(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】物体の形状及び物体の空間的に変動する表面反射率を現場で測定する可搬デバイス
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20220401BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01N21/27 A
(21)【出願番号】P 2019528729
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(86)【国際出願番号】 CZ2017050059
(87)【国際公開番号】W WO2018099498
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2019-07-18
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】519185203
【氏名又は名称】チエスケー ビソケー ウツエニー テクニツケー ベー プラゼ
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ハヴァラン、ブラスティミル
(72)【発明者】
【氏名】ホセク、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ビットナー、イジー
(72)【発明者】
【氏名】ネムコヴァ、ザルカ
(72)【発明者】
【氏名】ツァプ、イジー
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114598(JP,A)
【文献】米国特許第06018396(US,A)
【文献】特開2013-228236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/00-21/01
21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの形状と、サンプル表面の空間的に変動する表面の反射率を測定するデバイスであって、基本ドーム状3次元構造体(2)は、測定するサンプル(1)の測定表面(1.1)の上に置かれ、前記基本ドーム状3次元構造体(2)は、前記サンプル(1)に面する側に凹形に湾曲する少なくとも1つの凹形壁(3)を有し、
前記サンプル(1)の測定表面にアパーチャを通して照明光を照射する少なくとも2つの照明ユニットと、少なくとも1つのカメラ又は検出器を含む取得系を備え、前記アパーチャは前記基本ドーム状3次元構造体(2)に対して固定あるいは移動可能に接続されており、
前記デバイスは、枠(30)、及び前記基本ドーム状3次元構造体(2)を回転駆動する第1のモータ(16)を更に備え、前記第1のモータ(16)は、前記枠(30)に取り付けられ、前記基本ドーム状3次元構造体(2)は、回転軸(6)を有する回転部品(15)に接続し、
前記回転部品(15)の回転軸(6)は、前記基本ドーム状3次元構造体(2)の前記凹形壁(3)、又は前記凹形壁(3)内に生成した開口を通過すること、並びに少なくとも1つの第1のアーム(7)は、前記取得系上で撮像を仲介する少なくとも2つの
ミラー及び/又はレンズ及び/又はプリズムを備える光学要素(11)のセットを支持し、前記光学要素(11)が、前記基本ドーム状3次元構造体(2)と共に回転できるようにし、前記第1のアーム(7)は、前記基本ドーム状3次元構造体(2)又は前記基本ドーム状3次元構造体(2)に機械的に固定した他の部品に取り付けた少なくとも1つの第2のモータ(17)にも機械的に接続され、前記基本ドーム状3次元構造体(2)に接続する基準座標系に対して前記第1のアーム(7)の運動を個々に駆動することを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記第1のアーム(7)は、前記サンプル(1)を照明する少なくとも2つの第2の照明ユニット(9)及び/又は第1の照明光案内系の少なくとも2つの出口アパーチャも支持することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記凹形壁(3)は、1つ又は複数の第2の照明光案内系(21)の出口アパーチャを備え、前記第2の照明光案内系は、前記サンプル(1)を照明する第4の照明ユニット(22)への入力に接続される、及び/又は前記凹形壁(3)は、前記サンプル(1)を照明する1つ又は複数の第1の照明ユニット(4)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第1のアーム(7)は、少なくとも2つのカメラ及び/又は少なくとも2つの検出器も支持することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記サンプル(1)を照明する少なくとも2つの第3の照明ユニット(12)のセットを支持する少なくとも1つの第2のアーム(8)は、前記基本ドーム状3次元構造体(2)又は前記基本ドーム状3次元構造体(2)に機械的に接続した他の部品に取り付け、前記第2のアーム(8)は、前記基本ドーム状3次元構造体(2)又は前記基本ドーム状3次元構造体(2)に機械的に接続した他の部品に取り付けた少なくとも1つの第3のモータ(18)に機械的に接続され、前記基本ドーム状3次元構造体(2)に接続する基準座標系に対して前記第2のアーム(8)の運動を個々に駆動することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
少なくとも2つの取得要素(14)のセットを支持する少なくとも1つの第3のアーム(13)は、前記基本ドーム状3次元構造体(2)又は前記基本ドーム状3次元構造体(2)に機械的に接続した他の部品に取り付けられ、前記取得要素(14)は、少なくとも1つの検出器及び/又は少なくとも1つのカメラを含み、前記第3のアーム(13)は、前記基本ドーム状3次元構造体(2)又は前記基本ドーム状3次元構造体(2)に機械的に接続した他の部品に取り付けた少なくとも1つの第4のモータ(19)に機械的に接続され、前記基本ドーム状3次元構造体(2)に接続する基準座標系に対して前記第3のアーム(13)の運動を個々に駆動することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記サンプル(1)を照明する前記第1の照明ユニット(4)及び/又は前記サンプル(1)を照明する前記第4の照明ユニット(22)は、前記第1の照明ユニット(4)及び/又は前記第4の照明ユニット(22)を個々に及び/又は群で制御する制御ユニット(20)に個々に及び/又は群で電気的に接続され、カメラ及び/又は検出器は、照明と反射光の取得とを同期するため、前記制御ユニット(20)に接続されることを特徴とする、請求項3に記載のデバイス。
【請求項8】
前記サンプル(1)を照明する前記第2の照明ユニット(9)は、前記第2の照明ユニット(9)を個々に及び/又は群で制御するため、前記制御ユニット(20)に個々に及び/又は群で電気的に接続されることを特徴とする、
請求項2に従属する場合の請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記サンプル(1)を照明する前記第3の照明ユニット(12)は、前記第3の照明ユニット(12)を個々に及び/又は群で制御するため、前記制御ユニット(20)に個々に及び/又は群で電気的に接続されることを特徴とする、
