記細胞集団の蛍光と比較して増加した蛍光を有する細胞を識別すること、
を含む、組成物
【請求項17】
請求項1~5のいずれか1項に記載の少なくとも1つの特異的基質を含むALDHアイソザイムを定量化するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ALDHアイソザイムの特異的基質、少なくとも1つのそのような基質を含む組成物、そのような基質を含む診断マーカー、ならびにそれらに関連する使用および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)は、アルデヒドの酸化(脱水素化)を触媒する一群の酵素である。今日までに、ALDHをコードする19個の遺伝子がヒトゲノムにおいて識別されている。これらの遺伝子は、外因的および内因的に生成されたアルデヒドの解毒を含む多種多様な生物学的過程に関与している。ALDHは、サイトゾル、ミトコンドリア、小胞体、および核を含むすべての細胞内領域に見られ、それらの多くは複数のコンパートメントに見られる。ほとんどのALDHは広い組織分布を持ち、異なる基質特異性を示す。
【0003】
一般的に解毒酵素と考えられている、ALDHは、アルデヒド誘発性細胞傷害に対して保護することが示されている。ALDHはまた、胚形成および発生などの生理学的機能および過程において中心的な役割を果たす。
【0004】
特に、ALDH1アイソザイムは、レチノイン酸シグナル伝達を媒介することによって胚形成および発生において中心的な役割を果たす。それはまたメチオナールの解毒にも関与し、一方で、ALDH3は、4-ヒドロキシノナールのそれに関与し、ここで、両化合物は内因性のアポプトジェニックアルデヒドである。ALDH1およびALDH3はまた、眼球組織における損傷を誘発するUV照射に対する細胞防御メカニズムにも関連する。ALDH2アイソザイムは、主にアルコール代謝の第二段階におけるアセトアルデヒドの解毒に関連するミトコンドリアイソザイムである。
【0005】
20年以上前に、いくつかのALDHアイソザイムがこれらの細胞の重要な要素として識別されてきたので、ALDHは、正常および癌幹細胞の普遍的なマーカーとしてのそれらの潜在的な使用について研究された。例えば、ALDH1は、造血幹細胞が多いことが示されており、それらを単離するために使用され得る。
【0006】
それらの高いALDH活性を介して幹細胞を識別および単離するために使用される一般的な方法は、ALDEFLUOR(商標)試験(Stemcell Technologies社)の使用である。このALDEFLUOR(商標)試験は、ALDHの多くのアイソザイムによって代謝され得る蛍光基質を使用する。
【0007】
この試験では、ALDHの基質:BODIPY-アミノアセトアルデヒド(BAAA)は、細胞内に蓄積し、緑色の発光によってそれらの蛍光を増加させるALDHの存在下でBODIPY-アミノ酢酸に変換される。
【0008】
しかし、ALDEFLUOR(商標)はALDHの異なるアイソザイムを区別しない。
【0009】
活発な研究にもかかわらず、幹細胞または腫瘍学のような異なる領域におけるALDHの異なるアイソザイムの役割は謎のままである。細胞表現型の制御および発生中、組織の恒常性または修復、ならびに発癌の過程におけるさまざまなアイソザイムの代謝を理解することは、組織生物学において重要な展望を開く可能性がある。
【0010】
したがって、ALDHの異なるアイソザイムに特異的な新しい基質を識別する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
これに関連して、本発明の発明者らは、その新たな特異的基質を開発することによって、ALDHの異なるアイソザイムを識別するためのツールを発見した。
【0012】
したがって、本発明の目的は、以下の化合物を含むALDHアイソザイムのための特異的基質である。
(a)式(I)の化合物:対応酸RCOOHから誘導されたアシル化剤との蛍光トレーサーA-OHのエステル化から生じる式(I)R-COO-A(I)の化合物(式中、Rはレチノエート、プロピオネート、オクタノエート、ベンゾエート、4-アミノブチレート、ヘキサノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートもしくは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートを形成するために選択される)、または、
(b)式(II)の化合物
【化1】
(式中、同一のまたは異なるRおよびR’は、レチノエート、プロピオネート、オクタノエート、ベンゾエート、4-アミノブチレート、ヘキサノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートもしくは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートを形成するために選択される。)。
【0013】
したがって、以下の化合物を含むALDHアイソザイムについての特異的基質が記載される。
(a)式(I)の化合物:R-COO-A(I)、または、
(b)式(II)の化合物
【化2】
(式中、
・同一のまたは異なるRおよびR’は、レチノエート、プロピオネート、オクタノエート、ベンゾエート、4-アミノブチレート、ヘキサノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートもしくは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートを形成するために選択され、および、
・A-OHは蛍光トレーサーである。)。
【0014】
したがって、Aは、後者が、遊離の場合には蛍光トレーサーであるA-OHのエステル化形態である。
【0015】
本発明はまた、細胞集団中のALDHアイソザイムを定量化するための本発明による特異的基質の使用に関する。
【0016】
本発明はまた、健常な幹細胞を癌幹細胞から区別するための本発明による特異的基質の使用に関する。
【0017】
本発明はまた、癌の異なる段階または幹細胞分化の異なる段階を特徴付けるための本発明による特異的基質の使用に関する。
【0018】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つの特異的基質を含む組成物に関する。
【0019】
本発明はまた、本発明による特異的基質を含む診断マーカーに関する。
【0020】
本発明はまた、ALDHアイソザイムのデレギュレーションを伴う疾患の診断のための本発明によるマーカーの使用に関する。特に、マーカーは、対象がALDHアイソザイムの活性を阻害する療法および/または癌幹細胞に対する療法に応答することができるかどうかを決定するために使用される。
【0021】
本発明はまた、細胞集団において少なくとも1つのALDHアイソザイムを発現している細胞を区別する方法に関し、該方法は、
(a)細胞集団を本発明による少なくとも1つの特異的基質と接触させること、
(b)細胞集団の蛍光を測定すること、および、
(c)この集団が本発明による少なくとも1つの特異的基質と接触させられる前の細胞集団の蛍光と比較して増加した蛍光を有する細胞を識別すること、
を含む。
【0022】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つの特異的基質を含むALDHアイソザイムを定量化するためのキットに関する。
【0023】
上記のように、本発明は、以下の化合物を含むALDHアイソザイムのための特異的基質に関する。
(a)式(I)の化合物:対応酸RCOOHから誘導されたアシル化剤との蛍光トレーサーA-OHのエステル化から生じる式(I)R-COO-A(I)の化合物(式中、Rはレチノエート、プロピオネート、オクタノエート、ベンゾエート、4-アミノブチレート、ヘキサノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートもしくは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートを形成するために選択される)、または、
(b)式(II)の化合物
【化3】
(式中、同一のまたは異なるRおよびR’は、レチノエート、プロピオネート、オクタノエート、ベンゾエート、4-アミノブチレート、ヘキサノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートもしくは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートを形成するために選択される。)。
【0024】
式(II)の化合物はまた、以下の式を有するように記載され得る。R-COO-A-OOC-R’(式中、蛍光トレーサーは、式HO-A-OHであり、フルオレセインである。)。
【0025】
「ALDHアイソザイムの特異的基質」とは、本発明の文脈において、蛍光分子(A-OH)を放出することを可能にする化学反応を生じさせ、それにより特定のALDHアイソザイムを確実に識別することを可能にするために、例えばALDH1またはALDH3などの特定のALDHアイソザイムと特異的に相互作用する化学分子を意味する。したがって、本発明の文脈において、特異的基質は、ALDHアイソザイムによって切断されて、蛍光トレーサーA-OHの放出を可能にするであろう。
【0026】
本発明による特異的基質は、対応酸RCOOHまたはR’COOHから誘導されたアシル化剤との蛍光トレーサーA-OHのエステル化から生じる。
【0027】
