(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】電子ビームまたはレーザービーム溶接のための形成溶接ヘッド
(51)【国際特許分類】
B23K 15/00 20060101AFI20220401BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20220401BHJP
B23K 26/12 20140101ALI20220401BHJP
【FI】
B23K15/00 501D
B23K26/70
B23K26/12
(21)【出願番号】P 2019517177
(86)(22)【出願日】2017-06-06
(86)【国際出願番号】 GB2017051626
(87)【国際公開番号】W WO2017212240
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-02-25
(32)【優先日】2016-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518436249
【氏名又は名称】アクアジウム・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AQUASIUM TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プラム,ポール
(72)【発明者】
【氏名】デュモン,コンラッド
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-113594(JP,A)
【文献】米国特許第03549854(US,A)
【文献】実開平02-097982(JP,U)
【文献】特開平06-344158(JP,A)
【文献】特開2001-336487(JP,A)
【文献】特開平09-268983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 15/00
B23K 26/70
B23K 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ヘッドであって、溶接デバイスに取り付け可能な外面と、ワークピースに対してシール可能な内面とを備え、第1および第2の環状チャネルが前記内面に形成されるとともに、排気可能領域の両側上に配置され、外側シールリングが前記第1の環状チャネルに配置され、内側シールリングが前記第2の環状チャネル内に配置され、前記内面は、ティアドロップ形状の外形を有して形成され
、
前記内側シールリング内から前記外側シールリングへと延在する少なくとも1つのブリッジシールをさらに備える、溶接ヘッド。
【請求項2】
前記内側および外側シールリングは、ティアドロップ形状である、請求項1に記載の溶接ヘッド。
【請求項3】
前記内側および外側シールリングは、一定の壁幅を有する、請求項1または請求項2に記載の溶接ヘッド。
【請求項4】
前記内側シールリングは、増加された壁幅の領域を提供するヒール部分を有して形成される、請求項1または請求項2に記載の溶接ヘッド。
【請求項5】
前記ヒール部分は、置換可能な犠牲要素をさらに備える、請求項4に記載の溶接ヘッド。
【請求項6】
前記少なくとも1つのブリッジシールは、前記外側シールリングを超えて延在する、請求項
1~5のいずれか1項に記載の溶接ヘッド。
【請求項7】
前記内側および外側シールリングは、膨張可能である、請求項1から
6のいずれか1項に記載の溶接ヘッド。
【請求項8】
前記内側および外側シールリングは、自己潤滑性の材料から形成される、請求項1から
7のいずれか1項に記載の溶接ヘッド。
【請求項9】
前記内側および外側シールリングは、異なる材料から形成され、前記外側シールリングの材料は、前記内側シールリングの材料よりも硬い、請求項1から
8のいずれか1項に記載の溶接ヘッド。
【請求項10】
前記外側シールリングは、50~70の範囲のショア硬さを有する材料から形成される、請求項
9に記載の溶接ヘッド。
【請求項11】
前記内側シールリングの材料は、20~40のショア硬さを有する材料から形成される、請求項
9または請求項
10に記載の溶接ヘッド。
【請求項12】
前記内側および外側シールリングの一方または両方は、異なる材料特性を有する重畳する上方および下方シール要素から形成され
、前記上方シール要素が使用中に前記ワークピースに接触する、請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の溶接ヘッド。
