(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】マッサージシステム
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20220401BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20220401BHJP
【FI】
A61H7/00 323G
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2021103855
(22)【出願日】2021-06-23
(62)【分割の表示】P 2017039780の分割
【原出願日】2017-03-02
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000136491
【氏名又は名称】株式会社フジ医療器
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 雅亮
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0148899(KR,A)
【文献】特開2001-175883(JP,A)
【文献】特開平11-183120(JP,A)
【文献】特開2016-110489(JP,A)
【文献】特開2000-193910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と前記座部に傾斜可能に取り付けられた背もたれ部を備え、被施療者にマッサージを行うマッサージ機と、
ヘッドトラッキング機能およびポジショントラッキング機能を備え、前記マッサージ機によってマッサージが行われているときに映像が表示される頭部装着型表示装置と、
前記マッサージ機および前記表示装置を制御するための制御部とを含み、
前記制御部は、
前記頭部装着型表示装置が
前記被施療者に装着されたときに、前記頭部装着型表示装置に前記被施療者を正面に向かせるためのメッセージを表示し、
前記メッセージを表示してから所定時間経過後に、前記頭部装着型表示装置の方向および位置を、それぞれヘッドトラッキングの基準方向およびポジショントラッキングの基準位置として設定するとともに、前記背もたれ部の前記座部に対する傾斜角を検出して第1傾斜角として記憶し、
前記映像の再生が開始される前に、前記背もたれ部の前記座部に対する傾斜角を検出して、第2傾斜角として記憶し、
前記第2傾斜角が前記第1傾斜角と異なっている場合には、前記第2傾斜角と前記第1傾斜角との差に基づいて、前記基準方向および前記基準位置を、現在の前記被施療者の体勢に応じた値となるように補正する、マッサージシステム。
【請求項2】
前記表示装置は、前記映像を3次元表示するものである、請求項1に記載のマッサージシステム。
【請求項3】
前記マッサージ機は、空気の給排気により膨張収縮する1または複数のエアバックを用いたエア式マッサージを行う機能と、前記1または複数のエアバックのうちの任意のエアバックへの空気の供給時間を変化させることにより、当該エアバックを用いたエア式マッサージの強度を制御する機能とを備えており、
前記1または複数のエアバックのうちの任意のエアバックを用いたエア式マッサージが行われているときに、当該エア式マッサージの強度が変更されたときには、前記映像を当該エア式マッサージに同期させるように、前記映像の再生速度を制御する再生速度制御手段を含む、請求項1または2に記載のマッサージシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、椅子型マッサージ機等のマッサージ機と、動画像を表示するための表示装置とを含むマッサージシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マッサージ機と頭部搭載型表示装置とヘッドフォンとを備え、マッサージ中にビデオCDに記録された映像および音声を被施療者に提供できる機能を備えたチェアシステムが開示されている。特許文献1には、さらに、脈拍検知センサによって検出される被施療者の脈拍数に基づいて、ビデオCDの再生動作を停止させたり、ビデオCDの再生箇所を変更したりすることも開示されている。特許文献1には、マッサージ中に再生される映像として、「のどかな田園風景」、「夕焼け」等のように精神をリラックス状態にさせるような映像および「朝焼け」、「飛び立つヘリコプター」等のように精神をリフレッシュ状態にさせるような映像が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
