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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】固体メラニン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 14/00 20060101AFI20220401BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
H01M14/00 P
C01B3/04 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020504462
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 IB2018051992
(87)【国際公開番号】W WO2018189606
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2019-12-06
(31)【優先権主張番号】62/483,630
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518352592
【氏名又は名称】アルトゥーロ・ソリス・エルレラ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥーロ・ソリス・エルレラ
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-505107(JP,A)
【文献】特表2008-543702(JP,A)
【文献】米国特許第04366216(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0049262(US,A1)
【文献】特表2016-519648(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125098(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 14/00
C01B 3/04
C25B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性材料に埋め込まれた少なくとも1種のメラニンで形成されたメラニン構造と、
第1及び第2の電極としてそれぞれ働く第1及び第2の金属帯と
を含み
再充電もエネルギー源への接続もする必要がなく、
不活性材料が、メラニンに対して化学的に不活性であり、カルシウム、アルミニウム、及びシリカの混合物を含む、
固体電池であって、
固体電池が光を吸収して光エネルギーを電気エネルギーに変換する、固体電池。
【請求項2】
複数の固体電池が互いに積層されて電池アセンブリを形成し、固体電池の数が、必要とされる電圧に依存する、請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
固体電池は電子回路で駆動させることができる、請求項1に記載の固体電池。
【請求項4】
不活性材料が多孔質材料である、請求項1に記載の固体電池。
【請求項5】
不活性材料がさらに、ケイ素プラスチック、及びガラスからなる群から選択される1種又は複数の材料を含む、請求項1に記載の固体電池。
【請求項6】
電極が、Ag、Al、Co、Au、及びこれらの合金からなる群から選択される1種又は複数の金属で作製される、請求項1に記載の固体電池。
【請求項7】
複数のメラニン構造であって、各メラニン構造が、不活性材料に埋め込まれた少なくとも1種のメラニンで形成されている複数のメラニン構造と、
各メラニン構造の間に位置決めされた金属板であって、各金属板が電極である金属板とを含み
再充電もエネルギー源への接続もする必要がなく、
不活性材料が、メラニンに対して化学的に不活性であり、カルシウム、アルミニウム、及びシリカの混合物を含む、
高電圧電池積層体であって、
高電圧電池積層体が光を吸収して光エネルギーを電気エネルギーに変換する、高電圧電池積層体。
【請求項8】
不活性材料が多孔質材料である、請求項7に記載の高電圧電池積層体。
【請求項9】
不活性材料がさらに、ケイ素プラスチック、及びガラスからなる群から選択される1種又は複数の材料を含む、請求項7に記載の高電圧電池積層体。
【請求項10】
