(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】水溶性ポリマーの接着性層
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20220401BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220401BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220401BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220401BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220401BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220401BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K47/44
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/10
A61K31/122
(21)【出願番号】P 2020527949
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2018082091
(87)【国際公開番号】W WO2019101798
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】102017127452.9
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300005035
【氏名又は名称】エルテーエス ローマン テラピー-ジステーメ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・リン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・バウアー
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-513906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/70
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々少なくとも1種の親水性ポリマーを含有する少なくとも2つの非接着性層、ならびに少なくとも1種の水溶性ポリマーおよび少なくとも1種の可塑剤を含有する少なくとも1つの水溶性接着性層を含む多層経口活性物質フィルム剤であり、少なくとも2つの非接着性層の少なくとも1つおよび/または少なくとも1つの水溶性接着性層は、薬学的に活性な物質を含有する多層経口活性物質フィルム剤であって、
該少なくとも2つの非接着性層および該少なくとも1つの水溶性接着性層は、該少なくとも1つの水溶性接着性層が両側で少なくとも1つの非接着性層により覆われるような様式で交互に重なることを特徴と
し、
少なくとも1つの水溶性接着性層中の少なくとも1種の水溶性ポリマーは、セラック、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルカプロラクタム/ポリ酢酸ビニル/ポリエチレングリコールコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドンを含み、
少なくとも1つの水溶性接着性層中の少なくとも1種の可塑剤は、グリセリン、ポリエチレングリコールおよび/またはクエン酸トリブチルを含み、
少なくとも1つの水溶性接着剤層における少なくとも1つの水溶性ポリマーと少なくとも1つの可塑剤との重量比は、約80~50対約20~50である、
前記フィルム剤。
【請求項2】
少なくとも1種の薬学的に活性な物質は、少なくとも2つの非接着性層の少なくとも1つに含有されることを特徴とする、請求項1に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項3】
少なくとも1種の薬学的に活性な物質は、少なくとも1つの水溶性接着性層に含有されることを特徴とする、請求項1に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項4】
少なくとも1種の薬学的に活性な物質はイデベノンであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項5】
少なくとも2つの非接着性層中の少なくとも1種の親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンもしくはそれらのコポリマーまた
はポリビニルカプロラクタム/ポリ酢酸ビニル/ポリエチレングリコールコポリマーまたはビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーまたはヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンもしくはデンプン誘導体、セラック、アルギン酸、ガラクトマンナン、カラギナンおよび他の天然ゴム、プルラン、キサンタン、ペクチンおよび他のグルカン、デキストラン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール、カルボキシビニルポリマーおよび/またはそれらのコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項6】
