IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッドの特許一覧

特許7050794モレキュラーシーブSSZ-111、その合成及び使用
<>
  • 特許-モレキュラーシーブSSZ-111、その合成及び使用 図1
  • 特許-モレキュラーシーブSSZ-111、その合成及び使用 図2
  • 特許-モレキュラーシーブSSZ-111、その合成及び使用 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】モレキュラーシーブSSZ-111、その合成及び使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20220401BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20220401BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/70 Z
B01J37/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019540565
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2018053855
(87)【国際公開番号】W WO2018229582
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】62/518,243
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シエ、ダン
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-524406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0073240(US,A1)
【文献】特表2010-538964(JP,A)
【文献】特表2020-517558(JP,A)
【文献】特表2018-526315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/00
B01J 21/00 - 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下の表にリストされたピークを含むX線回折パターンを有する、モレキュラーシーブであって:
【表1】

以下のモル関係:
Al:(n)SiO
(式中、nは10~100の範囲内にある)
を含む組成を有する、モレキュラーシーブ。
【請求項2】
以下のモル関係:
Al:(n)SiO
(式中、nは15~50の範囲内にある)
を含む組成を有する、請求項1のモレキュラーシーブ。
【請求項3】
その合成されたままの形態で、以下の表にリストされたピークを含むX線回折パターンを有する、モレキュラーシーブであって
【表2】

以下のモル関係を含む組成を有する、モレキュラーシーブ:
【表3】

式中、Qは、N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオンを含み;そして、Mは、周期表の第1族及び第2族から選択される金属である。
【請求項4】
以下のモル関係を含む組成を有する、請求項のモレキュラーシーブ:
【表4】

式中、Qは、N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオンを含み;そして、Mは、周期表の第1族及び第2族から選択される金属である。
【請求項5】
請求項のモレキュラーシーブを合成する方法であって:
(a)下記を含む反応混合物を調製すること:
(1)酸化ケイ素の供給源;
(2)酸化アルミニウムの供給源;
(3)周期表の第1族及び第2族から選択される金属(M)の供給源;
(4)N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオン(Q)の供給源;
(5)水酸化物イオンの供給源;及び
(6)水;及び
(b)当該反応混合物を、モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること、
を含み、反応混合物が、モル比で下記の組成を有する、前記の方法。
【表5】
【請求項6】
反応混合物が、モル比で下記の組成を有する、請求項に記載の方法:
【表6】
【請求項7】
結晶化条件が、125℃~200℃の温度を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
有機化合物を含む供給原料を、転化生成物に転化するプロセスであって、当該供給原料を、有機化合物転化条件で、請求項1のモレキュラーシーブの活性形態を含む触媒と接触させることを含む、前記のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、June 12,2017に提出された米国仮出願第62/518,243の優先権を主張し、その全体は、参照によりここに組み込む。
【0002】
技術分野
この開示は、SSZ-111と呼ばれる新規の合成結晶性モレキュラーシーブ、その合成、及び、収着及び触媒プロセスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
天然および合成の両方のモレキュラーシーブ材料は、過去には吸着剤として有用であり、様々な種類の有機転化反応のための触媒特性を有することが実証されてきた。ゼオライト、アルミノホスフェートおよびメソポーラス材料などの特定のモレキュラーシーブは、X線回折によって決定されるような明確な結晶構造を有する規則正しい(秩序ある)多孔質結晶材料である。結晶性モレキュラーシーブ材料の中には、多くの導路(チャネル)または細孔によって相互接続され得る多数の空洞が存在する。これらの空洞および細孔は、特定のモレキュラーシーブ材料内で均一な大きさである。これらの細孔の寸法は、もっと大きな寸法のものを除外しつつ、特定の寸法の吸着分子を受け入れるような寸法であるため、これらの材料は、「モレキュラーシーブ」として知られるようになってきており、様々な工業プロセスで利用される。
【0004】
多くの異なる結晶性モレキュラーシーブが発見されてきたが、ガス分離及び乾燥、有機転化反応、及び他の用途向けの所望の特性を持つ新しいモレキュラーシーブへの継続した必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、独特の粉末X線回折パターンを有し、SSZ-111と呼ばれる新しいモレキュラーシーブが、有機構造指向剤としてN,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオンを使用して、合成された。
【0006】
概要
ここに記載するのは、SSZ-111と呼ばれる新規の結晶性モレキュラーシーブ材料、有機構造指向剤の存在下でのその合成、及び、その使用(例えば、有機転化反応での触媒として及び吸着剤として)である。
【0007】
一態様において、その合成されたままの形態で、表2にリストされたピークを含むX線回折パターンを有するモレキュラーシーブが提供される。
【0008】
その合成されたままの形態及び無水物の形態で、モレキュラーシーブは、以下のモル関係を含む化学組成を有する:
【表A】

