(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】高められた抗乳化性能を有する官能性ポリアルキル(メタ)アクリレート
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20220401BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20220401BHJP
C10M 101/02 20060101ALN20220401BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20220401BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20220401BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220401BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20220401BHJP
【FI】
C10M145/14
C10M169/04
C10M101/02
C10N40:08
C10N20:04
C10N30:00 B
C10N40:00 A
(21)【出願番号】P 2019508175
(86)(22)【出願日】2017-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2017070185
(87)【国際公開番号】W WO2018033449
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-05-12
(32)【優先日】2016-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ユアゲン ゲープハート
(72)【発明者】
【氏名】カトリン シェラー
(72)【発明者】
【氏名】フランク-オーラフ メーリング
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/076103(WO,A1)
【文献】特開平04-270796(JP,A)
【文献】特開平07-102023(JP,A)
【文献】特開2013-124266(JP,A)
【文献】特表2001-524578(JP,A)
【文献】特開2012-041407(JP,A)
【文献】特開2011-021090(JP,A)
【文献】特開2004-124080(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101245240(CN,A)
【文献】特開2015-038194(JP,A)
【文献】特開2009-166122(JP,A)
【文献】特開2000-326439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーであって、
(a)0質量%~8質量%のメチル(メタ)アクリレート;
(b)1.5質量%~4.5質量%のヒドロキシル置換C
2~4アルキ
ルメタアクリレート;および
(c)87.5質量%~98.5質量%のC
12~18アルキ
ルメタアクリレート
からなり、ここで、
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、30000~130000g/molの範囲内の質量平均分子量M
wを有する、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項2】
(a)2質量%~8質量%のメチル(メタ)アクリレート;
(b)1.9質量%~4.0質量%のヒドロキシル置換C
2~4アルキ
ルメタアクリレート;および
(c)88.0質量%~96.1質量%のC
12~18アルキ
ルメタアクリレート
からなる、請求項1に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項3】
前記ヒドロキシル置換C
~42
アルキ
ルメタアクリレートが、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項4】
40000~95000g/molの範囲内の質量平均分子量M
wを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー。
【請求項5】
添加剤組成物であって、
(A)APIグループII油およびAPIグループIII油およびそれらの混合物からなる群から選択される、無極性基油、および
(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを含み、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、
(a)0質量%~8質量%のメチル(メタ)アクリレート;
(b)1.5質量%~4.5質量%のヒドロキシル置換C
2~4アルキ
ルメタアクリレート;および
(c)87.5質量%~98.5質量%のC
12~18アルキ
ルメタアクリレート
からなり、
ここで、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーが、30000~130000g/molの範囲内の質量平均分子量M
wを有する、
前記添加剤組成物。
【請求項6】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)が、
(a)2質量%~8質量%のメチル(メタ)アクリレート;
(b)1.9質量%~4.0質量%のヒドロキシル置換C
2~4アルキ
ルメタアクリレート;および
(c)88.0質量%~96.1質量%のC
12~18アルキ
ルメタアクリレート
からなる、請求項5に記載の添加剤組成物。
【請求項7】
前記組成物の全質量を基準として、成分(A)が、20質量%~45質量%の量で存在し、かつ前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)が、55質量%~80質量%の量で存在する、請求項5または6に記載の添加剤組成物。
【請求項8】
前記組成物の全質量を基準として、成分(A)が、25質量%~40質量%の量で存在し、かつ前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)が、60質量%~75質量%の量で存在する、請求項5または6に記載の添加剤組成物。
【請求項9】
成分(b)の前記ヒドロキシル置換C
2~4アルキ
ルメタアクリレートが、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)であることを特徴とする、請求項5~8のいずれか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項10】
潤滑油組成物であって、
(A)APIグループII油およびAPIグループIII油およびそれらの混合物からなる群から選択される、無極性基油84質量%~97質量%;
(B)次のもの
からなる、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー3質量%~16質量%:
(a)0質量%~8質量%のメチル(メタ)アクリレート;
(b)1.5質量%~4.5質量%のヒドロキシル置換C
2~4アルキ
ルメタアクリレート;および
(c)87.5質量%~98.5質量%のC
12~18アルキ
ルメタアクリレート、
ここで、前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、30000~130000g/molの範囲内の質量平均分子量M
wを有する;および
(C)任意に1種以上のさらなる添加剤
を含む、前記潤滑油組成物。
【請求項11】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー(B)が、
(a)2質量%~8質量%のメチル(メタ)アクリレート;
(b)1.9質量%~4.0質量%のヒドロキシル置換C
2~4アルキ
ルメタアクリレート;および
(c)88.0質量%~96.1質量%のC
12~18アルキ
ルメタアクリレート
からなる、請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
成分(b)の前記ヒドロキシル置換C
2~4アルキ
ルメタアクリレートが、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)であることを特徴とする、請求項10または11に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