各電極が、Ag、Al、Co、Au、及びこれらの合金からなる群から選択される1種又は複数の金属で作製される、請求項7に記載の高電圧電池積層体。
【請求項11】
各メラニン構造が不活性カバー内に包封される、請求項7に記載の高電圧電池積層体。
【請求項12】
各電極が磁石を含む、請求項7に記載の高電圧電池積層体。
【請求項13】
各磁石がネオジム磁石である、請求項12に記載の高電圧電池積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源による再負荷又は再充電を必要とする電池に関し、より詳細には、必要なエネルギーを周囲の光(可視及び不可視)から得て、この光エネルギーを、水分子の解離及び背面結合によって化学エネルギーに変換する、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
今日のエネルギー分野における主な課題は、モバイルアプリケーションにエネルギーを供給するための電池が、一次であろうと二次であろうと、環境に汚染を引き起こす可能性があることである。また、そのような従来の電池は、電源に接続することによって再充電しなければならない。
【0003】
1800年にAlessandro Voltaにより発明されたボルタのパイルは、最初の電池であり;即ち、電気を発生させる最初の実用的な方法であった。ボルタのパイルは、交互に配した亜鉛及び銅の金属ディスクであって、それらの金属ディスクの間にブラインに浸漬した厚紙の小片を挟んだ金属ディスクから構成され、定常電流を発生させる。
【0004】
知識が進歩するにつれ、より多様なタイプの電池が創出された。1836年、Daniel Cellは、2種の電解質:硫酸銅及び硫酸亜鉛を使用するダニエルセルを発明した。約1.1ボルトを生成するダニエルセル電池を使用して、電信機、電話、及びドアベル等の物体に電力を供給した。ダニエルセル電池は、100年以上にもわたって家庭に普及し続けた。
【0005】
1839年、William Robert Groveは、水素と酸素とを化合させることによって電流を生成する、最初の燃料セルを開発した。
【0006】
フランスの発明者、Gaston Planteは、再充電することができる最初の実用的な蓄酸電池(即ち、二次電池)を開発した。このタイプの電池は、今日では車で主に使用される。
【0007】
フランスの技術者、Georges Leclancheは、Leclancheセルと呼ばれる炭素-亜鉛湿式セル電池の、特許を取得した。当初のLeclancheセルは、多孔質ポットに組み立てられ、その正極は、少量の炭素と混合された破砕済み二酸化マンガンで形成されており、負極は、集電子として働くように、正極の充填材料中に挿入された亜鉛棒で形成された。次いでアノード又は亜鉛棒、及びポットを、塩化アンモニム溶液に浸漬した。塩化アンモニウム溶液は、電解質として働いた。次いでGeorges Leclancheは、液体電解質の代わりに塩化アンモニウムペースト溶液を使用することによって彼の設計を更に改善し、電池を封止する方法を発明し、それによって、現在では輸送可能となった改善型設計である、最初の乾セルを発明した。
【0008】
1881年、J.A. Thiebautは、負極と、多孔質ポットに入れられた亜鉛カップとの両方を備えた最初の電池の特許を取得した。
【0009】
また1881年には、Carl Gassnerが、最初の商業的に成功した乾セル電池(亜鉛-炭素セル)を発明した。
【0010】
1889年には、Waldmar Jungnerが、最初のニッケル-カドミウム再充電可能電池を発明した。
【0011】
1901年には、Thomas Alva Edisonがアルカリ蓄電池を発明した。Thomas Edisonのアルカリセルは、アノード材料として鉄を、カソード材料として酸化ニッケルを含んでいた。
【0012】
1949年に、Lew Urryは、小型アルカリ-マンガン電池を開発した。アルカリ電池は、その先行モデルである亜鉛-炭素セルの5から8倍の長さで持続する。
【0013】
1954年、Gerald Pearson、Calvin Fuller、及びDaryl Chapinは、最初の太陽電池を発明した。太陽電池は、太陽エネルギーを電気に変換する。発明者らは、シリコンのいくつかの細片を並べたもの(それぞれ、ほぼ剃刀の刃のサイズである)を創出し、それらを日光の下に置き、自由電子を捕獲して、電流に戻した。これはBellの太陽電池として公知になった。Bellの太陽電池の最初の公共実用試験は、1955年10月4日に電話会社のシステムで開始された。
