(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】新規ペプチドベースのPCSK9ワクチン
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20220401BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220401BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220401BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220401BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20220401BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220401BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20220401BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220401BHJP
A61K 39/05 20060101ALI20220401BHJP
C07K 14/34 20060101ALN20220401BHJP
C07K 14/33 20060101ALN20220401BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20220401BHJP
C07K 14/46 20060101ALN20220401BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K19/00
A61K38/16
A61P9/10
A61P3/06
A61K47/68
A61K39/39
A61K39/00 G
A61K39/05
C07K14/34
C07K14/33
C07K14/725
C07K14/46
(21)【出願番号】P 2019554602
(86)(22)【出願日】2018-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2018052555
(87)【国際公開番号】W WO2018189705
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2019-12-03
(31)【優先権主張番号】201721013281
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】304023824
【氏名又は名称】カディラ ヘルスケア リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ムクル ジェイン
(72)【発明者】
【氏名】サレシュ ギリ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェッシュ バヘカー
(72)【発明者】
【氏名】ガウラブ グプタ
(72)【発明者】
【氏名】ラジェンドラ チョペイド
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-503623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 7/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
SIPWNLER-Nle-TPC;
SIPWNLER-Aib-TPC;
SIPWNLE-Har-ITPC;
SIPWN-Nle-ERITPC;
SI-Hyp-WNLERITPC;
SIPWN-Aib-ERITPC;
SIPWNLE-Cit-ITPC;
SIPWNLERI-Aib-PC;
Aib-IPWNLERITPC;
S-(N-Me-Ile)-IPWNLERITPC;
SIP-APPA-NLERITPC;
及び
SIP-Bip(OMe)-NLERITPC;
から選択されるいずれか1つのアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項2】
適切な免疫原性担体とコンジュゲートした請求項1に記載のアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項3】
アミノ酸配列が、SIPWN-Nle-ERITPC; SI-Hyp-WNLERITPC及びSIPWNLE-Cit-ITPCから選択される、請求項2に記載の適切な免疫原性担体とコンジュゲートしたアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項4】
免疫原性担体が、ジフテリア毒素(DT)、改変DT、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、破傷風トキソイド(TT)、プロテインD、又はヘルパーT細胞エピトープを含む何れか他の適切なタンパク質若しくはペプチドの群から選択される、請求項2に記載の適切な免疫原性担体とコンジュゲートしたアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項5】
前記免疫原性担体が、ジフテリア毒素(DT)及びCRM(CRM197)である、請求項2に記載の適切な免疫原性担体とコンジュゲートしたアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項6】
1つ以上の医薬的に許容されるアジュバント及び他の医薬賦形剤と組み合わされる、請求項2に記載の適切な免疫原性担体とコンジュゲートしたアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項7】
請求項6に記載の適切な免疫原性担体とコンジュゲートし、かつ、1つ以上の医薬的に許容されるアジュバント及び他の医薬的賦形剤と組み合わせたアミノ酸配列を含むペプチドであって、ここで、アミノ酸配列が、SIPWN-Nle-ERITPC; SI-Hyp-WNLERITPC及びSIPWNLE-Cit-ITPCから選択される、ペプチド。
【請求項8】
請求項6に記載の適切な免疫原性担体及び1つ以上の医薬的に許容されるアジュバントとコンジュゲートしたアミノ酸配列を含むペプチドであって、ここで、前記医薬的に許容されるアジュバントが、ミョウバン、好ましくはポリ(I:C)であるTLR3アゴニスト、好ましくはモノホスホリルリピドA又はGLAであるTLR4アゴニスト、好ましくはフラジェリンであるTLR5アゴニスト、好ましくはガルジキモド及びイミキモドであるTLR7アゴニスト、好ましくはR848であるTLR7/8アゴニスト、好ましくはN-グリコリル-MDP、核酸を含むCpG(ここで、システインが、メチル化されていない)、QS21(サポニンアジュバント)、インターロイキン、ベータ-シトステロールであるNOD2アゴニスト、
の群から選択される、ペプチド。
【請求項9】
請求項6に記載の適切な免疫原性担体及び1つ以上の医薬的に許容されるアジュバントとコンジュゲートしたアミノ酸配列を含むペプチドであって、ここで、1つ以上の医薬的に許容されるアジュバントが、ミョウバン及び/又はGLA及び/又はモノホスホリルリピドAから選択される、ペプチド。
【請求項10】
ジフテリア毒素(DT)又はCRM(CRM197)から選択される免疫原性担体とコンジュゲートされ、ミョウバン、モノホスホリルリピッドA又はGLAから選択される医薬的に許容されるアジュバント、及び他の医薬的に許容される賦形剤とさらにコンジュゲートされるSIPWN-Nle-ERITPC又はSI-Hyp-WNLERITPC又はSIPWNLE-Cit-ITPCから選択されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項11】
高脂血症、高コレステロール血症、又はアテローム性動脈硬化症及び他の心血管疾患から選択される健康障害の治療に適した、請求項1~10の何れかに記載のアミノ酸配列を含むペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の新規短鎖ペプチド、それらの鏡像異性体、それらのジアステレオ異性体、それらの立体異性体、それらの薬学的に許容される塩又はプロドラッグに関する。一実施形態において、式(I)のペプチドは、適切な免疫原性担体とコンジュゲートされ、PCSK9を媒介する疾患の治療又は予防に有用であり、in vivoでPCSK9に対する抗体の形成を誘導することができる。
A-Z1-Z2-Z3-Z4-Z5-Z6-Z7-Z8-Z9-Z10-Z11-Z12-B
式(I)
本発明はまた、これらの薬品、その免疫原性組成物及び医薬組成物の製造方法、並びに内科的治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、新規短鎖ペプチドに関する。さらに、これらのペプチドは、適切な免疫原性担体とコンジュゲートされており、低密度リポタンパク質(LDL)受容体(LDLR)のプロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)による分解を阻害することができる。免疫原性担体に結び付いたこれらの新規ペプチドは、高脂血症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症等のPCSK9関連の健康障害の予防及び/又は治療用のワクチンとして製剤化される。これらの合併症は、病的状態(morbidity)及び死(mortality)を引き起こす心血管疾患(CVD)に繋がる。
【0003】
以前に、スタチン等の薬剤は、血漿低密度リポタンパク質コレステロール(LDLc)の減少のための治療薬として使用された。PCSK9の発見及びLDLRの分解の増強を介した血漿LDLcの制御におけるその役割は、PCSK9が、高脂血症、高コレステロール血症又はアテローム性動脈硬化症等の健康障害の制御に関して実行可能なターゲットである可能性が高いということの解釈に繋がった。
【0004】
PCSK9は、常染色体優性高コレステロール血症(ADH)に関連する3番目の遺伝子座として2003年に発見された。PCSK9は、哺乳類のPCSKファミリーの9番目のメンバーとして同定されたプロテイナーゼK様サブチラーゼである、神経アポトーシス制御転換酵素1(NARC-1)としても知られる。それは主に、肝臓、腸、腎臓で発現される。それは、~72kDaのタンパク質として合成され、~65kDaの成熟タンパク質として分泌される前に自己触媒的に切断を受ける。
【0005】
循環PCSK9は、LDLRのEGF-Aドメインに結合し、LDLRの分解を促進する。肝臓のLDLRは、血漿からLDLcを除去するための主要な経路である。循環LDLcは、LDLRに結合し、受容体を介したエンドサイトーシスによって内在化される複合体を形成する。その後、分解のためにLDLcが先行され、LDLRは、細胞表面に戻され再利用される。PCSK9は、LDLRと相互作用し、このPCSK9-LDLR相互作用は、LDLRの分解を引き起こし、血漿からLDLcの除去に対するLDLR利用可能性を低下させる。これは、PCSK9が、LDLR及びLDLc代謝の制御因子として重要であることを明確に示す。
【0006】
循環PCSK9の量を減らす又はLDLRとのPCSK9の相互作用を阻害するために、モノクローナル抗体(mAbs)、低分子干渉RNA(siRNA)を使用したPCSK9阻害、アンチセンスオリゴヌクレオチド、PCSK9結合アドネクチン、小分子阻害剤及び自己触媒阻害剤等のいくつかのアプローチが試みられた。しかしながら、PCSK9は、細胞内及び細胞外でLDLRに作用し、循環PCSK9を標的とすることは、LDLcレベルを低下させるための有用なアプローチである。PCSK9特異的mAbを用いたヒト臨床試験の有望な結果は、PCSK9を標的とすることで効率的かつ、安全なLDLc減少が可能になることを示す。加えて、PCSK9をターゲットとする安全性及び有効性を評価するためのいくつかの臨床試験が、最近、成功裏に完了した。結論として、スタチンとは別に、LDLcレベルを調節するための代替標的としてPCSK9を特定することは、非常に重要である。
【0007】
循環PCSK9を介したLDLR分解を抑制するための様々な組織によるアプローチに加えて、最近、ファイザー(Pfizer)(WO2011027257A2)及びアフィリス(Affiris)(WO2014033158A2)は、その複数の特許により、ヒトPCSK9に特異的に結合する抗体を誘導することができ、PCSK9を介したLDLRの分解を阻害することができる抗原ペプチドを開示した。
【0008】
PCSK9遺伝子の発見及びコレステロール低減におけるその役割のため、LDLRのPCSK9を介した分解を阻害するためのいくつかのアプローチが試験された。現在、PCSK9を標的とするモノクローナル抗体(mAbs)は、ヒトでの使用に関して評価されている。最近、レジェネロン/サノフィ(Regeneron/Sanofi)は、アリロクマブ(Alirocumab)(mAbs)を開発し次のようないくつかの特許出願を公開した: WO/2015/140079、(EP2015/055369)、WO/2015/142668 (US2015/020564) & WO/2015/123423(US2015/015633)WO/2014/194111、(US2014/040050)、WO/2014/194168(US2014/040163)、WO/2013/039969(US2012/054756)これは、mAb316P等の抗PCSK9抗体が、ヒトでの使用が承認されることをカバーする。これに加えて、サノフィWO/2015/073494(US2014/065149)、WO/2015/054619、(US2014/060109)、及びレジェネロン医薬品WO/2014/197752(US2014/041204)はまた、抗PCSK9抗体であるPCSK9、又は抗原結合タンパク質を開示する。さらに、サノフィWO/2012/101251(EP2012/051318)、WO/2012/101253(EP2012/051321)、WO/2012/101252(EP2012/051320)は、PCSK9特異的抗体又は抗原結合フラグメントを、好ましくは、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の追加投与により開発した。
