(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】保護パネル
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20220401BHJP
【FI】
E01D22/00 A
(21)【出願番号】P 2021202483
(22)【出願日】2021-12-14
【審査請求日】2021-12-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】藤川 敬人
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直以
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-008734(JP,A)
【文献】特開2019-124011(JP,A)
【文献】特開2014-009562(JP,A)
【文献】特開平10-131478(JP,A)
【文献】特開2015-143469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
E04G 1/00-7/34
E04G 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の下部を保護する保護パネルであって、
前記橋梁の下部に設けられる支持材の下端に前記下部に沿って配置された下面パネルと、
前記支持材に対し前記橋梁の幅方向の外側に起立した状態で配置され、前記支持材に対して回動可能に設置されている側面パネルと、
前記側面パネルに対して回動可能に配置された手摺部と、
を有し、
前記手摺部は前記側面パネルの開度に応じて開角を自動で変化させることを特徴とする、
保護パネル。
【請求項2】
前記支持材には第1接合部材が設けられ、
前記側面パネルには第2接合部材が設けられ、
前記第1接合部材と前記第2接合部材とは、前記側面パネルの格納時に接合されることを特徴とする、
請求項1に記載の保護パネル。
【請求項3】
前記側面パネルの開度を制限する制限用部材を更に有し、
前記手摺部は、前記制限用部材が機能する前に前記手摺部の自動の変化が完了することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の保護パネル。
【請求項4】
前記側面パネルの下部に前記側面パネルを開閉する開閉用部材を更に有し、
前記開閉用部材を操作することで、前記手摺部が自動で変化することを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の保護パネル。
【請求項5】
前記開閉用部材は、前記下面パネルを通行する作業者の目線高さに配置されていることを特徴とする、
請求項4に記載の保護パネル。
【請求項6】
前記側面パネルの開度を制限する制限用部材を更に有し、
前記開閉用部材と前記制限用部材とが同一部材であることを特徴とする、
請求項4又は5に記載の保護パネル。
【請求項7】
ケーブルを更に有し、
前記ケーブルは、前記側面パネルの開度が大きくなることに応じて、前記開角を大きくする方向である第1方向に前記手摺部を回転させるように引っ張ることを特徴とする、
請求項1から6のいずれか1項に記載の保護パネル。
【請求項8】
前記ケーブルの一端は前記支持材に固定され、
前記ケーブルの他端は前記手摺部に固定され、
前記ケーブルは前記側面パネルを通過することを特徴とする、
請求項7に記載の保護パネル。
【請求項9】
前記側面パネルの開度を制限する制限用部材を更に有し、
前記制限用部材は、前記ケーブルより下に位置することを特徴とする、
請求項7又は8に記載の保護パネル。
【請求項10】
前記支持材には第1接合部材が設けられ、
前記側面パネルには第2接合部材が設けられ、
前記第1接合部材及び第2接合部材は、前記ケーブルと干渉しない位置に設置されていることを特徴とする、
請求項7から9のいずれか1項に記載の保護パネル。
【請求項11】
前記手摺部には前記手摺部を格納するための第2ケーブルが設置されていることを特徴とする、
請求項1から10のいずれか1項に記載の保護パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁構造物の定期点検を行いやすくするため、恒久足場を設置することがある。特許文献1では、橋梁構造物の下部を保護するための下面パネルを足場として用いることで橋梁構造物の下部を点検しやすくしたり、側面パネルを傾斜(展開)させることで橋梁構造物の側部にアクセスしやすくしたりする構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