【0014】
概して、電池(セルである)は、化学反応から電気を生成するデバイスである。厳密に言えば、電池は、直列又は並列に接続された2つ以上のセルからなるが、この用語は一般に、単一セルに関して使用される。セルは、負極、正極、セパレーター(イオン伝導体としても公知である)、及びイオンを伝導させる電解質からなる。電解質は、水性(即ち、水で構成される)又は非水性であってもよく、液体、ペースト、又は固体の形をとってもよい。セルが外部負荷に接続されたとき又は電力が供給されるデバイスに接続されたとき、負極は、負荷の内部を流れ、正極に受容される電子電流を供給する。外部負荷が除去されると、反応は停止する。
【0015】
一次電池は、その化学物質を1回だけ電気に変換することができ、その後、廃棄しなければならない。一方、二次電池の電極は、電気を元の電極に通すことによって再構成することができ、したがって二次電池を何回も再使用することができる。そのような二次電池は、貯蔵又は再充電可能電池として周知である。
【0016】
光起電力システムは、光エネルギーを電気に変換し、最も一般的には「ソーラーセル」として公知である。ソーラーセルは、様々な適用例で、例えば、揚水のために電気を供給し、通信設備に電力を供給し、家屋を照明し、いくつかの家電製品を動作させるのに利用される。従来のソーラーセルの効率は、6%~14%程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第8,455,145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そのような従来のソーラーセルに関するある問題は、結晶質ポリシリコンを必要とすることであり、その製造には比較的費用がかかる。また、結晶質ポリシリコンは、日光があるときのみ働き、したがって太陽光から電力供給されるデバイスは、夜間にエネルギーを供給するために、典型的には二次電池も持たなければならない。光起電力システムの半減期は3年程度である。
【0019】
燃料セルは、燃料からの化学エネルギーを、正に帯電した水素イオンと酸素又は別の酸化剤との化学反応を通して電気に変換するデバイスである。燃料セルは、化学反応を持続させるのに、燃料(即ち、水素)及び酸素又は空気の絶え間ない供給源を必要とする点が、電池とは異なる。対照的に、電池では、電池内に存在する化学物質が互いに反応して、起電力(emf)を発生させる。燃料セルは、燃料及び酸素/空気が供給される限り、連続的に電気を生成することができる。電気に加え、燃料セルは、水、熱、及び燃料供給源に応じて非常に少量の二酸化窒素と、その他の放出物を生成する。燃料セルのエネルギー効率は、一般に40%から60%の間である。
【0020】
しかし、燃料セルの1つの問題は、水素(即ち、燃料)の連続供給源が必要とされることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、再充電を必要とせず、エネルギー源に接続する必要のない、固体電池を提供することが望ましいと考えられる。
【0022】
前述の概要、並びに以下の本発明の詳細な説明は、添付図面と併せて読んだときに、より良く理解されよう。本発明を例示する目的で、図面には、現時点で好ましい具体例が示される。しかし本発明は、図示される厳密な配置構成及び手段に限定するものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態による、不活性材料のブロックに埋め込まれたメラニン材料で形成されたナノ材料の斜視図である。
図2図1に示される、ナノ材料で形成された固体メラニン電池の本体の斜視図である。
図3】本発明の実施形態による、固体メラニン電池の斜視図である。
図4】不活性フィルムに包まれた、図3に示される固体メラニン電池の斜視図である。
図5】固体メラニン電池の積層体の斜視図である。
図6】メラニン構造の積層体の斜視図である。
図7】本発明の実施形態による、図6に示されるメラニン構造積層体で形成された電池の斜視図である。
図8】本発明の実施形態による、メラニン構造の積層体で形成された電池の斜視図である。
図9】本発明の別の実施形態による、図6に示されるメラニン構造積層体で形成された電池の斜視図である。