【0009】
アムジェンが開発したエボロクマブ(Evolocumab)(AMG-145)は、完全にヒトmAbs、又はヒト用に承認されたLDLRへのPCSK9の結合を阻害できる抗原結合タンパク質である[WO/2014/209384(US2013/048714)、WO/2014/150983(US2014/024702)、WO/2014/144080(US2014/028339)、WO/2013/166448(US2013/039561)、WO/2012/154999(US2012/037394)]。ファイザーによって開発された非とかmAbであるボコシズマブ[WO/2013/008185(IB2012/053534)]は、調査中である。イーライリリー(EliLilly)[LY3015014]は、現在、第II相試験中の他のPCSK9mAbを開発している[WO/2013/039958(US2012/054737)]。
【0010】
他のいくつかのPCSK9アンタゴニスト抗体は、イレブン・バイオセラピューティクス(Eleven Biotherapeutics)WO/2015/200438(US2015/037345)、WO/2014/107739(US2014/010536); ジェネンティック(Genentech)WO/2013/188855(US2013/046032)、WO/2012/088313(US2011/066593); アルダービオ・ホールディングス(Alderbio Holdings)WO/2013/169886 (US2013/040112); アダエラタ(Adaerata)WO/2013/091103(CA2012/050923); ノバルティス(NovartisWO/2012/168491(EP2012/061045)、WO/2012/170607(US2012/041214); IRM LLC WO/2012/109530(US2012/024633)、WO/2011/072263(US2010/059959); 及びメルクシャープ&ドームカンパニー(Merck Sharp&Dohme Corp)WO/2012/054438 (US2011/056649)、WO/2011/053759(US2010/054640)、WO/2011/053783、(US2010/054714)、WO/2011/037791(US2010/048849)、によって開発され、その多くは試験中である。
【0011】
他のアプローチにおいて、RNA干渉(RNAi)を使用したPCSK9の発現阻害が用いられる。ロシュ(Roche)WO/2014/207232(EP2014/063757); ファイザー(Pfizer)WO/2014/170786(IB2014/060407); アルナイラムファーマシューティカル(Alnylam Pharmaceuticals)WO/2014/089313(US2013/073349)、WO/2012/058693(US2011/058682)WO/2011/038031(US2010/049868)、WO/2011/028938(US2010/047726); コウワカンパニーLTD(Kowa Company LTD WO/2014/017569(JP2013/070128); 大阪大学WO/2014/007305 (JP2013/068299)、WO/2012/029870(JP2011/069818); ニューヨーク大学WO/2013/154766(US2013/032271)及びサンタリスファーマ(Santaris Pharma)WO/2011/009697(EP2010/059257)を含むいくつかの会社が、RNAiを用いてPCSK9発現阻害剤を開発しており、これらの多くは臨床開発の様々な段階にある。
【0012】
抗PCSK9活性化ワクチン接種ストラテジー(strategy)は、PCSK9を阻害する代替ストラテジーである。ファイザーWO/2012/131504 (IB2012/050924)、アメリカ合衆国保健福祉省長官(The Secretary, Dept. of Health and Human services USA)WO/2015/123291 (US2015/015408)、及びインスティチュート・ディ・ライスチャーチ・ディ・バイオロギア・モレコラーレ(Istituto di Ricerche di Biologia Molecolare)は、LDLcレベルを下げるための様々なワクチン接種ストラテジーを開示する。
【0013】
他の有望なアプローチは、PCSK9阻害のためのペプチドベースのPCSK9ワクチンである。PCSK9遺伝子に由来する短鎖ペプチドは、PCSK9に対する抗体を産生することができる適切な免疫原性担体とコンジュゲートされる。ファイザー(WO/2011/027257 (IB2010/053784)、US2011/0052621; アフィリスUS2016/0106822、WO/2015/128287(EP2015/053725)、EP2703483、WO/2014/033158(EP2013/067797)、WO/2013/037889(EP2012/067950)による特許出願は、LDLcレベルの制御におけるそのような免疫原性ペプチドを開示する。
【0014】
しかしながら、これまでのところ、非天然/修飾アミノ酸を含むPCSK9ペプチドワクチンは報告されておらず、作用の持続時間と共にその有効性及び/又は効力を改善するように適切な化学修飾を使用して、これらのPCSK9ペプチドの代謝安定性を改善する重要な試みも行われていない。本発明は、PCSK9遺伝子由来のPCSK9ペプチドに組み込まれ、次いで適切な免疫原性担体とコンジュゲートされる修飾アミノ酸の役割を調査する最初の試みの1つである。驚くべきことに、これらの修飾ペプチドの多くは、PCSK9に対する抗体の形成を誘導できることが見出されている。従って、これらのワクチンは、PCSK9を介した疾患の治療又は予防に有用であり得る。
【0015】
本発明の目的は、適切な免疫原性担体とコンジュゲートされ得、LDLRのPCSK9を介した分解を阻害する抗体を産生することができる特定の新規単鎖ペプチド式(I)を提供することである。目的は、天然アミノ酸を適切な免疫原性担体と任意にコンジュゲートされた非天然アミノ酸で置き換えることにより特定の修飾ペプチドを開発することにより達成され、PCSK9遺伝子に特異的に方向付けられた抗体の産生のために評価され、それによって、高脂血症、高コレステロール血症、又はアテローム性動脈硬化症等の心血管合併症の治療のために用いられ得るLDLcのレベルが低減する。
【0016】
従って、本発明は、式(I)の新規単鎖ペプチドに関し、これらは、任意に適切な免疫原性担体とコンジュゲートされる。そのような組成物は、ワクチン又はワクチン組成物として使用され得る。好ましい実施形態において、ペプチドは、式(I)、
A-Z1-Z2-Z3-Z4-Z5-Z6-Z7-Z8-Z9-Z10-Z11-Z12-B
式(I)
(式中、
「A」は、基-NH-R1、R2-CO-NH-を表し、ここで、R1は、水素又は任意に置換された直鎖又は分岐(C1-18)アルキル鎖を表し;
「R2」は、任意に置換された直鎖又は分岐(C1-18)アルキル鎖、(C1-6)アルコキシ、(C3-6)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はアリールアルキル基から選択され;
好ましい実施形態において、前記アリール基は、フェニル、ナフチル、インダニル、フルオレニル又はビフェニル基から選択され; 前記ヘテロアリール基は、ピリジル、チエニル、フリル、イミダゾリル、ベンゾフラニル基から選択され;
「B」は、R3、-COOR3、-CONHR3又はCH2OR3を表し、ここで、R3は、H又はセリン、システイン、バリン、アルファ-メチル-バリン、Lys(ビオチン)、Lys(アルキル)、Lys(アセチル)及び同様のもの等の適切なアミノ酸を表し;
Z1は、非荷電アミノ酸残基の群から選択され、好ましくは、セリン、スレオニン、バリン及びアラニン並びにホモセリン、O-メチル-スレオニン、O-メチル-セリン、O-メチルホモセリン等のそれら誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z2は、非荷電アミノ酸残基から選択される、好ましくは、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、グリシン、アラニン、Aib及びN-メチル-イソロイシン、N-メチルロイシン等のそれらの誘導体の群から選択され;
Z3は、プロリン、1-アミノ炭素環状酸及びヒドロキシプロリン、チアプロリン、アミノプロリン、アルファ-メチル-プロリン、3-フルオロプロリン、4-フルオロプロリン、1-アミノ-シクロプロパンカルボン酸、1-アミノ-シクロペンタンカルボン酸、1-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸等のそれら誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z4は、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン及びそれらの誘導体の群から選択されたアミノ酸残基であり;
Z5は、グルタミン、ヒスチジン、好ましくはアスパラギン及びそれらの誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z6は、非荷電アミノ酸残基から選択される、好ましくは、イソロイシン、ロイシン、アラニン、スレオニン、アスパラギン酸、Aib、及びノルイソロイシン、N-メチル-ロイシン、ホモロイシン、アルファ-メチル-アスパラギン酸等のそれら誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z7は、親水性の負に荷電されたアミノ酸残基の群から選択されるアミノ酸残基、好ましくは、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びアルファ-メチル-アスパラギン酸、アルファ-メチル-グルタミン酸、ホモグルタミン酸等のそれらの誘導体から選択されるアミノ酸残基であり;
Z8は、アミノ酸残基の群から選択されるアミノ酸残基、好ましくは、アルギニン、ホモアルギニン、シトルリン、グルタミン、アスパラギン、リジン及びそれらの誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z9は、非荷電アミノ酸残基の群から選択されるアミノ酸残基、好ましくは、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、グリシン、アラニン又はAib及びN-メチルイソロイシン等のそれら誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z10は、極性かつ、非荷電アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、好ましくはセリン、スレオニン、バリン、アラニン及びそれらの誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z11は、何れかのアミノ酸残基、好ましくは、アミノ酸残基の群から選択されるアミノ酸残基、好ましくは、プロリン、及びヒドロキシプロリン、チアプロリン、アルファ-メチル-プロリン、3-フルオロプロリン、4-フルオロプロリン、1-アミノ-シクロプロパンカルボン酸、1-アミノ-シクロペンタンカルボン酸、1-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸等のそれらの誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z12は、何れかのアミノ酸残基、好ましくは、システイン、ホモシステイン及びそれらの誘導体の群から選択される極性かつ非荷電アミノ酸残基である; ただし、Z1~Z12の少なくとも1つは、常に非天然アミノ酸を表す)
の12個のアミノ酸残基を含む。
【0017】
本発明で用いられるアミノ酸の単一表記は、Zubay, G., Biochemistry 2nd ed., 1988, MacMillan Publishing, New York, p. 33.に見出され得る。
【0018】
本明細書では、一連のPCSK9ペプチドが、一般式A-Z1-Z2-Z3-Z4-Z5-Z6-Z7-Z8-Z9-Z10-Z11-Z12-B(I)で報告され、ここで、Z1~Z12のそれぞれは、存在する場合、天然に存在するアミノ酸又は非天然/修飾アミノ酸配列を表す。ただし、Z1~Z12の少なくとも1つは、常に非天然/修飾アミノ酸を表す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【文献】Glenny AT, Pope CG, Waddington H, Wallace U. Immunological Notes: XVII-XXIV. J Pathol Bacteriol. 1926; 29:31-40.