この発明は、ヘッドトラッキングの基準方向およびポジショントラッキングの基準位置が設定された後から映像の再生が開始される前に、ユーザ操作によって背もたれ部の座部に対する傾斜角が変更される場合にも、適切なヘッドトラッキング動作およびポジショントラッキング動作を行えるようになる、マッサージシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、座部と前記座部に傾斜可能に取り付けられた背もたれ部を備え、被施療者にマッサージを行うマッサージ機と、ヘッドトラッキング機能およびポジショントラッキング機能を備え、前記マッサージ機によってマッサージが行われているときに映像が表示される頭部装着型表示装置と、前記マッサージ機および前記表示装置を制御するための制御部とを含み、前記制御部は、前記頭部装着型表示装置が前記被施療者に装着されたときに、前記頭部装着型表示装置に前記被施療者を正面に向かせるためのメッセージを表示し、前記メッセージを表示してから所定時間経過後に、前記頭部装着型表示装置の方向および位置を、それぞれヘッドトラッキングの基準方向およびポジショントラッキングの基準位置として設定するとともに、前記背もたれ部の前記座部に対する傾斜角を検出して第1傾斜角として記憶し、前記映像の再生が開始される前に、前記背もたれ部の前記座部に対する傾斜角を検出して、第2傾斜角として記憶し、前記第2傾斜角が前記第1傾斜角と異なっている場合には、前記第2傾斜角と前記第1傾斜角との差に基づいて、前記基準方向および前記基準位置を、現在の前記被施療者の体勢に応じた値となるように補正する、マッサージシステムを提供する。
この構成では、ヘッドトラッキングの基準方向およびポジショントラッキングの基準位置が設定された後から映像の再生が開始される前に、ユーザ操作によって背もたれ部の座部に対する傾斜角が変更される場合にも、適切なヘッドトラッキング動作およびポジショントラッキング動作を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、マッサージシステムの外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、マッサージシステムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、エアポンプから各エアバッグまでのエア回路を示すエア回路図である。
【
図4】
図4は、仮想の施療者を含む動画像の一例を示す模式図である。
【
図5A】
図5Aは、VRモードが選択されたときの制御部の動作の一部を示すフローチャートである。
【
図5B】
図5Bは、VRモードが選択されたときの制御部の動作の一部を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、制御部によって行われるエア式マッサージの強度変更に伴う映像再生速度制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一実施形態は、座部と前記座部に傾斜可能に取り付けられた背もたれ部を備え、被施療者にマッサージを行うマッサージ機と、ヘッドトラッキング機能およびポジショントラッキング機能を備え、前記マッサージ機によってマッサージが行われているときに映像が表示される頭部装着型表示装置と、前記マッサージ機および前記表示装置を制御するための制御部とを含み、前記制御部は、前記頭部装着型表示装置が前記被施療者に装着されたときに、前記頭部装着型表示装置に前記被施療者を正面に向かせるためのメッセージを表示し、前記メッセージを表示してから所定時間経過後に、前記頭部装着型表示装置の方向および位置を、それぞれヘッドトラッキングの基準方向およびポジショントラッキングの基準位置として設定するとともに、前記背もたれ部の前記座部に対する傾斜角を検出して第1傾斜角として記憶し、前記映像の再生が開始される前に、前記背もたれ部の前記座部に対する傾斜角を検出して、第2傾斜角として記憶し、前記第2傾斜角が前記第1傾斜角と異なっている場合には、前記第2傾斜角と前記第1傾斜角との差に基づいて、前記基準方向および前記基準位置を、現在の前記被施療者の体勢に応じた値となるように補正する、マッサージシステムを提供する。
この構成では、ヘッドトラッキングの基準方向およびポジショントラッキングの基準位置が設定された後から映像の再生が開始される前に、ユーザ操作によって背もたれ部の座部に対する傾斜角が変更される場合にも、適切なヘッドトラッキング動作およびポジショントラッキング動作を行えるようになる。
【0008】
本発明の一実施形態では、前記表示装置は、前記映像を3次元表示するものである。
本発明の一実施形態では、前記マッサージ機は、空気の給排気により膨張収縮する1または複数のエアバックを用いたエア式マッサージを行う機能と、前記1または複数のエアバックのうちの任意のエアバックへの空気の供給時間を変化させることにより、当該エアバックを用いたエア式マッサージの強度を制御する機能とを備えており、前記1または複数のエアバックのうちの任意のエアバックを用いたエア式マッサージが行われているときに、当該エア式マッサージの強度が変更されたときには、前記映像を当該エア式マッサージに同期させるように、前記映像の再生速度を制御する再生速度制御手段を含む。
[本発明の実施形態の詳細な説明]
【0009】
