(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】焼き菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 8/02 20060101AFI20220401BHJP
A21D 2/02 20060101ALI20220401BHJP
A21D 13/33 20170101ALN20220401BHJP
【FI】
A21D8/02
A21D2/02
A21D13/33
(21)【出願番号】P 2020093713
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2020-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000226895
【氏名又は名称】日世株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】廣田 智統
(72)【発明者】
【氏名】小池 龍太
【審査官】茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-218550(JP,A)
【文献】特開平02-092229(JP,A)
【文献】特開昭63-056249(JP,A)
【文献】特開2006-94858(JP,A)
【文献】特開昭56-55138(JP,A)
【文献】調理科学,1993年,Vol. 26, No. 2,pp. 191-195
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00-17/00
A23G 1/00- 9/52
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼き菓子の製造方法であって、
前記焼き菓子の原料のうち、油脂以外の原料のうち
炭酸マグネシウムを前記油脂に分散させる分散工程と、
炭酸マグネシウムが分散している前記油脂と、前記焼き菓子の他の原料の少なくとも一部とを混合し、混合生地を得る混合工程と、
前記混合生地を焼成して、前記焼き菓子を得る焼成工程と、
を含
み、
前記分散工程において、前記油脂に対する炭酸マグネシウムの量が50重量%以下である、焼き菓子の製造方法。
【請求項2】
前記焼成工程において、成形用金型に供給された前記混合生地を焼成することで得られる前記焼き菓子が成形焼き菓子である、請求項
1に記載の焼き菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アイスクリーム及びソフトクリーム等の冷菓子を盛り付けるための成形焼き菓子の製造方法が従来知られている。例えば、特許文献1には、一対の雄型と雌型からなる成形用の金型を用い、雄型と雌型を介して原料に高周波の交流電流を印加して誘電加熱し、所定の水分値以下になるまで焼成する工程を備える、成形焼き菓子の製造方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、一対の雄型と雌型からなる成形用の金型を用い、ヒータにより金型を加熱しつつ、雄型と雌型を介して負荷として原料に高周波の交流電流を印加して誘電加熱し焼成する工程を備える、成形焼き菓子の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-240303号公報
【文献】特開2014-83035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焼き菓子の原料には、焼成前の生地中で分散し難い原料が含まれる場合がある。そこで、本発明の一態様は、焼き菓子の原料の一部を、均一に焼き菓子中に分散させることができる焼き菓子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る焼き菓子の製造方法は、前記焼き菓子の原料のうち、油脂以外の原料のうち少なくとも一部の原料を前記油脂に分散させる分散工程と、前記少なくとも一部の原料が分散している前記油脂と、前記焼き菓子の他の原料の少なくとも一部とを混合し、混合生地を得る混合工程と、前記混合生地を焼成して、前記焼き菓子を得る焼成工程と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、焼き菓子の原料の一部を、均一に焼き菓子中に分散させることができる焼き菓子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一態様に係る焼き菓子の製造方法は、前記焼き菓子の原料のうち、油脂以外の原料のうち少なくとも一部の原料を前記油脂に分散させる分散工程と、前記少なくとも一部の原料が分散している前記油脂と、前記焼き菓子の他の原料の少なくとも一部とを混合し、混合生地を得る混合工程と、前記混合生地を焼成して、前記焼き菓子を得る焼成工程と、を含む。