例えば、酸RCOOHおよび/またはR’COOHがプロピオン酸であるRおよび/またはR’の場合、対応エステルはプロピオネートであり、その酸RCOOHおよび/またはR’COOHがヘキサン酸であるRおよび/またはR’の場合、エステルはヘキサノエートに対応し、酸RCOOHおよび/またはR’COOHがレチノイン酸であるRおよび/またはR’の場合、対応エステルはレチノエートであり、Rおよび/またはR’がその酸RCOOHおよび/またはR’COOHが安息香酸である場合、対応エステルはベンゾエートであり、酸RCOOHおよび/またはR’COOHが4-ジエチルアミノ安息香酸であるRおよびR’の場合、対応エステルは4-ジエチルアミノベンゾエートであり、酸RCOOHおよび/またはR’COOHが4-ヒドロキシ-2-ノネン酸であるRおよびR’の場合、対応エステルは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートであり、酸RCOOHおよび/またはR’COOHが4-アミノブタン酸であるRおよび/またはR’の場合、対応エステルは4-アミノブチレートである。
【0028】
並行して、例えば、Rおよび/またはR’がヘプチルである場合、対応エステルはオクタノエートであり、Rおよび/またはR’がエチルである場合、対応エステルはプロピオネートであり、Rおよび/またはR’がフェニルである場合、対応エステルはベンゾエートであり、Rおよび/またはR’が3-アミノプロピルである場合、対応エステルは4-アミノブチレートなどである。
【0029】
ヒドロキシル化形態のA(つまり、A-OH)として定義される「A」は、蛍光トレーサーである。A-OHは、特異的基質とエステルを形成して、式(I)R-COO-Aおよび(II)R-COO-A-OOC-R’を形成し、エステル官能基の切断後、酸RCOOH、および/またはR’COOHならびに蛍光トレーサーA-OHの放出につながる。
【0030】
以下の表1は、蛍光トレーサーに結合した、本発明による置換基RおよびR’の構造を示す。表はまた、ALDHアイソザイムに対する各基質の特異性も示す。

【表1】
【0031】
「蛍光トレーサー」とは、蛍光によって識別され得る化合物を意味する。特に、本発明による蛍光トレーサーは、蛍光色素または蛍光色素分子、すなわち励起後に蛍光を発することができる化学物質である。
【0032】
本発明の文脈では、蛍光色素分子はALDHアイソザイムの作用下で放出されるであろう。
【0033】
フルオロフォアは当業者に周知である。(例えば、Manafi (2000) Int. J. Food Microbiol. 60: 205-218を参照)。
【0034】
本発明による種々の蛍光トレーサーを下記の表2に示す。
【表2】
【0035】
特に、本発明の文脈において、A-OHは、7-ヒドロキシクマリン、トーキョーグリーンファミリーの蛍光色素分子、特に2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン、レゾルフィンおよびフルオレセインから選択される。これらのトレーサーは、すべて当業者に知られており、市販されているかまたは当業者に周知の方法により合成され得る。
【0036】
特に、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンはまた、6-ヒドロキシ-9-(4-メトキシ-2-メチルフェニル)-3H-キサンテン-3-オン、2-Me-4-OMeトーキョーグリーンまたは2-Me-4-OMeTGという名前でもある。
【0037】
したがって、本発明による特異的基質としては、以下の分子から作ることができる:レゾルフィンレチノエート、レゾルフィンプロピオネート、レゾルフィンオクタノエート、レゾルフィンベンゾエート、レゾルフィン4-アミノブチレート、レゾルフィンヘキサノエート、レゾルフィン4-ジエチルアミノベンゾエートまたはレゾルフィン4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、7-ヒドロキシクマリンレチノエート、7-ヒドロキシクマリンプロピオネート、7-ヒドロキシクマリンオクタノエート、7-ヒドロキシクマリンベンゾエート、4-ヒドロキシクマリン4-アミノブチレート、7-ヒドロキシクマリンヘキサノエート、7-ヒドロキシクマリン4-ジエチルアミノベンゾエートまたは7-ヒドロキシクマリン4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンレチノエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンプロピオネート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンオクタノエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンベンゾエート、4-アミノブチレート2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン、2-メチル-4-メトキシヘキサノエートトーキョーグリーン、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン4-ジエチルアミノベンゾエートまたは2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンまたは4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、フルオレセインジ-レチノエート、フルオレセインジ-プロピオネート、フルオレセインジ-オクタノエート、フルオレセインジ-ベンゾエート、フルオレセインジ-4-アミノブチレート、フルオレセインジ-ヘキサノエート、フルオレセインジ-4-ジエチルアミノベンゾエートまたはフルオレセインジ-4-ヒドロキシ-2-ノネノエート。
【0038】
前述のように、「ALDH」は「アルデヒドデヒドロゲナーゼ」に使用され、構成的および誘導形態で存在する一群のデヒドロゲナーゼ様酵素を表す。
【0039】
ヒトにおいて、19個のALDHが識別されており、その中には多くの遺伝子が含まれている。それらはサブグループに分けられる:ALDH1A1、ALDH1A2、ALDH1A3、ALDH1B1、ALDH1L1およびALDH1L2を含むALDH1、ALDH2、ALDH3A1、ALDH3A2、ALDH3B1およびALDH3B2を含むALDH3、ALDH4、ALDH5、ALDH6、ALDH7、ALDH8、ALDH9、ALDH16、ならびにALDH18。
【0040】
特に、本発明による特異的基質は、ALDH1またはALDH3についての特異的基質である。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、ALDHアイソザイムが、ALDH1である場合、同一のまたは異なるRおよびR’は、レチノエート、ヘキサノエートまたはプロピオネートを形成するために選択される。
【0042】
特に、ALDHアイソザイムが、ALDH1である場合、本発明による特異的基質は、レゾルフィンレチノエート、レゾルフィンヘキサノエート、レゾルフィンプロピオネート、7-ヒドロキシクマリンレチノエート、7-ヒドロキシクマリンヘキサノエート、7-ヒドロキシクマリンプロピオネート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンレチノエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンヘキサノエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンプロピオネート、フルオレセインジ-レチノエート、フルオレセインジプロピオネート、フルオレセインジ-ヘキサノエートの中から選択される。
【0043】
本発明の別の実施形態によれば、ALDHアイソザイムが、ALDH3である場合、同一のまたは異なるRおよびR’は、オクタノエート、4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートまたはベンゾエートを得るために選択される。
【0044】
特に、ALDHアイソザイムがALDH3である場合、本発明による特異的基質は、レゾルフィンオクタノエート、レゾルフィン4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、レゾルフィンベンゾエート、レゾルフィン4-ジエチルアミノベンゾエート、7-ヒドロキシクマリンオクタノエート、7-ヒドロキシクマリン4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、7-ヒドロキシクマリンベンゾエート、7-ヒドロキシクマリン4-ジエチルアミノベンゾエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンオクタノエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンベンゾエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンヘキサノエート、フルオレセインジ-オクタノエート、フルオレセインジ-4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、フルオレセインジ-ベンゾエートおよびフルオレセインジ-4-ジエチルアミノベンゾエートの中から選択される。
【0045】
本発明の別の実施形態によれば、ALDHアイソザイムが、ALDH9である場合、同一のまたは異なるRおよびR’は、4-アミノブチレートを得るために選択される。
【0046】
特に、ALDHアイソザイムがALDH9である場合、本発明による特異的基質は、レゾルフィン4-アミノブチレート、7-ヒドロキシクマリン4-アミノブチレートおよび2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン4-アミノブチレート、フルオレセインジ-4-アミノブチレートの中から選択される。
【0047】
これらの態様のうちの1つによれば、本発明はまた、本発明による少なくとも1つの特異的基質を含む組成物に関する。