【文献】Grun JL, Maurer PH. Different T helper cell subsets elicited in mice utilizing two different adjuvant vehicles: the role of endogenous interleukin 1 in proliferative responses. Cell Immunol. 1989; 121:134-145.
【文献】Ott G. et al., 2000. The adjuvant MF59: a 10-year perspective. Methods in Molecular Medicine, Vol 42, 211-228.
【文献】Calabro, S. et al., 2013. The adjuvant effect of MF59 is due to the oil-in-water emulsion formulation, none of the individual components induce a comparable adjuvant effect. Vaccine 31:3363-9.
【文献】Ott G. et al., 1995. MF59. Design and evaluation of a safe and potent adjuvant for human vaccines. Pharm Biotechnol 6: 277-96.
【発明の概要】
【0020】
本発明は、適切な免疫原性担体と任意に結合し、LDLRのPCSK9媒介性の分解を阻害することができる新規単鎖PCSK9ペプチド配列を提供する。これらのペプチドは、非天然アミノ酸で適切に修飾され、その免疫原性を改善し、それによって抗体産生を増加させるように適切な免疫原性担体とコンジュゲートされる。ここでPCSK9ペプチド誘導体/類似体と称されるこれらの単鎖ペプチドは、主にヒトPCSK9遺伝子の活性ペプチド配列に由来する。これらの新規免疫原性短鎖PCSK9ペプチド類似体ベースのワクチンは、血漿LDL-cレベルの制御に関する病理的治療又は予防に有用である。これらのワクチンによって産生される抗体は、PCSK9媒介性の分解を防ぎ、それによって、高脂血症、高コレステロール血症、又はアテローム性動脈硬化症等の健康障害を調節する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい実施形態
本発明の実施形態は、一般式(I)の新規短鎖ペプチド、それら合成に関与する新規中間体、それら薬学的に許容される塩及びそれらを含む医薬組成物又はPCSK9遺伝子に対するワクチンとして適切なそれら混合物を提供することである。
【0022】
他の実施形態において、式(I)の単鎖ペプチドは、適切な免疫原性担体とコンジュゲートされ、生体システムにおいてPCSK9に特異的に結合する抗体の形成を誘導することができるワクチンとして作用する。抗体とPCSK9の相互作用により、LDLRの分解が阻害され、血漿LDLcレベルが低下する。これらのワクチンは、高脂血症、高コレステロール血症、又はアテローム性動脈硬化症等の健康障害の治療に適し得る。
【0023】
さらに好ましい実施形態において、一般式(I)の単鎖ペプチド、それらの薬学的に許容される塩、溶媒和物並びに医薬的に許容されるアジュバント、免疫原性担体、溶媒、希釈剤、賦形剤及びそれら製造時に通常用いられる他の媒体と組み合わせての混合物を含む医薬組成物が提供される。
【0024】
さらに他の好ましい実施形態において、適切な溶媒、希釈剤、他の賦形剤、及びそれらの製造に通常用いられる他の媒体との組み合わせの適切な免疫原性担体とコンジュゲートされた一般式(I)の単鎖ペプチドを含む医薬組成物が提供される。
【0025】
さらになお好ましい実施形態において、式(I)の新規短鎖ペプチドの単独での使用、又は高脂血症、高コレステロール血症、又はアテローム性動脈硬化症及び他の心血管疾患等の健康障害の治療のための適切な免疫原性担体とのコンジュゲートの際の使用が提供される。
【0026】
特に好ましい実施形態によれば、本発明のワクチン中の新規短鎖ペプチドは、そのN末端及び/又はC末端に、直接又はスペーサー配列を介して結合した少なくとも1つのシステイン残基を含む。このシステイン残基は、ペプチドを、他の分子又は担体タンパク質に結合するための反応基として機能する。
【0027】
本発明のさらに好ましい実施形態において、免疫原性担体は、ジフテリア毒素(DT)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、CRM(好ましくはCRM197)、破傷風トキソイド(TT)、タンパク質D又は何れか他のタンパク質又はヘルパーT細胞エピトープを含むペプチドからなる群から選択される。
【0028】
さらに好ましい実施形態において、アジュバントは、ミョウバン(alum)、MF-59と組み合わせたミョウバン、ポリ(I:C)等のTLR3アゴニスト、モノホスホリルリピドA又はGLA等のTLR4アゴニスト、フラジェリン等のTLR5アゴニスト、ガルジキモド(gardiquimod)等のTLR7アゴニスト及びR848等のイミキモドTLR7/8アゴニスト、N-グリコリル-MDP.CpG含有核酸(シトシンはメチル化されていない)、QS21(サポニンアジュバント)、インターロイキン、ベータシトステロール及び同様のもの等のNOD2アゴニストから選択される。
【0029】
さらに好ましい実施形態において、アジュバントは、ミョウバン、MF-59等の他のアジュバントと組み合わせたミョウバン、GLA、モノホスホリルリピドA、CpG含有核酸(シトシンはメチル化されていない)、QS21(サポニンアジュバント)、インターロイキン、ベータシトステロールから選択される。
【0030】
使用される略語
以下の略語は、実施例及び本明細書の他の箇所で使用される:
Ac=アセチル(Acetyl)
Aib=α-アミノ-イソ酪酸(α-Amino-isobutyric acid)、
Abu(CN)=2-アミノ-4-シアノブタン酸(2-amino-4-cyanobutanoic acid)、
Α-Me-APPA=アルファ-メチル-2-アミノフェニルペンタン酸(alpha-methyl-2-aminophenyl pentanoic acid)、
α-Me-Asp=アルファ-メチル-アスパラギン酸(alpha-methyl-aspartic acid)、
α-Me-D=アルファ-メチル-アスパラギン酸(alpha-methyl-aspartic acid)、
α-Me-E又はαMe-Glu=アルファ-メチル-グルタミン酸(alpha-methyl-glutamic acid)、
α-Me-L=アルファ-メチル-ロイシン(alpha-methyl-leucine)、
α-Me-Phe=アルファ-メチル-フェニルアラニン(alpha-methyl-phenylalanine)、
α-Me-2F-Phe=アルファ-メチル-2-フルオロフェニルアラニン(alpha-methyl-2-fluorophenylalanine)、
α-Me-2,6-diF-Phe=アルファ-メチル-2,6-ジフルオロフェニルアラニン(alpha-methyl-2,6-diflurophenylalanine)、
α-Me-Pro=アルファ-メチル-プロリン(alpha-methyl-proline)、
AC3C=1-アミノ-シクロプロパンカルボン酸(1-amino-cyclopropanecarboxylic acid)、
AC5C=1-アミノ-シクロペンタンカルボン酸(1-amino-cyclopentanecarboxylic acid)、
AC6C=1-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸(1-amino-cyclohexanecarboxylic acid)、
ACN=アセトニトリル(Acetonitrile)、
APPA=2-アミノフェニルペンタン酸(2-Aminophenyl pentanoic acid)、
Amp=4-アミノプロリン(4-Aminoproline)、
3-Amp=3-アミノプロリン(3-Aminoproline)、
Β-Ala=ベータアラニン(beta alanine)、
Boc=tert-ブトキシカルボニル(tert-Butoxycarbonyl)、
But=O-tert-ブチル基(O-tert-butyl group)、
Cit=シトルリン(Citrulline)
DCM=ジクロロメタン(Dichloromethane)、
DMF=N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-Dimethylformamide)、
DIPCDI=ジ-イソプロピルカルボジイミド(Di-isopropylcarbodiimide)、
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン(Diisopropylethylamine)、
Et=エチル(Ethyl)、
Et2O=ジエチルエーテル(Diethyl ether)、
2F-Phe=2-フルオロフェニルアラニン(2-fluorophenylalanine)、
3F-Pro=3-フルオロプロリン(3-fluoroproline)、
4F-Pro=4-フルオロプロリン(4-fluoroproline)、
Fmoc=フルオレニルメトキシカルボニル(Fluorenylmethoxycarbonyl)、
g=グラム(Gram)(s)、
h=時間(Hour)(s)、
Har=ホモアルギニン(homoarginine)、
HoGlu又はHomo-Glu=ホモグルタミン酸(homoglutamic acid)
HoLeu=ホモロイシン(homoleucine)、
HoSer=ホモセリン(homoserine)、
Hyp=4-ヒドロキシプロリン(4-Hydroxyproline)、
3-Hyp=3-ヒドロキシプロリン(3-Hydroxyproline)、
HOBt=1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(1-Hydroxybenzotriazole)、