式中、Qは、N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオンを含み;そして、Mは、元素の周期表の第1族及び第2族から選択される金属である。
【0009】
別の形態では、その焼成された形態で、表3にリストされたピークを含むX線回折パターンを有するモレキュラーシーブが提供される。
【0010】
その焼成された形態で、モレキュラーシーブは、以下のモル関係を含む化学組成を有する:
Al:(n)SiO
(式中、nは10~100の範囲内にある)。
【0011】
更なる態様において、下記の方法が提供される:
ここに記載のモレキュラーシーブを合成する方法であって:
(a)下記を含む反応混合物を調製すること:
(1)酸化ケイ素の供給源;
(2)酸化アルミニウムの供給源;
(3)元素の周期表の第1族及び第2族から選択される金属の供給源;
(4)N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオンの供給源;
(5)水酸化物イオンの供給源;及び
(6)水;及び
(b)当該反応混合物を、モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること、
を含む、前記の方法。
【0012】
更に別の形態では、有機化合物を含む供給原料を、転化生成物に転化するプロセスであって、当該供給原料を、有機化合物転化条件で、ここに記載のモレキュラーシーブの活性形態を含む触媒と接触させることを含む、前記のプロセスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面の簡単な記述
図1図1は、例1の合成されたままのモレキュラーシーブの粉末X線回折(XRD)パターンを示す。
【0014】
図2図2は、例1の合成されたままのモレキュラーシーブの走査型電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【0015】
図3図3は、例4の焼成されたモレキュラーシーブの粉末XRDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な記述
緒言
用語「合成されたままの」は、構造指向剤を除去する前の、結晶化後のその形態のモレキュラーシーブのことを言うために、ここで使用される。
【0017】
用語「無水」は、物理的吸着水及び化学的吸着水の両方が実質的に欠けているモレキュラーシーブのことを言うために、ここで使用される。
【0018】
ここで使用される時、周期表の族のためのナンバリングスキームは、Chem. Eng. News 1985, 63(5), 26-27に開示されている通りである
【0019】
反応混合物
一般に、モレキュラーシーブSSZ-111は、下記によって合成される:
(a)下記を含む反応混合物を調製すること:
(1)酸化ケイ素の供給源;
(2)酸化アルミニウムの供給源;
(3)元素の周期表の第1族及び第2族から選択される金属(M)の供給源;
(4)N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオン(Q)の供給源;
(5)水酸化物イオンの供給源;及び
(6)水;及び
(b)当該反応混合物を、モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること。
【0020】
モレキュラーシーブが形成される反応混合物の組成は、モル比で、以下の表1に特定されている:
【表1】
【0021】
酸化ケイ素の適切な供給源は、コロイドシリカ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、アルカリ金属ケイ酸塩、及び、テトラアルキルオルトケイ酸塩を含む。
【0022】
酸化アルミニウムの適切な供給源は、水和アルミナ及び水溶性アルミニウム塩(例えば、硝酸アルミニウム)を含む。
【0023】
酸化ケイ素及び酸化アルミニウムの組み合わせ供給源を、追加で又は代替として使用することができ、そして、アルミノケイ酸塩ゼオライト(例えば、ゼオライトY)及びクレー又は処理粘土(例えば、メタカオリン)を含むことができる。
【0024】
適切な第1族又は第2族金属(M)の例には、ナトリウム、カリウム及びカルシウムを含み、カリウムが好ましい。金属は、一般に、水酸化物として反応混合物中に存在する。
【0025】
好都合なことには、Qは、N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオン(N,N-ジメチルイソブチルアミンのCジクワット)を含み、下記の構造(1)によって表わされる:
【化1】
【0026】
上記のジ第4級アンモニウム化合物は、1,6-ジハロヘキサン(例えば、1,6-ジブロモヘキサン又は1,6-ジヨードヘキサン)を、N,N-ジメチルイソブチルアミンと反応させることによって、容易に合成できる。
【0027】
Qの適切な供給源は、第4級アンモニウム化合物の水酸化物、塩化物、臭化物、及び/又は他の塩である。
【0028】
水酸化物イオンの供給源は、水酸化カリウムなどの第1族金属の水酸化物であることができる。水酸化物は、アルミニウムの供給源として水酸化アルミニウムを使用することによって、又は、有機構造指向剤の対イオンとしても、存在することができる。
【0029】
反応混合物は、反応混合物の0.01~10,000重量ppm(例えば、100~5000重量ppm)の量で、前の合成からのSSZ-111などのモレキュラーシーブ材料の種を含有することができる。シーディング(種入れ)は、完全な結晶化が起こるのに必要な時間を減少させるのに有利であることができる。更に、シーディング(種入れ)は、いかなる所望されない相にわたってのSSZ-111の形成及び/又は核形成を促進することによって得られる生成物の純度を高めることにつながり得る。
【0030】
ここに記載の各実施形態について、モレキュラーシーブ反応混合物は、複数の供給源によって供給することができる。また、2つ以上の反応成分を1つの供給源によって提供することができる。
【0031】
反応混合物は、バッチ式または連続式のいずれかで調製することができる。ここに記載のモレキュラーシーブの結晶の大きさ、モルフォロジーおよび結晶化時間は、反応混合物の性質および結晶化条件によって様々に変わり得る。
【0032】
結晶化および合成後の処理
上記反応混合物からのモレキュラーシーブの結晶化は、適切な反応容器中、例えばポリプロピレン瓶またはテフロン(登録商標)ライニングされた又はステンレススチール製オートクレーブ中、125℃~200℃の温度で、使用される温度で結晶化が起こるのに十分な時間(例えば、2~20日間)、静置条件、回転条件、または撹拌条件下で行うことができる。結晶化は、通常は、自生圧力下に閉鎖系中で実施される。
【0033】
モレキュラーシーブ結晶が一旦形成されたら、遠心分離または濾過などの標準的な機械的分離技術によって、固体生成物を反応混合物から回収する。結晶を水で洗浄し、次いで乾燥させ、合成されたままのモレキュラーシーブ結晶を得る。乾燥工程は、典型的には200℃未満の温度で実施される。
【0034】
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶性モレキュラーシーブ生成物は、その細孔構造内に、合成で使用される有機構造指向剤の少なくとも一部を含有する。
【0035】
ここに記載のモレキュラーシーブは、その合成で使用される有機構造指向剤の一部又は全てを除去するためにその後の処理に供することができる。これは、熱処理によって都合よく達成でき、そこでは、合成されたままの材料は、少なくとも370℃の温度で、少なくとも1分間で24時間以下、加熱できる。熱処理は、925℃までの温度で実施できる。熱処理に減圧及び/又は過圧を使用できるが、利便性の理由で、大気圧が典型的に所望され得る。追加で又は代わりに、有機構造指向剤は、オゾンでの処理によって除去することができる(例えば、A.N. Parikh et al., Micropor. Mesopor. Mater. 2004, 76, 17-22を参照)。特に金属、水素及びアンモニウムの形態の有機フリー生成物は、特定の有機(例えば、炭化水素)転化反応の触媒作用に特に有用である。本開示では、水素の形態の有機フリーモレキュラーシーブは、存在する金属機能があってもなくても、モレキュラーシーブの「活性形態」と呼ばれる。
【0036】
所望の範囲で、合成されたままのモレキュラーシーブ中の元の第1族又は第2族の金属カチオンは、他のカチオンとのイオン交換によって、当該技術分野で周知の技術に従って置換することができる。好ましい置換カチオンとしては、金属イオン、水素イオン、水素前駆体(例えば、アンモニウム)イオンおよびこれらの混合物が挙げられる。特に好ましい置換カチオンは、特定の有機転化反応のために触媒活性を調整するカチオンである。これらのカチオンには、水素、希土類金属および元素の周期表の2族~15族の金属が含まれる。
【0037】
モレキュラーシーブの特徴付け
その合成されたままの及び無水物の形態において、モレキュラーシーブSSZ-111は、以下のモル関係を含む化学組成を有する:
【表B】