請求項5に記載の事項を合わせて含む請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1のモータ(16)及び前記第2のモータ(17)は、照明と、前記サンプル(1)からの反射光の取得と、前記基本ドーム状3次元構造体(2)の運動と、前記第1のアーム(7)の運動とを同期するため、前記制御ユニット(20)に電気的に接続されることを特徴とする、請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第3のモータ(18)は、照明と、前記サンプル(1)からの反射光の取得と、前記基本ドーム状3次元構造体(2)の運動と、前記第2のアーム(8)の運動とを同期するため、前記制御ユニット(20)に電気的に接続されることを特徴とする、
請求項5に記載の事項を合わせて含む請求項7に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第4のモータ(19)は、照明と、前記サンプル(1)からの反射光の取得と、前記基本ドーム状3次元構造体(2)の運動と、前記第3のアーム(13)の運動とを同期するため、前記制御ユニット(20)に電気的に接続されることを特徴とする、
請求項6に記載の事項を合わせて含む請求項7に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスは、固定サンプルの周囲から前記サンプルを抽出することを必要とせずに、前記固定サンプルの現場での測定を可能にすることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明するデバイスの技術設計及びデバイスの測定原理は、技術的光学機器の分野に分類することができ、この技術的光学機器は、サンプルの非接触光学撮像を使用し、デジタル産業、コンピュータ・ビジョン、材料の品質管理、及び材料の外観を特徴付けることが必要な全ての領域、例えば文化遺産人工物を保護する場合に適用される。様々な種類のサンプルからの光学的記録及びデータ再構成を使用すると、実際の物体の表現を3D仮想現実内に生成することが可能である。
【背景技術】
【0002】
実世界における物体表面の外観は、従来、画像を通じて知覚され、これらの画像は、人間の目を含め、使用する光学系の解像度によって与えられる物体の表面にわたる観察方向、照明方向、並びに光のスペクトル及び空間分布に応じて異なる。コンピュータ・グラフィックスの目標は、物体が実世界で知覚されるのと同じように物体の外観を達成する仮想世界を生成することである。仮想現実では、この世界は、表面外観の適切な表現を含む3D物体として表される。表面構造の外観の高忠実度を達成するために使用する方法の1つは、双方向テクスチャ関数(BTF)法である。この方法は、出版物、K.J.Danaほか著、「Reflectance and Texture of Real-world Surfaces」、1999年出版、ACM Transactions on Graphics、18巻、1号、1~34頁(非特許文献1)に紹介されている。物体表面の外観は、ここでは、照明方向と取得方向との様々な組合せで撮影した一群の数千の画像として表される。BTFデータの取得は、典型的には、時間を要する工程であり、個々のBTF画像に対して選択した方向、空間及びスペクトル解像度によっては数時間又は数日さえかかる。
【0003】
サンプルの照明方向とサンプルからのデータ取得方向との様々な組合せを用い、可能な最も短い時間で十分な数の画像を得るという問題は、世界中の他の場所で様々な方法で解決されている。
【0004】
例えば、出版物、G.Mullerほか著、「Rapid synchronous acquisition of geometry and BTF for cultural heritage artefacts」、2005年出版、6th International Symposium on Virtual Reality, Archaeology and Cultural Heritage (VAST)巻、13~20頁(非特許文献2)、又は出版物、C.Schwartzほか著、「Design and Implementation of Practical Bidirectional Texture Function Measurement Devices Focusing on the Developments at the University of Bonn」、2014年出版、雑誌Sensors、14巻、5号、7753~7819頁(非特許文献3)に示されているように、多数のサンプルの照明源及びサンプルの画像を取得する検出器を使用することによって、サンプルの十分な数の画像の取得に必要な時間を短縮する問題に対処する静置デバイスがある。しかし、そのようなデバイスは、デバイスの構造全体の機械的安定性を保証するため、静置式でかさばるものである。更に、そのようなデバイスでは、光源及び検出器の固定位置のために、サンプルの照明方向とサンプルからのデータ取得方向との組合せは、有限数でしか得ることができない。固定格子状光源及び画像センサを有するデバイスの場合、照明源又は画像センサは、球体上に互いに隣り合わせに配置することができるような個々の照明源又は画像センサのサイズによって、サンプルの相互照明方向及び/又はサンプルからのデータ取得方向の最小差がもたらされ、これらの方向に対する角度解像度は、光源及びセンサを置く球体の半径の増大によってのみ増大させることができる。このことは、有用性の観点から軽量が重要であるBTF測定用小型機器、即ち、可搬機器の構成にとって、照明方向とデータ取得方向との組合せに対する角度解像度の達成を著しく制限するものである。別の設計の可能性には、出版物、C.Schwartzほか著、「Dome II: A Parallelized BTF Acquisition System」、2013年6月出版、the Eurographics Workshop on Material Appearance Modelling: Issues and Acquisition(非特許文献4)に述べられているように、サンプルを運動させることを伴う。そのような方法は、サンプルがサンプルの環境に一体化している場合、現場で測定を行う可搬デバイスを実施すると、抽出によりサンプルの配置に欠陥をもたらすため、そのような可搬デバイスの実施には、全く不適当である。
【0005】
例えば、出版物、Y.J.Han及びK.Perlin著、「Measuring bidirectional texture reflectance with a kaleidoscope」、2003年出版、雑誌ACM Transactions on Graphics、22(3)号、741~748頁(非特許文献5)、又は出版物、J.Filipほか著、「Rapid material appearance acquisition using consumer hardware」、2014年出版、雑誌Sensors、14(10)号、19785~19805頁(非特許文献6)に提示されるような、より小型のデバイスもある。それにもかかわらず、これらの解決策は、一般に、取得画像の空間解像度をかなり制限し、照明方向と取得方向との組合せをかなり少数にするものである。全体的な測定は、多数の画像取得が使用可能でなければ、非常に長時間かかるか、又は光学機器を倍増した場合、デバイスの個々の部品の運動がなければ、少数の限られた測定方向しか達成されない。