前記の1種以上のさらなる添加剤(C)が、流動点降下剤、分散剤、消泡剤、清浄剤、抗乳化剤、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、色素およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10~12のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
無極性基油をベースとする高VI潤滑油組成物の抗乳化性能を同時に向上させる粘度指数(VI)向上剤としての、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの使用。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを適用することによって、無極性基油をベースとする潤滑油組成物のVIおよび抗乳化性能を向上させる方法。
【請求項16】
無極性基油をベースとする高VI潤滑油組成物の抗乳化性能を同時に向上させる粘度指数(VI)向上剤としての、請求項5~9のいずれか1項に記載の添加剤組成物の使用。
【請求項17】
請求項5~9のいずれか1項に記載の添加剤組成物を適用することによって、無極性基油をベースとする潤滑油組成物のVIおよび抗乳化性能を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定量のヒドロキシル官能化アルキル(メタ)アクリレートを含む、新規なポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMA)ポリマー、これらのポリマーを含む潤滑油組成物および無極性基油、殊に作動液組成物をベースとする高VI潤滑油組成物の抗乳化性能を向上させるためのそれらの使用に関する。
【0002】
抗乳化性としても知られる、水と油とが分離する能力は、多くの工業用油における重要な因子である。油中の水の作用は、機械表面に極めて不利益でありうるものであり、かつ機械寿命を大いに低下させうる。この油特性は、殊に水の進入が普通である領域(例えば蒸気タービン、抄紙機等)において、しっかりと監視しなければならない。
【0003】
油中の水には3つの状態がある:溶解、遊離および乳化。溶解した水は、その分子が該油全体に1個ずつ分散される場合に生じる。該油中の水の量が増加するにつれて、エマルション、または該油中に懸濁された水、ついで遊離水が見え始める。遊離水は、該油から分離し、かつ沈降する水である。これは、油受またはリザーバーの底部に典型的に見出される。
【0004】
油中の水汚染は、多数の問題を引き起こしうる。これは、金属部品の深刻な腐食および油膜による機械類の不十分な保護をまねきうる。水は、配合物において使用される基油および性能パッケージへの不利な影響も与えうる。該油状混合物の老化は加速されうる。性能成分は、水との反応により失活するかもしれず、この結果は腐食および摩耗に対するポンプの不十分な保護となる。
【0005】
ところで驚くべきことに、所定量のヒドロキシル官能化アルキル(メタ)アクリレートを含むポリアルキル(メタ)アクリレート系粘度指数向上剤が、特定のクラスの基油をベースとする潤滑油組成物において添加剤として使用される場合に、優れた抗乳化特性をもたらすことが見出された。
【0006】
ポリアルキル(メタ)アクリレート(PAMA)は、極性官能基を有するモノマーとの共重合またはグラフト化により官能化することができ、かつポリマー分散剤機能を得るために普通に使用される。分散性は、すすおよび汚れが機械要素上に沈降するか、またはフィルターを閉塞させるのを避けるために、潤滑剤においてしばしば必要な特徴である。
【0007】
分散剤は、極性粒子を吸着することができる極性基と、分子を油溶性にする無極性部分とを有する分子である。PAMAは、優れた油溶性を提供し、かつ粘度指数向上剤として有意な量で潤滑剤配合物において使用される。これらの状況により、分散剤機能を付加するために、極性官能基を該PAMAへ導入することは大いに魅力的なものとなる。
【0008】
ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーへ分散剤機能を導入するのに使用することができるモノマーは通常、窒素官能基、例えばN-ビニルピロリドン(NVP)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMAm)またはジメチルアミノエチルメタクリルアミン(DMAEMA)を含有するが、しかし、OH官能基を有するモノマー、例えばヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)またはヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)も使用することができる。アミノ官能基は通常、優れた分散性能を提供する一方で、OH官能基は、該ポリマーの粘度指数(VI)性能を増強する性能成分としても作用する。
【0009】
国際公開第2011/006755号(WO 2011/006755)は、転がり軸受け、歯車等の転がり接触または転がり滑り接触系に用いられる潤滑油組成物に関する。そこに記載された潤滑油組成物は、基油(A)および水酸基付加ポリ(メタ)アクリレート(B)を含む。該水酸基付加ポリ(メタ)アクリレート(B)は、炭素原子数1~20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと水酸基含有ビニル単量体とを必須の構成単量体とする共重合体である。2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2-または3-ヒドロキシプロピルメタクリレートは、少なくとも5%の量で存在しなければならないことが挙げられる。
【0010】
米国特許出願公開第2004/0077509号明細書(US 2004/0077509 A1)は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する不飽和モノマー(c)の単位5~50質量%を含むコポリマー(A)を含む、粘度指数向上剤に関する。そのようなモノマー(c)は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)であってよい。
【0011】
国際公開第2010/142668号(WO 2010/142668 A1)は、基油と、構造中に水酸基を有し、かつヒドロキシル価が22~37であるPAMAを含有するVI向上剤とを含む、水分の親和性に優れた潤滑油組成物に関する。HEMAおよびHPMA(モノマー(b))は、5~50質量%の量で存在することが挙げられている。
【0012】
国際公開第2008/053033号(WO 2008/053033)には、メチルメタクリレート(成分(a1))と、OH基を有する(メタ)アクリレート(成分(b))とを含むポリアルキル(メタ)アクリレートを含む、潤滑油組成物、特に変速機油が記載されている。2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2-または3-ヒドロキシプロピルメタクリレートは、好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして、少なくとも5%の量で存在しなければならないことが挙げられる。
【0013】
欧州特許出願公開第0569639号明細書(EP 0 569 639 A1)は、フルオロポリマーシールおよびガスケットに不利な影響を及ぼすことなく、粘度指数向上、分散性および低温性能特性を提供するために、潤滑油への添加剤として有用である、アルキルメタクリレート(成分(a))およびヒドロキシル(C2~6)アルキルメタクリレート(成分(b))に由来するポリマーに関する。
【0014】
欧州特許出願公開第0570093号明細書(EP 0 570 093 A1)は、フルオロポリマーシールおよびガスケットに不利な影響を及ぼすことなく、向上されたエンジン清浄度および低温性能特性を提供するための、潤滑油への無灰分散添加剤として有用である、(a)(C1~C24)-アルキル(メタ)アクリレートから選択される1種以上のモノマーおよび(b)(C2~C6)アルキルメタクリレートおよびヒドロキシ(C2~C6)アルキルメタクリレートから選択される1種以上のモノマーに由来するポリマーに関する。
モノマー(b)は、HEMAであってよく、かつ10~約30質量%の量で存在していなければならない。
【0015】
米国特許第5851967号明細書(US 5,851,967)は、潤滑油用の分散性VI向上添加剤に関する。