HOAt=7-アザ-ヒドロキシベンゾトリアゾール(7-Aza-hydroxybenzotriazole)、
HBTU=2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアルミニウムヘキサフルオロリン酸塩(2-(1H-benzotriazole-1-yl)-1,1,3,3-tetramethyl aminium hexafluorophosphate)、
HPLC=高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography)
K(Biotin)=リジン(Lysine(ビオチン(Biotin))、
L=リッター(Liter)、
LC/MS=液体クロマトグラフィー/質量分析(Liquid Chromatography/Mass Spectrometry)、
Me=メチル(Methyl)、
Min=分(minute)(s),
mL=ミリリッター(milliliter)、
μl=マイクロリッター(microliter)、
mg=ミリグラム(milligram)(s)、
mmol=ミリモル(millimole)(s)、
MS=質量分析(Mass Spectrometry)、
Nle=ノルロイシン(Norleucine)、
NMe-Ile=N-メチル-イソロイシン(N-methyl-isoleucine)、
NMe-Leu=N-メチル-ロイシン(N-methyl-leucine)、
NMe-Nle=N-メチル-ノルロイシン(N-methyl-norleucine)、
OMe-Thr又はThr(OMe)=O-メチル-スレオニン(O-methyl-threonine)、
OMe-Ser又はSer(OMe)=O-メチル-セリン(O-methyl-serine)、
OMe-HoSer又はHoSer(OMe)=O-メチル-ホモセリン(O-methyl-homoserine)、
PyBOP=ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロリン酸塩(Benzotriazole-1-yl-oxy-tris-pyrrolidino-phosphonium hexafluorophosphate)、
2-Pal=2-ピリジルアラニン(2-Pyridylalanine)、
Pal=3-ピリジルアラニン(3-Pyridylalanine)、
4-Pal=4-ピリジルアラニン(4-Pyridylalanine)、
Sar=サルコシン(Sarcosine)、
SPPS=固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)、
2-Thi=(2-チエニル)-アラニン((2-Thienyl)-alanine)、
Tha=(4-チアゾリル)-アラニン((4-Thiazolyl)-alanine)、
Thz=4-チアプロリン(4-Thiaproline)、
2-Thz=2-チアプロリン(2-Thiaproline)、
TMS=トリメチルシリル(Trimethylsilyl)、
TIPS=トリイソプロピルシラン(Triisopropylsilane)、
TFA=トリフルオロ酢酸(Trifluoroacetic acid)、
TBTU=2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアルミニウムテトラフルオロホウ酸塩(2-(1H-benzotriazole-1-yl)-1,1,3,3-tetramethylaminium tetrafluoroborate)、
Trt=トリチル基(Trityl group)。
【0031】
発明の詳細な説明
本発明に従い、構造式(I)を有する種々の新規短鎖ペプチドが合成され、次いで適切な免疫原性担体とコンジュゲートされた。これらのワクチンは、高脂血症、高コレステロール血症、又はアテローム性動脈硬症等の健康障害の治療に用いられ得る。
【0032】
一態様において、本発明は、従って、以下の式(I)
A-Z1-Z2-Z3-Z4-Z5-Z6-Z7-Z8-Z9-Z10-Z11-Z12-B
式(I)
(式中、
「A」は、基-NH-R1、R2-CO-NH-を表し、ここで、「R1」は、水素又は任意に置換された直鎖又は分岐(C1-18)アルキル鎖を表し;
「R2」は、任意に置換された直鎖又は分岐(C1-18)アルキル鎖、(C1-6)アルコキシ、(C3-6)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール又はアリールアルキル基から選択され;
ここで、アリール基は、フェニル、ナフチル、インダニル、フルオレニル又はビフェニル基から選択され; 前記ヘテロアリール基は、ピリジル、チエニル、フリル、イミダゾリル、ベンゾフラニル基から選択され;
「B」は、R3、-COOR3、-CONHR3又はCH2OR3を表し、ここで、R3は、H又はセリン、システイン、バリン、アルファ-メチル-バリン、Lys(ビオチン)、Lys(アルキル)、Lys(アセチル)及び同様のもの等の適切なアミノ酸を表し;
Z1は、非荷電アミノ酸残基の群から選択され、好ましくは、セリン、スレオニン、バリン及びアラニン並びにホモセリン、O-メチル-スレオニン、O-メチル-セリン、O-メチルホモセリン等のそれら誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z2は、非荷電アミノ酸残基から選択される、好ましくは、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、グリシン、アラニン、Aib及びN-メチル-イソロイシン、N-メチルロイシン等のそれらの誘導体の群から選択され;
Z3は、プロリン、1-アミノ炭素環状酸及びヒドロキシプロリン、チアプロリン、アミノプロリン、アルファ-メチル-プロリン、3-フルオロプロリン、4-フルオロプロリン、1-アミノ-シクロプロパンカルボン酸、1-アミノ-シクロペンタンカルボン酸、1-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸等のそれら誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z4は、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン及びそれらの誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z5は、グルタミン、ヒスチジン、好ましくはアスパラギン及びそれらの誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z6は、非荷電アミノ酸残基から選択される、好ましくは、イソロイシン、ロイシン、アラニン、スレオニン、アスパラギン酸、Aib、及びノルイソロイシン、N-メチル-ロイシン、ホモロイシン、アルファ-メチル-アスパラギン酸等のそれら誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z7は、親水性の負に荷電されたアミノ酸残基の群から選択されるアミノ酸残基、好ましくは、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びアルファ-メチル-アスパラギン酸、アルファ-メチル-グルタミン酸、ホモグルタミン酸等のそれらの誘導体から選択されるアミノ酸残基であり;
Z8は、アミノ酸残基の群から選択されるアミノ酸残基、好ましくは、アルギニン、ホモアルギニン、シトルリン、グルタミン、アスパラギン、リジン及びそれらの誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z9は、非荷電アミノ酸残基の群から選択されるアミノ酸残基、好ましくは、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、グリシン、アラニン、Aib及びN-メチルイソロイシン等のそれら誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z10は、極性かつ非荷電アミノ酸残基から選択されるアミノ酸残基、好ましくはセリン、スレオニン、バリン、アラニン及びそれらの誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z11は、何れかのアミノ酸残基、好ましくは、アミノ酸残基の群から選択されるアミノ酸残基、好ましくは、プロリン、及びヒドロキシプロリン、チアプロリン、アルファ-メチル-プロリン、3-フルオロプロリン、4-フルオロプロリン、1-アミノ-シクロプロパンカルボン酸、1-アミノ-シクロペンタンカルボン酸、1-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸等のそれらの誘導体の群から選択されるアミノ酸残基であり;
Z12は、何れかのアミノ酸残基、好ましくは、システイン、ホモシステイン及びそれらの誘導体の群から選択される極性かつ非荷電アミノ酸残基である; ただし、Z1~Z12の少なくとも1つは、常に非天然アミノ酸を表す)
の構造を有するPCSK9ペプチド誘導体を開示する。
【0033】