【0006】
最近、J.Hosek、V.Havranほか著、「Realisation of Circular Motion for Portable BTF Measurement Instrument」2015年、雑誌The Romanian Review Precision Mechanics, Optics & Mechatronics、48号、252~255頁(非特許文献7)が出版された。この機器は、球形表面に、LEDダイオード、いくつかのカメラを有する個々の可動アームを備える。カメラを有するアームの可動性により、機器のサイズを小さくすることを可能にするが、デバイスのサイズはカメラのサイズによって依然として制限されている。このデバイスにおける球形表面に固着した光源から来る照明方向と撮像方向との組合せは、特に、デバイス全体がより小型である場合、依然としてかなり制限され、これにより、アーム上に少数のカメラしか置くことが可能ではない。この場合、このことは、サンプルの照明方向とサンプルからのデータ取得方向との組合せに対する角度解像度の達成を低減する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】K.J.Danaほか著、「Reflectance and Texture of Real-world Surfaces」、1999年出版、ACM Transactions on Graphics、18巻、1号、1~34頁
【文献】G.Mullerほか著、「Rapid synchronous acquisition of geometry and BTF for cultural heritage artefacts」、2005年出版、6th International Symposium on Virtual Reality, Archaeology and Cultural Heritage (VAST)巻、13~20頁
【文献】C.Schwartzほか著、「Design and Implementation of Practical Bidirectional Texture Function Measurement Devices Focusing on the Developments at the University of Bonn」、2014年出版、雑誌Sensors、14巻、5号、7753~7819頁
【文献】C.Schwartzほか著、「Dome II: A Parallelized BTF Acquisition System」、2013年6月出版、the Eurographics Workshop on Material Appearance Modelling: Issues and Acquisition
【文献】Y.J.Han及びK.Perlin著、「Measuring bidirectional texture reflectance with a kaleidoscope」、2003年出版、雑誌ACM Transactions on Graphics、22(3)号、741~748頁
【文献】J.Filipほか著、「Rapid material appearance acquisition using consumer hardware」、2014年出版、雑誌Sensors、14(10)号、19785~19805頁
【文献】J.Hosek、V.Havranほか著、「Realisation of Circular Motion for Portable BTF Measurement Instrument」、2015年、雑誌The Romanian Review Precision Mechanics, Optics & Mechatronics、48号、252~255頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
説明する発明による解決策は、データ収集の遅さ、又は照明方向と取得方向と組合せが少数である収集データといった不十分さを除くものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、物体の形状を測定する可搬機器、及び可搬機器の双方向テクスチャ関数に関し、可搬機器においては、静置サンプルの測定表面上に基本3次元物体が置かれ、基本3次元物体は、サンプルに面する側に凹形に湾曲する少なくとも1つの凹形壁を有する。この凹形壁は、サンプルを照明する第1の照明ユニット、及び凹形壁を通り、基本3次元物体に交差する少なくとも1つの開口を備える。機器は、少なくとも1つのカメラ又は検出器を含む取得系も含む。デバイスの本質は、デバイスが枠も含み、この枠に取り付けられるのは、基本3次元物体を回転駆動する第1のモータであることである。基本3次元物体は、回転軸を有する回転部品に接続され、この回転部品は、第1のモータのシャフトに直接接続されるか、又は第1のモータのシャフトに他の部品により接続される。回転部品の回転軸は、基本3次元物体の凹形壁の少なくとも1つの開口を通過するか、又は基本3次元物体の凹形壁を直接通過する。取得系上で撮像に寄与する少なくとも2つの光学要素のセットを支持する少なくとも1つの第1のアームが、基本3次元物体又は基本3次元物体に機械的に接続する他の部品に取り付けられることも重要である。この第1のアームは、基本3次元物体又は基本3次元物体に機械的に接続した他の部品に取り付けた少なくとも1つの第2のモータに機械的に接続され、基本3次元物体に接続する基準座標系に対して第1のアームの運動を個々に駆動する。
【0010】
第1のアームによって支持される取得系上の撮像に寄与する光学要素が、レンズ及び/又はミラー及び/又は撮像バンドル及び/又は光学プリズムを含む場合、有利である。
【0011】
第1のアームが、サンプルを照明する少なくとも2つの第2の照明ユニット及び/又は第1の照明光案内系の少なくとも2つの出口アパーチャも支持する場合、有利である。
【0012】
凹形壁が、1つ又は複数の第2の照明光案内系の出口アパーチャを備える一方で、これら第2の照明光案内系が、サンプルを照明する第4の照明ユニットに接続される、及び/又は凹形壁が、サンプルを照明する1つ又は複数の照明ユニットを備える場合も、有利である。
【0013】
第1のアームが、少なくとも2つのカメラ及び/又は少なくとも2つの検出器を支持する場合も、有利である。
【0014】
別の可能なバージョンでは、サンプルを照明する少なくとも2つの第3の照明ユニットのセットを支持する少なくとも1つの第2のアームは、基本3次元物体又は基本3次元物体に固着した部品に接続される。この第2のアームは、基本3次元物体又は基本3次元物体に固着した他の部品に接続した少なくとも1つの第3のモータに機械的に接続され、基本3次元物体に接続する基準座標系に対して第2のアームの運動を個々に駆動する。
【0015】