グラフトポリマーが、1種以上の(C1~C24)アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来するポリマー主鎖92~98質量%および1種以上のヒドロキシル(C1~C8)アルキル(メタ)アクリレートに由来しているグラフト枝2~8質量%を含むことが記載されている。HEMAおよびHPMAは、好ましいモノマーとして挙げられる。
【0016】
米国特許第6409778号明細書(US 6,409,778 B1)は、ディーゼル燃料およびバイオディーゼル用の添加剤として適している、2~30質量%の1種以上の酸素含有メタクリレートを含むコポリマーに関する。そのような酸素含有メタクリレートは、HEMAまたはHPMAであってよい。示された実施例は、5質量%よりも多いHEMAまたはHPMAからなる。
【0017】
従来技術に開示されたポリアルキル(メタ)アクリレートの特性は、作動液におけるそれらの使用に関して、殊にそれらの抗乳化特性に関して、依然として満足のいくものではないので、本発明の目的は、無極性基油、殊に作動液組成物をベースとする潤滑油組成物の優れた抗乳化性能をもたらす、ポリアルキル(メタ)アクリレートを提供することであった。
【0018】
作動液のためには、分散剤PAMAは、特殊な用途においてのみ使用される。このための理由の1つは、分散剤が、界面活性剤構造を有し、多くの規格、例えばISO 11158、DIN 51524-3およびAFNOR NF E 48-603に従う作動液の要件である油と水との分離を妨げることである。
【0019】
PAMAの極性が高まるほど、その抗乳化性能にはますます不利な影響が及ぼされるが、しかしこれは抗乳化剤をその配合物に添加することにより、ある程度まで制御することが可能である。しかしながら、分散剤としての性能に必要であるような、極めて極性の基を有するPAMAを使用することは一般に、油配合物の抗乳化性能を駄目にする。
【0020】
ところで驚くべきことに、少量のヒドロキシル官能化コモノマー、例えばHEMAが、APIグループII/IIIおよびIVからの無極性基油をベースとする配合物において全く逆の作用を有することが見出された。そのようなポリマーは、非OH官能化PAMAよりも、一段と良好な抗乳化性能を示す。このようにして、潤滑剤配合物における機能および良好な抗乳化性能を大いに効率的な方法で併せ持つことが可能である。
【0021】
この作用を達成するためには、OH官能化モノマーを少量使用することができるに過ぎず、かつその他の極性モノマー、例えばメチル(メタ)アクリレートおよびブチル(メタ)アクリレートとの細心のバランスを取らなければならない。
【0022】
したがって、本発明の第一の対象は、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーに関し、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、
(a)0質量%~10質量%、好ましくは0質量%~8質量%、およびより好ましくは2質量%~8質量%のメチル(メタ)アクリレート;
(b)1.5質量%~4.5質量%、好ましくは1.9質量%~4.0質量%の、ヒドロキシル置換C2~4アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)またはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HPMA)、より好ましくはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);および
(c)85.5質量%~98.5質量%、好ましくは87.5質量%~98.5質量%、およびより好ましくは88.0質量%~96.1質量%の、C6~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC12~18アルキル(メタ)アクリレートを含み、ここで、
該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの質量平均分子量Mwは、30000~130000g/molの範囲内である。
【0023】
成分(a)~(c)の特定される質量割合は、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの全質量を基準としている。
【0024】
好ましい実施態様において、成分(a)~(c)の割合は、合計100質量%になる。
【0025】
用語“(メタ)アクリレート”は、アクリル酸のエステル、メタクリル酸のエステルまたはアクリル酸およびメタクリル酸のエステルの混合物をいう。メタクリル酸のエステルが好ましい。
【0026】
ヒドロキシル置換C2~4アルキル(メタ)アクリレート(b)の例は、そのアルキル基中に1つ以上のヒドロキシル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、殊に、該ヒドロキシル基が該アルキル基中のβ位(2位)に見出されるものである。置換アルキル基が分岐状または非分岐状のC2~6アルキルであるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。本発明における使用に適したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーの中では、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、1-メチル-2-ヒドロキシエチルアクリレート、1-メチル-2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレートおよび2-ヒドロキシブチルメタクリレートである。好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、1-メチル-2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2-ヒドロキシプロピルメタクリレートである。最後の2種のモノマーの混合物は、普通に“ヒドロキシプロピルメタクリレート”またはHPMAといい、これは、該HPMAの成分のそれぞれよりも好ましいヒドロキシアルキルメタクリレートである。本発明によれば、最も好ましいヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、HEMAである。
【0027】
本発明に従った使用のためのC6~30アルキル(メタ)アクリレート(成分(c))は、(メタ)アクリル酸と、炭素原子6~30個を有するアルコールとのエステルである。用語“C6~30アルキル(メタ)アクリレート”は、特定の長さのアルコールとの個々の(メタ)アクリル酸エステル、および同様に異なる長さのアルコールとの(メタ)アクリル酸エステルの混合物を包含する。
【0028】
適したC6~30アルキル(メタ)アクリレートは、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-tert-ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、5-メチルウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2-メチルドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、5-メチルトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-メチルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、5-イソプロピルヘプタデシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルオクタデシル(メタ)アクリレート、5-エチルオクタデシル(メタ)アクリレート、3-イソプロピルオクタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、セチルエイコシル(メタ)アクリレート、ステアリルエイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレートおよび/またはエイコシルテトラトリアコンチル(メタ)アクリレートを包含する。
【0029】
特に好ましいC6~30アルキル(メタ)アクリレートは、線状C12~14アルコール混合物のメタクリル酸エステル(C12~14アルキルメタクリレート)、線状C16~18アルコール混合物のメタクリル酸エステル(C16~18アルキルメタクリレート)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの質量平均分子量Mwは、好ましくは40000~100000g/mol、より好ましくは40000~95000g/mol、およびよりいっそう好ましくは50000~70000g/molの範囲内である。
