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特許7050915ジアセチル産生量が増加したラクトバチルス・ラムノーサス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】ジアセチル産生量が増加したラクトバチルス・ラムノーサス
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220401BHJP
   C12P 7/26 20060101ALI20220401BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12P7/26
A23C9/123
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020522937
(86)(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 EP2018079150
(87)【国際公開番号】W WO2019081577
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】17198907.2
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 32666
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 32092
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】スティナ ディシン アウンスビエルウ ニエルセン
(72)【発明者】
【氏名】ヘレ スコウ グルエーヤ
(72)【発明者】
【氏名】セシリエ リケ マルバイ ニエルセン
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509871(JP,A)
【文献】特表2015-515273(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/AGRICOLA/BIOTECHNO/CABA/FSTA/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号:DSM 32666で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15871又はその突然変異株を含む組成物であって、前記突然変異株は、前記寄託された株を親株として使用することにより取得され、前記突然変異株は、前記親株と比較して同じジアセチル産生量を有する、組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の更なる乳酸菌を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記更なる乳酸菌は、ラクトバチルス・ラムノーサス株、ラクトバチルス・ファーメンタム株、ラクトバチルス・パラカゼイ株、ラクトバチルス・プランタルム株、プロピオニバクテリア・フリューデンレイッヒイ(Propionibacteria freudenreichii)株、ペディオコッカス・アシディラクティシ株、エンテロコッカス・フェシウム株及びラクトコッカス・ラクティス株からなる群から選択される少なくとも1種の抗真菌性乳酸菌である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の抗真菌性乳酸菌は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号:32092で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15860である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属及びラクトバチルス属からなる群から選択される1種又は複数種の株を含む発酵乳製品を製造するためのスターター培養物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、前記菌を、凍結、乾燥及び凍結乾燥された濃縮物からなる群から選択される形態で含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
乳製品を調製するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項8】
前記乳製品は発酵乳製品である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記発酵乳製品はヨーグルトである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記乳製品はチーズである、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
乳製品を製造するための方法であって:
a)請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を乳基材に植菌すること;および
b)前記乳基材を発酵させるこ
含む、方法。
【請求項12】
工程b)は、前記乳基材を35℃を超える温度で発酵させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程b)は、前記乳基材を15℃~40℃の温度で発酵させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
工程c)更なる微生物及び/又は添加剤を前記乳基材に添加することをさらに含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程d)前記乳基材を後処理することをさらに含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程e)前記乳製品を包装することをさらに含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号:DSM 32666で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株又はその突然変異株であって、前記突然変異株は、前記寄託された株を親株として使用することにより取得され、前記突然変異株は、前記親株とジアセチルの産生に関して同じ特性を有する、株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアセチル産生量を高めることにより乳製品の粘弾性に悪影響を与えることなく乳製品のクリーミーな風味を増強することができるラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)株を含む、乳製品の調製に適した組成物に関する。本発明の組成物は、乳製品を製造するためのスターター培養物と共に又はその一部として使用することができる。更に本発明は、ジアセチル含量の高い、低脂肪ヨーグルト、チーズ、サワークリームなどの乳製品を調製する方法にも関する。この種の乳製品の調製に有用なラクトバチルス・ラムノーサス株も本発明の一部を構成する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2012/136830号パンフレットには、乳製品を製造するための抗真菌性ラクトバチルス・ラムノーサス株が開示されている。
【0003】
乳工業製品においては、低脂肪又は無脂肪製品に対する消費者の需要が増大している。しかし、そのような低脂肪乳製品の多くはクリーミーな風味に欠ける。
【0004】
ジアセチルは、高価値製品であり、乳製品工業においてバター風味を付与する化合物として使用されており、マーガリンや油を基本原料とする製品などの製品に添加されている。
【0005】
ヘテロ乳酸菌は、主要な産物である乳酸と共に、副産物としてジアセチル/アセトインを産生する。この細胞は、ピルビン酸及びチアミンピロリン酸エステルから、ピルビン酸オキシダーゼを介して、活性化されたアセトアルデヒド(active acetaldehyde)を産生する。この活性化されたアセトアルデヒドは、他のピルビン酸の分子と縮合し、α-アセト乳酸シンターゼを産生する。ラクトバチルス・ラムノーサスにおけるジアセチルの産生は十分に解明されておらず、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス次亜種ジアセチラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis biovar.diacetylactis)においては、α-アセト乳酸がα-アセト乳酸オキシダーゼにより酸化されることによりジアセチルになることが提案されている(Jyoti et al 2003)。アセトインは、α-アセト乳酸の脱カルボキシル化により直接産生する。アセトインの産生は、ジアセチルレダクターゼによりジアセチルからアセトインが不可逆的に産生することによっても起こり得る。
【0006】
ラクトバチルス・ラムノーサスは、ジアセチルやアセトインなどの風味化合物の製造に使用することができるヘテロ乳酸菌である(Jyoti et al.2003)。ジアセチルの産生量は、株のみならず、それが増殖する基材にも依存する。
【0007】
米国特許第4,867,992号明細書及び米国特許第5,236,833号明細書は、それぞれ、コーヒー基材及びペクチン基材を乳酸産生菌で発酵させることによりジアセチルを産生する方法に関する。
【0008】
ジアセチル及び/又はアセトインの調製、濃縮及び食品への添加にはかなりの費用が伴う。
【0009】
米国特許第4,678,673号明細書は、ジアセチル及びアセトインを産生するラクトバチルス・ラムノーサス株と共に発酵させた油糧種子製品に関する。発酵した油糧種子製品は、バター様又は乳製品様の風味を有する。ラクトバチルス・ラムノーサスを乳製品に使用することについては述べられていない。
【0010】
国際公開第2012/136832号パンフレットには、乳製品を製造するためのジアセチルを産生するラクトバチルス・ラムノーサス株が開示されている。
【0011】