別の好ましい実施形態では、少なくとも2つの相互分離取得要素のセットを支持する少なくとも1つの第3のアームは、基本3次元物体又は基本3次元物体に機械的に固着した部品に接続され、これらの取得要素は、少なくとも1つの検出器及び/又は少なくとも1つのカメラを含む。この第3のアームは、基本3次元物体又は基本3次元物体に機械的に固着した他の部品に取り付けた少なくとも1つの第4のモータに機械的に接続され、基本3次元物体に接続する基準座標系に対して第3のアームの運動を個々に駆動する。
【0016】
サンプルを照明する第1の照明ユニット及び/又はサンプルを照明する第4の照明ユニットは、有利には、これらの第1の照明ユニット及び/又は第4の照明ユニットを個々に及び/又は群で制御する制御ユニットに個々に及び/又は群で電気的に接続される。カメラ及び/又は検出器も、照明と反射光の取得とを同期するため、この制御ユニットに接続される。
【0017】
サンプルを照明する第2の照明ユニットも、有利には、これらの第2の照明ユニットを個々に及び/又は群で制御する制御ユニットに個々に及び/又は群で電気的に接続される。
【0018】
別の有利なバージョンでは、サンプルを照明する第3の照明ユニットは、有利には、これらの第3の照明ユニットを個々に及び/又は群で制御する制御ユニットに個々に及び/又は群で電気的に接続される。
【0019】
第1のモータ及び第2のモータが、照明と、サンプルからの反射光の取得と、基本3次元物体の運動と、第1のアームの運動とを同期するため、制御ユニットに電気的に接続される場合、有利である。
【0020】
第3のモータが、照明と、サンプルからの反射光の取得と、基本3次元物体の運動と、第2のアームの運動とを同期するため、制御ユニットに電気的に接続される場合、有利である。
【0021】
第4のモータが、照明と、サンプルからの反射光の取得と、基本3次元物体の運動と、第3のアームの運動とを同期するため、制御ユニットに電気的に接続されるバージョンも、有利である。
【0022】
本発明の解決策の著しい利点は、本発明が、可搬デバイスを提供し、現場での測定を可能にし、サンプルの様々な照明方向及びデータ取得方向の十分な数の画像の取得に必要な時間を著しく短縮することである。多数の照明ユニット、検出器又はカメラ及び取得に寄与する要素のために可能であるため、デバイス内での照明方向とデータ取得方向との組合せのため、並びに選択した運動方向及び範囲でこれらの運動を制御することが可能であるために、サンプル照明方向とサンプルからのデータ取得方向との所与の数の組合せを記録する測定時間を短縮すること、及び/又は照明方向と取得方向との無限の組合せを達成することが可能である。このことは、基本3次元物体又は基本3次元物体に機械的に固着した他の部品に接続したアームの存在により達成され、この物体は、第2の照明光案内系のアパーチャ又は第1の照明ユニットを支持し、これらのアームは、基本3次元物体に対して個々の1つ又は複数の運動も実施し、取得に寄与する要素及び/又は検出器及び/又はカメラ及び/又は他の照明ユニットを支持する。したがって、小型サイズのデバイスでさえ、サンプルの照明方向とサンプルからのデータ取得方向との任意の組合せ(理論的には無数の相互に異なる取得画像)を得ることが可能である。
【0023】
適切な光学系又は光学系の部品を第1の移動アーム上に配置することは、説明する発明では非常に重要である。この光学系は、移動アームから離れて位置するカメラ及び検出器上での撮像も実施する。この光学系は、群(撮像バンドル、ミラー、レンズ、プリズム)から選択した、取得系上の撮像に寄与する少なくとも1つの種類の要素も含む。同時に、第2の照明ユニット及び/又は第1の照明光案内系の出口アパーチャは、任意選択で、移動アーム上に位置する。このことは、カメラ又は検出器が有利には移動アームから離れて位置するため、カメラ又は検出器の物理的寸法によって制限されない超小型サイズの基本3次元物体を実装することを可能にする、及び/又は取得系上の撮像に寄与する要素の多数のアパーチャを第1のアーム上で使用することにより、照明方向と、一瞬で記録される取得方向との組合せの数を増大させることを可能にする。これらの要素は、検出器又はカメラの実際の寸法よりも小さな物理的寸法を有する。また、他の第2の照明ユニットを別の移動アーム上に置くことが可能であり、これにより、再度、基本3次元物体上への照明ユニットの設置によって与えられる値を上回って照明方向の組合せの数を増大させる。
【0024】
デバイスの実施例を添付の図に示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】超小型サンプルのための可搬デバイスの小型実施形態を示す図である。
【
図3】サンプルのより大きな測定領域のためのデバイスの一例の図であり、取得系上の撮像に寄与する要素の出口アパーチャ、並びに更にはカメラ及び/又は検出器のアパーチャは、サンプルの中心部からより大きな距離を有する。
【
図4】個々の要素の規則的な格子状アパーチャ内の第1の照明ユニットの分布の一例の図であり、基本3次元物体の領域にわたり、アパーチャに可変密度をもたらす。
【
図5】アーム上で個々の要素のアパーチャが規則的な距離にある1つのアームの図、及び個々の要素のアパーチャが不規則な距離にある1つのアームの図である。
【
図6】実装したデバイスの写真であり、概略図の参照符号に対応する実際の要素を示す。
【
図7】サンプルに対する基本3次元物体の運動構成の2つの代替選択を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
同じ種類の要素が多数あることが多いので、明確にするため、図の一部では、参照番号は同じ種類の要素を全て示しはしない。
【0027】
以下で説明する好ましい実施形態は、多くの実施形態の一部にすぎず、これらは、本発明の保護下にあり、本発明の概念を例示するものである。これらの実施形態は、選択した適切な構成にすぎず、本発明の保護の範囲を制限するものではない。
【0028】
説明する解決策の本質は、可搬デバイスであり、この可搬デバイスは、照明源及び検出器の増倍により照明方向と取得方向とを組み合わせて、十分な数の画像の取得に必要な時間を短縮し、サンプルの照明方向とサンプルからのデータ取得方向との無数の組合せの達成を可能にする。このことは、デバイスの個々の部品、特に、基本3次元物体2の運動によって達成され、基本3次元物体2は、第2の光案内系21の出口アパーチャ及び/又は第1の照明ユニット4並びに他の可能な要素を備え、この基本3次元物体2は、アーム7、8及び13の運動によって回転運動を実施し、アーム7、8及び13は、取得系上の撮像に寄与する光学要素11、第2の照明ユニット9、第1の照明光案内系の出口アパーチャ、第3の照明ユニット12又は更にはカメラ若しくは検出器を支持し、これらのアームは、基本3次元物体2に直接取り付けられるか、又は他の部品を通じて取り付けられ、この物体に対して更なる個々の運動若しくは運動の組合せを実施する。基本3次元物体2は、サンプル1の測定表面1.1の上に位置する。
【0029】
アーム7、8及び13上への組み付け、並びにアーム7、8及び13に関連する要素に対するより詳細な説明は、以下の文章に示す。
【0030】
