(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】真空調理用冷凍食品、及び真空調理用冷凍食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 3/36 20060101AFI20220404BHJP
A23L 19/10 20160101ALI20220404BHJP
A23L 17/40 20160101ALI20220404BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20220404BHJP
【FI】
A23L3/36 A
A23L19/10
A23L17/40 A
A23L17/40 C
A23L5/10 F
(21)【出願番号】P 2021526144
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023126
(87)【国際公開番号】W WO2020250999
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2019109374
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502313406
【氏名又は名称】有限会社魚庄
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】園田 正弥
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特許第5044036(JP,B1)
【文献】特開2012-115185(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152820(WO,A1)
【文献】'マルハニチロ 茶あらい骨なし 秋鮭切身 300g (60g×5枚) 秋サケ 切身 冷凍 簡単 お手軽 業務用
【文献】業務用(単品)ロイヤルシェフ 上海焼きそば 冷凍1kg, 2019.04.27 [検索日 2021.12.08], インターネット:<URL:https://store.shopping.yahoo.co.jp/coffeenomarch/295356000sx3k.html?sc_i=shp_pc_search_itemlist_shsrg_title#>
【文献】楽らく調味骨ナシ天然ブリ(生)照焼5枚 328g, 2017.12.25 [検索日 2021.12.08], インターネット:<URL:https://store.shopping.yahoo.co.jp/yamaoku-online/86601.html?sc_i=shp_pc_search_itemlist_shsrg_title>
【文献】後藤昌弘ら,ランダム・セントロイド最適化法を用いた真空調理法による肉じゃがの最適減塩調理条件の検討,日本食生活学会誌,2004年,Vol.14, No.4,p.282-288
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/36
A23L 19/10
A23L 17/40
A23L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱可能な密封容器に、冷凍状態にされた未調理食材と、調味液とを封入した真空調理用冷凍食品であって、
前記未調理食材は、ブランチング処理が施された芋類又は根菜類であり、
前記密封容器に、スチームコンベクションオーブンによる調理条件
として、加熱温度が92~95℃であり、加熱時間が47~53分であることが表示され
、当該調理条件に従って調理するための真空調理用冷凍食品。
【請求項2】
加熱可能な密封容器に、冷凍状態にされた未調理食材と、調味液とを封入した真空調理用冷凍食品であって、
前記未調理食材は、霜降り処理が施されたエビ類又は貝類であり、
前記密封容器に、スチームコンベクションオーブンによる調理条件として、加熱温度が67~73℃であり、加熱時間が32~38分であることが表示され、当該調理条件に従って調理するための真空調理用冷凍食品。
【請求項3】
前記密封容器に、重量のばらつきが10%以下である複数の前記未調理食材が封入されている請求項1又は2に記載の真空調理用冷凍食品。
【請求項4】
前記密封容器は、パウチであり、当該パウチを平置きしたときに複数の前記未調理食材が重ならないように封入されている請求項1~3の何れか一項に記載の真空調理用冷凍食品。
【請求項5】
複数の前記未調理食材が互いに接触することがないよう、複数の前記未調理食材の間に前記調味液が介在する請求項4に記載の真空調理用冷凍食品。
【請求項6】
前記未調理食材と前記調味液との封入比率は、重量比で75:25~60:40である請求項1~5の何れか一項に記載の真空調理用冷凍食品。
【請求項7】
前記調味液の粘度を1~20Pa・sに調整してある請求項1~6の何れか一項に記載の真空調理用冷凍食品。
【請求項8】
加熱可能な密封容器に、未調理食材と、調味液とを封入した真空調理用冷凍食品の製造方法であって、
冷凍状態にされた-10℃以下の前記未調理食材と、5℃以下の前記調味液とを、前記密封容器の表面の温度が5℃以下となるように維持して、前記密封容器に封入する封入工程と、
前記未調理食材と、前記調味液とを封入した前記密封容器を、-10℃以下に冷却する冷却工程と
を包含し、
前記未調理食材は、ブランチング処理が施された芋類又は根菜類であり、
前記封入工程を実行する前又は後に、前記密封容器に、スチームコンベクションオーブンによる調理条件