以下、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、マッサージシステム1の外観を示す斜視図である。
マッサージシステム1は、椅子型マッサージ機2と、ヘッドマウントディスプレイ(HMD : Head Mounted Display)3と、ヘッドフォン(Headphone)4とを備えている。
椅子型マッサージ機2は、座部11と、背もたれ部12と、肘掛部13と、オットマン(脚載部)14と、これらの土台となる基台とを含む。以下の説明において、前後方向、左右方向および上下方向とは、被施療者が椅子型マッサージ機2に通常の姿勢で着座したときに、その被施療者から見た場合の前後方向、左右方向および上下方向をそれぞれいうものとする。基台は座部11の下方に存在するが、
図1においては、座部11、背もたれ部12、肘掛部13およびオットマン14によって隠れているため、現れていない。
【0010】
座部11は、基台上に配置されている。背もたれ部12は、座部11の後部に配置されている。肘掛部13は、座部11の左右両側に配置されている。オットマン14は、座部11の前側に配置されている。背もたれ部12は、背もたれ回動用アクチュエータ22(
図2参照)により、座部11に対して、傾動可能に支持されている。また、オットマン14は、オットマン回動用アクチュエータ23(
図2参照)により、座部上部近傍に設けられた左右方向に延びる支軸を中心として回動できるようになっている。これにより、オットマン14は、
図1に示す垂直姿勢と、垂直姿勢からほぼ90度回転した水平姿勢との間で回動可能となっている。
【0011】
背もたれ部12には、揉み玉を使用した各種マッサージ(メカ式マッサージ)を行うためのマッサージユニット21(
図2参照)が内蔵されている。背もたれ部12には、図示しないが、上下方向に延びる左右一対のガイドレールが設けられており、マッサージユニット21はガイドレールに沿って上下方向に移動できるようになっている。マッサージユニット21としては、例えば、特開2012-135656号公報に開示されているマッサージ機構や特開2013-153969号公報に開示されているマッサージユニットを用いることができる。
【0012】
肘掛部13には、被施療者の前腕部を収容するための前腕部収容凹部17を有する腕ユニット16が設けられている。オットマン14には、被施療者の左右の脚部および足をそれぞれ収容する脚部収容凹部18および足収容凹部19を有している。
椅子型マッサージ機2の背もたれ部12、座部11、肘掛部13およびオットマン145には、エアバックが設けられている。各エアバッグは、空気の吸排気によって膨張収縮することにより、被施療者にエア式マッサージを行う。
【0013】
背もたれ部12には、左右の肩部をマッサージするための左右一対の肩部用エアバッグ31a,31bが設けられているとともに、腰部をマッサージするための左右一対の腰部用エアバッグ32a,32bが設けられている。座部11には、骨盤まわりの両側部をマッサージするため左右一対の骨盤用エアバッグ33a,33bと、臀部をマッサージするため左右一対の臀部用エアバッグ34a,34bと、大腿部をマッサージするための大腿部用エアバック35とが設けられている。
【0014】
左右一対の前腕部収容凹部17の両側面には、前腕部をマッサージするための前腕部用エアバック36a,36bと、手をマッサージするための手用エアバック37a,37bとが設けられている。左右一対の脚部収容凹部18の両側面には、脹脛(ふくらはぎ)の側面をマッサージするための脹脛横用エアバッグ38a,38bが設けられている。左右一対の脚部収容凹部18の底面には、脹脛の裏側をマッサージするための脹脛裏用エアバッグ39a,39bが設けられている。
【0015】
左右一対の足収容凹部19の両側面には、足の表側部をマッサージするための足表用エアバッグ40a,40bが設けられている。左右一対の足収容凹部19の底面には、足裏をマッサージするための足裏用エアバッグ41a,41bが設けられている。
腕ユニット16には、リモコンスタンド24が取り付けられている。リモコンスタンド24には、被施療者が椅子型マッサージ機2を操作するためのリモートコントローラ(以下、「リモコン25」という。)が着脱自在に取り付けられている。リモコン25の操作面には、
図2に示すように液晶表示器26と複数の操作キーとが設けられている。
【0016】
ヘッドマウントディスプレイ3は、被施療者の頭に装着することができる頭部装着型表示装置である。この実施形態では、ヘッドマウントディスプレイ3としては、ヘッドトラッキング機能およびポジショントラッキング機能を備え、動画像を3次元表示できるもの(例えば、Oculus製の「Oculus Rift」、HTC製の「VIVE」、Sony Interactive Entertainment製の「Play Station VR」など)が用いられている。ヘッドトラッキング機能とは、頭の動きなど見ている方向(顔の向き)に応じて映像が変化する機能をいう。ポジショントラッキング機能とは、頭の位置に応じて映像が変化する機能をいう。ヘッドフォン4は、ヘッドマウントディスプレイ3に取り付けられている。