簡潔にするため、適切な場合、個々のアーム上に位置する、取得系上で撮像に寄与する光学要素11、第2の照明ユニット9、第1の照明光案内系の出口アパーチャ、第3の照明ユニット12、及びカメラ又は検出器を、アーム上に位置する要素と呼ぶ。サンプルの照明及びサンプルからのデータ取得の最大方向解像度の達成を既に可能にしているアーム7、8及び13のそれぞれの運動に必要な最小範囲は、比較的わずかであり、このことは、デバイスの構造の観点から大きな利点である。例えば、アーム上の要素が一列で線形的に配置される構成では、アーム7、8及び13のそれぞれの十分な最小運動範囲は、所与の個々の運動方向で所与のアーム上に位置する2つの隣接要素の相互距離に対応する。このことは、サンプルの照明方向とサンプルからのデータ取得方向とのあらゆる相互の組合せの達成を可能にする。即ち、理論的には無数の相互に異なる画像の記録が可能である。アーム7、8及び13上の要素の構成は、例えば、
図5bに示すように、不規則及び/又は複数列であってもよい。しかし、原理は、依然として同じである。アーム7、8及び13に対する不規則配置のための最大方向の差別化を達成するアームの運動範囲は、アームが一方の末端位置ともう一方の末端位置との間を移動する際、少なくとも、アームが、その運動方向で少なくともアーム上に位置する要素のアパーチャの中心の中間距離に対応する距離だけ移動するようなものでなければならない。
【0031】
回転運動を実施する基本3次元物体2は、少なくとも1つの凹形壁3を有し、凹形壁3は、デバイスの動作中、サンプル1の測定表面1.1に面する。基本3次元物体2は、通常、半球又は半球の一部に近似的な形状を有するが、デバイスの機能のためにこの特定の形状は条件ではない。基本3次元物体2は、軸6回りに回転し、軸6は、基本3次元物体2の凹形壁3の少なくとも1つの開口を通過するか、又は基本3次元物体2の壁3を直接通過する。1つの好ましい実施形態では、3次元物体2は、回転対称であり、その回転軸6は、その対称回転軸と同じである。サンプル1が大部分は平面である場合、通常、軸6もサンプル1の測定表面1.1に対して直交する。
【0032】
少なくとも1つの第1のアーム7は、より多くの要素11が好ましいが、少なくとも2つの要素11を支持し、基本3次元物体2又はこの物体に機械的に接続する部品に取り付けられ、要素11は、取得系上での撮像に寄与する。取得系は、少なくとも1つのカメラ及び/又は少なくとも1つの検出器によって表される。取得系の要素は、アーム7上に位置するか、又はデバイスの他の部品上、例えば、移動基本物体2に固着した部品上、若しくは基本枠30上にも位置し、光学要素11は、カメラ/検出器の高感度表面上で測定表面の画像の転送を仲介する。取得系上の撮像に寄与する光学要素11、及び第2の照明ユニット9及び/又は第1の照明光案内系の出口アパーチャを第1アーム7上に置くことができるように、ミラー、レンズ、撮像バンドル又はプリズムをアーム7に固着することができる。第1のアーム7上には、取得系上の撮像に寄与する一種の光学要素11のみがあっても、様々な種類の光学要素11の組合せがあってもよい。したがって、例えば、同じ第2の照明ユニット9のみ、又は別のバージョンでは、ミラーとレンズとの組合せ、又は両方の組合せ、又は更には他の組合せがあってもよい。第1のアーム7上に位置するレンズは、例えば、サンプル1の測定表面1.1を撮像バンドル上に反射するか、又は光学撮像系の別の部品の平行化バンドルを生成する。取得系上の撮像に寄与する光学要素11に加えて、カメラ又は検出器も第1のアーム7上にあることができ、これにより、デバイス全体の光学機械構造を単純化することができる。
【0033】
第4の照明ユニット22は、移動基本物体2に固着した他の部品上、又は基本枠30上に位置することもでき、そのように設置された照明ユニットからの光束は、第2の照明光案内系21を使用して凹形壁3に案内され、第2の照明光案内系21は、適切な光学系又は光学装置バンドルとすることができる。この構成は、より多数のサンプルの照明方向を提供し、第2の照明光案内系21の出口アパーチャはより小さな寸法であるため、適切である。これら第2の照明光案内系21の数及び第1の照明ユニット4の数は、相互協働において、十分な数の方向からサンプルの十分な照明が保証されるようなものである。本発明の一バージョンでは、凹形壁3上に、光案内系21の出口アパーチャのみがあるか、第1の照明ユニット4のみがあるか、又はこれら2つの要素の組合せであってもよい。
【0034】
1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つの第2のアーム8は、より多くの第3の照明ユニット12を有するのがより良好であるが、少なくとも2つの第3の照明ユニット12を支持し、同様に基本3次元物体2又はこの物体に機械的に固着した部品に取り付けられる。
【0035】
別の好ましい実施形態では、第1の照明ユニット4、第2の照明ユニット9、第3の照明ユニット12及び第4の照明ユニット22の照明源は、発光ダイオード(LED)であるか、多数のLED及び適切な照明光案内系から構成することができる。
【0036】
更に別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの第3のアーム13は、より多くの取得要素14を有するのがよりよいが、少なくとも2つの取得要素14を支持し、3次元物体2又はこの物体に機械的に固着した部品に接続され、取得要素14は、検出器及び/又はカメラから構成される。
【0037】
第1のアーム7の種類の1つ又は複数のアームは、デバイス内に存在することができ、これらのアームは、取得系上での撮像に寄与する様々な種類の光学要素11を支持することができる。これらのアームは、デバイス内の第2のアーム8及び第3のアーム13の1つ又は複数の種類であってもよい。個々のアームの数に対する制限要素は、形状の設計、個々のアームの現在の位置に対する配置及び制御であり、これらのアームが、デバイスの空間内で互いに衝突しないようにする。
【0038】
第1の照明ユニット4又は第2の光案内系21の出口アパーチャが接続される基本3次元物体2の凹形壁3の形状は、最も一般的には、球面の一部に近い。基本3次元物体2の他の部品の形状は、任意の、概して対称的な形状とすることができ、この形状は、基本3次元物体2をデバイスの他の部品に取り付ける方法によって与えられる。本発明者等の特定のケースでは、基本3次元物体2は、山高帽に近似的な形状を有する。基本3次元物体2、したがって凹形壁3も同様に、開口を備えることが有利であり、開口は、第1の照明ユニット4、第2の照明光案内系21の出口、及び3次元物体2に固着するあらゆる他の要素を、挿入、および組み付けるために使用することができる。しかし、これらの要素の全てを内側から凹形壁3に直接取り付けることができる場合、開口は必要ではない。
【0039】
第1のアーム7、第2のアーム8及び第3のアーム13は、最も一般的には、丸みのある形状を有し、わずかな凹みを有する基本3次元物体2の形状に近似する一方で、基本3次元物体2に面するこれらのアームの表面は、基本3次元物体2の表面よりも著しく小さい。基本3次元物体2が半球の一部の形状を有し、回転軸6が有利なバージョンではこの半球の回転対象軸と同一である場合、アームが、子午線平面の1つにある長手方向軸と近似的な曲線形状を有することが有利であり、本文の意図としては、子午線平面とは、回転軸6がある平面である。アーム7、8、13が基本3次元物体2の外側にある場合、これらのアームの表面の半径は、基本3次元物体2の曲率半径よりも大きく、アーム7、8、13が基本3次元物体2の内側にある場合、これらのアームの表面の半径は、基本3次元物体2の曲率半径よりも小さい。