【0048】
したがって、本発明による組成物は、本発明による1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、18、19個またはそれ以上の特異的基質を含む。
【0049】
したがって、この組成物は、ALDHのいくつかのアイソザイムを検出しそして直接識別することを可能にする。例えば、組成物は、ADLH1の特異的基質とALDH3についての特異的基質、またはALDH1およびALDH9についての特異的基質、またはALDH3およびALDH9についての特異的基質、またはALDH1、ALDH3およびALDH9についての特異的基質を含む。
【0050】
したがって、本発明による組成物としては、例えば、以下の1つ以上の特異的基質を含む:レゾルフィンレチノエート、レゾルフィンプロピオネート、レゾルフィンオクタノエート、レゾルフィンベンゾエート、レゾルフィン4-アミノブチレート、レゾルフィンヘキサノエートまたはレゾルフィン4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、レゾルフィン4-ジエチルアミノベンゾエート、7-ヒドロキシクマリンレチノエート、7-ヒドロキシクマリンプロピオネート、7-ヒドロキシクマリンオクタノエート、7-ヒドロキシクマリンベンゾエート、7-ヒドロキシクマリン4-アミノブチレート、7-ヒドロキシクマリンヘキサノエートまたは7-ヒドロキシクマリン4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、7-ヒドロキシクマリン4-ジエチルアミノベンゾエート、2-メチル-4-メトキシトーキョーグリーン、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンプロピオネート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンオクタノエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンベンゾエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン4-アミノブチレート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーンヘキサノエートまたは2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン4-ジエチルアミノベンゾエート、フルオレセインジ-レチノエート、フルオレセインジプロピオネート、フルオレセインジ-オクタノエート、フルオレセインジ-ベンゾエート、フルオレセインジ-4-アミノブチレート、フルオレセインジ-ヘキサノエートまたはフルオレセインジ-4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、フルオレセインジ-4-ジエチルアミノベンゾエート。
【0051】
特に、本発明による特異的基質は、ADLHアイソザイムが細胞集団内で検出されることを特徴とする。
【0052】
「細胞集団」とは、同じ起源または異なる起源の、それらの特徴(遺伝子配列、発現レベル、分化状態)が同一のまたは異なる一組の細胞を意味する。特に、細胞集団は、少なくとも2個の細胞、例えば10、100、1000または1000000個の細胞を含む。
【0053】
したがって、本発明の一実施形態によれば、特異的基質は、蛍光プレート技術、フローサイトメトリー技術および/または免疫蛍光技術の使用によってin vitroまたはex vivoで検出される。
【0054】
本発明による特異的基質は、異なるALDHアイソザイムを識別するのに有用である。それらは、特に、異なるALDHアイソザイムを発現している細胞(例えば、ある種の幹細胞)を識別すること、および、混合した集団の中のそれらの細胞をALDHアイソザイムを発現していないもの、または同じALDHアイソザイムでないものから区別することを可能にする。本発明による基質はまた、ALDHアイソザイムを発現している細胞を、それをより少ない程度で発現する細胞よりも高い程度で区別することを可能にし得る。
【0055】
したがって、本発明は、細胞集団中の少なくとも1つのALDHアイソザイムを定量化するための本発明による少なくとも1つの特異的基質の使用に関する。
【0056】
したがって、本発明はまた、ALDHアイソザイムを過剰発現している細胞集団の一部を単離および/または選択するための本発明による少なくとも1つの特異的基質の使用に関する。
【0057】
したがって、本発明はまた、少なくとも1つのALDHアイソザイムの発現に従って細胞集団の全部または一部を選別するための本発明による少なくとも1つの特異的基質の使用に関する。
【0058】
「少なくとも1つの」ALDHアイソザイムは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、18または19個のALDHアイソザイムとして定義される。19個のアイソザイムは上記に記載されている。
【0059】
本発明による「少なくとも1つの」特異的基質は、前述と同じ意味を有する。
【0060】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つの特異的基質の使用を含む、細胞集団中の少なくとも1つのALDHアイソザイムを定量化するための方法に関する。
【0061】
定量化は、蛍光プレート技術を用いて実施することができる。ALDHの異なるアイソザイムの識別および/または定量化は、異なる細胞型を区別および/または識別することを可能にする。
【0062】
したがって、本発明はまた、健常な幹細胞を癌幹細胞から区別するための本発明による少なくとも1つの特異的基質の使用に関する。
【0063】
それはまた、本発明による少なくとも1つの特異的基質の使用を含む、健常な幹細胞を癌幹細胞から区別する方法に関する。
【0064】
この方法および使用はまた、例えば蛍光を有する細胞を単離する工程を含むことによってこれらの細胞を単離することを可能にする。
【0065】
例えば、「癌幹細胞」は、膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、肝臓、肺、膵臓、前立腺、卵巣の癌の幹細胞、白血病の幹細胞を意味する。
【0066】
特に、本発明による特異的基質は、幹細胞を固形癌および/または血液悪性腫瘍から区別するために使用される。
【0067】
例えば、「固形癌」は乳癌、肺癌または前立腺癌を意味する。
【0068】
「血液悪性腫瘍」とは、例えば白血病、リンパ腫または骨髄腫を意味する。
【0069】
特に、目的の幹細胞は、癌性または健常な造血細胞である。異なるALDHアイソザイムの識別および/または定量化はまた、疾患または細胞分化の異なる段階を特徴付けることを可能にする。
【0070】
したがって、本発明はまた、癌の異なる段階または幹細胞分化の異なる段階を特徴付けるための本発明による少なくとも1つの特異的基質の使用に関する。
【0071】
それはまた、本発明による少なくとも1つの特異的基質の使用を含む、癌のさまざまな段階または幹細胞分化の異なる段階を特徴付けるための方法に関する。
【0072】
「幹細胞の分化の異なる段階」とは、当業者に周知の段階、特に以下の段階を意味する:未分化細胞、低分化細胞、中分化細胞、および高分化細胞。
【0073】
「癌の異なる段階」とは、当業者に周知の段階、特に以下の段階を意味する:腫瘍または未分化癌、腫瘍または低分化癌、腫瘍または中分化癌、腫瘍または高分化癌。
【0074】
本発明による特異的基質は、異なるALDHアイソザイムの識別および/または定量化を可能にすることにより診断マーカーとして有用である。
【0075】
それゆえ、本発明はまた、本発明による特異的基質を含む診断マーカーに関する。
【0076】
「診断マーカー」とは、当業者によってこれらの用語に一般に帰される意味、すなわち診断を確認または無効にすることを可能にする特徴的な要素を意味する。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、本発明による診断マーカーは本発明による特異的基質である。
【0078】
したがって、本発明はまた、ALDHアイソザイムのデレギュレーションを伴う疾患の診断のための本発明によるマーカーの使用に関する。
【0079】
それはまた、本発明によるマーカーの使用を含む、ALDHアイソザイムのデレギュレーションを含む疾患を診断するための方法に関する。
【0080】
ALDHアイソザイムのデレギュレーションを含む疾患は、いわゆる正常発現、すなわち健常な対象において観察される発現に関して、アイソザイムが患者において過剰発現または過少発現されることを意味する疾患である。
【0081】
「過剰発現された」または「過剰発現」とは、健常な対象の発現率よりも大きい、病気の対象における発現率を意味する。
【0082】
「過少発現された」または「過少発現」とは、健常な対象の発現率よりも低い、患者における発現率を意味する。
【0083】
そのような疾患は、癌、精子運動障害、虚血、頭部外傷または膵炎から選択され得る。
【0084】
「癌」とは、例えば、白血病、乳癌または肺癌を意味する。
【0085】
「精子運動障害」は、精子が女性の子宮頸管、子宮管および卵管を移動して通過することができる割合に影響を及ぼす障害を意味する。
【0086】
本発明はまた、対象がALDHアイソザイムの活性を阻害する療法および/または癌幹細胞に対する療法に応答することができるかどうかを決定するための本発明によるマーカーの使用に関する。
【0087】
それはまた、本発明によるマーカーの使用を含む、対象がALDHアイソザイムの活性を阻害する療法および/または癌幹細胞に対する療法に応答することができるかどうかを決定するための方法に関する。
【0088】