【0031】
好ましくは、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、1~4の範囲内、より好ましくは1.5~3の範囲内の多分散指数(PDI)Mw/Mnを有する。
【0032】
MwおよびMnは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、商業的に入手可能なポリメタクリル酸メチル(PMMA)標準を用いて決定される。該決定は、ゲル浸透クロマトグラフィーによりTHFを溶離液として用いて行われる。
【0033】
本発明は、その他の官能性ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーに比べて、無極性基油をベースとする高VI潤滑油組成物の抗乳化性能を同時に向上させる、粘度指数(VI)向上剤としての上記の官能性ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの使用にも関する。
【0034】
無極性基油は、APIグループII、IIIおよびIV基油およびそれらの混合物を含み;好ましくは、APIグループII油およびAPIグループIII油およびそれらの混合物である。
“高VI”は、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを包含する潤滑油組成物が、150~250の範囲内、好ましくは170~200の範囲内のVIを有することを意味する。
【0035】
本発明はさらに、上記のようなポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを適用することによって、無極性基油をベースとする潤滑油組成物、殊に作動液組成物のVIおよび抗乳化性能を向上させる方法に関する。
【0036】
好ましくは、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを使用することによって、対応する潤滑油組成物のVIは、150~250の範囲内、好ましくは170~200の範囲内である一方で、前記潤滑油組成物の水層と油層とに分離する時間(time to demulse)は、9分以下、好ましくは5分以下である。
【0037】
本発明の第二の対象は、添加剤組成物に関し、該添加剤組成物は、
(A)無極性基油、および
(B)ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを含み、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、
(a)0質量%~10質量%、好ましくは0質量%~8質量%、およびより好ましくは2質量%~8質量%の、メチル(メタ)アクリレート;
(b)1.5質量%~4.5質量%、好ましくは1.9質量%~4.0質量%の、ヒドロキシル置換C1~4アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)またはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HPMA)、より好ましくはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);および
(c)85.5質量%~98.5質量%、好ましくは87.5質量%~98.5質量%、およびより好ましくは88.0質量%~96.1質量%の、C6~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC12~18アルキル(メタ)アクリレートを含み、
ここで、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの質量平均分子量Mwは、30000~130000g/molの範囲内である。
【0038】
成分(A)および(B)の特定される質量割合は、該添加剤組成物の全質量を基準としている。好ましい実施態様において、成分(A)および(B)の割合は、合計100質量%になる。
【0039】
成分(a)~(c)の特定される質量割合は、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの全質量を基準としている。好ましい実施態様において、成分(a)~(c)の割合は、合計100質量%になる。
【0040】
該添加剤組成物において使用されうる無極性基油は、好ましくは、APIグループII油、APIグループIII油、APIグループIV油およびそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、APIグループII油およびAPIグループIII油およびそれらの混合物である。
【0041】
アメリカ石油協会(API)は現在、潤滑剤基油の5つのグループを定義する(API刊行物1509)。グループI、IIおよびIIIは鉱油であり、それらが含有する飽和分および硫黄の量とそれらの粘度指数とによって分類される。以下の表は、これらのAPI分類をグループI、IIおよびIIIについて説明する。
【表1】
【0042】
グループI基油は、溶剤精製された鉱油であり、製造に最も費用がかからない基油であり、現在、基油販売の大部分を占めている。それらは、満足のいく酸化安定性、揮発性、低温性能およびトラクション特性を提供し、かつ添加剤および汚染物質について極めて良好な溶解力を有する。
グループII基油は、主に水素化処理された鉱油であり、グループI基油に比べて、向上された揮発性および酸化安定性を典型的に提供する。
グループIII基油は、高度水素化処理された鉱油であるか、またはそれらは、ワックスまたはパラフィン異性化によって製造することができる。それらは、グループIおよびII基油よりも良好な酸化安定性および揮発性を有するが、しかし商業的に入手可能な粘度の限られた範囲を有することが知られている。
【0043】
グループIV基油は、それらが例えばポリα-オレフィン(PAO)を含む合成基油である点で、グループI、IIおよびIIIとは相違する。PAOは、良好な酸化安定性、揮発性および低い流動点を有する。欠点は、極性添加剤、例えば耐摩耗添加剤の中程度の溶解性を包含する。
【0044】
グループII、IIIおよびIV油は、酸化および高温に対するそれらの並外れた安定性について知られているが、しかし、それらは、極性添加剤、例えば摩擦調整剤について限られた溶解性のみを提供する。
【0045】
より好ましくは、本発明に従った使用のための基油は、アメリカ石油協会により定義されるようなグループII、IIIまたはIV油またはそれらの混合物である。それというのも、本発明のコポリマーと、グループII、IIIまたはIV油またはそれらの混合物との組み合わせが、本発明による高VI潤滑油配合物、殊に作動油配合物の並外れた抗乳化性能をもたらすからである。
グループII基油は、80~120のASTM D2270に従う粘度指数、少なくとも90%のASTM D 2007に従う飽和化合物の割合および0.03%以下の規格ASTM D1552、D2622、D3120、D4294およびD4927のうちの1つに従う硫黄含量を有する。それらは、水素化分解によりしばしば製造される。グループIII油は、少なくとも120のASTM D2270に従う粘度指数、少なくとも90のASTM D 2007に従う飽和化合物の割合および0.03%以下の規格ASTM D1552、D2622、D3120、D4294およびD4927のうちの1つに従う硫黄含量を有する。グループIV基油は、ポリα-オレフィン(PAO)である(API 1509、附属書E - API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils、2011年9月)。
該潤滑剤配合物を製造するのに使用される適切な無極性基油の100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従い、好ましくは3mm2/s~10mm2/sの範囲内、より好ましくは4mm2/s~8mm2/sの範囲内である。
【0046】
さらに、本発明に従って使用することができる無極性基油は、グループII~IIIのフィッシャー-トロプシュ由来の基油である。
