(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】マイクロメートルレベルの単結晶薄膜
(51)【国際特許分類】
C30B 29/30 20060101AFI20220401BHJP
C30B 29/18 20060101ALI20220401BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
C30B29/30 A
C30B29/30 B
C30B29/18
H01L21/02 B
(21)【出願番号】P 2020541840
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2018099157
(87)【国際公開番号】W WO2020029069
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-04-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520128510
【氏名又は名称】ジーナン ジンジョン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シウチュエン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,ホウビン
(72)【発明者】
【氏名】フー,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】リュオ,ジュティン
(72)【発明者】
【氏名】フー,フェイ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヤンヤン
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-188550(JP,A)
【文献】特開2017-139720(JP,A)
【文献】特開2018-117030(JP,A)
【文献】特開2018-061226(JP,A)
【文献】特開2013-157401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00 -35/00
H01L21/02
H03H 3/08 - 3/10
H03H 9/145
H03H 9/25
H03H 9/42 - 9/44
H03H 9/64
H03H 9/68
H03H 9/72
H03H 9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶薄膜であって、
基板層と、
基板層上に配置される単結晶薄膜層とを含み、
前記基板層と前記単結晶薄膜層との間には遷移層を含み、
前記遷移層はH及び、Arと、Oと、Nの中の少なくとも1種の元素を含み、
前記遷移層におけるHの濃度は1×10
20原子/cc~1×10
22原子/ccであり、
ただし、Hの濃度は前記遷移層に最大値を有し、且つ、Hの濃度が濃度最大値の位置から前記単結晶薄膜層に行く方向と前記基板層に行く方向にそれぞれ漸次低減し、
前記遷移層は前記基板層に隣接して設けられる第1の遷移層と、前記単結晶薄膜層に隣接して設けられる第2の遷移層とを含み、
前記基板層と前記第1の遷移層との間、前記第1の遷移層と前記第2の遷移層との間、及び前記第2の遷移層と前記単結晶薄膜層との間にいずれも平坦な境界線を有
し、
前記単結晶薄膜層の厚さは5μm~50μmである、単結晶薄膜。
【請求項2】
前記第1の遷移層及び前記第2の遷移層の厚さはいずれも0.5nm~10nmである、請求項
1に記載の単結晶薄膜。
【請求項3】
前記基板層の厚さは0.1mm~1mmである、請求項1
又は2に記載の単結晶薄膜。
【請求項4】
前記単結晶薄膜層はニオブ酸リチウム単結晶薄膜、タンタル酸リチウム単結晶薄膜又は石英単結晶薄膜であり、
前記基板層はシリコン基板、ニオブ酸リチウム基板、タンタル酸リチウム基板、石英基板、炭化ケイ素基板又はサファイア基板である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の単結晶薄膜。
【請求項5】
前記単結晶薄膜層と前記基板層の材料は同一である又は互いに異なる、請求項1~
4の
いずれか一項に記載の単結晶薄膜。
【請求項6】
前記第1の遷移層から前記第2の遷移層まで、前記基板層の元素の含有量は漸次低減し、前記単結晶薄膜層の元素の含有量は漸次上昇する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の単結晶薄膜。
【請求項7】
