(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ヒトの皮膚に被着するための電極およびその電極を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/273 20210101AFI20220401BHJP
A61B 5/25 20210101ALI20220401BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61B5/273
A61B5/25
A61N1/04
(21)【出願番号】P 2019542753
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(86)【国際出願番号】 AT2017060276
(87)【国際公開番号】W WO2018071944
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2019-06-18
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】519145610
【氏名又は名称】レオンハート ラング
【氏名又は名称原語表記】Leonh. Lang
【住所又は居所原語表記】Archenweg 56, 6020 Innsbruck, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ブルフス ラング
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4777954(US,A)
【文献】実開平03-041403(JP,U)
【文献】国際公開第2016/001393(WO,A1)
【文献】特表2008-520288(JP,A)
【文献】国際公開第01/17423(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性の支持体を有する、ヒトの皮膚に被着するための電極であって、前記支持体は、皮膚とは反対側のその上面に、信号線を取り外し可能に接続するための接続個所を備えた、突出する導電性の接続要素(5)を有しており、
前記支持体の、
前記上面とは反対側の下面に少なくとも部分的に延在する横導体(3)が設けられており、前記横導体(3)は、前記接続要素(5)と、前記皮膚側を向いた接触接続媒体
(8)とに電気的に接続されている、電極において、
前記接続要素(5)は、ただ1つの部分から構成されており、前記接続要素(5)は、一方では、電気的な前記横導体(3)に接続されており、他方では、別の信号線を取り外し可能に接続するための接続個所
として形成された実質的に球形のヘッド(5a)を有し、
前記接続要素(5)は、
さらに、前記ヘッド(5a)に続いている、直径を小さくしたネック(5b)と、前記ネック(5b)の、
前記支持体に対して前記ヘッド(5a)とは反対側に
おいて前記横導体(3)を前記支持体との間に挟んだ状態でフランジ状に側方に突出している保持領域(5c)と、を有することを特徴とする電極。
【請求項2】
前記接続要素(5)は、金属または導電性プラスチックから構成されていることを特徴とする、
請求項1記載の電極。
【請求項3】
側方に突出しているフランジ状の前記保持領域(5c)は、皿状に構成されていることを特徴とする、
請求項1記載の電極。
【請求項4】
前記接続要素(5)は、全体として実質的に回転対称に構成されていることを特徴とする、
請求項1から3までのいずれか1項記載の電極。
【請求項5】
前記接続要素(5)と前記接触接続媒体(8)とは、側方に互いにオフセットされた、前記支持体(1)の位置(間隔d)に配置されていることを特徴とする、
請求項1から4までのいずれか1項記載の電極。
【請求項6】
前記接触接続媒体(8)は、導電性接着剤として構成されているか、塩水が充填されたスポンジとして構成されていることを特徴とする、
請求項1から5までのいずれか1項記載の電極。
【請求項7】
前記接続要素(5)は、前記支持体(1)の開口部(4)を貫通して突出していることを特徴とする、
請求項1から6までのいずれか1項記載の電極。
【請求項8】
前記接続要素(5)は、前記支持体(1)の、前記皮膚側を向いた、下面だけにおいて、前記支持体(1)に接続されていることを特徴とする、
請求項7記載の電極。
【請求項9】