として、加熱温度が92~95℃であり、加熱時間が47~53分であることの表示を設け
、当該調理条件に従って調理される真空調理用冷凍食品の製造方法。
【請求項9】
加熱可能な密封容器に、未調理食材と、調味液とを封入した真空調理用冷凍食品の製造方法であって、
冷凍状態にされた-10℃以下の前記未調理食材と、5℃以下の前記調味液とを、前記密封容器の表面の温度が5℃以下となるように維持して、前記密封容器に封入する封入工程と、
前記未調理食材と、前記調味液とを封入した前記密封容器を、-10℃以下に冷却する冷却工程と
を包含し、
前記未調理食材は、霜降り処理が施されたエビ類又は貝類であり、
前記封入工程を実行する前又は後に、前記密封容器に、スチームコンベクションオーブンによる調理条件として、加熱温度が67~73℃であり、加熱時間が32~38分であることの表示を設け、当該調理条件に従って調理される真空調理用冷凍食品の製造方法。
【請求項10】
前記密封容器は、パウチであり、
前記冷却工程を実行する前に、前記パウチを平置きし、封入されている複数の前記未調理食材を、互いに重ならないように配置させるならし工程を実行する
請求項8又は9に記載の真空調理用冷凍食品の製造方法。
【請求項11】
前記調味液の粘度を1~20Pa・sに調整する調整工程をさらに包含する請求項8~10の何れか一項に記載の真空調理用冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱可能な密封容器に、冷凍状態にされた未調理食材と、調味液とを封入した真空調理用冷凍食品、及び真空調理用冷凍食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食店等において大量調理用の加熱機器として、スチームコンベクションオーブンの導入が増えている。スチームコンベクションオーブンは、ファンにより熱風を強制対流させるコンベクションオーブンに蒸気発生装置を取り付けたものであり、焼く(オーブンモード)、蒸す(スチームモード)、及び蒸し焼(コンビモード)の3つのモードでの加熱調理を使い分けることができる。このようなスチームコンベクションオーブンの機能に注目して、簡便に調理可能なスチームコンベクションオーブン用の食品が開発されている。
【0003】
例えば、具材に蒟蒻粉を混入させたスチームコンベクションオーブン用お好み焼き半調理品がある(特許文献1を参照)。特許文献1のスチームコンベクションオーブン用お好み焼き半調理品では、スチームコンベクションオーブンによる加熱調理では蒸発しないキャベツの水分を蒟蒻粉がゲル化することなく保持することで、他の具材や生地へ水分を漏出させることなく焼き上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スチームコンベクションオーブンのスチームモードでは、処理室内を蒸気が飽和している状態に保ちつつ対象を加熱することで、加熱温度を1℃単位で管理して調理することができる。このような特徴を利用することで、より多彩な料理の調理が可能である。しかしながら、特許文献1のスチームコンベクションオーブン用お好み焼き半調理品は、コンビモードでの蒸し焼き調理用の食品であり、加熱温度を1℃単位で管理できるというスチームモードの特徴を生かしたものではなかった。そこで、スチームモードでの調理を想定した食品の開発が望まれる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、スチームコンベクションオーブンのスチームモードの特徴を生かして、簡便に優れた品質の料理を調理可能な真空調理用冷凍食品、及び真空調理用冷凍食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明にかかる真空調理用冷凍食品の特徴構成は、
加熱可能な密封容器に、冷凍状態にされた未調理食材と、調味液とを封入した真空調理用冷凍食品であって、
前記密封容器に、スチームコンベクションオーブンによる調理条件が表示されていることにある。
【0008】
本構成の真空調理用冷凍食品によれば、密封容器にスチームコンベクションオーブンによる調理条件が表示されていることにより、加熱温度を1℃単位で管理可能なスチームモードの特性を生かして、温度調節が重要な真空調理を、最適な調理条件で行うことが容易となるため、簡便に優れた品質の料理を調理することができる。また、加熱可能な密封容器に、冷凍状態にされた未調理食材と、調味液とを封入していることにより、未調理食材の解凍と真空調理とを同時に行うことができるため、煮崩れや縮み等の食材の変化を抑えることが可能である。
【0009】
本発明にかかる真空調理用冷凍食品において、
前記未調理食材は、未加熱食材であることが好ましい。
【0010】
一般に、冷凍前に熱変性させていない未加熱の冷凍食材を解凍してから加熱調理を行う場合、食材の煮崩れが発生しやすくなる。本構成の真空調理用冷凍食品では、食材に応じた適切な調理条件を表示しておくことにより、スチームコンベクションオーブンを用いて適切な真空調理を行うことが容易となるため、未調理食材が未加熱食材であっても、調理時の煮崩れの発生を抑制することができる。
【0011】
本発明にかかる真空調理用冷凍食品において、
前記密封容器に、重量のばらつきが10%以下である複数の前記未調理食材が封入されていることが好ましい。
【0012】