【請求項13】
前記上方シール要素は、50~70の範囲のショア硬さを有する材料から形成される、請求項
12に記載の溶接ヘッド。
【請求項14】
前記下方シール要素は、20~40のショア硬さを有する材料から形成される、請求項
12または請求項
13に記載の溶接ヘッド。
【請求項15】
前記内側シールリングは、耐熱高引裂
シリコーンから形成される、請求項1から
14のいずれか1項に記載の溶接ヘッド。
【請求項16】
前記外側シールリングは、耐熱高引裂
シリコーンから形成される、請求項1から
15のいずれか1項に記載の溶接ヘッド。
【請求項17】
チャネルは、溶接ビームのための導管を提供するために、前記外面および前記内面を通って延在する、請求項1から
16のいずれか1項に記載の溶接ヘッド。
【請求項18】
細長い溝は、前記内面を渡って前記チャネルから少なくとも前記内側シールリングまで延在する、請求項
17に記載の溶接ヘッド。
【請求項19】
前記チャネルは、排気可能である、請求項
17または請求項
18に記載の溶接ヘッド。
【請求項20】
前記溶接デバイスは、電子ビームデバイスまたはレーザーである、請求項1から
19のいずれか1項に記載の溶接ヘッド。
【請求項21】
溶接デバイスに取り付けられたときに、請求項1から
20のいずれか1項に記載の溶接ヘッドを備える、溶接装置。
【請求項22】
溶接されるワークピースの後方壁に取り付け可能に適合されたシール手段をさらに備える、請求項
21に記載の溶接装置。
【請求項23】
前記シール手段は、遮断バーをさらに備える、請求項
22に記載の溶接装置。
【請求項24】
前記シール手段は、前記溶接ヘッドの動きを追跡するために移動可能である、請求項
22~請求項
23のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項25】
前記溶接デバイスは、電子ビームデバイスであり、
前記シール手段は、溶接部位の後方において電子の特徴を検出するための検出器をさらに備える、請求項
22~請求項
24のいずれか1項に記載の溶接装置。
【請求項26】
前記溶接ヘッドは、固定された軌跡に沿って移動可能である、請求項
21~請求項
25のいずれか1項に記載の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
この発明は、電子ビームおよびレーザー溶接において使用される溶接ヘッドに関し、特に風力タービンおよび石油パイプラインのために使用される大きな管状の鋼断面といった大きな物品の外部溶接ための溶接ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
電子ビーム溶接およびレーザー溶接は、高い品質の溶接を作成し、しばしば迅速なスループットが必須である小さな物品を溶接するために、または複雑なワークピースを溶接するために使用される。溶接は、ワークピースを含有する排気されたチャンバ内で行われる。
【0003】
従来、パイプライン等のための大きな厚い断面の管状のシリンダは、アーク溶接を使用して溶接されてきたが、継目の完全な奥行きを溶接するために、溶接ヘッドの複数回の通過が必須である。溶接の失敗を引き起こす内包物または亀裂がない品質標準を溶接が満たすことを確実にするために、各通過の後に非破壊試験が必須である。このためアーク溶接は、そのような管状の構造を溶接するために遅く手間のかかるプロセスである。
【0004】
本発明の目的は、大きな金属構造上で真空下で電子ビームおよびレーザー溶接を行うことを可能とするために、溶接ヘッドを提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明の第1の態様に従い、電子ビーム銃またはレーザーといった溶接デバイスに取り付け可能な外面と、ワークピースに封止可能な内面とを備える溶接ヘッドが設けられ、第1および第2の環状チャネルが内面に形成されるとともに、排気可能領域の両側上に配置され、外側シールリングが第1の環状チャネルに配置され、内側シールリングが第2の環状チャネル内に配置され、内面は、ティアドロップ形状の外形を有して形成される。ティアドロップ形状を作成するために、典型的により大きな直径の半円状端部分は、実質的に真直の壁部分によって、より小さい半円状端部分に接続され、これにより広い端部および狭い端部を有するティアドロップ形状を作成し、各端部は、実質的に半円状であり、広い端部は狭い端部よりも大きい半径を有する。このため、各端部は、異なる半径の弧を有する。典型的に、ワークピースは、大きな管状の断面または典型的に40~300mmの範囲の壁の厚みを有する広範囲の平らなプレートだろう。
