(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】光ファイバアレイの製造方法及び光ファイバアレイ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/24 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
G02B6/24
(21)【出願番号】P 2017013208
(22)【出願日】2017-01-27
【審査請求日】2020-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】アダマンド並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勤
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩史
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-338263(JP,A)
【文献】特開2009-122451(JP,A)
【文献】特開平11-174274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0170789(US,A1)
【文献】特開2000-241664(JP,A)
【文献】特開平10-206697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36 - 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面上に少なくともm本(m:0~2を含まない自然数)の溝が平行に形成された溝部品と、互いに平行に配列された光ファイバ束を2つ用意し、
更に溝の形成方向と垂直な方向にそれぞれ設けられる、溝部品の左右の側面に、開口部を形成すると共に、開口部の少なくとも一部を、溝の
形成方向に垂直な方向で貫通して形成し、
第1の光ファイバ束と第2の光ファイバ束を上下2段に配置し、
上下2段の各光ファイバ束から計m本の光ファイバ素線を、互い違いに交互に溝内に配列し、
溝内に配列した各光ファイバ素線の軸方向に亘って、2点以上で各光ファイバ素線の外周に、上方から溝の底面方向に押さえ付けることが可能な程度の剛性を有した、断面が円形状の線状部品を、開口部を通して接触させて、各光ファイバ素線を溝に押さえ、
その接触の際に線状部品の軸方向を、光ファイバ素線の軸方向に対して垂直とし、
溝部品の左右の側面から開口部を見たときに、開口部を通して、溝内に配列した光ファイバ素線の一部が見えており、
各光ファイバ素線を溝に固定して第1の光ファイバ素線アレイを形成する光ファイバアレイの製造方法。
【請求項2】
第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束を用意し、
第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束を上下2段に配置すると共に、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束を共に、前記第1の光ファイバ束と前記第2の光ファイバ束の上段に配置し、
第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束から計(m-1)本の光ファイバ素線を、互い違いに交互に、前記第1の光ファイバ素線アレイの各光ファイバ素線間に配列し、
前記第1の光ファイバ素線アレイの各光ファイバ素線間に配列した各光ファイバ素線の軸方向に亘って、2点以上で該各光ファイバ素線の外周に前記線状部品を接触させて、該各光ファイバ素線を前記第1の光ファイバ素線アレイに押さえ、
該各光ファイバ素線を前記第1の光ファイバ素線アレイに固定して第2の光ファイバ素線アレイを形成する請求項1に記載の光ファイバアレイの製造方法。
【請求項3】
前記溝部品を紫外線透過可能な材料で形成し、前記各光ファイバ素線の固定を紫外線硬化接着剤で行う請求項1又は2に記載の光ファイバアレイの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の製造方法によって光ファイバアレイを2つ作製し、
上下から該各光ファイバアレイを積層すると共に、積層の際に該各光ファイバアレイに於ける最上位層の前記光ファイバ素線アレイの前記光ファイバ素線を、一方の該光ファイバアレイの最上位層の前記光ファイバ素線アレイの前記光ファイバ素線間に配列する光ファイバアレイの製造方法。
【請求項5】
面上に少なくともm本(m:0~2を含まない自然数)の溝が平行に形成された溝部品と、互いに平行に配列された2つの光ファイバ束を備え、
第1の光ファイバ束と第2の光ファイバ束が上下2段に配置されており、
上下2段の各光ファイバ束から計m本の光ファイバ素線が、互い違いに交互に溝内に配列され、溝に固定されて第1の光ファイバ素線アレイが形成されており、
溝の形成方向と垂直な方向にそれぞれ設けられる、溝部品の左右の側面に、開口部が形成されており、
左右の側面にそれぞれ形成されている開口部の少なくとも一部が、溝内に配列された光ファイバ素線の軸方向に垂直な方向で貫通して形成されており、