【0017】
図2は、マッサージシステムの電気的構成を示すブロック図である。
図3は、エアポンプから各エアバッグまでのエア回路を示すエア回路図である。
図2を参照して、椅子型マッサージ機2の内部には、椅子型マッサージ機2、ヘッドマウントディスプレイ3およびヘッドフォン4を制御するための制御部50が内蔵されている。制御部50は、マイクロコンピュータ、映像表示処理装置(VDP)および音声信号処理装置を含んでいる。マイクロコンピュータは、CPU、メモリ(RAM、ROM、不揮発性メモリ)51等を備えている。メモリ51には、CPUのプログラムの他、各種データが記憶される。
【0018】
制御部50には、リモコン25、ヘッドマウントディスプレイ3およびヘッドフォン4が接続されている。制御部50には、さらに、マッサージユニット21の駆動回路61、背もたれ回動用アクチュエータ22の駆動回路62、オットマン回動用アクチュエータ23の駆動回路63、エアポンプ44の駆動回路64および複数の電磁弁45a~45uの駆動回路65が接続されている。各電磁弁45a~45uには、エアポンプ44からエアが供給される。以下において、電磁弁45a~45uを総称する場合には、電磁弁45という場合がある。
【0019】
図3を参照して、電磁弁45aには右肩部用エアバッグ31aが接続され、電磁弁45bには左肩部用エアバッグ31bが接続されている。電磁弁45cには右腰部用エアバッグ32aが接続され、電磁弁45dには左腰部用エアバッグ32bが接続されている。電磁弁45eには右骨盤用エアバッグ33aが接続され、電磁弁45fには左骨盤用エアバッグ33bが接続されている。電磁弁45gには右臀部用エアバッグ34aが接続され、電磁弁45hには左臀部用エアバッグ34bが接続されている。電磁弁45iには、大腿部用エアバック35が接続されている。
【0020】
電磁弁45jには右腕の前腕部用エアバック36aが接続され、電磁弁45kには左腕の前腕部用エアバック36bが接続されている。電磁弁45lには右手用エアバック37aが接続され、電磁弁45mには左手用エアバック37bが接続されている。
電磁弁45nには右脹脛横用エアバッグ38aが接続され、電磁弁45oには左脹脛横用エアバッグ38bが接続されている。電磁弁45pには右脹脛裏用エアバッグ39aが接続され、電磁弁45qには左脹脛裏用エアバッグ39bが接続されている。電磁弁45rには右足表用エアバッグ40aが接続され、電磁弁45sには左足表用エアバッグ40bが接続されている。電磁弁45tには右足裏用エアバッグ41aが接続され、電磁弁45uには左足裏用エアバッグ41bが接続されている。
【0021】
この実施形態では、左右両側にペア配置されたエアバックに対してそれぞれ個別に電磁弁が設けられているが、ペア配置された2つのエアバックに対して共通した1つの電磁弁が設けられていてもよい。
あるエアバックの電磁弁45が励磁されると、エアポンプ44からその電磁弁45を介して当該エアバックに空気が供給される。これにより、当該エアバックが膨張する。そして、当該エアバックの電磁弁45が消磁されると、当該エアバック内の空気が電磁弁を介して外部に排気される。これにより、当該エアバックが収縮する。
【0022】
椅子型マッサージ機2の動作モードとして、大きく分けて、ヘッドマウントディスプレイ3に動画像を表示せずにマッサージを行う通常モードと、ヘッドマウントディスプレイ3に動画像を表示しながらマッサージを行うバーチャルリアリティモード(VRモード)とがある。通常モードには、自動モードと手動モードとがある。自動モードでは、被施療者によって選択されたマッサージコースに従ってマッサージが行われる。手動モードでは、被施療者によって選択されたマッサージ種類に応じたマッサージが行われる。通常モード時の椅子型マッサージ機2の動作は、よく知られているので、その説明を省略する。
【0023】
VRモードでは、ヘッドマウントディスプレイ3およびヘッドフォン4を被施療者に装着させ、動画像および音声を被施療者に視聴させながら、椅子型マッサージ機2によってマッサージが行われる。この実施形態では、複数種類のVRモード用のマッサージコースが用意されている。そして、VRモード時には、被施療者によって選択されたVRモード用のマッサージコースに従ってマッサージが行われるとともに、そのマッサージコースに応じた動画像および音声が提示される。この実施形態では、VRモード時には、オットマン14は水平姿勢にされるものとする。
【0024】
メモリ51には、通常モード用の複数種類のマッサージコースに応じた通常モード用の複数種類のマッサージプログラムおよびVRモード用の複数種類のマッサージコースに応じたVRモード用の複数種類のマッサージプログラムが記憶されている。また、メモリ51には、VRモード用の複数種類のマッサージコースに応じた複数種類の映像データおよび音声データが記憶されている。
【0025】
