(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】物理探査方法及び音源
(51)【国際特許分類】
G01V 1/155 20060101AFI20220404BHJP
G01V 1/02 20060101ALI20220404BHJP
G01S 15/02 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G01V1/155
G01V1/02 D
G01S15/02
(21)【出願番号】P 2018070847
(22)【出願日】2018-04-02
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小笹 弘晃
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-319132(JP,A)
【文献】特開平10-068779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00-99/00
G01S 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似ランダム波を発震して物理探査を行う物理探査方法であって、
所定
の修正加速度信号を生成する信号生成ステップと、
前記修正加速度信号に基づいて修正擬似ランダム波を発震する発震ステップと、を含
み、
前記信号生成ステップは、擬似ランダム波を発震可能な加速度信号を生成する加速度信号生成ステップと、前記加速度信号から前記擬似ランダム波の振幅信号を算出する振幅信号算出ステップと、前記振幅信号から所定の低周波成分を遮断して修正振幅信号を生成する修正振幅信号生成ステップと、前記修正振幅信号から前記修正加速度信号を生成する修正加速度信号生成ステップと、を含む
ことを特徴とする物理探査方法。
【請求項2】
前記信号生成ステップは、前記修正振幅信号が音源の駆動限界を超えているか否か確認する限界確認ステップを含み、前記修正振幅信号が音源の駆動限界を超えていない場合は前記修正加速度信号生成ステップに進み、前記修正振幅信号が音源の駆動限界を超えている場合は前記加速度信号生成ステップ又は前記修正振幅信号生成ステップに戻るように設定されている、
請求項1に記載の物理探査方法。
【請求項3】
前記所定の低周波成分は、周波数が20Hz以下の成分である、請求項1に記載の物理探査方法。
【請求項4】
前記所定の低周波成分は、遮断量が0~100%まで変化する領域を含む、請求項1に記載の物理探査方法。
【請求項5】
少なくとも一つの振動板と、該振動板を駆動させる駆動手段と、該駆動手段に駆動信号を発信する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、所定
の修正加速度信号を前記駆動信号として前記駆動手段に発信するように構成されて
おり、
前記制御装置は、擬似ランダム波を発震可能な加速度信号を生成する信号生成器と、前記加速度信号から前記擬似ランダム波の振幅信号を算出する演算器と、前記振幅信号から所定の低周波成分を遮断して修正振幅信号を生成するハイパスフィルタと、を含み、前記演算器は、前記修正振幅信号から前記修正加速度信号を生成するように構成されている、
ことを特徴とする音源。
【請求項6】
前記制御装置は、前記修正振幅信号が前記振動板の駆動限界を超えている場合に、前記信号生成器により新たな加速度信号を生成する、又は、前記ハイパスフィルタの条件を変更するように構成されている、
請求項5に記載の音源。
【請求項7】
前記所定の低周波成分は、周波数が20Hz以下の成分である、
請求項5に記載の音源。
【請求項8】
前記所定の低周波成分は、遮断量が0~100%まで変化する領域を含む、
請求項5に記載の音源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理探査方法及び音源に関し、特に、水中又は地中に擬似ランダム波を発震して地形・資源等を探査するための物理探査方法及び音源に関する。
【背景技術】
【0002】
大陸棚や深海底には豊富な資源(例えば、石油、天然ガス、メタンハイドレート、多金属団塊、マンガン・クラスト、海底熱水鉱床等)が存在しており、近年の資源価格の高騰により海洋資源開発の必要性が高まっている。また、陸上における天然資源は、一定の地域に偏在しており、国内産出量が少ない資源については、外国からの輸入に頼らざるを得ず、地政学的リスクが少なくない。そして、四方を海に囲まれた我が国においては、安定した資源供給のためにも、海洋地域が資源開発の新たなフロンティアとして注目されている。