上記の式中、組成変項Q及びMは、上述した通りである。
【0038】
本モレキュラーシーブの合成されたままの形態は、合成されたままの形態を調製するために使用される反応混合物の反応物質のモル比とは異なるモル比を有していてもよいことに留意されたい。この結果は、(反応混合物から)形成される結晶中への反応混合物の反応物質の100%の組込みが不完全であることに起因して起こり得る。
【0039】
その焼成された形態で、モレキュラーシーブSSZ-111は、以下のモル関係を含む化学組成を有する:
Al:(n)SiO
(式中、nは、10~100の範囲内にある(例えば、10~75、10~50、15~100、15~75、15~50、20~100、20~50、又は、20~35))。
【0040】
SSZ-111の合成されたままの形態及び焼成された形態は、特徴的な粉末X線回折パターンを有し、それは、モレキュラーシーブの合成されたままの形態で、下記の表2にリストされたラインを少なくとも含み、そして、モレキュラーシーブの焼成された形態で、下記の表3にリストされたピークを少なくとも含む。
【表2】

(a)±0.30度
(b)提供された粉末X線回折パターンは、相対強度スケールに基づくものであり、X線回折パターンの最強ラインは100の値で指定される:W=弱(>0~≦20);M=中(>20~≦40);S=強(>40~≦60);及びVS=非常に強(>60~≦100)。
(c)ピークの広がりは、XRDピークの半値全幅(FWHM)によって特徴づけられる。FWHM値に基づき、ピークは、Sh=シャープ(≦1.5 最小のFWHM);B=ブロード(>1.5 最小のFWHM)として、分類される。ピークの広がりは、クローズd-面間隔値を有する反射の重なり及び/又は構造不規則性からの一因となり得る。
【表3】