真空調理では、所定時間の間、食材の中心温度を一定の温度に保つことが重要である。本構成の真空調理用冷凍食品によれば、密封容器に重量のばらつきが10%以下である複数の未調理食材が封入されていることにより、表示された調理条件でスチームコンベクションオーブンにより真空調理を行ったときに、複数の食材間で中心温度の変化が同様になり、中心温度が一定となる時間が揃うため、品質の揃った料理を調理することができる。
【0013】
本発明にかかる真空調理用冷凍食品において、
前記密封容器は、パウチであり、当該パウチを平置きしたときに複数の前記未調理食材が重ならないように封入されていることが好ましい。
【0014】
本構成の真空調理用冷凍食品によれば、密封容器がパウチであり、当該パウチを平置きしたときに複数の未調理食材が重ならないように封入されていることにより、スチームコンベクションオーブンによる加熱調理時に食材同士の接触が抑えられるため、煮崩れ等により食材の形状が損なわれることを抑制することができる。
【0015】
本発明にかかる真空調理用冷凍食品において、
複数の前記未調理食材が互いに接触することがないよう、複数の前記未調理食材の間に前記調味液が介在することが好ましい。
【0016】
本構成の真空調理用冷凍食品によれば、複数の未調理食材が互いに接触することがないよう、複数の未調理食材の間に前記調味液が介在することにより、真空調理用冷凍食品の輸送時に未調理食材同士が接触することがないため、未調理食材の形状が損なわれることを抑制することができる。
【0017】
本発明にかかる真空調理用冷凍食品において、
前記未調理食材と前記調味液との封入比率は、重量比で75:25~60:40であることが好ましい。
【0018】
本構成の真空調理用冷凍食品によれば、未調理食材と調味液との封入比率が上記の範囲にあることにより、密封容器に表示されている調理条件でスチームコンベクションオーブンにより加熱したときに、未調理食材の形状が煮崩れ等により損なわれることを抑制することができる。さらに、真空調理用冷凍食品の輸送時においても、未調理食材同士が接触することで、未調理食材の形状が損なわれることを抑制することができる。
【0019】
本発明にかかる真空調理用冷凍食品において、
前記調理条件は、スチームコンベクションオーブンによる加熱温度、及び加熱時間を含むことが好ましい。
【0020】
本構成の真空調理用冷凍食品によれば、調理条件が、スチームコンベクションオーブンによる加熱温度、及び加熱時間を含むことにより、加熱温度を1℃単位で設定できるスチームコンベクションオーブンを用いて真空調理を行う場合に、食材や料理の種類に応じた適切な温度で適切な時間加熱することが容易になる。その結果、煮崩れ等により食材の形状が損なわれることや、食材の食感が損なわれることを防いで、優れた品質の料理を調理することができる。
【0021】
本発明にかかる真空調理用冷凍食品において、
前記未調理食材は、芋類又は根菜類であり、
前記調理条件は、加熱温度が92~95℃であり、加熱時間が47~53分であることが好ましい。
【0022】
本構成の真空調理用冷凍食品によれば、上記の調理条件でスチームコンベクションオーブンにより真空調理を行うことで、煮崩れすることなく、簡便に味の染みた優れた品質の芋類又は根菜類の煮物を調理することができる。
【0023】
本発明にかかる真空調理用冷凍食品において、
前記未調理食材は、エビ類又は貝類であり、
前記調理条件は、加熱温度が67~73℃であり、加熱時間が32~38分であることが好ましい。
【0024】
本構成の真空調理用冷凍食品によれば、上記の調理条件でスチームコンベクションオーブンにより真空調理を行うことで、エビ類又は貝類を過度に縮ませることなく、簡便に食感がしっとりとした優れた品質のエビ料理又は貝類料理を調理することができる。
【0025】
上記課題を解決するための本発明にかかる真空調理用冷凍食品の製造方法の特徴構成は、
加熱可能な密封容器に、未調理食材と、調味液とを封入した真空調理用冷凍食品の製造方法であって、
冷凍状態にされた-10℃以下の前記未調理食材と、5℃以下の前記調味液とを、前記密封容器の表面の温度が5℃以下となるように維持して、前記密封容器に封入する封入工程と、
前記未調理食材と、前記調味液とを封入した前記密封容器を、-10℃以下に冷却する冷却工程と
を包含し、
前記封入工程を実行する前又は後に、前記密封容器に、スチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示を設けることにある。
【0026】
本構成の真空調理用冷凍食品の製造方法によれば、冷凍状態にされた-10℃以下の未調理食材と、5℃以下の調味液とを、密封容器の表面の温度が5℃以下となるように維持して、密封容器に封入する封入工程と、未調理食材と、調味液とを封入した前記密封容器を、-10℃以下に冷却する冷却工程とを包含し、封入工程を実行する前又は後に密封容器にスチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示を設けることにより、加熱温度を1℃単位で管理可能なスチームモードの特性を生かして、温度調節が重要な真空調理を最適な調理条件で行うことが容易な真空調理用冷凍食品を製造することができる。また、製造される真空調理用冷凍食品は、未調理食材の解凍と真空調理とを同時に行うことができるため、煮崩れや縮み等の食材の変化を抑えることが可能である。
【0027】
本発明にかかる真空調理用冷凍食品の製造方法において、
前記密封容器は、パウチであり、
前記冷却工程を実行する前に、前記パウチを平置きし、封入されている複数の前記未調理食材を、互いに重ならないように配置させるならし工程を実行することが好ましい。
【0028】