【0003】
ところで、擬似ランダム波(二進数の擬似ランダム数列を波の位相差で表現したもの)は発震信号と受振信号との間で高い相関が取れるため、水中音響通信分野で使用されている。同じ理由から物理探査分野でも擬似ランダム波の適用可能性が検討・研究されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、コード配列が互いに異なる擬似ランダムコード信号を用いて、複数の発震器から複数の擬似ランダム波を同時に発震・受振し、解析を行なうことで、個々の発震器の信号だけを分離することを特徴とする擬似ランダム波を用いた多重発震による非破壊計測方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、物理探査時に使用する音波がスウィープ波(一定の速度で変化する周波数を有する音波)である場合には、正の位相(上に凸な信号)と負の位相(下に凸な信号)とが交互に繰り返されることから、音波を発震する振動板(音源)の振動は必ず往復運動を繰り返すこととなる。
【0007】
それに対して、物理探査時に使用する音波が擬似ランダム波である場合には、正の位相(上に凸な信号)と負の位相(下に凸な信号)とがランダムに配列されることから、正の位相(上に凸な信号)が継続して繰り返されたり、負の位相(下に凸な信号)が継続して繰り返されたりすることがある。このように同じ位相が継続して繰り返された場合には、振動板の変位量(振幅)が装置の駆動限界を超えてしまい、一時的に音波を発震することができない状態に陥ることとなる。
【0008】
したがって、振動板の変位量(振幅)が装置の駆動限界を超えた場合には、音波の音圧レベルが低下してしまう、発震した音波の波形が予定していた擬似ランダム波と異なってしまい相互相関がとれなくなってしまう等の問題を生じる。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、擬似ランダム波を用いた場合であっても、振動板の変位量(振幅)が装置の駆動限界を超えないようにすることができる、物理探査方法及び音源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、擬似ランダム波を発震して物理探査を行う物理探査方法であって、所定の修正加速度信号を生成する信号生成ステップと、前記修正加速度信号に基づいて修正擬似ランダム波を発震する発震ステップと、を含み、前記信号生成ステップは、擬似ランダム波を発震可能な加速度信号を生成する加速度信号生成ステップと、前記加速度信号から前記擬似ランダム波の振幅信号を算出する振幅信号算出ステップと、前記振幅信号から所定の低周波成分を遮断して修正振幅信号を生成する修正振幅信号生成ステップと、前記修正振幅信号から前記修正加速度信号を生成する修正加速度信号生成ステップと、を含むことを特徴とする物理探査方法が提供される。
【0012】
さらに、前記信号生成ステップは、前記修正振幅信号が音源の駆動限界を超えているか否か確認する限界確認ステップを含み、前記修正振幅信号が音源の駆動限界を超えていない場合は前記修正加速度信号生成ステップに進み、前記修正振幅信号が音源の駆動限界を超えている場合は前記加速度信号生成ステップ又は前記修正振幅信号生成ステップに戻るように設定されていてもよい。
【0013】
また、前記所定の低周波成分は、周波数が20Hz以下の成分であってもよい。
【0014】
また、前記所定の低周波成分は、遮断量が0~100%まで変化する領域を含んでいてもよい。
【0015】
また、本発明によれば、少なくとも一つの振動板と、該振動板を駆動させる駆動手段と、該駆動手段に駆動信号を発信する制御装置と、を備え、前記制御装置は、所定の修正加速度信号を前記駆動信号として前記駆動手段に発信するように構成されており、前記制御装置は、擬似ランダム波を発震可能な加速度信号を生成する信号生成器と、前記加速度信号から前記擬似ランダム波の振幅信号を算出する演算器と、前記振幅信号から所定の低周波成分を遮断して修正振幅信号を生成するハイパスフィルタと、を含み、前記演算器は、前記修正振幅信号から前記修正加速度信号を生成するように構成されている、ことを特徴とする音源が提供される。
【0017】