好ましい実施形態の1つにおいて、「A」は、基-NH-R1、R2-CO-NH-を表し、「R1」は、水素又は置換直鎖又は分岐(C1-18)アルキル鎖であり; 「R2」は、置換直鎖又は分岐(C1-18)アルキル鎖、(C1-6)アルコキシ、(C3-6)シクロアルキル、アリール、及びアリールアルキル基から選択され; ここで、前記アリール基は、フェニル、ナフチル、インダニル、フルオレニル、又はビフェニル基から選択され; 「B」は、R3、-COOR3、-CONHR3又はCH2OR3を表し、ここで、R3は、H、セリン、システイン、バリン、アルファ-メチル-バリン、Lys(ビオチン)、Lys(アルキル)、Lys(アセチル)から選択され、Z1は、セリン、スレオニン、バリン、アラニン、Aib、ホモセリン、O-メチル-スレオニン、O-メチル-セリン又はO-メチル-ホモセリンから選択され、Z2は、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、グリシン、アラニン、Aib、N-メチル-イソロイシン又はN-メチル-ロイシンから選択され、Z3は、プロリン、ヒドロキシプロリン、チアプロリン、アミノプロリン、2-チアプロリン、3-ヒドロキシプロリン、3-アミノプロリン、アルファーメチル-プロリン、3-フルオロプロリン、4-フルオロプロリン、1-アミノ-シクロプロパンカルボン酸、1-アミノ-シクロペンタンカルボン酸又は1-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸から選択され、Z4は、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、2-フルオロフェニルアラニン、アルファ-メチルフェニルアラニン、アルファーメチル-2-フルオロフェニルアラニン、アルファ-メチル-2,6-ジフルオロフェニルアラニン、2-アミノ-5-フェニル-ペンタン酸又は2’-エチル-4’-メトキシ-ビフェニルアラニンから選択され、Z5は、グルタミン、ヒスチジン又はアスパラギンから選択され、Z6は、イソロイシン、ロイシン、アラニン、スレオニン、アスパラギン酸、Aib、ノルイソロイシン、N-メチル-ロイシン、ホモロイシン、ベータ-アラニン又はアルファ-メチル-アスパラギン酸から選択され、Z7は、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルファ-メチル-アスパラギン酸、アルファ-メチル-グルタミン酸、2-アミノ-4-シアノブタン酸又はホモグルタミン酸であり、Z8は、アルギニン、ホモアルギニン、シトルリン、グルタミン、アスパラギン又はリジンから選択され、Z9は、イソロイシン、ロイシン、ノルロイシン、グリシン、アラニン、Aib又はN-メチルイソロイシンから選択され、Z10は、セリン、スレオニン、バリン、Aib又はアラニンから選択され、Z11は、プロリン、ヒドロキシプロリン、チアプロリン、アミノプロリン、アルファ-メチル-プロリン、3-フルオロプロリン、4-フルオロプロリン、1-アミノ-シクロプロパンカルボン酸、1-アミノ-シクロペンタンカルボン酸又は1-アミノ-シクロヘキサンカルボン酸から選択され、Z12は、システイン又はホモシステインから選択される。
【0034】
定義
用語「天然アミノ酸」は、自然界に存在する20個全てのアミノ酸を示す。用語「非天然アミノ酸(unnatural amino acid)」又は「非天然アミノ酸(non-natural amino acid)」は、好ましくは、L-AlaのD-Ala等の置換等のL-アミノ酸の対応するD-アミノ酸との置換、又はL若しくはDアミノ酸、アミノアルキル酸の以下の何れかの適切な修飾;
- Alaのα-メチルAla(Aib)への置換、Leuのα-メチルLeuへの置換等のα-アルキル化;
- 芳香族アミノ酸側鎖のハロゲン、(C1-C3)アルキル、アリール基による置換等、より具体的には、PheのハロPheによる置換等のアミノ酸側鎖上の置換;
- βアラニン等のβアミノ酸、
の何れかを表す。
【0035】
明細書の任意の箇所で使用される様々な基、ラジカル及び置換基について、次の段落で説明する。
【0036】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、単独又は他のラジカルと組み合わせて、メチル、エチル、n-プロピル、イソープロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、t-アミル、n-ペンチル、n-へキシル、イソ-ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、オクタデシル及び同様のもの等の1~18個の炭素を含む直鎖又は分岐ラジカルを意味する。
【0037】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、単独又は他のラジカルと組み合わせて、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及び同様のもの等の3~7個の炭素を含むラジカルを意味する。
【0038】
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語「アミノ酸」は、限定されないが、「α」炭素と称される同じ炭素に結合したアミノ基及びカルボキシル基が含まれる。
【0039】
「α」炭素での絶対「S」配置は、一般に「L」又は自然配置と称される。「α」炭素の「R」配置は、一般に「D」アミノ酸と称される。水素又はメチル等両方の「α置換基」が等しい場合、アミノ酸は、Gly又はAibであり、キラルではない。
【0040】
本明細書の何れかに記載される用語「誘導体」は、その特定のアミノ酸の何れかの置換又は相同の非天然アミノ酸を示す。
【0041】
本発明は、主に短鎖ペプチドに関して例示されてきたが、治療の潜在力が保持されるならば、残基間のペプチド結合は、非ペプチド結合によって置き換えられ得ることも理解されるだろう。当業者にとって、チオアミド結合形成、アミド結合のNメチル化及び同様のもの等の適切な修飾は、周知であるだろう。
【0042】
生物学的活性が保持される限り、アミノ酸の保存的置換を含む配列も本発明の範囲内である。
【0043】
本発明の化合物は、限定されないが、以下を含むペプチド及び非アミド及びペプチド類似体を含むことを明確に理解されたい:
a)1つ以上のアミノ酸が対応するDアミノ酸で置換されている化合物。当業者にとって、レトロインベルソアミノ酸配列が、標準的な方法により合成できることは、周知である; 例えば、Chorev M., Acc. Chem. Res., 26, 1993, 266-273を参照;
b)ペプチド結合が、代謝分解に対してより耐性のある構造に置き換えられている化合物。例えば、Olson G. L., et al., J. Med. Chem., 36(21), 1993, 3039-3049を参照、及び
c)個々のアミノ酸が、類似構造、例えばAlaとAib; ArgとCitで置換された化合物。
【0044】
明細書全体を通して、天然アミノ酸の従来の1文字と3文字のコード、並びにHyp(ヒドロキシプロリン)、Thz(チアプロリン)、Aib(α-アミノイソブタン酸)等の他の非天然アミノ酸の一般に許容される3文字コードが使用される。
【0045】
短鎖ペプチドの調製
いくつかの合成経路は、ペプチド合成に関する当業者に周知の本発明の短鎖ペプチドを調製するために用いられ得る。全ての記号が先に定義された通りである式(I)の短鎖ペプチドは、ペプチド合成に関する当業者に知られている従来の技術、又は当業者に理解されるそのバリエーションと共に、以下に示す方法を使用して合成され得る。参照される方法は、限定されないが、以下で説明される方法を含む。
【0046】
本明細書に記載されるその短鎖ペプチドは、液相技術(好ましくは、Boc化学を使用して; M. Bodansky, A. Bodansky, “The practice of peptide synthesis”, Springer-Verlag, Berlim, 1984; E. Gross, J. Meinhofer, “The peptide synthesis, analysis, biology”, Vol. 1, Academic Press, London, 1979)及び/又は例えば、G. Barany & R. B. Merrifield, ''The peptides: Analysis, synthesis, Biology''; Volume 2- ''Special methods in peptide synthesis, Part A'', pp. 3-284, E. Gross & J. Meienhofer, Eds., Academic Press, New York, 1980; 及びJ. M. Stewart and J. D. Young, ''Solid-phase peptide synthesis'' 2nd Ed., Pierce chemical Co., Rockford, Il, 1984に記載されるもの等の固相技術の両方の適切なバリエーションを使用する化学合成によって生成され得る。
【0047】
本発明の短鎖ペプチドを調製するための好ましい戦略は、FmocベースのSPPSアプローチの使用に基づき、ここで、存在する場合、Fmoc(9-フルオレニルメトキシカルボニル)基は、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、tert-ブチル(But)、トリチル(Trt)基等の酸に不安定な保護基と組み合わせて、アミノ酸側鎖の一時的な保護のために、αアミノ基の一時的な保護のために使用される(例えば、E. Atherton & R.C. Sheppard, ''The Fluorenylmethoxycarbonyl amino protecting group'', in ''The peptides: Analysis, synthesis, Biology''; Volume 9 - ''Special methods in peptide synthesis, Part C'', pp. 1-38, S. Undenfriend & J. Meienhofer, Eds., Academic Press, San Diego, 1987を参照)。
【0048】
短鎖ペプチドは、ペプチドのC末端から開始して、不溶性ポリマー支持体(樹脂)上で段階的に合成され得る。一実施形態において、当該合成は、ペプチドのC末端アミノ酸を、アミド、エステル又はエーテル結合の形成により樹脂に付加することにより開始される。これにより、C末端アミド、カルボン酸又はアルコールとして、結果として生じるペプチドが、最終的に放出される。
【0049】
FmocベースSPPSにおいて、合成に使用されるC末端アミノ酸及び他の全てのアミノ酸は、αアミノ保護基が合成中に選択的に除去されるように、20%ピぺリジン等の適切な塩基を使用して、樹脂からのペプチドの何れかの早期の切断又は側鎖保護基の脱保護無しで、通常は酸に不安定な保護基で保護された、それらαアミノ基及び側鎖官能基(存在する場合)を差次的に保護(直交保護)する必要がある。