橋梁構造物を保護する保護パネルを展開して足場とする構造について、作業員の転落防止を目的として手摺が設けられることがある。しかしながら、手摺の展開作業が複雑なものであったり、展開の際に作業者が不自然な姿勢を取る必要があったりすると、作業負荷が高くなる課題がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、点検時の足場として使用できる保護パネルであって、開閉の作業を容易に行うことができ、かつ十分な安全性を確保した保護パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る保護パネルは、橋梁の下部を保護する保護パネルであって、前記橋梁の下部に設けられる支持材の下端に前記下部に沿って配置された下面パネルと、前記支持材に対し前記橋梁の幅方向の外側に起立した状態で配置され、前記支持材に対して回動可能に設置されている側面パネルと、前記側面パネルに対して回動可能に配置された手摺部と、を有し、前記手摺部は前記側面パネルの開度に応じて開角を自動で変化させることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、手摺部は側面パネルの開度に応じて開角を自動で変化させる。これにより、側面パネルを展開する作業のみで自動的に手摺部を展開することができる。よって、展開の作業を容易に行うことができる。また、手摺部の展開忘れ等を防ぐことで、十分な安全性を確保することができる。
【0008】
また、前記支持材には第1接合部材が設けられ、前記側面パネルには第2接合部材が設けられ、前記第1接合部材と前記第2接合部材とは、前記側面パネルの格納時に接合されることを特徴としてもよい。
【0009】
この発明によれば、第1接合部材と第2接合部材とは、側面パネルの格納時に接合される。これにより、格納時の側面パネルは支持材に固定される。よって、格納状態の側面パネルが不意に展開することを防いだり、側面パネルが必要以上に格納方向に回動することを防いだりすることができる。
【0010】
また、前記側面パネルの開度を制限する制限用部材を更に有し、前記手摺部は、前記制限用部材が機能する前に前記手摺部の自動の変化が完了することを特徴としてもよい。
【0011】
ここで、側面パネルが展開した状態で手摺部の展開が完了していないと、作業者が側面パネルに乗って作業する際に手摺部が不安定となる。
この発明によれば、手摺部は、制限用部材が機能する前に前記手摺部の自動の変化が完了する。つまり、側面パネルの展開が完了する前に、手摺部の自動の展開が完了する。これにより、作業者が側面パネルの展開時に手摺部の展開を忘れることを確実に防ぐことができる。
【0012】
また、前記側面パネルの下部に前記側面パネルを開閉する開閉用部材を更に有し、前記開閉用部材を操作することで、前記手摺部が自動で変化することを特徴としてもよい。
【0013】
この発明によれば、開閉用部材を操作することで、手摺部が自動で変化する。つまり、作業者は、開閉用部材を操作することのみで、側面パネルの展開及び手摺部の展開を行うことができる。これにより、より作業を容易にして効率化することができる。
【0014】
また、前記開閉用部材は、前記下面パネルを通行する作業者の目線高さに配置されていることを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、開閉用部材は、下面パネルを通行する作業者の目線高さに配置されている。これにより、側面パネルを開閉する際、作業者が不自然な姿勢となることを防ぐことができる。よって、より作業を安全かつ効率的にすることができる。
【0016】
また、前記側面パネルの開度を制限する制限用部材を更に有し、前記開閉用部材と前記制限用部材とが同一部材であることを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、開閉用部材と制限用部材とが同一部材である。これにより、より構造を簡素化することができる。
【0018】
また、ケーブルを更に有し、前記ケーブルは、前記側面パネルの開度が大きくなることに応じて、前記開角を大きくする方向である第1方向に前記手摺部を回転させるように引っ張ることを特徴としてもよい。
【0019】
この発明によれば、ケーブルは、側面パネルの開度が大きくなることに応じて、開角を大きくする方向である第1方向に手摺部を回転させるように引っ張る。つまり、側面パネルが開くことにケーブルが連動して、手摺部が開く方向に回転させる。このように、手摺部の開閉に電力等を必要とするエネルギーを必要とする動力を用いないことで、恒久的に使用することができる。