さらに、前記制御装置は、前記修正振幅信号が前記振動板の駆動限界を超えている場合に、前記信号生成器により新たな加速度信号を生成する、又は、前記ハイパスフィルタの条件を変更するように構成されていてもよい。
【0018】
また、前記所定の低周波成分は、周波数が20Hz以下の成分であってもよい。
【0019】
また、前記所定の低周波成分は、遮断量が0~100%まで変化する領域を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0020】
上述した本発明に係る物理探査方法及び音源によれば、擬似ランダム波から所定の低周波成分を遮断した修正加速度信号を生成することによって、振動板の変位量(振幅)が大きい低周波成分の音波を除去することができ、振動板の変位量(振幅)が装置の駆動限界を超えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る物理探査方法を示すフロー図である。
【
図2】擬似ランダム波の特性を示す図であり、(a)はスウィープ波の振幅、(b)は擬似ランダム波の振幅、を示している。
【
図3】加速度信号生成ステップで生成された加速度信号の一例を示す図である。
【
図4】振幅信号算出ステップで算出された振幅信号及び修正振幅信号生成ステップで生成された修正振幅信号を示す図である。
【
図5】低周波成分の遮断方法を示す概念図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、を示している。
【
図6】低周波成分の遮断前後における音圧レベルを示す図であり、(a)遮断前(振幅信号)、(b)は遮断後(修正振幅信号)、を示している。
【
図7】修正加速度信号生成ステップで生成された修正加速度信号を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る音源を示す図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、を示している。
【
図9】本発明の一実施形態に係る音源を示す図であり、(a)は第三例、(b)は第四例、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図9(b)を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係る物理探査方法を示すフロー図である。
図2は、擬似ランダム波の特性を示す図であり、(a)はスウィープ波の振幅、(b)は擬似ランダム波の振幅、を示している。
【0023】
本発明の一実施形態に係る物理探査方法は、
図1に示したように、擬似ランダム波を発震して物理探査を行う物理探査方法であって、所定の低周波成分を遮断した修正加速度信号Acを生成する信号生成ステップStep1と、修正加速度信号Acに基づいて修正擬似ランダム波Wcを発震する発震ステップStep2と、を含んでいる。
【0024】
信号生成ステップStep1は、例えば、擬似ランダム波Wrを発震可能な加速度信号Arを生成する加速度信号生成ステップStep11と、加速度信号Arから擬似ランダム波Wrの振幅信号Srを算出する振幅信号算出ステップStep12と、振幅信号Srから所定の低周波成分を遮断して修正振幅信号Scを生成する修正振幅信号生成ステップStep13と、修正振幅信号Scが音源の駆動限界を超えているか否か確認する限界確認ステップStep14と、修正振幅信号Scから修正加速度信号Acを生成する修正加速度信号生成ステップStep15と、を含んでいる。
【0025】
図2(a)の左図に示したように、物理探査時に使用する音波がスウィープ波(一定の速度で変化する周波数を有する音波)である場合には、加速度信号は、正の位相(上に凸な信号)と負の位相(下に凸な信号)とが交互に繰り返される。ここで、音波の位相を二進法で表示すれば、正の位相は「0」、負の位相は「1」と表示することができる。
【0026】
この加速度信号を二階積分することによって、
図2(a)の右図に示したように、振動板(音源)の振幅信号を算出することができる。スウィープ波は、正の位相(0)と負の位相(1)とを交互に繰り返すことから、音波を発震する振動板(音源)の振幅も往復運動を繰り返すこととなる。したがって、振動板の変位量(振幅)が装置の駆動限界(図の点線で示したライン)を超えることはない。
【0027】
それに対して、物理探査時に使用する音波が擬似ランダム波である場合には、