フィッシャー-トロプシュ由来の基油は、当該技術において公知である。用語“フィッシャー-トロプシュ由来の”は、基油が、フィッシャー-トロプシュ法の合成生成物であるか、またはそれに由来していることを意味する。フィッシャー-トロプシュ由来の基油は、GTL(ガス液化)基油ということもある。本発明の潤滑組成物中の基油として好都合に使用されうる、適したフィッシャー-トロプシュ由来の基油は、例えば、欧州特許出願公開第0776959号明細書(EP 0 776 959)、欧州特許出願公開第0668342号明細書(EP 0 668 342)、国際公開第97/21788号(WO 97/21788)、国際公開第00/15736号(WO 00/15736)、国際公開第00/14188号(WO 00/14188)、国際公開第00/14187号(WO 00/14187)、国際公開第00/14183号(WO 00/14183)、国際公開第00/14179号(WO 00/14179)、国際公開第00/08115号(WO 00/08115)、国際公開第99/41332号(WO 99/41332)、欧州特許出願公開第1029029号明細書(EP 1 029 029)、国際公開第01/18156号(WO 01/18156)、国際公開第01/57166号(WO 01/57166)および国際公開第2013/189951号(WO 2013/189951)に開示されたようなものである。
【0047】
本発明の添加剤組成物は好ましくは、該添加剤組成物の全質量を基準として、基油(成分(A))を20質量%~45質量%、好ましくは25質量%~40質量%含む。
【0048】
該添加剤組成物中の該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー(成分(B))の濃度は、該添加剤組成物の全質量を基準として、好ましくは55質量%~80質量%の範囲内、より好ましくは60質量%~75質量%の範囲内である。
【0049】
特別な実施態様において、成分(A)および(B)の割合は、合計100質量%になる。
【0050】
本発明はさらに、その他の官能性ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーに比べて、無極性基油をベースとする高VI潤滑油組成物の抗乳化性能を同時に向上させる、粘度指数(VI)向上剤としての上記の添加剤組成物の使用に関する。
無極性基油は、APIグループII、IIIおよびIV基油を含む。
【0051】
“高VI”は、本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを包含する潤滑油組成物が、150~250の範囲内、好ましくは170~200の範囲内のVIを有することを意味する。
【0052】
本発明はさらに、上記のような添加剤組成物を適用することによって、無極性基油をベースとする潤滑油組成物、殊に作動液組成物のVIおよび抗乳化性能を向上させる方法に関する。
【0053】
好ましくは、無極性基油をベースとする潤滑油組成物に上記の添加剤組成物を適用することによって、対応する最終配合物は、30分未満、好ましくは9分未満の水層と油層とに分離する時間を有する。
【0054】
本発明の第三の対象は、潤滑油組成物に関し、該潤滑油組成物は、
(A)無極性基油84質量%~97質量%;
(B)以下のものを含む、ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー3質量%~16質量%:
(a)0質量%~10質量%、好ましくは0質量%~8質量%、およびより好ましくは2質量%~8質量%の、メチル(メタ)アクリレート;
(b)1.5質量%~4.5質量%、好ましくは1.9質量%~4.0質量%の、ヒドロキシル置換C1~4アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)またはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(HPMA)、より好ましくはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);および
(c)85.5質量%~98.5質量%、好ましくは88.0質量%~96.1質量%の、C6~30アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC12~18アルキル(メタ)アクリレート、
ここで、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーは、30000~130000g/molの範囲内の質量平均分子量Mwを有する;および
(C)任意に1種以上のさらなる添加剤を含む。
【0055】
該潤滑油組成物において使用されうる無極性基油は、好ましくは、APIグループII油、APIグループIII油、APIグループIV油およびそれらの混合物からなる群から選択され;好ましくは、APIグループII油およびAPIグループIII油およびそれらの混合物である。
【0056】
成分(A)~(C)の特定される質量割合は、該潤滑油組成物の全質量を基準としている。好ましい実施態様において、成分(A)~(C)の割合は、合計100質量%になる。
【0057】
成分(a)~(c)の特定される質量割合は、該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの全質量を基準としている。好ましい実施態様において、成分(a)~(c)の割合は、合計100質量%になる。
【0058】
本発明の潤滑油組成物は、該添加剤組成物の全質量を基準として、好ましくは、無極性基油(成分(A))92質量%~96質量%および該ポリアルキル(メタ)アクリレートポリマー(成分(B))4~8質量%を含む。
【0059】
本発明による潤滑油組成物は、成分(C)として、流動点降下剤、分散剤、消泡剤、清浄剤、抗乳化剤、酸化防止剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、色素およびそれらの混合物からなる群から選択される、さらなる添加剤を含有していてもよい。
【0060】
好ましい流動点降下剤は、例えば、アルキル化ナフタレンおよびフェノール系ポリマー、ポリアルキルメタクリレート、マレエートコポリマーエステルおよびフマレートコポリマーエステルからなる群から選択され、これらは好都合には効果的な流動点降下剤として使用されうる。該潤滑組成物は、流動点降下剤0.1質量%~0.5質量%を含有していてよい。好ましくは、流動点降下剤0.3質量%以下が使用される。
【0061】
適切な分散剤は、ポリ(イソブチレン)誘導体、例えば、ホウ素変性PIBSIを含め、ポリ(イソブチレン)スクシンイミド(PIBSI);およびN/O官能基を有するエチレン-プロピレンオリゴマーを包含する。
【0062】
適した消泡剤は、例えば、シリコーン油、フルオロシリコーン油、およびフルオロアルキルエーテルを包含する。
【0063】
好ましい清浄剤は、金属含有化合物、例えばフェノキシド;サリチレート;チオホスホネート、殊にチオピロホスホネート、チオホスホネートおよびホスホネート;スルホネートおよびカーボネートを包含する。金属として、これらの化合物は、殊にカルシウム、マグネシウムおよびバリウムを含有していてよい。これらの化合物は、好ましくは、中性型または過塩基性型で使用されてよい。
【0064】
好ましい抗乳化剤は、アルキレンオキシドコポリマーおよび極性官能基を有する(メタ)アクリレートを包含する。
【0065】
適した酸化防止剤は、例えば、フェノール類、例えば2,6-ジ-tert-ブチルフェノール(2,6-DTB)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、4,4′-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);芳香族アミン、殊にアルキル化ジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン(PNA)、ポリメリック2,2,4-トリメチルジヒドロキノン(TMQ);硫黄およびリンを含有する化合物、例えば金属ジチオホスフェート、例えば亜鉛ジチオホスフェート(ZnDTP)、“OOSトリエステル”=ジチオリン酸と、オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α-ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルからの活性化された二重結合との反応生成物(燃焼時に無灰);有機硫黄化合物、例えばジアルキルスルフィド、ジアリールスルフィド、ポリスルフィド、変性チオール、チオフェン誘導体、ザンテート、チオグリコール、チオアルデヒド、硫黄含有カルボン酸;複素環状硫黄/窒素化合物、殊にジアルキルジメルカプトチアジアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール;亜鉛ビス(ジアルキルジチオカルバメート)およびメチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート);有機リン化合物、例えばトリアリールおよびトリアルキルホスフィット;有機銅化合物および過塩基性のカルシウムおよびマグネシウム系のフェノキシドおよびサリチレートを包含する。