マッサージコースに応じた映像データは、当該マッサージコースに含まれている少なくとも1種類のマッサージに関して、当該マッサージを人間によって施療してもらっているような感覚を視覚的に得るための映像データを含んでいる。具体的には、マッサージコースに応じた映像データは、当該マッサージコースに含まれている少なくとも1種類のマッサージに関して、当該マッサージの施療時に当該マッサージを行っている仮想の施療者の動画像を含む映像をヘッドマウントディスプレイ3に表示させるための映像データ(バーチャルリアリティ映像データ)を含んでいる。この実施形態では、仮想の施療者の動画像は、被施療者から見たような仮想的な映像である。
【0026】
仮想の施療者を含む動画像の一例を
図4に示す。
図4の動画像は、オットマン5がほぼ水平姿勢にされている状態で、被施療者の右脚部に対してマッサージが行われているときに表示される映像であり、被施療者の右脚部をマッサージしている仮想の施療者(アニメーションの人物)の動画像を含んでいる。仮想の施療者の動画像は、コンピュータで制作されたアニメーション(CG(Computer Graphics)アニメーション)や、通常のアニメーションであってもよい。また、仮想の施療者の動画像は、実写の動画像であってもよい。
【0027】
音声データは、例えば、ヘッドマウントディスプレイ3に表示されている仮想の施療者の台詞(せりふ)をヘッドフォン4から音声出力するための音声データである。台詞としては、「リラックスできていますでしょうか」等の台詞が挙げられる。音声データは、このような台詞の音声データの他、音楽の音声データを含んでいてもよい。また、音声データは、台詞の音声データを含まず、音楽のみの音声データであってもよい。
【0028】
この実施形態では、VRモード用の各マッサージコースに対して、仮想の施療者のキャラクタ(配役、人物)が異なる複数種類の映像データおよび音声データが用意されている。
以下、VRモード時のマッサージシステム1の動作例について説明する。
図5Aおよび
図5Bは、VRモードが選択されたときの制御部50の動作を示すフローチャートである。
【0029】
VRモードでのマッサージを受けたい場合には、被施療者は、リモコン25を操作して、「VRモード」を選択する。
「VRモード」が選択されると(ステップS1:YES)、制御部50は、オットマン回動用アクチュエータ23を制御して、オットマン14を水平姿勢にさせる(ステップS2)。また、制御部50は、リモコン25の液晶表示器26に、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)3およびヘッドフォン4の頭部への装着を促すためのメッセージを表示する(ステップS3)。被施療者は、このメッセージに従って、ヘッドフォン4付きのヘッドマウントディスプレイ3を頭部に装着する。
【0030】
ヘッドマウントディスプレイ3には、ヘッドマウントディスプレイ3が被施療者の頭部に装着されたことを検出する装着センサ(図示略)が設けられており、装着センサの検出信号は制御部50に与えられるようになっている。したがって、制御部50は、装着センサの検出信号に基づいて、ヘッドマウントディスプレイ3が頭部に装着されたか否かを判別できる。なお、ヘッドマウントディスプレイ3の取外し時には、制御部50は、装着センサの検出信号に基づいて、ヘッドマウントディスプレイ3が頭部から取り外されたか否かを判別できる。
【0031】
ヘッドマウントディスプレイ3が被施療者に装着されると(ステップS4:YES)、制御部50は、ヘッドマウントディスプレイ3に被施療者を正面に向かせるためのメッセージを表示する(ステップS5)。このメッセージは、例えば、「正面を向いてください」のメッセージからなる。被施療者は、このメッセージに従って正面を向く。制御部50は、このメッセージを表示してから数秒後に、現在のヘッドマウントディスプレイ3の方向(顔の向き)および位置を、それぞれヘッドトラッキングの基準方向およびポジショントラッキングの基準位置として設定する(ステップS6)。
【0032】
この後、制御部50は、ヘッドマウントディスプレイ3にマッサージコース選択画面を表示する(ステップS7)。マッサージコース選択画面は、被施療者に、マッサージコースを選択させたり、VRモードを解除させたりするための画面である。マッサージコース選択画面には、複数のVRモード用のマッサージコースの選択項目と、VRモード解除の選択項目とが表示される。被施療者は、例えば、コース選択画面内に表示されるカーソルを、頭を動かすことによって移動させることによって、好みのマッサージコースまたはVRモード解除を選択する。
【0033】
VRモード解除が選択されずに(ステップS8:NO)、マッサージコースが選択されると(ステップS9:YES)、制御部50は、ヘッドマウントディスプレイ3にキャラクタ選択画面を表示する(ステップS10)。キャラクタ選択画面は、仮想の施療者のキャラクタを被施療者に選択させるための画面であり、複数種類のキャラクタの画像が表示される。被施療者は、例えば、キャラクタ選択画面内に表示されるカーソルを、頭を動かすことによって移動させることによって、好みのキャラクタを選択する。