本構成の真空調理用冷凍食品の製造方法によれば、密封容器がパウチであり、冷却工程を実行する前に、パウチを平置きし、封入されている複数の未調理食材を、互いに重ならないように配置させるならし工程を実行することにより、製造される真空調理用冷凍食品では、スチームコンベクションオーブンによる加熱調理時に食材同士の接触が抑えられるため、煮崩れ等により食材の形状が損なわれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の真空調理用冷凍食品の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の真空調理用冷凍食品、及び真空調理用冷凍食品の製造方法について説明する。ただし、本発明は、以下の構成に限定されることを意図しない。
【0031】
<真空調理用冷凍食品>
図1は、本発明の真空調理用冷凍食品1の説明図である。本発明の真空調理用冷凍食品1は、スチームコンベクションオーブン(図示せず)により調理されるものである。真空調理用冷凍食品1は、加熱可能な密封容器10に、冷凍状態にされた未調理食材20と、調味液30とを封入したものであり、密封容器10に、スチームコンベクションオーブンによる調理条件11が表示されている。
【0032】
密封容器10は、可撓性を有する容器であり、例えば、樹脂フィルムを製袋した容量が0.2~4Lのパウチを用いることができる。パウチの容量が0.2~4Lであれば、後述する好適な量の未調理食材20、及び調味液30を封入することができる。樹脂フィルムとしては、ナイロン樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、及びポリエステル樹脂フィルム等が挙げられる。これらの樹脂フィルムは、単独で用いることもできるが、異なる素材の樹脂フィルムを積層することで、耐ピンホール性、耐熱性、耐冷性、及びガスバリア性に優れた多層フィルムとして用いることが好ましい。例えば、殻が突き刺さることによって密封容器10にピンホールが生じやすいエビ等の未調理食材20を封入する場合には、耐ピンホール性に優れたナイロン樹脂フィルムを含む多層フィルム製の密封容器10を用いることが好ましい。
【0033】
密封容器10の表面には、スチームコンベクションオーブンによる調理条件11が表示されている。調理条件11の表示は、密封容器10の表面に直接印刷、又は調理条件11を印刷したラベルを密封容器10に貼り付けることにより設けられている。調理条件11としては、スチームモードでの加熱温度11a、及び加熱時間11bを含むことが好ましい。真空調理では、密封容器10内の水分が過剰に蒸気とならない最高加熱温度である95℃以下で調理することが好ましいが、食材の種類によって適切な温度で適切な時間加熱した場合には、煮崩れ等により食材の形状が損なわれることや、食材の食感が損なわれることを防いで、優れた品質の料理を調理することができる。そこで、加熱温度11aには、1℃単位で設定できるスチームコンベクションオーブンを用いて真空調理を行う場合に、スチームコンベクションオーブンの最適な設定温度を、食材に応じて95℃以下で表示することが好ましい。また、一般生菌消滅温度である60℃以上で真空調理を行うことで、調理後の真空調理用冷凍食品1は、密封容器10を未開封のまま一定期間(例えば、5日程度)保存することも可能である。そこで、加熱温度11aには、スチームモードでの加熱温度を60~95℃の範囲内で表示することがより好ましい。加熱時間11bには、加熱温度11aに表示する温度をスチームコンベクションオーブンに設定した場合に、スチームモードでの加熱開始から加熱終了までの最適な時間を、食材に応じて表示することが好ましい。
【0034】
例えば、芋類、根菜類、及び野菜類等は、未調理の冷凍食材を解凍してから鍋等で加熱調理を行う場合や、レトルト食品として加圧高温処理を行う場合に食材の煮崩れが発生しやすいが、真空調理用冷凍食品1では、調理条件11として食材に応じた適切な加熱温度11aと加熱時間11bとを表示しておくことにより、スチームコンベクションオーブンを用いて最適な調理条件で真空調理を行うことが容易となるため、煮崩れすることなく、味の染みた優れた品質の芋類、根菜類、及び野菜類等の煮物を簡便に調理することができる。未調理食材20として里芋等の芋類、又は大根等の根菜類を封入する場合、調理条件11として、92~95℃の加熱温度11aと47~53分の加熱時間11bとを表示することが好ましく、95℃の加熱温度11aと50分の加熱時間11bとを表示することがより好ましい。未調理食材20としてカボチャを封入する場合、調理条件11として、82~88℃の加熱温度11aと47~53分の加熱時間11bとを表示することが好ましく、85℃の加熱温度11aと50分の加熱時間11bとを表示することがより好ましい。
【0035】
また、エビ類、貝類、及び肉類等は、レトルト食品として加圧高温処理を行う場合に食材が縮みやすく、柔らかな食感が失われることがあるが、真空調理用冷凍食品1では、調理条件11として、動物性たんぱく質の分水作用開始温度である68℃に近い適切な加熱温度11aと加熱時間11bとを表示しておくことにより、スチームコンベクションオーブンを用いて最適な調理条件で真空調理を行うことが容易となるため、加熱後の食材を過度に縮ませることなく、食感がしっとりとした優れた品質のエビ料理、貝類料理、及び肉料理等を簡便に調理することができる。未調理食材20としてエビ類、又は貝類を封入する場合、調理条件11として、67~73℃の加熱温度11aと32~38分の加熱時間11bとを表示することが好ましく、70℃の加熱温度11aと35分の加熱時間11bとを表示することがより好ましい。未調理食材20として鴨ムネ肉を封入する場合、調理条件11として、52~58℃の加熱温度11aと57~63分の加熱時間11bとを表示することが好ましく、55℃の加熱温度11aと60分の加熱時間11bとを表示することがより好ましい。
