(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】電子的用途での使用に適したアラミド紙
(51)【国際特許分類】
D21H 13/26 20060101AFI20220401BHJP
B32B 15/12 20060101ALI20220401BHJP
D04H 1/4342 20120101ALI20220401BHJP
H01L 31/049 20140101ALI20220401BHJP
H01L 31/05 20140101ALI20220401BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20220401BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
D21H13/26
B32B15/12
D04H1/4342
H01L31/04 562
H01L31/04 570
B32B15/20
H05K1/03 610U
(21)【出願番号】P 2019528046
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2017080508
(87)【国際公開番号】W WO2018099855
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-09-11
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501469803
【氏名又は名称】テイジン・アラミド・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】Teijin Aramid B.V.
【住所又は居所原語表記】Velperweg 76, NL-6824 BM Arnhem, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アントニウス イェー.イェー. ヘンドリクス
(72)【発明者】
【氏名】モニカ ロペス-ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン-セース ティーケン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ディーデリング
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-508451(JP,A)
【文献】特表2008-542557(JP,A)
【文献】特表2016-505729(JP,A)
【文献】特開2015-074851(JP,A)
【文献】特開平11-061679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D04H1/00-18/04
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
H01L31/02
31/0216-31/0224
31/0236
31/0248-31/0256
31/0352-31/036
31/0392-31/078
31/18
51/42-51/48
H02S10/00-10/40
30/00-99/00
H05K1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度0.20~0.65g/cm
3、坪量30~280g/m
2のアラミド紙であって、前記アラミド紙は、
線密度2.6デシテックス以下、長さ0.5~25mmのアラミドショートカットを10~40重量%と、
アラミドフィブリドを10~
80重量%と
、
アラミドパルプを10~80重量%と
を含み、ここで、前記アラミドショートカットは、パラ系アラミドショートカットを少なくとも70重量%含み、かつ前記アラミドフィブリドは、パラ系アラミドフィブリドを少なくとも70重量%含む、アラミド紙。
【請求項2】
密度が、少なくとも0.30g/cm
3
でかつ/または最大で0.60g/cm
3
である、請求項1記載のアラミド紙。
【請求項3】
アラミドを、少なくとも80重量
%含む、請求項1または2記載のアラミド紙。
【請求項4】
前記アラミドは、パラ系アラミドを少なくとも85重量
%含む、請求項1から3までのいずれか1項記載のアラミド紙。
【請求項5】
アラミドフィブリドを、少なくとも20重量
%含む、請求項1から4までのいずれか1項記載のアラミド紙。
【請求項6】
アラミドショートカッ
ト10~38重量%
を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載のアラミド紙。
【請求項7】