【0006】
内側および外側シールリングは、広い端部および狭い端部を有するティアドロップ形状であってもよく、各端部は、実質的に半円状であり、広い端部は、狭い端部よりも大きい半径を有する。
【0007】
ティアドロップ形状は、シールリングの一部が溶接領域から縦方向にずらされることを可能にする。溶接される継目に沿ってヘッドが動く際に、シールが溶接領域を通過する前に溶接領域が冷却する可能性があるので、このことは、使用中の利点である。使用中に、好ましくはヘッドは、それが動く際に、広い端部がヘッドの前方にあり、狭い領域が後方にあるように配置されるだろう。そのような構成では、好ましくは溶接デバイスは、内面の前方の広い部分に付属される。
【0008】
内側および外側シールリングは、好ましくはティアドロップ形状であり、一定の壁幅を有してもよく、壁の幅は、内面を渡って部分的に延在する。両方のリングは、耐熱高引裂シリコーンから形成されてもよい。
【0009】
所望の場合、ティアドロップ形状を有する内側シールリングは、狭い端部内のヒール部分を有して形成されてもよく、このため溶接からの大きい熱に対して耐性を有する、増加された壁幅の領域を提供する。
【0010】
少なくとも1つのブリッジシールは、内側シールリング内から少なくとも外側シールリングへと延在し、望ましくは外側シールリングを超えて延在するように設けられてもよい。ブリッジシールは、シールリング上の摩耗および引裂を削減するために、犠牲要素としての役目を担ってもよい。
【0011】
内側および外側シールリングは、膨張可能であってもよく、シールに印加される圧力は、溶接されるべき表面へのシールリングの適合を調整するために変更される。このことは、内側および外側シールリングの各々が互いに重畳する上方および下方シールから形成され、典型的に下方シールの膨張圧力を連続的に調整するアクチュエータに応じて下方シールが膨張可能であることによって、達成されてもよい。
【0012】
内側および外側シールリングの一方または両方は、異なる材料特性を有する重畳する上方および下方シール要素から形成されてもよく、好ましくは上方シール要素は、50~70の範囲のショア硬さを有する材料から形成され、下方シール要素の材料は、耐熱高引裂シリコーンといった、好ましくは20~40のショア硬さ、より好ましくは34のショア硬さを有する材料から形成される。このことは、使用中にワークピースに接触する上方シール要素が、より堅牢で損傷に対する耐性を有し、下方シール要素が、ワークピースの表面不完全性に応じてシールを変形可能とする可撓性を提供することを確実にする。
【0013】
外側および内側シールリングは、異なる硬さを有するように選択されてもよい。外側シールリングは、50~70の範囲のショア硬さを有する材料から形成されてもよく、内側シールリングの材料は、耐熱高引裂シリコーンといった、好ましくは20~40のショア硬さ、より好ましくは34のショア硬さを有する材料から形成される。外側リングは、ヘッドがワークピースに沿って進行する際に外側リングが内側リングの前に遭遇する表面不完全性および細片に対して、より耐性がある。より低硬度の内側シールリングは、ワークピース表面に対して形成可能であり、これにより、強化されたシールを提供し、排気可能領域内で真空を取得することを簡単にする。
【0014】
好ましくは外側シールリングおよび内側シールリングは、それ自体の潤滑性を生成する自己潤滑性の材料から形成される。このことは、リングがワークピース表面に対して摺動するのに役立つ。
【0015】
チャネルは、溶接ビームが溶接継目に到達するための導管を提供するために、外面および内面を通って延在してもよく、チャネルは好ましくは、空気がチャネルから圧送されることができ、真空がチャネル内に作成されるように排気可能である。このことは、溶接デバイスが、溶接が行われるために真空を要する電子ビームデバイスまたはレーザーである場合に、特に適切である。
【0016】
細長い溝は、内面を渡ってチャネルから少なくとも内側シールリングまで延在してもよい。このことは、ヘッドが溶接継目に沿って進行する際に溶接ビードが溝内に配置されることを可能とし、内側シールリングを引き裂くかワークピースに対するシールに影響するワークピース表面外形内の突然の変化に、内側シールリングがさらされないことを確実にする。
【0017】
別の発明の態様に従い、電子ビーム銃またはレーザーといった溶接デバイスに取り付けられた上述の溶接ヘッドを備える溶接装置を提供する。
【0018】