【0036】
真空調理用冷凍食品1の真空調理に用いるスチームコンベクションオーブンは、ガス式、及び電気式の何れも使用することが可能であるが、電気式の場合は、大量調理が可能な消費電力が5kW以上の業務用のスチームコンベクションオーブンを使用することが好ましい。また、スチームコンベクションオーブンの蒸気発生装置は、インジェクション方式、及びボイラー方式の何れのものであってもよい。
【0037】
未調理食材20としては、里芋、ジャガイモ、及びサツマイモ等の芋類、大根、ニンジン、及びゴボウ等の根菜類、いんげん豆、えんどう豆、及びそら豆等の豆類、アスパラガス、オクラ、及びカボチャ等の野菜類、クルマエビ、アマエビ、イセエビ、及びオマールエビ等のエビ類、アサリ、シジミ、及びハマグリ等の貝類、シャケ、タイ、サバ、及びアユ等の魚類、並びに牛肉、豚肉、鶏肉、及び鴨肉等の肉類等の食材を未調理で冷凍状態としたものを用いることができる。ここで未調理とは、食材を調味していない状態を意味し、調味目的ではなく、保存性を向上させるために塩や酢等を添加した状態、並びに食材を熱湯や蒸気により短時間加熱した後に冷却するブランチング処理、食材に熱湯をかけたり、食材を熱湯にくぐらせたりすることにより食材の表面を霜降りにする処理、及び食材を軽く炙って表面に焼き目をつける処理等の下処理を施すことにより、食材の表面又は表層部を熱変性させた状態も含む。例えば、芋類、根菜類、豆類、及び野菜類等を未調理食材20に用いる場合には、ブランチング処理を施してから冷凍状態とした食材を用いることが好ましい。ブランチング処理を施すことにより植物組織内に含まれる空気が取り除かれるため、スチームコンベクションオーブンによる真空調理用冷凍食品1の加熱調理時に、未調理食材20から放出される空気による密封容器10の膨張を抑えることができる。また、ブランチング処理を施すことで、植物組織を軟化させて食材の冷凍耐性を高めることができ、さらに、食材内の酵素を不活性化させて冷凍保存中の食材の変質を防ぐことができる。エビ類、及び魚類等を未調理食材20に用いる場合には、霜降り処理を施してから冷凍状態とした食材を用いることが好ましい。霜降り処理を施してから冷凍状態とした食材を未調理食材20に用いることで、スチームコンベクションオーブンによる真空調理用冷凍食品1の加熱調理時に、灰汁の発生を抑えることができる。エビ類等を未調理食材20に用いる場合には、ポリリン酸塩水溶液に浸漬した後に冷凍状態とした食材を用いることが好ましい。ポリリン酸塩水溶液に浸漬することで、調理後の食感を向上することができる。また、未調理食材20は、未加熱の食材を冷凍状態としたものであってもよい。ここで未加熱とは、食材の少なくとも一部を熱変性させていない状態を意味する。未調理食材20の密封容器10への封入量は、100g~2kgであることが好ましく、500g~1kgであることがより好ましい。封入量が100g~2kgの範囲であれば、スチームコンベクションオーブンによるスチームモードでの真空調理において、未調理食材20を一様に加熱することができる。封入量が100g未満である場合、及び封入量が2kgを超える場合、スチームコンベクションオーブンによるスチームモードでの真空調理において、未調理食材20の加熱にむらが生じる虞がある。
【0038】
密封容器10に封入する未調理食材20の数は、一つであっても、複数であってもよい。複数の未調理食材20を密封容器10に封入する場合、未調理食材20の重量のばらつきが10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。未調理食材20の重量のばらつきが10%以下とは、個々の未調理食材20の重量をWiとし、平均重量をWaとしたとき、以下の式(1):
-10 ≦ (Wi-Wa)/Wa × 100 ≦ 10 ・・・(1)
を満たすことを意味する。未調理食材20の重量のばらつきが10%以下であれば、調理条件11に従ってスチームコンベクションオーブンにより真空調理を行ったときに、何れの食材でも食材の中心温度の変化が同様になるため、複数の食材間で中心温度が一定となる時間が揃い、品質の揃った料理を調理することができる。未調理食材20の重量のばらつきが10%を超える場合、スチームコンベクションオーブンによるスチームモードでの真空調理において、未調理食材20の加熱にむらが生じる虞がある。
【0039】
また、複数の未調理食材20を密封容器10に封入する場合、密封容器10を平置きしたときに、複数の未調理食材20が互いに重ならないように封入されていることが好ましい。複数の未調理食材20が重ならないように封入されていることにより、スチームコンベクションオーブンによる加熱調理時に食材同士の接触が抑えられるため、煮崩れ等により調理後の食材の形状が損なわれることを抑制することができる。さらに、密封容器10において、複数の未調理食材20は、互いの間に調味液30が介在するように間隔をあけて封入されていることが好ましい。複数の未調理食材20の間に調味液30が介在することにより、真空調理用冷凍食品1の輸送時に未調理食材20同士が接触することがないため、未調理食材20の形状が損なわれることを抑制することができる。
【0040】