【0009】
以下に、本発明に係る焼き菓子の製造方法の各工程について、より詳細に説明する。
【0010】
<分散工程>
分散工程では、焼き菓子の原料のうち、油脂以外の原料のうち少なくとも一部の原料(以下、「分散原料」という)を油脂に分散させる。分散工程では、分散原料が油脂に分散した分散物(以下、「油脂分散物」という)を得る。
【0011】
分散工程では、分散原料を油脂以外の他の原料と混合する前に、予め油脂に分散させる。分散原料を油脂に分散させて油脂分散物としてから、続く混合工程において当該油脂分散物と他の原料とを混合することにより、分散原料が混合生地中に沈殿しにくくなるので、分散原料を混合生地に均一に分散させることができる。また、分散原料が、その機能が発揮されることを抑制させたい性質を有する態様では、分散工程を含むことによって、当該機能の発揮を抑制することができる。分散工程では、分散原料の表面が油脂でコーティングされることにもなるからである。
【0012】
〔分散方法〕
分散工程において、分散原料を油脂に分散させる方法は、特に限定されず、製造する焼き菓子の種類、用途等に適するように、分散原料を油脂中に十分に分散させることができればよい。油脂の種類、分散原料の種類、油脂と分散原料との重量比等に応じて、当技術分野で従来公知の方法を適宜採用すればよい。例えば、ハンドホイッパー等の従来公知の撹拌機を用いて、分散原料を油脂に分散させればよい。撹拌機を用いる分散方法において、油脂と分散原料とを同時に撹拌機に導入してもよいし、それぞれを順々に撹拌機に導入してもよい。また、撹拌機を用いる分散方法において、油脂と分散原料との全量を一度に機器に導入してもよいし、少量を連続的に機器に導入してもよい。
【0013】
分散工程において用いる油脂に対する分散原料の量は、油脂に分散原料を均一に分散し易く、焼き菓子中に分散させることができる観点、及び油脂分散物の物性に与える影響を小さくする観点から、50重量%以下であることが好ましい。また、油脂に対する分散原料の量の下限値は、特に制限されず、当該分散原料が分散さえすればよいことから、少ないほど好ましい。例えば、油脂に対する分散原料の量は0.1重量%以上である。
【0014】
分散工程を実施する温度は、油脂が液体状となる温度であることが好ましい。例えば、分散工程は、常温(例えば20℃)で実施すればよい。
【0015】
〔分散原料〕
分散原料は、原料のうち油脂以外の原料であればよい。分散工程において予め分散原料を油脂に分散させることにより、分散原料を含む全ての原料を一度に混合する方法に比べて、後述する混合工程において得られる混合生地中に、分散原料を均一に分散することができる。そのため、焼成工程において得られる焼き菓子中に、分散原料を均一に分散させることができる。分散原料としては、例えば、無機塩が挙げられる。また、本発明の一態様に係る製造方法は、特に、他の原料と混合したときに分散しにくい分散原料を含む焼き菓子の製造に効果的である。当該分散しにくい分散原料は、他の原料と混合したときに分散しにくい無機塩であってもよく、当該分散しにくい無機塩は、例えば、マグネシウム等のミネラルを含む成分が挙げられる。さらに、当該成分としては、例えば、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム化合物が挙げられる。中でも、味及びpHへの影響が小さい観点から、炭酸マグネシウムであることが好ましい。マグネシウムは、生体に不足しがちな栄養素の一つである。そのため、喫食者は、マグネシウムを含む焼き菓子を喫食することにより、手軽にマグネシウムを摂取することができる。また、マグネシウムは、カルシウムと同時に摂取することで、カルシウムの吸収を促進する効果を有する。カルシウムは、例えばアイスクリーム等の乳製品に多く含まれている。そのため、焼き菓子と、焼き菓子と好適な相性を有する乳製品と同時に摂取することにより、当該乳製品に含まれるカルシウムの吸収を促進することができる。
【0016】