【0066】
好ましい耐摩耗および極圧添加剤は、リン化合物、例えばトリアルキルホスフェート、トリアリールホスフェート、例えばトリクレジルホスフェート、アミン中和モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、エトキシル化モノアルキルおよびジアルキルホスフェート、ホスフィット、ホスホネート、ホスフィン類;硫黄およびリンを有する化合物、例えば金属ジチオホスフェート、例えば亜鉛ジ-C3~12-アルキルジチオホスフェート(ZnDTP)、アンモニウムジアルキルジチオホスフェート、アンチモンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、鉛ジアルキルジチオホスフェート、“OOSトリエステル”=ジチオリン酸と、オレフィン、シクロペンタジエン、ノルボルナジエン、α-ピネン、ポリブテン、アクリル酸エステル、マレイン酸エステルからの活性化された二重結合との反応生成物、トリフェニルホスホロチオネート(TPPT);硫黄および窒素を有する化合物、例えば亜鉛ビス(アミルジチオカルバメート)またはメチレンビス(ジ-n-ブチルジチオカルバメート);元素硫黄およびH2Sで硫化された炭化水素(ジイソブチレン、テルペン)を有する硫黄化合物;硫化されたグリセリドおよび脂肪酸エステル;過塩基性スルホネート;塩素化合物または固体、例えば黒鉛または二硫化モリブデンを包含する。
【0067】
使用される摩擦調整剤は、機械的に活性な化合物、例えば二硫化モリブデン、黒鉛(フッ化黒鉛を含めて)、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリイミド;吸着層を形成する化合物、例えば長鎖カルボン酸、脂肪酸エステル、エーテル、アルコール、アミン、アミド、イミド;トライボ化学反応による層を形成する化合物、例えば飽和脂肪酸、リン酸およびチオリン酸エステル、キサントゲネート、硫化された脂肪酸;ポリマー様の層を形成する化合物、例えばエトキシル化ジカルボン酸部分エステル、ジアルキルフタレート、メタクリレート、不飽和脂肪酸、硫化されたオレフィンまたは有機金属化合物、例えばモリブデン化合物(モリブデンジチオホスフェートおよびモリブデンジチオカルバメートMoDTC)およびそれらとZnDTP、銅含有有機化合物との組み合わせを包含していてよい。
【0068】
上記で列挙された化合物の一部は、複数の機能を満足しうる。例えば、ZnDTPは、主として耐摩耗添加剤および極圧添加剤であるが、しかし、酸化防止剤および腐食抑制剤(ここでは:金属不動態化剤/不活性化剤)の性質も有する。
【0069】
上記で詳述した添加剤は、とりわけ、T. Mang, W. Dresel (編): “Lubricants and Lubrication”, Wiley-VCH, Weinheim 2001; R. M. Mortier, S. T. Orszulik (編): “Chemistry and Technology of Lubricants”に詳細に記載されている。
【0070】
分散剤(ホウ素変性分散剤を含めて)は0質量%~2質量%の濃度で、消泡剤は10~2500ppmの濃度で、清浄剤は0.05質量%~1質量%の濃度で、抗乳化剤は0質量%~0.1質量%の濃度で、酸化防止剤は0.5質量%~1.5質量%の濃度で、耐摩耗および極圧添加剤はそれぞれ0.1質量%~1質量%の濃度で、摩擦調整剤は0.05質量%~2質量%の濃度で、腐食防止剤は0.05質量%~0.5質量%の濃度で、および色素は0.01質量%~1質量%の濃度で、好ましくは使用される。該濃度は、それぞれ、該潤滑油組成物の全質量を基準としている。
【0071】
好ましくは、潤滑油組成物中の1種以上の添加剤(C)の全濃度は、該潤滑油組成物の全質量を基準として、5質量%まで、より好ましくは0.1質量%~4質量%、より好ましくは0.5質量%~3質量%である。
【0072】
本発明による潤滑油組成物中の成分(A)、(B)および(C)のさらに好ましい含量は、次の表に詳述されるとおりである:
【表2】
該組成によれば、成分(A)、(B)および(C)の質量割合は、合計100質量%になりうる。
【0073】
本発明は、作動液としての上記の潤滑油組成物の使用にも関する。
【0074】
本発明は、優れた抗乳化性能と併せて高VIにより特徴付けられる、上記の潤滑油組成物にも関する。
【0075】
したがって、本発明はさらに、150~230の範囲内、好ましくは170~220の範囲内のVI、および9分以下の水層と油層とに分離する時間を好ましくは有する、上記の潤滑油組成物に関する。
【0076】
本発明は、次の例により説明されるが、これらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
実験の部
省略形
KV ASTM D445に従い測定される動粘度
KV40 ASTM D445に従い40℃で測定される動粘度
KV100 ASTM D445に従い100℃で測定される動粘度
HEMA ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA ヒドロキシプロピルメタクリレート
MMA メチルメタクリレート
NB 3020 Nexbase(登録商標) 3020、2.2cStのKV100を有するNesteのグループIII基油
NB 3043 Nexbase(登録商標) 3043、4.3cStのKV100を有するNesteのグループIII基油
NB 3080 Nexbase(登録商標) 3080、7.9cStのKV100を有するNesteのグループIII基油
100R 4.1cStのKV100を有するChevronのグループII基油
220R 6.4cStのKV100を有するChevronのグループII基油
Esso 100 Sentinel(登録商標) 619、Univarから入手されるグループI基油
Esso 150 Sentinel(登録商標) 847、Univarから入手されるグループI基油
Esso 600 Sentinel(登録商標) 876、Univarから入手されるグループI基油
DDM ドデカンチオール
DPMA 合成C12~15混合物から製造されたメタクリレート、C12 21%、C13 29%、C14 29%、C15 21%;76% 線状
CEMA セチル-エイコシルメタクリレート、C16 52%、C18 31%、C20 13%、その他 4%;全て線状
LMA ラウリルメタクリレート、C12 73%、C14 27%;全て線状
SMA ステアリルメタクリレート、C16 33%、C18 67%;全て線状
Sty スチレン
Mw 質量平均分子量
PDI 多分散指数
Hitec(登録商標) 521 Aftonから商業的に入手可能なDIパッケージ
VPL 1-333 VISCOPLEX(登録商標) 1-333、Evonikから商業的に入手可能な流動点降下剤
【0078】
試験方法
本発明および比較例によるポリマーを、それらの分子量およびPDIに関してキャラクタリゼーションした。
分子量を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、商業的に入手可能なポリメタクリル酸メチル(PMMA)標準を用いて決定した。該決定は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、THFを溶離液として用いて実施される(流量:1mL/min;注入体積:100μl)。
【0079】
本発明および比較例によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを包含する添加剤組成物および潤滑油組成物を、ASTM D445に従う40℃(KV40)および100℃(KV100)での動粘度、ASTM D2270に従う粘度指数(VI)および抗乳化性(水層と油層とに分離する時間)に関してキャラクタリゼーションした。
【0080】
粘度指数の測定において使用するための試料を、該組成物のうちそれぞれ1つの量を、40℃で約46mm2/s(cSt)の動粘度を提供するのに効果的な無極性油に添加することにより配合した。該試料のそれぞれの粘度指数を、ASTM法D2270に従い、40℃および100℃でのそれぞれの動粘度を比較することにより決定した。結果は、第4、6および8表にVIとして記載される。
【0081】
抗乳化性の測定において使用するための試料を、該組成物のうちそれぞれ1つの量を、40℃で約46mm2/s(cSt)の動粘度を提供するのに効果的な無極性油に添加することにより配合した。該試料のそれぞれの抗乳化性を、石油系油および合成系作動液の水分離性についての規格試験方法ASTM D 1401の方法によりキャラクタリゼーションした。液40mLを水40mLと54℃で混合する。示された時間は、エマルションが3mL以下になったときの時間である。試験を30分後に止める。それというのも、30分未満が、ISO 11158に従う作動液に必要だからである。結果は、以下の第4、6および8表に、分で示される、それぞれの水層と油層とに分離する時間として記載される。