図1に示す座標内の半径ベクトルrの方向において、アームは、単純な長方形外形を有することができるが、アームの剛性を増大させるため、L字、U字若しくはC字外形又は例えば薄肉中空外形等、より良好に補強された形状を使用することが最良である。軸6に直交する方向において、アームは、
図5aのアームの例で示すように、その全長に沿って一定の外形幅を有することができるか、又は
図5bのアームの例で示すように、軸6から離れる方向でアームの幅を変化させる、通常は、増大させることができる。
【0040】
取得系上の撮像に寄与する光学要素11、第2の照明ユニット9、第1の照明光案内系の出口アパーチャ、第3の照明ユニット12及び取得要素14は、アーム上に、個々の列で長手方向、即ち、子午線平面に配置するか、又は様々な線に対応する複数列で配置することができ、取得系上の撮像に寄与する光学要素11、第2の照明ユニット9、第1の照明光案内系の出口アパーチャ、第3の照明ユニット12及び取得要素14の距離は、最良のケースでは規則的であるが、これらを方向及び距離の両方において不規則に配置することも可能である。
【0041】
上述した、基本3次元物体2の回転軸6回りの回転である第1の運動に対し、基本3次元物体2に接続する基準座標系に向かうアーム7及び/又は8及び/又は13の運動が追加される。
【0042】
基本3次元物体2が半球に近似的な形状を有する有利なバージョンでは、アーム7、8、13の運動は、それらの長手方向軸が3次元物体2の子午線平面内で全体的な運動を行うようなものである。
【0043】
図1に示す適切な適用例の1つでは、取得系上の撮像に寄与する少なくとも2つの光学要素11は、第1のアーム7上にある一方で、これらの光学要素は、群(ペリスコープ系若しくは撮像バンドルのレンズ、ミラー若しくはプリズム部品)からの要素又は第2の照明ユニット9及び/又は第1の光案内系の出口アパーチャのいずれかとすることができる。特定の種類の光学要素11は、詳細に図示しない。要素11を組み付ける開口は、相互角度距離εを有する。取得系上の撮像に寄与する要素11は、異なる天頂角θ下でサンプルを同時に観察する。サンプルは、1つ若しくは複数の第1の照明ユニット4又は第2の照明ユニット9又は第3の照明ユニット12、又は第1の照明光案内系若しくは第2の照明光案内系21の1つ若しくは複数の出口アパーチャによって、事前構成した照明方向で照明される。第1の照明ユニット4、又は第2の照明光案内系21の出口アパーチャが回転基本3次元物体2に固着し、サンプル1の照明及び取得方向θ、φに対する有限数の離散値の組合せのみを得ることを可能にする状況と比較した場合、取得系上の撮像に寄与する光学要素11を第1の可動アーム7上に配置し、アーム7と基本3次元物体2との運動の組合せにより基本3次元物体2に対して個々の運動を実施することは、あらゆる他の角度の組合せによって、サンプル照明方向とデータ取得方向との組合せに対する最初の固定数の離散値を補い、これにより、方向解像度を増大させる。即ち、測定データの角度θn、φn及びθm、φmの最も近い位置の間の角度値θn-θm及びφn-φmを任意の小さい値まで低減することが可能である。同じ原理は、照明ユニット4又は第2の照明光案内系21の出口アパーチャの場合にも使用することができる。第1のアーム7上の第2の照明ユニット9若しくは第1の照明光案内系の出口アパーチャ、又は第2のアーム8上の第3の照明ユニット12等の他の光源の配置は、アーム7、8が基本3次元物体2に対して個々の線形又は円形運動を実施する場合、サンプルの照明方向とあらゆる他の角度の組合せとの組合せの離散数値を拡張することを可能にし、これにより、取得データの方向解像度を増大させる。あらゆる角度の組合せθ及びφを達成するため、個々のアームの運動範囲を基本3次元物体2の空間全体で実施する必要はないが、取得系上の撮像に寄与する個々の光学要素11の間の角度距離ε、又は個々の照明ユニット12の間の類似する角度距離の範囲内で実施すれば十分である。
【0044】
制御される基本3次元物体は、測定サンプル1の表面1.1の上で軸6回りに回転する一方で、測定表面1.1の中心部は、例えば
図6からわかるように、位置Sに位置する。取得系上の撮像に寄与する要素11は、次に説明するケースでは、ミラーを使用して実装され、ミラーは、サンプルから、第1のアーム7の外側に位置する光学系の他の部品、更にはカメラ及び/又は検出器に照明を反射する。基本3次元物体2の軸6回りの制御運動と、第1のアーム7の運動との組合せを使用すると、サンプル1のあらゆるデータ取得方向からサンプル1の表面1.1の記録を得ることが可能である。
【0045】
代替的に、同様に移動し、サンプル照明の他の方向を達成するように使用される第2のアーム8を実装することも可能である。個々のアーム7、8、13は、様々な種類の運動を実施することができる。
【0046】
本発明の本質を使用する、デバイスの特定の例を
図3に概略的に示す(即ち、本発明の本質とは、取得系上の撮像に寄与する光学要素11の部品上での2つの個々の運動である。1つの運動は、一部半球形状である基本3次元物体2によって実現され、第1のアーム7による第2の運動は、円形、直線又はより複雑な軌道に沿って運動する)。第1のアーム7、第2のアーム8及び第3のアーム13の可能な運動の一例を示す。選択した運動範囲における角度θ及びφという所与の組合せに対する、サンプル1からのデータ取得方向のあらゆる組合せを達成するため、デバイスは、角度θ及びφの所与の組合せの位置に対し、取得系上の撮像に寄与する光学要素11の少なくとも1つの位置の設定を可能にしなければならない。角度方向φでサンプル1の表面1.1からのデータ取得方向を設定する運動範囲は、0から2πであり、この角度のあらゆる値を達成することが可能である。角度範囲0~θ
maxにある角度方向θでサンプルから1のデータ取得のあらゆる組合せを達成するため、角度方向θでのアーム7のあらゆる運動の運動範囲は、取得系上の撮像に寄与する2つの隣接する光学要素11の間の少なくとも角度距離εに等しく、この角度距離εは、軸6を通過する平面で測定される。そのような場合、取得系上の撮像に寄与する2つの隣接する光学要素11は、角度方向θでの軸6回りの回転の使用が可能なことにより、サンプル1に向かって同じ角度位置θ及びφに到達する。アーム7の運動範囲をより小さくすることもできる。しかし、取得方向の設定に対し冗長性を達成すること、したがって、アーム7の運動範囲を、少なくとも角度距離範囲ε内の角度方向θで実施することが有利である。
【0047】
個々のアーム7、8、13によって実現される運動は、通常、単純な回転運動(
図1のアーム7の円形の案内)であるか、又は線形運動であるか、又はアームの平面内での全体運動を生成する組合せ(
図3のアーム7の運動)であるか、又は空間内での全体運動を生成する組合せ(
図3のアーム8の運動)である。個々のアーム7、8及び13の運動は、少なくとも1つの第2のモータ17、少なくとも1つの第3のモータ18及び少なくとも1つの第4のモータ19のそれぞれによって実施され、これらのモータは、制御ユニット20によって制御され、サンプル1を照明する第1の照明ユニット4又は第2の照明ユニット9又は第3の照明ユニット12又は第4の照明ユニット22、及び取得要素14からのデータ取得の制御と同期される。
【0048】
より複雑な運動、例えば、
図3における第2のアーム8の運動の場合、個々のアーム7、8及び13は、多数のモータによって作動することもできる。