調味液30は、醤油、酢、みりん、みそ、塩、及び砂糖等の調味料、酒、香辛料、並びに水等を料理の種類に応じて混合したものである。調味液30は、増粘剤として増粘多糖類等を添加し、粘度を1~20Pa・sに調整してもよい。調味液30の粘度を1~20Pa・sに調整することで、複数の未調理食材20と調味液30とを密封容器10に封入した状態で、凍結前に未調理食材20同士が接触したときに、未調理食材20の形状が損なわれることを抑制することができる。また、加熱調理後においても、密封容器10内で調理後の食材同士が接触したときに、形状が損なわれることを抑制することができる。調味液30の密封容器10への封入量は、25~800gであることが好ましい。調味液30の封入量がこの範囲であれば、密封容器10へ複数の未調理食材20を封入したときに、未調理食材20同士の間に適度な量の調味液30を介在させることができる。調味液30の封入量が25g未満である場合、未調理食材20同士の間に調味液30を介在させることができない虞がある。調味液30の封入量が800gを超える場合、スチームコンベクションオーブンによるスチームモードでの真空調理において、真空調理用冷凍食品1の温度上昇速度が遅くなり、適切に調理できない虞がある。未調理食材20と調味液30との密封容器10への封入比率は、重量比で75:25~60:40であることが好ましく、70:30~65:35であることがより好ましい。封入比率がこの範囲であれば、密封容器10へ複数の未調理食材20を封入したときに、未調理食材20同士の間に適度な量の調味液30を介在させることができる。封入比率がこの範囲より調味液30が少ない側に外れる場合、未調理食材20同士の間に調味液30を介在させることができない虞がある。封入比率がこの範囲より調味液30が多い側に外れる場合、スチームコンベクションオーブンによるスチームモードでの真空調理において、真空調理用冷凍食品1の温度上昇速度が遅くなり、適切に調理できない虞がある。
【0041】
以上、説明したように、本発明の真空調理用冷凍食品1は、密封容器10にスチームコンベクションオーブンによる調理条件11が表示されていることにより、加熱温度を1℃単位で管理可能なスチームモードの特性を生かして、封入されている未調理食材20に応じた最適な調理条件で真空調理を行うことが容易となるため、優れた品質の料理を簡便に調理することができる。また、密封容器10に、冷凍状態にされた未調理食材20と、調味液30とを封入しているため、真空調理用冷凍食品1をスチームコンベクションオーブンのスチームモードで加熱することにより、未調理食材20の解凍と真空調理とを同時に行うことができるため、煮崩れや縮み等の食材の変化を抑えることができる。従って、本発明の真空調理用冷凍食品1は、日本料理などの素材を活かしながら繊細な味付けが要求される高度な調理に適している。
【0042】
<真空調理用冷凍食品の製造方法>
本発明の真空調理用冷凍食品1は、冷凍状態にされた-10℃以下の未調理食材20と、5℃以下の調味液30とを、密封容器10の表面の温度が5℃以下となるように維持して、密封容器10に封入する封入工程と、未調理食材20と調味液30とを封入した密封容器10を、-10℃以下に冷却する冷却工程とを実行することに加えて、封入工程を実行する前又は後に、密封容器10に、スチームコンベクションオーブンによる調理条件11の表示を設けることで製造することができる。調理条件11の表示は、密封容器10の表面に直接印刷するか、調理条件11を印刷したラベルを密封容器10に貼り付けることにより設けることができる。密封容器10にスチームコンベクションオーブンによる調理条件11の表示を設けることにより、加熱温度を1℃単位で管理可能なスチームモードの特性を生かして、温度調節が重要な真空調理を最適な調理条件で行うことが容易な真空調理用冷凍食品1を製造することができる。また、製造される真空調理用冷凍食品1は、未調理食材20の解凍と真空調理とを同時に行うことができるため、煮崩れや縮み等の食材の変化を抑えることが可能である。
【0043】
封入工程では、未調理食材20の温度を-10℃以下とし、調味液30の温度を5℃以下とし、これらを封入した密封容器10の表面の温度が5℃以下となるように維持することで、未調理食材20が解凍されて組織が破壊されることを防ぐことができる。また、冷却工程では、冷却中の未調理食材20の温度変化において、最大氷結晶生成温度帯(0~-5℃)を1時間以内に通過させて、未調理食材20を急速凍結させるように冷却することが好ましい。急速凍結させることで、未調理食材20の組織が凍結時に大きく損なわれることを防ぐことができるため、調理後の食感がよい真空調理用冷凍食品1を製造することができる。急速凍結は、例えば、液体冷媒に対象物を浸漬させるリキッドフリーザー等を用いて実行することができる。
【0044】
真空調理用冷凍食品1の製造方法では、封入工程において、密封容器10に複数の未調理食材20を封入する場合、冷却工程を実行する前に、密封容器10を平置きし、封入されている複数の未調理食材20を、互いに重ならないように配置させるならし工程を実行することが好ましい。ならし工程は、例えば、未調理食材20と調味液30とを封入した密封容器10を平置きした状態で、振動させることにより実行することができる。冷却工程を実行する前にならし工程を実行することにより、製造される真空調理用冷凍食品1では、スチームコンベクションオーブンによる加熱調理時に食材同士の接触が抑えられるため、煮崩れ等により食材の形状が損なわれることを抑制することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明の真空調理用冷凍食品を詳しく説明する。なお、以下の実施例では重量の単位として「g」が示されているが、任意の倍率でスケールアップが可能である。すなわち、単位「g」は、「重量部」と読み替えることができる。