本発明の文脈において、「対象」は、哺乳動物、動物またはヒトなどの温血動物、特にヒトを指す。対象は、健常な対象、または本発明の範囲内の記載される1つ以上の疾患および/もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに罹患する可能性を有する対象であり得る。
【0089】
「ALDHアイソザイムの活性を阻害する療法」とは、その直接的または間接的な標的が1つのALDHアイソザイム、例えばALDH1、ALDH3、ALDH9またはいくつかのALDHアイソザイムである療法を意味する。
【0090】
「癌幹細胞に対する療法」とは、その標的が癌幹細胞であり、その特徴のうちの1つが高レベルのALDHである療法を意味する。
【0091】
これらの態様のうちの1つによれば、本発明はまた、細胞集団において少なくとも1つのALDHアイソザイムを発現している細胞を区別する方法に関し、該方法は、
(a)細胞集団を本発明による少なくとも1つの特異的基質と接触させること、
(b)細胞集団の蛍光を測定すること、および、
(c)この集団が前記少なくとも1つの特異的基質と接触させられる前の前記細胞集団の蛍光と比較して増加した蛍光を有する細胞を識別すること、
を含む。
【0092】
「接触させる」とは、特に、本発明による少なくとも1つの特異的基質の、数分、例えば30分から数時間、例えば4時間以上の範囲の規定された時間の細胞集団とのインキュベーションを意味する。
【0093】
「細胞集団」は上記で定義した通りである。「少なくとも1つのALDHアイソザイム」および「1つの本発明による少なくとも特異的基質」は上記で定義した通りである。
【0094】
蛍光の測定は、当業者に知られている任意の方法によって実施することができる。例として、蛍光光度計、フローサイトメーターまたは蛍光顕微鏡の使用を挙げることができる。
【0095】
「集団が特異的基質と接触させられる前の細胞集団の蛍光と比較して増加した蛍光」とは、研究対象の細胞集団の蛍光が、本発明による特異的基質と接触させられた前のこの同じ細胞集団の蛍光よりも大きいことを意味する。
【0096】
少なくとも2つの異なるALDHアイソザイムについての少なくとも2つの特異的基質を細胞集団と接触させる場合、方法は、細胞の少なくとも2つのALDHアイソザイムを発現している細胞を区別することを含む追加の工程d)も含み得る。
【0097】
この区別は、例えば、検出されたアイソザイムに応じて異なる蛍光色を観察することによって行うことができる。
【0098】
例えば、細胞集団をレゾルフィンレチノエートおよび7-ヒドロキシクマリンオクタノエートと接触させることを含む場合、増加した赤色蛍光を有する細胞は増加したALDH1を発現するとして識別される一方、増加した青色蛍光を有する細胞はALDH3を発現するとして識別される。
【0099】
これらの態様のうちの1つによれば、本発明はまた、特にALDHアイソザイムを定量化するための、より詳細には細胞集団中のALDHアイソザイムを定量化するための、本発明による少なくとも1つの特異的基質を含む、本発明の文脈において言及されるさまざまな使用のためのキットに関する。
【0100】
キットはまた、対象がALDHアイソザイムの活性を阻害する療法および/または癌幹細胞に対する療法に応答することができるかどうかを決定するために、健常幹細胞を癌幹細胞から区別するために、例えば、幹細胞を固形癌および/または血液悪性腫瘍と区別するために、あるいは癌のさまざまな段階または幹細胞分化のさまざまな段階を特徴付けるために、ALDHアイソザイムのデレギュレーションを含む疾患を診断するためのキットであり得、ここで、疾患は、例えば、癌、精子運動障害、虚血、頭部外傷または膵炎から選択される。
【0101】
本発明によるキットは、例えば、ALDHアイソザイムの量を決定するためのキットの使用説明書も含み得、特に細胞集団において、ALDHアイソザイムのデレギュレーションを含む疾患の診断について、対象がALDHアイソザイムの活性を阻害する療法および/または癌幹細胞に対する療法に応答することができるかどうかを決定し、健常な癌幹細胞を区別し、または癌のさまざまな段階もしくは幹細胞分化のさまざまな段階を特徴付ける。
【0102】
本発明によるキットに含まれるさまざまな化合物は、固体の形態(例えば凍結乾燥)または液体形態で提供されてもよい。
【0103】
本発明のキットは、各化合物に対して異なる容器(例えば、アンプル、試験管、バイアルまたはボトル)を任意に含み得る。各化合物は通常その容器に等分されるかまたは濃縮形態で提供される。本発明の文脈において記載された方法の特定の工程を実施するための他の適切な容器もまた提供され得る。
【0104】
本発明は、以下の図および実施例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】ALDH1A1、ALDH2およびALDH3A1上のレゾルフィンプロピオネートのKおよびVmaxを決定するためのミカエリス-メンテンプロット。
図2】RNAを妨害するALDH1A1で処理した後のレゾルフィンプロピオネートによるALDH1活性の試験。
図3】ALDH1および3の阻害剤で処理した後のレゾルフィンプロピオネートによるALDH1活性の試験。
図4】レゾルフィンプロピオネートによるフローサイトメトリーにより検出されたALDH1活性。
図5】レチノイン酸処理後のレゾルフィンレチノエートとフルオレセインジ-レチノエートによるALDH1活性とレゾルフィンベンゾエートとフルオレセインジベンゾエートによるALDH3の試験。
図6】ジスルフィラム(Disulfiram)(DSF)処理後のレゾルフィンレチノエートとフルオレセインジ-レチノエートによるALDH1活性とレゾルフィンベンゾエートとフルオレセインジベンゾエートによるALDH3の試験。
【発明を実施するための形態】
【0106】
(実施例)
1.本発明による特異的基質の調製
操作条件
CaH上で不活性雰囲気下でジクロロメタンを蒸留したことを除いて、市販の試薬および溶媒(Fisher、Sigma、Fluorochemなど)を精製せずに使用した。反応は、Macherey-NagelシリカゲルALUGRAM SIL G / UV 254(厚さ0.2mm)で被覆されたアルミニウムシート上の薄層クロマトグラフィーによってモニターし、プレートの観察は254および312nmの紫外線ランプ下で行った。
【0107】
カラムクロマトグラフィーは、大気圧下でMacherey-Nagelシリカゲル60M(40~63μm)で行った。
【0108】
融点はTottoliBuchiSMP-20装置を用いて測定され、補正されなかった。
【0109】
H NMRスペクトルは、Brucker ALS300またはDRX300 300MHz装置を用いて記録した。13C NMRスペクトルは、Brucker DRX300 75MHz装置で得られた。化学シフトδは百万分の一(ppm)の重量部で表され、溶媒の残留ピークを内部基準とした。結合定数JはHzで表される。
【0110】
質量スペクトルは、エレクトロスプレー源(ESI)を備えたハイブリッド飛行時間型質量分析計(MicroTOFQ-II、Bruker Daltonics、ブレーメン)でポジティブモードで記録した。
【0111】
スプレーガス流は0.4バールでありそして毛管電圧は3500ボルトであった。溶液を1%ギ酸を含む溶媒混合物(メタノール/ジクロロメタン/水45/40/15)中で10μl/分で灌流した。アッセイの質量範囲は50~1000m-zであり、較正はギ酸ナトリウムを用いて実施した。
【0112】
本発明による特異的基質の構造例
【表3】
【0113】
レゾルフィンエステル
レゾルフィンプロピオネートおよびベンゾエート
化合物は、DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン、2当量)の存在下、ジクロロメタン(0.05M)中の対応酸塩化物(2当量)を用いてレゾルフィン(ナトリウム塩)(Sigma)から調製した。
【0114】
プロピオネートについては、20mLの無水DCM中のレゾルフィンナトリウム塩(235.2mg、1.0mmol)の懸濁液に室温でDIPEA(2当量)が加えられ、次に0℃で塩化プロピオニル(2当量)を滴下した。0℃で5分後、反応媒体を室温にし、そして一夜撹拌する。次いで、30mLの水を加え、3×30mLのDCMで抽出した。合わせた有機相を30mlのNaHCO飽和溶液、次いで30mlのNaCl飽和溶液で洗浄した。溶媒をNaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させた後、残渣をEtOHに溶解した。超音波処理を行い、得られた固体を焼結し、EtOHで洗浄した(2回)。真空乾燥後、218mg(81%)のオレンジ色の固体が得られた。
【0115】
Mp 176-177°C (EtOH) (Guilbault et al Analytical Chem 1965, 37, 120-123:177°C); HRMN (300 MHz, DMSO) δ 7.89 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.57 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.40 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.25 (dd, J = 8.7, 2.4 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 9.8, 2.0 Hz, 1H), 6.31 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 2.66 (q, J = 7.4 Hz, 2H), 1.15 (t, J = 7.5 Hz, 3H); ESI-MS m/z 270.1 [M+H]+.