図10】本発明の実施形態による、メラニン構造を使用して水素及び酸素ガスを生成するためのアセンブリを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で言及される全ての特許及び刊行物は、参照により組み込まれる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が関係する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。そうでない場合には、本明細書で使用されるある用語には、明細書で述べられるような意味がある。
【0025】
本明細書及び添付される特許請求の範囲で使用される、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、他に文脈が明示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0026】
本明細書で使用される「メラニン材料」という用語は、メラニン、メラニン前駆体、メラニン誘導体、メラニン類似体、及びメラニン変種であって、天然及び合成メラニン、ユーメラニン、フェオメラニン、ニューロメラニン、ポリヒドロキシインドール、アロメラニン、フミン酸、フラーレン、黒鉛、ポリインドールキノン、アセチレンブラック、ピロールブラック、インドールブラック、ベンゼンスブラック、チオフェンブラック、アニリンブラック、水和形態をとるポリキノン、セピオメラニン、ドーパブラック、ドーパミンブラック、アドレナリンブラック、カテコールブラック、4-アミンカテコールブラックであり、単純な直鎖脂肪族若しくは芳香族であるもの;又はそれらの前駆体であり、フェノール、アミノフェノール、若しくはジフェノール、インドールポリフェノール、キノン、セミキノン若しくはヒドロキノン、L-チロシン、L-ドーパミン、モルホリン、オルト-ベンゾキノン、ジモルホリン、ポルフィリンブラック、プテリンブラック、及びオモクロームブラック等を含めたものを指す。
【0027】
本明細書で使用される「不活性材料」という用語は、少なくとも1種のメラニン材料を埋め込むための材料に関して使用される場合、メラニンに対して適合性があるがメラニンと化学的には反応することがない、任意の材料を指す。好ましくは、不活性材料は、水に溶解しない材料である。不活性材料の例は、ケイ素、カルシウム、アルミニウム、及びポリエチレンである。
【0028】
一実施形態では、本発明は、光エネルギーを電気に直接変換する電気デバイスである、ソーラーセル又は光起電力セル(太陽電池としても公知である)に関する。本発明のソーラーセルは、それ自体の上に水素を生成するように働く。
【0029】
ソーラーセルは、メラニンの複数のナノ材料10から構成される。より詳細には、各ナノ材料10は、図1の不活性形態14の上に保持され又はその内部に埋め込まれるメラニン材料12を含む。
【0030】
エネルギーを吸収し、吸収されたエネルギーを利用して、水から水素及び酸素への電気分解を触媒するメラニンの固有の能力も、最近発見された。特に、水分子をメラニンによって分解することで、逆反応が生じ、その結果、水分子を再形成し、エネルギーを放出する可能性があることがわかった。したがってメラニンは、可視及び不可視光エネルギーを含む全ての波長の電磁エネルギーを吸収し、この吸収されたエネルギーを、水の解離及びその結果生じる再形成を用いて放散させ、それによって化学エネルギーを生成する。メラニン、又はメラニンの類似体、前駆体、誘導体、若しくは変種を使用してエネルギーを発生させるための光電気化学プロセスは、米国特許第8,455,145号に記載されている。
【0031】
メラニンは、事実上どこにでも在り、窒素、酸素、水素、及び炭素から構成される。何年にもわたり、メラニンは、2%の硫酸銅溶液の場合に等しい低防護係数を有する単純な日焼け止めと見なされる以外、それに起因する生物学的又は生理学的機能を有していなかった。メラニンは、ほぼどの波長のエネルギーも吸収することができ、それでもどのエネルギーも放出するようには見えないので、公知の最も色の濃い分子とも見なされてきた。これはメラニンに特有のことであり、熱力学の法則と矛盾するが、それはエネルギーを吸収することが可能なその他の化合物、特に色素が、吸収されたエネルギーの一部を放出するからである。したがってメラニンの電子特性は、かなり長い間、関心の的であった。しかしメラニンは、長い間、人々に公知の最も安定した化合物の1種であり、メラニンはいかなる化学反応も触媒することができないように見えた。