図2(b)の左図に示したように、正の位相(0)と負の位相(1)とがランダムに配列されることから、正の位相(0)又は負の位相(1)が継続して繰り返される場合もある。図では、正の位相(0)が5回継続して繰り返されている場合を示している。
【0028】
このように同じ位相が継続して繰り返された場合には、
図2(b)の右図に示したように、振動板の変位量(振幅)が装置の駆動限界(図の点線で示したライン)を超えてしまい、音波を発震することができない状態に陥ることとなる。その結果、音波の音圧レベルが低下したり、発震した音波の波形が予定していた擬似ランダム波と異なってしまい相互相関がとれなくなってしまったりすることとなる。
【0029】
そこで、本願発明者は、音波の低周波成分は振幅が大きいことに着目し、擬似ランダム波から所定の低周波成分を除去すれば、擬似ランダム波の位相を保持しつつ擬似ランダム波を発震する振動板の振幅を小さくすることができるのではないかとの着想に至った。以下、
図3~
図7を参照しつつ、
図1に示したフロー図の詳細について説明する。
【0030】
ここで、
図3は、加速度信号生成ステップで生成された加速度信号の一例を示す図である。
図4は、振幅信号算出ステップで算出された振幅信号及び修正振幅信号生成ステップで生成された修正振幅信号を示す図である。
図5は、低周波成分の遮断方法を示す概念図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、を示している。
図6は、低周波成分の遮断前後における音圧レベルを示す図であり、(a)遮断前(振幅信号)、(b)は遮断後(修正振幅信号)、を示している。
図7は、修正加速度信号生成ステップで生成された修正加速度信号を示す図である。
【0031】
加速度信号生成ステップStep11は、
図3に示したように、擬似ランダム波Wrを発震可能な加速度信号Arを生成するステップである。加速度信号Arは、0(正の位相)と1(負の位相)の乱数列によって生成される。擬似ランダム波Wrの場合、真の乱数列ではなく、ある計算によって求められた擬似的な乱数列を使用する。擬似ランダム数列は、例えば、擬似乱数列を生成するアルゴリズムを含む擬似乱数列生成器によって生成することができる。
【0032】
振幅信号算出ステップStep12は、加速度信号Arを二階積分することによって振幅信号Srを算出するステップである。
図4において、太い点線で図示した振幅信号Srは、
図3に示した加速度信号Arに基づいて算出したものである。ここで、振動板の駆動限界を±γとすれば、
図4に細い点線で図示したように駆動限界を引くことができる。通常の擬似ランダム波Wrの加速度信号Arから振幅信号Srを算出すると、
図4に示したように、駆動限界γを超えることとなる。
【0033】
修正振幅信号生成ステップStep13は、
図4に示したように、振幅信号Srから太い実線で示した修正振幅信号Scを生成するステップである。具体的には、ハイパスフィルタを使用して振幅信号Srから所定の低周波成分を遮断して修正振幅信号Scを生成する。
【0034】
ここで、低周波成分の遮断方法について説明する。振幅信号Srを音圧レベルで表示し直すと、
図5(a)に示したように図示することができる。ここで、横軸は周波数(Hz)、縦軸は音圧レベル(dB)である。そして、周波数α以下の周波数帯域(図の斜線を引いた部分)を全て遮断することにより、擬似ランダム波Wrの低周波成分を遮断することができる。一般に、水中で音波を発震するエアガン(圧縮空気発音方式)では、20~60Hzの音波が卓越していることが知られている(例えば、港湾技研資料No.456、1983年6月、音波探査法の現況とその実施例の検討、運輸省港湾技術研究所発行)。
【0035】
そこで、遮断する低周波成分としてα=20Hzと設定することにより、少なくともエアガンと同程度の周波数帯域をカバーすることができる。また、エアガンよりも探査深度を深くしたい場合には、αを20Hzより小さい数値(例えば、15Hz、10Hz、5Hz等)に設定してもよい。
【0036】
また、
図5(b)に示したように、低周波成分の遮断量が0~100%まで変化する領域を含んでいてもよい。例えば、A点までの低周波成分を100%遮断し、A点から徐々に遮断量を少なくしてB点で遮断量を0%にする。このとき、遮断量は一定の割合で少なくしてもよいし、A点付近の遮断量を多くしてB点付近の遮断量を漸減させるようにしてもよいし、A点付近の遮断量を少なくしてB点付近の遮断量を漸増させるようにしてもよい。
