(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】複合プラスチックの利用方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/06 20060101AFI20220404BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20220404BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20220404BHJP
C08J 11/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C12P7/06
B29B17/00
B29B17/04
C08J11/00
(21)【出願番号】P 2022506018
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2021036768
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2020176450
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520410828
【氏名又は名称】後藤 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 史明
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-215861(JP,A)
【文献】特開2011-240272(JP,A)
【文献】特開2010-131528(JP,A)
【文献】西岡昭博,成形加工,2007年,Vol.19, No.10,p.629-633
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/00
B29B 17/00
C08J 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンを含有する複合プラスチックの利用方法であって、
前記複合プラスチックを
3~10mm又は100~200gの大きさに破砕し破砕物を形成する
破砕物形成工程と、
前記破砕物を
80℃以上の温水を用いて20~50分間加熱処理する加熱処理工程と、
糖化酵素により糖化する糖化工程と、酵母により発酵する発酵工程と、
を有することを特徴とするエタノールの生成方法。
【請求項2】
前記デンプンは、米、大麦、ライ麦、燕麦、マメ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、サツマイモ、サトイモ、シャガイモ、ヤマノイモからなる群から選択される1種以上である請求項1に記載のエタノールの生成方法。
【請求項3】
前記複合プラスチックに、PLA、PHBH、PVA、PBAT、PBSからなる群から選択される1種以上が含まれる請求項1又は2に記載のエタノールの生成方法。
【請求項4】
前記糖化酵素は、麹菌により産生されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエタノールの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプン類を含有する複合プラスチックの利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックを用いた製品は我々の日常生活に多く存在しているが、微生物により分解されない、有害成分発生等のために焼却処分が難しいなど、その廃棄処理に多くの課題を有している。
そこで、近年は使用済みのプラスチック製品の再利用方法がいろいろと検討されており、従来の回収し、そのまま破砕することで分別回収再利用する機械的リサイクルに替わり、バイオガス等有機的な再利用方法が検討されている。
例えば特許文献1に、変性デンプン及びポリビニルアルコールを含む樹脂組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、デンプン類を含有する複合プラスチックの利用の1つとして、エタノールの生成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るエタノールの生成方法は、デンプンを含有する複合プラスチックの利用方法であって、前記複合プラスチックを破砕し破砕物を形成する形成工程と、前記破砕物を温水にて加熱処理する加熱処理工程と、糖化酵素により糖化する糖化工程と、酵母により発酵する発酵工程と、を有することを特徴とする。
このように、複合プラスチックを破砕して破砕物を形成すると、その後の温水による加熱処理が容易になる。
本発明において、前記デンプンは、米、大麦、ライ麦、燕麦、マメ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ、サツマイモ、サトイモ、シャガイモ、ヤマノイモからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
また、前記複合プラスチックに、PLA、PHBH、PVA、PBAT、PBSからなる群から選択される1種が含まれることが好ましく、前記糖化酵素は、麹菌により産生されることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、デンプンを含有する複合プラスチックからエタノールを生成することで、プラスチック廃棄物を有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る複合プラスチックは、例えばPLA(ポリ乳酸)、PHBH(3-ヒドロキシ酪酸・3-ヒドロキシヘキサン酸共重合体)、PVA(ポリビニルアルコール)、PBAT(ポリブチレンアジペート/テレフタレート)、PBS(バイオポリブチレンサクシネート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)等から選択される1種が主成分として含まれ、特にPLA、PHBH、PVA、PBAT、PBSからなる生分解性の高い群から選択される1種が含まれることが好ましい。