少なくとも2つの非接着性層は、各々、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンまたはそれらのコポリマー、ポリビニルカプロラクタム/ポリ酢酸ビニル/ポリエチレングリコールコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンまたはデンプン誘導体、セラック、アルギン酸、ガラクトマンナン、カラギナンおよび他の天然ゴム、プルラン、キサンタン、ペクチンおよび他のグルカン、デキストラン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール、カルボキシビニルポリマーおよび/またはそれらのコポリマーからなる群から選択される、異なる親水性ポリマーを含むことを特徴とする、請求項5に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項7】
少なくとも1つの水溶性接着性層中の少なくとも1種の可塑剤
は、ポリエチレングリコール20
0を含むことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか1項に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項8】
少なくとも2つの非接着性層の少なくとも1つの中および/または少なくとも1つの水溶性接着性層中の少なくとも1種の薬学的に活性な物質は、各場合に、当該層の合計重量に対して75wt%までの量で存在することを特徴とする、請求項1~
7のいずれか1項に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項9】
少なくとも1つの水溶性接着性層中における、少なくとも1種の水溶性ポリマーの少なくとも1種の可塑剤に対する重量比が、約8
0~60対約
20~40であることを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項10】
少なくとも2つの非接着性層が、各々、20~200g/m
2の面積密度を有することを特徴とする、請求項1~
9のいずれか1項に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項11】
少なくとも1つの水溶性接着性層が、20~200g/m
2の面積密度を有することを特徴とする、請求項1~
10のいずれか1項に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【請求項12】
(a) 少なくとも1種の親水性ポリマーを含有する第1の非接着性層を用意する工程、
(b) 少なくとも1種の親水性ポリマーを含有するさらなる非接着性層を用意する工程、
(c) 少なくとも1種の水溶性ポリマーおよび少なくとも1種の可塑剤を含有する水溶性接着性層を用意する工程、
(d) ラミネートを得るために、工程(c)からの接着性層を、工程(a)または(b)からの非接着性層の1つに適用する工程、および
(e) 工程(a)または(b)からのさらなる非接着性層を、工程(d)からのラミネートの水溶性接着性層に適用して、その結果、水溶性接着性層が両側から少なくとも1つの非接着性層により覆われる工程、
を含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の多層経口活性物質フィルム剤を製造する方法であって、
工程(a)、(b)および(c)で製造された層の少なくとも1つが少なくとも1種の薬学的に活性な物質をさらに含有する前記方法。
【請求項13】
医薬品として使用するための、請求項1~
11のいずれか1項に記載の多層経口活性物質フィルム剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層の経口活性物質フィルム剤、それらを製造する方法、および医薬品としてのそれら使用に関する。
【背景技術】
【0002】
経口活性物質フィルム剤は、薬学的に活性な物質を含有し、口腔中にまたは口腔粘膜に対して直接置かれて、そこで溶解される薄フィルム剤である。
【0003】
これらの経口活性物質薄フィルム剤は、単層または多層系として構築されることが可能である。活性物質は、フィルム剤中に溶解、乳化、または分散させることが可能である。
【0004】
多層経口活性物質フィルム剤は、先行技術で知られている。
【0005】
特許文献1には、活性物質含有層および活性物質含有層中で活性物質と非適合性の物質を含有する層を含む多層経口活性物質フィルム剤が開示されており、これらの2層は、これらの2層間に位置するもう1つの保護層により分離されている。
【0006】
特許文献2には、活性物質含有層が2つの水膨潤性ポリマー層により囲まれている、多層経口活性物質フィルム剤が開示されている。
【0007】
先行技術で知られている多層経口活性物質フィルム剤は、第1の層が最初に製造されて、これが乾燥されたら、第2の層が第1の層に適用される方法で一般的に製造される。第2の層が第1の層の上で乾燥されたら、場合により、次に第3の層が適用されることもある。そのような方法によって、多層活性物質フィルム剤が、実際に提供されることは可能であるが、すでに存在する層上へのさらなる層の積層によってのみ可能である。これは、繰り返されたコーティングが理由で、薬学的に活性な物質が熱的および化学的に非常に大きな負荷をかけられるという欠点を有する。それに加えて、すでに存在する層に対する層の適用により作られた結合は、不安定であることが多く、容易に劣化し得る。さらに、コーティングにおけるどのような欠陥も、特に欠陥の密集した領域は、それに続くコーティングを通じて伝播する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2011/134846A1