開口部を通して線状部品が挿入可能で、溝内に配列された各光ファイバ素線の軸方向に亘って、2点以上で各光ファイバ素線の外周に、上方から溝の底面方向に押さえ付けることが可能な程度の剛性を有した、断面が円形状の線状部品を接触させ、その接触の際に線状部品の軸方向を光ファイバ素線の軸方向に対して垂直とすることが可能な状態であり、
溝部品の左右の側面から開口部を見たときに、開口部を通して、溝内に配列された光ファイバ素線の一部が見えている光ファイバアレイ。
【請求項6】
第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束を更に備え、
第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束が上下2段に配置されていると共に、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束が共に、前記第1の光ファイバ束と前記第2の光ファイバ束の上段に配置されており、
第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束から計(m-1)本の光ファイバ素線が、互い違いに交互に、前記第1の光ファイバ素線アレイの前記各光ファイバ素線間に配列され、前記第1の光ファイバ素線アレイに固定されて第2の光ファイバ素線アレイが形成されており、
第2の光ファイバ素線アレイの軸方向に亘って、2点以上で第2の光ファイバ素線アレイの外周に前記線状部品を接触させ、その接触の際に前記線状部品の軸方向を第2の光ファイバ素線アレイの軸方向に対して垂直とすることが可能な状態である請求項5に記載の光ファイバアレイ。
【請求項7】
前記溝部品が紫外線透過可能な材料で形成されており、前記各光ファイバ素線の固定が紫外線硬化接着剤で行われている請求項5又は6に記載の光ファイバアレイ。
【請求項8】
請求項5~7の何れかに記載の光ファイバアレイを2つ備え、
上下から該各光ファイバアレイが積層されていると共に、該各光ファイバアレイに於ける最上位層の前記光ファイバ素線アレイの前記光ファイバ素線が、一方の該光ファイバアレイの最上位層の前記光ファイバ素線アレイの前記光ファイバ素線間に配列されている光ファイバアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバアレイの製造方法及び光ファイバアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの光を伝送するライトガイドとして、複数本の光ファイバ素線で形成された光ファイバアレイがあり、光を大量に入射及び伝送させたい場合や、強度が弱い光を大量に集めたい場合、又は光スイッチング用途として光伝送路の切り替え用の光I/O等に用いられる。
【0003】
図16に光ファイバアレイの一例を示す。
図16には、複数本の光ファイバ素線101の端部を俵積み状に配置して集束し、断面が略矩形状となる様に融着一体化した光ファイバアレイ100が示されている。このような光ファイバアレイ100は、複数の光ファイバ素線101が四角形の中空部102aを有する融着治具102に充填され、光ファイバ素線101同士が融着されて製造される。なお、光ファイバアレイ100の一体化には、融着以外に接着が挙げられる。
【0004】
しかし
図16の光ファイバアレイ100では、融着治具102の中空部102aの寸法にバラツキが生じると、そのバラツキにより中空部102aに充填されて隣接されている光ファイバ素線101間のピッチにバラツキが生じる。或いは光ファイバ素線101全体で、光ファイバ間のピッチにバラツキが発生してしまう。すると、光ファイバアレイ100毎の光ファイバ素線101間のピッチに大きな誤差が生じてしまう。従って、光ファイバアレイ100の光軸調芯実装の煩雑化や、光ファイバアレイ100を用いたモジュールの性能低下を招いてしまうとの課題が有った。
【0005】
このような課題を解決可能な光伝送体アレイの製造方法として、例えば特許文献1が開示されている。特許文献1の第5図には、ガイドプレートの複数のV溝に、1層目の光ファイバアレイを光ファイバ素線間の隙間が無い様に配列し、更に1層目の光ファイバアレイの上に、1本少ない2層目の光ファイバアレイを積んで成る、光伝送体アレイが示されている。このように光伝送体アレイを構成する事により、光ファイバ素線間のピッチのバラツキや誤差を解消に導ける。
【0006】
また、多層に光ファイバアレイを積んで配置する際の、光ファイバ素線間のピッチのバラツキや誤差をより確実に解消する光伝送体アレイの製造方法として、例えば特許文献2が開示されている。特許文献2の第7図には、板部材の複数のV溝に、光ファイバアレイを光ファイバ素線間の隙間が無い様に配列し、更に板部材同士を互いのV溝及び光ファイバアレイを半ピッチずらして、上下から光ファイバアレイ同士を接着固定する光伝送体アレイが示されている。等ピッチに形成されたV溝上に光ファイバアレイを配置し、更に光ファイバアレイ同士の光ファイバ素線間の窪みに、上下方向から互いの光ファイバアレイを積んで光伝送体アレイを構成している。
【0007】
上下で等ピッチのV溝上に各光ファイバアレイが配列されているので、光ファイバアレイを上下方向に積層して光伝送体アレイを形成しても、光ファイバ素線間のピッチのバラツキや誤差をより確実に解消に導ける。
【0008】