前記単結晶薄膜層の表面はつや出し面、又はマイクロメートルレベルもしくはサブマイクロメートルレベルの表面粗さを有する粗面である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の単結晶薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメートルレベルの単結晶薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン材料を基板として製造されたタンタル酸リチウム/ニオブ酸リチウム単結晶薄膜は、フィルター、光導波路変調器、光導波路スイッチ、空間光変調器、光学的周波数逓倍器、表面弾性波発生器、赤外線検出器、強誘電体メモリ等の製造に利用されて、大きな経済的利益と社会的利益を生み出すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は音波の損失及びフィルターの挿入損失を低減できる、マイクロメートル単結晶薄膜層を含むマイクロメートルレベルの単結晶薄膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の例示的な実施例において、前記マイクロメートルレベルの単結晶薄膜は、基板層と、基板層上に配置されるマイクロメートル単結晶薄膜層とを含み、基板層とマイクロメートル単結晶薄膜層との間には遷移層を含んでもよく、前記遷移層は基板層に隣接して設けられる第1の遷移層と、マイクロメートル単結晶薄膜層に隣接して設けられる第2の遷移層とを含んでもよく、ただし、遷移層はH及び、基板層とマイクロメートル単結晶薄膜層に対してプラズマ結合を行う時に使用される少なくとも1種のプラズマガスの元素を含んでもよい。
【0005】
本発明の例示的な実施例において、プラズマガスはAr、O2、N2の中の少なくとも1種であってもよい。
【0006】
本発明の例示的な実施例において、マイクロメートル単結晶薄膜層の厚さは5μm~50μmであってもよい。
【0007】
本発明の例示的な実施例において、遷移層におけるHの濃度は1×1020原子/cc~1×1022原子/ccであってもよく、Hの濃度は遷移層にて最大値を有してもよく、且つ、Hの濃度が濃度最大値の位置からマイクロメートル単結晶薄膜層に行く方向と基板層に行く方向にそれぞれ漸次低減してもよい。
【0008】
本発明の例示的な実施例において、第1の遷移層と第2の遷移層の厚さはいずれも0.5nm~10nmであってもよい。
【0009】
本発明の例示的な実施例において、基板層の厚さは0.1mm~1mmであってもよい。
【0010】
本発明の例示的な実施例において、マイクロメートル単結晶薄膜層はニオブ酸リチウム単結晶薄膜、タンタル酸リチウム単結晶薄膜又は石英単結晶薄膜であってもよい。
【0011】
本発明の例示的な実施例において、基板層はシリコン基板、ニオブ酸リチウム基板、タンタル酸リチウム基板、石英基板、炭化ケイ素基板又はサファイア基板であってもよい。
【0012】
本発明の例示的な実施例において、マイクロメートル単結晶薄膜層と基板層の材料は同
一であってもよく、互いに異なってもよい。
【0013】
本発明の例示的な実施例において、第1の遷移層から第2の遷移層まで、基板層の元素の含有量は漸次低減してもよく、マイクロメートル単結晶薄膜層の元素の含有量は漸次上昇してもよい。
【0014】
本発明の例示的な実施例において、マイクロメートル単結晶薄膜層の表面はつや出し表面、又はマイクロメートルレベル或いはサブマイクロメートルレベルの表面粗さを有する粗面であってもよい。
【0015】
次に、図面を参照して実施例を説明する。本発明に係る上記の構成及びその他の内容は明瞭かつ理解しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の構造を概略的に示す図である。
【
図2】本発明の実施例1のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図4】
図2に示すマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の二次イオン質量分析(SIMS)の結果図である。
【
図5】本発明の実施例3のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図7】
