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  • 特許-熱接着障子紙の製造方法 図1
  • 特許-熱接着障子紙の製造方法 図2
  • 特許-熱接着障子紙の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】熱接着障子紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/21 20180101AFI20220404BHJP
   B32B 3/16 20060101ALI20220404BHJP
   B32B 29/04 20060101ALI20220404BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220404BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C09J7/21
B32B3/16
B32B29/04
C09J201/00
D21H27/00 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2016124831
(22)【出願日】2016-06-23
(65)【公開番号】P2017226783
(43)【公開日】2017-12-28
【審査請求日】2019-04-01
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594042479
【氏名又は名称】株式会社中村製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】冨崎 博隆
(72)【発明者】
【氏名】西郷 義紀
(72)【発明者】
【氏名】成田 潔信
【合議体】
【審判長】川端 修
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】亀ヶ谷 明久
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-300575(JP,A)
【文献】特開2012-245752(JP,A)
【文献】特開2002-363507(JP,A)
【文献】特開昭62-119284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/110
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体よりなり、融点が60℃~150℃である感熱性接着剤を冷凍粉砕機で粉砕し、得られた粒状の冷凍粉砕熱接着樹脂をふるいにかけ、最小粒径が63μm、最大粒径が250μmの冷凍粉砕熱接着樹脂を得る工程と、
前記冷凍粉砕熱接着樹脂を障子紙の片側の面に散布し、前記冷凍粉砕熱接着樹脂で覆われる部分の面積が前記障子紙の全面積の40%~50%となるように、熱接着樹脂ドットをまんべんなく分布するように配置させる工程と、
前記熱接着樹脂ドットを加熱して表面を溶融させ、下部が部分的に前記障子紙の内部に浸透し上部が半球形又は略球形を呈する熱接着樹脂メルトとする工程と、
前記熱接着樹脂メルトが冷えて溶融部分が固まった後に、前記障子紙を巻き取る工程からなる
ことを特徴とする熱接着障子紙の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱接着障子紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の出願人は、特許文献1(特許第2772249号公報)に記載されているように、熱接着樹脂を塗布したのち、この熱接着樹脂を加熱溶融して得た熱接着貼り紙を開発した。
ところが、近年化学的に粉砕して得られる化学粉砕熱接着樹脂が、粉砕に用いられるトリクレン等の薬剤に対する規制が厳しくなったことにより入手困難となっている。
【0003】
熱接着樹脂については、特許文献2(特開平5-338095号公報)に開示されているように、冷凍粉砕機等で粉砕して粒状のものを得ることも知られているが、化学粉砕したものに比べ数μmから数百μmと粒径のバラツキが非常に大きく、熱接着紙に適しないものとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2772249号公報
【文献】特開平5-338095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は上記の問題を解決し、冷凍粉砕熱接着樹脂を用い熱接着障子紙を製造することを第1の課題としている。
また、冷凍粉砕熱接着樹脂を用いても、加工性が良く十分な接着強度を得られるようにすることを第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、熱接着障子紙の製造方法であって、
ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体よりなり、融点が60℃~150℃である感熱性接着剤を冷凍粉砕機で粉砕し、得られた粒状の冷凍粉砕熱接着樹脂をふるいにかけ、最小粒径が63μm、最大粒径が250μmの冷凍粉砕熱接着樹脂を得る工程と、
前記冷凍粉砕熱接着樹脂を障子紙の片側の面に散布し、前記冷凍粉砕熱接着樹脂で覆われる部分の面積が前記障子紙の全面積の40%~50%となるように、熱接着樹脂ドットをまんべんなく分布するように配置させる工程と、
前記熱接着樹脂ドットを加熱して表面を溶融させ、下部が部分的に前記障子紙の内部に浸透し上部が半球形又は略球形を呈する熱接着樹脂メルトとする工程と、
前記熱接着樹脂メルトが冷えて溶融部分が固まった後に、前記障子紙を巻き取る工程からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明の熱接着障子の製造方法によれば冷凍粉砕熱接着樹脂を障子紙の片側の面に散布し下部が部分的に前記障子紙の内部に浸透し上部が半球形又は略球形を呈する熱接着樹脂ドットをまんべんなく分布するように配置させているので、入手困難な化学粉砕熱接着樹脂を用いることなく、熱接着障子紙を得ることができる。