また、2組のテープ型多芯光ファイバ芯線を上下2段に配列し、各光ファイバ芯線をストリップした光ファイバ素線を、上下2段の各光ファイバ芯線から1本毎に互い違いに交互にアレイ状に配列して、1層の光ファイバアレイを形成する技術内容が開示されている(例えば、特許文献3の
図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭63-173003号公報
【文献】特開昭63-173005号公報
【文献】特開平05-341158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば特許文献3に示すように上下2段の光ファイバ芯線の内、上段側の光ファイバ芯線から伸長されている光ファイバ素線に、下段側の光ファイバ素線よりも大きな曲げを与えて、各光ファイバ素線を交互にV溝内にアレイ状に配列する場合を想定してみる。この場合、上段側の光ファイバ芯線から伸長されている光ファイバ素線が、V溝内に配列される際に浮き上がるとの問題が解消出来なかった。
【0011】
同様に、下段側の光ファイバ芯線から伸長されている光ファイバ素線に、上段側の光ファイバ素線よりも大きな曲げを与えて、各光ファイバ素線を交互にV溝内にアレイ状に配列する場合も、下段側の光ファイバ芯線から伸長されている光ファイバ素線が、V溝内に配列される際に浮き上がってしまう。
【0012】
そこで板状部品の様な何らかの平面状部品を用いて、光ファイバアレイを各光ファイバ素線の軸方向に亘って平面で押さえる製造方法が考えられる。しかし、平面状部品で光ファイバアレイを押さえる際に、前記軸方向に対して傾きが生じてしまう。従って、各光ファイバ素線の軸方向に亘る均一な保持と固定が出来ないとのおそれが有った。
【0013】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、光ファイバ素線の浮き上がりを防止し、更に各光ファイバ素線の軸方向に亘る均一な保持と固定が可能となる、光ファイバアレイの製造方法及び光ファイバアレイの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち本発明の光ファイバアレイの製造方法は、面上に少なくともm本(m:0~2を含まない自然数)の溝が平行に形成された溝部品と、互いに平行に配列された光ファイバ束を2つ用意し、更に溝の形成方向と垂直な方向にそれぞれ設けられる、溝部品の左右の側面に、開口部を形成すると共に、開口部の少なくとも一部を、溝の形成方向に垂直な方向で貫通して形成し、第1の光ファイバ束と第2の光ファイバ束を上下2段に配置し、上下2段の各光ファイバ束から計m本の光ファイバ素線を、互い違いに交互に溝内に配列し、溝内に配列した各光ファイバ素線の軸方向に亘って、2点以上で各光ファイバ素線の外周に、上方から溝の底面方向に押さえ付けることが可能な程度の剛性を有した、断面が円形状の線状部品を、開口部を通して接触させて、各光ファイバ素線を溝に押さえ、その接触の際に線状部品の軸方向を、光ファイバ素線の軸方向に対して垂直とし、溝部品の左右の側面から開口部を見たときに、開口部を通して、溝内に配列した光ファイバ素線の一部が見えており、各光ファイバ素線を溝に固定して第1の光ファイバ素線アレイを形成する事を特徴とする。
【0015】
また本発明の光ファイバアレイは、面上に少なくともm本(m:0~2を含まない自然数)の溝が平行に形成された溝部品と、互いに平行に配列された2つの光ファイバ束を備え、第1の光ファイバ束と第2の光ファイバ束が上下2段に配置されており、上下2段の各光ファイバ束から計m本の光ファイバ素線が、互い違いに交互に溝内に配列され、溝に固定されて第1の光ファイバ素線アレイが形成されており、溝の形成方向と垂直な方向にそれぞれ設けられる、溝部品の左右の側面に、開口部が形成されており、左右の側面にそれぞれ形成されている開口部の少なくとも一部が、溝内に配列された光ファイバ素線の軸方向に垂直な方向で貫通して形成されており、開口部を通して線状部品が挿入可能で、溝内に配列された各光ファイバ素線の軸方向に亘って、2点以上で各光ファイバ素線の外周に、上方から溝の底面方向に押さえ付けることが可能な程度の剛性を有した、断面が円形状の線状部品を接触させ、その接触の際に線状部品の軸方向を光ファイバ素線の軸方向に対して垂直とすることが可能な状態であり、溝部品の左右の側面から開口部を見たときに、開口部を通して、溝内に配列された光ファイバ素線の一部が見えている事を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光ファイバアレイの製造方法及び光ファイバアレイに依れば、光ファイバ素線の浮き上がりが防止され、更に各光ファイバ素線の軸方向に亘る均一な保持と固定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る光ファイバアレイの第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図2】(a)
図1を矢印x1方向から見た時の正面図である。(b)
図2(a)の楕円A部分の拡大図である。
【
図3】
図1を矢印x2方向から見た時の背面図である。
【
図4】
図1を矢印y方向から見た時の側面図である。
【
図5】(a)
図1の光ファイバアレイに備えられる溝部品の正面図である。(b)