【0037】
なお、このようにA点からB点の間で遮断量を変化させる場合には、B点の周波数を20Hz又は20Hz未満となるように設定してもよいが、A点の周波数はB点の周波数よりも小さく設定する必要がある。また、A点とB点の中間点が20Hz又は20Hz未満となるように設定してもよい。このとき、B点の周波数は20Hzを超えていてもよい。
【0038】
ここで、
図6(a)は、
図4に示した振幅信号Srを音圧レベルで表示したものであり、横軸は周波数(Hz)、縦軸は音圧レベル(dB)を示している。そして、
図6(a)に示したグラフから所定の低周波成分を遮断した音圧レベルを
図6(b)に示している。ここでは、5Hzまでの遮断量を100%とし、10Hzの遮断量を0%とし、5Hz付近の遮断量を多くして10Hz付近の遮断量を漸減させるようにしている。
【0039】
そして、
図6(b)に示した音圧レベルを振幅信号に表示し直すと、
図4に示した修正振幅信号Scを得ることができる。
【0040】
限界確認ステップStep14は、修正振幅信号Scが駆動限界γを超えているか否か確認するステップである。修正振幅信号Scが音源の駆動限界γを超えていない場合(No)は、
図1に示したように、次のステップ(修正加速度信号生成ステップStep15)に進む。
【0041】
一方、修正振幅信号Scが音源の駆動限界γを超えている場合(Yes)は、
図1において実線で示したように、加速度信号生成ステップStep11に戻って、擬似ランダム波Wrの加速度信号Arの生成からやり直すようにしてもよい。また、
図1において点線で示したように、修正振幅信号生成ステップStep13に戻って、低周波成分の遮断条件を変更するようにしてもよい。
【0042】
なお、限界確認ステップStep14は、必要に応じて省略することができる。例えば、どのような擬似ランダム波Wrが生成された場合であっても、音源の駆動限界γを超えないように、低周波成分の遮断条件を設定できる場合には、限界確認ステップStep14を省略することができる。
【0043】
また、物理探査時に信号生成ステップStep1を行わずに、事前に音源の駆動限界γを超えない修正振幅信号Scを生成し、その修正振幅信号Scを音源に記憶させて物理探査に使用するような場合には、限界確認ステップStep14を省略することができる。
【0044】
修正加速度信号生成ステップStep15は、修正振幅信号Scを二階微分することによって修正加速度信号Acを生成するステップである。
図4に示した修正振幅信号Scから生成した修正加速度信号Acを
図7に示している。
【0045】
発震ステップStep2は、修正加速度信号Acに基づいて振動板(音源)の変位量(振幅)を制御して修正擬似ランダム波Wcを発震するステップである。この修正擬似ランダム波Wcを発震することにより、振動板の変位量(振幅)が装置の駆動限界γを超えることがなく、音波を発震することができない状態に陥らないようにすることができる。したがって、音波の音圧レベルの低下を抑制することができる。また、発震した音波の波形が予定していたものと異なってしまうことがなく、発震信号と受振信号との相互相関も容易にとることができる。
【0046】
なお、上述した信号生成ステップStep1は、加速度信号生成ステップStep11~修正加速度信号生成ステップStep15を含むものであるが、これらのステップに限定されるものではない。
【0047】
次に、上述した物理探査方法で使用する音源について、
図8(a)~
図9(b)を参照しつつ説明する。ここで、
図8は、本発明の一実施形態に係る音源を示す図であり、(a)は第一例、(b)は第二例、を示している。
図9は、本発明の一実施形態に係る音源を示す図であり、(a)は第三例、(b)は第四例、を示している。
【0048】
図8(a)に示した第一例の音源1は、二枚の振動板11と、各振動板11を駆動させる駆動手段12と、各駆動手段12に駆動信号を発信する制御装置13と、を備え、制御装置13は、所定の低周波成分を遮断した修正加速度信号Acを駆動信号として駆動手段12に発信するように構成されている。
【0049】
振動板11は、例えば、円板形状を有しており、駆動手段12及び制御装置13を収容するケーシング14の表面に弾性体15を介して接続されている。二枚の振動板11は、ケーシング14の相対する面に配置されている。振動板11の外周には弾性体15が配置されていることから、振動板11は配置面に対して垂直な方向に往復動可能に構成されている。