(a)±0.30度
(b)提供された粉末X線回折パターンは、相対強度スケールに基づくものであり、X線回折パターンの最強ラインは100の値で指定される:W=弱(>0~≦20);M=中(>20~≦40);S=強(>40~≦60);及びVS=非常に強(>60~≦100)。
(c)ピークの広がりは、XRDピークの半値全幅(FWHM)によって特徴づけられる。FWHM値に基づき、ピークは、Sh=シャープ(≦1.5 最小のFWHM);B=ブロード(>1.5 最小のFWHM)として、分類される。ピークの広がりは、クローズd-面間隔値を有する反射の重なり及び/又は構造不規則性からの一因となり得る。
【0041】
ここに提示される粉末X線回折パターンは、標準的な技術によって収集された。放射線は、CuKα放射線であった。2θ(θはブラッグ角である)の関数としてのピーク高さおよび位置は、ピークの相対強度(バックグラウンドに合わせて調整する)から読み取られ、記録された線に対応する面間隔dを計算することができる。
【0042】
回折パターンのわずかな変動は、格子定数の変化に起因するサンプルの骨格種のモル比の変動から生じ得る。さらに、不規則の材料及び/又は十分に小さな結晶が、ピークの形状および強度に影響を与え、顕著なピークの広がり(ブロードニング)を引き起こすであろう。回折パターンのわずかな変動は、調製に使用された有機化合物の変動から生じる場合もある。焼成は、XRDパターンのわずかなシフトをも引き起こし得る。これらのわずかな乱れにもかかわらず、基本的な結晶格子構造は変化しないまま維持されている。
【0043】
吸着及び触媒作用
モレキュラーシーブSSZ-111は、現在の商業的に/工業的に重要なものを多く含む多種多様の有機化合物転化プロセスに触媒作用を及ぼすために、触媒として、又は、吸着剤として、使用できる。単独で、又は、他の結晶性の触媒を含む1つ以上の他の触媒活性な物質と組み合わせて、SSZ-111によって有効に触媒作用を及ぼされる化学的転化プロセスの例は、酸活性を持つ触媒を要求するものを含む。SSZ-111によって触媒作用を及ぼされ得る有機転化プロセスは、例えば、分解、水素化分解、不均化、アルキル化、オリゴマー化、及び異性化を、含む。
【0044】
多くの触媒の場合におけるように、有機転化プロセスで使用される温度及び他の条件に抵抗力のある他の材料を、SSZ-111に組込むことが所望され得る。そのような材料は、活性及び不活性な材料及び合成又は天然のゼオライト、並びに、アルミナなどの金属酸化物及び/又はシリカ、クレーなどの無機材料を含む。後者のものは、金属酸化物とシリカの混合物を含む、ゲル又はゲル状の沈澱の形態、又は、天然のいずれかであることができる。活性であるSSZ-111と併用した材料の使用(すなわち、それらと組み合わせたか又は新しい材料の合成の間に存在する)は、特定の有機転化プロセスでの触媒の転化及び/又は選択性を変える傾向にある。不活性な材料は、所定のプロセスでの転化の量を制御するための希釈剤として適切に機能し、それにより、反応の速度を制御するための他の手段を使用することなく、経済的で秩序のあるやり方で、生成物を得ることができる。これらの材料は、商業的な運転条件下での触媒の粉砕強度を改善するために、天然クレー(例えば、ベントナイト及びカオリン)の中に、組込むことができる。これらの材料(すなわち、クレー、酸化物など)は、触媒用の結合剤として機能する。良好な粉砕強度を有する触媒を提供することが所望される。なぜなら、商業的な使用では、触媒が粉末状の材料に崩壊するのを妨げることが所望されるからである。これらのクレー及び/又は酸化物結合剤は、触媒の粉砕強度を改善するという目的でのみ、普通に使用されてきた。
【0045】
SSZ-111と複合体化できる天然クレーは、モンモリロナイト及びカオリンファミリーを含み、当該ファミリーは、サブベントナイト、及び、Dixie, McNamee, Georgia and Florida claysとして普通に公知のカオリン、又は、主鉱物成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、又はアナウキサイトである他のものを含む。そのようなクレーは、焼成、酸処理又は化学的変性に最初に供するか又は、元々採鉱された生の状態で使用することができる。SSZ-111との複合体化に有用な結合剤は、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、及びそれらの混合物などの無機酸化物をも含む。
【0046】
前述の材料に加えて、SSZ-111は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアなどの多孔性のマトリックス材料と、並びに、シリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの3元組成物と、複合体化できる。
【0047】