図5(a)の楕円B部分の拡大図である。
【
図6】
図1の光ファイバアレイに備えられる溝部品の側面図である。(b)
図6(a)の楕円C部分の拡大図である。
【
図7】
図1の光ファイバアレイに備えられる溝部品の斜視図である。
【
図8】本発明に係る光ファイバアレイの第2の実施形態の組立状態を示す斜視図である。
【
図9】
図8の光ファイバアレイの組立が完了した状態を示す斜視図である。
【
図10】(a)
図9を矢印x方向から見た時の正面図である。(b)
図10(a)の楕円D部分の拡大図である。
【
図11】
図9を矢印y方向から見た時の側面図である。
【
図12】本発明に係る光ファイバアレイの製造方法の、実施形態の一例を示す斜視図である。
【
図13】(a)
図12を矢印y方向から見た時の側面図である。(b)
図13(a)の楕円E部分の拡大図である。
【
図14】本発明に係る光ファイバアレイの製造方法の、実施形態の一例の更なる工程を示す斜視図である。
【
図15】(a)
図14を矢印y方向から見た時の側面図である。(b)
図15(a)の楕円F部分の拡大図である。
【
図16】従来の光ファイバアレイを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態の第一の特徴は、複数の溝が形成された溝部品を備えると共に、互いに平行に配列された複数の光ファイバ束が少なくとも上下2段に配置され、各光ファイバ束から光ファイバ素線が互い違いに交互に溝内に配列されている光ファイバアレイの製造方法において、面上に少なくともm本(m:0~2を含まない自然数)の溝が平行に形成された溝部品と、互いに平行に配列された光ファイバ束を2つ用意し、更に溝の形成方向と垂直な方向にそれぞれ設けられる、溝部品の左右の側面に、開口部を形成すると共に、開口部の少なくとも一部を、溝の形成方向に垂直な方向で貫通して形成し、第1の光ファイバ束と第2の光ファイバ束を上下2段に配置し、上下2段の各光ファイバ束から計m本の光ファイバ素線を、互い違いに交互に溝内に配列し、溝内に配列した各光ファイバ素線の軸方向に亘って、2点以上で各光ファイバ素線の外周に、上方から溝の底面方向に押さえ付けることが可能な程度の剛性を有した、断面が円形状の線状部品を、開口部を通して接触させて、各光ファイバ素線を溝に押さえ、その接触の際に線状部品の軸方向を、光ファイバ素線の軸方向に対して垂直とし、溝部品の左右の側面から開口部を見たときに、開口部を通して、溝内に配列した光ファイバ素線の一部が見えており、各光ファイバ素線を溝に固定して第1の光ファイバ素線アレイを形成する光ファイバアレイの製造方法とした事である。
【0019】
この製造方法に依れば、光ファイバ素線の浮き上がりが防止され、更に各光ファイバ素線の軸方向に亘る均一な保持と固定が可能となる。
【0020】
なお本発明に於いて光ファイバ束とは、1列で互いの軸方向が平行に配列された複数(少なくともm本)の光ファイバを指し、テープ型光ファイバも含むものとする。
【0021】
また本発明に於いて光ファイバ素線とは、ストリップされ、コアとクラッドから成る光ファイバを指すものとする。
【0022】
また第二の特徴は、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束を用意し、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束を上下2段に配置すると共に、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束を共に、第1の光ファイバ束と第2の光ファイバ束の上段に配置し、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束から計(m―1)本の光ファイバ素線を、互い違いに交互に、第1の光ファイバ素線アレイの各光ファイバ素線間に配列し、第1の光ファイバ素線アレイの各光ファイバ素線間に配列した各光ファイバ素線の軸方向に亘って、2点以上で該各光ファイバ素線の外周に線状部品を接触させて、該各光ファイバ素線を第1の光ファイバ素線アレイに押さえ、該各光ファイバ素線を第1の光ファイバ素線アレイに固定して第2の光ファイバ素線アレイを形成する光ファイバアレイの製造方法とした事である。
【0023】
この製造方法に依れば、第1の光ファイバ素線アレイ及び第2の光ファイバ素線アレイの様に、光ファイバ素線を2層以上に積層しても、積層方向での光ファイバ素線の浮き上がりが防止される。従って、2層以上に光ファイバ素線を積層しても、各光ファイバ素線の軸方向に亘る均一な保持と固定が可能となる。
【0026】
また第三の特徴は、複数の溝が形成された溝部品を備えると共に、互いに平行に配列された複数の光ファイバ束が少なくとも上下2段に配置され、各光ファイバ束から光ファイバ素線が互い違いに交互に溝内に配列されている光ファイバアレイにおいて、面上に少なくともm本(m:0~2を含まない自然数)の溝が平行に形成された溝部品と、互いに平行に配列された2つの光ファイバ束を備え、第1の光ファイバ束と第2の光ファイバ束が上下2段に配置されており、上下2段の各光ファイバ束から計m本の光ファイバ素線が、互い違いに交互に溝内に配列され、溝に固定されて第1の光ファイバ素線アレイが形成されており、溝の形成方向と垂直な方向にそれぞれ設けられる、溝部品の左右の側面に、開口部が形成されており、左右の側面にそれぞれ形成されている開口部の少なくとも一部が、溝内に配列された光ファイバ素線の軸方向に垂直な方向で貫通して形成されており、開口部を通して線状部品が挿入可能で、溝内に配列された各光ファイバ素線の軸方向に亘って、2点以上で各光ファイバ素線の外周に、上方から溝の底面方向に押さえ付けることが可能な程度の剛性を有した、断面が円形状の線状部品を接触させ、その接触の際に線状部品の軸方向を光ファイバ素線の軸方向に対して垂直とすることが可能な状態であり、溝部品の左右の側面から開口部を見たときに、開口部を通して、溝内に配列された光ファイバ素線の一部が見えている光ファイバアレイとした事である。