溶接装置は、典型的にスイッチボックス(back box)シールの形態の、溶接されるワークピースの後方壁に取り付けるためのシールデバイスをさらに備えてもよく、溶接ヘッドがワークピースの前方壁上の排気可能領域を提供し、シール手段がワークピースの後方壁上の排気可能領域を提供し、電子ビーム銃またはレーザーの形態の溶接デバイスが真空内で確実に動作できるように、シール手段は、溶接される領域の後ろに配置される。
【0019】
そのような装置では、好ましくは溶接ヘッドは、ワークピースに対して進行可能であり、管状のワークピースの径方向のおよび/または周方向の溶接または平らなプレートの直線状の溶接を可能とする。ヘッドは、ワークピースが静止した状態で固定された軌跡に沿って進行可能であってもよく、代替的にヘッドは、ワークピースが回転された状態で、静止されてもよい。特に重い管状の断面のために、ヘッドは典型的に、管状のワークピースの周りに延在する環状の軌跡上を進行可能に配置されるだろう。
【0020】
シール手段は典型的に、溶接中に電子ビームの通過を遮断するために配置された金属製の遮断バーをさらに備えてもよく、遮断バーは、シール手段の長さに沿って延在し、これにより溶接プロセスを通して溶接継目の後ろに配置される。シール手段は、溶接ヘッドの動きを追跡するために進行可能であってもよく、また溶接領域の後ろに置かれたままであってもよい。
【0021】
シール手段は、溶接部位の後方において電子の特徴を検出するための検出器をさらに備えてもよい。
【0022】
本発明は、例として、添付の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明を具体化するパイプ溶接装置の斜視図である。
【
図3】溶接ヘッドの第1の実施形態の断面図である。
【
図5】溶接ヘッドの第2の実施形態の端面図である。
【
図7】溶接ヘッドの第3の実施形態の端面図である。
【
図8】周方向溶接に使用されるパイプ溶接装置の斜視図である。
【
図9】周方向溶接に使用されるパイプ溶接装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
説明
図1は、大きな厚い断面にされる管状のシリンダ12を溶接するために使用される溶接装置10を示す。シリンダは、管をその円形の形状に固定するために直線状の継目14に沿って溶接を要する、巻かれた管状のピースである。電子ビーム銃16は、キャリッジ18上に移動可能に取り付けられ、これにより継目14に平行になめらかに進行することが可能であり、延在長さ、すなわち2メートル以上の長さを、連続的に溶接することができる。銃16に付属されたシールヘッド20は、パイプ12の外面22に摺動可能に固定し、溶接継目14において真空が作成されることを可能とし、これにより電子ビーム溶接が行われることを可能とする。内部スイッチボックスシール24は、真空が溶接継目14の後方において維持されることができるように、内部壁26上の継目14に沿って延在する。
【0025】
本発明は、壁の厚みが50~300mmで、典型的に0.5~3mの大きな直径の大きな管状の断面に対して特に有用であるが、それはまた、平らな大きな断面を溶接するために使用されることができる。単一の溶接ヘッドは、片側のみから溶接し、1回の通過で完全な奥行きの溶接を達成可能であり、40mを超える長さに対して中断なく連続的な直線状の溶接を行うことができる。そのような大きな管状の断面は、石油パイプライン、風力タービンおよび他の重工業用途において典型的に使用される。
【0026】
図2は、
図1に示された構成の例示的な断面を示す。電子銃16は、カソード32から電子ビーム30を生成し、ビーム30は、電磁コイル34の磁場を調整することによって、継目14に沿って溶接するために偏向される。窓36は、内部にカソード32およびコイル34が配置されるチャンバを可視化する。銃16は、キャリッジ18に沿う銃16の摺動移動を可能にする台40に取り付けられる。スイッチボックスシール24は、内部にシール42,44が配置されるケーシング41を備え、シール42,44は、ケーシング41から部分的に延在し、矩形領域46および長方形の環状部47を規定し、空気はそこから圧送され、内部壁26上の継目14の後ろに真空を作成する。
【0027】