アラミドショートカット10~40重量%を、アラミドフィブリド20~80重量%およびアラミドパルプ10~40重量%と組み合わせて含む、請求項
1記載のアラミド紙。
【請求項8】
アラミドパルプは、パラ系アラミドパルプである、請求項1から7までのいずれか1項記載のアラミド紙。
【請求項9】
アラミドパルプは、フィブリル化したアラミドショートカットである、請求項1から8までのいずれか1項記載のアラミド紙。
【請求項10】
プリント回路板または太陽電池のための基材として使用するための、請求項1から9までのいずれか1項記載のアラミド紙。
【請求項11】
少なくとも1×10
6
Ω/sq.の表面抵抗率を有する、請求項1から10までのいずれか1項記載のアラミド紙。
【請求項12】
請求項1から
11までのいずれか1項記載のアラミド紙に樹脂を含浸させた層を少なくとも1つ含む、複合シート。
【請求項13】
請求項
12記載の複合シートを備えた積層体であって、前記複合シートの少なくとも一方の面上に銅層が存在する、積層体。
【請求項14】
請求項
13記載の積層体を備えたプリント回路板であって、前記銅層に電気部品が付与されている、プリント回路板。
【請求項15】
請求項
12記載の複合シートをバッキングとして備えた、太陽電池。
【請求項16】
プリント回路板における、または太陽電池用のバッキングにおける、請求項1から
11までのいずれか1項記載のアラミド紙の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子的用途の基材としての使用に適したアラミド紙に関する。本発明はまた、前記用途に適した樹脂含浸アラミド紙および前記紙の使用にも関する。
【0002】
多くの電子的用途では、中に存在する電子部品を物理的に支持するためのベースまたは基材が使用されている。そのような用途の例としては、例えばプリント回路板および太陽電池が挙げられる。基材は、通常は、基材シートとマトリックス樹脂とからなる。電子的用途で使用するための基材ボードは、様々な要件を満たす必要がある。良好な絶縁特性に加えて、該基材ボードは、長期の使用にわたって良好な寸法安定性を示す必要がある。さらに、電子的用途の基材ボードの重要な特徴の1つに、熱膨張係数(CTE)が低いことが挙げられる。これは、電気機器の温度が使用時にしばしば上昇し、使用後に低下するためである。温度変化は、電子機器の製造時にも起こる。基材ボードの熱膨張係数が高すぎると、製造または使用時のボードの膨張および収縮によってボード上の接続部および電子部品が損傷する場合がある。
【0003】
欧州特許第178943号明細書(EP 178943)では、プリント回路板においてパラ系アラミドヤーンの織布シートを使用する可能性について言及されている。パラ系アラミドヤーンは、そのCTEが低いことが知られている。しかし欧州特許第178943号明細書(EP 178943)には、パラ系アラミドヤーンをベースとする織布シートが、織布内でヤーンが交差する箇所で望ましくない樹脂の微小クラックを生じる傾向があることが示されている。欧州特許第178943号明細書(EP 178943)では、高密度パラ系アラミド紙および樹脂をベースとし、好ましくはパラ系アラミドパルプとパラ系アラミドフロックとの双方を含有するプリント回路板が提案されており、これは、望ましい低いCTE値を示すとともに、微小クラックを有しないことが示されている。
【0004】
しかし、本分野ではなおも改善の余地があることが判明した。より詳細には、紙により吸収される樹脂の量と紙への樹脂の浸透との双方に関して紙の樹脂含浸が十分となることを保証すべく、改善を要することが判明した。このことは、製造および使用時に樹脂とアラミド紙との良好な結合を維持するために重要である。さらに、紙の均質性も重要である。不均質な紙によって、最終製品が不十分な特性を示すことは明らかであろう。とりわけ、特に紙が薄くなっている場合には、これを達成することは困難となり得る。
【0005】
したがって、アラミド紙に関連する低CTEに加えて良好な均質性および樹脂含浸特性を示す、電子的用途の基材ボードにおける使用に適した紙が当技術分野で必要とされている。
【0006】
前記課題は、電子的用途の基材ボードであって、前記基材ボードは、密度0.20~0.65g/cm3、坪量30~280g/m2のアラミド紙を含み、前記アラミド紙は、線密度2.6デシテックス以下、長さ0.5~25mmのアラミドショートカットを10~40重量%と、アラミドフィブリドを10~90重量%とを含み、ここで、前記アラミドショートカットは、パラ系アラミドショートカットを少なくとも70重量%含み、かつ前記アラミドフィブリドは、パラ系アラミドフィブリドを少なくとも70重量%含む基材ボードを提供することにより解決可能であることが判明した。
【0007】