【0027】
また第四の特徴は、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束を更に備え、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束が上下2段に配置されていると共に、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束が共に、第1の光ファイバ束と第2の光ファイバ束の上段に配置されており、第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束から計(m-1)本の光ファイバ素線が、互い違いに交互に、第1の光ファイバ素線アレイの各光ファイバ素線間に配列され、第1の光ファイバ素線アレイに固定されて第2の光ファイバ素線アレイが形成されており、第2の光ファイバ素線アレイの軸方向に亘って、2点以上で第2の光ファイバ素線アレイの外周に線状部品を接触させ、その接触の際に線状部品の軸方向を第2の光ファイバ素線アレイの軸方向に対して垂直とすることが可能な状態である光ファイバアレイとした事である。
【0028】
これらの光ファイバアレイに依れば、軸方向に亘って各光ファイバ素線の同一箇所を、線状部品で押さえる事が出来るので、平行に配列された光ファイバ素線毎の固定状態のバラツキが防止される。
【0029】
また第五の特徴は、溝部品を紫外線透過可能な材料で形成し、各光ファイバ素線の固定を紫外線硬化接着剤で行う光ファイバアレイの製造方法とした事である。
【0030】
また第六の特徴は、溝部品が紫外線透過可能な材料で形成されており、各光ファイバ素線の固定が紫外線硬化接着剤で行われている光ファイバアレイとした事である。
【0031】
これらの光ファイバアレイ又はその製造方法に依れば、1層毎に光ファイバ素線アレイを固定することが可能となり、光ファイバアレイ全体での光ファイバ素線間のピッチのバラツキや誤差を防止する事が出来る。更に後工程で接着剤の溶解による、固定済みの光ファイバ素線アレイの固定位置のぐらつきが防止出来る。
【0032】
また第七の特徴は、上記何れかに記載の製造方法によって光ファイバアレイを2つ作製し、上下から該各光ファイバアレイを積層すると共に、積層の際に該各光ファイバアレイに於ける最上位層の光ファイバ素線アレイの光ファイバ素線を、一方の該光ファイバアレイの最上位層の光ファイバ素線アレイの光ファイバ素線間に配列する光ファイバアレイの製造方法とした事である。
【0033】
また第八の特徴は、上記何れかに記載の光ファイバアレイを2つ備え、上下から該各光ファイバアレイが積層されていると共に、該各光ファイバアレイに於ける最上位層の光ファイバ素線アレイの光ファイバ素線が、一方の該光ファイバアレイの最上位層の光ファイバ素線アレイの光ファイバ素線間に配列されている光ファイバアレイとした事である。
【0034】
これらの光ファイバアレイ又はその製造方法に依れば、光ファイバアレイを上下方向に積層して、1つの光ファイバアレイを形成しても、該光ファイバアレイ全体での光ファイバ素線間のピッチのバラツキや誤差をより確実に防止する事が出来る。
【0035】
以下、
図1~
図7又は
図12~
図15を適宜参照して、本発明の第1の実施形態に係る光ファイバアレイの製造方法及び光ファイバアレイを説明する。
図1に示すように、第1の実施形態の光ファイバアレイ1aは、溝部品2と少なくとも2つの光ファイバ束3、4を備えて形成される。
【0036】
図5~
図7に示すように、溝部品2の面上には少なくともm本(m:0~2を含まない自然数)の溝2aが互いに平行に形成されている。本実施形態では、m=9本の形態を一例として示している。各溝2aは断面がV字形に形成されており(以下、必要に応じてV溝2aと表記)、更に溝部品2には溝2aよりも低い位置に、平面部2cが形成されている。その平面部2c側の溝2aの端部には、面取部2dが形成されている。
【0037】
図5よりV溝2aの形成角度θ及び深さは、全てのV溝2aで一定に設定される。更に、各溝2aは一定のピッチP1で互いに平行に形成される。一例として本実施形態では、P1とそのバラツキは、0.127mm±0.0005mm(127μm±0.5μm)と設定する。
【0038】
溝部品2は、波長254nm又は365nmの紫外線(UV)の光が透過可能な材料で形成されており、具体的には石英やホウケイ酸ガラス等の光学ガラスが挙げられる。溝2aの形成は、機械加工(切削、研磨、ブラスト加工)等により行えば良い。
【0039】