また、本発明の一態様においては、機能が発揮されることを抑制させたい性質を有する分散原料を好適に利用できる。前述の通り、油脂でコーティングされることによって、当該性質の機能が発揮されることを抑制できるからである。このような原料としては、例えば、混合生地を膨張させる性質を有する原料が挙げられる。混合生地を膨張させる原料を、他の原料と混合する前に予め油脂に分散させて、分散原料を油脂でコーティングすることで、分散原料が有する膨張効果を低減することができる。そのため、分散原料を予め油脂に分散させる分散工程を含む本発明の一態様に係る焼き菓子の製造方法は、分散原料を予め油脂に分散させない方法に比べて、焼成工程において得られる焼き菓子の重量及び強度を高めることができる。混合生地を膨張させる性質を有する原料として、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。また、焼き菓子の製造方法において、抑制させたい性質を有する原料として、混合生地のpHを変化させる性質を有する原料が挙げられる。混合生地のpHを変化させる性質を有する原料として、例えば、炭酸マグネシウムが挙げられる。例えば、本発明の一態様に係る分散工程を経ない場合、分散原料の種類によっては、混合生地のpHが変化し、酸性又はアルカリ性となり、焼成時の成形性及び安定性が変化する場合がある。しかし、本発明の一態様に係る分散工程に基づいて、分散原料を油脂に分散させてから水に混合すると、混合生地のpHの変化を抑制することができる。したがって、分散原料が、混合生地のpHを変化させる性質を有していても、pHの変化を抑制することができる。
【0017】
分散原料の形状は特に制限されず、例えば、分散原料を油脂に均一に分散させるという観点から、分散工程を実施する温度において粉末状、スラリー状、液体状であることが好ましい。分散原料は、原料のうちの1つを用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
〔油脂〕
油脂は、分散原料を油脂に分散させる観点から、分散工程を実施する温度において液体状の油脂であることが好ましい。油脂は、食用油脂であればよく、植物油脂であっても、動物油脂であっても、植物油脂及び動物油脂の少なくとも一方を加工した加工油脂であってもよい。植物油脂としては、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油、サラダ油、ゴマ油、米油、紅花油、パーム油、パーム核油、錦実油、ひまわり油、エゴマ油、亜麻仁油、オリーブ油、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、グレープシードオイル、マスタードオイル等が挙げられる。動物油脂としては、例えば、魚油、ラード、牛脂等が挙げられる。加工油脂は、植物油脂及び動物油脂の少なくとも一方を、例えば、水素添加、エステル交換、乳化、及び分別等の加工した油脂である。分散工程で用いる油脂は、1種類の油脂を用いてもよいし、2種類以上の油脂を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
分散工程で用いる油脂は、油脂以外の成分を含む混合油脂であってもよい。混合油脂に含まれる油脂以外の成分としては、例えば、乳化剤、酸化防止剤等が挙げられる。乳化剤としては、例えば、大豆レシチン、脂肪酸エステル等が挙げられる。また、混合油脂中の油脂以外の成分の含有量は、分散工程において分散原料を油脂に分散させることができる範囲であれば特に限定されない。
【0020】
本発明の一態様に係る焼き菓子の製造方法では、分散工程において、分散工程を含む全ての工程で用いる油脂の全量を用いてもよいし、当該油脂の一部を用いてもよい。例えば、分散工程では、分散原料を分散し得る量の油脂を用いればよい。当該量が原料として用いる油脂の全量でない場合は、残量を後の工程で別途混合してもよい。
【0021】
<混合工程>
混合工程では、少なくとも一部の原料(分散原料)が分散している油脂(油脂分散物)と焼き菓子の他の原料(以下、「混合原料」という)の少なくとも一部とを混合し混合生地を得る。混合工程では、油脂分散物と混合原料の少なくとも一部とを混合し、分散原料が均一に分散した混合生地を得る。
【0022】
〔混合方法〕
混合工程において、油脂分散物と混合原料とを混合する方法としては、当技術分野で従来公知の方法を適宜採用すればよい。例えば、撹拌機を用いて、油脂分散物と、混合原料とを混合すればよい。混合工程では、全ての混合原料を予め混合してから油脂分散物と混合してもよいし、全ての混合原料と油脂分散物とを一度に混合してもよく、混合原料を複数回に分けて油脂分散物と混合してもよい。また、分散工程を行なった容器であって油脂分散物が入っている容器に対して、混合原料を添加してもよく、混合工程を行なうための容器であって混合原料が予め入っている容器に油脂分散物を加えてもよい。