【0034】
キャラクタが選択されると(ステップS11:YES)、制御部50は、ステップS9で選択されたマッサージコースおよびステップS11で選択されたキャラクタとによって特定される映像データおよび音声データを選択し、それらの再生を開始する(ステップS12)。また、制御部50は、カウント値Cのカウントを開始する(ステップS13)。
映像データの再生が開始されると、ヘッドマウントディスプレイ3に再生映像が3次元表示される。この実施形態では、まず、キャラクタ(仮想の施療者)が登場し、自己紹介および注意事項の説明が行われる。注意事項としては、例えば、ヘッドマウントディスプレイ3を装着したまま立ち上がらないこと等が挙げられる。
【0035】
カウント値Cが所定値C1に達すると(ステップS14:YES)、制御部50は、ステップS9で選択されたマッサージコースに従ったマッサージを椅子型マッサージ機2に開始させる(ステップS15)。所定値C1は、キャラクタが自己紹介および注意事項の説明に要する時間に対応する値に設定されている。したがって、キャラクタによる自己紹介および注意事項の説明が終了した直後に、マッサージコースに従ったマッサージが開始される。
【0036】
これにより、被施療者は、ヘッドマウントディスプレイ3に表示される映像を見ながらマッサージを受けることになる。この際、例えば、
図4に示したように、マッサージの種類によっては、マッサージを行っている仮想の施療者の動画像を含む映像が、そのマッサージに同期して表示される。これにより、被施療者は、人間によって施療されているような感覚を視覚的に得ることができる。また、音声データに仮想の施療者の音声が含まれている場合には、被施療者は、ヘッドフォン4から出力される仮想の施療者の音声等を聞くことになる。これにより、被施療者は、人間によって施療されているような感覚を聴覚的にも得ることができる。つまり、VRモードでは、通常モードに比べて、人間によって施療されているような感覚を被施療者が得やすくなる。このため、VRモードでは、通常モードに比べて、高いリラックス効果が期待できる。
【0037】
この後、マッサージコースが終了し(ステップS16:YES)、そのマッサージコースに対応した映像データおよび音声データの再生が終了すると(ステップS17:YES)、制御部50はステップS7に戻り、ヘッドマウントディスプレイ3にマッサージコース選択画面を表示する。
被施療者は、さらに、VRモードでのマッサージを受けたい場合には、マッサージコース選択画面上でマッサージコースを選択する。この場合には、ステップS9で肯定判定となるから、ステップS10以降の処理が再度実行される。一方、VRモードを解除したいときには、被施療者は、マッサージコース選択画面上でVRモード解除を選択する。
【0038】
VRモード解除が選択されると(ステップS8:YES)、制御部50は、ヘッドマウントディスプレイ3およびヘッドフォン4の頭部からの取外しを促すためのメッセージをヘッドマウントディスプレイ3に表示する(ステップS18)。被施療者は、このメッセージに従って、ヘッドフォン4付きのヘッドマウントディスプレイ3を頭部から取り外す。
ヘッドマウントディスプレイ3が頭部から取り外されると(ステップS19:YES)、制御部50は、今回のVRモードでの処理を終了する。
【0039】
ステップS6で基準方向および基準位置が設定されてから、ステップS10でキャラクタが選択されるまでの間に、被施療者がリモコン25を操作して、背もたれ部12を動かして、マッサージを受けるときの基本体勢(以下、「施療時の基本体勢」という。)を変更する場合もある。そうすると、施療時の基本体勢でのヘッドマウントディスプレイ3の方向(顔の向き)および位置が、ステップS6で設定された基準方向および基準位置と合致しなくなる。そこで、このような場合には、
図5Aおよび
図5Bに鎖線で示すステップS6A、ステップS11AおよびステップS11Bを追加することにより、変更後の基本体勢でのヘッドマウントディスプレイの方向および位置が基準方向および基準位置として設定されるようにしてもよい。
【0040】
具体的には、制御部50は、ステップS6で基準方向および基準位置を設定する際に、背もたれ部12の座部11に対する傾斜角を検出し、第1傾斜角θ1として記憶する(ステップS6A)。また、制御部50は、キャラクタが選択された後であって、映像データおよび音声データの再生が開始される前(ステップS11とS12との間)に、背もたれ部12の座部11に対する傾斜角を検出して、第2傾斜角θ2として記憶する(ステップS11A)。そして、制御部50は、第2傾斜角θ2が第1傾斜角θ1と異なっている場合には、第2の傾斜角θ2と第1傾斜角θ1との差に基づいて、ステップS6で設定された基準方向および基準位置を、現在の被施療者の体勢(施療時の基本体勢)に応じた値となるように補正する(ステップS11B)。なお、背もたれ部12の座部11に対する傾斜角は、背もたれ回動用アクチュエータ22の操作量(例えばモータ回転角)等を検出することによって検出できる。