図3では、第3のモータ18の1つのみがアーム8の隣に見えるが、実際には、所与の運動には2つの第3のモータ18が必要であり、2つ目の第3のモータ18は、図では見えない。
【0049】
サンプル1の照明方向とサンプル1からのデータ取得方向との新たな組合せは、アーム7の運動及び基本3次元物体2の軸6回りの運動と組み合わせた、第2のアーム8の適切な運動を通じて得ることができる。より多くの第1のアーム7がデバイス内にある場合、これらの使用により、より短い測定時間で同じ測定データ・セットを得ることが可能である。第3のアーム13が、共通のカメラ又は検出器とは異なる種類の取得要素14を含む場合、サンプルについてのより多くのデータ、例えば、表面反射率のスペクトル関数を得ることが可能である。わずかな変更、例えば、異なる波長の帯域フィルタの使用があってもよく、この場合、撮像系又は取得系の変更があるが、取得系は、アーム7のケースと同じであってもよい。
【0050】
図1、
図2、
図3及び
図4に示すデバイスの基本構成では、軸6は、サンプル表面に近似する平面に直交する。したがって、デバイスは、固定カメラを備え、この固定カメラは、移動アーム上に位置せず、常に、軸6の方向でサンプルの視野を仲介する。このカメラは、例えば、自動平行化原理の使用と共に、静置サンプルに向けて可搬デバイス全体を調節するために使用される。
【0051】
デバイスの代替バージョンは、
図7の右側による構成であり、軸6は、サンプル1の表面の平面に直交しない。そのような場合、基本3次元物体2は、1つの軸6回りの回転を実施するだけでなく、測定サンプル1の表面上で交差する2つの軸回りの歳差運動も実施する。そのような解決策の利点は、基本3次元物体2のサイズを、近似半球形状から、角度ωによって与えられる一部球体区分形状に低減することが可能であることであり、これにより、歳差運動軸の両方を形成し、これにより、デバイスの質量を低減する一方で、サンプル1の照明方向とサンプル1からのデータ取得との全ての組合せに対するデータの取得を依然として可能にする。
【0052】
デバイスの別の代替バージョンは、
図7の左側による構成であり、基本3次元物体2は、軸6回りに回転するだけでなく、サンプルに直交する2つの平行軸回りにも回転し、したがって、基本3次元物体2は、サンプル1の表面上で遊星運動を実施する。この解決策の利点は、サンプル1に対する照明とデータ取得方向との組合せ数の増加に加えて、基本3次元物体2が小半径の曲率を有する小型バージョンのデバイスの場合でさえ、サンプル表面のより大きな部分の撮像が可能であることである。デバイスの制御ユニットは、対応するSW及びHWを備えるあらゆるコンピュータ系とすることができ、検出器及びカメラからのデータを撮像し、照明ユニットをオフ・オンし、個々の作動器の移動を実施する。実用的な理由で、コンピュータ系を、基本産業コンピュータと、個々の機能要素及び適切な通信プロトコル上での相互通信を制御するいくつかのマイクロコンピュータとの間で分割することが好適である。
図6に示す本発明者等が実施したデバイスの試作品では、制御のため、産業コンピュータに加えて145のマイクロコンピュータを使用した。デバイスからの測定データは、測定中、又は測定完了後の後処理期間中に処理した。
【0053】
図1は、サンプル1、基本3次元物体2、サンプル1に面する物体2の凹形壁3、回転軸6を有する回転部品15、デバイス枠30に接続した、基本3次元物体2を位置決めする第1のモータ16、及び取得系上の撮像に寄与する光学要素11の組み付け位置を有する可動アーム7を示す。取得系上の撮像に寄与するこれらの光学要素11は、通常、レンズであるか、又は撮像バンドル等の他の光学要素、ミラー若しくはプリズム等のペリスコープ系の光学要素であり、これらの要素は、取得系上での撮像を仲介する。これらの光学要素11は、通常、カメラ又は他の照明検出器であり、デバイス枠30上、基本3次元物体2に機械的に固着した部品上、又は更に移動アーム7上に置くことができ、移動アーム7は、第2のモータ17に機械的に接続し、更に第2のモータ17によって駆動される。これらの配置の一部に対する選択の適合性は、基本3次元物体2のサイズの比率、取得系上の撮像に寄与する要素11のアパーチャの中心の角度距離、及び検出器の横断サイズに応じる。所与のサイズの基本3次元物体2において、取得系上の撮像に寄与する要素11のアパーチャに必要な数がアーム7に適合する場合、適切な解決策は、取得要素をアーム7上に置くことである。この条件に合致しない場合、取得系上の撮像に寄与する光学要素11のみ(例えば、照明光学機器バンドルを有するマイクロレンズ)を、著しく小さい横断寸法でアーム7上に置くことが適切であり、実際の検出器/カメラは、移動アーム7の外側に置かれる。同じ条件は、第1の照明ユニット4にも有効である。第1の照明ユニット4の大きな横断寸法のために、基本3次元物体2の寸法が、第1の照明ユニット4を、所望の小さな相互距離で基本3次元物体2上に適切に配置できない場合、適切な解決策は、基本3次元物体2の外側に第4の照明ユニット22を置き、例えば第2の照明光案内系21の適切な光学機器バンドルを使用して、照明バンドルのみを凹形表面3の適切な位置にもたらすことである。したがって、小型デバイスであっても、理論的には、サンプルの照明方向とサンプルからのデータ取得との様々な組合せから生じた無数の相互に異なる画像を得ることができる。
【0054】
モータ17、18及び19は、直接又は他の部品を通じて基本3次元物体2に機械的に接続される。他のモータとは異なり、第1のモータ16は、直接又は他の部品を通じて枠30に機械的に接続され、基本3次元物体2がこの枠30に対して回転できるようにする。
【0055】
アーム7、8及び13は、直接又は他の部品を通じて基本3次元物体に接続することもできる。
【0056】
単純にするため、多くの様式で実施し得る回転部品15と基本3次元物体2との間の接続は、
図1に示さない。
【0057】
図2は、アーム7の2つの末端位置の一例を示し、これらの2つの末端位置の間の移動長さは、アームの運動方向での取得系上の撮像に寄与する光学要素11の出口アパーチャの中心の間の距離よりも長い。
【0058】
図3は、デバイスの一実施形態の一例を示し、取得系上の撮像に寄与する光学要素11は、サンプル1の表面1.1上の点Sからより大きな距離を有する。
図3は、サンプル1、その測定表面1.1、基本3次元物体2、サンプル1の方向で凹形である基本3次元物体2の凹形壁3、回転軸6を有する回転部品15を示す。デバイス枠30に接続する第1のモータ16は、基本3次元物体2を軸6回りに回転させる。
図3は、可動である第1のアーム7も示し、取得系上の撮像に寄与する光学要素11の組み付け位置を第1のアーム7の中に見ることができる。これらの要素は、通常、レンズであるか、又は撮像バンドル等の他の光学要素、ミラー若しくはプリズム等のペリスコープ系の光学要素であり、これらの要素は、取得系上での撮像を仲介する。これらの要素は、通常、カメラ又は他の照明検出器であり、限られたサイズのデバイスにおいて、取得系上の撮像に寄与する要素11と共に可動アーム7上に置くことができる。
【0059】