【0082】
ポリマー合成
HEMA 3.5%およびMMA 8%を有する生成物についての例(例2)
ガラス撹拌棒、窒素入口、還流冷却器および温度計を備えた丸底フラスコに、Nesteにより供給されるグループIII油218.07g、C12/C14-メタクリレート511.2g、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)20.2g、メチルメタクリレート46.2gおよび連鎖移動剤(DDM)3.75gを装入した。この混合物を、撹拌しながら、かつ不活性化のための窒素バブリングをしながら、110℃まで加熱した。ついで、tert-ブチルペルヘキサノエート1.44gおよびNesteにより供給されるグループIII油4.33gからなる混合物の3時間にわたるフィードの3段階フィードを開始した。該フィード終了後に、該混合物をさらに60分間撹拌した。tert-ブチルペルヘキサノエート1.16gの添加後に、該混合物をさらに60分間撹拌した。
【0083】
その他の全てのポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーを、例2の合成手順に記載されたような油中のラジカル重合により製造した。グループIIおよびIII希釈油を、グループIIまたはIII配合物におけるそれらの将来の使用に関する例において使用した。該ポリマーの希釈油は、最終配合物の副次的な部分に過ぎないので、グループI、IVおよびVとしてのその他の基油クラスからの希釈油が可能である。
【0084】
該手順の変更は第1表に注記される。該モノマー成分は合計100%になる。DDMおよび希釈油の量は、モノマーの全量に対して示される。
【0085】
第1表:本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの製造に使用される反応混合物の組成
【表3】
【0086】
本発明により製造されたポリマーは、定義された量のヒドロキシ官能化アルキル(メタ)アクリレートを含む。
生じるポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの正味組成およびそれらの特徴的な質量平均分子量Mwならびにそれらの多分散指数は、次の第2表に示される。
【0087】
第2表:本発明により製造されたポリアルキル(メタ)アクリレートポリマーの正味組成(モノマー成分は合計100%になる)、それらの分子量およびPDI
【表4】
【0088】
ポリマー例1~20は、実施例であり、かつ本発明において特定される量のヒドロキシル置換C1~4アルキル(メタ)アクリレート(HEMAまたはHPMA)およびメチルメタクリレートを含む。
ポリマー例21~30は、比較例であり、かつ本発明において特定されるような範囲の外側である量のヒドロキシル置換C1~4アルキル(メタ)アクリレート(HEMAまたはHPMA)および/またはメチルメタクリレートを含む。
【0089】
本発明によるポリアルキル(メタクリレート)ポリマーの、潤滑組成物の抗乳化性能への作用を実証するために、異なる配合物例を製造した。
【0090】
配合物例A
次の第3表は、配合物A1~A20の組成を示し、これらはそれぞれ、第2表に示されたようなポリアルキル(メタ)アクリレートのうち1つと基油とを含み、これらを配合して、約46mm2/sのKV40にした。無極性基油として、NB 3043(4.3cStのKV100を有するグループIII基油)およびNB 3080(7.9cStのKV100を有するグループIII基油)の混合物を使用した。
【0091】
配合物A1~A11は、実施例であり、かつ本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレート(ポリマー例1~20)を含む。
配合物A12~A20は、比較例である。それというのも、それらは、組成が本発明に開示され、かつ請求の範囲に記載されたような範囲の外側であるポリアルキル(メタ)アクリレート(ポリマー例21~30)を含むからである。
【0092】
第3表:本発明により製造された添加剤組成物
A
【表5】
【0093】
本発明によるPAMA VI向上剤は主に、比較的無極性のメタクリレート、例えばLMAからなり、油溶性ポリマーを生成する。
溶液中で、たいていのポリマーは球状コイルを形成する。PAMAの優れたVI性能は、温度に伴う該コイルの流体力学的半径の変化の結果である。高極性の該主鎖は、低温で難溶性であり、その結果、相対的に小さいポリマーコイルとなる。温度が増大するにつれて、該油の溶解力が増大し、該主鎖はより良好に溶解され、かつ該コイルはより大きくなる。流体力学的半径のこの変化は、該ポリマーの増粘への寄与と相関する。この作用を増加させ、かつ所望の温度ウィンドウへ移動させるために、該ポリマーの極性を調節することができる。極性モノマー、例えばMMA、BMAならびにHEMAは、該主鎖の溶解性を低下させ、ひいてはより収縮されたポリマー主鎖に寄与する。
該VI作用はより顕著になるので、極性モノマーは、所定のVI(粘度指数)レベルに達するのに必要なポリマーの量を低下させる、すなわちそれらは、該VI向上剤の処理率を低下させる。第3表は、少量の極性モノマーを含むポリマーの処理率が、極めて無極性のPAMA、例えば、ポリマー例21を含む配合物A12よりも低い処理率を有する(配合物A1~A11:処理率は7.7~9.2%である)ことを示す。
【0094】
より低いVI向上剤処理率は大いに望ましい。それというのも、VI向上剤は鉱油よりもはるかに高価だからである。したがって、技術水準は、主鎖の極性が増大したPAMAである。配合物A12およびA13の比較において分かるように、10%の極性モノマーMMAでさえも、該処理率を10%低下させる。該作用は、最終用途においてさらに増大される。それというのも、より収縮されたポリマーは、せん断力の影響も受けにくく、このことが、該処理率をさらに減少させるより高分子量のポリマーの使用を可能にするからである。
【0095】
高極性の主鎖も、このアプローチの適用性を制限する幾つかの欠点を有する。作動液にとって主な挑戦は、規格、例えばISO 11158に従う抗乳化性能への影響である。より極性の主鎖の結果は、明白な極性および無極性の部分を有するポリマーのより界面活性剤様の化学構造となる。これらのポリマーは、油中水型エマルションを安定化させることができ、かつ水は、該油から分離しなくなる。
【0096】
抗乳化剤は、時にはこの作用を克服するのに使用することができるが、しかし、これらの極性成分は、その他の望ましくない副作用を有する。それというのも、それらの活性は、その水/油界面に限定されないからである。
抗乳化剤は本発明による例では使用されない。それというのも、その抗乳化性能は、該ポリマー組成物によって制御されるからである。
【0097】
異なるポリアルキル(メタ)アクリレートの、該抗乳化性への作用は、“水層と油層とに分離する時間”として第4表に示される。さらに、該配合物のKV100および粘度指数(VI)も示される。
【0098】
第4表:モノマー組成物の、抗乳化性能への作用を実証する、本発明により製造された添加剤組成物
Aの配合物特性
【表6】
【0099】
ヒドロキシ官能化モノマーは、極性モノマー単位の極端な場合とみなすことができる。それというのも、水素結合は、無極性油中の該ポリマーの収縮に非常に寄与するからである。この理由のために、モノマー、例えばHEMAおよびHPMAは、抗乳化性能に対して著しく不利な作用を有することが予測される。この作用は、これらのヒドロキシ官能化モノマーの高濃度および低濃度の双方で観察することができるが、しかし、驚くべきことに、むしろ低い濃度の特定の範囲が存在し、この範囲ではグループIIおよびIIIからの無極性基油において逆の作用が観察されることさえある。
【0100】
第4表から分かるように、ポリマー例21をポリマー生成物として用いる配合物A12は、平均的な抗乳化性能(水層と油層とに分離する時間=9.6分)を示す一方で、優れた結果は、HEMA 1.5~4.5%およびMMA 9%以下を含有するポリマーを用いて得られる。劣悪な結果は、例えば、1質量%に過ぎないHEMAの量を有する配合物A16(ポリマー例25を用いる)およびA17(ポリマー例26を用いる)を用いて得られる(水層と油層とに分離する時間>30分)。