第1の光ファイバ束3は、保護被覆で覆われた4本の光ファイバが、一定のピッチで互いにコア軸が平行となるように配列されて成る。また第2の光ファイバ束4は、保護被覆で覆われた5本の光ファイバが、一定のピッチで互いにコア軸が平行となるように配列されて成る。本実施形態に於いて光ファイバ束とは、1列で互いの軸方向が平行に配列された複数の光ファイバを指す。一例として、各ファイバ束3及び4に於ける光ファイバ間のピッチとそのバラツキは、0.254mm±0.001mm(254μm±1.0μm)と設定する。
【0040】
なお第1の光ファイバ束3又は第2の光ファイバ束4は、それぞれ複数の光ファイバをその被膜部分で一体化してテープ状に構成した、テープ型光ファイバでも良い。
図3では各光ファイバ束3及び4がテープ型光ファイバの場合の載置状態を示している。
【0041】
用意される第1の光ファイバ束3と第2の光ファイバ束4は、上下方向で2段に配置される。本実施形態では、第1の光ファイバ束3が平面部2cの面上に載置され、その第1の光ファイバ束3の上に第2の光ファイバ束4が配置される。
【0042】
各光ファイバは、図示しないコアの周りを、そのコアの屈折率よりも低い屈折率を有するクラッドが包囲する型式の、石英製の単一モード光ファイバからなる。更に各光ファイバは、端部から所定寸法分だけ被覆が剥ぎ取られて、光ファイバ素線3a、4aが露出されている。本実施形態に於いて光ファイバ素線とは、ストリップされ、コアとクラッドから成る光ファイバを指すものとする。
【0043】
一例として、各光ファイバ素線3a及び4aの径(クラッド径)とそのバラツキは、0.125mm±0.0002mm(125μm±0.2μm)と設定する。このような各光ファイバ素線3a及び4aが、溝2a内にそれぞれ配列される。
【0044】
溝2aの本数はm本なので、上下2段の各光ファイバ束3及び4からも計m本の光ファイバ素線3a及び4aが、各々の溝2a内にそれぞれ配列される。溝2a内への配列の際に、光ファイバ素線3a及び4aは、1本毎に互い違いに交互に各溝2a内にアレイ状に配列される。
【0045】
溝2aに光ファイバ素線3a又は4aを配列する際は、各光ファイバ素線3a及び4a間に隙間が形成されない様に配列する(
図2参照)。このように各光ファイバ素線3a及び4aを配列する事により、光ファイバ素線3a及び4a間のピッチのバラツキや誤差を解消に導ける。
【0046】
本実施形態では、第2の光ファイバ束4よりも第1の光ファイバ束3が、溝2aに対してより下側に配置される。従って、溝2aに光ファイバ素線3a又は4aを配列する際に、下段側の光ファイバ束3から伸長される光ファイバ素線3aに、上段側の光ファイバ素線4aよりも大きな曲げが形成される。よって溝2aに光ファイバ素線3a又は4aを配列する場合、光ファイバ素線3aが光ファイバ素線4aよりも浮き上がってしまう。
【0047】
一方、光ファイバ束4も溝2aに対して下側に配置される(
図4参照)。従って、溝2aに光ファイバ素線4aを配列する際に、光ファイバ素線3aよりも小さい曲げが光ファイバ素線4aにも形成される。よって光ファイバ素線4aが溝2a内に配列される際も、浮き上がりが発生する。
【0048】
そこで本実施形態では、溝2a内に光ファイバ素線3a及び4aを配列した状態で、
図12及び
図13に示すように溝2a内に配列した各光ファイバ素線3a及び4aの軸方向(コア軸方向)に亘って、線状部品7を各光ファイバ素線3a及び4aのクラッド外周上に接触させる。更に線状部品7により、各光ファイバ素線3a及び4aを溝2aに向かって押さえ付ける。
【0049】
各光ファイバ素線3a及び4aは溝2aに押さえ付けられた状態で、溝2aに固定され、
図2(b)に示すように第1の光ファイバ素線アレイ8が形成される。以上により、光ファイバ素線アレイ8は、上下2層にそれぞれ配置した光ファイバ束3及び4がそれぞれ元の光ファイバ間のピッチを保ったまま、1層目の光ファイバ素線アレイ8にまとめられて9本配列される。即ち、光ファイバ素線アレイ8の配列ピッチが、元の光ファイバ束3及び4における光ファイバ間のピッチの、約半分のピッチに変換される。
【0050】
線状部品7は、各光ファイバ素線3a及び4aのクラッド外周を、各光ファイバ素線3a及び4aの径方向に亘って、上方から溝2aの底面方向に押さえ付けることが可能な程度の剛性を有した、断面が円形状の物を用いれば良い。例えば各光ファイバ素線3a及び4aと同等の直径を有するピアノ線が好適である。
【0051】
本発明及び本実施形態では、線状部品7を複数(2本以上)用意し、溝2a内に配列した各光ファイバ素線3a及び4aの軸方向に亘って、2点以上で各光ファイバ素線3a及び4aを溝2aに押さえ付ける。
図12と
図13では線状部品7が3本の形態を図示している。
【0052】
線状部品7は、各光ファイバ素線3a及び4aの外周上で接線の様に接触し、その接触が各光ファイバ素線3a及び4aの径方向に亘っている。
【0053】
各光ファイバ素線3a及び4aを2本以上の線状部品7で、各光ファイバ素線3a及び4aの軸方向に亘って2点以上で接触させて溝2aに押さえ付けて固定する事により、押さえる際に平面状部品の様に前記軸方向に対する傾きの発生が防止される。従って各光ファイバ素線3a及び4aを溝2aの軸方向に亘って均一に押さえながら固定する事が出来る。よって光ファイバ素線3a及び4aの浮き上がりが防止され、各光ファイバ素線3a及び4aの軸方向に亘る均一な保持と固定が可能となる。
【0054】
更に