前記接続要素(5)は、支持層(6)と前記支持体(1)との間に配置されている、側方に突出する保持領域(5c)を有しており、前記支持層(6)は、前記接続要素(5)の前記保持領域(5c)を越えて側方に延在し、そこで前記支持体(1)に固定に接続されることを特徴とする、
請求項1から8までのいずれか1項記載の電極。
【請求項10】
前記支持層(6)は、両面接着テープとして、または熱活性化可能な接着剤から成るテープとして、または前記支持体との直接的な熱可塑性接着に適しかつ一方の面が前記接続要素(5)と前記支持体(1)とに接着される熱可塑性材料から成るテープとして構成されていることを特徴とする、
請求項9に記載の電極。
【請求項11】
前記両面接着テープ(6)は、
一方の面が前記支持体と前記横導体(3)と前記保持領域(5c)とに接着され、他方の面がプラスタ層(7)に接着されており、前記プラスタ層(7)は、前記電極を固定するために、前記皮膚に接着可能であることを特徴とする、
請求項10記載の電極。
【請求項12】
前記支持層(6)は、プラスタ層(7)によって形成されており、前記プラスタ層は、前記電極を固定するために、前記皮膚に接着可能であることを特徴とする、
請求項9記載の電極。
【請求項13】
前記プラスタ層(7)は、その上に被着される、粘着剤からまたは熱活性化可能な接着剤から成る層を介して、前記支持体(1)と前記接続要素(5)の前記保持領域(5c)とに接着されていることを特徴とする、
請求項12記載の電極。
【請求項14】
前記支持体の材料(1)は、形状安定シートから構成されることを特徴とする、
請求項1から13までのいずれか1項記載の電極。
【請求項15】
前記支持体の材料(1)には、前記皮膚側を向いた面に、粘着性または熱活性化可能に構成されている接着剤(2)がコーティングされていることを特徴とする、
請求項1から14までのいずれか1項記載の電極。
【請求項16】
前記横導体(3)は、少なくとも2つの異なる導電性材料を有しており、前記導電性材料のうちの1つ(3)は、前記接続要素(5)に接続されており、前記導電性材料のうちの別の1つ(3a)は、前記接触接続媒体(8)に接続されていることを特徴とする、
請求項1から15までのいずれか1項記載の電極。
【請求項17】
前記横導体(3)は、第1の導電性材料から成るストライプ状の層として構成されており、前記層は、前記接触接続媒体(8)の領域に第2の導電性材料(3a)が設けられていることを特徴とする、
請求項16記載の電極。
【請求項18】
前記第1の導電性材料(3)は、金属もしくは金属合金であるか、または導電性カーボンファイバによって貫通的に導電性であるかもしくは表面が導電性であるプラスチックシートであるか、または貫通的に導電性であるかもしくは表面が導電性である布地材料であることを特徴とする、
請求項17記載の電極。
【請求項19】
前記第2の導電性材料(3a)は、銀/塩化銀もしくはスズ/塩化スズの対、または前記電極の脱電極に適した別の酸化還元対によって構成されていることを特徴とする、
請求項17または18記載の電極。
【請求項20】
前記接続要素(5)は、保持領域(5c)に、少なくとも1つの凹み(5e)および/または孔(5d)を前記接続要素(5)の表面に有することを特徴とする、
請求項1から19までのいずれか1項記載の電極。
【請求項21】
前記孔(5d)は、皿状の前記保持領域(5c)を貫通して延在していることを特徴とする、
請求項3を引用する請求項20記載の電極。
【請求項22】
前記凹み(5e)は、皿状の前記保持領域(5c)の周縁部に歯形および/または波形に構成されていることを特徴とする、
請求項20記載の電極。
【請求項23】
前記支持体(1)は、前記接続要素(5)の隣の領域に、少なくとも1つの切り込み部(9)を有しており、前記切り込み部(9)により、前記皮膚との接着のために設けられているプラスタ層(7)に対し、前記接続要素(5)が可動できるようにされていることを特徴とする、
請求項1から22までのいずれか1項記載の電極。
【請求項24】
前記横導体(3)と、前記接続要素(5)もしくは前記接続要素(5)から側方に突出するフランジ(5c)と、の間に導電性接着剤が設けられていることを特徴とする、
請求項1から23までのいずれか1項記載の電極。
【請求項25】
前記接続要素(5)は、前記電極に取り付け済みでありかつ持続的に前記電極に接続されていることを特徴とする、
請求項1から24までのいずれか1項記載の電極。
【請求項26】
請求項1から25までのいずれか1項記載の、ヒトの皮膚に被着するための電極を製造する方法において、