それらは、その抗乳化作用が、所定量のヒドロキシル官能基により引き起こされることを実証する。前記のように、極性モノマーにより引き起こされる高い主鎖極性が望ましい。HEMAが本発明に従って使用される場合には、MMAと組み合わせて該ポリマーのVI向上剤としての性能を向上させることができる。2つの高MMAポリマーのうち1つを含む配合物である配合物A2(HEMA 3.5%およびMMA 8%)および配合物A6(HEMA 1.9%およびMMA 8%)と、ポリマー例25(HEMA 1%およびMMA 8%)を含む配合物である配合物A16、およびポリマー例27(HEMA 3%およびMMA 10%)を含む配合物である配合物A18との比較は、MMAおよびHEMAの細心のバランスのみが最適な結果をもたらすことを示す。配合物A2(ポリマー例2を有する)およびA6(ポリマー例8を有する)は双方とも、2.0および2.3分の極めて低い水層と油層とに分離する時間を示すのに対し、配合物A16(ポリマー例25を有する)およびA18(ポリマー例27を有する)は双方とも、>30分の水層と油層とに分離する時間を示し、これは該試験手順における不合格に等しい。
【0101】
配合物例B
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートの、APIグループIIおよび/またはグループIII油への作用が、グループI油とは異なり優れていることを実証するために、異なる油混合物を有する潤滑油組成物Bを製造する。詳細は、次の第5表に概説される。
【0102】
【0103】
配合物B1~B9は、本発明に従ったポリマー例のうち1つと、APIグループI基油(配合物B3およびB6、これらは比較例である)、グループII基油(配合物B2およびB9)、グループIII基油(配合物B1、B4、B7およびB8)またはグループIおよびグループIII基油の混合物(配合物B5)のいずれかとを含む。典型的な技術水準の作動液配合物への本発明の適用性を示すために、配合物B9はさらに、DIパッケージ(Hitec(登録商標) 521)およびPAMA流動点降下剤(VPL 1-333)を含む。
【0104】
第6表は、異なる基油中に、46mm2/sのKV40に配合された、本発明に従って製造されるポリマーの抗乳化性能を比較する。
【0105】
第6表:異なる油混合物を用いて製造された、本発明による潤滑油組成物
Bの配合物特性
【表8】
【0106】
第6表は明らかに、無極性のグループIIおよびグループIII基油において優れた値が得られる(水層と油層とに分離する時間<5分を有する配合物B1、B2、B4、B7、B8およびB9参照)ことを示しているのに対し、グループI配合物においては非常に劣った性能が観察される(水層と油層とに分離する時間>30分を有する配合物B3およびB6参照)ことを示している。グループIおよびグループIII基油の混合物も向上を示さない(水層と油層とに分離する時間>30分を有する配合物B5参照)。配合物B9は、さらにDIパッケージおよびPAMA流動点降下剤を含む、完全に配合された油を表す。該DIパッケージ成分の極性の性質にもかかわらず、HEMA含有PAMAを有する配合物の抗乳化特性へのそれらの影響は、最小限であると思われる。
【0107】
配合物例C
本発明によるポリアルキル(メタ)アクリレートの、APIグループIIおよび/またはグループIII油配合物への優れた作用は、異なる処理率に関しても示すことができる。
そのために、潤滑油組成物Cが製造される。
【0108】
第7表:異なる処理率を有する本発明による潤滑油組成物
C
【表9】
【0109】
第8表は、異なる粘度、VIおよび水層と油層とに分離する時間について、本発明によるポリマーの異なる処理率を有する配合物例Cを比較する。
異なる組成物を配合して、32mm2/s、46mm2/sまたは68mm2/sのKV40にしたが、これは、作動液のための最も重要なISO粘度クラスに関係するものである。
【0110】
第8表:異なる処理率を有する本発明による潤滑油組成物
Cの配合物特性
【表10】
【0111】
予測されたように、低分子量のポリマー例12を用いるような極めて高いポリマー処理率(配合物C6、C7およびC8)は、抗乳化について、より長いが、しかしまだ良好な時間を示す。
驚くべきことに、高分子量ポリマー例10、11および13のより低い処理率(配合物C1~C5およびC9~C11)も類似の作用を示し、かつ抗乳化性能は、より高いVIに達するようにより多くのポリマーが添加される場合には向上されさえする。配合物C17(ポリマー例28を用いる)で示されるように、より低いポリマー処理率をより高いHEMA含量により相殺することは不可能である(水層と油層とに分離する時間>30分)。このことは、該作用の起源が、該ポリマー鎖内の極性部分と無極性部分とのバランスに見出すことができることを示している。
【0112】
潤滑油組成物の優れた抗乳化性能と対比して高VIを受け入れるPAMAポリマー中のMMAおよびHEMAの細心のバランスの重要性をさらに示すために、次の例を、技術水準の文献に従って製造した。
【0113】
例(a)は、欧州特許出願公開第0569639号明細書(EP 0 569 639 A1)に開示された例1に相当し、その中に開示されたプロトコルに従って製造した(p.8、l.35-54参照)。
例(b)は、欧州特許出願公開第0569639号明細書(EP 0 569 639 A1)に開示された例3に相当し、その中に開示されたプロトコルに従って製造した(p.9、l.13-32参照)。
例(c)は、米国特許第5851967号明細書(US 5,851,967)に開示された例1に相当し、その中に開示されたプロトコルに従って製造した(第5および6欄参照)。
例(d)は、米国特許第5851967号明細書(US 5,851,967)に開示された例2に相当し、その中に開示されたプロトコルに従って製造した(第5および6欄参照)。
例(e)は、米国特許第6409778号明細書(US 6,409,778)に開示された例1に相当し、その中に開示されたプロトコルに従って製造した(第5および6欄参照)。
例(f)は、欧州特許出願公開第0569639号明細書(EP 0569639 A1)の例6で開示されたポリマーCに相当する(p.11参照)。これを、欧州特許出願公開第0569639号明細書(EP 0569639 A1)の例1で示されたプロトコルに従って製造した(p.8参照)。その中で、パラフィン系油の基油、100N油を溶剤として使用した。
生じるポリマー(f)の質量平均分子量は、140000g/molであり、かつPDIは2.87である。
【0114】
第9表:技術水準の文献に開示されたプロトコルに従って製造されたPAMAポリマー(モノマー成分は合計100%になる)。
【表11】
【0115】
次の第10表は、配合物(a1)~(f1)の組成を示し、それぞれ、第5表に示されたようなポリアルキル(メタ)アクリレートのうち1つと基油とを含み、これらを配合して、約46mm2/sのKV40にした。無極性基油として、NB 3043(4.3cStのKV100を有するグループIII基油)およびNB 3080(7.9cStのKV100を有するグループIII基油)の混合物を使用した。
【0116】
第10表:第9表に示されたポリマーを使用することによって製造された添加剤組成物
【表12】
【0117】
異なるポリアルキル(メタ)アクリレートの、該抗乳化性への作用は、第11表に“水層と油層とに分離する時間”として示される。さらに、該配合物のKV100および粘度指数(VI)も示される。
【0118】
第11表:第10表に示されたような添加剤組成物の配合物特性
【表13】
【0119】
ポリマー(a)は、多すぎるHPMAおよびMMAを含有し、したがって極めて劣悪な抗乳化性能を提供する。ポリマー(b)は、油混合物と非相溶性であり、これはその重合手順中のゲル状ポリマーの形成によるものと考えられる。グループIII基油は、より良好な溶剤であるグループI基油よりも、そのような難溶性の架橋ポリマー鎖に対してより敏感に反応する。
類似の方法で製造されるポリマー(a)を含有する配合物(a1)は、既に濁っていたが、しかしそのより高い分子量のために、該配合物中の必要な処理率は著しく低くなり、かつその濁りは澄まなかった。ヒドロキシ官能性メタクリレートは、その遊離ヒドロキシ官能基のエステル化によって生じる一定の量のジメタクリレートを含有することが知られている。これらのジメタクリレートは、ゲル化されたポリマーの形成を助長する。
本発明において請求の範囲に記載されたような範囲内のHPMAの量にもかかわらず、配合物(c1)および(d1)は、該抗乳化性試験において相分離の徴候を示さなかったが、これはおそらく、該極性モノマーHPMAおよびスチレンに関して該組成物の不十分なバランスによるものと考えられる。
ポリマー(e)の油相溶性は優れている一方で、そのHEMA含量は高すぎて、良好な抗乳化性能に達しない。
【0120】
ポリマー(f)を含有する配合物(f1)も、相対的に高い分子量と相関されうる、極めて劣悪な抗乳化性能を示した。