【0023】
焼き菓子の原料の全量に対する油脂分散物の量は、特に限定されるものではないが、焼成工程における油脂の働きの観点から、0.5重量%以上、20.0重量%以下であることが好ましい。
【0024】
〔混合原料〕
混合原料は、油脂分散物以外の焼き菓子の原料である。混合原料は、食品として許容される原料であれば、特に限定されない。混合原料は、小麦粉、澱粉、砂糖、風味料、着色料、及び水からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0025】
小麦粉としては、強力粉、中力粉、薄力粉が挙げられる。焼き菓子の原料の全量に対する小麦粉の量は、特に限定されるものではないが、10重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。
【0026】
澱粉としては、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、トウモロコシ澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉等が挙げられる。焼き菓子の原料の全量に対する澱粉の量は、1重量%以上、30重量%以下であることが多いが、特に限定されるものではない。
【0027】
砂糖としては、グラニュー糖、上白糖、三温糖、水飴、糖アルコール(ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール)等が挙げられる。焼き菓子の原料の全量に対する砂糖の量は、特に限定されるものではないが、1重量%以上、40重量%以下であることが好ましい。
【0028】
風味料としては、例えば、バニラエッセンス、バターフレーバー、酵母エキス、卵殻粉等が挙げられる。着色料としては、例えば、カラメル、コチニール、アナトー等が挙げられる。
【0029】
焼き菓子の原料の全量に対する水の量は、20重量%以上、70重量%以下であることが好ましい。
【0030】
混合原料は、本発明の効果が得られる範囲で、上述した原料の他に、人口甘味料、乳製品、膨張剤、卵類、食塩、乳化剤、調味料、香辛料、着香料、着色料、ココア、チョコレート、ナッツ類、ヨーグルト、チーズ、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、きなこ、豆類、野菜類、果実、野菜汁、果汁、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、保存料、抗酸化剤、栄養成分等をさらに含んでもよい。
【0031】
<焼成工程>
焼成工程では、混合生地を焼成して、焼き菓子を得る。
【0032】
焼き菓子は、成形焼き菓子であることが好ましい。成形焼き菓子としては、割り型タイプのコーン、巻き型タイプのコーン、モナカ、ワッフルボウル、ウエハース等が挙げられる。割り型タイプのコーンとしては、コーンカップが挙げられる。巻き型タイプのコーンとしては、ワッフルコーン等が挙げられる。
【0033】
焼成工程において、混合生地を焼成する方法としては、当技術分野で従来公知の方法を適宜採用すればよい。例えば、成形用金型に供給された混合生地を焼成することで成形焼き菓子を得ればよい。この実施形態において、得られる焼き菓子は、成形用金型に満注された形状を有する成形焼き菓子である。ここで、成形用金型は、開口部を有する開放型の成形用金型であってもよいし、嵌合可能な一対の雄型と雌型からなる嵌合型の成形用金型であってもよい。
【0034】
焼成温度は、混合生地を十分に水蒸気発泡させて、良好な食感の焼き菓子を得る観点から、140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。また、焼き菓子の表面がキャラメル化反応により褐色に変化することで、良好な焼成色及び風味を有する焼き菓子を得る観点から、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましい。
【0035】
焼成時間は、全体に完全に火が通る時間であればよく、焼成生地の大きさ、焼成温度、及び混合生地を焼成する方法に応じて、適宜調整することができる。例えば、焼成時間は、80秒以上、120秒以下であることが好ましい。
【0036】
焼成工程において、混合生地が含有する水分値が2.0重量%以下となるまで、混合生地を焼成することが好ましい。このような実施形態である場合、得られる焼き菓子は好適な食感及び保存性を発現することができる。
【0037】