【文献】米国特許第2013/0017235A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目標は、先行技術の上記の不利点を克服することにある。特に、本発明の目的は、複数の層(これらは、同じまたは異なる組成の層でもあってもよい)が、ある1つの層で生じたいかなる欠陥も他の層に影響しないように付着する多層経口活性物質フィルム剤を提供することであり、これらの層の少なくとも1つが少なくとも1種の薬学的に活性な物質を含有し、強固な結合がこれらの層の間に作られ、少なくとも1種の薬学的に活性な物質は、熱的におよび/または化学的な負荷を繰り返してかけられることはない。多層経口活性物質フィルム剤は、口腔中に入れられたときに、好ましくは溶解するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上の目標は、各々少なくとも1種の親水性ポリマーを含有する少なくとも2つの非接着性層、ならびに少なくとも1種の水溶性ポリマーおよび少なくとも1種の可塑剤を含有する少なくとも1つの水溶性接着性層を含む、請求項1による多層経口活性物質フィルム剤により対処され、少なくとも2つの非接着性層および/または少なくとも1つの水溶性接着性層の少なくとも1つは、薬学的に活性な物質を含有し、ここで、少なくとも2つの非接着性層および少なくとも1つの水溶性接着性層は、少なくとも1つの水溶性接着性層が両側で少なくとも1つの非接着性層により覆われるような様式で交互に重なる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に、本発明者らは、少なくとも1種の水溶性ポリマーおよび少なくとも1種の可塑剤を含有する水溶性接着性層が、中間の水溶性接着性層として、2つのそれ自体粘着性ではないさらなる層と互いに堅く接着することができて、それ故、複数のコーティングなしで互いに重なる多層経口活性物質フィルム剤の構造を達成することが可能であることを発見した。
【0012】
それに加えて、本発明による多層経口活性物質フィルム剤は、各層を別々に製造することが可能であり、その結果、それは、必要であれば貯蔵することもできて、それ故、多数の経口活性物質フィルム剤を、このように、層の異なる組合せから容易に製造することができる利点を有する。
【0013】
さらに、1つの利点は、高い面積密度を有し、それ故、長い乾燥時間を有する活性物質フィルム剤の製造を回避することができるという事実にある。例えば、面積密度が150g/m2の活性物質フィルム剤は、各々面積密度が75g/m2の2つの層が中間の接着性層により互いに接着されている多層経口活性物質フィルム剤によって置き換えることができる。これは、面積密度が75g/m2の層の乾燥時間がはるかに短いので有利である。
【0014】
この関係で、接着性層は、接着性として、DINEN923:2016-03で規定されたように機能することができる層を意味すると理解される。非接着性層は、それ故、ここで前に規定されたように接着性として機能することはできない。
【0015】
水溶性ポリマーは、化学的に非常に異なる、天然または合成のポリマーを含み、その共通の特徴は水または水性媒体中へのそれらの溶解性である。このための前提条件は、これらのポリマーが水溶解度のために十分ないくつかの親水性基を有して、架橋されていないことである。親水性基は、非イオン性、アニオン性、カチオン性および/または双性イオン性であってもよい。
【0016】
親水性ポリマーは、極性基または荷電基を含有するポリマーである。これらの基は、非イオン性、アニオン性、カチオン性または双性イオン性であってもよい。親水性ポリマーは、一般的に水溶性であるが、水に貧溶性または不溶性であることもある。
【0017】
可塑剤は、好ましくは蒸気圧が低い液体または固体の中性の有機物質であり、それは、化学反応性でなく、好ましくは、それらの溶解および膨潤能に基づいて、ただし、情況によってはそのような能力もないが、高度にポリマー物質と物理的に相互作用してそれらと均一系を形成し得る。可塑剤は、それらを使用して製造される構造またはコーティングに、ある求められる物理的性質、例えば、より低い凝固点、増大した変形能力、増大した弾性、低下した硬度および可能性として増大した接着を付与する。それらはプラスチック添加剤に属する。
【0018】
本発明による多層経口活性物質フィルム剤では、2つの非接着性層の間に水溶性接着性層が常に存在するような様式で、非接着性層および1つまたはそれ以上の水溶性接着性層が交互に重なる。この場合に、非接着性層が最も外側の層を形成することができ、その結果、本発明による多層経口活性物質フィルム剤は、その外側が粘着性でない。原則として、任意の数の層を有する経口活性物質フィルム剤は、この構造によって提供されることが可能である。
【0019】
しかしながら、本発明による多層経口活性物質フィルム剤は、好ましくは、合計3層:2つの非接着性層と中間の水溶性接着性層を含む。
【0020】
最も外側の非接着性層の1つがポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリエステル、エチルセルロース等のような水不溶性セルロースから形成されるフィルムのようなプラスチックフィルムにより置き換えられた、本発明による多層経口活性物質フィルム剤の実施形態も考えられる。
【0021】
原則として、薬学的に活性な物質は、本発明による多層経口活性物質フィルム剤中で、本発明による多層経口活性物質フィルム剤の層の各々の中に含有されることが可能である。この場合に、特定の活性物質と特定の層が含む材料との適合性が考慮に入れられなければならない。しかしながら、多層系中における活性物質の移動を排除することはできないので、活性物質と他の層が含む材料との適合性も、考慮に入れられなければならない。