【0050】
アミノ酸のカップリングは、そのカルボキシル基の活性エステルとしての活性化及び樹脂に付加されたN末端アミノ酸のブロックされていないαアミノ基との反応によって行われる。全てのカップリング及び脱保護の後、ペプチジル樹脂を、DMF、DCM及びジエチルエーテル等の過剰な溶媒で洗浄した。αアミノ基の脱保護及びカップリングの配列は、目的のペプチド配列が組み立てるまで繰り返される(スキーム1)。次に、通常、副反応を制限するための適切なスカベンジャーの存在下で、適切な切断混合物を使用して、側鎖官能基の付随する脱保護によりペプチドを樹脂から切断する。得られたペプチドは、最終的に逆相HPLCにより精製される。
【0051】
最終ペプチドの前駆体として必要なペプチジル樹脂の合成は、市販の架橋ポリスチレンポリマー樹脂(Novabiochem, San Diego, CA)を利用する。本発明での使用に好ましいものは、Fmoc-PAL-PEG-PS樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシアセチル-p-メチルベンズヒドリルアミン樹脂(Fmoc-RinkアミドMBHA樹脂)、C末端アミノ酸が既に付随している場合と付随していない場合がある2-クロロ-トリチル-クロリド樹脂又はp-ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂(HMP樹脂)である。C末端アミノ酸が付随していない場合、DIPCDIとの反応により形成されたFmoc保護アミノ酸のHOBt活性エステルにより、その付随が達成され得る。2-クロロトリチル樹脂の場合、DIPEAを使用して、第1のFmoc保護アミノ酸のカップリングが達成された。次のアミノ酸のアセンブリのために、ペプチジル樹脂のN末端保護は、10~20%のピぺリジン溶液を使用して選択的に脱保護された。全てのカップリング及び脱保護の後、DMF、DCM、及びエーテルで洗浄することにより、過剰なアミノ酸及びカップリング試薬が除去された。後続のアミノ酸のカップリングは、それぞれ、DIPCDI/HOBt又はDIPCDI/HOATから精製されたHOBt又はHOAT活性エステルを使用して達成され得る。いくつかの困難なカップリング、特に疎水性又は扱い難い側鎖保護を有するアミノ酸である、それらアミノ酸のカップリングにおいて、HBTU、PyBOP又はTBTU等の非常に効率的なカップリング剤とDIPEA等の添加剤の組み合わせを使用して、完全なカップリングが実現され得る。
【0052】
本明細書に記載の短鎖ペプチドの合成は、Fmoc/t-ブチル保護戦略を利用して、CS-Bio又はAAPPTECペプチドシンセサイザー等のバッチ式又は連続フローペプチド合成装置を使用することにより実行され得る。異なる位置に存在する非天然の非市販のアミノ酸は、当該技術分野で知られている1つ以上の方法を使用して、ペプチド鎖に組み込まれた。1つのアプローチにおいて、適切な文献の手順を使用して、Fmoc保護非天然アミノ酸が溶液で調製された。例えば、上記のFmoc保護APPA類似体は、改変された文献の手順(Betsbrugge J.V., et al., Tetrahedron, 54, 1988, 1753-1762)を使用して、L-ピログルタミン酸から良好な鏡像異性純度で調製された。
【化1】
図1:短鎖ペプチドのFmocベースの固相ペプチド合成(SPPS)で使用される保護されたアミノ酸の配列の例。
【0053】
Fmoc保護αメチル化アミノ酸は、非対称ストレッカー合成を使用して調製された(Boesten, W.H.J., et al., Org. Lett., 3(8), 2001, 1121-1124; Cativiela C., Diaz-de-villegas M. D., Tetrahedran Asymmetry, 9, 1988, 3517-3599)。次に、得られた誘導体は、ペプチドの段階的合成に用いられた。あるいは、必要な非天然アミノ酸は、合成有機化学的手順を使用して直接樹脂上に構築され、直鎖ペプチド鎖が調製された。
【0054】
それぞれの短鎖ペプチドのペプチド樹脂前駆体は、文献に記載される標準的な切断手順の何れかの適切なバリエーションを使用して切断及び脱保護され得る(King D.S., et al., Int. J. Peptide Protein Res., 1990, 36, 255-266)。本発明における使用のための好ましい方法は、スカベンジャーとして水及びTIPSの存在下でのTFA切断混合物の使用である。典型的に、ペプチジル樹脂は、TFA/水/TIPS(95:2.5:2.5)で室温、1.5~4時間インキュベートされる。次に、切断された樹脂は、濾過され、TFA溶液は、減圧下で濃縮又は乾燥される。得られた粗ペプチドは、沈殿されるか、又はEt2Oで洗浄されるかの何れか、又は分取HPLCによる精製のためにDMF又は50%水性酢酸に直接再溶解される。
【0055】
分取HPLCを用いた精製により、所望の純度の短鎖ペプチドが得られ得る。粗ペプチドの溶液が、寸法250×50mmのセミプレップカラム(Luna 10μ; C18; 100A)に注入され、220nmでPDA検出器による流出モニタリングを行い、40ml/分の流量で、両方とも0.1%TFAで緩衝化されたACN(水中)の線形勾配で溶出される。精製された短鎖ペプチドの構造は、エレクトロスプレー質量分析(ES-MS)によって確認され得る。
【0056】
調製されたペプチドは全て、Prep-HPLC精製後、カウンターイオンとしてTFAを含むトリフルオロ酢酸塩として単離された。しかしながら、いくつかのペプチドは、適切なイオン交換樹脂床、好ましくは陰イオンDowexSBR(Cl)又は同等の塩基性陰イオン交換樹脂を通過させることにより、脱塩に供された。いくつかの場合において、TFAカウンターイオンは、適切なイオン交換樹脂に通過させることにより、酢酸イオンに置き換えられ、希酢酸バッファーで溶出される。ペプチドの塩酸塩の調製に関して、製造の最終段階で、選択されたペプチドは、酢酸塩と共に4M HClで処理された。得られた溶液は、メンブレンフィルター(0.2μm)で濾過され、続いて凍結乾燥し、白色~オフホワイトのHCl塩を得た。十分に当業者の範囲内である同様の技術及び/又はそのような適切な修飾に従って、本発明の短鎖ペプチドの他の適切な医薬的に許容される塩が調製された。
【0057】
【化2】
スキーム1:FmocベースのSPPSの一般的なスキーム
【0058】
SPPSアプローチを使用した、短鎖ペプチドの一般的な調製方法:
樹脂上の短鎖ペプチドのアセンブリ:
十分な量(50~100mg)のFmoc-PAL-PEG-PS樹脂又はFmoc-RinkアミドMBHA樹脂、充填0.5~0.6mmol/gをDMF(1~10ml/100mg樹脂)で2~10分間膨潤させた。樹脂上のFmoc基は、DMF中の10~30%ピぺリジン(10~30ml/100mgの樹脂)をインキュベートすることにより除去された。脱保護された樹脂は濾過され、過剰のDMF、DCM及びエーテル(50ml×4)で洗浄された。洗浄された樹脂は、新たに蒸留したDMF(1ml/100mgの樹脂)中で、窒素雰囲気下、5分間インキュベートされた。DMF中のHOBt(1~3eq.)及びDIPCDI(1~2eq.)で事前に活性化された第1のFmoc保護アミノ酸の0.5M溶液を樹脂に加え、次いで、窒素雰囲気で樹脂を1~3時間振盪した。カップリングの完了は、定性的なニンヒドリンテストを使用してモニターされた。第1のアミノ酸のカップリング後、樹脂は、DMF、DCM及びジエチルエーテル(50ml×4)で洗浄された。次のアミノ酸のカップリングでは、最初に、10~20%ピぺリジン溶液を使用して、樹脂とカップリングした第1のアミノ酸のFmoc保護が、脱保護され、続いて適切なカップリング剤を使用して、上記のようにFmoc保護された第2のアミノ酸をカップリングした。上記一般的な方法(スキーム1)に従って、所望のペプチド鎖が樹脂上に組み立てられるまで、脱保護、洗浄、カップリング及び洗浄の繰り返しサイクルが実施された。最終的に、上記で調製したFmoc保護ペプチジル樹脂が、上記の20%ピぺリジン処理により脱保護され、ペプチジル樹脂が、DMF、DCM及びジエチルエーテルで洗浄された。所望のペプチドを含む樹脂は、窒素雰囲気下で10~15分乾燥され、切断/脱保護に供された。
【0059】
当業者の範囲内である上記プロトコル及びその適切なバリエーションを使用して、本発明で設計された短鎖ペプチドは、Fmoc-SPPSアプローチを使用して調製された。さらに、樹脂結合短鎖ペプチドは以下のプロトコルを使用して切断され、脱保護され、精製され、特徴付けられた。
【0060】
切断及び保護:
以下のように、TFA切断混合物で処理することにより、所望の短鎖ペプチドが、切断され、それぞれのペプチジル樹脂から脱保護された。TFA/水/トリイソプロピルシラン(95:2.5:2.5)(10ml/100mgのペプチジル樹脂)の溶液が、ペプチジル樹脂に加えられ、混合物は、時々スターリングされながら、室温に保たれた。樹脂は濾過され、切断混合物で洗浄され、合わせた濾液は、蒸発乾固された。得られた残渣は、10mlの水に溶解され、水層は、エーテルで3回抽出され、最後に水槽は、凍結乾燥された。凍結乾燥後に得られた粗ペプチドは、以下のようにHPLCにより精製された。
【0061】
粗短鎖ペプチドの分取HPLC精製:
分取HPLCは、ShimadzuLC-8A液体クロマトグラフィーで実施された。DMF又は水に溶解された粗ペプチド溶液は、寸法250×50mmのセミプレップカラム(Luna 10μ; C18; 100Ao)に注入され、220nmでPDA検出器による流出モニタリングを行い、15~50ml/分の流量で、両方とも0.1%TFAで緩衝化されたACN(水中)の線形勾配で溶出される。0.1%TFAで緩衝した水-ACN混合物の20%~70%の典型的な勾配を、1分間に1%の勾配変化で、50分間にわたり使用した。溶出された所望の産物は、単一の10~20mlの画分で回収され、それぞれのHPLC画分の凍結乾燥により、純粋な短鎖ペプチドが、アモルファス白色粉末として得られた。
【0062】
精製された短鎖ペプチドのHPLC分析