重量:269.2g.mol-1
式:C1511NO
【化4】
【0116】
ベンゾエートついては、その手順はプロピオネートのそれと同一である。塩化ベンゾイルを使用した(スケール:1.0mmol)。単離した固体(166mg)をシリカゲルクロマトグラフィー(MeOH/DCM:1/99)で精製して、156mg(49%)の純粋なベンゾエートを得た。
【0117】
Mp > 210°C (Guilbault et al Analytical Chem 1965, 37, 120-123: 203°C); HRMN (300 MHz, DMSO) δ 8.21 - 8.14 (m, 2H), 7.95 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.84 - 7.75 (m, 1H), 7.62 (ddd, J = 11.7, 10.5, 8.1 Hz, 4H), 7.44 (dd, J = 8.7, 2.4 Hz, 1H), 6.86 (dd, J = 9.8, 2.1 Hz, 1H), 6.33 (d, J = 2.1 Hz, 1H); ESI-MS m/z 318.1 [M+H]+ .
重量:317.3g.mol-1
式:C1911NO
【化5】
【0118】
レゾルフィンヘキサノエートおよびオクタノエート
対応酸塩化物を使用して、上記の2つのエステルと同じ方法で化合物を調製し単離した。得られたそれぞれの収率は65%および81%である。
【0119】
ヘキサノエートについては、その手順はプロピオネートのそれと同一である。塩化ヘキサノイル(スケール:1.0mmol)を使用した。得られた化合物をEtOH中で沈殿させ、続いてEtOHで2回洗浄することにより単離した、収率65%。
【0120】
p 130-132°C; HRMN (300 MHz, DMSO) δ 7.89 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.57 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.24 (dd, J = 8.7, 2.4 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 9.8, 2.0 Hz, 1H), 6.30 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 2.63 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.75 - 1.57 (m, 2H), 1.43 - 1.25 (m, 4H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H); ESI-MS m/z312.1 [M+H]+.
重量:311.3g.mol-1
式:C1817NO
【化6】
【0121】
オクタノエートについては、その手順はプロピオネートのそれと同一である。塩化オクタノイル(スケール:1.0mmol)を使用した。得られた化合物をEtOH中で沈殿させ、続いてEtOHで2回洗浄することにより単離した、収率81%。
【0122】
Mp 127-129°C; HRMN (300 MHz, DMSO) δ 7.89 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.57 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.23 (dd, J = 8.7, 2.4 Hz, 1H), 6.84 (dd, J = 9.8, 2.0 Hz, 1H), 6.30 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 2.63 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.72 - 1.57 (m, 2H), 1.44 - 1.19 (m, 8H), 0.87 (t, J = 6.8 Hz, 3H); ESI-MS m/z 340.2 [M+H]+.
重量:339.4g.mol-1
式:C2021NO
【化7】
【0123】
レゾルフィン4-ジエチルアミノベンゾエート
レゾルフィンのナトリウム塩(235.2mg、1.0mmol)、4-ジエチルアミノ安息香酸(1.1当量)、EDCI(1.1当量)および4-DMAP(0.1当量)をアルゴン下に置いた。25mlのDCMを添加し、そして反応媒体を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(MeOH/DCM=1/99~2.5/87.5)により精製し、2番目のカラム(MeOH/DCM=1/99)によって除去される、ごくわずかな不純物(可視UV)を有する生成物207mg(53%)を得る。Mp 206-208°C;H RMN (300 MHz, DMSO) δ 7.92 (d, J = 9.0 Hz, 3H), 7.59 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.49 (s, 1H), 7.35 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.85 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 6.32 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.46 (q, J = 7.0 Hz, 4H), 1.14 (t, J = 7.0 Hz, 6H); ESI-MS m/z 389.1 [M+H]+.
重量:388.4g.mol-1
式:C2320
【化8】
【0124】
(すべて)レゾルフィンのトランスレチノエート
市販のレチノイン酸を使用して、前述のエステルと同じ方法で化合物を調製した(収率40%)。得られた粗生成物(橙赤色固体)をMeOHで洗浄し、シリカゲル上のクロマトグラフィー(MeOH/DCM:1/99)によって精製した。さらにEtOH、次いでMeOHで洗浄して100mg(40%)の純粋な生成物を得た。Mp 150-160 (分解); HRMN(300 MHz, CDCl) δ 7.82 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.46 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.25 - 7.10 (m, 3H), 6.89 (dd, J = 9.8, 2.0 Hz, 1H), 6.46 - 6.31 (m, 3H), 6.26 - 6.14 (m, 2H), 6.00 (s, 1H), 2.45 (d, J = 0.9 Hz, 3H), 2.10-2.00 (m, 5H), 1.75 (d, J = 0.6 Hz, 3H), 1.70 - 1.58 (m, 2H), 1.54 - 1.46 (m, 2H), 1.06 (s, 6H); ESI-MS m/z 496.2 [M+H+].