【0022】
本発明による多層経口活性物質は、1種の薬学的に活性な物質のみが含有されることに限定されない。異なる薬学的に活性な物質が異なる層に含有された多層経口活性物質フィルム剤が考えられる。個々の層が、2種以上の薬学的に活性な物質も含有することもできる。
【0023】
本発明は、異なる層に異なる活性物質を含有する多層経口活性物質フィルム剤に関して特に有利である。本発明により、これらの異なる層は、全て別々に製造され、次に規格ユニットで組み立てられたデザインに従って中間の接着性層により任意の組合せで互いに接着されることが可能である。少なくとも1つの水溶性接着性層が、すなわち複数の水溶性接着性層も、薬学的に活性な物質を含有することができるので、可能な組合せの数は、さらに増大し得る。したがって、複合した多層経口活性物質フィルム剤も容易に利用できる。
【0024】
少なくとも2つの非接着性層の少なくとも1つに少なくとも1種の薬学的に活性な物質を含有する多層経口活性物質フィルム剤が好ましい。
【0025】
それに加えて、少なくとも1つの水溶性接着性層中に少なくとも1種の薬学的に活性な物質を含有する多層経口活性物質フィルム剤はさらに好ましい。
【0026】
しかしながら、少なくとも1種の薬学的に活性な物質は、1つまたはそれ以上の任意の他の層におよび層の任意の組合せで提供されることも可能である。
【0027】
一般的に、経粘膜または経口投与に適当な各薬学的に活性な物質は、本発明による多層経口活性物質フィルム剤に含有されることが可能である。
【0028】
少なくとも1種の薬学的に活性な物質は、好ましくはイデベノンである。
【0029】
本発明による多層経口活性物質フィルム剤は、少なくとも2つの非接着性層中の少なくとも1種の親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンもしくはそれらのコポリマーまたはポリビニルカプロラクタム/ポリ酢酸ビニル/ポリエチレングリコールコポリマー(Soluplus)またはビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(Kollidon VA64)またはヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンまたはデンプン誘導体、セラック、アルギン酸、ガラクトマンナン、カラギナンおよび他の天然ゴム、プルラン、キサンタン、ペクチンおよび他のグルカン、デキストラン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール、カルボキシビニルポリマーおよび/またはそれらのコポリマーを含むことを特徴とする。
【0030】
特に好ましい実施形態では、少なくとも1種の親水性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよび/もしくはそれらのコポリマー、セラック、またはポリビニルカプロラクタム/ポリ酢酸ビニル/ポリエチレングリコールコポリマーまたはビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーまたは、ヒドロキシプロピルセルロースのようなセルロース誘導体を含む。
【0031】
特に好ましい実施形態では、本発明による経口用の薄いフィルムは、少なくとも2つの非接着性層が、各々、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンまたはそれらのコポリマー、ポリビニルカプロラクタム/ポリ酢酸ビニル/ポリエチレングリコールコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンまたはデンプン誘導体、セラック、アルギン酸、ガラクトマンナン、カラギナンおよび他の天然ゴム、プルラン、キサンタン、ペクチンおよび他のグルカン、デキストラン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール、カルボキシビニルポリマーおよび/またはそれらのコポリマーからなる群から選択される異なる親水性ポリマーを含むことを好ましくは特徴とする。
【0032】
これらの親水性ポリマーは、それらが、大多数の薬学的に活性な物質と適合性であり、それに加えて、処置が本発明による多層経口活性物質フィルム剤を含む患者にとって大いに安全であるという利点を有する。
【0033】
それに加えて、これらの親水性ポリマーは、乾燥されたときに、それらが粘膜に適用されたときに、または口腔中に入れられたときに溶解して、その結果、活性物質を放出する、薄い安定なフィルムを形成するという利点を有する。これは、活性物質の迅速な利用および活性物質の残渣のない投与という利点を有する。
【0034】
少なくとも2つの非接着性層中の少なくとも1種の親水性ポリマーは、各場合に同じ親水性ポリマーであってもよく、または異なる親水性ポリマーが各層に存在していてもよい。
【0035】
それに加えて、本発明による多層経口活性物質フィルム剤は、少なくとも1つの水溶性接着性層中の少なくとも1種の水溶性ポリマーが、セラック、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルカプロラクタム/ポリ酢酸ビニル/ポリエチレングリコールコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドンを含むことを好ましくは特徴とする。
【0036】
多層経口活性物質フィルム剤は、少なくとも1つの水溶性接着性層中の少なくとも1種の可塑剤が、グリセリン、ポリエチレングリコール、特にポリエチレングリコール200、ソルビトールおよび/またはクエン酸トリブチルを含むことを好ましくは特徴とする。