・非導電性の支持体の、前記皮膚側を向いた下面に、ストライプ状の横導体(3)を被着するステップと、
・前記横導体(3)および前記支持体を貫通する開口部を作成するステップと、
・前記支持体の前記下面から前記開口部に、1つの部分から成る接続要素(5)を挿入し、これにより、前記支持体の、反対側の上面に、信号線用の接続個所が突出し、前記接続要素(5)の、側方に突出する保持領域が、前記横導体(3)に接触するようにするステップと、
・前記保持領域の隣で側方に前記支持体に接着される支持層により、前記接続要素(5)の前記保持領域を覆うステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項27】
・皮膚側に接着するプラスタ層を前記支持体および/または前記支持層に被着するステップと、
・前記プラスタ層の凹部に電気接触接続媒体
(8)を挿入し、これにより、下に位置する横導体(3)に接触接続させるステップと、
をさらに有することを特徴とする、
請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記接続要素(5)は、深絞り加工の金属板から、または導電性カーボンファイバがドーピングされたABSから構成されている、
請求項1記載の電極。
【請求項29】
前記接触接続媒体(8)は、プラスタ層(7)の凹部(7b)に配置され、塩化物がドーピングされたジェルである、
請求項6記載の電極。
【請求項30】
前記接続要素(5)は、直径が先細りになったネック(5b)を有する、
請求項7記載の電極。
【請求項31】
前記プラスタ層(7)は、生体適合性の接着剤(7a)から成る、患者側のコーティングによって前記皮膚に接着可能である、
請求項12記載の電極。
【請求項32】
前記支持体の材料(1)は、PETから構成される、
請求項14記載の電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載された電極に関する。さらに、本発明は、電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような医療用皮膚電極は、人体から電気信号を取り出す測定電極として使用可能である。しかしながらこれらの電極は、電流を人体に導くための治療用電極としても使用可能である。これらの電極は、このことを目的として皮膚に貼り付けられ、その下面に一般に導電性ジェル、または電極の接続要素に直流的に接触接続している別の電気接触接続媒体を有する。この接続要素には、電極から電流を取り出すかまたは電流を電極に供給することが可能な電気信号線を接続することができる。
【0003】
1つのタイプの電極は、皮膚とは反対側の上面に、突出した導電性接続要素を有しており、この導電性接続要素は、ネックに続いている、多くの場合に実質的に球頭状の接続個所を備えている。
【0004】
このタイプの電極の従来の構成では、接続要素は、2つの部分から実現されていた。上側部分(上側ボタン、雄スナップボタン)は、市販の信号線、例えばECG線路用の接触接続および留め要素として使用される。実質的に支持体の下側には、すなわち皮膚側を向いた面には、ジェル(接触接続媒体)から直接、電位を受け取るため、またはジェルに渡すために使用される下側ボタン(雌スナップボタン)が設けられている。雌スナップボタンは、電気的にも機械的にも雄スナップボタンに接続されており、しかも一般に2つの部分のスナップ留めによって接続されており、これにより、側方に突出しているフランジ状の、雄スナップボタンの保持領域と、雌スナップボタンの同様の保持領域と、の間で、電極の支持体材料がしっかりと挟持される。このような構成により、一方では接続要素が電極の支持体に機械的に良好に保持され、他方では、信号電極に対して電気的に有利な特性を有する材料から雌スナップボタンを作成することができ、例えば、このために銀をコーティングすることができ、この銀層それ自体は、全面またはジェルと接触接続する少なくとも1つの部分領域が銀/塩化銀(Ag/AgCl)から成る層によって覆われる。雌スナップボタンとジェルが直接、接触しないことも可能である。この場合にこのいわゆるオフ・センタ信号電極では、雌スナップボタンとジェルとを接続する横導体が設けられる。
【0005】
しかしながら先行技術の電極は高価であり、このような大量生産品では、わずかな価格差であっても重大である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の課題は、よりコスト的に有利に製造することができ、それにもかかわらず電極に接続要素が機械的に良好に係止され、かつ良好な電気特性を提供する、冒頭に述べたタイプの電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明にしたがい、請求項1に記載した電極によって解決される。