【0020】
また、前記ケーブルの一端は前記支持材に固定され、前記ケーブルの他端は前記手摺部に固定され、前記ケーブルは前記側面パネルを通過することを特徴としてもよい。
【0021】
この発明によれば、ケーブルの一端は支持材に固定され、ケーブルの他端は手摺部に固定され、ケーブルは側面パネルを通過する。これにより、1本のケーブルによって各部位を連結することで、簡素な構造で側面パネルと手摺部との連動を実現することができる。
【0022】
また、前記側面パネルの開度を制限する制限用部材を更に有し、前記制限用部材は、前記ケーブルより下に位置することを特徴としてもよい。
【0023】
この発明によれば、制限用部材は、ケーブルより下に位置する。これにより、より構造を簡素にするとともに、制限用部材とケーブルとが干渉することを防ぐことができる。よって、側面パネルの展開時及び格納時に不具合が発生することを防ぐことができる。
【0024】
また、前記支持材には第1接合部材が設けられ、前記側面パネルには第2接合部材が設けられ、前記第1接合部材及び第2接合部材は、前記ケーブルと干渉しない位置に設置されていることを特徴としてもよい。
【0025】
この発明によれば、第1接合部材及び第2接合部材はケーブルと干渉しない位置に設置されている。これにより、側面パネルの展開時及び格納時に不具合が発生することを防ぐことができる。
【0026】
また、前記手摺部には前記手摺部を格納するための第2ケーブルが設置されていることを特徴としてもよい。
【0027】
この発明によれば、手摺部には手摺部を格納するための第2ケーブルが設置されている。これにより、側面パネルを格納する際、先に手摺部を格納することで側面パネルが連動して格納方向に回動する。よって、側面パネルの格納作業を容易に行うことができる。また、側面パネルの展開時には、第2ケーブルを転落防止用の手摺として用いることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、点検時の足場として使用できる保護パネルであって、開閉の作業を容易に行うことができ、かつ十分な安全性を確保した保護パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明に係る保護パネルを用いて作業員が橋梁の点検を行う例である。
【
図6】側面パネルを展開状態として、手摺部の開角を最大にした状態である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る保護パネル100を説明する。保護パネル100は、橋梁BRの下部を腐食環境等から保護するために設けられる。これに加えて、下記の構造を備えることにより、橋梁BRの点検を行う際の足場としても機能する。
ここで、橋梁BRは、通行部Tと、壁高欄Fと、支持材Mと、桁材Sと、を有する。
【0031】
通行部Tは、車両や歩行者が通行する部位である。本実施形態において、橋梁BRの下部とは、特に通行部Tの下面をいうものとする。
壁高欄Fは、橋梁BRにおいて通行部Tの側面に設けられる。これにより通行部Tを通行する車両や歩行者の転落を防止する。本実施形態において、橋梁BRの側面とは、特に壁高欄Fにおける外側の面、すなわち、
図1に示す作業者Oに面する側の面をいうものとする。
【0032】
支持材Mは、橋梁BRの下部に設けられ、後述する下面パネル10及び側面パネル20を支持する。支持材Mは、水平支持材M1と、鉛直支持材M2と、を有する。
水平支持材M1は、橋梁BRの下部に水平に設けられる。水平支持材M1の一方の端部は、橋梁BRの桁材Sに取り付けられ、他方の端部は、鉛直支持材M2に取り付けられる。
鉛直支持材M2は、水平支持材M1によって橋梁BRの下部に鉛直に配置される。鉛直支持材M2は、下面パネル10を保持する。また、鉛直支持材M2は、側面パネル20を回動可能に保持する。
【0033】
次に、保護パネル100の構成について説明する。なお、以下において、保護パネル100の各構成を説明する際、
図1に示すように、橋梁BRの鉛直上方から下方にかけての方向を上下方向D1、壁高欄Fを基準として作業者Oに面する側から通行部Tに面する側にかけての方向を幅方向D2(橋軸直角方向)、上下方向D1と幅方向D2のいずれにも直交する方向であって、通行部Tを通行する車両又は歩行者などの進行方向を長手方向D3(橋軸方向)と呼称することがある。
【0034】
保護パネル100は、上述のように橋梁BRの下部に設けられた支持材Mによって保持され、橋梁BRの下部を保護する。