この基本構成は、第3の照明ユニット12を置く位置を有する第2のアーム8によって補足することができる。第2のアーム8は、第2のアーム8を駆動する第3のモータ18に機械的に接続される。アーム7の位置決め及び軸6回りの位置決めと組み合わせて、このアーム8を適切に配置すると、サンプル1の照明方向とサンプル1からのデータ取得との新たな組合せを得ることが可能である。更に、この基本構成は、取得要素14を有する第3のアーム13によって補足することができる。この第3のアーム13は、直接又は他の部品を通じて、第3のアーム13を位置決めする第4のモータ19に機械的に接続される。アーム7及びアーム8の位置決め、及び軸6回りの位置決めと組み合わせて、この第3のアーム13を適切に位置決めすると、サンプル1の照明方向とサンプル1からのデータ取得との新たな組合せを得ることが可能である。
【0060】
図3のモータ16、17、18、19及びアーム7、8、13の取り付けは、
図1で説明したものと類似する。
図4の左部分は、個々の要素の規則的な格子状のアパーチャ内の第1の照明ユニット4の分布を示し、基本3次元物体2の表面にわたり、アパーチャに可変密度をもたらす。第1の照明ユニット4の分布の一例は、個々の要素のアパーチャの不規則な距離L±dLを有し、基本3次元物体2の表面上にほぼ一定の平面密度のアパーチャをもたらすことが
図4の右部分からわかる。要素の不規則な分布は、格子状要素、例えば第1の照明ユニット4と、格子状データ測定位置との間の干渉を抑制するため、最良に使用される。
【0061】
図5の左側は、アーム(7、8、13)のいずれかに使用し得るアームの典型的な実装を示し、取得系上の撮像に寄与する個々の光学要素11のアパーチャ、第2の照明ユニット9、又は第1の照明光案内系の出口アパーチャは、アーム上で規則的な位置の距離を有する。
図5の右側は、アーム(7、8、13)のいずれかに使用し得る別の典型的なアームの一例を示し、取得系上の撮像に寄与する個々の光学要素11のアパーチャ、又は第2の照明ユニット9、又は第1の照明光案内系の出口アパーチャは、アーム上で不規則的な距離を有する。アームに沿ったアパーチャの規則的な配置の利点は、単純な製造及び測定の実施である。欠点は、
図4の左側からわかるように、回転軸6からの角度θがより大きな値のため、測定データの密度がより低いことである。この事実は、アームの例からわかるように、要素の多数のアパーチャを、より大きな角度θで、不均一な構成のアパーチャで配置することによって補償することができる。
図5の右側は、可動アーム上への第2の照明ユニット9のアパーチャの現在の配置の一例であり、取得系上の撮像に寄与する個々の光学要素11のアパーチャを伴う。目に見えるアパーチャは、第2の照明ユニット9、又は第1の照明光案内系の出口アパーチャの配置に対する自由位置を表す。この配置は、アームが外側から基本3次元物体2に接続される場合、適している。この場合、基本3次元物体2内に、アーム軸に沿った長手方向の細穴がなければならず、第1の照明ユニット4をこの開口領域に置くことはできない。アームを基本3次元物体2の内側から固着する場合、
図3の第2のアーム8の例からわかるように、このアームは、第1の照明ユニット4の一部を覆う。第1のアーム7は、
図3の第2のアーム8と同様の配置を有することもできる。第1のアーム7の配置の両方のケースにおいても、取得系上の撮像に寄与する要素11のアパーチャの近傍方向からの照明の間、第1の照明ユニット4がこれらの方向にないため、サンプルの測定でデータが失われる。したがって、第2の照明ユニット9、又は少なくとも第2の照明光案内系21からのバンドルの出口アパーチャを第1のアーム7上に置くことが適切である。
【0062】
図6は、実装したデバイスの写真であり、概略図の参照番号に対応する実際の要素:基本3次元物体2、及びサンプル1に面して凹形に湾曲した物体2の凹形壁3、第1の照明ユニット4、回転軸6、第1のアーム7、取得系上の撮像に寄与する要素11、S-サンプル1の予想される表面1.1との回転軸6の交差点を示す。
【0063】
図7は、サンプル1に向かう基本3次元物体2の運動構成の2つの代替変形形態を示し、基本3次元物体2は、複合運動を実施する。図の左側は、基本3次元物体2の遊星運動の一例であり、サンプル1に直交する軸6回りに回転するだけでなく、この軸は、距離eで軸6に平行な別の軸の回りにも回転する。図の右側は、基本3次元物体2の歳差運動の一例であり、軸6回りに回転するだけでなく、この基本3次元物体2は、基本3次元物体2と角度ωを形成する別の軸回りにも回転し、これらの交差点は、サンプル1の表面上で見いだされる。
【0064】
説明した提案によるデバイスは、容易に持ち運べ、現場及び野外での使用を可能にする質量及び寸法で実施することができる。実施した変形形態のうち2つは、取得系上の撮像に寄与する光学要素11の出口アパーチャを有し、出口アパーチャは、第1のケースでは、サンプル1の中心から約250mmの距離で置かれ、第2のケースでは、サンプルの中心から160mmの距離で置かれる。これらの変形形態は、
図3に従ったバージョンで実施することができる。取得系上の撮像に寄与する光学要素11のアパーチャが、100mm以下の距離にある場合、
図1による変形形態を使用する。特定の変形形態のうち最大のものは、約12kgの総重量を有し、より小型の変形形態では、重量は著しくより少ない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
相互に固着した照明ユニット又は検出器を使用して、サンプルの照明方向とサンプルからのデータ取得方向との角度の組合せの中間位置を得るという、提示した原理を使用する可搬デバイスは、産業適用性を有する。というのは、撮像デバイスは、様々な照明及び監視方向で表面を監視する視覚検査に代わり、コンピュータ・グラフィックスの3Dモデリングのフレームワーク及び物体の表現、表面の品質管理、並びに上述の特性を使用し得る他の領域、即ち、材料の外観を特徴付け、保護する必要がある場所、例えば、文化遺産人工物を保護する領域に適用されるためである。測定静置サンプルからBTFデータを得る他の既存の方法と比較した本発明の解決策の主な利点は、照明方向、及びサンプルからの反射光の取得方向を倍増させることによって、サンプルの照明方向とサンプルからのデータ取得方向との必要な数の組合せを取得する時間を短縮すること、並びに主に、サンプル表面の外観の取得のために可搬測定デバイスを実施できると、サンプルの現場での測定を可能にすることである。
【0066】
所与の手法に対する使用は、コンピュータ・グラフィックス、光学的記録、及び様々な種類のサンプルに対するデータ再構成の分野で見いだすことができ、実際の物体の表現を、例えば、考古学、生物学、美術、3D TV、表面の質の評価及びその修正、コンピュータ・ビジョンでの材料の検出及び分類を含む3D仮想現実、並びに他の用途で適用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 サンプル
1.1 サンプル表面
2 基本3次元物体
3 (サンプル1に面する側で凹形に湾曲した基本3次元物体2の)凹形壁
4 第1の照明ユニット
6 (回転部品15及び基本3次元物体2の)回転軸
7 第1のアーム
8 第2のアーム
9 第2の照明ユニット
11 取得系上の撮像に寄与する光学要素
12 第3の照明ユニット
13 第3のアーム
14 取得要素
15 回転部品
16 第1のモータ
17 第2のモータ
18 第3のモータ
19 第4のモータ
20 制御ユニット
21 第2の照明光案内系
22 第4の照明ユニット
30 枠