図5に示すマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の二次イオン質量分析(SIMS)の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施例をより具体的に説明する。図面に本発明の実施例を示している。ただし、本発明は、以下に記載の実施例に限定されず、他にも様々な形態で実施することができる。これらの実施例を示すことで本発明は完全に理解され、且つ当業者が本発明の実施例の発想を十分に把握することができる。次の詳細の説明において、例を挙げる方式で多くの具体的な詳細を示すことで、その対象内容を十分に理解させる。一方、当業者はこれらの詳細がなくても本発明を実施できることが理解できる。そのため、従来の方法のステップ、要素を説明する際は本発明に係る多くの事項が不明瞭になることを避けるため、その詳細ではなく全体的に説明する。図面で同じ符号が同一の要素を示すため、重複する説明は省略される。図面の部分で、記載が明瞭になるように、各層又は領域のサイズ、その相対的なサイズを実際より誇張して記載する場合がある。
【0018】
次に、図面を参照して本発明を十分に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施例のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の構造を概略的に示す図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施例のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜は、基板層110と、基板層110上に配置されるマイクロメートル単結晶薄膜層120とを含んでもよい。ただし、基板層110とマイクロメートル単結晶薄膜層120との間には遷移層115を含んでもよく、遷移層115は基板層110に隣接して設けられる第1の遷移層115aと、マイクロメートル単結晶薄膜層120に隣接して設けられる第2の遷移層115bとを含む。
【0021】
本発明の実施例において、マイクロメートルレベルの単結晶薄膜は、直径が2インチ~12インチのウェハーとして製造することができる。
【0022】
本発明の実施例において、マイクロメートルレベルの単結晶薄膜の基板層110は主に支持物の役割を果たす。本発明の実施例において、基板層110はシリコン基板、ニオブ酸リチウム基板、タンタル酸リチウム基板、石英基板、炭化ケイ素基板又はサファイア基板であってもよいが、本発明はこれらに限定されず、その他の適切な材料で製造することができる。さらに、本発明の実施例の基板層110の厚さは0.1mm~1mmであってもよい。好ましくは、基板層110の厚さは0.1mm~0.2mm、0.3mm~0.5mm又は0.2mm~0.5mmであってもよい。
【0023】
本発明の実施例において、マイクロメートルレベルの単結晶薄膜のマイクロメートル単結晶薄膜層120はニオブ酸リチウム単結晶薄膜、タンタル酸リチウム単結晶薄膜又は石英単結晶薄膜であってもよいが、本発明はこれらに限定されない。本発明の実施例のマイクロメートル単結晶薄膜層120、基板層110の材料は同一であってもよいし互いに異なってもよい。さらに、本発明の実施例でマイクロメートル単結晶薄膜層120の厚さは5μm~50μmであってもよい。好ましくは、マイクロメートル単結晶薄膜層120の厚さは5μm~15μm、20μm~30μm又は35μm~50μmであってもよい。さらに、マイクロメートル単結晶薄膜層120の基板層110に対向する面はつや出し(polishing)されている表面、又はマイクロメートルレベルもしくはサブマイクロメートルレベルの表面粗さを有する粗面であってもよいが、本発明はこれらに限定されない。
【0024】
本発明の実施例において、基板層110とマイクロメートル単結晶薄膜層120はプラズマ結合の方法で結合されてもよいが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
本発明の実施例において、マイクロメートルレベルの単結晶薄膜の基板層110とマイクロメートル単結晶薄膜層120との間には遷移層115を含んでもよく、遷移層115は基板層110に隣接して設けられる第1の遷移層115aと、マイクロメートル単結晶薄膜層120に隣接して設けられる第2の遷移層115bとを含んでもよい。
【0026】
本発明の実施例において、第1の遷移層115a、第2の遷移層115bの厚さはいずれも0.5nm~10nmであってもよい。好ましくは、第1の遷移層115a、第2の遷移層115bの厚さはいずれも0.5nm~5nm、5.5nm~7nm又は7.5nm~10nmであってもよい。
【0027】
本発明の実施例において、第1の遷移層115aと第2の遷移層115bは基板層110及びマイクロメートル単結晶薄膜層120の中の固有の元素を含んでもよい。第1の遷移層115aから第2の遷移層115bまで、基板層110の元素の含有量は漸次低減し、マイクロメートル単結晶薄膜層120の元素の含有量は漸次上昇する。