【0046】
[里芋煮物]
本発明の構成を有する里芋煮物の真空調理用冷凍食品(実施例1)と、本発明とは調理条件の表示が異なる里芋煮物の真空調理用冷凍食品(比較例1)とを作製し、夫々の調理条件に従って調理して、調理後の里芋煮物を比較した。
【0047】
<実施例1>
ナイロン樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、及びポリエステル樹脂フィルムを積層した多層フィルム製の平型パウチを準備し、その表面にスチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示として、スチームモードでの里芋の真空調理に適切な加熱温度95℃と、加熱時間50分とを印刷したラベルを張り付けた。このパウチに、下記の凍結状態の未調理食材A(里芋31個)620gと、下記の3℃に冷却した調味液B413gとを充填し、真空包装機を用いてパウチ内を脱気した後に密封した。未調理食材Aと調味液Bとの封入比率は、重量比で60:40であった。未調理食材A、及び調味液Bを封入後のパウチの表面温度は、2℃であった。密封後のパウチを平置きした状態で振動させることにより、パウチ内に封入されている複数の里芋を互いに重ならないように配置させた後に、リキッドフリーザーに入れて-20℃まで冷却し、実施例1の真空調理用冷凍食品(里芋煮物)を得た。
・未調理食材A
里芋31個を準備し、下処理として皮をむき、面取りした後に、100℃の熱湯によるブランチング処理を施した。下処理後の里芋31個の合計重量は620gであり、1個当たりの重量は19.5~20.5gで、平均重量は20gであった。下処理後の里芋を容器に入れ、リキッドフリーザーにより-20℃まで冷却することで、冷凍状態の未調理食材Aを得た。
・調味液B
出し汁2100mL、酒360mL、みりん1150mL、醤油1065mL、砂糖725g、塩50g、及び増粘剤(イナゲル、伊那食品工業株式会社製)48gを混合して調味液Bを調製し、3℃に冷却した。
【0048】
パウチ表面に表示された調理条件に従い、スチームコンベクションオーブンに加熱温度として95℃を設定し、加熱時間として50分を設定して、スチームモードで実施例1の真空調理用冷凍食品を加熱することにより真空調理を行った。パウチから取り出した調理後の里芋の煮物は、煮崩れがなく、食感もほくほくとした優れたものであった。
【0049】
<比較例1>
実施例1で使用したものと同じ平型パウチを準備し、その表面にスチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示として、スチームモードでの里芋の真空調理に適切な温度よりも低い加熱温度80℃と、加熱時間50分とを印刷したラベルを張り付けた。その他は、実施例1と同じ手順で、比較例1の真空調理用冷凍食品(里芋煮物)を得た。
【0050】
パウチ表面に表示された調理条件に従い、スチームコンベクションオーブンに加熱温度として80℃を設定し、加熱時間として50分を設定して、スチームモードで比較例1の真空調理用冷凍食品を加熱することにより真空調理を行った。パウチから取り出した調理後の里芋の煮物は、かたい食感であった。
【0051】
[エビ芝煮の真空調理用冷凍食品]
本発明の構成を有するエビ芝煮の真空調理用冷凍食品(実施例2)と、本発明とは調理条件の表示が異なるエビ芝煮の真空調理用冷凍食品(比較例2及び3)とを作製し、夫々の調理条件に従って調理して、調理後のエビ芝煮を比較した。
【0052】
<実施例2>
実施例1で使用したものと同じ平型パウチを準備し、その表面にスチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示として、スチームモードでのクルマエビの真空調理に適切な加熱温度70℃と、加熱時間35分とを印刷したラベルを張り付けた。このパウチに、下記の凍結状態の未調理食材C(下処理後のクルマエビ20匹)380gと、下記の3℃に冷却した調味液D163gとを充填し、真空包装機を用いてパウチ内を脱気した後に密封した。未調理食材Cと調味液Dとの封入比率は、重量比で70:30であった。未調理食材C、及び調味液Dを封入後のパウチの表面温度は、2℃であった。密封後のパウチを平置きした状態で振動させることにより、パウチ内に封入されている複数のムキエビを互いに重ならないように配置させた後に、リキッドフリーザーに入れて-20℃まで冷却し、実施例2の真空調理用冷凍食品(エビ芝煮)を得た。
・未調理食材C
クルマエビ20匹を準備し、下処理として殻と背ワタを取り除き、ポリリン酸ナトリウム1%水溶液に浸漬した後に、霜降り処理を施した。下処理後のクルマエビ20匹の合計重量は380gであり、1匹当たりの重量は18.5~19.5gで、平均重量は19gであった。下処理後のクルマエビを容器に入れ、リキッドフリーザーにより-20℃まで冷却することで、冷凍状態の未調理食材Cを得た。
・調味液D
出し汁500mL、酒200mL、みりん100mL、醤油50mL、及び増粘剤(イナゲル、伊那食品工業株式会社製)5gを混合して調味液Dを調製し、3℃に冷却した。
【0053】
パウチ表面に表示された調理条件に従い、スチームコンベクションオーブンに加熱温度として70℃を設定し、加熱時間として35分を設定して、スチームモードで実施例2の真空調理用冷凍食品を加熱することにより真空調理を行った。パウチから取り出した調理後のエビ芝煮は、食感がぷりぷりとした優れたものであった。