図1に示すように、保護パネル100は、下面パネル10と、側面パネル20と、手摺部30と、ケーブル40と、第2ケーブル50と、を有する。
【0035】
下面パネル10は、鉛直支持材M2の下端において橋梁BRの下部に沿って配置される。下面パネル10は、幅方向D2における一方の端が桁材Sに取り付けられ、他方の端が鉛直支持材M2の下端に取り付けられる。下面パネル10は、例えば長方形状又は正方形状の平板であり、各辺が幅方向D2又は長手方向D3のいずれかに平行となるように配置される。作業者Oが保護パネル100の内部を移動する際は、下面パネル10の上を歩くことで移動する。
【0036】
側面パネル20は、例えば長方形状又は正方形状の平板であり、いずれか2か2辺が長手方向D3と平行に配置され、その他2辺は上下方向D1と幅方向D2からなる平面に平行に配置される。
側面パネル20は、支持材Mに対して回動可能に設置されている。具体的には、側面パネル20の下端が、鉛直支持材M2に設けられた回転軸M2sによって回動可能に設置されている。これにより、側面パネル20は、鉛直支持材M2に対して以下の2様態によって配置される。
【0037】
すなわち、まず、
図2に示すように、長手方向D3に平行に配置された辺と直交する辺が上下方向D1と平行に配置される。つまり、側面パネル20は、支持材Mに対し橋梁BRの幅方向D2の外側に起立した状態で配置される。以下、この状態を格納状態と呼称する。
あるいは、
図6に示すように、側面パネル20の長手方向D3に平行に配置された辺と直交する辺が、上下方向D1に対して傾斜して配置される。以下、この状態を展開状態と呼称する。
【0038】
なお、以下において、側面パネル20が回動する際、格納状態から展開状態に変化する際に回動する方向を第1方向R1と呼称し、展開状態から格納状態に変化する際に回動する方向を第2方向R2と呼称することがある。また、展開状態から格納状態に変化する際の、上下方向D1に対する側面パネル20の角度を開度A1と呼称する。開度A1は、側面パネル20が格納状態にある場合に最小であるとして、展開状態にある場合に最大であるとする。本実施形態において、側面パネル20が上下方向D1に対して45°傾いた状態で、開度A1が最大となる。
【0039】
側面パネル20が格納状態である場合は、側面パネル20は橋梁BRの下部を保護する役割を果たす。側面パネル20が展開状態である場合は、
図1に示すように、作業者Oが橋梁BRの側面を点検する際の足場としての役割を果たす。このため、側面パネル20の内面、すなわち、側面パネル20の桁材Sに面する側の面には、ステップ20sが設けられる。ステップ20sは、側面パネル20の内面に1つのみ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。ステップ20sは、側面パネル20が展開状態となった時、その上面が幅方向D2と平行となるように設けられる。これにより、作業者Oが側面パネル20を足場とした際の移動のし易さを担保する。
【0040】
上述のように、側面パネル20は、格納状態又は展開状態となることで2通りの役割を果たす。本実施形態において、側面パネル20の格納状態と展開状態の切り替え、つまり側面パネル20の開閉は、手動により行う。このため、側面パネル20の下部には、側面パネル20を開閉する開閉用部材として機能するレバー21が設けられる。
【0041】
レバー21は、側面パネル20の長手方向D3の端部に設けられる。レバー21は、下面パネル10を通行する作業者Oの目線高さに配置される。本実施形態において、目線高さとは、下面パネル10から上方に向けて50cm以上、2m以下の高さである。また、レバー21は、後述するケーブル40と干渉しないように配置される。具体的には、レバー21は、ケーブル40より下に位置する。
【0042】
レバー21の一部には、回転軸M2sが配置される。また、レバー21において回転軸M2sが配置された部位以外の一部に、レバー固定部21fが設けられる。レバー固定部21fは、側面パネル20が展開状態である時、
図1に示すように鉛直支持材M2に設けられた固定部M2fにボルトBで接合される部位である。これにより、側面パネル20を展開状態に保持する機能を有する。
【0043】
レバー固定部21fと固定部M2fとが
図1に示すように接した状態となると、それ以上側面パネル20が第1方向R1に回動することが制限される。つまり、レバー21は、側面パネル20の開度A1を制限する制限用部材としても機能する。言い換えれば、本実施形態において、開閉用部材と制限用部材とは同一部材である。以下、制限用部材としてのレバー21によって側面パネル20が第1方向R1に回動することが制限されることを、制限用部材が機能すると呼称する。