上記特性を示す紙を電子的用途で使用することによって、低いCTEに加え、樹脂の良好な接着および浸透に起因して良好な均質性および良好な寸法安定性も保証されることが判明した。本発明のさらなる利点およびその特定の実施形態は、さらなる説明から明らかとなるであろう。
【0008】
米国特許出願公開第2014/0034256号明細書(US 2014/0034256)および米国特許出願公開第2010/0206502号明細書(US 2010/0206502)には、導電性フィラーを含むアラミド含有紙が記載されていることに留意されたい。これらの参考文献に記載されている紙は導電性であり、したがって、非導電性であるべき電子的用途の基材としての使用には適さない。
【0009】
欧州特許出願公開第0930393号明細書(EP 0930393)には、ショートカットおよびフィブリドを含む耐熱性繊維紙が記載されている。該紙は、繊維40~97重量%とフィブリド3~60重量%とを含む。該ショートカットは好ましくは、パラ系アラミド70~95重量%とメタ系アラミド5~30重量%とを含む。
【0010】
以下に、本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1に、本発明による紙および比較紙に関する、初期状態の紙の密度に対する含浸紙の樹脂含分のプロットを示す。
【
図2】
図2に、本発明による紙および比較紙に関して、樹脂の浸透を調べるための紙の表側および裏側の樹脂滴の写真を示す。
【
図3】
図3に、紙の均質性を調べるための、本発明による紙および比較紙の光学顕微鏡写真を示す。
【0012】
本発明によるアラミド紙は、密度が0.20~0.65g/cm3である。この比較的低い密度が、良好な樹脂含浸特性、特に良好な樹脂吸収性および樹脂浸透性を得る上で重要であることが判明した。密度が、少なくとも0.30g/cm3、特に少なくとも0.40g/cm3でかつ/または最大で0.60g/cm3、特に最大で0.55g/cm3であることが好ましい場合がある。
【0013】
アラミドベースの紙は、坪量が30~280g/m2である。正確な坪量は、電子的用途の基材ボードの望ましい強度および厚さに依存する。少なくとも35g/m2の坪量が好ましい場合がある。用途に応じて、最大で100g/m2、特に最大で65g/m2の坪量が好ましい場合がある。
【0014】
本明細書の文脈において、アラミドとは、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ハライドとの縮合ポリマーである芳香族ポリアミドを指す。アラミドは、メタ型およびパラ型で存在し得る。本発明において、アラミドショートカットは、パラ系アラミドショートカットを少なくとも70重量%含み、アラミドフィブリドは、パラ系アラミドフィブリドを少なくとも70重量%含む。パラ系アラミドの例は、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(4,4’-ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン-4,4’-ビフェニレンジカルボン酸アミド)およびポリ(パラフェニレン-2,6-ナフタレンジカルボン酸アミド)またはコポリ(パラフェニレン/3,4’-ジオキシジフェニレンテレフタルアミド)である。
【0015】
パラ系アラミドは、耐熱性および熱安定性が改善されており、また熱膨張係数(CTE)がメタ系アラミドよりも低いことから、アラミドショートカットが、パラ系アラミドショートカットを少なくとも85重量%、特に少なくとも95重量%、さらに特に少なくとも98重量%含むことが好ましい。同様の理由から、アラミドフィブリドが、パラ系アラミドフィブリドを少なくとも85重量%、特に少なくとも95重量%、さらに特に少なくとも98重量%含むことが好ましい。
【0016】
ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)(PPTAとも示される)の使用が特に好ましい。このことは、本発明による紙において存在するすべてのアラミド成分について該当する。
【0017】
本発明のアラミド紙は総じて、アラミドを少なくとも80重量%、さらに特に少なくとも90重量%、さらに特に少なくとも95重量%、さらに特に少なくとも98重量%含む。本発明によるアラミド紙が実質的にアラミドからなることが特に好ましく、ここで、「実質的に~からなる」という用語は、パラ系アラミド以外の成分は、その存在が合理的に避けられないもののみであることを意味する。重量パーセントは、乾燥紙について計算されたものである。
【0018】