【0008】
接続要素が、互いにスナップ留めされる2つの部分(雄スナップボタンと雌スナップボタン)から構成される、従来、頻繁に行われている一般的な2つの部分から成る構成とは異なり、本発明では、ただ1つの部分が、接続要素として設けられており、この部分は、一方では信号線を取り外し可能に接続するための接続個所を提供し、他方では電気的な横導体に(有利には直流的に)接続される。接続要素のただ1つの部分それ自体は、完全に複数の材料から、例えば、ニッケルめっきされた真鍮または導電性材料(特にカーボンファイバ)がドーピングされたプラスチックから構成することが可能である。しかしながら、このただ1つの部分は、雌スナップボタンおよび雄スナップボタンから成る従来の2つの部分の構造とは異なり、ただ1つの部分という意味において構造的なユニットになる。
【0009】
特に好ましいのは、接続要素の次のような構成である。すなわちここでは、接続要素は、これが、実質的に球頭状のヘッドと、これに続いている、直径を小さくしたネックと、ネックの、ヘッドとは反対側の端部にフランジ状に側方に突出している保持領域を有するように構成されている。球形状のヘッドを介して、標準信号線を容易に取り外し可能に接続することができる。直径を小さくしたネックは、(好適には側方に接することなく)、開口部を通して支持体に導かれるのに対し、フランジ状に側方に突出する保持領域は、支持体の下面もしくはこれに取り付けられる層状の横導体に接続され、好ましくは接着される。直径を大きくした、フランジ状に側方に突出する保持領域は、大きな引張負荷が加わったとしても、接続要素を支持体材料に確実に固定する。
【0010】
接続要素に圧縮荷重が加わる際にも良好な保持を保証するために、好適に規定されるのは、接続要素が、支持層と支持体との間に配置されている、側方に突出する保持領域を有することであり、支持層は、接続要素の保持領域を越えて側方に延在し、そこで支持体に固定に接続され、好適には接着される。
【0011】
圧縮荷重によって接続要素に加わる力は、一方では、保持領域と、支持体の下面またはそこに設けられる横導体と、の接着部によって受け止められ、他方では、これらの力を支持体に側方に導く支持層によって受け止められる。
【0012】
本発明の対象において、保持要素の電気特性に対し、高い要求が課せられることはない。したがって本発明の対象は、コスト的に有利な材料、例えば簡単な金属板から構成可能である。すなわち保持要素は、特別な電気特性を有する必要はない。というのは、電気接触接続媒体に接続されている横導体だけが、生体用電極に有利なこの電気特性を有すればよいからである。
【0013】
除細動の場合に電極においてノイズを少なくし、脱分極を行うため、実際に酸化還元対が使用される。これらの酸化還元対は、酸化もしくは還元することができ、その際に少なくとも1つの電子を取り込むかまたは少なくとも1つの電子を放出することができる。実際にこの脱分極に対して種々異なる物質が使用される。最も頻繁には銀/塩化銀およびスズ/塩化スズが使用される。しかしながら本発明に対しては、電極の脱分極を可能にするすべての酸化還元対が考えられる。これらの酸化還元対は、アクティブに混ぜられるかまたは反応により、可能であればその場で形成することが可能である。
【0014】
例えば銀/塩化銀は、比較的高価な物質であるため、本発明の別の一様相にしたがって、横導体が、少なくとも2つの異なる導電性材料を有し、これらの導電性材料のうちの1つが、接続要素に直流的に接続され、これらの導電性材料のうちの別の1つが、接触接続媒体に直流的に接続されるようにすれば十分である。
【0015】
横導体を、少なくとも2つの異なる材料から構成するという手段により、コストをさらに節約することができる。すなわち実際の横導体として、例えば、金属または導電性カーボンファイバを有するプラスチックのような比較的コスト的に有利な材料を使用することができるのに対し、生体用電極の有利な電気特性にクリティカルな、電気接触接続媒体(特にジェル)との接続領域に、例えば銀/塩化銀のような第2の材料を使用することができる。この材料は、この領域において局所的にのみ設けられれば十分である。
【0016】