ジアセチルの産生量が増加した乳製品を製造するための乳酸菌を提供することが求められている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、ラクトバチルス・ラムノーサス株を存在させることにより付与されるクリーミーな風味が増強された乳製品を調製するための組成物及び方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、増強されたクリーミーな風味をヨーグルトやチーズなどの乳製品に付与する能力に関する特性が向上した、新規なラクトバチルス・ラムノーサス株を提供することにある。
【0014】
他の目的は以下から明らかとなるであろう。更なる他の目的は、本発明が関連する技術分野の当業者に明らかであろう。
【0015】
本明細書における実施例から分かるように、ここに記載する、ドイツ微生物細胞培養コレクション(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures;DSMZ)に受託番号DSM 32666で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15871は、ジアセチル及びアセトインを産生し、それにより、乳製品の粘弾性及び後酸性化に大きな影響を与えることなく、乳製品のクリーミーな風味を増強する。
【0016】
更に驚くべきことに、本発明のラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15871は、その高いジアセチル産生活性に加えて、高い抗真菌活性も有することが見出された。特に、本発明のラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15871は、従来の抗真菌性ラクトバチルス・ラムノーサス株と比較して、酵母の増殖に対する活性が高い。
【0017】
したがって、本発明の第1の態様は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM 32666で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15871又はその突然変異株を含む組成物に関し、該突然変異株は該寄託された株を親株(mother strain)として用いることにより取得され、該突然変異株は親株と比較してジアセチルの産生量が同じか又は上回っている。
【0018】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による組成物の、乳製品を調製するための使用に関する。
【0019】
本発明の第3の態様は、乳製品を製造するための方法に関し、この方法は:
a)乳基材に本発明の第1の態様による組成物を植菌する工程と;
b)乳基材を発酵させる工程と;
c)任意選択的に、他の微生物及び/又は添加剤を乳基材に添加する工程と;
d)任意選択的に、乳基材を後処理する工程と;
e)任意選択的に、乳製品を包装する工程と;
を含む。
【0020】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様による方法により取得することができる乳製品に関する。
【0021】
本発明の第5の態様は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM 32666で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株又はその突然変異株に関し、該突然変異株は該寄託された株を親株として用いることにより取得され、該突然変異株は親株と比較してジアセチル産生量が同じか又は上回っている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、スターター培養物を単独で(基準)又はスターター培養物をラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483と組み合わせて若しくはラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と共に発酵させた発酵乳製品を7±1℃で14日間保存した後のジアセチルの量を示すものである。LOD:検出限界。LOQ:定量限界。
図2図2は、スターター培養物を単独で(基準)又はスターター培養物をラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483と組み合わせて若しくはラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と一緒に発酵させた発酵乳製品を7±1℃で14日間保存した後のアセトインの量を示すものである。LOD:検出限界。LOQ:定量限界。
図3図3は、スターター培養物を、単独で(基準、第1プレート)、ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483と共に(第2プレート)又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と共に(第3プレート)発酵させた乳から調製したプレート上の、4種の異なる汚染物質である酵母A、B、C及びDに関する、並びに3種の酵母濃度に関する(上、中、下段)、酵母の増殖を示したものである。
図4図4は、スターター培養物を、単独で(基準、第1プレート)、ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483と共に(第2プレート)、比較用ラクトバチルス・ラムノーサス株と共に(第3プレート)又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と共に(第4プレート)発酵させた乳から調製したプレート上の、1種の汚染物質である酵母に関する、及び3種の酵母濃度(上、中、下段)に関する、酵母の増殖を示したものである。
図5図5は、スターター培養物を、単独で(基準、第1プレート)又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483と共に(第2プレート)若しくはラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と共に(第3プレート)発酵させた乳から調製したプレート上の、3種の異なる汚染物質であるカビA、B及びCに関する、並びに2種の異なる温度に関する(上段及び下段のプレート)、カビの増殖を示すものである。
図6図6は、43℃で発酵させている最中の発酵乳製品の酸性化プロファイルを示すものである。製品は、スターター培養物を単独で(基準)又はスターター培養物をラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483株若しくはラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株と組み合わせて発酵させたものである。
図7図7は、7±1℃で21日間保存した発酵乳製品の経時的なpHの進展を示すものである。製品は、スターター培養物を単独で(基準)又はスターター培養物をラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483株若しくはラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株と組み合わせて発酵させたものである。
図8図8は、スターター培養物を、単独で(基準、第1プレート)又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と共に(第2プレート)発酵させた乳から調製したプレート上の、3種の異なる汚染物質であるカビA、B及びCに関するカビの増殖を示すものである。
図9図9は、30℃で最終pH4.50に達するまでの発酵時間(単位:分)を示すものである。製品は、5種の異なるサワークリームスターター培養物(SC1~SC5)を単独で、及びラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12697株と組み合わせて発酵させたものである。
図10図10は、5種の異なるスターター培養物(SC1~SC5)を単独で、及びラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12697株と組み合わせて発酵した発酵サワークリーム製品を5±1℃で7及び21日間保存した後のジアセチルの量(ppm、平均+/-標準偏差)を示すものである。
図11図11は、5種の異なるスターター培養物(SC1~SC5)を単独で、及びラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12697株と組み合わせて発酵させた発酵サワークリーム製品を5±1℃で7及び21日間保存した後のアセトインの量(ppm、平均+/-標準偏差)を示すものである。
図12図12は、5±1℃で7日間保存した後の発酵サワークリーム製品の粘弾性測定を示すものである。流動曲線のデータから導出した、剪断速度300(1/s)における剪断応力(Pa、平均+/-標準偏差)。試料は、5種の異なるスターター培養物(SC1~SC5)を単独で、及びラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12697株を組み合わせて発酵させたものである。
図13図13は、スターター培養物単独で、及び8種の異なるラクトバチルス・ラムノーサス株(CHCC15871、CHCC12483、株1、株2、株3、株4、株5及び株6)と組み合わせて発酵させたヨーグルト製品を7±1℃で14日間保存した後のジアセチルの量(ppm、平均+/-標準偏差)を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書において使用する「乳酸菌(lactic acid bacterium)」という用語は、糖を発酵させ、産生される主要な酸としての乳酸と、酢酸及びプロピオン酸とを含む酸を産生する、グラム陽性の微好気性又は嫌気性菌を指す。産業上最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス属の種(Lactococcus spp.)、ストレプトコッカス属の種(Streptococcus spp.)、ラクトバチルス属の種(Lactobacillus spp.)、リューコノストック属の種(Leuconostoc spp.)、シュードリューコノストック属の種(Pseudoleuconostoc spp.)、ペディオコッカス属の種(Pediococcus spp.)、ブレビバクテリウム属の種(Brevibacterium spp.)、エンテロコッカス属の種(Enterococcus spp.)及びプロピオニバクテリウム属の種(Propionibacterium spp.)を含む「ラクトバチルス(Lactobacillales)」目において見られる。更に、絶対嫌気性菌であるビフィズス菌、即ち、ビフィドバクテリウム属の種(Bifidobacterium spp.)の群に属する乳酸を産生する細菌は、一般に、乳酸菌の群に含まれる。これらは食品用培養物として、単独で又は他の乳酸菌と組み合わせてよく使用されている。