【0028】
また、本発明の実施例において、遷移層115はHと、基板層及びマイクロメートル単結晶薄膜層にプラズマ処理を行う時に使用される少なくとも1種のプラズマガスの元素をさらに含んでもよい。本発明の実施例のプラズマガスはAr、O2、N2の中の少なくとも1種を含んでもよいが、本発明はこれらに限定されない。プラズマ処理する時に使用されるガスの元素は基板層110とマイクロメートル単結晶薄膜層120に対してプラズマ結合を行う時に使用されるプラズマに由来する。第1の遷移層115aと第2の遷移層115bがH元素を有するのは以下の原因が考えられる。プラズマを利用して基板層110及びマイクロメートル単結晶薄膜層120の表面を処理する時、プラズマがその表面に衝
撃すると表面の状態を変え、前記表面に大量の活性化学結合を形成させることで、表面が高い活性を有する。そのため、プラズマ処理後、空気に暴露されるか又は水で洗浄されると、大量の水分子又は水酸基を吸着し、これらの水分子又は水酸基が結合力を増大させることができ、そのため基板層110とマイクロメートル単結晶薄膜層120が結合すると、それらの結合界面に一定濃度のH元素を有する。
【0029】
本発明の実施例において、遷移層115におけるHの濃度は1×1020原子/cc~1×1022原子/ccであってもよい。さらに、Hの濃度は遷移層115で最大値を有してもよく、且つ、Hの濃度が濃度最大値の位置からマイクロメートル単結晶薄膜層120に行く方向と、基板層110に行く方向にそれぞれ漸次低減してもよい。
【0030】
本発明の実施例のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜で第1の遷移層115a及び第2の遷移層115bは基板層110とマイクロメートル単結晶薄膜層120との間の応力を分散することができ、応力の分散によりマイクロメートル単結晶薄膜層120の欠陥が減少し、マイクロメートル単結晶薄膜層120の品質が向上するため、伝送損失を低減する効果がある。さらに、基板層110と第1の遷移層115aとの間、第1の遷移層115aと第2の遷移層115bとの間、第2の遷移層115bとマイクロメートル単結晶薄膜層120との間にいずれも平坦な境界線を有し、このような構造は音波の損失を低減し、フィルターの挿入損失を低減することができる。
【0031】
本発明の実施例のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜において、遷移層はHと、少なくとも1種のプラズマガスの元素を含み、基板層110とマイクロメートル単結晶薄膜層120との間の結合力を増大させることができる。Hの濃度が1×1020原子/cc~1×1022原子/ccである場合、結合力が最大である。
【0032】
次に、例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの例は本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0033】
マイクロメートルレベルの単結晶薄膜の製造
実施例1:表面がつや出しされているマイクロメートルレベルのタンタル酸リチウム単結晶薄膜
サイズが4インチで、厚さが0.5mmであり、少なくとも片面がつや出しされているタンタル酸リチウム単結晶ウェハー(Wafer)、サイズが4インチで、厚さが0.5mmであり、少なくとも片面がつや出しされている単結晶シリコン基板ウェハーを使用する。
タンタル酸リチウム単結晶ウェハー及びシリコン単結晶ウェハーを洗浄する。
洗浄されたタンタル酸リチウム単結晶ウェハー及びシリコン単結晶ウェハーをArプラズマで処理し、次に、プラズマ処理されたタンタル酸リチウム単結晶ウェハーとシリコン単結晶ウェハーを室温で直接結合させて、タンタル酸リチウム単結晶ウェハーとシリコン単結晶ウェハーの結合体を得る。
130℃の温度で上記の結合体を加熱し、結合体の結合力を高める。
上記のように得た結合体のタンタル酸リチウム単結晶ウェハーを22μmの厚さに研磨し、次にタンタル酸リチウム単結晶ウェハーの研磨面を20μmの厚さにつや出し(polishing)する。
最後に、240℃で上記の結合体を加熱し、結合体の結合力を高めると、表面がつや出し面であるマイクロメートルレベルの厚さのタンタル酸リチウム単結晶薄膜を得る。
【0034】
実施例2:サブマイクロメートルレベルの表面粗さを有するマイクロメートルレベルのタンタル酸リチウム単結晶薄膜
サイズが4インチで、厚さが0.5mmであり、少なくとも片面がつや出しされている