【0032】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、例えば、メラニン内の反応は、下記のスキームI:
【0033】
【化1】
【0034】
に従い生じると考えられる。
【0035】
光エネルギー(可視又は不可視)等の電磁エネルギーの吸収により、メラニンは、水から二原子水素(H)、二原子酸素(O)、及び電子(e)への解離を触媒する。水から水素及び酸素への分解はエネルギーを消費するが、反応は可逆的であり、逆のプロセスでは、水分子を再形成するための二原子水素による酸素原子の還元は、上記にて論じたようにエネルギーを放出する。
【0036】
このようにメラニンは、植物が光合成中に色素クロロフィルを使用して光エネルギーを化学エネルギーに変換するプロセスと同様に、光エネルギーを化学エネルギーに変換することができる。したがって、類推で、このプロセスを「ヒト光合成」と呼んできた。しかし、メラニンによって実施される水分解反応と、クロロフィルによって実施される水分解反応との間の重要な違いは、クロロフィルによる水分解反応を生細胞で且つ400nmから700nmの範囲の波長を有する可視光でのみ行うことができることである。対照的にメラニンは、H及びOが形成されるように、任意の形の電磁エネルギーを使用して、特に200nmから900nmの範囲の波長を有する光エネルギー(可視又は不可視)で、生細胞外で水分子を分解し再形成することができる。
【0037】
好ましくは、メラニン材料12は、各ナノ材料10の不活性形態14内に埋め込まれ、したがって不活性形態14の材料は、メラニン材料12とそれに近接する周囲との間の障壁として働いて、メラニン材料の物理的及び化学的一体性を保存するようになる。好ましくは不活性形態14は、多孔質材料で形成される。細孔は、好ましくは、単にその内部を水及び気体が通過可能になるように、そのサイズが決められる。
【0038】
一実施形態では、各ナノ材料10は、ただ1つのタイプ若しくは形のメラニン材料12、又は複数のタイプ若しくは形のメラニン材料12を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1種のメラニン材料は、メラニン、メラニン前駆体、メラニン誘導体、メラニン類似体、及びメラニン変種からなる群から選択される。好ましい実施形態では、少なくとも1種のメラニン材料は、メラニンであり、好ましくは天然メラニン又は合成メラニンである。本開示に鑑みて当技術分野で公知の任意の方法は、メラニン材料を得るのに使用することができる。例えば、メラニン材料は、化学的に合成することができ又は植物及び動物等の天然資源から単離することができる。メラニンは、L-チロシン等、メラニンのアミノ酸前駆体から合成することもできる。メラニン材料は、商業的供給源から得ることもできる。
【0040】
ナノ材料10の不活性形態14は、好ましくは安定であり、非反応性である。例えば、不活性形態14の材料は、ケイ素、シリカ、カルシウム、アルミニウム、プラスチック(例えば、ポリエチレン)、ガラス、又はこれらの任意の混合物であってもよい。好ましくは、不活性形態14は、カルシウム、アルミニウム、及びシリカの混合物で形成され、したがってナノ材料10は、カルシウム、アルミニウム、及びシリカと、そこに埋め込まれた少なくとも1種のメラニン材料12との混合物になる。
【0041】
一実施形態では、メラニン材料12は、好ましくは、ナノ材料10の全体積の1%から3体積%である。ナノ材料10中の不活性形態14の材料の量は、好ましくは、ナノ材料10の全体積の91%から99体積%であり、より好ましくは97%から99体積%である。
【0042】
少なくとも1種のメラニン材料12は、任意の公知の又はまだ開発されていない適切な手段によって、不活性形態14に埋め込まれてもよい。一実施形態では、メラニン材料12は、接着によって不活性形態14に埋め込まれる。別の実施形態では、メラニン材料12は、圧縮によって不活性形態14に埋め込まれる。
【0043】
各ナノ材料10を調製するのに使用されるメラニンの溶液は、好ましくは、3mg/mlのメラニン濃度を有する。しかし、より低いメラニン濃度又はより高いメラニン濃度(例えば、より少ない日光の領域で使用される)は、所望の量の光吸収を行うために必要に応じて使用され得ることが理解されよう。ナノ材料10は、任意の形状で作製され得ることも理解されよう。
【0044】