上記の分取HPLCによる精製後、各ペプチドは、Shimadzu LC-10AD分析HPLCシステムで分析RP-HPLCにより分析された。短鎖ペプチドの分析HPLC分析のために、Luna 5μ; C18; 100Ao、寸法250×4.6mmカラムが、0.1%TFA及びACN緩衝液の線形勾配で使用され、PDA検出器を使用して、220nmでクロマトグラフの取得が実行された。
【0063】
質量分析による特性評価
各ペプチドは、フローインジェクションモード又はLC/MSモードの何れかのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)によって特性評価された。トリプル四重極質量分析計(API-3000(MDS-SCIES、カナダ)は、正及び負のイオンエレクトロスプレーモードでの全ての分析で使用された。フルスキャンデータは、ユニット分解能で動作する四重極の質量範囲にわたって取得された。全ての場合において、実験的に測定された分子量は、計算されたモノアイソトピック分子量の0.5ダルトン以内であった。質量クロマトグラフの定量は、Analyst1.4.1ソフトウェアを使用して行われた。
【0064】
以下の表1(i)は、上記のSPPSアプローチを用いて合成された短鎖ペプチドのリストである。リストにおける記載された配列番号1は、WO2011027257からの参照として採用された。
【表1-1】
【表1-2】
【0065】
他の好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、当該分野で周知の方法により化学合成され得る。組換え方法を使用して本h爪委のペプチドを製造することも可能である。ペプチドは、大腸菌(E.coli)、枯草菌(B.subtilis)等の細菌、又はそのようなペプチドを発現できる他の細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ(Candida)、ピキア・パトリス(Pichia pastoris)等の酵母又はペプチドを発現する能力を有する他の酵母又は菌類等の微生物、哺乳類又は昆虫細胞等の真核細胞、又はアデノウイルス、ポックスウィルス、ヘルペスウイルス、シムリキフォレストウイルス、バキュロウイルス、バクテリオファージ、シンドビスウイルス又はセンダイウイルス等の組換えウイルスベクターにおいて製造され得る。組換え的に製造されたペプチドを単離及び精製する方法も当該分野で周知であり、例えば、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等を含む。
【0066】
DTコンジュゲーションの手順
ジフテリア毒素は、535個のアミノ酸からなる単一のポリペプチド鎖であり、ジスルフィド架橋で連結された2つのサブユニットを含む。サブユニットの1つは細胞表面に結合し、より安定したサブユニットが宿主に浸透できるようにする。コンジュゲーションのために、ジフテリアトキソイド及びペプチドは、等モル濃度である必要がある。DT及びペプチドの濃度は、2~50mg/mlである。第1の工程において、ジフテリアトキソイドは、リン酸緩衝生理食塩水に溶解することで溶液にされる。次に、EDAC(1-エチル3,3ジメチルアミノプロピルカルボジイミド)が加えられ、カルボン酸の架橋の第1の工程が提供された。EDACは、アミド結合形式を介して一級アミンと直接反応するためにカルボキシル基を活性化し、従って、ペプチドとのコンジュゲーションのためにジフテリアトキソイドを刺激する。加えて、EDACを介した架橋は、酸性pHでより効果的である。従って、pH6.0のMES緩衝液(40-モルホリノエタンスルホン酸)の存在下で、DTをEDACで1分間インキュベートすることにより、反応を起こすことができる。さらに、MESの存在下でのこのEDACカップリング法は、中間体を形成することにより、コンジュゲーションの効率が改善する。次に、ADH(アジピン酸ジヒドラジド)が加えられ、これは、DT及びペプチドへの比較的安定したヒドラゾン結合をもたらすホモ二官能性架橋試薬である。結合は、部位特異的な方法で行われ、最初に酸化し、次に架橋することにより、pH5.0で行われる(ヒドラジドのpKaが低いため)。これにより、一級アミンによる競合が回避される。EDACが、再び加えられ、混合物は、2~8℃で3時間インキュベートされ、コンジュゲーションを開始させる。上記で調製したDTコンジュゲートペプチドは、10kDカラムで透析され、不純物を除去するために滅菌濾過し(0.2μフィルター)、純粋なペプチド-DTコンジュゲートは、2~8℃で少なくとも1週間保存される。
【0067】
他の実施形態において、WO2011027257及び従来技術に記載されている一般的な手順に従うことにより、ジフテリア毒素の遺伝的に解毒された形態であるCRM197でコンジュゲーションが行われる。
【0068】
さらに好ましい実施形態において、本発明のワクチンは、皮下、筋肉内、皮内、静脈内に投与され得る(例えば、"Handbook of Pharmaceutical Manufacturing Formulations", Sarfaraz Niazi, CRC Press Inc, 2004参照)。製剤は、投与経路に応じて、それぞれの担体、アジュバント、及び/又は賦形剤から構成され得る。
【0069】
ワクチン製剤:
より多くの免疫力及び保護ワクチン設計のために、最終ワクチン製剤は、アジュバントのタイプに応じて、体液性又は細胞性免疫に対する免疫応答を誘導できる免疫増強特性を持つアジュバントが含まれ得る。アルミニウム塩、エマルジョン、リポソーム及びウイロソーム等の従来のアジュバントは、効率的な方法で免疫系にワクチン抗原を提示し、特定の免疫応答を高めるために抗原の放出及び貯蔵を調節する。第2のクラスのアジュバントは、免疫刺激剤であり、これは、免疫系に影響を与え、抗原に対する免疫応答を高める。例えば、MHC分子、共刺激シグナルの活性化、又は関連する細胞内シグナル伝達経路を介して、サイトカイン産生に影響を与える。
【0070】
現在承認されているワクチンアジュバントの多くは、T細胞機能が損なわれているため、T細胞依存性抗体反応が低下している場合、特に高齢者及び免疫不全の集団等の免疫学的に低反応性の集団において、異なる標的病原体に対する効率的な防御応答を誘導するために必ずしも十分に強力ではないことが見出されている。免疫増強特性を持つアジュバントを使用すると、C型肝炎ウイルス(HCV)、HIV、HBV、HPV、インフルエンザ及び癌等の多数のワクチンでより効果的な応答が得られる。従って、ワクチン設計のより合理的なアプローチは、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を改変及び強化し、及び/又はTLRの活用を通じて樹状細胞(DC)に影響を与えることができる免疫刺激アジュバントの使用である。T細胞は、免疫応答の最も効果的なアームであり、ワクチン接種に対する免疫応答の制御におけるT細胞の重要性が認識されていることを考えると、ワクチン接種戦略におけるこれらの新規アジュバントの使用は、適切と思われる。
【0071】
製剤に使用できる他のアジュバント:
DTコンジュゲートペプチドからより強い免疫応答を引き出すために、製剤に加えられる追加のアジュバントは、以下の通りである。
1)ミョウバン(Alum)(水酸化アルミニウムゲル、2%湿潤ゲル懸濁液)
ミョウバンは、抗原が、体内に長時間残る不溶性アルミニウム塩でアジュバント化されているため、効果的なアジュバントである。不溶性の塩粒子から抗原がゆっくりと放出され、免疫系の持続的かつ、効果的な刺激が可能になる(「デポ効果」)[1]。デポ効果に加えて、又はデポ効果とは対照的に、不溶性アルミニウム塩は、最終的にTヘルパー2(Th2)タイプの免疫応答をもたらす方法で自然免疫細胞を活性化する。ミョウバンは、抗原提示細胞(APC)による抗原の取り込みを改善することにより、Th2応答を誘導する[2]。
2)MF-59のミョウバン
AddaVax(MF59とも知られる)は、スクアレンベースの水中油型ナノエマルジョンである。スクアレンは、フロイントのアジュバントで使用されるパラフィンオイルよりも容易に代謝されるオイルである[3]。スクアレン水中油型エマルジョンは、細胞性(Th1)及び体液性(Th2)免疫応答の両方を誘発する[4、5]。このアジュバントクラスは、マクロファージ及び顆粒球によるサイトカイン及びケモカイン産生の刺激と共に、抗原提示細胞の動員及び活性化を介して作用する[3]。
3)ミョウバンとポリ(I:C)等のTLR3アゴニスト、モノホスホリル脂質A又はGLA-SE等のTLR4アゴニスト、フランジェリン等のTLR5アゴニスト、ガーディキモド及びイミキモド等のTLR7アゴニスト、R848等のTLR7/8アゴニスト、N-グリコリル-MDP.CpG含有核酸(シトシンがメチル化されていない)等のNOD2アゴニスト、QS21(サポニンアジュバント)、インターロイキン、ベータシトステロール及び同様のもの。
全ての実験で使用されるアジュバントは、ミョウバンとモノホスホリルリピドAの安定製剤の組み合わせである。
【0072】
新規ペプチドの親和力の決定
組換えヒトPCSK9の新規ペプチドの親和力パラメーターは、ビアコア(Biacore)装置(Biacore T200、GE Healthcare)を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって分析された。SPR実験は、ビアコアT200装置(GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン)を使用して25℃で実施された。
【0073】
表面処理: (タンパク質固定化の手順)
10mM酢酸緩衝液、pH5.0で100~150μg/mLに希釈した精製組換えヒトPCSK9(Hisタグ、BSP Biosciences)が、アミンカップリング化学を用いて、シリーズSセンサーチップCM5の4つのフローセルの1つに約6000~8000RU(共鳴ユニット)のレベルで固定された。表面は、1Mエタノールアミン、pH8.5でブロックされた。一方、参照減算用のブランク(PCSK9なし)として1つのフローセルが固定された。150mM NaClを含む10mM Hepes(pH7.4)がランニングバッファーとして使用された。残りの2つのフローセルは、将来の使用のために保存される。