電子ビーム30がシリンダ12を超えて進行することを防ぐために、厚い金属の長方形のバーの形態のビーム遮断部48は、スイッチボックスシール24の長さに沿って延在し、溶接継目14の直後に位置決めされる。所望の場合、検出器50は、ビーム侵入エネルギーといったビームが継目14を通った後の電子ビームの特徴についてのフィードバック情報を提供するために、スイッチボックスシール24内に配置されることができる。溶接14の前方および後方において生成される真空は、溶接が行われる際に圧力差が溶融された溶接ビードに影響することを防ぐために、ほぼ同じ圧力でなければならない。ヘッド20と比較してスイッチボックス24内の圧力が高すぎると、溶接プールが管12の前方に向かって流れ出すことを引き起こし、複数の穴および内包物といった欠陥を有する貧弱な溶接につながるだろう。
【0028】
電子ビーム溶接では、継目の両側の金属は、いかなる充填材またはフラックスも要さずに、一緒に融合される。100mm深さの領域を溶接するために、同じ継目の90回の通過が必須であるアーク溶接とは対照的に、壁の完全な奥行きを通って延在する継目は、1回の通過で達成される。特に電子ビーム溶接が溶接内の水素亀裂またはフラックス粒子に対して試験されないということを考慮すると、このことは、かなりより高速のスループットを与える。電子ビーム溶接を用いて、長さが約1.3mで壁の厚みが60mmの直線状の断面は、6分で溶接されることができ、150mmの厚さの鋼に対して毎分200mmの溶接速度が達成されることができる。
【0029】
ヘッド20の異なる実施形態は、今度は
図3~
図6に関連して説明されるだろう。
図3および
図4は、電子銃16への取り付けのための外面62と、パイプ12に対して封止するためのティアドロップ形状の内面64とを有するティアドロップ形状のヘッド80を示す。約20mmの壁幅を有するティアドロップ形状のシール90,92は、環状の窪みまたはチャネル93,95内に配置され、ポンプ出口70の両側は、ティアドロップ形状のチャネル94に付属される。パイプ12の外側壁22に対して位置決めされるときに、シール90,92は、気密シールを形成し、空気がシール90,92間から連続的に圧送されることを可能とし、隙間94内で粗い真空が得られる。チャネル74はまた、それから空気を圧送させ、これにより、チャネル74と電子銃16とに関連付けられた約10
-2mバールの高い真空と、シール90とシール92との間に規定される領域94に関連付けられた0.1~10mバールの荒いまたは粗い真空の、2つの真空の領域が存在する。
【0030】
ヘッド80は、パイプ12の曲率と略一致するように形成され、これにより内面64に対してわずかな湾曲を有する。チャネル93,95内に配置されるシール90,92が、内面64の外形と管状の断面12との間のわずかな変動を収容できるので、この湾曲は、管状の断面12の外形と一致することを要さない。典型的に、管状の断面12がとても大きな直径を有するので、内面64は、ほぼ平面状である。
【0031】
シール90および92は、プラスチック材料またはゴムから形成され、異なる材料特性、および特に異なる硬さを有するように選択される。ヘッド20の進行する前方縁部上の力がシールにおいて多くの引き裂きを引き起こし、また、ヘッド80が継目14に沿って摺動する際に、シール90が管12の表面に沿って凹凸および不完全性に遭遇するので、外側シール90は、堅牢であることを要する。外側シール90がまず表面を通過することによって、細片およびいくつかの表面凹凸が除去されるか研磨されるので、内側シール92は、不完全性にほとんど遭遇しない。シール90のための材料は、シール92のものと比較してより硬くより硬質となり、シール92のための材料は、より柔軟であり可撓性であるように選択される。シール90,92は、典型的に10~30mmの範囲の幅であり、シール90は、50~70の範囲の、望ましくは60のショア硬さを有する。シール92は、約20~40のショア硬さを有するように選択され、特に34のショア値を有する閉鎖されたセルシリコーンであり、特に耐熱高引裂(HTHT)シリコーンゴムスポンジであるように選択される。ショア値が低すぎると、シール92は、短い溶接距離の後につぶれることになる。望ましくは、シールの材料は、自己潤滑性であり、ヘッド20の動きの容易さを向上する。
【0032】
より低いショア値のシールがコンプライアントであり、シリンダ表面に対してそれ自身を形作ることが可能であるので、異なる硬さを有するシールを使用することによって、溶接継目14の周りのシールは、シール92によって最適化され、壁22のものと一致する外形を有するシールを作ることを要さずに、中央チャネル74内で高い真空が確実に達成されることができ、同時により硬い外側シール90は、不完全性に耐えることができ、引裂に対して耐性があり、より柔らかいシールのための保護効果を有する。
【0033】