【0050】
駆動手段12は、例えば、往復動可能なピストンロッド12aを備えた液圧シリンダであり、サーボ弁12bの操作によって作動可能に構成されている。ピストンロッド12aの先端は、振動板11の背面に接続されている。したがって、サーボ弁12bによって液圧シリンダに供給される作動流体の流量を調整することにより、ピストンロッド12a及び振動板11を往復動させることができる。
【0051】
制御装置13は、ピストンロッド12aを駆動するための駆動信号をサーボ弁12bに発信するコンピュータである。制御装置13は、擬似ランダム波Wrを発震可能な加速度信号Arを生成する信号生成器13aと、加速度信号Arから擬似ランダム波Wrの振幅信号Srを算出する演算器13bと、振幅信号Srから所定の低周波成分を遮断して修正振幅信号Scを生成するハイパスフィルタ13cと、を含んでいてもよい。また、演算器13bは、修正振幅信号Scから修正加速度信号Acを生成するように構成されていてもよい。かかる構成により、上述した物理探査方法を実行することができる。
【0052】
なお、制御装置13は、予め加速度信号Arを記憶させた記憶装置を備えていてもよい。この場合、信号生成器13aを省略することができる。また、予め修正加速度信号Acを記憶させた記憶装置を備えていてもよい。この場合、信号生成器13a、演算器13b及びハイパスフィルタ13cを省略することができる。
【0053】
図8(b)に示した第二例の音源1は、一枚の振動板11と、振動板11を駆動させる駆動手段12と、駆動手段12に駆動信号を発信する制御装置13と、を備え、制御装置13は、所定の低周波成分を遮断した修正加速度信号Acを駆動信号として駆動手段12に発信するように構成されている。第一例の音源1は、振動板11及び駆動手段12を含む駆動ユニットを二つ備えているのに対し、第二例の音源1は、一つの駆動ユニットを備えているものである。第二例の音源1の各構成は、上述した第一例の音源1と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0054】
第一例の音源1は、例えば、発震位置を移動させながら水中で間欠的に擬似ランダム波を発震する物理探査方法に適している。また、第二例の音源1は、例えば、地面や海底に向かって擬似ランダム波を発震する物理探査方法に適している。
【0055】
図9(a)に示した第三例の音源1は、第一例の音源1における駆動手段12の構成を変更したものである。駆動手段12は、例えば、往復動可能な駆動ロッド12cと、駆動ロッド12cを電磁力によって駆動させる電気コイル12dと、を備えている。かかる構成によっても、電気コイル12dに電流を流すことによって、図中の矢印方向の電磁力を生じさせて駆動ロッド12cを往復動させることができる。
【0056】
なお、駆動ロッド12cの駆動方向を変更する場合には、電気コイル12dに流す電流の向きを逆転させればよい。また、電気コイル12dに流す電流の向き、大きさ、時間等の条件は制御装置13によって制御される。
【0057】
図9(b)に示した第四例の音源1は、第二例の音源1における駆動手段12の構成を変更したものである。かかる駆動手段12の構成は、上述した第三例の音源1と同じ構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0058】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、例えば、海洋資源の調査だけでなく、鉱山資源の調査、土木・環境調査等の種々の用途に使用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1 音源
11 振動板
12 駆動手段
12a ピストンロッド
12b サーボ弁
12c 駆動ロッド
12d 電気コイル
13 制御装置
13a 信号生成器
13b 演算器
13c ハイパスフィルタ
14 ケーシング
15 弾性体
Ac 修正加速度信号
Ar 加速度信号
Sc 修正振幅信号
Sr 振幅信号
Wc 修正擬似ランダム波
Wr 擬似ランダム波
Step1 信号生成ステップ
Step11 加速度信号生成ステップ
Step12 振幅信号算出ステップ
Step13 修正振幅信号生成ステップ
Step14 限界確認ステップ
Step15 修正加速度信号生成ステップ
Step2 発震ステップ