電子的用途の基材としての使用に適するように、本紙は導電性フィラーを含まない。このことは、本紙が含有する導電性材料が、1重量%未満、特に0.5重量%未満であることを意味する。本発明のアラミド紙が、少なくとも1×106Ω/sq.、特に少なくとも1×108Ω/sq.、さらに特に少なくとも1×1010Ω/sq.の表面抵抗率を有することがさらに好ましい。最大値は重要ではなく、無限大であり得る。実際の上限としては、1×1020Ω/sq.の値を挙げることができる。
【0019】
本発明のアラミド紙におけるアラミドが、パラ系アラミドを少なくとも85重量%、特に少なくとも95重量%、さらに特に少なくとも98重量%含むことが好ましく、ここで、パラ系アラミドは好ましくは、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)である。このことは、本発明による紙において存在するすべてのアラミド成分の合計について該当する。
【0020】
アラミドベースの紙は、線密度2.6デシテックス以下、長さ0.5~25mmのアラミドショートカットを10~40重量%含む。
【0021】
その名前が示唆するように、アラミドショートカットは、アラミド繊維を所望の長さに切断することによって得られる。ショートカットが短すぎると、紙の強度が不十分になる場合がある。ショートカットが長すぎると、処理が比較的難しくなる場合がある。一実施形態において、長さ0.5~15mm、特に2~10mm、さらに特に3~8mmのアラミドショートカットが使用される。
【0022】
ショートカットの線密度は、2.6デシテックス以下である。線密度が比較的低いことによって均質性が改善された紙が得られることから、線密度が比較的低いことが好ましいと考えられる。一実施形態において、ショートカットが有する線密度は、2.0デシテックス未満、特に1.7デシテックス未満、さらに特に1.3デシテックス未満、さらに好ましくは1.2デシテックス未満である。一実施形態において、ショートカットの線密度は、1.0デシテックス以下である。ショートカットの線密度は総じて、少なくとも0.3デシテックス、特に少なくとも0.4デシテックスであり、いくつかの実施形態では少なくとも0.5デシテックスである。
【0023】
ショートカットの量は、10~40重量%である。使用するショートカットが10重量%未満であると、紙の強度が不十分になる。使用するショートカットが40重量%を超えると、紙の均質性に悪影響が及ぶ。良好な絶縁特性を示す均質な紙を保証するためには、ショートカットの量が最大で38重量%、特に最大で35重量%であることが好ましい場合がある。
【0024】
アラミドベースの紙は、アラミドフィブリドを10~90重量%含む。上記で示したように、アラミドフィブリドは、パラ系アラミドフィブリドを少なくとも70重量%含み、アラミドフィブリドがパラ系アラミドフィブリドを少なくとも85重量%、特に少なくとも95重量%、さらに特に少なくとも98重量%含むことが好ましい。
【0025】
アラミドフィブリドは、当技術分野で知られている。本明細書の文脈において、アラミドフィブリドという用語は、小さな非造粒状の非硬質フィルム状粒子を指す。フィルム状フィブリド粒子は、その3つの寸法のうち2つがミクロンオーダーであり、1つの寸法が1ミクロン未満である。一実施形態において、本発明において使用されるフィブリドが有する平均長は、0.2~2mmの範囲にあり、平均幅は、10~500ミクロンの範囲にあり、平均厚さは、0.001~1ミクロンの範囲にある。
【0026】
一実施形態において、アラミドフィブリドは、ファインを40%未満、好ましくは30%未満含み、ここで、ファインとは、250ミクロン未満の長さ加重繊維長(LL)を有する粒子と定義される。
【0027】
メタ系アラミドフィブリドは、米国特許第2,999,788号明細書(US 2,999,788)からよく知られているように、ポリマー溶液をせん断沈殿させて凝固液とすることによって製造することができる。ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)(MPD-I)フィブリドの製造方法を開示している米国特許第3,756,908号明細書(US 3,756,908)から、全芳香族ポリアミド(アラミド)のフィブリドも知られている。パラ系アラミドフィブリドは、例えば国際公開第2005/059247号(WO 2005/059247)に記載されているような、かなり後に開発された高せん断法により製造され、該フィブリドは、ジェットスパンフィブリドとも呼ばれる。
【0028】
ショッパー・リーグラ(SR)値が50~90、好ましくは70~90、より好ましくは75~85のパラ系アラミドフィブリドを使用することが好ましい。これらのフィブリドは、好ましくは10m2/g未満、より好ましくは0.5~10m2/g、最も好ましくは1~4m2/gの比表面積(SSA)を有する。
【0029】