両方のシールが高いショア値を有するように選択された場合、シリンダ壁22に対してシールを得ることは、両方シールの剛性に起因して難しく、領域94内の真空を達成することは、非常に難しいだろう。異なる材料特性を有する離間された環状のシールの対を有することによって、溶接継目14に沿ってヘッド80が進行する際に、中間空間領域94において10-2mバールの範囲における一貫した真空レベルが達成可能である。
【0034】
中央溶接位置に内側シール92が近接する結果、特に電子ビームの電力が60mA以上に上昇する場合に、溶接の熱に起因してシール故障につながる。このため、ヘッド80は、内側シール92と完成された厚い溶接継目との間に長い距離を提供するために、ティアドロップ形状を有して形成され、典型的に溶接中心30から内側シール92の後方端部まで、少なくとも100mm、より好ましくは約185mm、置かれる。より大きな直径の半円状端部分82は、実質的に真直の壁断面86によって、より小さい半円状端部分84に接続され、異なる半径の各端部を有する弧を有するティアドロップ形状を作成する。
【0035】
シール90,92間には、ポンプ導管70に接続された一定の壁幅のティアドロップ形状のチャネルが規定され、これにより空気は、シール90,92間から連続的に圧送されることができ、荒い真空が領域94内で得られる。シール90,92のより狭い後方端部は、電子ビーム30から離れており、また円状ヘッドが使用された場合よりも、対応する溶接領域からかなり大きな距離離れている。溶接14に沿うヘッド80の進行方向は、矢印96によって示され、動作時に、より広い端部84は、ティアドロップの前方である。実質的にティアドロップの形状を採用することにより、新たに溶接される領域は、シール90,92の後方端部が溶接部を通過するわずかに前に冷却可能である。このことは、シール90,92がさらされる熱の量を削減し、それらの寿命、このためそれらが動作を維持可能である溶接距離を向上させる。
【0036】
シールの故障の前にヘッドが溶接できる距離をさらに向上するために、ヘッド80は、部分86の後方に置かれ、進行方向96に沿って延在するように配置された細長い内側および外側ブリッジシール100,102を含む。ブリッジシール100,102は、典型的にPTFEで作られ、粗い表面上で達成可能なシールを向上し、同時に、内側シールまたは外側シールが溶接領域を通過する前に溶接領域から熱を吸収するための犠牲エリアを提供する。外側ブリッジシール102を収容するために、テール部分104は、ティアドロップ外形の後方部分86に追加される。そのような構成を用いて、シールが壊れることなく、約48メートルの溶接距離が達成された。
【0037】
ヘッドのさらなる実施形態は、
図5および
図6に示され、この実施形態は、平らなプレート断面を溶接するために特に適している。ヘッド130は、粗い導管70を通して提供される中間空間ポンプを有する、HTHT
シリコーンから作られる膨張可能シール132,134を設けられる。ヘッド130の内面136は、ヘッドがワークピース上で改善された滑り特徴を有するようにPTFE材料から成形され、このためシール132,134は、内面のPTFE構造内に形成される環状の窪みまたはチャネル137,138内に位置決めされるだろう。
【0038】
図5に示されたティアドロップ形状の実施形態のために、外側シール132は、一定の壁幅を有するティアドロップ形状である。内側シール134は、ティアドロップ外形に対応する外側壁を有し、ティアドロップ外形のより大きな直径部分において一定の壁幅を有するが、より小さい端部84において実質的に半円状である、厚くされたヒール断面140を有する。内側シール134はこのため、進行方向96に沿って実質的に幅を広げられ、これにより、それは、溶接部位30において生成される熱に対して、故障前により長い時間耐えることができる。
【0039】
シール134上の熱い溶接の効果を減少することをさらに助けるために、リードチャネル142は、PTFE内面136内および内側シール134のヒール部分140内の両方に、進行方向に形成される。リードチャネル142は、溶接部位30において形成される溶接ビードが収容され、圧力をシール134上に印加しないことを確実にする。
【0040】
シール132および134は、膨張可能であり、アクチュエータ[図示しない]に応答して、溶接される表面に対してそれらの位置を調整する。膨張可能シール135,135’は、シール132,134の下に配置される。アクチュエータは、ワークピース表面内の任意の起伏によってシール132,134上に印加される圧力を検出し、膨張可能シール135,135’に印加される圧力を調整して、シール132,134の表面に対する位置を変更する。このことは、最も外側のシールが表面に対して形成することを確実にし、同時にそれらの表面に沿って摺動する能力を維持する。このため、シール132,134は、能動的シールであり、ヘッド130が動く際に、ワークピースの表面外形に対して連続的に調整する。