【0024】
ラクトバチルス属の種及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)種の細菌などの乳酸菌は、乳製品工業において、バルクスターターを増殖させるための凍結若しくは凍結乾燥された培養物のいずれかとして、又は発酵乳製品若しくはチーズなどの乳製品を製造するための発酵容器若しくはバットに直接植菌することが意図された、いわゆる「ダイレクトバットセット(Direct Vat Set)」(DVS)培養物として、一般に供給されている。このような乳酸菌培養物は、一般に、「スターター培養物」又は「スターター」と称される。
【0025】
本明細書における「中温性(mesophile)」という用語は、中程度の温度(15℃~40℃)で最も良好に繁殖する微生物を指す。産業上最も有用な中温性細菌としては、ラクトコッカス属の種及びリューコノストック属の種が挙げられる。本明細書における「中温発酵(mesophilic fermentation)」という用語は、約12℃~約35℃の温度で行われる発酵を指す。「中温発酵乳製品(mesophilic dairy product)」という用語は、中温性スターター培養物の中温発酵により調製された乳製品を指し、そのような乳製品として、バターミルク、サワーミルク、カルチャードミルク、スメタナ、サワークリーム及びフレッシュチーズ、例えば、クアーク、トバログ及びクリームチーズが挙げられる。
【0026】
本明細書における「好熱性(thermophile)」という用語は、43℃を超える温度で最も良好に繁殖する微生物を指す。産業上最も有用な好熱性細菌としては、ストレプトコッカス属の種及びラクトバチルス属の種が挙げられる。本明細書における「好熱発酵(thermophilic fermentation)」という用語は、約35℃を超える温度で行われる発酵を指す。「好熱発酵乳製品(thermophilic dairy product)」という用語は、好熱性スターター培養物を好熱発酵させることにより調製された発酵乳製品を指し、そのような乳製品としてヨーグルトが挙げられる。
【0027】
「乳」という用語は、任意の哺乳動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー又はラクダを搾乳することにより得られる乳汁と理解すべきである。好ましい実施形態において、乳はウシの乳である。乳という用語には、植物性材料から作られるタンパク質/脂肪溶液、例えば、豆乳も包含される。
【0028】
「乳基材(milk substrate)」という用語は、本発明の方法に従い発酵に付すことができる、任意の未加工の及び/又は加工された乳材料とすることができる。したがって、有用な乳基材としては、これらに限定されるものではないが、タンパク質を含む任意の乳又は乳様製品の溶液/懸濁物、例えば、全乳若しくは低脂肪乳、スキムミルク、バターミルク、還元された濃縮粉乳(reconstituted milk powder)、練乳、粉乳(dried milk)、ホエー、ホエーパーミエート、ラクトース、ラクトースの結晶化により得られる母液、ホエータンパク質濃縮物又はクリームが挙げられる。任意の哺乳動物に由来する乳基材、例えば、実質的に純粋な哺乳動物の乳又は還元された濃縮粉乳を用いることができることは明白である。
【0029】
乳基材は、発酵を行う前に、当該技術分野において知られている方法に従い均質化及び殺菌することができる。
【0030】
本明細書において使用される「均質化(homogenizing)」とは、可溶性の懸濁物又は乳液を得るために激しくかき混ぜることを意味する。均質化を発酵前に行う場合は、乳脂肪をもはや乳から分離しなくなるほど小さなサイズに分解するように行うことができる。これは、乳を高圧で小さなオリフィスを通して押し出すことにより達成され得る。
【0031】
本明細書において使用される「殺菌(pasteurizing)」とは、存在している生きた生物、例えば、微生物を減少又は死滅させるために乳基材を処理することを意味する。好ましくは、殺菌は、一定時間、特定の温度で乳基材を維持することにより達成される。この特定の温度は、通常、加熱により達成される。温度及び時間は、特定の細菌、例えば有害な細菌を死滅又は不活性化するように選択され得る。続いて急速冷却工程を行ってもよい。
【0032】
本発明の方法における「発酵(fermentation)」は、微生物の作用を介して糖をアルコール又は酸に変換することを意味する。好ましくは、本発明の方法における発酵は、ラクトースを乳酸に変換することを含む。
【0033】
乳製品の製造に用いられる発酵方法はよく知られており、当業者は、好適な処理条件、例えば、温度、酸素、微生物の量及び特徴、並びに処理時間を選択する方法を熟知しているであろう。発酵条件は、本発明の達成を支援するように、即ち、固形(例えば、チーズ)又は液体形態(例えば、発酵乳製品)の乳製品が得られるように選択されることは明白である。
【0034】
本文脈においては、「剪断応力」という用語により粘度を定める。粘度(単位:Pa・s)は、剪断応力(Pa)/剪断速度(1/s)と定義される。
【0035】
本明細書においては、標準値として、剪断速度=300 1/sにおける剪断応力の値を報告する。剪断速度300 1/sで測定された粘度を用いた場合に、粘弾性測定と感覚粘度(sensory viscosity)/口内の濃厚さ(mouth thickness)との間に最も良い相関が見られたことが官能試験から示されている(データは示さず)。
【0036】
本発明に関連する「剪断応力」という用語は、次に示す方法により測定される剪断応力を意味する:
発酵乳製品を7日間インキュベートした後、13℃にし、穴空きディスクを有する撹拌棒(stick fitted with a perforated disc)を用いて試料が均質になるまで手動で穏やかにかき混ぜた。試料の粘弾性特性を、レオメータ(ASC(オートサンプルチェンジャー)を備えたAnton Paar Physica Rheometer、Anton Paar(登録商標)GmbH、Austria)にて、ボブ及びカップを用いて評価した。測定時はレオメータの温度を一定とし、13℃に設定した。設定は次の通りである:
保持時間(元の構造をある程度再構築させるため)
試料に物理的応力(振動又は回転)を与えずに5分間。
振動工程(貯蔵弾性率及び損失弾性率G’及びG”をそれぞれ測定し、それにより複素弾性率G*を求めるため)
一定ひずみ=0.3%、周波数(f)=[0.5~8]Hz
60秒間で測定点6点(10秒間隔)
回転工程(300 1/sにおける剪断応力を測定するため)
2種類の工程を計画した:
剪断速度=[0.3~300]1/s及び2)剪断速度=[275~0.3]1/s。
各工程は、210秒間で21点の測定点を含むものとした(10秒間隔)。
300 1/sにおける剪断応力は、発酵乳製品を飲み込む際の口内の濃厚さと相関があるため、これを更なる解析用に選択した。
【0037】
本文脈において、「突然変異株(mutant)」という用語は、例えば、遺伝子操作、放射線、UV光及び/又は化学的処理及び/又はゲノムの変化を誘導する方法を介した、本発明の株に由来する株と理解すべきである。好ましくは、突然変異株は、機能的に均等な突然変異株、例えば、特性(例えば、ジアセチル産生、粘度、ゲルの堅さ(gel firmness)、口腔内の皮膜形成感(mouth coating)、風味、後酸性化、酸性化速度及び/又はファージ耐性(phage robustness)に関するもの)が親株と実質的に同じか又は改善されている。この種の突然変異株は本発明の一部を構成する。特に、「突然変異株」という用語は、本発明の株を、エタンメタンスルホン酸(EMS)やN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトログアニジン(NTG)などの化学変異原やUV光による処理などの、従来使用されている任意の突然変異誘発処理に付すことにより取得された株、又は自然発生した突然変異株を指す。特に、突然変異株は、自然変異株、即ち、例えば、親株を、1種又は複数種の従来の成長因子を含まない培地で親株を増殖させることを含む、選択圧とも称される突然変異誘発処理に付すことにより取得される突然変異株を指す。この文脈における「自然変異株」という用語は、遺伝子操作、放射線、UV光及び/又は化学的処理を用いて取得されたものではない突然変異株を意味する。突然変異株は、数回の突然変異誘発処理(単回の処理は、1回の突然変異誘発工程に続くスクリーニング/選別工程を含むと理解すべきである)に付されたものとすることができるが、20回以下又は10回以下又は5回以下の処理(又はスクリーニング/選別工程)を行うことが現時点においては好ましい。現時点において好ましい突然変異株においては、その親株と比較して、他のヌクレオチドにシフトしているか又は欠失している細菌のゲノムのヌクレオチドは、5%未満又は1%未満又は0.1%未満でさえある。特定の実施形態において、突然変異株は、親株と比較して、20以下、特に10以下、特に5以下、特に4以下、特に3以下、特に2以下、特に1以下の細菌ゲノムのヌクレオチド変異を含み、突然変異は、1個のヌクレオチドの置換、挿入又は欠失である。
【0038】
本発明の記載に関連する(特に、後に示す特許請求の範囲に関連する)、「a」及び「an」及び「the」という語並びに類似の指示語(reference)の使用は、本明細書において特に断りのない限り、又は文脈上明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈すべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(「containing)」という用語は、特に断りのない限り、非限定的用語(即ち、「含むが、それらに限定されない」)と解釈すべきである。本明細書において列挙する値の範囲は、本明細書において別段の指示がない限り、単に、当該範囲内にある別個の値をそれぞれ個々に言及する代わりの簡便な方法を意図したものであり、それぞれの別個の値は、本明細書に個々に列挙されているかの如く本明細書に組み込まれる。本明細書に記載する方法は全て、本明細書において別段の指示がない限り、或いは文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書に示すあらゆる例又は例示語(例えば、「など(such as)」)は、単に本発明をよりはっきりさせることを意図して使用されるものであり、他に主張しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる言語も、特許請求されていない任意の構成要素が本発明の実施に必須のものであることを示唆していると解釈すべきではない。