なお、上述した、本発明の一態様における焼き菓子の製造方法により得られた焼き菓子も、本発明の一態様である。
【0038】
以上のように本発明に係る焼き菓子の製造方法の一態様は、前記焼き菓子の原料のうち、油脂以外の原料のうち少なくとも一部の原料を前記油脂に分散させる分散工程と、前記少なくとも一部の原料が分散している前記油脂と、前記焼き菓子の他の原料の少なくとも一部とを混合し、混合生地を得る混合工程と、前記混合生地を焼成して、前記焼き菓子を得る焼成工程と、を含む。
【0039】
また、本発明に係る焼き菓子の製造方法の一態様では、前記分散工程において、前記少なくとも一部の原料が無機塩であってもよい。
【0040】
また、本発明に係る焼き菓子の製造方法の一態様では、前記無機塩が炭酸マグネシウムであってもよい。
【0041】
また、本発明に係る焼き菓子の製造方法の一態様では、前記焼成工程において、成形用金型に供給された前記混合生地を焼成することで得られる前記焼き菓子が成形焼き菓子であってもよい。
【0042】
また、本発明に係る焼き菓子の製造方法の一態様では、前記分散工程において、前記油脂に対する前記少なくとも一部の原料の量が50重量%以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0044】
各実施例、比較例、及び参考例のコーンカップを作製し、各実施例及び比較例のコーンカップに対して、成形性の安定性、重量、強度等の評価を行った。
<焼き菓子の作製>
各実施例、比較例、及び参考例のコーンカップを以下のように作製した。
【0045】
〔実施例1〕
表1に示す配合率で、混合油脂(植物油脂に乳化剤が混合されたもの)及び炭酸マグネシウムを、ハンドホイッパーを使用し混合して、炭酸マグネシウムを混合油脂に分散させて、油脂分散物を得た。次いで、小麦粉(澱粉も混合した。以下、「小麦粉等」という。)、砂糖、その他の原料(風味原料等)、並びに水を混合した後、得られた油脂分散物を加えて撹拌機で6.5分間混合し、混合生地を得た。円錐状のコーンカップ1個分の容積が18mlである成形用金型に、コーンカップ1個分につき混合生地を6.5g注入した。混合生地を注入した成形用金型を180℃に加熱し、120秒間混合生地を焼成して、実施例1のコーンカップを得た。実施例1のコーンカップは10万個以上作製した。なお、焼成するまでの一連の工程(分散工程及び混合工程)は常温で行なった。
【0046】
すなわち、実施例1では、予め炭酸マグネシウムを混合油脂中に分散させた状態で、他の原料が混合された撹拌機に投入し、混合生地を作製した。
【0047】
〔実施例2〕
表1に示す配合率で、混合油脂及び炭酸マグネシウムを、ホイッパー(泡だて器)を使用し混合して、炭酸マグネシウムを混合油脂に分散させて、油脂分散物を得た。砂糖、実施例1と同じ種類のその他の原料(風味原料等)を、ホイッパー(泡だて器)で0.5分間混合して、粉体混合物を得た。粉体混合物に小麦粉等、得られた油脂分散物、及び水を混合した後、ホイッパー(泡だて器)で3分間混合し、混合生地を得た。円錐状のコーンカップ1個分の容積が18mlである成形用金型に、コーンカップ1個分につき混合生地を6.5g注入した。混合生地を注入した成形用金型を190℃に加熱し、90秒間混合生地を焼成して、実施例2のコーンカップを得た。なお、焼成するまでの一連の工程は常温で行なった。
【0048】
〔実施例3〕
表1に示す配合率にして混合生地を得た以外は実施例2と同様にして、実施例3のコーンカップを作製した。
【0049】
〔比較例1〕
表1に示す配合率で、常温において、砂糖、実施例1と同じ種類のその他の原料(風味原料等)、炭酸マグネシウム、水を撹拌機で混合した。次いで、小麦粉等を加え、混合した。最後に混合油脂を加えて、混合して、混合生地を得た。円錐状のコーンカップ1個分の容積が18mlである成形用金型に、コーンカップ1個分につき混合生地を6.5g注入した。混合生地を注入した成形用金型を180℃に加熱し、120秒間混合生地を焼成して、比較例1のコーンカップを得た。比較例1のコーンカップは10万個以上作製した。なお、焼成するまでの一連の工程(分散工程及び混合工程)は常温で行なった。
【0050】
〔比較例2〕
表1に示す配合率で、砂糖、炭酸マグネシウム、実施例1と同じ種類のその他の原料(風味原料等)を、ホイッパー(泡だて器)で0.5分間混合して、粉体混合物を得た。小麦粉等、混合油脂及び水を混合した後、得られた粉体混合物を加えてホイッパー(泡だて器)で3分間混合し、混合生地を得た。円錐状のコーンカップ1個分の容積が18mlである成形用金型に、コーンカップ1個分につき混合生地を6.5g注入した。混合生地を注入した成形用金型を190℃に加熱し、90秒間混合生地を焼成して、比較例2のコーンカップを得た。なお、焼成するまでの一連の工程は常温で行なった。