【0037】
少なくとも1つの水溶性接着性層中の少なくとも1種の可塑剤は、特に好ましくは、グリセリン、ポリエチレングリコール200および/またはクエン酸トリブチルを含む。
【0038】
好ましくは、少なくとも1種の水溶性ポリマーおよび少なくとも1種の可塑剤の混合物の形態における使用に基づいて、粘着性の混合物が作られて、それは、好ましくは乾燥後に、本発明による多層経口活性物質フィルム剤中における接着性層として使用することができる。
【0039】
少なくとも1つの水溶性接着性層中における、少なくとも1種の水溶性ポリマーの少なくとも1種の可塑剤に対する重量比は、好ましくは約85~50対約15~50、好ましくは85~65対約15~35、さらにより好ましくは約80~60対約20~40、さらにより好ましくは約80~50対約20~50、さらにより好ましくは約82~68対約18~32、および最も好ましくは約80~70対約20~30である。
【0040】
少なくとも1つの水溶性接着性層中における、少なくとも1種の水溶性ポリマーの少なくとも1種の可塑剤に対する重量比は、特に好ましくは約 である。
【0041】
少なすぎるまたは多すぎる可塑剤が使用されると、その結果、混合物は、粘着性でないか、または役に立つ材料混合物を提供することが全く不可能であるかのいずれかである。
【0042】
少なくとも1種の薬学的に活性な物質は、本発明による多層経口活性物質フィルム剤の層の少なくとも1つの中に、原則として少なくとも薬学的有効量で含有される。
【0043】
少なくとも1種の薬学的に活性な物質は、少なくとも2つの非接着性層の少なくとも1つの中でおよび/または少なくとも1つの水溶性接着性層中で、好ましくは提供される。薬学的に活性な物質が、各場合に当該層の合計重量に対して75wt%までの量で、好ましくは0.01~75wt%の量で存在するならば、それが特に好ましい。
【0044】
本発明による多層経口活性物質フィルム剤は、少なくとも2つの非接着性層が各々、20~200g/m2の面積密度を有することも特徴とする。面積密度がこれより高ければ、これは特に長い乾燥時間という不利点を有し、それは経済的に不利である。面積密度が上記より低いフィルムは、加工処理が容易でなく、それ故好ましくない。
【0045】
それに加えて、透過向上剤、抗酸化剤、香味剤、矯味物質、保存剤、着色剤、不活性充填剤、その他のような従来の添加剤は、本発明による多層経口活性物質フィルム剤の種々の層中に含有されることが可能である。
【0046】
本発明は、以下の工程
(a) 少なくとも1種の親水性ポリマーを含有する第1の非接着性層を用意する工程、
(b) 少なくとも1種の親水性ポリマーを含有するさらなる非接着性層を用意する工程、
(c) 少なくとも1種の水溶性ポリマーおよび少なくとも1種の可塑剤を含有する水溶性接着性層を用意する工程、
(d) ラミネートを得るために、工程(c)からの接着性層を、工程(a)または(b)からの非接着性層の1つに適用する工程、
および
(e) 工程(a)または(b)からのさらなる非接着性層を、工程(d)からのラミネートの水溶性接着性層に適用して、その結果、水溶性接着性層が、両側から少なくとも1つの非接着性層により覆われる工程を含む、上で規定された多層経口活性物質フィルム剤を製造するための方法であって、、工程(a)、(b)および(c)で製造された層の少なくとも1つが、少なくとも1種の薬学的に活性な物質をさらに含有する方法にも関する。
【0047】
層a)およびb)は、異なる組成の層であってもよい。しかしながら、層a)およびb)は、同じ組成の層であってもよい。層a)およびb)は、同じ出発層から得られ、次に上記の方法によって接着されて一緒になった層であることもある。
【0048】
多層経口活性物質フィルム剤が合計で3層を超えて含む場合、接着性層および非接着性層の交互の適用が、所望の数の層が得られるまで、そのように続けられて各場合に、2つの非接着性層が、多層経口活性物質フィルム剤の最外層を形成する。
【0049】
それに加えて、本発明は、上に記載された方法によって得ることが可能な多層経口活性物質フィルム剤に関する。
【0050】
本発明は、上に記載された、または上記の方法によって得ることが可能な、医薬品として使用するための多層経口活性物質フィルム剤にも関する。
【0051】
この後で、本発明を、限定するものではない実施例に基づいて説明することにする。
【実施例1】
【0052】
表1で特定された水溶性ポリマーおよび可塑剤の混合物を、それらの粘着性に関して、指で圧することにより触覚に基づいて試験した。
【0053】
【実施例2】
【0054】
25%のイデベノン(微細化された)および75%のポリビニルアルコール(PVA4-88)からなり、面積密度が150g/m2の活性物質含有層の製造は、単層の活性物質フィルム剤の場合に、水を溶媒としての使用(PVAが原因で)および45℃の乾燥温度(イデベノンの低融点が原因で)が理由で商業的に実現性がない乾燥時間になったであろう。
【0055】
この問題は、本発明による多層経口活性物質フィルム剤により対処することができる。活性物質含有層を、各々75g/m2の2層で、または上側および下側として使用するために分けられた1層で製造して、それにより乾燥時間を許容されるレベルに低下させることができた。
【0056】
80%のコリドンVA64および20%のPEG200で形成される水溶性接着性層を、別々に製造した。この層を活性物質含有層に適用した。次に、この接着性層をさらなる活性物質含有層で覆った。
【0057】
この結果、所望の150g/m2の活性物質含有層(2×75g/m2として)を含有する全体にわたるラミネートが生じた。接着性層は、この場合、60g/m2の面積密度を有した。
【0058】