【0039】
本発明の組成物
驚くべきことに、本発明者らは、乳基材にスターター培養物に加えてラクトバチルス・ラムノーサス株を植菌して発酵させることにより、結果として得られる乳製品に、乳製品の質感、発酵時間及び後酸性化に悪影響を及ぼすことなく、好ましいクリーミーな風味を付与することが可能であることを見出した。
【0040】
クリーミーな風味の増強は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM 32666で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871の存在下における中温及び好熱発酵方法により調製された乳製品の両方において認められた。
【0041】
「クリーミーな風味の増強」という用語は、本発明によるラクトバチルス・ラムノーサス株を含まない製品と比較して、製品中のジアセチル及び/若しくはアセトインの含量が増加しており、並びに/又は官能パネルにより判定される製品のクリーミーな風味が増強されていることを意味する。
【0042】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本発明によるラクトバチルス・ラムノーサス株により乳製品に付与される増強されたクリーミーな風味は、ラクトバチルス・ラムノーサス株によるジアセチル及び/又はアセトインの産生が増強されることに起因すると考えられている。
【0043】
好ましい実施形態における乳製品は、本発明によるラクトバチルス・ラムノーサス株を発酵に使用しなかった又は発酵に使用しなかった場合にクリーミーな風味を本質的に欠く低/無脂肪発酵乳製品又はチーズである。
【0044】
本発明の特定の実施形態において、組成物は少なくとも1種の更なる乳酸菌を含む。
【0045】
本発明の組成物の特定の実施形態において、この更なる乳酸菌は、ラクトバチルス・ラムノーサス株、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)株、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)株、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)株、プロピオニバクテリウム・フリューデンレイッヒイ(Propionibacterium freudenreichii)株、例えば、プロピオニバクテリウム・フリューデンレイッヒイ亜種シャーマニイ(Propionibacterium freudenreichii subsp. shermanii)、プロピオニバクテリウム・ソエニイ(Propionibacterium thoenii)株、プロピオニバクテリウム・ジェンセニイ(Propionibacterium jensenii)株、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)株、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)株、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)株及びラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)からなる群から選択される少なくとも1種の抗真菌性乳酸菌である。この実施形態において、組成物は、発酵乳製品、例えば、ヨーグルト若しくはサワークリーム又はチーズなどの乳製品を製造する方法において、該発酵製品又はチーズにおけるジアセチル含量を高めること及び/又は抗真菌効果を得ることを目的として、発酵開始時点でスターター培養物と共に乳基材に添加するために使用するのに適している。或いは、本組成物を、発酵の途中に、即ち、発酵開始後且つ発酵終了前に添加することができる。
【0046】
本発明の組成物の特定の実施形態において、少なくとも1種の抗真菌性乳酸菌は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号32092で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15860である。
【0047】
本発明の特定の実施形態において、組成物は、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属及びラクトバチルス属からなる群から選択される1種又は複数種の株を含む発酵乳製品を製造するためのスターター培養物を含む。
【0048】
典型的には、この種の組成物は、細菌を、凍結、乾燥又は凍結乾燥された濃縮物などの濃縮形態で含み、これらは、典型的には生菌濃度が組成物1グラム当たり少なくとも104cfu(コロニー形成単位)、例えば、少なくとも105cfu/g、例えば、少なくとも106cfu/g、例えば、少なくとも107cfu/g、例えば、少なくとも108cfu/g、例えば、少なくとも109cfu/g、例えば、少なくとも1010cfu/g、例えば、少なくとも1011cfu/gなど、組成物1グラム当たり104~1012cfuの範囲にある。したがって、本発明の抗菌組成物は、好ましくは、凍結、乾燥又は凍結乾燥された形態で、例えば、「ダイレクトバットセット」(DVS)培養物として存在する。しかしながら、本明細書において使用される抗菌組成物は、凍結、乾燥又は凍結乾燥された細胞濃縮物を水やPBSバッファーなどの液体媒体中で懸濁させることにより得られる液体とすることもできる。本発明の抗菌組成物が懸濁液である場合、生菌濃度は、組成物1ml当たり少なくとも104cfu(コロニー形成単位)、例えば、少なくとも105cfu/ml、例えば、少なくとも106cfu/ml、例えば、少なくとも107cfu/ml、例えば、少なくとも108cfu/ml、例えば、少なくとも109cfu/ml、例えば、少なくとも1010cfu/ml、例えば、少なくとも1011cfu/mlなど、組成物1ml当たり104~1012cfuの範囲にある。
【0049】
更に、組成物は、更なる構成要素として、凍結保護物質及び/又は酵母エキス、糖及びビタミン類、例えば、ビタミンA、C、D、K若しくはビタミンB群のビタミンなどの栄養素を含む従来の添加剤を含むことができる。本発明の組成物に添加することができる好適な凍結保護物質は、微生物の低温耐性を改善する成分、例えば、マンニトール、ソルビトール、トリポリリン酸ナトリウム、キシリトール、グリセロール、ラフィノース、マルトデキストリン、エリスリトール、トレイトール、トレハロース、グルコース及びフルクトースである。他の添加剤としては、炭水化物、風味剤、鉱物、酵素(例えば、レンネット、ラクトース及び/又はホスホリパーゼ)を挙げることができる。
【0050】
混合した培養物をスターター培養物として適用することは乳酸菌発酵法においては通常のことなので、組成物は、特定の実施形態においては、同じ種に属するか又は異なる種に属する複数の株を含むであろう。好熱性スターター培養物における乳酸菌のこのような有用な組合せの典型例は、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)株及びストレプトコッカス・サーモフィルス株の混合物である。中温性スターター培養物における乳酸菌のこのような有用な組合せの典型例は、ラクトコッカス・ラクティス株を、リューコノストック属の株、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス次亜種ジアセチラクティス株及びストレプトコッカス・サーモフィルス株からなる群から選択される株と組み合わせた混合物である。
【0051】
本発明の好ましい実施形態において、スターター培養物は好熱性スターター培養物であり、組成物は好熱発酵に適している。
【0052】
他の好ましい実施形態において、スターター培養物は、ストレプトコッカス属及びラクトバチルス属からなる群から選択される。好ましい実施形態において、スターター培養物は、少なくとも1種のラクトコッカス・ラクティス株を含む。スターター培養物は、当該技術分野において知られている任意のラクトコッカス・ラクティス株、例えば、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)、ラクトコッカス・ラクティス亜種ホールドニアエ(Lactococcus lactis subsp.hordniae)又はラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)からの株などを含むことができる。更なる他の好ましい実施形態において、スターター培養物は、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス株及びラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス株を含む。
【0053】
この組成物は、クリーミーな風味が増強された乳製品の調製に使用することができる。
【0054】
好ましい実施形態において、乳製品は、ヨーグルトなどの発酵乳製品である。他の好ましい実施形態において、乳製品はチーズである。
【0055】
好ましい実施形態において、乳製品は、ジアセチルを少なくとも1.0ppm、詳細には、ジアセチルを少なくとも3.0ppm、より詳細には、ジアセチルを少なくとも5.0ppm、より詳細には、ジアセチルを少なくとも7.0ppm、より詳細には、ジアセチルを少なくとも9.0ppm、より詳細には、ジアセチルを少なくとも11.0ppm、より詳細には、ジアセチルを少なくとも13.0ppm、より詳細には、ジアセチルを少なくとも15.0ppm、より詳細には、ジアセチルを少なくとも17.0ppm、最も詳細には、ジアセチルを少なくとも19.0ppm含む。