重量:495.6g.mol-1
式:C3233NO
【化9】
【0125】
トーキョー-グリーンエステル
2-Me-4-MeOトーキョー-グリーン(CAS No.643755-84-4:6-ヒドロキシ-9-(4-メトキシ-2-メチルフェニル)-3H-キサンテン-3-オン)を2段階で合成し:「J. Biol. ChemVol. 264, No. 14. Issue of May 15, PP. 8171-8178, 1989」の文献に記載の手順に従って行われた市販の3.6-ジヒドロキシキサンタ-9-オンのビスシリル化は、3.6-ビス(t-ブチルジメチルシリルオキシ)キサントンを導く。2-ブロモ-3-メトキシトルエンからのマグネシウムによる処理とそれに続く酸加水分解からなる、文献「Chem. Eur. J. 2014, 20, 447-455」に記載の手順により行われた第2工程により、2-Me-4-MeOトーキョーグリーンを得る。
【化10】
【0126】
2-Me-4-MeOトーキョー-グリーンのヘキサノエートおよびオクタノエート
化合物は対応酸塩化物を用いて慣用的に調製された。
【0127】
ヘキサノエートについては、0.15mmolの2-Me-4-MeO-TGから、シリカゲル上のクロマトグラフィー(MeOH/DCM:1/99~10/90)による精製を行った、収率:40%(非結晶化樹脂)。
【0128】
HRMN (300 MHz, Me0D) et 7.45 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.24 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.16 (d, J = 9.6 Hz, 2H), 7.11 (dd, J = 8.8, 2.1 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 6.99 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 6.61 (dd, J = 9.7, 1.9 Hz, 1H), 6.44 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 3.89 (s, 3H), 2.63 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.04 (s, 3H), 1.81 - 1.67 (m, 2H), 1.47 - 1.33 (m, 4H), 1.00 - 0.89 (m, 3H).
【0129】
13CRMN(101 MHz, CDCI3) et 186.23, 171.64, 160.63, 158.85, 154.54, 153.29, 148.87, 138.07, 131.00, 130.88, 130.58, 129.38, 124.29, 120.84, 118.85, 118.56, 116.24, 111.80, 110.38, 106.18, 77.16, 55.51, 34.47, 31.32, 24.60, 22.42, 20.19, 14.05;
ESI-MS: [M+H]+: 431.1
重量:430.5g.mol-1
式:C2726
【化11】
【0130】
オクタノエートについては、0.19mmolのTGから、シリカゲル上のクロマトグラフィー(MeOH/DCM:1/99~10/90)による精製を行った、収率:20%(非結晶化樹脂)
【0131】
H RMN (300 MHz, Me0D) et 7.46 (s, 1H), 7.25 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.17 (d, 1 = 8.9 Hz, 2H), 7.12 (dd, J = 8.8, 1.6 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.00 (cid, 1 = 8.4, 2.2 Hz, 1H), 6.62 (dd, J = 9.7, 1.5 Hz, 1H), 6.45 (s, 1H), 3.90 (s, 3H), 2.64 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 2.05 (s, 3H), 1.81 - 1.67 (m, 2H), 1.49 - 1.26 (m, 9H), 0.96 - 0.87 (m.3H).
【0132】
13CRMN(101 MHz, CDCI3) et 186.20, 171.66, 160.61, 158.78, 154.49, 130.92, 130.59, 129.34, 124.33, 120.89, 118.86, 106.23, 77.16, 55.51, 34.51, 31.76, 29.14, 29.02, 24.92, 22.73, 20.19, 14.21.
ESI-MS: [M + H]+: 459.2
重量:485g.mol-1
式:C2930
【化12】
【0133】
フルオレセインジエステル
同一の調製は上記の通りであり、3.0当量の対応酸塩化物および3当量の塩基を用いる。。ヘキサノエートおよびオクタノエートは既に記載されている [litt. Ge, Feng-Yan; Dyes and Pigments 2007, 72 (3), 322-326]。
【0134】
フルオレセインジ-ヘキサノエート
[7364-90-1]スケール0.8mmol、シリカゲル上クロマトグラフィー(PE/EtOAc:90/10)による精製。白色固体, 収率: 98%。Mp 103-105°C (ペンタン洗浄)(100°C, Ge, Feng-Yan, Dyes and Pigments 2007, 72 (3), 322-326);
【0135】
H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.09 - 8.03 (m, 1H), 7.83 (td, J = 7.4, 1.4 Hz, 1H), 7.77 (td, J = 7.4, 1.2 Hz, 1H), 7.44 - 7.38 (m, 1H), 7.28 (d, J = 2.0 Hz, 2H), 6.94 (dd, J = 8.7, 2.2 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 2.60 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 1.71 - 1.58 (m, 4H), 1.40 - 1.25 (m, 8H), 0.95 - 0.81 (m, 6H) ;
ESI-MS: [M+H]+: 529.2
重量:528.9g.mol-1
式:C3232
【化13】
【0136】
フルオレセインジオクタノエート
[19722-86-2]スケール0.8mmol、シリカゲル上クロマトグラフィー(PE/EtOAc:90/10~80/20)による精製。白色固体、92%.Mp 50-52°.(lit 49°C, Ge, Feng-Yan, Dyes and Pigments 2007, 72 (3), 322-326).
【0137】
H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.09 - 8.04 (m, 1H), 7.83 (td, J = 7.4, 1.3 Hz, 1H), 7.77 (td, J = 7.3, 1.0 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 2.1 Hz, 2H), 6.94 (dd, J = 8.7, 2.2 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 2.59 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 1.70 - 1.57 (m, 4H), 1.41 - 1.20 (m, 16H), 0.92 - 0.81 (m, 6H) ;
ESI-MS: [M+H]+: 585.3.
重量:584.7g.mol-1
式:C3640
【化14】
【0138】
フルオレセインジ-レチノエート:
化合物は、2.1当量のレチノイン酸、2.1当量のEDCI、0.1当量の4-DMAPから調製した。スケール:0.5mmolシリカゲル上クロマトグラフィー(PE/EtOAc:80/20)による精製。黄色固体、収率45%。M.p.145-150°C(dec);
【0139】
H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.07 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.89 - 7.73 (m, 2H), 7.42 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.20 (dd, J = 15.0, 11.5 Hz, 2H), 6.98 (dd, J = 8.7, 2.2 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.54 (d, J = 15.0 Hz, 2H), 6.39 - 6.15 (m, 6H), 6.11 (s, 2H), 2.38 (s, 6H), 2.07 - 1.95 (m, 10H), 1.70 (s, 6H), 1.63 - 1.51 (m, 4H), 1.50 - 1.40 (m, 4H), 1.03 (s, 12H).