一実施形態において、LL0.25が少なくとも0.3mm、特に少なくとも0.5mm、さらに特に少なくとも0.7mmであるフィブリドが使用される。一実施形態において、LL0.25は、最大で2mm、さらに特に最大で1.5mm、さらに特に最大で1.2mmである。LL0.25とは、長さ0.25mm以下の粒子を考慮しないフィブリド粒子の長さ加重繊維長を表す。
【0030】
アラミドフィブリドの量が少なくとも20重量%、特に少なくとも30重量%、またはさらに少なくとも40重量%である場合に、好ましい特性を示す紙が得られることが判明した。
【0031】
一実施形態において、アラミドベースの紙は、アラミドパルプを含む。紙の他の成分に関しては、アラミドパルプは、パラ系アラミドパルプを少なくとも70重量%含む。アラミドパルプがパラ系アラミドパルプを少なくとも85重量%、特に少なくとも95重量%、さらに特に少なくとも98重量%含むことが好ましい。
【0032】
アラミドパルプは、当技術分野において周知である。アラミドパルプはアラミド繊維に由来することができ、該繊維を例えば0.5~6mmの長さに切断し、次いでこれをフィブリル化工程に供し、その際、より厚いステムに結合しているか否かにかかわらず、繊維をばらばらにしてフィブリルを形成する。この種のパルプは、長さが例えば0.5~6mmであり、ショッパー・リーグラが15~85であることを特徴とし得る。いくつかの実施形態において、パルプは、4~20m2/gの表面積を有し得る。
【0033】
本明細書の文脈において、パルプという用語には、フィブリルも包含される。すなわち、「パルプ」は主にフィブリル化部分を含み、繊維ステムをほとんどまたは全く含まない。このパルプ(アラミドフィブリルと示される場合もある)は、例えば国際公開第2004/099476号(WO 2004/099476)に記載のように、溶液から直接紡糸することによって得ることができる。一実施形態において、パルプは構造上の不規則性を有し、これは、未乾燥パルプのCSF(カナダ標準ろ水度)と乾燥パルプのCSFとの差が少なくとも100、好ましくは少なくとも150であると表される。一実施形態において、湿潤相においてカナダ標準ろ水度(CSF)値が300ml未満であり、乾燥後の比表面積(SSA)が7m2/g未満であり、好ましくは長さ250ミクロン超の粒子の重量加重繊維長(WL0.25)が1.2mm未満であり、より好ましくは1.0mm未満であるフィブリルが使用される。適切なフィブリルおよびその製造方法は、例えば国際公開第2005/059211号(WO 2005/059211)に記載されている。
【0034】
パルプが存在するか否か、また存在する場合にはどのような量で存在するかは、紙のさらなる組成に依存する。これに関しては、以下で詳説する。
【0035】
一実施形態において、本発明の紙は、上記アラミドショートカット10~40重量%、特に10~38重量%、さらに特に10~35重量%を、上記アラミドフィブリド90~60重量%と組み合わせて含む。
【0036】
他の実施形態において、本発明の紙は、上記アラミドショートカット10~40重量%、特に10~38重量%、さらに特に10~35重量%を、上記アラミドフィブリド10~80重量%および上記アラミドパルプ10~80重量%と組み合わせて含む。本実施形態において、紙が、上記アラミドショートカット10~40重量%を、上記アラミドフィブリド20~80重量%および上記アラミドパルプ10~40重量%と組み合わせて含むことが好ましい場合がある。
【0037】
一実施形態において、本発明による紙は、20ミクロン~1mmの範囲の、特に30ミクロン~500ミクロンの範囲の、さらに特に50~200ミクロンの範囲の厚さを有する。
【0038】
本発明の紙は、当技術分野で公知の方法によって製造することが可能である。一実施形態において、上記アラミドフィブリドと、上記ショートカットと、任意に上記パルプとを含む懸濁液、総じて水性懸濁液を製造する。この懸濁液を多孔質スクリーンに施与するが、これを、ランダムに織り合わせられた材料のウェブを該スクリーン上に置くというようにして行う。このウェブから例えば加圧および/または真空印加により水を除去し、続いて乾燥させて紙を製造する。所望の場合には、乾燥させた紙をカレンダー加工工程に供する。カレンダー加工工程は、当技術分野において公知である。該工程は総じて、紙を一組のロールに、場合により高温で通すことを含む。製紙工程で使用する前に、ワーリングブレンダーなどでフィブリドにせん断力をかけることが紙の均質性にとって有益であり得る。
【0039】
本発明はさらに、上記アラミド紙に樹脂を含浸させた層を少なくとも1つ含む複合シートにも関する。該複合シートは、太陽電池用の基材ボードやプリント回路板などの電子的用途で使用することができる。本発明の利点の1つとして、樹脂の種類および量とともに、複合シートのCTEを、組み合わせるべき部品のCTEに適合させることができる点が挙げられる。
【0040】