全体として本発明の根底にある基本的な着想は、信号線用の接続要素が電極に良好に係止される一方で、電気特性がほとんど問題にならず、ひいてはコスト的に有利な材料を使用できるように、信号線用の接続要素を構成することである。他方、有利な電気信号線用に設けられる比較的高価な材料は、電気接触接続媒体(ジェル)との接続部における電気的にクリティカルな領域だけに使用することが可能である。この課題を担うのは横導体である。極めて手短にいうと、導電性接続要素は、電気導体の基本特性を無視すれば、主に「力学」の任を負っているといえる。横導体ではその反対である。横導体は、特別な機械的な特性を満たす必要はなく、電気接触接続媒体(ジェル)との接続個所の領域にのみ、そのために有利な材料から構成される。この限りにおいて、横導体は、特別な機械的な役割なしに「電気」の任を負っている。
【0017】
本発明の別の利点および詳細を、以下の図の説明に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による電極の一実施例の、電極が完成するまでの製造ステップを下側(後に皮膚側を向く面)から見た概略図である。
【
図2】プロセスステップの一部だけが平面図で描画されている、
図1に対応する平面図である。
【
図3】
図1の線A-Aによる一連の断面を示す図である。
【
図4】別の実施例についての
図1と実質的に同じ図である。
【
図5】別の実施例についての
図2と実質的に同じ図である。
【
図6】別の実施例についての
図3と実質的に同じ図である。
【
図7】電気接続要素の実施例を下側から見た図である。
【
図8】電気接続要素の実施例を下側から見た別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3は、概略図よりも良好な視覚化のためのものと理解すべきである。実際にはこの積層体は、医療用電極において一般的であるのとは異なるサイズを有する。
図1~
図3を参照し、ヒトの皮膚に被着するための、本発明による電極の一実施例を製造する方法の流れを詳しく説明する。
【0020】
非導電性の支持体1から出発する。支持体材料は、電極の電気構成要素を係止するために使用される。これは、例えば、(フレキシブルな)シートから(例えばPETまたはTPUから)構成可能であり、このシートは、
図1において表側の下面に接着剤2がコーティングされており、接着剤2は、例えば、粘着性(感圧型接着性)または熱活性化可能(ホットメルト)に実現することができる。
【0021】
次のステップでは、この支持体材料にストライプ状の横導体3が固定され、特に接着される。本発明の好ましい一変形実施形態においてこの横導体は、異なる2つの導電性材料を有しており、これらの導電性材料のうちの1つは、後に電気接続要素に直流的に接続され、これらの導電性材料のうちの別の1つは、接触接続媒体(ジェル)に直流的に接続される。
【0022】
図示した実施例においてこの横導体は、導電性のカーボンファイバがドーピングされたプラスチックから成る、黒で描画したストライプ状の導体である。電気接触接続媒体(ジェル)との後の接触接続個所の領域において、この横導体3(第2の導電性材料を備えた第1の材料)には、例えば銀/塩化銀またはスズ/塩化スズまたは別の酸化還元対から成る層3aがコーティングされている。
【0023】
好適には、有利な電気特性のために接触接続個所から後のジェルに向かって設けられるこの層3aは、後にジェルが設けられる個所だけに設けられる。その他の個所では、以下で説明する電気接続要素との電気接続を形成するために、格段にコスト的に好ましい「通常の」導体3で十分である。
【0024】
次のステップでは、電気的な横導体3および支持体1を通る孔4が設けられる。これは、例えば、打ち抜き加工によって行ってよい。引き続き、図示しない市販の信号線を取り外し可能に接続するための実質的に球頭状の接続個所5aを有しかつ支持体1の上面1aを越えて突出する導電性接続要素5が挿入される。
【0025】
電気接続要素は、図示した実施例において、実質的に球形のヘッド5aとの接続部において、直径を小さくしたネック5bを有しており、このネック5bには、最終的に、ヘッド5aとは反対側の端部に、フランジ状に側方に突出する保持領域5cが設けられる。
【0026】
全体としてフランジ状の側方に突出しているこの保持領域5cは、実質的に皿状に構成されている。保持領域5cは、一方では、支持体1と皿状のフランジ5cとの間に横導体3が「挟持される」ことにより、横導体3との電気的な接触接続に使用される。他方では、皿状のフランジは、特に、信号ケーブルによってヘッド5aに加わり、ひいては接続要素5全体に加わり得る引張負荷に対して、電気接続要素の機械的な保持を形成するために使用される。