【0044】
このように、展開状態の側面パネル20は、レバー21の備えるレバー固定部21fを鉛直支持材M2の固定部M2fにボルトBで接合することで固定される。これに対し、格納状態の側面パネル20は、次のように固定される。
すなわち、鉛直支持材M2には第1接合部材J1が設けられる。また、側面パネル20には第2接合部材J2が設けられる。第1接合部材J1と第2接合部材J2とは、互いに対応するボルト孔を備える。
図2に示すように、第1接合部材J1と第2接合部材J2とは、側面パネル20が格納状態となった時にボルトBで接合される。このようにして格納状態の側面パネル20を固定する。第1接合部材J1と第2接合部材J2とは、保護パネル100において長手方向D3の両側に設けられてもよいし、片側のみに設けられてもよい。これにより、格納状態の側面パネル20が不意に展開することを防ぐ。
【0045】
また、第1接合部材J1と第2接合部材J2とが
図2に示すように接した状態となると、それ以上側面パネル20が第2方向R2に回動することが制限される。これにより、側面パネル20が必要以上に第2方向R2に回動することを防ぐ。
第1接合部材J1及び第2接合部材J2は、ケーブル40と干渉しない位置に設置される。例えば、鉛直支持材M2に設けられる第1接合部材J1は、鉛直支持材M2におけるケーブル40の固定部M2fより上方に配置されることで、ケーブル40との干渉を回避する。長手方向D3における側面パネル20の端部に設けられる第2接合部材J2は、例えば、後述する中間フックf3を第2接合部材J2の付近に設け、ケーブル40が第2接合部材J2に向けて弛まないようにすることで、ケーブル40との干渉を回避する。
【0046】
手摺部30は、長手方向D3に沿って設けられた柵状の部材である。具体的には、長手方向D3に平行な棒と、上下方向D1と幅方向D2からなる平面内に位置する棒とが組み合わされて形成される。以下、長手方向D3に平行な棒を横棒と、上下方向D1と幅方向D2からなる平面内に位置する棒を縦棒と呼称する。
手摺部30は、展開状態の側面パネル20に作業者Oが乗って点検作業を行う際、作業者Oの転落を防止するために設けられる。手摺部30は、作業中の背もたれとしてもよいし、手摺部30に命綱を装着して用いてもよい。
【0047】
手摺部30は、側面パネル20に対して回動可能に配置される。具体的には、縦棒の一方の端部が、側面パネル20の上下方向D1における上側の端部に手摺回転軸30rを介して回動可能に接続される。手摺部30は、
図2に示すように、側面パネル20の格納時には側面パネル20に沿った状態となる。手摺部30は、側面パネル20の展開時には、
図6に示すように、側面パネル20から離れた状態となる。
【0048】
以下、本実施形態において、手摺部30の縦棒と側面パネル20とのなす角度を開角A2と呼称する。
図2に示すように、側面パネル20と縦棒とが反った状態で開角A2が最小である。以下、この状態を格納状態と呼称する。
図6に示すように、側面パネル20が展開状態にあって、側面パネル20と縦棒とが最も離れた状態で開角A2が最大となる。以下、この状態を展開状態と呼称する。本実施形態において、開角A2は最大で135°である。
【0049】
ケーブル40は、側面パネル20を通過するように設けられる。言い換えれば、ケーブル40は、側面パネル20の長手方向D3の端部に沿って配置される。
図1に示すように、ケーブル40の一端は鉛直支持材M2に固定される。具体的には、鉛直支持材M2に取り付けられた第1フックf1に固定される。ケーブル40の他端は手摺部30に固定される。具体的には、手摺部30に設けられた第2フックf2に固定される。
【0050】
ケーブル40の一方の端部と他方の端部との間は、以下のようにすることで、側面パネル20に沿って配置される。すなわち、ワイヤは、
図1に示すように、側面パネル20の回転軸M2sの付近に設けられた中間フックf3を通過する。更に、手摺回転軸30rの外周を沿うように通過して、第2フックf2に固定される。これにより、ケーブル40は、側面パネル20を通過するように設けられる。ケーブル40は、側面パネル20の開度A1が大きくなることに応じて、手摺部30の開角A2を大きくする方向である第1方向R1に手摺部30を回転させるように引っ張る。具体的な態様については後述する。
【0051】