【0056】
当業者は、本発明の乳製品のジアセチル含量を求めるための多くの方法に通じているであろう。例えば、含量は、好適なクロマトグラフィー法、例えば、スタティックヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)により測定することができる。ジアセチルの分泌は、当該技術分野において知られている各種分析試験を用いて測定することができるが、好ましくは、次の工程を含む分析試験を用いて測定される:
(1)発酵乳製品を:
(a)乳に少なくとも5×106CFU/gのラクトバチルス・ラムノーサスをスターター培養物と共に植菌することと、
(b)目標pH、例えば、pHが4.6に達するまで発酵させることと、
により調製する工程;
(2)発酵乳製品を7±1℃で14日間保存する工程;
(3)4NH2SO4を200μlを発酵乳製品1gに添加し、スタティックヘッドスペースガスクロマトグラフィーによりジアセチルの濃度を測定する工程。
【0057】
本発明の組成物の抗真菌性
特定の実施形態において、本発明の組成物は、本発明のラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871及び少なくとも1種の更なる抗真菌性乳酸菌を含む抗真菌性組成物である。
【0058】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、真菌、例えば、酵母及びカビに対して使用される。これは、本組成物が、乳製品工業の処理、特に、乳発酵処理において汚染の原因となる真菌の増殖を阻害及び/又は防止するために使用されることを意味する。本発明の組成物は、例えば、酵母、例えば、クリベロミセス属酵母(Klyveromyces)(例えば、クリベロミセス・マルキシアナス(K.marxianus)、クリベロミセス・ラクティス(K.lactis))、ピチア属酵母(Pichia)(例えば、ピチア・ファーメンタンス(P.fermentans))、ヤロウィア属酵母(Yarrowia)(例えば、ヤロウィア・リポリティカ(Y.lipolytica))、カンディダ属酵母(Candida)(例えば、カンディダ・サケ(C.sake))、デバリオマイセス属酵母(Debaryomyces)(例えば、デバリオマイセス・ハンセニイ(D.hansenii))など;又はカビ、例えば、ペニシリウム属菌(Penicillium)(例えば、ペニシリウム・ナルギオベンス(P.nalgiovense)、ペニシリウム・コンミュネ(P.commune)、ペニシリウム・クラストサム(P.crustosum)、ペニシリウム・ブレビコンパクタム(P.brevicompactum)、ペニシリウム・グラブラム(P.glabrum))、ムコール属種菌(Mucor spp.)、クラジオスポリウム属亜種菌(Cladiosporium ssp.)、アスペルギルス属菌(Aspergillus)(例えば、アスペルギルス・バージカラー(A.versicolor))などからのカビの増殖を阻害及び/又は防止するために使用される。特に好ましくは、本発明の組成物は、クリベロミセス・マルキシアナス種、ヤロウィア・リポリティカ種、ペニシリウム・ナルギオベンス種、クラジオスポリウム属亜種菌(Cladiosporium ssp.)属種菌、ペニシリウム・コンミュネ、ムコール属亜種菌(Mucor ssp.)、ペニシリウム・ブレビコンパクタム、アスペルギルス・バージカラー、ペニシリウム・クラストサム、クリベロミセス・ラクティス及び/又はデバリオマイセス・ハンセニイ種の菌の増殖を阻害及び/又は防止するために使用される。
【0059】
本発明の特定の実施形態において、ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株の抗真菌活性は、受託番号:DSM 32093で寄託された真菌であるペニシリウム・ソリタム(Penicillium solitum)の増殖又は受託番号DSM 32094で寄託された真菌であるペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖又はペニシリウム・クラストサムの増殖を阻害する能力として測定することができる。
【0060】
本発明に関連する、受託番号DSM 32093で寄託された真菌ペニシリウム・ソリタムの増殖又は受託番号DSM 32094で寄託された真菌ペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖を阻害する能力は、好ましくは、次の工程を含む分析試験を用いて求められる:
(1)発酵乳製品を:
(a)少なくとも5×106CFU/gの濃度のラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871及びスターター培養物を乳に植菌することと、
(b)目標pH、例えば、pH4.6に達するまで発酵させることと、
(c)発酵乳に寒天を添加することにより固化させることと、
により調製する工程;
(2)寒天で固化した発酵乳上に、ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムの少なくとも1のスポットを500個胞子/スポットの濃度で作製し、これを25℃で7日間インキュベートする工程;
(3)ペニシリウム・ソリタム又はペニシリウム・ブレビコンパクタムの増殖により形成されたコロニーの最大径を測定し、この径を、ラクトバチルス・ラムノーサス株が存在しないことを除いて同じ条件で形成したコロニーの最大径に対する百分率で表すことにより阻害率を求める工程。
【0061】
本発明の特定の実施形態において、ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株の抗真菌活性は、トルラスポラ・デルブルッキ(Torulaspora delbrueckii)、クリプトコッカス・フラギコラ(Cryptococcus fragicola)、デバリオマイセス・ハンセニイ、ヤロウィア・リポリティカ、ロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucilaginosa)、ピチア・キラーモンディ(Pichia quilermondii)及びカンディダ属の種からなる群から選択される1種又は複数種の酵母、好ましくは、トルラスポラ・デルブルッキ、クリプトコッカス・フラギコラ、デバリオマイセス・ハンセニイ、ヤロウィア・リポリティカ及びロドトルラ・ムシラギノーサからなる群から選択される1種又は複数種の酵母の増殖を阻害する能力として測定される。
【0062】
本発明に関連する、トルラスポラ・デルブルッキ、クリプトコッカス・フラギコラ、デバリオマイセス・ハンセニイ、ヤロウィア・リポリティカ及びロドトルラ・ムシラギノーサからなる群から選択される1種又は複数種の酵母の増殖を阻害する能力は、好ましくは、次の工程を含む分析試験を用いて求められる:
(1)発酵乳製品を:
(a)少なくとも5×106CFU/gの濃度のラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871をスターター培養物と共に乳に植菌することと、
(b)目標pH、例えば、pHが4.6に達するまで発酵させることと、
(c)発酵乳に寒天を添加することにより固化させることと、
により調製する工程;
(2)4種の酵母:トルラスポラ・デルブルッキ、クリプトコッカス・フラギコラ、デバリオマイセス・ハンセニイ及びヤロウィア・リポリティカの少なくとも1のスポットを、寒天で固化した発酵乳上に、103、102及び101CFU/スポットの濃度で作製し、これを7℃で27日間インキュベートする工程;
(3)ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871をスターター培養物と共に含むプレートにおいて、12個のスポットのうち増殖が発生したスポットの数(スポット数0~12)を求め、この数を、スターター培養物のみを含むプレートで増殖が発生したスポット数に対する百分率として表すことにより、阻害率を決定する工程。
【0063】
代替的な実施形態において、工程(3)は、目視検査及びプレートの比較を行い、1)増殖していないスポットの数及び2)増殖したスポットの増殖の程度(スポットの径、密度及び厚み)に関しプレートを比較することによって阻害の程度を評価することにより、定性的判定として実施される。
【0064】
本発明による使用
上に述べたように、更に本発明は、本発明の組成物の、乳製品を調製するための使用に関する。
【0065】
特定の実施形態において、乳製品は発酵乳製品である。特定の実施形態において、発酵乳製品はヨーグルトである。他の特定の実施形態において、乳製品はチーズである。
【0066】
特定の実施形態において、乳製品は、ジアセチルを少なくとも0.75ppm、特に、ジアセチルを少なくとも1.5ppm含む。
【0067】
更に本発明は、乳製品を調製する方法においてジアセチルを産生させるための、本発明の組成物の使用に関する。
【0068】
更に本発明は、乳製品を調製する方法において真菌の増殖を阻害するための、本発明の組成物の使用に関する。更に本発明は、乳製品を調製する方法において酵母の増殖を阻害するための、本発明の組成物の使用に関する。
【0069】
本発明の方法
上に述べたように、本発明の態様は:
a)乳基材に本発明の第1の態様による組成物を植菌すること;
b)乳基材を発酵させること;
c)任意選択的に、他の微生物及び/又は添加剤を乳基材に添加すること;
d)任意選択的に、乳基材を後処理すること;および
e)任意選択的に、乳製品を包装すること;
を含む、クリーミーな風味を有する乳製品の製造方法に関する。
【0070】
上に述べたように、工程a)に使用される乳基材は、本発明の方法に従い発酵に付すことができる任意の未加工及び/又は加工された乳材料とすることができる。
【0071】
乳基材への上述の組成物の植菌は任意の好適な方法で行うことができる。例えば、乳基材には、直接植菌により発酵槽に植菌することができる。
【0072】
好ましい一実施形態において、工程b)は、乳基材を約37℃を超える温度、好ましくは約38℃~約45℃の温度、より好ましくは約39℃~約42℃の温度で発酵させることを含む。他の好ましい実施形態において、工程b)は、乳基材を約22℃~約34℃の温度、より好ましくは約24℃~約32℃、より好ましくは約26℃~約30℃の温度で発酵させることを含む。
【0073】