メラニン構造16は、図2に示されるように、複数の(好ましくは何千もの)ナノ材料10で形成される。メラニン構造16は、電池20の本体を画定する。本発明の実施形態によれば、メラニン構造16は、棒(円筒状)、板、球、又は立方体形状を含むがこれらに限定されない任意のサイズ又は形状をとることができる。
【0045】
二原子水素(H)生成速度は、様々な要因に依存することになり、例えばナノ材料10又はメラニン構造16のサイズ、形状、及び表面積、ナノ材料10中のメラニン材料の量、及び/又は電池20内に存在するナノ材料10又はメラニン構造16の数を変化させることによって、制御することができる。
【0046】
次に図3に示されるように、一実施形態では、メラニン構造16には、それぞれ第1及び第2の電極として働く少なくとも第1及び第2の金属帯18が設けられて、固体メラニン電池20を形成する。金属帯18は、電極を形成するための任意の適切な金属で作製されてもよい。好ましくは、金属帯18は、Ag、Al、Co、Au、又はこれらの合金の1種又は複数で作製される。金属帯18は、全て、同じ金属で又は異なる金属で作製されてもよい。例えば、金属帯18は、金属テープで形成されてもよい。好ましくは、金属帯18は、メラニン構造16を完全に取り囲み(即ち、両側で)、そこにしっかり接着される。しかし、帯18は、構造16を部分的にのみ取り囲んでもよいことが理解されよう。また、金属帯18は、好ましくは互いに位置合わせされる。メラニン電池20は、それぞれの電極18に取着され又は連結されたリード線又は金属ケーブル22も含む。一実施形態では、線22は、異なる色のものである。
【0047】
一実施形態では、ナノ材料10から金属帯18への電子の移行を容易にするために、電解質を含有する粘性溶液(図示せず)を、金属帯18とナノ材料メラニン構造16との界面に付着させてもよい。或いは、小さい黒鉛層の形をとる材料を、界面に付着させてもよい。電圧出力の増大を容易にすることができる任意の材料を、電極18と電池の本体16との界面に使用し、付着させてもよいことが理解されよう。
【0048】
電池20の出力は、例えば電池20のサイズ及び組成、電極18の性質、使用時間、温度、圧力等、多数の要因に依存する。
【0049】
一実施形態では、寸法が12cm×6cm×7cmである電池20は、300mvから1.4ボルトの間の直流出力、より好ましくは400mvから1.4ボルトの直流出力と、1.5から2.1ボルト程度、好ましくは約2ボルト、より好ましくは1.9ボルトの交流電圧とを発生させることがわかった。したがって本発明の電池20は、直流電流及び交流電流も発生させることが可能であるように、独自の電子挙動を有する。
【0050】
図4に示されるように、各電池20は、好ましくは不活性カバー24内に包封される。好ましくは、不活性カバー24は、プラスチック及び透明材料で形成される。例えば不活性カバー24は、高密度ポリエチレンで形成されてもよい。金属帯18に溶接された金属線22は、不活性カバー24から、より詳細にはその内部に通して、突出させたままである。
【0051】
したがって、望みに応じてより高い電圧出力を実現させるために、図5に示されるように複数の電池20を一緒に積層してもよい。
【0052】
別の実施形態では、図6図7に示されるように、任意選択で不活性カバー24内に包封された複数のメラニン構造16は、少なくとも1つの金属板又は基板26を各メラニン構造16の間に位置決めさせた状態で一緒に積層させ、それによって電池30を形成する。金属板26は電極として機能する。各金属板26は、同じ金属又は異なる金属(例えば、Ag、Al、Co、Au、又はこれらの合金の1種又は複数)で作製されてもよい。一実施形態では、図7に示されるように、薄い金属板26が、隣接するメラニン構造16の全表面積を覆う。電池30は、好ましくは、300mVから600mVの間の直流出力と、2から4ボルトの間の交流電圧とを発生させる。
【0053】
別の実施形態では、図8に示されるように、任意選択で不活性カバー24内に包封された複数のメラニン構造16は、薄い金属板26を間に入れた状態で、しかし薄い金属板26は隣接するメラニン構造16の全表面積を覆わない状態で、一緒に積層される。代わりに、複数の薄い金属板26は互いに間隔を空けて設けられ、各金属板26は、隣接するメラニン構造のそれぞれの表面積の一部のみを覆い、それによって電池40が形成される。この場合も、各金属板26は、同じ金属又は異なる金属(例えば、Ag、Al、Co、Auの1種又は複数)で作製されてもよく、電極として機能する。
【0054】