例えば複合シートがプリント回路板において使用される場合には、該シートには総じて銅層が備えられる。その場合、複合シートのCTEを銅層のCTEと一致するように、例えば5~15ppm/℃の範囲で調整することができる。
【0041】
複合シートを太陽電池において使用すべき場合には、複合シートのCTEを太陽電池のCTEと一致するように調整することができる。太陽電池が結晶質シリコンをベースとする場合には、複合シートのCTEは、好ましくは0~6ppm/℃の範囲にあり、特に1~5ppm/℃の範囲にあり、さらに特に2~4ppm/℃の範囲にある。
【0042】
本発明による紙のCTEは総じて、-5~+2ppm/℃の範囲にあり、特に-5~0ppm/℃の範囲にあり、さらに特に-5~-2ppm/℃の範囲にある。これらの範囲は、上記のようにパラ系アラミドが比較的高いパーセンテージで施与された場合に得ることができる。
【0043】
複合シートのCTEは、紙のCTEによって、ならびにその中に組み込まれた樹脂の量および種類によって決まる。自身の常識に基づいて樹脂の適切な種類および量を選択することは、当業者の範囲内である。
【0044】
適切な樹脂は、当技術分野において公知である。例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリウレア、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂およびポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフルオロカーボン樹脂が挙げられる。例えば上記樹脂と合成熱可塑性ゴムのような熱可塑性樹脂との混合物といった、樹脂の混合物もしばしば使用される。フルオロカーボン樹脂は、その低い誘電率、低い誘電損失および低い吸湿性の観点から好ましい場合がある。
【0045】
用途に応じて、樹脂の量は、例えば20~80重量%の範囲で広範囲で変動可能である。太陽電池用基材ボードにおいて使用すべき複合シートについては、この量は、20~50重量%の範囲であってよく、好ましくは25~45重量%の範囲であってよい。プリント回路板において使用すべき複合シートについては、より高いCTE値を達成するために、より多量の樹脂が望ましい場合がある。この場合、樹脂の量は、好ましくは40~75重量%の範囲であってよい。
【0046】
複合シートは、当技術分野で公知の方法によって製造することができ、これには例えば、例えば溶融物、溶液または分散液の形態の液相において紙に上記樹脂を含浸させ、そして該樹脂を凝固させることが包含される。
【0047】
樹脂の種類および配合に応じて、樹脂の凝固工程には、溶媒の除去および硬化のうちの1つまたは複数が包含され得る。硬化工程は熱硬化によって実施することができるが、他の硬化機構によっても実施することができる。これは本分野の一般常識の一部であり、本明細書においてさらなる説明は不要である。
【0048】
本発明のさらなる一実施形態によれば、プリント回路板が提供される。プリント回路板は、複合シートを銅で被覆して銅張積層体を製造し、該銅張積層体をさらに加工してプリント回路板を製造することにより製造される。
【0049】
したがって本発明はさらに、上記アラミド紙に樹脂を含浸させた層を少なくとも1つ含む複合シートを備えた積層体であって、前記複合シートの少なくとも一方の面上に銅層が存在する積層体に関する。銅層は、複合シートの表面全体を覆っていてもよいが、総じて複合シートの表面の一部のみを覆っている。銅層は、パターンの形態であってもよい。複合シートへの銅層の施与は当業者の一般常識の一部であり、本明細書においてさらなる説明は不要である。
【0050】
本発明はさらに、上記積層体を備えたプリント回路板であって、銅層に電気部品が付与されているプリント回路板に関する。銅層を有する積層体への電気部品の施与は当業者の一般常識の一部であり、本明細書においてさらなる説明は不要である。
【0051】
本発明のさらなる一実施形態によれば、本発明による複合シートをバッキングとして備えた太陽電池が提供される。太陽電池は当技術分野において公知であり、本明細書においてさらなる説明は不要である。
【0052】
本発明はさらに、アラミド紙と樹脂との層を少なくとも1つ含む複合シートにおける、または電子的用途の基材ボードにおける、例えばプリント回路板における、または太陽電池用のバッキングにおける、本明細書に記載のアラミド紙の使用に関する。
【0053】
本明細書に記載の様々な有利な実施形態について、これらが互いに矛盾しない限りはこれらを組み合わせることができることは、当業者に自明であろう。
【0054】
本発明を以下の例によって説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