【0027】
好ましくは、横導体3と、接続要素5もしくは接続要素5から側方に突出するフランジ5cと、の間に、導電性接着剤が設けられるように規定する。
【0028】
従来一般的であった、スナップ留めされかつ上に突出する雄スナップボタン(上側ボタン)と、下にある雌スナップボタン(下側ボタン)と、から成る2つの部分の接続要素とは異なり、本発明では、ただ1つの部分から成る接続要素5が使用され、この接続要素5は、一方では、電気的な横導体3と接続され、他方では、(図示しない)信号線を取り外し可能に接続するための接続個所5aを有する。これにより、電極のコスト的に有利な製造が可能になる。というのは、最もコストが集中する雌スナップボタン(下側ボタン)を省略できるからである。機械的な係止には、接続要素を1つの部分で構成するので十分である。
【0029】
電気特性に対する要求は、わずかである。これにより、例えば深絞り加工の金属部分のような簡単な構成物を接続要素5として使用可能である。すなわち、いくらかより扱いにくい電気的な役割は、ここでは、いつもの通常の雌スナップボタン(下側ボタン)が引き受けるのではなく、後に塗布される電気接触接続媒体(ジェル)と接続される、横導体3の端部が引き受ける。すなわち役割が分割される。電気接続要素は、基本特性を除いて導電性であってよく、実質的に電極における機械的な保持の任を負うのに対し、横導体は、機械的な役割から十分に開放される。これにより、有利な材料選択を行うことができる。特に、より高価な(電気的な観点から有利な)材料を、後にジェルとの接触接続が行われる個所(個所3a)だけに設けることが可能である。
【0030】
導電性接続要素は(すでに述べたように)深絞り加工の金属板から構成することが可能である。この場合、内部は少なくとも部分的に中空である。しかしながら、導電性プラスチックから、例えば導電性カーボンファイバがドーピングされたABSからこれを構成することも可能である。
【0031】
有利には、接続要素は、実質的に回転対称に構成される。別の変形形態も可能である。
【0032】
電気接続要素5cを最終的に電極に固定するため、また特にヘッド5aに加わる圧縮荷重に対して保護するためにも、次のステップでは支持層6を被着する。この支持層6は、例えば、両面接着テープから構成することが可能であり、この両面接着テープは、
図1において裏側になる面において、接続要素5と(具体的には皿状の保持領域5cと)、支持体1の下面1aの領域と、に接着される。
【0033】
ここではこれらの層に圧力を加えることができ、これにより、これらの層は、相応に輪郭が描かれ、互いに接続される。しかしながら
図3に示された、支持層6を被着した後の、そこに示したエッジを有する断面は、単に概略的な描画と理解すべきである。実際には層厚は、多くの場合により薄く、層の経過は実質的により丸まっている。
【0034】
支持体1と、電気的な横導体3と、電気接続要素5の保持領域5cと、に一方の面が接着されている両面接着テープ6には、他方の面にプラスタ層7が接着され、このプラスタ層7は、電極を固定するために、好適には、生体適合性の接着剤から成る患者側のコーティングを用いて皮膚に接着可能である。
【0035】
図示した実施例とは異なり、支持層をプラスタ層から(中間に配置される両面接着テープなしに)直接、形成することも可能である。ここでは、プラスタ層を、その上に被着される、粘着剤からまたは熱活性化可能な接着剤から成る層を介して、支持体1と、接続要素5の保持領域5cと、に接着することも可能である。
【0036】
図1~
図3に示した実施例に戻る。そこに図示されているプラスタ材料7は、両面接着テープ6を介してだけではなく、支持体1の下面2の接着剤を介して支持体1に固定に接続される。
【0037】
プラスタ材料は、最終的には、患者の皮膚に電極を固定するために使用される。適切なプラスタ材料は、例えば、シート(例えばPE)から、発泡テープ(例えばPE発泡体)からまたは不織布から構成することが可能である。プラスタ材料には、一般に患者側に、生体適合性の接着剤7aがコーティングされている。
【0038】
図1~