図6及び
図7に示すように、溝2aの形成方向(溝2aの長手方向)と垂直な方向に、溝部品2の左右の側面が設けられる。その左右の側面に開口部2bが一対で、同一形状、同一寸法で形成される。
【0055】
更に、左右の側面に形成されている開口部2bの少なくとも一部が、溝2a内に配列された光ファイバ素線3a及び4aの軸方向に垂直な方向で貫通して形成される事が望ましい。このような構成により、開口部2bの少なくとも一部が、光ファイバ素線3a及び4aの軸方向に垂直な方向で一続きに形成される。
【0056】
よって開口部2bの少なくとも一部を通して、各線状部品7が挿入可能となる。線状部品7が各光ファイバ素線3a及び4aに接触する際は、
図13に示すように左右の開口部2bを通して各線状部品7を各光ファイバ素線3a及び4aに接触させる。更に接触の際は、各線状部品7の軸方向を、光ファイバ素線3a及び4aの軸方向に対して垂直とする事が、より好ましい。
【0057】
開口部2bの少なくとも一部を通して各線状部品7を、各光ファイバ素線3a及び4aに接触させる事により、各線状部品7の軸方向を、光ファイバ素線3a及び4aの軸方向に対して垂直とすることが出来る。従って、光ファイバ素線3a及び4aの軸方向に亘って、各光ファイバ素線3a及び4aの同一箇所を、線状部品7で押さえる事が可能となり、平行に配列された光ファイバ素線3a又は4a毎の固定状態のバラツキが防止される。
【0058】
各光ファイバ素線3a及び4aの溝2aへの固定は、紫外線硬化接着剤(UV接着剤)で行われる事が好ましい。具体的には、紫外線硬化接着剤を溝2a内のみに充填後に、各光ファイバ素線3a及び4aを溝2a内に配列し、配列後に線状部品7により各光ファイバ素線3a及び4aを溝2aに押さえ付ける。すると、各光ファイバ素線3a及び4aと、溝2aとの間に、紫外線硬化接着剤が自らの粘性で毛細管現象により回り込む。次に、溝部品2の外側から均一に紫外線光を照射し、各光ファイバ素線3a及び4aを溝2aに固定し、光ファイバ素線アレイ8を形成する。その後線状部品7を外す。線状部品7に紫外線硬化接着剤が付着しないように、紫外線硬化接着剤の充填量を調整する。
【0059】
或いは、各光ファイバ素線3a及び4aを溝2a内に配列し、配列後に溝2aから突き出た各光ファイバ素線3a及び4aの下側(溝2aとの間)に紫外線硬化接着剤を塗布し、線状部品7により各光ファイバ素線3a及び4aを溝2aに押さえ付け、毛細管現象により溝2aの軸方向に紫外線硬化接着剤を充填して行っても良い。次に、溝部品2の外側から均一に紫外線光を照射し、各光ファイバ素線3a及び4aを溝2aに固定し、光ファイバ素線アレイ8を形成する。その後線状部品7を外す。紫外線硬化接着剤の充填箇所への気泡の混入防止という点では、こちらの充填方法がより好ましい。
【0060】
紫外線硬化接着剤は、エポキシ系かアクリル系又はシリコン系で、ガラス転移温度60℃~150℃程度のものを使用すれば良い。
【0061】
溝部品2外側からの紫外線光の照射により、1層毎に光ファイバ素線アレイを固定することが可能となる。従って、光ファイバアレイ1a全体での光ファイバ素線間のピッチのバラツキや誤差を防止する事が出来る。更に後工程で接着剤の溶解による固定済みの光ファイバ素線アレイの固定位置のぐらつきが防止出来る。
【0062】
更に、光ファイバ素線アレイ8の端部を、溝部品2ごと研磨して、光ファイバ素線3a及び4aの端部の長さを一様に揃える。又は光ファイバ素線アレイ8の端部のみを平坦に研磨して、光ファイバ素線3a及び4aの各端部の長さを一様に揃えても良い。
【0063】
又は、溝部品2の端面から突出した光ファイバ素線3a及び4aを回転ブレード等で切断後に、光ファイバ端部に研磨を施しても良い。
【0064】
次に、第3の光ファイバ束5と第4の光ファイバ束6を用意する。光ファイバアレイ1aに備えられる光ファイバ束5と6は共に、保護被覆で覆われた4本の光ファイバが、一定のピッチで互いにコア軸が平行となるように配列されて成る。各ファイバ束5及び6に於ける光ファイバ間のピッチとそのバラツキも、0.254mm±0.001mm(254μm±1.0μm)に設定する。各光ファイバ束5及び6も、テープ型光ファイバに変更可能である。
図3では各光ファイバ束5及び6がテープ型光ファイバの場合の載置状態を示している。
【0065】
用意される第3の光ファイバ束と第4の光ファイバ束は、上下方向で2段に配置される。本実施形態では、第2の光ファイバ束4の上に第3の光ファイバ束5が配置され、その第3の光ファイバ束5の上に第4の光ファイバ束6が配置される。従って、第3の光ファイバ束5と第4の光ファイバ束6は共に、第1の光ファイバ束3と第2の光ファイバ束4の上段に配置される。
【0066】
光ファイバ束5と6も、光ファイバ束3と4と同様の型式であり、端部から所定寸法分だけ被覆が剥ぎ取られて、光ファイバ素線5a、6aが露出されている。
【0067】
更に、各光ファイバ素線5a及び6aの径(クラッド径)とそのバラツキも、各光ファイバ素線3a及び4aと同様である。このような各光ファイバ素線5a及び6aが、第1の光ファイバ素線アレイ8の各光ファイバ素線3a及び4a間に配列される。
【0068】
各光ファイバ素線3a及び4a間の間隔の箇所は(m―1)箇所、即ち