【0041】
所望の場合、シール132,134の一方または両方は、異なるショア値の2つの重畳するシールによって形成される2重シールからなる。このため、外側シール134は、膨張可能シール135’の上方に配置される下方シール134’上に配置されることができ、外側シール134は、50~70の範囲のショア硬さを有する材料から形成され、下方シール134’は、耐熱高引裂シリコーンといった、20~40のショア硬さ、典型的に34のショア硬さを有する材料から形成される。このことは、シールの外側部分であり、使用中にワークピースに接触するシール134が、より堅牢で損傷に耐性を有することを確実にし、下方シール要素は、ワークピースの表面不完全性に応じておよび膨張可能シール135’の調整に応じてシールが変形すること可能とするために、柔軟性を提供する。同様にシール132は、50~70の範囲のショア硬さの外側のより硬いシールと、20~40のショア硬さを有するより柔軟な下方シール132’を有して形成されることができる。
【0042】
図3に示された実施形態に関して、外側ブリッジシールは、
図3に示される実施形態と同様の方法で外側シール132を渡って内面136を渡って延在する、別シールとしてまたは第2のリードチャネルを形成することによってのいずれかで導入されることができる。
【0043】
ワーク表面に対してPTFE前面を使用することによって、ヘッドは表面を渡ってより良好に滑り、真空からの下向きの力を吸収可能であり、シール上の力は確実に削減される。膨張可能シールのより良好な制御がまた可能である。所望の場合、PTFE前面は、
図3および
図4に示された実施形態に対して使用されることができる。
【0044】
さらなる実施形態は、
図7に示されており、ヘッド150は、リードチャネル142の代わりに、厚くされたヒール断面140内の犠牲要素152を使用する。犠牲要素152は、中央に配置された溝154を有する長方形の形状であり、押し込み接続の効果によってヒール断面140内の協動作アパーチャー内で着脱可能に配置可能である。典型的に、犠牲要素152は、ヒール断面140の残りの部分と同じ材料から形成される。
【0045】
犠牲要素152は、ヘッド150の進行軸上の中央に配置され、溶接ヘッド150の進行方向は、矢印96によって示される。溝154は、端部156において、典型的に約10mmの幅、5mmの深さであり、新たに作成された溶接継目はまず、溶接点30から最も遠い端部において犠牲要素に遭遇し、溝は、幅および奥行きの両方においてテーパーを付けられるテーパー断面157を有し、最終的に周囲表面140へと続く。
【0046】
溶接継目が作成され、ヘッド150が矢印96の方向に進行する際に、溶接ビードは、溝154の最も深い端部156内に受けられ、そこに入る。溝154の漸進的なテーパーは、ヘッドのより狭い端部150が溶接継目上を容易に進行することを可能とする。犠牲要素152は、新たに作成された溶接継目に付属された熱の大部分にさらされ、ヒール断面140の残りの部分よりも前に故障するだろう。置換可能な犠牲要素を有することにより、ヒール断面の寿命が長くされ、犠牲要素が設けられない場合よりも典型的に3倍長持ちする。
【0047】
図8および
図9に示されるように、ヘッド20,80,130,150は、同じ大きな構造を周方向に溶接するために配備されることができ、ワークピース12が水平平面160または垂直平面162のいずれかでヘッドの下に回転される。非常に大きな管状のピースに対して、ヘッドは、環状の軌跡を使用して静止したワークピースの周りを移動されることができる。
【0048】
溶接のために局所的なヘッドを有することで、溶接装置は、可搬式であり、アーク溶接装置と比較して相対的に小さなフットプリントを有する。また、ヘッド外形は、様々な異なるシリンダ形状および外形を収容するために容易にカスタマイズされることができる。
【0049】
上述した溶接ヘッドおよび技術は、電子ビーム溶接に関して記載されるが、好ましくは溶接部位に真空を必要とするレーザー溶接にも適用可能である。本発明は、以前に小規模の溶接に使用されていた溶接技術が、大規模なワークピースと共に使用するのに適合されることを可能にし、溶接が数メートルにわたって進行する際に、真空が印加および維持されることを可能にする。