【0074】
結合及び速度論/親和力(Kinetics/Affinity)実験:
NCE(新規ペプチド)の100×ストック溶液が、100%DMSOで作製され、10mM Hepes、pH7.4 + 150mM NaClの濃度範囲に希釈され、DMSOの最終濃度が1%に保たれるようにされた。種々の濃度のNCEをブランク並びにリガンド(タンパク質)固定表面に通過させることにより速度論/親和力研究が行われた。各サイクルは、5~30μL/minの流量で60秒又は120秒で検体(希釈小分子薬)を注入し、その後60~180秒で解離層を形成した。必要に応じて、10mMグリシン/HCl(pH1.5)を30秒(15μL)で注入し、10mM NaOHを20秒又は30秒(10又は15μL)で注入し、再生が完了した。データは、ビアコアT200評価ソフトウェアを使用して分析された。全ての曲線は、参照-減算された。全ての曲線についてベースラインがゼロに調整され、サンプルの注入終了の5秒前に結合RU(5秒枠(window)の平均)としてデータが提示された。
【0075】
KD(平衡解離定数)の測定では、分析対象物の曲線を、バッファーブランクから減算し、単純な1:1の相互作用を仮定してモデル化し、速度論データを生成した。
【0076】
BALB/Cマウスの免疫原性試験
12~15週齢の雌のBALB/Cマウスが、動物小屋から出され、2~3順化された。マウスは食物と水を自由に摂取でき、12時間の明/暗サイクルの下で飼育された。0日目(治療前)に動物から採血し、総コレステロール速成のために血清が採取された。動物は、無作為化され、総コレステロールと体重に基づいて種々の治療にグループ分けされた。0日目の次の日(処理前)に、皮下又は筋肉内経路により、表1に記載の0.3mlのワクチン製剤で採血動物が免疫化された。次の追加免疫注入は、最初の注入の2週間後と4週間後に行われ、その後、2週目~7週目まで、その後4週目~32週目まで、動物は、免疫原性の測定のために採血された。採血の詳細なスケジュールは、最初のワクチン投与後の5、7、20、24、28、32、45及び57週目から0日目(前処理)であった。血清は、分離され、血清総コレステロールが測定され、免疫原性又は抗体確認は、PCSK9抗体価のELISA、表面プラズモン(SPR)アッセイ及びLDLR-PCSK9相互作用アッセイを使用したヒトPSCK9との血清抗体の結合について行われた。
【0077】
【0078】
hApoB100/hCETPダブルトランスジェニックマウス(dTg)の免疫原性研究
8週齢超の雄又は雌のhApoB100/hCEPT dTgマウスが、動物小屋から出され、2~3回順化させた。マウスは、食物と水を自由に摂取でき、12時間の明/暗サイクル下で飼育された。0日目(前処置)に動物から採血し、LDLコレステロール(LDL-C)、総コレステロール、HDL-C及びトリグリセリドの測定のために血清が採取された。動物は、LDL-Cと体重に基づいてランダム化され、種々の治療にグループ分けされた。採血の翌日に、動物は、皮下又は筋肉内経路により0.3mlのワクチン製剤で免疫化された。次の追加免疫注入は、最初の注入の2週間後及び4週間後に行われ、動物は、3回目の注入の2週間後に免疫測定のために採血された。血清は分離され、血清LDL-C、総コレステロール、HDL-C及びトリグリセリドのレベルが測定され、PCSK9抗体価のELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ及びLDLR-PCSK9相互査証阻害アッセイを用いたヒトPCSK9との血清抗体の結合により免疫原性又は抗体の確認を行った。
【0079】
血清LDL-C、HDL-C、総コレステロール又はトリグリセリドのレベルは、Cobas c311自動分析装置(Roche、ドイツ)で、市販のキット(Roche Diagnosis、ドイツ)を使用して決定された。
【0080】
抗PCSK9 ELISAによる体液性応答の評価
特定の時間間隔(各追加免疫による免疫後15日)、マウスの全てのグループから血清サンプルが採取された。96ウェルELISAプレート(♯442402)が、PCSK9タンパク質(50ng/ウェル)で予めコーティングされ、プレートを2~8℃で一晩インキュベートした。翌日、ウェルは、洗浄され、未結合タンパク質が除去され、2%スキムミルク-PBSTで2時間ブロックし、PBSTで洗浄された。PBSTで作製した0.2%スキムミルクで血清サンプルは、1:20に希釈された。適切な量のサンプル及び標準液が、各ウェルに加えられ、37℃で1時間インキュベートされた。抗マウスIgG二次HRP標識抗体が各ウェルに加えられ、37℃で1時間インキュベートした後、洗浄された。OPD基質が、各ウェルに加えられ、暗所、室温で20分間インキュベートされた。プレートは、Spectramaxマイクロプレートリーダーで492nmで読み取られた。テストした全てのDTコンジュゲートPCSK9ペプチドの中で、最も高い応答を示したペプチドを標準として扱い、そのプラセボを用いて補正ODを計算した。PBSを注入したマウスの血清をネガティブコントロールとして使用した。ネガティブコントロール値を使用して、カットオフ値が計算され、カットオフ値を超える修正ODが標準として扱われた。全ての試験サンプルは、標準曲線から外挿されたPCSK9に対する絶対抗体価を示し、値はlog 10で表される。
【0081】
LDLR-PCSK9相互作用阻害アッセイ:
ワクチン処理動物の血清中の抗体(Ab)によるLDLR-PCSK9相互作用の阻害は、BPS Bioscience in-vitro PCSK9[Biotinylated]-LDLR Bindig Assay Kit(BPS Bioscience、サンディエゴ、CA、USA)をわずかに改変して分析された。第1に、LDLR外部ドメインは、96ウェルプレートにコーティングされ、プレートは、一晩インキュベートされた。次に、PCSK9-ビオチンが、1×PCSK9アッセイバッファーで希釈され、2.5ng/μl(50ng/20μl)の濃度にし、このマスターミックス、試験阻害剤(動物実験の血清サンプル)、阻害剤バッファーが、LDL-Rコーティングプレートに加えられ、室温で2時間インキュベートされた。最後に、プレートが、ストレプトアビジン-HRPで処理された後、HRP基質の添加により化学発光を産生し、次に製造元の指示に従って化学発光リーダーを使用して測定された。相対的阻害は、ワクチン処理動物からの血清サンプルにおけるPCSK9-LDLR結合の強度と100%とみなされるプラセボ処理における強度との間の阻害百分率の差として示された。
【0082】
結果:
I)表2 ビアコア(ビアコアT200、GE Healthcare)を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)で分析された組換えヒトPCSK9の新規ペプチドの親和力
【表3】
【0083】
II)処理動物の血清サンプル中のPCSK9に対する平均抗体価は、以下の表3に示すELISAアッセイによって測定された。
【表4】
【0084】
全てのペプチド製剤は、ヒトPCSK9に対して非常に高いレベルの抗体力価を示し、配列番号1と比較して配列番号7、8、12のペプチドの力価は高かった。ワクチン投与後57週目まで非常に高い抗体応答が維持され、いくつかのペプチド製剤で1年を超える免疫原性応答の可能性が示された。
【0085】
III)機能アッセイの測定としてin-vitro PCSK9[Biotinylated]-LDLR Bindig Assay Kitを使用して、ワクチン処理動物の血清中の抗体(Ab)によるLDLR-PCSK9相互作用の阻害がアッセイされた。抗体(Ab)によるLDLR-PCSK9相互作用の阻害率が、表4に示すように、5週で1回測定された。
【表5】
【0086】
ほぼ全てのペプチド製剤は、5週目に40~70%のLDLR-PCSK9相互作用の阻害を示した。配列番号7、8、12によって示された相互作用阻害は、配列番号1によって示される相互作用阻害よりも有意に高かった。
【0087】
IV)処理動物の血清サンプル中の抗体検出は、以下の表5に示すSPRアッセイを使用したヒトPCSK9に対する親和力測定によっても確認された。
【表6】
【0088】
ペプチド製剤で処理した動物由来のサンプルの血清は、プラセボと比較して応答ユニットの増加を示した。5週目及び57週目の配列番号12は、著しく高い抗体応答を示し、配列番号8は、配列番号1と比較して5週目に著しく高い抗体応答を示した。ワクチン投与後57週目まで非常に高い抗体応答が維持された; これは、ペプチド製剤に関し、1年を超える免疫原性応答の可能性を明確に示す。
【0089】
本発明のペプチドは、免疫当たり0.1ng~10mg、好ましくは0.5~500μgの量で哺乳動物又は個体に投与される。好ましい実施形態において、これらの量は、ワクチンに存在する全てのペプチド(ワクチンに複数のペプチドが使用される場合)を指す。
【0090】
単一の剤形を産生するために担体材料と組み合わせることができるペプチドの量は、治療される宿主及び解く知恵の投与様式に応じて変化するだろう。
【0091】
ワクチンの用量は、哺乳動物又は個体の病状、年齢、性別及び体重、並びに個体における所望の応答を誘発する抗体の能力等の要因に応じて異なり得る。投与計画は、最適な治療応答を提供するために調整され得る。例えば、治療状況の緊急性によって示されるように、いくつかの分割された用量を毎日投与するか、又は用量を比較的に減らすことができる。ワクチンの用量は、状況に応じて最適な予防的用量応答を提供するために変更され得る。例えば、本発明のペプチド及びワクチンは、常にPCSK9を対象とする抗体のレベルに応じて、数日、1若しくは2週間、又は数か月、又は数年の間隔で個体に投与され得る。
【0092】
本発明のペプチドは、適切な免疫原性担体とコンジュゲートした場合、ワクチンとして作用し得る。これらのワクチンは、投与時にPCSK9に結合する抗体を形成することができる。これらのワクチンは、高脂血症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症の予防/治療に適する。
【配列表】