図3に示した電極の最後の製造ステップでは、電気接触接続媒体が、このために設けられた、プラスタ材料7の凹部7bに挿入される。電気接触接続媒体により、人体で生成される電位または装置で生成される測定電流または刺激電流を(好適にはイオンベースで)人体表面(皮膚)から電気接触接続要素にまたは逆方向に導通することができる。接触接続媒体は、例えば、多少は液状化されている(多少はゼリー状にされている)か、または架橋ポリママトリクス(ハイドロジェル)である、塩化物がドーピングされたジェルから構成されることが可能である。しかしながら別の手段によって、例えば、導電性接着剤として、または塩水が充填されたスポンジとして電気接触接続媒体を形成することも可能である。
【0039】
いずれにせよ、
図1~
図3の最後のステップに示されているように電気接触接続媒体8は、凹部7bに挿入される。電気接触接続媒体8は、この中で端部領域3a(横導体のそこの第2の材料、特に銀/塩化銀)に接触接続する。
【0040】
特別に構成された横導体3の端部領域の協働により、特に銀/塩化銀のコーティングにより、または別の適切な材料と、導電性の接触接続媒体8の材料と、のコーティングにより、例えば、ノイズのない信号伝送または脱分極作用などのような、電極の適切な電気特性を得ることができ、横導体3の端部における比較的高価な第2の材料3aの使用を、接触接続媒体8との接触接続が行われる領域に限定することができる。これによってコストがさらに低減される。
【0041】
全体としては、
図1~
図3にしたがって製造する際には、「分散された」電極が得られ、ここでは、接続要素5と接触接続媒体8(ジェル)とが、側方に互いにオフセットされた、支持体1の位置(間隔d)の配置されている。
【0042】
図1~
図3に示した実施例にとって重要な方法ステップは、次の通りである。
・非導電性の支持体の、皮膚側を向いた下面に、ストライプ状の横導体を被着し、好適には熱活性的に接着し、
・横導体および支持体を貫通する開口部を作成し、好適には打ち抜き加工し、
・支持体の下面から開口部に、1つの部分から成る接続要素を挿入し、これにより、支持体の、反対側の上面に、信号線用の接続個所が突出し、接続要素の、側方に突出する(好適に皿状の)保持領域が、横導体に接触するようにし、
・保持領域の隣で側方に支持体に接着される支持層により、接続要素の保持領域を覆う。
【0043】
最終的には、次に、電極を完成するため、さらに以下のステップを行う。
・皮膚側に接着するプラスタ層を支持体および/または支持層に被着し(好適には接着し)、
・プラスタ層の凹部に電気接触接続媒体(好適にはジェル)を挿入し、これにより、下に位置する横導体に接触接続させる。
【0044】
図4~
図6に描画した実施例においてほとんどの方法ステップは、
図1~
図3に描画した方法ステップと一致するため、同じ参照符号は同じ部分を示す。
【0045】
違いは、実質的にステップ5にある。すなわち、
図4によれば、ここでは結合体全体を通る2つの切り込み部9が設けられる。次のステップ6では、次に、プラスタ材料7が、上側領域および下側の「翼部」だけに貼り付けられるが(例えば局所的な熱活性化により)、これによって可動なままになっているプレートの領域では、この貼り付けが行われていない。
【0046】
図4~
図6に示した実施例では全体として、接続個所5aを備えた接続要素5を支持する可動のプレート10が得られる。この可動のプレートは、図示しない信号線に加わる引張荷重を、ひいては接続個所5aに加わる引張荷重を調整し、これにより、この引張荷重は、完全には電極に伝達されない。これにより、全体として患者の皮膚における電極の付着が改善される。
【0047】
図7には、接続要素5からフランジ状に側方に突出する保持領域5cの一実施例が示されている。この保持領域もしくはフランジは、孔5dを有する。電極を接着する際に、接着剤は、これらの孔に浸透し、これによって接続要素と残りの電極の部分との付着および回動防止が改善される。
【0048】
図8に示した実施形態は、同じ目的に使用される。ここでは、皿状に構成された保持領域の周縁部に複数の湾曲部5eが設けられている。これらにもホットメルト接着剤が浸透し、これによって付着が改善される。
【0049】
図示しない信号線は、公知のように構成され、一般には、評価装置または電力供給装置から電極に導かれる、絶縁されたフレキシブルケーブルから構成される。信号線それ自体は、電極の一部ではなく、すなわち電極およびその接続要素とは別に構成される。信号線は、その電極側の端部に、多くの場合に結合部分を有しており、この結合部分を介して、信号線は、機械的および電気的に取り外し可能に、電極の接続要素の接続個所に接続可能であり、接続要素それ自体は、好ましくは、電極に取り付け済みでありかつ持続的にこれに接続されている。