乳製品の製造に使用される発酵処理はよく知られており、当業者は、好適な処理条件、例えば、温度、酸素、微生物の量及び特徴、並びに処理時間を選択する方法を理解しているであろう。発酵条件は、向上した風味及び高い質感(high texture)を有する乳製品の製造に好適な発酵乳製品が得られるように選択されることは明らかである。
【0074】
更なる微生物及び/又は添加剤は、工程(b)における乳基材の発酵前、途中又は後に乳基材に添加することができる。乳基材に添加することができる微生物は、乳製品の特性に有利な形で寄与するものであろう。例えば、微生物は、乳製品のジアセチル産生量、粘度、ゲルの堅さ、口腔内の皮膜形成感、風味、後酸性化及び/又は酸性化速度を向上させるか又は支援することができる。任意選択的に、他の成分、例えば、色材、安定剤、例えば、ペクチン、デンプン、変性デンプン、CMCなど;又は多価不飽和脂肪酸、例えば、ω-3脂肪酸も乳基材に添加することができる。この種の成分は、製造プロセスの任意の時点で、例えば、発酵の前又は後に添加することができる。
【0075】
更に乳基材は、所望の乳製品を産生するために必要な任意の手段により後処理することができる。例えば、更なる構成成分、例えば、糖やビタミンなどの栄養素を含む従来の添加剤を乳基材に添加することができる。更に乳基材は、例えば、均質化するか又は熱で処理、即ち殺菌することができる。
【0076】
乳製品は当該技術分野において知られている任意の好適な様式で包装することができる。例えば、乳製品は、例えば、25~1500mlの範囲の容量を有する密封された容器に包装することができる。製品は製造過程の任意の時点で包装することができ、例えば、植菌工程に続いて包装した後、包装内で発酵させる。
【0077】
本方法により得られた乳製品の典型的な例として、ヨーグルト、サワークリーム、チーズ、バターミルクなどの製品が挙げられる。
【0078】
上述の方法により得ることができる乳製品もまた、本発明の一部である。
【0079】
好ましい実施形態において、乳製品は発酵乳製品である。本明細書において使用する「発酵乳製品」としては、これらに限定されるものではないが、好熱発酵乳製品、例えば、ヨーグルト、中温発酵乳製品、例えば、サワークリーム及びバターミルクに加えて発酵ホエーが挙げられる。
【0080】
「好熱発酵乳製品」という用語は、好熱性スターター培養物を好熱発酵に付すことにより調製される発酵乳製品を指し、セットヨーグルト、スタードヨーグルト及び飲用ヨーグルト、例えば、ヤクルトなどの発酵乳製品が挙げられる。
【0081】
「中温発酵乳製品」という用語は中温性スターター培養物を中温発酵に付すことにより調製される発酵乳製品を指し、バターミルク、サワーミルク、カルチャードミルク、スメタナ、サワークリーム、ケフィア、フレッシュチーズ、例えば、クアーク、トバログ及びクリームチーズなどの発酵乳製品が挙げられる。
【0082】
更なる他の好ましい実施形態において、乳製品は、チーズ、例えば、カッテージ、フェタ、チェダー、パルメザン、モッツァレラ、エメンタール、ダンボー、ゴーダ、エダム、フェタタイプ(Feta-type)、ブルーチーズ、ブライン(brine)チーズ、カマンベール、又はブリである。
【0083】
好ましい実施形態において、乳製品は、ジアセチルを少なくとも0.75ppm、例えば、ジアセチルを少なくとも1.0ppm、例えば、ジアセチルを少なくとも1.5ppm含む。
【0084】
本発明のCHCC15871株
本発明の第5の態様は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(DSMZ)に受託番号DSM 32666で寄託されたラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株に関する。この株とは別に、本発明は、それに由来する、即ち、寄託された株CHCC15871を親株として使用することにより取得される突然変異株にも関する。この突然変異株は、CHCC15871から、例えば、遺伝子操作、放射線、UV光、化学的処理及び/又はゲノムの変化を誘導する方法により誘導することができる。本発明による突然変異株は、アセテート、アセトアルデヒド、ジアセチル及び/又はアセトインの産生量に関し本質的に親株と同じ特性を有することになる。好ましくは、突然変異株は、その親株と比較して、基本的に少なくとも80%以上、少なくとも90%以上、少なくとも95%以上又は少なくとも100%以上のアセテート、アセトアルデヒド、ジアセチル及び/又はアセトインを産生する。
【0085】
本発明に関連する「親株と比較して同じか又はそれを上回るジアセチル産生量」という表現は、ジアセチル産生量が親株と比較して少なくとも100%であることを意味する。
【0086】
寄託された株を親株として使用することにより、熟練した読者が、従来の突然変異誘発又は再単離技法を用いて、更なる突然変異株又は本明細書に記載する該当する特徴及び利点を保持するその派生体を通常の操作で取得することができることは当業者に明らかである。したがって、第1の態様の「その突然変異株」という用語は、寄託された株を親株として使用することにより取得される突然変異株に関する。
【0087】
本発明の実施形態を、非限定的な実施例により以下に説明する。
【実施例
【0088】
実施例1:ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871の異なる酵母及びカビ汚染に対する阻害効果並びにジアセチル産生の半定量的解析
ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871の阻害効果の半定量的解析を行うために、ヨーグルトの製造方法及び製品を模擬し、アガーアッセイを行った:
低脂肪(1.5%w/v)ホモジナイズドミルクを90±1℃で20分間熱処理し、直ちに冷却した。市販のヨーグルトスターター培養物(F-DVS YoFlex Mild 2.0)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌された乳を200mlのボトルに分注した。1本のボトルにラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を総濃度1×107CFU/gで植菌し、1本のボトルに市販の微生物制御(bioprotective)株(Holdbac(登録商標)YM-Bから単離)であるラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483を総濃度1×107CFU/gで植菌し、1本のボトルに抗真菌活性を有する比較用のラクトバチルス・ラムノーサス株を植菌し、1本のボトルはスターター培養物のみを植菌する対照として使用した。全てのボトルを43±1℃の水浴でインキュベートし、この条件下でpHが4.60±0.1に達するまで発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振盪して凝集塊を解体し、氷上で冷却した。次いで発酵乳を40℃の温度に加温し、滅菌した5%寒天溶液40mlを溶融して60℃に冷却してから添加した。次いでこの発酵乳及び寒天の溶液を滅菌したペトリ皿に注ぎ、このプレートをLAFベンチで30分間乾燥させた。
【0089】
3種の異なるカビであるペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM 32094)、ペニシリウム・クラストサム、ペニシリウム・ソリタム(DSM 32093)の胞子懸濁液を500個胞子/スポットの濃度でスポットした。3種のカビを同じプレートにスポットした。プレートを25±1℃でインキュベートし、カビの増殖を定期的に調べた。トルラスポラ・デルブルッキ、クリプトコッカス・フラギコラ、デバリオマイセス・ハンセニイ、ヤロウィア・リポリティカ及びロドトルラ・ムシラギノーサを含む5種の酵母を、103、102及び101CFU/スポットの濃度でスポットした。プレートを7±1℃でインキュベートし、酵母の増殖を定期的に調べた。
【0090】
複合基質中の揮発性物質の分析に関し高感度な方法であるスタティックヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)を用いて、14日目に試料のジアセチルを分析した。装置構成は、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフにスタティックヘッドスペースサンプラーを連結したものとした。この目的のために、次に示す装置を使用した:
HS-オートサンプラー:HS40XI、TurboMatrix 110、Perkin Elmer
HS-ソフトウェア:HSControl v.2.00、Perkin Elmer
GC:Autosystem XL、Perkin Elmer
GC-ソフトウェア:Turbochrom navigator、Perkin Elmer
カラム:HP-FFAP 25m×0.20mm×0.33μm、Agilent Technologies
既知の濃度の標準物質を使用して感度係数を決定し(較正)、対照を使用して、使用した感度係数が一連の分析においてのみならず、異なる一連の分析間(in-between series)で、及び長時間(数ヵ月間)に亘り安定であるように調整した。標準物質から求めた感度係数を用いて、試料及び対照中の揮発性物質の濃度(ppm)を決定した。4NのH2SO4を200μlをヨーグルト1gに添加することにより試料を調製し、直ちにHSGCで測定した。
【0091】
図1に、ジアセチルの産生に与える効果を示すが、乳の発酵時にラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を添加することにより、市販のラクトバチルス・ラムノーサス株と比較して、ジアセチルの量が大幅に増加することが分かる。
【0092】
図2に、アセトインの産生に与える効果を示すが、乳の発酵時にラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を添加することにより、市販のラクトバチルス・ラムノーサス株と比較して、アセトインの量が大幅に増加することが分かる。
【0093】
図3に、スターター培養物を、単独で(基準、第1プレート)、ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483と共に(第2プレート)又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と共に(第3プレート)発酵させた乳から調製したプレート上の酵母の増殖を示す。プレートは7±1℃で27日間インキュベートしたものである。対象の汚染物質を1×103cfu/スポット(上段)、1×102cfu/スポット(中段)及び1×101cfu/スポット(下段)の濃度で添加した:(A)トルラスポラ・デルブルッキ、(B)クリプトコッカス・フラギコラ、(C)デバリオマイセス・ハンセニイ及び(D)ヤロウィア・リポリティカ。