<比較例2>
実施例1で使用したものと同じ平型パウチを準備し、その表面にスチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示として、スチームモードでのクルマエビの真空調理に適切な温度よりも高い加熱温度85℃と、加熱時間35分とを印刷したラベルを張り付けた。その他は、実施例2と同じ手順で、比較例2の真空調理用冷凍食品(エビ芝煮)を得た。
【0054】
パウチ表面に表示された調理条件に従い、スチームコンベクションオーブンに加熱温度として85℃を設定し、加熱時間として35分を設定して、スチームモードで比較例2の真空調理用冷凍食品を加熱することにより真空調理を行った。パウチから取り出した調理後のエビ芝煮は、食材が縮み、かたい食感であった。
【0055】
<比較例3>
実施例1で使用したものと同じ平型パウチを準備し、その表面にスチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示として、スチームモードでのクルマエビの真空調理に適切な温度よりも低い加熱温度60℃と、加熱時間35分とを印刷したラベルを張り付けた。その他は、実施例2と同じ手順で、比較例3の真空調理用冷凍食品(エビ芝煮)を得た。
【0056】
パウチ表面に表示された調理条件に従い、スチームコンベクションオーブンに加熱温度として60℃を設定し、加熱時間として35分を設定して、スチームモードで比較例3の真空調理用冷凍食品を加熱することにより真空調理を行った。パウチから取り出したエビ芝煮は、十分に加熱されておらず未調理の部分があった。
【0057】
[鴨ステーキの真空調理用冷凍食品]
本発明の構成を有する鴨ステーキの真空調理用冷凍食品(実施例3)と、本発明とは調理条件の表示が異なる鴨ステーキの真空調理用冷凍食品(比較例4及び5)とを作製し、夫々の調理条件に従って調理して、調理後の鴨ステーキを比較した。
【0058】
<実施例3>
実施例1で使用したものと同じ平型パウチを準備し、その表面にスチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示として、スチームモードでの鴨ムネ肉の真空調理に適切な加熱温度55℃と、加熱時間60分とを印刷したラベルを張り付けた。このパウチに、下記の凍結状態の未調理食材E(下処理後の鴨ムネ肉1枚)200gと、下記の3℃に冷却した調味液F67gとを充填し、真空包装機を用いてパウチ内を脱気した後に密封した。未調理食材Eと調味液Fとの封入比率は、重量比で75:25であった。未調理食材E、及び調味液Fを封入後のパウチの表面温度は、2℃であった。密封後のパウチリキッドフリーザーに入れて-20℃まで冷却し、実施例3の真空調理用冷凍食品(鴨ステーキ)を得た。
・未調理食材E
鴨ムネ肉1枚を準備し、下処理として脂部分を切除し取り除いた。下処理後の鴨ムネ肉の重さは200gであった。下処理後の鴨ムネ肉を容器に入れ、リキッドフリーザーにより-20℃まで冷却することで、冷凍状態の未調理食材Eを得た。
・調味液F
酒200mL、みりん200mL、及び醤油200mLを混合して調味液Fを調製し、3℃に冷却した。
【0059】
パウチ表面に表示された調理条件に従い、スチームコンベクションオーブンに加熱温度として55℃を設定し、加熱時間として60分を設定して、スチームモードで実施例3の真空調理用冷凍食品を加熱することにより真空調理を行った。パウチから取り出した調理後の鴨ステーキは、しっとりとしてレアな食感であった。
【0060】
<比較例4>
実施例1で使用したものと同じ平型パウチを準備し、その表面にスチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示として、スチームモードでの鴨ムネ肉の真空調理に適切な温度よりも高い加熱温度75℃と、加熱時間60分とを印刷したラベルを張り付けた。その他は、実施例3と同じ手順で、比較例4の真空調理用冷凍食品(鴨ステーキ)を得た。
【0061】
パウチ表面に表示された調理条件に従い、スチームコンベクションオーブンに加熱温度として75℃を設定し、加熱時間として60分を設定して、スチームモードで比較例4の真空調理用冷凍食品を加熱することにより真空調理を行った。パウチから取り出した調理後の鴨ステーキは、ハムのように白っぽく、レアな食感が失われていた。
<比較例5>
実施例1で使用したものと同じ平型パウチを準備し、その表面にスチームコンベクションオーブンによる調理条件の表示として、スチームモードでの鴨ムネ肉の真空調理に適切な温度よりも低い加熱温度45℃と、加熱時間60分とを印刷したラベルを張り付けた。その他は、実施例3と同じ手順で、比較例5の真空調理用冷凍食品(鴨ステーキ)を得た。
【0062】
パウチ表面に表示された調理条件に従い、スチームコンベクションオーブンに加熱温度として45℃を設定し、加熱時間として60分を設定して、スチームモードで比較例5の真空調理用冷凍食品を加熱することにより真空調理を行った。パウチから取り出した鴨ステーキは、十分に加熱されておらず未調理の部分があった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の真空調理用冷凍食品は、飲食店、宿泊施設、一般家庭等での調理に利用可能であり、特に、大量調理施設での均質な調理への利用に適する。
【符号の説明】
【0064】
1 真空調理用冷凍食品
10 密封容器
11 調理条件
11a 加熱温度
11b 加熱時間
20 未調理食材
30 調味液