第2ケーブル50は、一方の端部が鉛直支持材M2の上端に固定され、他方の端部が手摺部30の縦棒の上端に接続される。第2ケーブル50は、側面パネル20が展開状態にあって、作業者Oがステップ20sに乗って作業中の時、作業者Oが側面パネル20の長手方向D3の端部から転落することを防止するための役割を有する。また、側面パネル20を格納する時、第2ケーブル50の中間部を下方に引っ張ると、手摺部30が格納される方向に回動する。このように、第2ケーブル50は、手摺部30を格納するために用いられてもよい。
【0052】
(側面パネル20及び手摺部30の展開と格納について)
次に
図2から
図6を用いて、側面パネル20及び手摺部30の展開と格納について説明する。側面パネル20を展開する時は、作業者Oは下面パネル10の上に立っている状態である。
図2に示すように、側面パネル20の格納時は、第1接合部材J1と第2接合部材J2とがボルトBによって固定されている。この状態から、まず、このボルトBを取り外す。次に、開閉用部材であるレバー21を下方から上方に押し上げるようにして、側面パネル20を第1方向R1に回動させる。すると、
図3及び
図4に示すように、側面パネル20が上下方向D1に対して傾斜する方向に回動し、
図5の状態において展開を完了する。側面パネル20の展開が完了した後、制限用部材であるレバー21のレバー固定部21fと鉛直支持材M2の固定部M2fとをボルトBによって固定する。これにより、側面パネル20の展開を完了する。側面パネル20の展開後は、下面パネル10から側面パネル20のステップ20sに移動して、点検作業を行う。
【0053】
図2に示すように、側面パネル20が格納状態のとき、手摺部30も格納状態にある。本実施形態において、開閉用部材であるレバー21を操作することで、手摺部30が自動で変化する。具体的には、レバー21を操作して側面パネル20を展開した時、手摺部30は、側面パネル20の開度A1に応じて開角A2を自動で変化させる。ここで、上述のように、ケーブル40は、側面パネル20の開度A1が大きくなることに応じて、手摺部30の開角A2を大きくする方向である第1方向R1に手摺部30を回転させるように引っ張る。つまり、本実施形態において、手摺部30の自動変化は、ケーブル40によって担保される。
【0054】
図2に示すように、側面パネル20が格納した状態においては、第1フックf1と中間フックf3との間のケーブル40は弛んでおり、張力は発生していない。
図3に示すように、側面パネル20を第1方向R1に回動して展開させる途中に、第1フックf1と中間フックf3との間の距離が大きくなることで、ケーブル40の弛みがなくなり、ケーブル40に張力が発生する。更に側面パネル20を第1方向R1に展開させると、第1フックf1と中間フックf3との間の距離が更に大きくなる。これにより、ケーブル40は、
図4に示すように、中間フックf3及び手摺回転軸30rを介して、第2フックf2を引っ張る。これにより、手摺部30は、開角A2を大きくする方向に回動する。
【0055】
図5に示すように側面パネル20の展開が完了した時、手摺部30の自動の変化も完了する。より具体的には、レバー21が制限用部材として機能する前に手摺部30の自動の変化である展開が完了する。この時の手摺部30の開角A2は90°程度である。この後、
図6に示すように、作業者Oによって手動で手摺部30を更に第1方向R1に回動させ、手摺部30の展開を完了する。この時、作業中に手摺部30が不意に格納方向に回動することを防ぐために、手摺回転軸30rの回転をアイボルトEBによって固定することが好ましい。
【0056】
なお、展開状態の側面パネル20及び手摺部30を格納する時は、まずアイボルトEBを取り外し、第2ケーブル50の中間部を下方に引っ張ることで、手摺部30を格納方向に回動させる。その後、レバー固定部21fと固定部M2fとを固定するボルトBを外して、レバー21を第2方向R2に回動させて、側面パネル20を格納する。側面パネル20が格納状態となったら、第1接合部材J1と第2接合部材J2とをボルトBにより固定する。
以上のようにすることで、保護パネル100を橋梁BRの点検作業に使用する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る保護パネル100によれば、手摺部30は側面パネル20の開度A1に応じて開角A2を自動で変化させる。これにより、側面パネル20を展開する作業のみで自動的に手摺部30を展開することができる。よって、展開の作業を容易に行うことができる。また、手摺部30の展開忘れ等を防ぐことで、十分な安全性を確保することができる。
【0058】
また、第1接合部材J1と第2接合部材J2とは、側面パネル20の格納時に接合される。これにより、格納時の側面パネル20は支持材Mに固定される。よって、格納状態の側面パネル20が不意に展開することを防いだり、側面パネル20が必要以上に格納方向に回動することを防いだりすることができる。