【0094】
図4に、スターター培養物を、単独で(基準、第1プレート)、ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483と共に(第2プレート)、比較用ラクトバチルス・ラムノーサス株と共に(第3プレート)又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と共に(第4カラム)発酵させた乳から調製したプレート上の酵母の増殖を示す。プレートは7±1℃で26日間インキュベートしたものである。対象の汚染物質であるロドトルラ・ムシラギノーサを1×103cfu/スポット(上段)、1×102cfu/スポット(中段)及び1×101cfu/スポット(下段)の濃度で添加した。
【0095】
図3及び4に示す酵母のアガーアッセイから分かるように、試験に供した酵母は、スターター培養物単独で発酵させた乳(基準)から作製した寒天プレート上で非常によく増殖した。ところが、ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を乳発酵時に存在させると、結果として得られたプレートは全ての被験酵母の増殖を阻害した。阻害の程度は市販の微生物制御用株であるラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483株及び比較用株で観測された阻害の程度を更に上回るものであった。
【0096】
図5に、スターター培養物を、単独で(基準、第1プレート)又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483と共に(第2プレート)又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と共に(第3プレート)発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは25±1℃で12日間(上段)又は7±1℃で27日間(下段)インキュベートしたものである。対象の汚染物質を500個胞子/スポットの濃度で添加した:(A)ペニシリウム・ブレビコンパクタム、(B)ペニシリウム・クラストサム及び(C)ペニシリウム・ソリタム。
【0097】
図5から、試験に供したカビは全て、スターター培養物単独で発酵させた乳(基準)から作製した寒天プレート上で増殖することが可能であった。乳発酵時にラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483を存在させると、カビの増殖が阻害された。乳発酵時にラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を存在させると、カビの増殖はCHCC12483の場合よりも一層強力に阻害された。
【0098】
実施例2:ラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15871が後酸性化に与える影響
ラクトバチルス・ラムノーサス株(CHCC15871)が酸化速度に与える影響及び後酸性化に与える影響について試験を行った。
【0099】
低脂肪(1.5%w/v)ホモジナイズドミルクを90±1℃で20分間熱処理した後、即座に冷却した。市販のヨーグルトスターター培養物(F-DVS YoFlex Mild 2.0)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌された乳を200mlのボトルに分注した。1本のボトルにはラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を総濃度1×107CFU/gで植菌し、1本のボトルには市販の微生物制御用株であるラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483(Holdbac(登録商標)YM-Bから単離)を総濃度1×107CFU/gで植菌し、1本のボトルは基準として使用し、スターター培養物のみを植菌した。全てのボトルを43±1℃の水浴でインキュベートし、この条件下でpHが4.60±0.1に達するまで発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振盪することにより凝集塊を解体し、氷上で冷却した。
【0100】
後酸性化に及ぼす影響を監視するために、3種の発酵乳試料(スターターのみ、ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483及びラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871)を7±1℃で21日間保存し、1、7、14及び21日目にpHを測定した。
【0101】
図6に、43℃で発酵している最中の発酵乳製品の酸性化プロファイルを示す。製品は、スターター培養物単独で(基準)又はスターター培養物をラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483株若しくはラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株と組み合わせて発酵させたものである。
【0102】
図6から分かるように、2種のラクトバチルス・ラムノーサス株の添加はどちらも発酵の酸性化プロファイルを変化させなかった。
【0103】
図7は、発酵乳製品を7±1℃で21日間保存した後の経時的なpHの進展(後酸性化)を示すものである。製品は、スターター培養物単独で(基準)又はスターター培養物をラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12483株若しくはラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株と組み合わせて発酵させたものである。
【0104】
図7から分かるように、2種のラクトバチルス・ラムノーサス株の添加は、どちらも発酵乳製品の後酸性化特性を大きく変化させなかった。
【0105】
実施例3:ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871の異なるカビ汚染に対する阻害効果に関する半定量的分析
ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871の阻害効果に関する半定量的分析を行うために、製造方法及びサワークリーム製品を模擬し、アガーアッセイを行った:
成分調整乳(脂肪分9%w/v)であるホモジナイズドミルクを90±1℃で20分間熱処理し、直ちに冷却した。市販のサワークリームスターター培養物(F-DVS XT-314)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌された乳を200mlのボトルに分注した。1本のボトルにはラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を総濃度5×106CFU/gで植菌し、1本のボトルは基準として使用し、スターター培養物のみを植菌した。両ボトルを26±1℃の水浴でインキュベートし、この条件下でpHが4.60±0.1に達するまで発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振盪することにより凝集塊を解体し、氷上で冷却した。次いで発酵乳を40℃の温度に加温し、滅菌した5%寒天溶液40mlを溶融し、60℃に冷却してから添加した。次いでこの発酵乳及び寒天の溶液を滅菌したペトリ皿に注ぎ、プレートをLAFベントで30分間乾燥させた。
【0106】
3種の異なるカビの胞子懸濁液を500個胞子/スポットの濃度でスポットした;ペニシリウム・ブレビコンパクタム(DSM 32094)、ペニシリウム・クラストサム及びペニシリウム・ソリタム(DSM 32093)。この3種のカビは同じプレート上にスポットした。プレートを25±1℃でインキュベートし、カビの増殖を定期的に調べた。
【0107】
図8に、スターター培養物を、単独で(基準、第1プレート)又はラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871と共に(第2プレート)発酵させた乳から調製したプレート上のカビの増殖を示す。プレートは25±1℃で12日間インキュベートしたものである。対象の汚染物質を500個胞子/スポットの濃度でスポットした:(A)ペニシリウム・ブレビコンパクタム、(B)ペニシリウム・クラストサム及び(C)ペニシリウム・ソリタム。
【0108】
図8から、試験に供したカビは全て、スターター培養物単独で発酵させた乳(基準)から作製した寒天プレート上で増殖することが可能であった。乳発酵時にラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を存在させることにより、カビの増殖が強力に阻害された。
【0109】
実施例4:ラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15871がジアセチル及びアセトインの産生、発酵時間及び粘度に与える影響
ラクトバチルス・ラムノーサス株(CHCC15871)が、サワークリーム用途においてジアセチル及びアセトイン産生、発酵時間及び粘度に与える影響に関し試験を行った。その性能を、ジアセチル産生量(国際公開第2012/136832号パンフレット参照)及び抗真菌活性(国際公開第2012/136830号パンフレット参照)が高いことが知られている従来のラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12697と比較した。
【0110】