また、冷凍粉砕熱接着樹脂をふるいにかけ、最小粒径が63μm、最大粒径が250μmとし図3(b)のグラフに示す粒径のうち、飛散し易い粒径63μm未満の冷凍粉砕熱接着樹脂及び粒径250μmを超える冷凍粉砕熱接着樹脂が含まれていないので、障子紙の片側の面に冷凍粉砕熱接着樹脂を散布する際に粉末飛散が多くなり過ぎず、飛散によるロスや加工機周辺部への付着を抑制でき、かつ、熱接着障子紙が厚くなり過ぎることを防止できる。
さらに、粒径と接着強度は相関関係がある(小さいと接着強度が低い)ため、冷凍粉砕熱接着樹脂の粒径を63μm~250μmとすることによって、適度な接着強度を得ることができ、冷凍粉砕熱接着樹脂で覆われる部分の面積が全面積の40%~50%であるので、障子紙に適している。
加えて、冷凍粉砕熱接着樹脂は、ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体であり、かつ、融点が60℃~150℃であるので、水分の変化によって接着力が左右されず、風合を損なうこともない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る熱接着紙の接着面側の平面図。
図2】実施例に係る熱接着紙の製造工程を示す断面図。
図3】化学粉砕熱接着樹脂と冷凍粉砕熱接着樹脂の粒径のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例
【0012】
図1は実施例に係る熱接着紙の接着面側の平面図、図2は実施例に係る熱接着紙の断面図である。
図1に示すとおり、実施例に係る熱接着紙は、紙シート基材1の接着面とする側に、粒径63μm~180μmの冷凍粉砕熱接着樹脂を、転写、散布、噴霧又は塗布等適宜の方法により非連続状態の島状に付着配置させたものである。
ここで、冷凍粉砕熱接着樹脂の粒径を63μm~180μmとしたのは、上述したとおり、化学粉砕熱接着樹脂に比べ冷凍粉砕熱接着樹脂の方が粒径のバラツキが大きいこと、粒径63μm未満の冷凍粉砕熱接着樹脂が含まれていると接着面に冷凍粉砕熱接着樹脂を配置させる際に粉末飛散が多くなること、粒径63μm未満の冷凍粉砕熱接着樹脂が含まれていると接着強度が低下することに加え、粒径の大きい冷凍粉砕熱接着樹脂が多く含まれていると熱接着紙が厚くなること、粒径の範囲を絞り過ぎると歩留まりが悪くなることを考慮したものである。
なお、熱接着紙が厚くなると良くない理由は、必要な長さの熱接着紙を販売用に巻き付けてロール状としたとき、そのロールが太くなり過ぎて陳列用什器のサイズ内に収まらなくなることがあるからである。
そのため、熱接着紙がある程度厚くなっても問題ない場合には、冷凍粉砕熱接着樹脂の粒径を63μm~250μmとしても良く、逆に熱接着紙の薄さが強く求められる場合には、冷凍粉砕熱接着樹脂の粒径を63μm~150μmとすることが考えられる。
【0013】
実施例に係る熱接着紙の製造方法(散布法)について説明する。
(1)熱接着樹脂を冷凍粉砕機で粉砕し、得られた粒状の冷凍粉砕熱接着樹脂をふるいにかけ、粒径63μm~180μmの冷凍粉砕熱接着樹脂を得る。
なお、熱接着樹脂としては、感熱性接着剤が使用できるが、好ましくは水分の変化によって左右されない接着力と風合を損なわない性状を有する疎水性のLDPE系、EVA系、変性EVA系、ポリエステル系、ポリアミド系、変性PE系、アイオノマー系などが好適であり、用途に応じて融点60℃~150℃の熱接着樹脂を選択する。
また、障子紙の場合は、ケン化エチレン酢酸ビニル共重合体よりなる感熱性接着剤が最も好適である。
【0014】
(2)冷凍粉砕熱接着樹脂を散布装置により紙シート基材1の片側の面に散布し、図1に示すように、熱接着樹脂ドット2をまんべんなく分布するように配置させる。
なお、熱接着樹脂ドット2で覆われる部分の面積は用途によって異なるが、紙シート基材1の全面積の10%~80%であり、障子紙の場合は30%~60%、好ましくは40%~50%である。
また、紙シート基材1としては、紙、合成紙、紙や合成紙の片面、両面又は中間にフィルム等の層を設けてなる複合紙基材を使用することができるが、疎水性繊維を5%~100%配合して、温度変化や湿度変化に対する寸法安定性を向上させたものが好ましい。
【0015】
(3)熱接着樹脂ドット2を適宜の方法により加熱してその表面を溶融させ、熱接着樹脂メルト3とする。
そうすると、図2(b)に示すように、熱接着樹脂メルト3の下部は部分的に紙シート基材1内に浸透して浸透層4を形成し、熱接着樹脂メルト3の上部は左側の半球形や右側の略球形を呈する。
なお、熱接着樹脂メルト3の形状はどのようなものでも良いが、溶融し過ぎて大部分が紙シート基材1に滲み込んだものは不適当である。
特に、障子紙の場合は接着される部分の面積が壁紙等と比べて小さいため、なるべく球形に近い形で形成されることが望ましいが、そのためには、熱接着樹脂ドット2の表面のみが溶融するように加熱したり、紙シート基材1側から加熱したりすると良い。
(4)熱接着樹脂メルト3が冷えて溶融部分が固まったら、紙シート基材1を巻き取り、出荷できる状態とする。
【0016】
実施例に係る熱接着紙の使用方法を説明する。
(1)熱接着紙を広げ必要に応じてカットする。また、アイロンを熱しておく。
(2)壁や障子等の所望の箇所に位置づけ、上方又は端部にアイロンを当てる。
(3)熱接着樹脂が溶けたらアイロンを外しアイロンが当たっていた箇所を押圧する。
(4)最初にアイロンを当てた部分の貼り付けが終わったら、隣接する箇所にアイロンを当て、少しずつずらしながらアイロンが当たっていた箇所を押圧していく。
(5)全部の貼り付けが終わったらアイロンを外しスイッチを切る。
【符号の説明】
【0017】
1 紙シート基材 2 熱接着樹脂ドット
3 熱接着樹脂メルト 4 浸透層
図1
図2
図3