【0041】
制御部50は、第2傾斜角θ2が第1傾斜角θ1と異なっている場合、つまり、施療時の基本体勢が変更された場合には、さらに次のような処理を行うことが好ましい。すなわち、制御部50は、再生開始後に表示される動画像に含まれる椅子(マッサージ機1)の映像およびアバター(被施療者を表すキャラクター)の映像を、変更後の施療時の基本体勢において被施療者から見たような映像となるように、第2傾斜角θ2に応じて補正することが好ましい。
【0042】
前述の実施形態では、VRモード時には、オットマン14は水平姿勢にされているが(ステップS2参照)、VRモード時に、オットマン14は水平姿勢にされなくてもよい。
VRモード時において、エアバック31a~41bを用いたエア式マッサージが行われている場合に、そのマッサージの強度を被施療者が変更できる仕様とすると、次のような問題が生じるおそれがある。このようなマッサージの強度変更は、例えば、リモコン25を操作することによって行われる。
【0043】
エア式マッサージの強度は、一般的に、エアバックを膨張させるときの空気の供給時間(電磁弁の励磁時間)を調整することによって行われる。エアバックを膨張させるときの空気の供給時間を長くすると、エアバックに供給される空気量が多くなるので、エアバックによる被施療部への押圧力が強くなる。一方、エアバックを膨張させるときの空気の供給時間を短くすると、エアバックに供給される空気量が少なくなるので、エアバックによる被施療部への押圧力が弱くなる。つまり、エアバックを膨張させるときの空気の供給時間を長くするほど、エア式マッサージの強度が大きくなる。
【0044】
このようにエア式マッサージの強度がエアバックを膨張させるときの空気の供給時間によって調整される場合には、任意のエア式マッサージが行われているときに、そのエア式マッサージの強度が変更されると、当該エア式マッサージに要する時間が変化する。つまり、エア式マッサージの強度が大きくされると当該エア式マッサージに要する時間が長くなり、エア式マッサージの強度が小さくされると当該エア式マッサージに要する時間が短くなる。エア式マッサージに要する時間が変化すると、当該エア式マッサージと動画像内の仮想の施療者の動きとの同期がとれなくなるおそれがある。そこで、制御部50は、VRモード時において、エア式マッサージ中に当該エア式マッサージの強度が変更されたときには、当該エア式マッサージと動画像内の仮想の施療者の動きとの同期をとるために、映像データの再生速度を調整することが好ましい。映像データの再生速度の変更は、例えば、フレームを間引いたり、フレームを補完したりすることにより、行うことができる。
【0045】
図6は、制御部50によって行われるエア式マッサージの強度変更に伴う映像再生速度制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、VRモードにおいてマッサージコースが実行されているときに行われる。
この実施形態では、エア式マッサージの強度は、「弱」、「中」、「強」の三段階であり、各エア式マッサージ開始時には、その強度は中に設定されているものとする。そして、この実施形態では、映像データは、エア式マッサージの強度が「中」に設定されていることを前提として、作成されている。エア式マッサージの強度が「中」に設定されている場合には、映像データがそのまま再生される。この場合の再生速度を基準再生速度ということにする。VRモード時において、各エア式マッサージが開始されるときには、その強度の初期値は「中」に設定される。
【0046】
VRモードにおいてマッサージコースが実行されているときには、制御部50は、エア式マッサージ中に当該エア式マッサージの強度が変更されたか否かを監視している(ステップS21)。エア式マッサージ中に当該エア式マッサージの強度が変更されると(ステップS21:YES)、制御部50は、変更後の強度を判定する(ステップS22)。変更後の強度が「弱」である場合には(ステップS22:「弱」)、施療中のエア式マッサージの施療残り期間に対応した映像データの再生速度を基準再生速度よりも速く(再生時間を短く)する(ステップS23)。具体的には、制御部50は、施療中のエア式マッサージの施療残り期間に対応した動画像のフレームを間引いて、フレーム数を減少させながら再生する。この際、音声の音程を変化させずに、音声の再生速度を速くすることが好ましい。そして、ステップS21に戻る。
【0047】
ステップS22において、変更後の強度が「強」であると判別された場合には(ステップS22:「強」)、施療中のエア式マッサージの施療残り期間に対応した映像データの再生速度を基準再生速度よりも遅く(再生時間を長く)する(ステップS24)。具体的には、制御部50は、施療中のエア式マッサージの施療残り期間に対応した動画像のフレームを補完して、フレーム数を増加させながら再生する。この際、音声の音程を変化させずに、音声の再生速度を遅くすることが好ましい。そして、ステップS21に戻る。