メラニン構造16及び金属板26の寸法は、所望の電圧出力が実現されるよう、必要に応じて設定されてもよいことが理解されよう。一実施例では、各メラニン構造16は、約3から10cm(好ましくは、10cm)の長さ、約2から5cm(好ましくは、5cm)の幅、及び約15mmの厚さを有する。一実施例では、各金属板26は、約3から10cmの長さ、約2から5cmの幅、約100μmの厚さを有する。例えば、メラニン構造16及び金属板26の長さ及び幅は、同じであってもよい。
【0055】
電極26がどのように接続されるかに応じて、電池40の電圧出力は変化してもよい。例えば、電極26の「1」及び「2」が接続される場合、電池40は300mVから600mVの間の直流出力及び2から4ボルトの間の交流電圧を発生させる。しかし「1」及び「3」とマークされた電極が接続される場合、電池40は、0.6Vから1.2Vの間の直流出力と、12から25ボルトの間の交流電圧とを発生させる。
【0056】
一実施形態では、図9に示されるように、金属板26には磁性材料が、より詳細には1つ又は複数の磁石27が設けられる。例えば、磁石27は、メラニン構造16の間に位置決めされた各金属板26の外面に位置決めされてもよい。好ましくは、磁石27はネオジムで作製されるが、十分な磁力の任意の材料を使用してもよいことが理解されよう。一実施形態では、各磁石27は、ほぼ円筒形状を有する。一実施形態では、各円筒形磁石27は、5mmの高さ及び5mmの直径を有する。
【0057】
そのような磁石27を含むことにより、電池20、30、40により生成される電圧が増大する。例えば交流電圧は、約3から40ボルト、より好ましくは20から25ボルト増大し得る。特に、金属板26が銅で形成され、ネオジム磁石27が使用される場合、交流電圧は約3ボルト増大する。金属板26がアルミニウムで形成され、ネオジム磁石27が使用される場合、交流電圧は約40ボルト増大する。
【0058】
固体メラニンをベースにした電池20の利点は、漏出のリスクなしに(メラニンは毒性ではないが)、電池20を非常に管理し易いことである。メラニンが任意の種類の力を吸収し、それを放散させて水分子を分離するとすれば、本発明の電池20は如何様にも再充電する必要がなく、それらを電力供給源に接続する必要がない。また、メラニン構造16は、好ましくは、温度のいかなる上昇も経験しない。
【0059】
別の実施形態では、図10に示されるように、各メラニン構造16は高濃度のメラニンを有し、好ましくは3から30質量%のメラニンを有する。そのようなメラニン構造16を水に浸漬した場合、水素及び酸素の強力な流れ52がメラニン構造16から得られるが、それはメラニンが、上述のように水の解離を触媒するからである。特に、高濃度メラニン構造16は、水で満たされた容器50に配置される。容器は、不活性ガラス又は不活性プラスチック等、任意の公知の不活性材料で作製されてもよい。メラニン構造16により触媒される水の解離によって、水素及び酸素の気泡52が形成される。例えば、この方法及びシステムによって、50mLの容器には、30分で水素及び酸素の気泡が満たされる。
【0060】
好ましくは、容器50は、容器50を周囲環境から封鎖する蓋54を備える。好ましくは、容器50は、水位表面と蓋54との間にヘッドスペース56が存在するようなレベルの水で満たされる。ヘッドスペース56は、水素及び酸素の気泡の容器50内の貯蔵スペースとして働く。一実施形態では、蓋54は、パイプ又はその他のコンジット58を備える。コンジット58の一端は容器50の内部に連通し、一方、コンジット58の他端は貯蔵デバイス、燃料セル、又は水素及び酸素ガスの供給を利用し得る任意のその他の構成要素60に連通する。
【0061】
上述の実施形態及び実施例に、その広範な本発明の概念から逸脱することなく変更を行うことができることが、当業者に理解されよう。したがって本発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、添付される特許請求の範囲により定義された本発明の精神及び範囲内に修正例を包含するものであることが、理解される。
【符号の説明】
【0062】
10 ナノ材料
12 メラニン材料
14 不活性形態
16 メラニン構造
18 金属帯
20 電池
24 不活性カバー
26 金属板
27 磁石
30 電池
40 電池
54 蓋
56 ヘッドスペース
58 コンジット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10