SSZ-111及び無機酸化物マトリックスの相対比率は、複合物の1~90wt%(例えば、2~80wt%)の範囲のSSZ-111含有量で、広く変化できる。
【0048】
実施例
以下の例示的な諸例は、非限定的なものであることを意図している。
【0049】
例1
27.85gの脱イオン水、1.29gの45%KOH溶液、9.07gの14.24% N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウム水酸化物溶液、及び5.00gのCBV720 Y-ゼオライト粉末(Zeolyst International,SiO/Alモル比=30)を、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。得られたゲルを、均一になるまで撹拌した。その後、ライナーは蓋をして、そして、Parrスチールオートクレーブ反応器の中に置いた。その後、オートクレーブは、オーブン中に置かれ、そして、160℃で6日間、加熱された。固体生成物が、遠心分離により回収され、脱イオン水で洗浄され、そして、95℃で乾燥された。
【0050】
合成されたままの生成物の粉末XRDは、図1に示すパターンを与え、そして、当該生成物がSSZ-111と呼ばれる新しいモレキュラーシーブ相の純粋な形態であることを示した。合成されたままの生成物のSEM画像は、結晶の均一なフィールドを示す図2に示される。
【0051】
当該生成物は、ICP元素分析で決定して、SiO/Alモル比29.1を有した。
【0052】
例2
213.36gの脱イオン水、20.88gの45%KOH溶液、195.84gの14.24% N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウム水酸化物溶液、及び54.00gのCBV720 Y-ゼオライト粉末(Zeolyst International,SiO/Alモル比=30)を、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。得られたゲルを、均一になるまで撹拌した。その後、ライナーは蓋をして、そして、Parrスチールオートクレーブ反応器の中に置いた。その後、オートクレーブは、オーブン中に置かれ、そして、160℃で4日間、加熱された。固体生成物が、遠心分離により回収され、脱イオン水で洗浄され、そして、95℃で乾燥された。
【0053】
粉末XRDは、当該生成物が純粋なSSZ-111モレキュラーシーブであることを示した。
【0054】
当該生成物は、ICP元素分析で決定して、SiO/Alモル比28.7を有した。
【0055】
例3
64.25gの脱イオン水、4.12gの45%KOH溶液、58.03gの14.24% N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-イソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウム水酸化物溶液、及び16.00gのCBV720 Y-ゼオライト粉末(Zeolyst International,SiO/Alモル比=30)を、テフロン(登録商標)ライナー中で一緒に混合した。得られたゲルを、均一になるまで撹拌した。その後、ライナーは蓋をして、そして、Parrスチールオートクレーブ反応器の中に置かれた。その後、オートクレーブは、オーブン中に置かれ、そして、160℃で5日間、加熱された。固体生成物が、遠心分離により回収され、脱イオン水で洗浄され、そして、95℃で乾燥された。
【0056】
粉末XRDは、当該生成物が純粋なSSZ-111モレキュラーシーブであることを示した。
【0057】
当該生成物は、ICP元素分析で決定して、SiO/Alモル比28.2を有した。
【0058】
例4
例1の合成されたままのモレキュラーシーブは、1℃/分の割合で540℃に加熱されて540℃で5時間保持された気流下、マッフル炉の内部で焼成され、冷却され、そして、その後、粉末XRDによって分析された。
【0059】
焼成された生成物の粉末XRDは、図3に示すパターンを与え、そして、当該材料が、有機構造指向剤を除去するための焼成後に安定であることを示した。
【0060】
例5
例4の焼成されたモレキュラーシーブ材料は、10mL(モレキュラーシーブのグラム当たり)の1N硝酸アンモニウム溶液で、95℃で2時間、処理された。混合物は冷却され、溶媒はデカントオフされ、そして、同じプロセスが繰り返された。
【0061】
乾燥後、生成物(NH-SSZ-111)は、B.E.T.方法を介してそして吸着質としてNを使用するミクロ細孔容積分析に供された。モレキュラーシーブは、0.13cm/gのミクロ細孔容積を有した。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
その焼成された形態で、以下の表にリストされたピークを含むX線回折パターンを有する、モレキュラーシーブ:
【表1】