【0048】
ステップS22において、変更後の強度が「中」である場合には(ステップS22:「中」)、施療中のエア式マッサージの施療残り期間に対応した映像データの再生速度を基準再生速度に戻す(ステップS25)。具体的には、制御部50は、施療中のエア式マッサージの施療残り期間に対応した動画像を通常通り再生する。この際、音声の再生速度を通常時の再生速度に戻すことが好ましい。そして、ステップS21に戻る。
【0049】
以上のような再生速度制御処理を行うことにより、エア式マッサージ中に当該エア式マッサージの強度が変更されたときにも、当該エア式マッサージと動画像内の仮想の施療者の動きとの同期をとることができる。
なお、エア式マッサージの強度を、エアバックへの空気の供給時間によって変更するのではなく、エアポンプ44の出力を変化させることによって変更させる場合には、当該エア式マッサージの時間は変化しないので、動画像の再生速度を調整する必要はない。また、エアポンプ44と電磁弁45との間に空気供給量を調整するための空気量調整弁を設け、この空気量調整弁を制御することによってエア式マッサージの強度を変化させる場合も、動画像の再生速度を調整する必要はない。
【0050】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。前述の実施形態では、仮想の施療者の動画像を含む映像が表示される表示装置は、被施療者の頭に装着することができる頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイ)であるが、被施療者の頭に装着されないタイプの表示装置であってもよい。具体的には、表示装置は、壁等に映像を投影するプロジェクタであってもよいし、有機EL等で構成された球面ディスプレイであってもよいし、被施療者の頭部を上方から覆うように配置され、内面に表示面を有するドーム型(釣鐘型)の表示装置であってもよい。
【0051】
また、前述の実施形態では、ヘッドマウントディスプレイ3としては、ヘッドトラッキング機能およびポジショントラッキング機能を備えているものが用いられている。しかし、ヘッドマウントディスプレイ3としては、ヘッドトラッキング機能およびポジショントラッキング機能のうちのいずれか一方の機能のみ備えているものまたは両方の機能を備えていないものであってもよい。また、ヘッドマウントディスプレイ3としては、動画像を3次元表示する機能を備えていないもの、つまり、動画像を2次元表示するものであってもよい。
【0052】
また、前述の実施形態では、マッサージ機2は椅子型マッサージ機であるが、マッサージ機2は椅子型以外のマッサージ機であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この明細書からは、以下のような発明が抽出され得る。
1.被施療者にマッサージを行うマッサージ機と、表示装置と、前記マッサージ機によって前記被施療者にマッサージが行われているときに、当該マッサージを行っている仮想の施療者の動画像を含む映像を前記表示装置に表示させる手段とを含む、マッサージシステム。
この構成では、マッサージ機によって被施療者にマッサージが行われているときに、当該マッサージを行っている仮想の施療者の動画像を含む映像が表示装置に表示されるので、人間によって施療されているような感覚を被施療者が得やすくなる。
2.前記表示装置は、前記映像を3次元表示するものである、「1.」に記載のマッサージシステム。
3.前記表示装置は、前記被施療者の頭部に装着される頭部装着型表示装置である、前記「1.」または前記「2.」に記載のマッサージシステム。
4.前記頭部装着型表示装置は、少なくともヘッドトラッキング機能およびポジショントラッキング機能のうちのいずれか一つを備えている、前記「3.」に記載のマッサージシステム。
5.前記仮想の施療者は、アニメーションの人物である、前記「1.」~前記「4.」のいずれかに記載のマッサージシステム。
6.前記マッサージ機は、空気の給排気により膨張収縮する1または複数のエアバックを用いたエア式マッサージを行う機能と、前記1または複数のエアバックのうちの任意のエアバックへの空気の供給時間を変化させることにより、当該エアバックを用いたエア式マッサージの強度を制御する機能とを備えており、前記1または複数のエアバックのうちの任意のエアバックを用いたエア式マッサージが行われているときに、当該エア式マッサージの強度が変更されたときには、前記動画像を当該エア式マッサージに同期させるように、前記動画像の再生速度を制御する再生速度制御手段を含む、前記前記「1.」~前記「5.」のいずすれかに記載のマッサージシステム。
【符号の説明】
【0053】
1 マッサージシステム
2 椅子型マッサージ機
3 ヘッドマウントディスプレイ
4 ヘッドフォン
21 マッサージユニット
31a~41b エアバック
44 エアポンプ
45a~45u 電磁弁
50 制御部
51 メモリ