【0051】
〔比較例3〕
表1に示す配合率にして混合生地を得た以外は比較例2と同様にして、比較例3のコーンカップを作製した。
【0052】
〔参考例1〕
参考例1において、表1に示す配合量にした以外は比較例1と同様にして、炭酸マグネシウムが含まれていない基準コーンカップを作製した。参考例1のコーンカップは10万個以上作製した。
【0053】
【0054】
<実施例1及び比較例1の評価>
【0055】
〔成形性の安定性の評価〕
実施例1及び比較例1のそれぞれについて、製造した個数に対する、形状が成型用金型の形状と一致せず製品として使用できない個数の割合(以下、「ロス率」という。)を算出した。参考例1でも同様の割合(以下、本評価において「基準値」という。)を算出した。
【0056】
〔成形性の安定性の評価基準〕
〇:ロス率が基準値以下。
×:ロス率が基準値を上回る。
【0057】
〔重量の評価〕
実施例1及び比較例1において作製したコーンカップのうち、形状が成形用金型の形状と一致したコーンカップの重量を測定し、平均値を算出した。基準値は、当初想定されていた重量基準の中心値とした。また、基準値から+0.09gを上限、-0.20gを下限とした範囲を適性範囲とした。具体的には、基準値は2.40gとして、適正範囲は2.20g~2.49gとした。
【0058】
〔重量の評価基準〕
適正:重量が適正範囲内である。
重い:重量が適正範囲よりも大きい。
軽い:重量が適正範囲よりも小さい。
【0059】
〔強度の評価〕
実施例1及び比較例1における、形状が成形用金型の形状と一致したコーンカップの強度を、FUDOH RHEO METER RT-3010D-CWを用いて測定した。円錐状のコーンカップを台の上に置き、上からプランジャーを降下させて測定した。測定条件は、感度は10kg、測定プランジャー速度は5cm/分であった。プランジャーはSUS φ20mm円形を用いた。記録された最大強度を測定値とした。
【0060】
〔強度の評価基準〕
適正:コーンカップを資材として使用する際に表面剥離が発生しうる強度よりも高い強度(1.3kg・f以上)である。
低い:コーンカップを資材として使用する際に表面剥離が発生しうる強度(1.3kg・f未満)である。
【0061】
〔製品品質の安定性〕
実施例1及び比較例1における、成形性の安定性、重量、及び強度の結果から、製品品質の安定性を評価した。
【0062】
〔製品品質の安定性の評価基準〕
○:成形性の安定性、重量、強度を総合的に評価して製品の品質として適している。
×:成形性の安定性、重量、強度を総合評価して製品の品質として適していない。
【0063】
〔評価結果〕
実施例1及び比較例1の評価結果を表2に示す。
【0064】
【0065】
実施例1において、予め炭酸マグネシウムを混合油脂に分散させた油脂分散物と、混合原料とを混合することにより、炭酸マグネシウムを均一に焼き菓子中に分散させることができた。これにより、表2に示すように、成形性が安定した。また、このように製造することにより、炭酸マグネシウムが含まれていても、重量及び強度が適正であるコーンカップを得ることができた。
【0066】
<実施例2、3及び比較例2、3の評価>
【0067】
〔重量の評価〕
また、実施例2、3及び比較例2、3における、コーン開口部側に成形不良が生じているものを除いたコーンカップの重量を測定した。重量は、コーン開口部側に成形不良が生じているものを除いたコーンカップ30個の重量の平均値とした。加えて、混合生地の配合量が同じである実施例及び比較例について、コーンカップの重量の差を算出した。
【0068】
〔評価結果〕
実施例2、3及び比較例2、3の結果を表3に示す。
【0069】
【0070】
実施例2及び3において、予め炭酸マグネシウムを混合油脂に分散させた油脂分散物と、混合原料とを混合することにより、炭酸マグネシウムを均一に焼き菓子中に分散させることができた。また、予め炭酸マグネシウムを油脂に分散させた実施例2及び3の方が、比較例2及び3に比べてコーンカップの重量は大きくなった。この結果が示すように、油脂の配合量に対する炭酸マグネシウムの配合率を50重量%程度まで増やしても、炭酸マグネシウムの膨張剤としての働きを阻害することができた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、焼き菓子の製造業において有効に利用することができる。