サワークリーム基材(sour cream base)(脂肪分18%、タンパク質2.7%w/v)を均質化(2段階、200/70バール、70℃)し、85±1℃で3分間熱処理し、直ちに冷却した。試験開始時にサワークリーム基材を200mlの滅菌ボトルに分注した。ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス、ストレプトコッカス・サーモフィルス及びリューコノストック属の菌から構成される5種のスターター培養物(SC1~SC5)を0.01%(v/w)で植菌した。スターター培養物1種につき5本のボトルに植菌した。更に2本のボトルにラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を総濃度5×106CFU/gで植菌し、他の2本のボトルにラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12697(比較基準)を総濃度5×106CFU/gで植菌した。スターター培養物1種につき1本のボトルを基準/対照として使用した。全てのボトルを30±1℃の水浴でインキュベートし、この条件下でpHが4.50±0.1に達するまで発酵させた。最終pHにおいて、均質なテクスチャが得られるまで凝集塊を撹拌し(手持ち撹拌器(hand stirrer)で20回)、氷上で冷却した。冷却後、ボトルを5±1℃で保存した。
【0111】
記録した発酵時間を図9に示す。重要なことは、ラクトバチルス・ラムノーサス株を組み合わせても発酵時間が大幅に増加しなかったことにある。SC1、SC2、SC4及びSC5の場合、スターター培養物及びCHCC15871の混合物の発酵時間は、スターター培養物単独の場合並びにスターター培養物及びCHCC12697の場合よりも短かった。
【0112】
複合基質中の揮発性物質の分析に関し高感度な方法であるスタティックヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)により、試料のジアセチル及びアセトインを7日目及び21日目に分析した。装置構成は、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフにスタティックヘッドスペースサンプラーを連結したものとした。この目的のために、次に示す装置を使用した:
HS-オートサンプラー:HS40XI、TurboMatrix 110、Perkin Elmer
HS-ソフトウェア:HSControl v.2.00、Perkin Elmer
GC:Autosystem XL、Perkin Elmer
GC-ソフトウェア:Turbochrom navigator、Perkin Elmer
カラム:HP-FFAP 25m×0.20mm×0.33μm、Agilent Technologies
既知の濃度の標準物質を使用して感度係数を決定し(較正)、対照を使用して、使用した感度係数が一連の分析においてのみならず、異なる一連の分析間及び長時間(数ヵ月間)に亘り安定であるように調整した。試料及び対照中の揮発性物質の濃度(ppm)を、標準物質から求めた感度係数を用いて決定した。4NのH2SO4を200μlを発酵サワークリーム試料1gに添加することにより試料を調製し、直ちにHSGCで測定した。
【0113】
ジアセチルの産生に与える効果を図10に、アセトインに関しては図11示す。図10から、発酵時にラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871を添加することにより、特に、低温保存21日後のジアセチルの産生量に対し非常に高い効果を示し、驚くべきことに、その量は、ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC12697を用いた試料と比較して著しく高いことが分かる。図11に示すように、CHCC15871は、アセトインの産生量も、CHCC12697と比較して高い。
【0114】
製造後7日目に、発酵したサワークリーム製品を13℃にし、試料が均質になるまで手動で撹拌(20回)した。試料の粘弾性特性を、レオメータ(ASC(オートサンプルチェンジャー)を備えたAnton Paar Physica Rheometer、Anton Paar(登録商標)GmbH、Austria)にて、ボブ・カップジオメトリーを用いて評価した。測定時はレオメータの温度を一定とし、13℃に設定した。設定は次の通りである:
保持時間(元の構造をある程度再構築させるため)
試料に物理的応力(振動又は回転)を与えずに5分間
回転工程(300 1/sにおける剪断応力を測定するため)
2種類の工程を計画した:
1)剪断速度=[0.3~300]1/s及び2)剪断速度=[275~0.3]1/s。
【0115】
各工程は、210秒間で21点の測定点を含むものとした(10秒間隔)。
【0116】
流動曲線のピーク(300 1/s)の剪断応力の値は、知覚される口内の濃厚さとよく相関することが示されているため、これを更なる解析用に選択した。剪断応力(Pa)は、粘度(Pa・s)・剪断速度(1/s)で与えられる。
【0117】
図12に粘弾性測定結果を示す。ラクトバチルス・ラムノーサス株を添加しても、剪断速度300における剪断応力で表されるテクスチャ特性に悪影響が及ぼされないことが明らかである。剪断応力は、基準試料(SC1~SC5)と比較して低下しない。
【0118】
実施例5:ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株と異なるラクトバチルス・ラムノーサス株とのジアセチル産生量の比較
ラクトバチルス・ラムノーサスCHCC15871株及び7種の異なるラクトバチルス・ラムノーサス株のジアセチル産生
低脂肪(1.5%w/v)ホモジナイズドミルクを90±1℃で20分間熱処理し、直ちに冷却した。市販のヨーグルトスターター培養物(F-DVS YoFlex Mild 2.0)を0.02%(v/w)で植菌し、植菌された乳を200mlのボトルに分注した。8本のボトルにラクトバチルス・ラムノーサス株(CHCC15871、CHCC12483、株1、株2、株3、株4、株5及び株6)を総濃度1×107CFU/gで、ボトル1本につき1種の株を植菌した。1本のボトルを基準として使用し、スターター培養物のみを植菌した。全てのボトルを43±1℃の水浴でインキュベートし、この条件下でpHが4.55±0.1に達するまで発酵させた。発酵後、ボトルを激しく振盪することにより凝集塊を解体し、氷上で冷却した。試料を冷却した後、7±1℃で保存した。
【0119】
複合基質中の揮発性物質の分析に関し高感度な方法であるスタティックヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HSGC)を用いて、14日目に試料のジアセチルを分析した。装置構成は、水素炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフにスタティックヘッドスペースサンプラーを連結したものとした。この目的のために、次に示す装置を使用した:
HS-オートサンプラー:HS40XI、TurboMatrix 110、Perkin Elmer
HS-ソフトウェア:HSControl v.2.00、Perkin Elmer
GC:Autosystem XL、Perkin Elmer
GC-ソフトウェア:Turbochrom navigator、Perkin Elmer
カラム:HP-FFAP 25m×0.20mm×0.33μm、Agilent Technologies
既知の濃度の標準物質を使用して感度係数を決定し(較正)、対照を使用して、使用した感度係数が一連の分析においてのみならず、異なる一連の分析間及び長時間(数ヵ月間)に亘り安定であるように調整した。試料及び対照中の揮発性物質の濃度(ppm)を、標準物質から求めた感度係数を用いて決定した。4NのH2SO4を200μlをヨーグルト試料1gに添加することにより試料を調製し、直ちにHSGCで測定した。
【0120】
ジアセチル産生に与える効果を図13に示すが、発酵時に7種の異なるラクトバチルス・ラムノーサス株を添加することにより、14日間保存した後の試料中に様々な量のジアセチルが存在していたことが分かる。観測された量は6.3ppm~20ppmの間で変化する。比較すると、CHCC15871のジアセチル産生量が最大であった。
【0121】
寄託及び専門家のソリューション
出願人は、下記の寄託された微生物の試料が、特許登録の日まで、専門家のみに利用可能であるべきことを要求する。
【0122】
ラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15871は、2017年10月17日付で、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、受託番号:DSM 32666で寄託された。
【0123】
ラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC15860は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、2015年07月16日付で、受託番号:DSM 32092で寄託された。
【0124】
ラクトバチルス・ラムノーサス株CHCC12697は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、2011年03月01日付で、受託番号:DSM 24616で寄託された。
【0125】
ペニシリウム・ソリタム株CHCC16948は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、2015年07月16日付で、受託番号:DSM 32093で寄託された。
【0126】
ペニシリウム・ブレビコンパクタム株CHCC16935は、ドイツ微生物細胞培養コレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH;DSMZ),Inhoffenstr.7B,D-38124 Braunschweigに、2015年07月16日付で、受託番号:DSM 32094で寄託された。
【0127】
寄託は、特許手続上の微生物寄託の国際的承認に関するブダペスト条約に従って行われた。
【0128】
参考文献
Jyoti,B.D.,Suresh,A.K.,and Venkatesh,K.V.(2003):Diacetyl production and growth of Lactobacillus rhamnosus on multiple substrates. World Journal of Microbiology & Biotechnology 19:509-514
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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