例1:密度が樹脂吸収に及ぼす影響
紙を以下の組成で製造した:パラ系アラミドフィブリド50重量%、パラ系アラミドパルプ20重量%、および繊維長6mm、線密度1.7デシテックスのパラ系アラミドショートカット30重量%。いずれの紙も、坪量は55~56g/m2であった。
【0056】
初期状態の紙の密度は、約0.3g/ccであった。これらの紙をカレンダー加工することにより、より高密度の紙が得られた。紙の樹脂含浸特性を、以下のように調べた:各紙について、15×200mmの3つのストリップを製造した。各ストリップの重量を測定した。室温でイソプロパノールに溶解させたフェノールレゾール樹脂(Bakelite(登録商標)PF1143V)から樹脂浴を製造した。樹脂の粘度は、70±20mPa・sであった。各ストリップを樹脂浴に30秒間浸し、垂直に吊り下げて余剰分の樹脂を自由に流し出した。樹脂の滴下が止まったら、ストリップをオーブン内で60℃で45分間吊るして、樹脂から溶媒を蒸発させた。次にオーブン温度を175℃に上げ、ストリップをオーブン内に60分間放置して樹脂を硬化させた。樹脂含浸ストリップの重量を測定して、樹脂吸収量を算出した。結果を表1に示す。
【0057】
【0058】
表1から分かるように、密度の増加は、樹脂含分の減少を招く。
【0059】
図1に、初期状態の紙の密度に対する含浸紙の樹脂含分のプロットを示す。
図1から、0.7g/ccの密度で変曲点があるように見える。その値よりも低く、したがって本発明による範囲では、その密度よりも高い場合に比べて比較的多量の樹脂を紙に含浸させることができる。
【0060】
例2:密度が樹脂の浸透に及ぼす影響
例1の紙のストリップに、ピペットを用いて液体樹脂の液滴を供給した。紙のストリップ1枚当たり5滴の樹脂を施与した。樹脂は、イソプロパノールに溶解させたフェノールレゾール樹脂(Bakelite(登録商標)PF1143V)であり、室温で使用した。紙を24時間放置し、紙の裏側に認められた樹脂の量を測定することによって、樹脂の浸透を調べた。結果の写真を
図2に示す。結果を表2にまとめる。
【0061】
【0062】
これらの結果から、特許請求の範囲に記載された範囲を超える密度を有する紙は、紙を通る樹脂の浸透を示さないことが分かる。明らかに、樹脂は紙に含浸されていない。それとは対照的に、本発明による紙は、紙を通る樹脂の浸透、したがって紙への樹脂の含浸を示す。これらの結果は、例1の結果と一致している。特許請求の範囲に記載された値を超える密度を有する紙は、含浸時に吸収する樹脂がより少なく、樹脂は紙にそれほど深くは含浸されない。これは、樹脂とアラミドシートとの結合に関する指標の1つである。この結合が不十分である場合、例えばプリント回路板および太陽電池パネルなどの電子機器が装置の使用時に遭遇する加熱および冷却サイクルゆえに、アラミドシートと樹脂との結合が時間とともに崩壊する可能性がある。
【0063】
例3:組成が紙の均質性に及ぼす影響
紙の組成の影響を調べるために、表3に示す組成の紙を製造した。
【0064】
【0065】
いずれの紙も、坪量は40g/m
2であり、密度は約0.25g/cm
3であった。パラ系アラミドショートカットは、長さが6mmであり、線密度が1.7デシテックスであった。紙1は、本発明によるものである。紙2および3はいずれもショートカットの含分が高すぎるため、比較物である。光学顕微鏡を用いて25倍の倍率で、いずれの試料に対しても同一の設定(透過光、同一の強度)を用いて紙の特性を視覚的に調べて均質性を判断した。各紙について、2つの写真を
図3に示す。
図3から、比較紙2および3は、本発明による紙1よりも多くの「光点」を示すことが分かる。光点とは、周囲の紙よりも紙の密度が低い箇所である。したがって、それらの存在は紙が均質ではないことを示す。こうした密度の不規則性が樹脂含浸の不規則性を招き、これが使用時の紙の特性に悪影響を及ぼすことになる。これがピンホールを招く場合もあり、これによって電子機器における基材ボードの絶縁特性に影響が生じる。
【0066】
例4:組成が紙の透気度に及ぼす影響
例3に記載の紙の透気度を、ISO 5636/3に準拠して、透気度測定装置L&W166(Lorentzen & Wettre)を用いて測定した。得られた値がガーレーである。これは、ある圧力で、ある体積の空気が紙を通過するのに要する時間(秒)である。ガーレーが低いほど、紙の透気度は高い。結果を表4に示す。
【0067】
【0068】
表4から、本発明による紙1が、比較紙よりもはるかに高いガーレーを有することが分かる。いずれの紙も同一の面重量を有するため、これは、比較紙がより高い透気度を有することを意味する。これは、空気が紙を通過し得る薄い領域やピンホールがより多く存在することを示唆している。薄い領域やピンホールは、樹脂含浸の均質性および最終製品の特性に悪影響を及ぼす。