【0059】
ここで、側面パネル20が展開した状態で手摺部30の展開が完了していないと、作業者Oが側面パネル20に乗って作業する際に手摺部30が不安定となる。
手摺部30は、制限用部材が機能する前に前記手摺部30の自動の変化が完了する。つまり、側面パネル20の展開が完了する前に、手摺部30の自動の展開が完了する。これにより、作業者Oが側面パネル20の展開時に手摺部30の展開を忘れることを確実に防ぐことができる。
【0060】
また、開閉用部材を操作することで、手摺部30が自動で変化する。つまり、作業者Oは、開閉用部材を操作することのみで、側面パネル20の展開及び手摺部30の展開を行うことができる。これにより、より作業を容易にして効率化することができる。
【0061】
また、開閉用部材は、下面パネル10を通行する作業者Oの目線高さに配置されている。これにより、側面パネル20を開閉する際、作業者Oが不自然な姿勢となることを防ぐことができる。よって、より作業を安全かつ効率的にすることができる。
【0062】
また、開閉用部材と制限用部材とが同一部材である。これにより、より構造を簡素化することができる。
【0063】
また、ケーブル40は、側面パネル20の開度A1が大きくなることに応じて、開角A2を大きくする方向である第1方向R1に手摺部30を回転させるように引っ張る。つまり、側面パネル20が開くことにケーブル40が連動して、手摺部30が開く方向に回転させる。このように、手摺部30の開閉に電力等を必要とするエネルギーを必要とする動力を用いないことで、恒久的に使用することができる。
【0064】
また、ケーブル40の一端は支持材Mに固定され、ケーブル40の他端は手摺部30に固定され、ケーブル40は側面パネル20を通過する。これにより、1本のケーブル40によって各部位を連結することで、簡素な構造で側面パネル20と手摺部30との連動を実現することができる。
【0065】
また、制限用部材は、ケーブル40より下に位置する。これにより、より構造を簡素にするとともに、制限用部材とケーブル40とが干渉することを防ぐことができる。よって、側面パネル20の展開時及び格納時に不具合が発生することを防ぐことができる。
【0066】
また、第1接合部材J1及び第2接合部材J2はケーブル40と干渉しない位置に設置されている。これにより、側面パネル20の展開時及び格納時に不具合が発生することを防ぐことができる。
【0067】
また、手摺部30には手摺部30を格納するための第2ケーブル50が設置されている。これにより、側面パネル20を格納する際、先に手摺部30を格納することで側面パネル20が連動して格納方向に回動する。よって、側面パネル20の格納作業を容易に行うことができる。また、側面パネル20の展開時には、第2ケーブル50を転落防止用の手摺として用いることができる。
【0068】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、手摺部30に伸縮する機構を設けてもよい。これにより、側面パネル20の開度A1に合わせて手摺部30を伸縮させるようにしてもよい。
また、手摺部30の自動変化はケーブル40によって担保されるとして説明したが、これに限らない。例えば、回転軸に回転角センサを設けることで側面パネル20の開度A1を測定し、手摺回転軸30rにサーボモータを設けることで手摺部30を回動させてもよい。
また、側面パネル20は、幅方向D2と平行となるまで展開してもよい。手摺部30の開角A2は、135°以上となるまで展開してもよい。
【0069】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 下面パネル
20 側面パネル
30 手摺部
40 ケーブル
50 第2ケーブル
100 保護パネル
A1 開度
A2 開角
BR 橋梁
D2 幅方向
J1 第1接合部材
J2 第2接合部材
M 支持材
O 作業者
R1 第1方向
S 桁材
【要約】
【課題】点検時の足場として使用できる保護パネルであって、開閉の作業を容易に行うことができ、かつ十分な安全性を確保した保護パネルを提供する。
【解決手段】橋梁BRの下部を保護する保護パネル100であって、橋梁BRの下部に設けられる支持材Mの下端に下部に沿って配置された下面パネル10と、支持材Mに対し橋梁BRの幅方向D2の外側に起立した状態で配置され、支持材Mに対して回動可能に設置されている側面パネル20と、側面パネル20に対して回動可能に配置された手摺部30と、を有し、手摺部30は側面パネル20の開度に応じて開角を自動で変化させることを特徴とする。
【選択図】
図1