タンタル酸リチウム単結晶ウェハー、サイズが4インチで、厚さが0.5mmであり、少なくとも片面がつや出しされているシリコン単結晶ウェハーを使用する。
タンタル酸リチウム単結晶ウェハー及びシリコン単結晶ウェハーを洗浄する。
洗浄されたタンタル酸リチウム単結晶ウェハー及びシリコン単結晶ウェハーをOプラズマで処理し、次に、プラズマ処理されたタンタル酸リチウム単結晶ウェハーとシリコン単結晶ウェハーを室温で直接結合させて、タンタル酸リチウム単結晶ウェハーとシリコン単結晶ウェハーの結合体を得る。
120℃の温度で上記の結合体を加熱し、結合体の結合力を高める。
上記の結合体のタンタル酸リチウム単結晶ウェハーを20μmの厚さに研磨する。
最後に、250℃で上記の結合体を加熱し、結合体の結合力を高めると、サブマイクロメートルレベルの表面粗さを有するマイクロメートルレベルの厚さのタンタル酸リチウム単結晶薄膜を得る。
【0035】
実施例3:表面がつや出しされているマイクロメートルレベルのニオブ酸リチウム単結晶薄膜
サイズが4インチで、厚さが0.5mmであり、少なくとも片面がつや出しされているニオブ酸リチウム単結晶ウェハー、サイズが4インチで、厚さが0.5mmであり、少なくとも片面がつや出しされているシリコン単結晶ウェハーを使用する。
ニオブ酸リチウム単結晶ウェハー及びシリコン単結晶ウェハーを洗浄する。
洗浄されたニオブ酸リチウム単結晶ウェハー及びシリコン単結晶ウェハーをArプラズマとOプラズマで処理し、次に、プラズマ処理されたニオブ酸リチウム単結晶ウェハーとシリコン単結晶ウェハーを室温で直接結合させて、ニオブ酸リチウム単結晶ウェハーとシリコン単結晶ウェハーの結合体を得る。
140℃の温度で上記の結合体を加熱し、結合体の結合力を高める。
上記の結合体のニオブ酸リチウム単結晶ウェハーを22μmの厚さに研磨し、次に、ニオブ酸リチウム単結晶ウェハーの研磨面を20μmの厚さにつや出しする。
最後に、220℃で上記の結合体を加熱し、結合体の結合力を高めると、表面がつや出し面であるマイクロメートルレベルの厚さのニオブ酸リチウム単結晶薄膜を得る。
【0036】
実施例4:表面がつや出しされているマイクロメートルレベルの石英単結晶薄膜
サイズが4インチで、厚さが0.5mmであり、少なくとも片面がつや出しされている石英単結晶ウェハー、サイズが4インチで、厚さが0.5mmであり、少なくとも片面がつや出しされているシリコン単結晶ウェハーを使用する。
石英単結晶ウェハー及びシリコン単結晶ウェハーを洗浄する。
洗浄された石英単結晶ウェハー及びシリコン単結晶ウェハーをArプラズマとNプラズマで処理し、次に、プラズマ処理された石英単結晶ウェハーとシリコン単結晶ウェハーを室温で直接結合させて、石英単結晶ウェハーとシリコン単結晶ウェハーの結合体を得る。
100℃の温度で上記の結合体を加熱し、結合体の結合力を高める。
上記の結合体の石英単結晶ウェハーを22μmの厚さに研磨し、次に、石英単結晶ウェハーの研磨面を20μmの厚さにつや出しする。
最後に、250℃で上記の結合体を加熱し、結合体の結合力を高めると、表面がつや出し面であるマイクロメートルレベルの厚さの石英単結晶薄膜を得る。
【0037】
図2は、本発明の実施例1のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【0038】
図2に示すように、本発明の実施例1のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の基板層110はシリコン基板であり、マイクロメートル単結晶薄膜層120はマイクロメートルタンタル酸リチウム単結晶薄膜であり、且つ、表面はつや出し面である。
図2から分かるように、本発明の実施例1のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜は明瞭な4層の構造を
有し、且つ、基板層110とマイクロメートル単結晶薄膜層120との間に配置される第1の遷移層115aと、第2の遷移層115bとを含み、且つ、第1の遷移層115aは基板層110に隣接して設けられ、第2の遷移層115bはマイクロメートル単結晶薄膜層120に隣接して設けられる。本発明の実施例のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜で各層の構造の間にいずれも明瞭な境界線を有し、しかも境界線が平坦である。
【0039】
図3は、
図2に示す遷移層の元素分布図である。