本発明に係るデンプンは、特に限定されないが穀類及び/又はイモ類から選択されることが好ましい。
穀類としては米、大麦、ライ麦、燕麦、マメ、ヒエ、アワ、キビ、ソバ等が挙げられ、イモ類としてはサツマイモ、サトイモ、シャガイモ、ヤマノイモ等が挙げられる。
これらは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
複合プラスチックにおけるデンプンの含有量に特に制限はないが、好ましくは40質量%~20質量%である。
また、複合プラスチックには上記主成分と上記デンプン以外に、この分野で通常使用される添加剤を適宜加えてもよい。
【0008】
本発明における形成工程は、複合プラスチックを破砕し所定の大きさの破砕物を形成できればよく、形成手段に特に制限はないが、例えば破砕物が3~10mm、あるいは100g~200gの大きさに形成されることが好ましい。
なお、複合プラスチックが破砕を必要としないような場合、例えば複合プラスチックが3~10mm、あるいは100g~200gの大きさであれば、形成工程は必須としない。
【0009】
本発明における加熱処理工程は、上記破砕物を温水にて加熱処理するが、加熱処理は温水を用いて破砕物を蒸してもよく、温水中にて煮てもよい。
例えば、温水は80℃以上であることが好ましく、上記破砕物を温水中で20分間~50分間加熱してもよい。
【0010】
本発明における糖化酵素は特に限定されないが、麹菌により産生される糖化酵素であることが好ましい。
上記麹菌は、糖化酵素を産生し得る麹菌であれば特に限定されるものではないが、例えばAspergillus oryzae、Aspergillus niger、Aspergillus aculeatus、Aspergillus caesiellus、Aspergillus candidus、Aspergillus carneus、Aspergillus clavatus、Aspergillus deflectus、Aspergillus fischerianus、Aspergillus flavus、Aspergillus fumigatus、Aspergillus glaucus、Aspergillus nidulans、Aspergillus ochraceus、Aspergillus parasiticus、Aspergillus penicilloides、Aspergillus restrictus、Aspergillus sojae、Aspergillus sydowii、Aspergillus tamari、Aspergillus terreus、Aspergillus ustus、Aspergillus versicolor等のAspergillus属微生物、Monascus purpureus、Monascus pilosus、Monascus anka等のMonascus属微生物が挙げられる。
上記麹菌が産生し得る糖化酵素としては、例えばα-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、α-グルコシダーゼなどが挙げられるが、特にこれに限定されない。
本発明における糖化工程は、糖化酵素により糖化する工程であればよく、例えば上記加熱処理工程後の破砕物に麹菌を付着させて糖化する。
例えば35℃~40℃、好気性条件下で、約2日間、上記加熱処理工程後の破砕物に麹菌を付着させて糖化すること好ましい。
なお、ここでの好気性条件下とは、破砕物と麹菌とを入れた容器を密封していない状態をいう。
【0011】
本発明における酵母は、エタノール発酵ができるものであれば特に限定されない。
上記酵母としては、例えばSaccharomyces cerevisae、Saccharomyces pasteurianus、Saccharomyces bayanus、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis等が挙げられる。
本発明における発酵工程は、酵母により発酵する工程であればよく、例えば容器内に上記糖化工程後の破砕物、水及び酵母を加えて密封し、この嫌気性条件下、5℃~10℃で約1箇月間、発酵する。
なお、数日後毎に内容物を混合することが好ましい。
【0012】
以下、複合プラスチックにおける主成分としてPLAを、デンプンとして米を例に本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
PLA(50質量%)、米(35質量%)及び必要に応じて各種添加剤を混練してある複合プラスチックを、破砕することで3~5mmの破砕物100gを形成した。
次に、沸騰した水2Lに破砕物100gを加えて30分間加熱処理した。
加熱処理後、別の容器内に移動させた加熱処理後の破砕物に種麹3gを付着させ、容器内を約37℃、密封しない状態で48時間保管した。
その後、この容器内に水250ml及び酵母(ドライイースト)1gを加え、容器内を5~10℃、栓を閉じた密封状態で保管し、数日後毎に栓を開けてこの内容物を混合した。
約1箇月後に、この容器内の液体をろ過し、ガスクロマトグラフィー分析にてこの液体100ml中のエタノールの含有量を測定した。
その結果、2.1mlのエタノールを得た。
なお、ガスクロマトグラフィー分析は、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、GB-14B)を用いて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、デンプン類を含有する複合プラスチックからエタノールを得ることができるので、新規のエタノール製造技術として応用でき、廃棄されるプラスチックの有効活用にも寄与する。
【要約】
【課題】デンプン類を含有する複合プラスチックの利用の1つとして、エタノールの生成方法の提供を目的とする。
【解決手段】デンプンを含有する複合プラスチックの利用方法であって、前記複合プラスチックを破砕し破砕物を形成する形成工程と、前記破砕物を温水にて加熱処理する加熱処理工程と、糖化酵素により糖化する糖化工程と、酵母により発酵する発酵工程と、を有することを特徴とするエタノールの生成方法。
【選択図】 なし