ESI-MS: [M+H]+: 897.3
重量:879.1g.mol-1
式:C6064
【化15】
【0140】
7-ヒドロキシクマリンのエステル
これらのエステルは、DIPEAの存在下で7-ヒドロキシクマリンおよび酸塩化物から上記と同じ方法で調製した。
【0141】
7-ヒドロキシクマリンオクタノエート:
スケール2mmol、シリカゲル上のクロマトグラフィー(PE/EtOAc:70/30)による精製:収率92%。Mp 58-59°C;
【0142】
H NMR (300 MHz, DMSO) δ 8.08 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.77 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.26 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.15 (dd, J = 8.4, 2.2 Hz, 1H), 6.48 (d, J = 9.6 Hz, 1H), 2.61 (t, J = 7.4 Hz, 2H), 1.65 (s, 2H), 1.42 - 1.21 (m, 8H), 0.93 - 0.81 (m, 3H);
ESI-MS: [M+H]+: 289.1
重量:288.3g.mol-1
式:C1720
【化16】
【0143】
2.本発明による特異的基質の活性
材料および方法
細胞株
NCI-H522およびA549肺癌細胞ならびに白血病株を使用した。細胞は、American Type Culture Collection(ATCC)、European Cell Collection of Culture(ECACC)およびDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkultruren(DSMZ)から入手した。
【0144】
精製された異なるアイソザイムALDH1A1、ALDH2およびALDH3A1を用いたレゾルフィンプロピオネートのKmおよびVmaxの決定
50μlの0.1Mリン酸緩衝液pH6.00;0.2M KCl;2mM NADP +;2mM EDTAにおいて、250、200、150、125、100、90、80および70μMおよび0μMの範囲のレゾルフィンプロピオネートを製造した。2.5mU/ウェルALDH1A1(R&D Sytems、5869-DH)、ALDH2(abcam、ab87415)およびALDH3A1(R&D Sytems、6705-DH)の50μLの組換え酵素溶液を加えた。インキュベーションを+37℃で30分間行い、次いで蛍光読み取りを行った(Em:590nm、Ex:530nm)。次いで、データを放出されたレゾルフィン(nM.min-1μg-1)に変換し、GraphPad Prism 5.0を用いてミカエリス-メンテンの式を用いてKmおよびVmaxを計算した。
【0145】
ADLH1および3の特異的阻害剤による細胞の処理
96ウェルプレートにおいて、L-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシンを添加したフェノールレッドを含まないRPMI-1640培地、およびそれぞれ8μMの濃度でジメチルアンパルチオールエステル(DIMATE)、特異的阻害剤ALDH1および3、モルホリノアンパルチオールエステル(morpholino ampal thiolester)(MATE)、ALDH3の特異的阻害剤を添加した10%ウシ胎児血清(FCS)中に50,000細胞/ウェルの濃度で、HL-60細胞を接種した。6時間インキュベートした後、異なるALDHの基質を、それぞれALDH1についてはレゾルフィンプロピオネート、ALDH3についてはレゾルフィン4-ジエチルアミノベンゾエートを最終濃度10μMになるように添加し、次いで+37℃で1時間インキュベートした。次いでプレートをAppliskan蛍光プレートリーダー(ex=560nm、Em=600)を用いて読み取った。データは、同数の細胞によって生成された相対蛍光単位で表した。
【0146】
ジスルフィラム(DSF)による細胞の処理
96ウェルプレートにおいて、L-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシンを添加したフェノールレッドを含まないRPMI-1640培地、および250nMおよび1000nMの濃度でジスルフィラム(DSF)、ALDH活性の阻害剤を添加した10%ウシ胎児血清(FCS)中に50,000細胞/ウェルの濃度で、HL-60細胞を接種した。次いで細胞を1時間インキュベートした。インキュベーション後、異なるALDHの基質、ALDH1についてはレゾルフィンレチノエートおよびフルオレセインジ-レチノエート、ならびにALDH3についてはフルオレセインベンゾエートおよびフルオレセインジ-ベンゾエートを最終濃度5μMまで添加し、次いで+37℃で30分間インキュベートした。次いで、SpectraMax(登録商標)蛍光プレートリーダー、Molecular Devices(レゾルフィンについてはEx=560nm、Em=600nm、フルオレセインについてはex=485nm、em=535nm)を用いてプレートを読み取った。データは相対蛍光単位で表した。
【0147】
レチノイン酸による細胞の処理
96ウェルプレートにおいて、L-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシンを添加したフェノールレッドを含まないRPMI-1640培地、および1μMおよび10μMの濃度でレチノイン酸、知られたALDH活性の阻害剤を添加した10%ウシ胎児血清(FCS)中に50,000細胞/ウェルの濃度で、HL-60細胞を接種した。次いで細胞を72時間インキュベートした。インキュベーション後、異なるALDHの基質、ALDH1についてはレゾルフィンレチノエートおよびフルオレセインジ-レチノエート、ならびにALDH3についてはフルオレセインベンゾエートおよびフルオレセインジ-ベンゾエートを最終濃度5μMまで添加し、次いで+37℃で30分間インキュベートした。次いで、SpectraMax(登録商標)蛍光プレートリーダー、Molecular Devices(レゾルフィンについてはEx=560nm、Em=600nm、フルオレセインについてはEx=485nm、Em=535nm)を用いてプレートを読み取った。データは相対蛍光単位で表した。
【0148】
干渉RNA ALDH1A1による細胞の処理
L-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地、および10%ウシ胎児血清(FCS)中、37℃で一晩、60mmペトリ皿において、NCI-H522細胞を、40~50%の集合に相当する、250,000細胞/プレートの濃度で播種した。翌日、培地をFCSを含まない同じ培地と交換した。次いで、トランスフェクション溶液を、FCSを含まない500μLの培地中で100nMに希釈することによって調製し、これに、3μLのリポフェクタミン2000(Invitrogen)を添加した、FCSを含まない500μLの培地を加えた。次いで溶液を室温で30分間インキュベートし、次いで細胞溶液に滴下した。混合物を5%COインキュベーター中で+37℃で8時間インキュベートした。インキュベーション後、培地をFCSを添加した培地に変え、細胞を48時間培養液に置いた。タンパク質の阻害はウエスタンブロットによって確認された。次いでALDH1A1の比活性を蛍光によりアッセイした。
【0149】
レゾルフィンプロピオネートによるALDH1活性の測定
L-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシンを添加したフェノールレッドを含まないRPMI-1640培地、および10μMレゾルフィンプロピオネートを添加した10%ウシ胎児血清(FCS)を含む100μlの96ウェルプレート中に1×10細胞/ウェルの濃度で細胞を接種した。次に細胞を1時間インキュベートし、次にプレートをAppliskan蛍光プレートリーダー(ex=560nm、Em=600)を用いて読み取った。データは、同数の細胞によって生成された相対蛍光単位で表した。
【0150】
蛍光顕微鏡によるレゾルフィンプロピオネートとALDH1A1の二重局在
予めエタノールで洗浄してからウェルに入れた顕微鏡用ガラス付き24ウェルプレートに、NCI-H522細胞を50,000細胞/ウェルの細胞濃度で添加し、次いでL-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシンを添加したRPMI-1640培地、および10%ウシ胎児血清中で、5%CO雰囲気下、+37℃で一晩インキュベートした。翌日、培地をDIMATE(5μM)または処理ビヒクルのいずれかと交換し、そして6時間インキュベートした。細胞を、10μMのレゾルフィンプロピオネートを添加した培養培地で30分間インキュベートし、次いで冷PBSで洗浄し、次いでパラホルムアルデヒドで37℃で15分間固定した。細胞を透過処理し、PBS;3%ウシアルブミン;0.3%トリトンで1時間飽和させた。PBSで2つの工程の間に洗浄しつつ、抗ALDH1A1抗体(R&D System、MAB5869)と共に+37℃で1時間インキュベートした後、フルオレセインに結合した抗マウス抗体を用いて暗所で室温で1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、顕微鏡用ガラスにDAPIを添加した脱色防止支持体を取り付けた。次いで細胞を顕微鏡下で観察した。