図3から分かるように、マイクロメートル単結晶薄膜層120からシリコン基板層110に行く方向に、マイクロメートル単結晶薄膜層120におけるTa及びOの含有量はいずれも漸次低減し、シリコン基板層110におけるSiの含有量は漸次上昇する。さらに、第1の遷移層115a及び第2の遷移層115bは少量のAr元素を含み、Ar元素は結合する時に基板層110及びマイクロメートル単結晶薄膜層120の処理時に使用されるプラズマに由来する。
【0040】
図4は、
図2に示すマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の二次イオン質量分析(SIMS)の結果図である。
図4から分かるように、第1の遷移層115a及び第2の遷移層115bは比較的高い濃度のHを含み、Hの濃度が1×10
20原子/cc~1×10
22原子/ccである。さらに。Hの濃度は第1の遷移層115a又は第2の遷移層115bで最大濃度値を有してもよく、且つ、Hの濃度が濃度最大値の位置からマイクロメートル単結晶薄膜層120に行く方向と基板層110に行く方向にそれぞれ漸次低減してもよい。
【0041】
図5は、本発明の実施例3のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
図6は、
図5に示す遷移層の元素分布図である。
図7は、
図5に示すマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の二次イオン質量分析(SIMS)の結果図である。
【0042】
マイクロメートル単結晶薄膜層220がマイクロメートルニオブ酸リチウム単結晶薄膜である点以外、
図5~
図7に係るマイクロメートルレベルの単結晶薄膜は
図2~
図4に係るマイクロメートルレベルの単結晶薄膜と基本的に同じであるため、以下、主に両者の相違点について説明する。
【0043】
図5に示すように、本発明の実施例3のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜は明らかな4層の構造を有し、マイクロメートル単結晶薄膜層220の表面がつや出し面である。実施例3のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜は基板層210とマイクロメートル単結晶薄膜層220との間に配置される第1の遷移層215aと第2の遷移層215bとを含み、且つ、第1の遷移層215aは基板層210に隣接して設けられ、第2の遷移層215bはマイクロメートル単結晶薄膜層220に隣接して設けられる。本発明の実施例のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜において各層の構造の間にいずれも明らかな境界線を有し、しかも境界線が平坦である。
【0044】
図6に示すように、マイクロメートル単結晶薄膜層220からシリコン基板層210に行く方向に、マイクロメートル単結晶薄膜層220におけるNb及びOの含有量はいずれも漸次低減し、シリコン基板層210におけるSiの含有量は漸次上昇する。さらに、第1の遷移層215a及び第2の遷移層215bは少量のAr元素を含み、Ar元素は結合する時にマイクロメートル単結晶薄膜層220の処理時に使用されるプラズマに由来する。
【0045】
図7に示すように、第1の遷移層215a及び第2の遷移層215bは比較的高い濃度のHを含み、Hの濃度は1×10
20原子/cc~1×10
22原子/ccである。さらに、Hの濃度は第1の遷移層215a又は第2の遷移層215bで最大濃度値を有しても
よく、且つ、Hの濃度が濃度最大値の位置からマイクロメートル単結晶薄膜層220に行く方向と基板層210に行く方向にそれぞれ漸次低減してもよい。
【0046】
本発明はマイクロメートル単結晶薄膜層を含むマイクロメートルレベルの単結晶薄膜を提供する。当該マイクロメートルレベルの単結晶薄膜の基板層とマイクロメートル単結晶薄膜層との間に表面が比較的平坦な2層の遷移層を有するため、音波の損失を低減して、フィルターの挿入損失を低減させることができる。さらに、本発明の実施例のマイクロメートルレベルの単結晶薄膜の遷移層はHと、少なくとも1種のプラズマガスの元素を含み、基板層とマイクロメートル単結晶薄膜層との間の結合力を増大させることができる。
【0047】
本明細書で例示的な実施例を用いて本発明を具体的に説明しているが、当業者にとって自明なように、特許請求の範囲及びその均等物によって限定される本発明の主旨と範囲から逸脱しなければ、実施形態と発明の詳細な事項に様々な変更をすることができる。上記の実施例は説明目的のものであり本発明を限定するためのものではない。よって、本発明の範囲は本発明の具体的な実施形態により限定されるのではなく、特許請求の範囲で限定される。当該範囲に該当する差異を含む内容も、そのすべてが本発明に含まれるように解釈される。