[2]
以下のモル関係:
Al :(n)SiO
(式中、nは10~100の範囲内にある)
を含む組成を有する、[1]のモレキュラーシーブ。
[3]
以下のモル関係:
Al :(n)SiO
(式中、nは15~50の範囲内にある)
を含む組成を有する、[1]のモレキュラーシーブ。
[4]
その合成されたままの形態で、以下の表にリストされたピークを含むX線回折パターンを有する、モレキュラーシーブ:
【表2】

[5]
以下のモル関係を含む組成を有する、[4]のモレキュラーシーブ:
【表3】

式中、Qは、N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオンを含み;そして、Mは、周期表の第1族及び第2族から選択される金属である。
[6]
以下のモル関係を含む組成を有する、[4]のモレキュラーシーブ:
【表4】

式中、Qは、N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオンを含み;そして、Mは、周期表の第1族及び第2族から選択される金属である。
[7]
[4]のモレキュラーシーブを合成する方法であって:
(a)下記を含む反応混合物を調製すること:
(1)酸化ケイ素の供給源;
(2)酸化アルミニウムの供給源;
(3)周期表の第1族及び第2族から選択される金属(M)の供給源;
(4)N,N,N’,N’-テトラメチル-N,N’-ジイソブチルヘキサン-1,6-ジアンモニウムカチオン(Q)の供給源;
(5)水酸化物イオンの供給源;及び
(6)水;及び
(b)当該反応混合物を、モレキュラーシーブの結晶を形成するのに十分な結晶化条件に供すること、
を含む、前記の方法。
[8]
反応混合物が、モル比で下記の組成を有する、[7]に記載の方法:
【表5】

[9]
反応混合物が、モル比で下記の組成を有する、[7]に記載の方法:
【表6】

[10]
結晶化条件が、125℃~200℃の温度を含む、[7]に記載の方法。
[11]
有機化合物を含む供給原料を、転化生成物に転化するプロセスであって、当該供給原料を、有機化合物転化条件で、[1]のモレキュラーシーブの活性形態を含む触媒と接触させることを含む、前記のプロセス。
図1
図2
図3