【0151】
フローサイトメトリーによる陽性ALDH1細胞の識別
60mmペトリ皿中で、L-グルタミン、ペニシリン、ストレプトマイシンおよび10%ウシ胎児血清を添加したRPMI-1640培地で、5%CO雰囲気下、+37℃で一晩、500,000個の細胞をインキュベートした。陰性対照のために、細胞を、15μMのジメチルアンパルチオールエステル(Datime)、ALDH1および3の特異的阻害剤を添加した培地中に溶解し、次いで37℃、5%COで5時間インキュベートした。トリプシン処理後、細胞を添加RPMI培地に溶解し、そして800gで5分間遠心分離した。次いで細胞ペレットを10μMのレゾルフィンプロピオネートを含有する新鮮な添加培地に溶解し、次いでポリカーボネートチューブ中で37℃、5%COで1時間インキュベートした。インキュベーション後、次いで細胞を遠心分離し、次いで冷PBS×1で洗浄し、そして最後に200mLの冷PBS×1に溶解した。次に溶液をフローサイトメトリー(Ex 590nm/Em 560nmまたは赤色レーザー)によって分析した。
【0152】
結果
結果を図1~5に示す。
特に、図1は、レゾルフィンプロピオネートのKおよびVmaxを決定するために得られたデータを示す。結果をまた以下の表4に示す。
【表4】
【0153】
RNA干渉ALDH1A1で処理した後のレゾルフィンプロピオネートによるALDH1活性のアッセイの結果を図2に示し、これは、有意な(P<0.05)シグナルレゾルフィンプロピオネートの減少を誘発する100nMのsiRNAでALDH1A1の完全な阻害が観察されることを示す。
【0154】
ALDH1および3の阻害剤で処理した後のレゾルフィンプロピオネートによるALDH1活性の試験の結果を図3に示し、ALDH3の特異的阻害剤であるMATEとは異なり、DIMATE(ALDH1および3の阻害剤)で処理した後の蛍光の有意な阻害(P <0.001)を示す。
【0155】
さらに、レゾルフィンプロピオネートの、赤色に蛍光を発する分子であるレゾルフィンへの変換は、蛍光顕微鏡により検出された。反応はALDH1の阻害剤であるDIMATEによって阻害され、基質の特異性を示す(結果は示さず)。さらに、レゾルフィンプロピオネートの蛍光シグナルはALDH1A1と共局在化することができることは、酵素との比活性を示唆している(結果は示さず)。
【0156】
図4は、レゾルフィンプロピオネートによるフローサイトメトリーにより検出されたALDH1活性を示す。未処理の状態は、陽性ALDH1生細胞(Calcein-AM)の存在を実証する。
【0157】
ALDH1の阻害剤であるDIMATEの存在下では、処理により、生細胞について陽性のALDH1細胞阻害ならびに生存率の低下が観察される。
【0158】
レチノイン酸処理後のレゾルフィンレチノエートおよびフルオレセインジ-レチノエートによるALDH1活性、ならびにレゾルフィンベンゾエートおよびフルオレセインジ-ベンゾエートによるALDH3活性の試験の結果を図5に示し、これは、レゾルフィンレチノエートおよびフルオレセインジ-レチノエートについてのALDH1、ならびにレゾルフィンおよびフルオレセインジ-ベンゾエートのベンゾエートについてのALDH3の有意な(P<0.001)または(P<0.01)レベルの活性阻害を示す。
【0159】
250nMおよび1000nMの両方の濃度でのDSFの存在下で、レゾルフィンレチノエートおよびフルオレセインジ-レチノエートについてのALDH1活性ならびにレゾルフィンベンゾエートおよびフルオレセインジ-ベンゾエートについてのALDH3の有意な(P<0.001)阻害が図6に示される。
【0160】
3.基質の使用の応用
材料および方法
患者
骨髄(Mo)と血液(Sg)は啓発されたコード(enlightened chord)を持つ33人の患者から得られた。評価は、赤血球または骨髄の溶解後に全血で実施した。
【0161】
芽細胞の単離ならびにALDH1およびALDH3活性の評価
芽細胞の単離は、表5に示す後者の表現型(CD34+、CD117+またはCD45弱)に従ってNaviosフローサイトメーター(Beckman Coulter(登録商標))によって実施した。
【0162】
赤血球溶解後の血中総量または骨髄抽出液中、37℃で30分間、試薬:5μmol.L-1のレゾルフィンレチノエートまたはレゾルフィンオクタノエート、および0.8μmol.L-1のフルオレセインジ-レチノエートまたはフルオレセインジオクタノエートをインキュベートすることにより、ALDH1およびALDH3活性を評価した。観察された蛍光をサイトメトリーによって分析し、芽細胞の各ALDHアイソフォームの相対活性に対応中央蛍光強度(MFI)の値を得ることを可能にする。
【0163】
結果
結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0164】
(付記)
(付記1)
(a)対応酸RCOOHから誘導されたアシル化剤との蛍光トレーサーA-OHのエステル化から生じる式(I)R-COO-A(I)の化合物(式中、Rはレチノエート、プロピオネート、オクタノエート、ベンゾエート、4-アミノブチレート、ヘキサノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートもしくは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートを形成するために選択される)、または、
(b)式(II)の化合物
【化17】
(式中、同一のまたは異なるRおよびR’は、レチノエート、プロピオネート、オクタノエート、ベンゾエート、4-アミノブチレート、ヘキサノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートもしくは4-ヒドロキシ-2-ノネノエートを形成するために選択される)、
を含む、ALDHアイソザイムの特異的基質。
【0165】
(付記2)
A-OHは、7-ヒドロキシクマリン、トーキョーグリーンファミリーの発蛍光団、特に2-メチル-4-メトキシ-トーキョーグリーン(Tokyo Green)、レゾルフィンおよびフルオレセインから選択されることを特徴とする、付記1に記載の特異的基質。
【0166】
(付記3)
前記ALDHアイソザイムは、ALDH1であり、式中、同一のまたは異なるRおよびR’は、レチノエート、ヘキサノエートまたはプロピオネートを形成するために選択されることを特徴とする、付記1または2に記載の特異的基質。
【0167】
(付記4)
前記ALDHアイソザイムは、ALDH3であり、式中、同一のまたは異なるRおよびR’は、オクタノエート、4-ヒドロキシ-2-ノネノエート、4-ジエチルアミノベンゾエートまたはベンゾエートを形成するために選択されることを特徴とする、付記1または2に記載の特異的基質。
【0168】
(付記5)
前記ALDHアイソザイムは細胞集団で検出されることを特徴とする、付記1~4のいずれか1つに記載の特異的基質。
【0169】
(付記6)
付記1~5のいずれか1つに記載の少なくとも1つの特異的基質を含む組成物。
【0170】
(付記7)
付記1~5のいずれか1つに記載の特異的基質を含む診断マーカー。
【0171】
(付記8)
細胞集団中の少なくとも1つのALDHアイソザイムを定量するための、付記1~5のいずれか1つに記載の少なくとも1つの特異的基質の使用。
【0172】
(付記9)
少なくとも1つのALDHアイソザイムの発現に従って細胞集団の全部または一部を選別するための、付記1~5のいずれか1つに記載の少なくとも1つの特異的基質の使用。
【0173】
(付記10)
ALDHアイソザイムのデレギュレーションを伴う疾患の診断のための付記7に記載のマーカーの使用。
【0174】
(付記11)
前記疾患が、癌、精子運動障害、虚血、頭部外傷または膵炎の中から選択される、付記10に記載の使用。
【0175】
(付記12)
対象がALDHアイソザイムの活性を阻害する療法および/または癌幹細胞に対する療法に応答することができるかどうかを決定するための、付記7に記載のマーカーの使用。
【0176】
(付記13)
健常な幹細胞を癌幹細胞と区別するための、付記1から5のいずれか1つに記載の少なくとも1つの特異的基質の使用。
【0177】
(付記14)
幹細胞を固形癌および/または血液悪性腫瘍と区別するための付記13に記載の使用。
【0178】
(付記15)
癌の異なる段階または幹細胞の分化の異なる段階を特徴付けるための、付記1~5のいずれか1つに記載の少なくとも1つの特異的基質の使用。
【0179】
(付記16)
細胞集団において少なくとも1つのALDHアイソザイムを発現している細胞を識別する方法であって、
(a)前記細胞集団を付記1~5のいずれか1つに記載の少なくとも1つの特異的基質と接触させること、
(b)前記細胞集団の蛍光を測定すること、および、
(c)この集団が前記少なくとも1つの特異的基質と接触させられる前の前記細胞集団の蛍光と比較して増加した蛍光を有する細胞を識別すること、
を含む、方法。
【0180】
(付記17)
付記1~5のいずれか1つに記載の少なくとも1つの特異的基質を含むALDHアイソザイムを定量化するためのキット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6