図2の場合は計8箇所である。従って、上下2段の各光ファイバ束5及び6からも計(m―1)本の光ファイバ素線5a及び6aが、光ファイバ素線3a及び4a間にそれぞれ配列される。光ファイバ素線3a及び4a間への配列の際に、光ファイバ素線5a及び6aは1本毎に互い違いに交互に光ファイバ素線3a及び4a間にアレイ状に配列される。
【0069】
各光ファイバ素線3a及び4a間に光ファイバ素線5a又は6aを配列する際は、光ファイバ素線5a及び6a間に隙間が形成されない様に配列する。更に、全ての光ファイバ素線3a~6a間でも隙間が形成されない様に配列する(
図2参照)。理想的には各光ファイバ素線3a~6aの中心は、隣接する2本の光ファイバ素線の中心と共に正三角形を成すように、俵積み状に構成される。このように各光ファイバ素線5a及び6aを配列する事により、光ファイバ素線5a及び6a間のピッチのバラツキや誤差を解消に導ける。
【0070】
本実施形態では、第4の光ファイバ束6よりも第3の光ファイバ束5が、より下側に配置される。従って光ファイバ素線5a又は6aを配列する際に、下段側の光ファイバ束5から伸長される光ファイバ素線5aに、上段側の光ファイバ素線6aよりも大きな曲げが形成される。よって配列の際、光ファイバ素線5aが光ファイバ素線6aよりも浮き上がってしまう。
【0071】
一方の光ファイバ束4も、各光ファイバ素線3a及び4a間に対して下側に配置されている(
図4参照)。従って光ファイバ素線6aを配列する際に、光ファイバ素線5aよりも小さい曲げが光ファイバ素線6aにも形成される。よって光ファイバ素線6aが各光ファイバ素線3a及び4a間に配列される際も、浮き上がりが発生してしまう。
【0072】
そこで本実施形態では、各光ファイバ素線3a及び4a間に光ファイバ素線5a及び6aを配列した状態で、
図14及び
図15に示すように線状部品7を各光ファイバ素線5a及び6aのクラッド外周上に接触させ、各光ファイバ素線5a及び6aを第1の光ファイバ素線アレイ8に向かって押さえ付ける。
【0073】
各光ファイバ素線5a及び6aが第1の光ファイバ素線アレイ8に押さえ付けられた状態で、第1の光ファイバ素線アレイ8に固定される事により、
図2(b)に示すように第2の光ファイバ素線アレイ9が形成される。以上により、光ファイバ素線アレイ9は、上下2層にそれぞれ配置した光ファイバ束5及び6がそれぞれ元の光ファイバ間のピッチを保ったまま、2層目の光ファイバ素線アレイ9にまとめられて8本配列されている。即ち、光ファイバ素線アレイ9の配列ピッチが、元の光ファイバ束5及び6における光ファイバ間のピッチの、約半分のピッチに変換されている。
【0074】
各光ファイバ素線5a及び6aを押さえ付ける際も、線状部品7を複数(2本以上)用意し、各光ファイバ素線5a及び6aの軸方向(コア軸方向)に亘って、2点以上で線状部品7により各光ファイバ素線5a及び6aを第1の光ファイバ素線アレイ8に押さえ付ける。
図14と
図15では、線状部品7が3本の形態を図示している。
【0075】
線状部品7は、各光ファイバ素線5a及び6aの外周上で接線の様に接触し、その接触が各光ファイバ素線5a及び6aの径方向に亘っている。
【0076】
各光ファイバ素線5a及び6aを2本以上の線状部品7で、各光ファイバ素線5a及び6aの軸方向に亘って2点以上で接触させて第1の光ファイバ素線アレイ8に押さえ付けて固定する事により、押さえる際に平面状部品の様に前記軸方向に対する傾きの発生が防止される。従って、光ファイバ素線3a~6aを第1の光ファイバ素線アレイ8及び第2の光ファイバ素線アレイ9の様に2層以上に積層しても、積層方向での光ファイバ素線3a~6aの浮き上がりが防止される。よって、2層以上に光ファイバ素線3a~6aを積層しても、各光ファイバ素線3a~6aの軸方向に亘る均一な保持と固定が可能となる。
【0077】
なお、線状部品7が各光ファイバ素線5a及び6aに接触する際は、
図15に示すように線状部品7が開口部2bを通らないとしても良い。勿論、開口部2bを
図6に示す形態よりも高く形成し、開口部2bの少なくとも一部を通して各線状部品7を挿入しても良い。何れにしても接触の際は、各線状部品7の軸方向を、光ファイバ素線5a及び6aの軸方向に対して垂直とする事がより好ましい。このような形態とする事により、光ファイバ素線5a及び6aの軸方向に亘って、各光ファイバ素線5a及び6aの同一箇所を、線状部品7で押さえる事が出来る。よって、平行に配列された光ファイバ素線5a又は6a毎の固定状態のバラツキが防止される。
【0078】
各光ファイバ素線5a及び6aの第1の光ファイバ素線アレイ8への固定も、紫外線硬化接着剤で行われる事が好ましい。具体的には、各光ファイバ素線5a及び6aを各光ファイバ素線3a及び4a間に配列し、配列後に各光ファイバ素線5a及び6aの下側(各光ファイバ素線3a及び4aとの間)に紫外線硬化接着剤を塗布する。更に、線状部品7により各光ファイバ素線5a及び6aを溝2a側に押さえ付ける。すると、各光ファイバ素線5a及び6aと、各光ファイバ素線3a及び4aとの間に、紫外線硬化接着剤が自らの粘性で毛細管現象により回り込む。次に、溝部品2の外側から均一に紫外線光を照射し、各光ファイバ素線5a及び6aを第1の光ファイバ素線アレイ8に固定し、光ファイバ素線アレイ9を形成する。その後、線状部品7を外す。線状部品7には、紫外線硬化接着剤が付着しないように、紫外線硬化接着剤の充填量を調整する。以上の充填方法により、紫外線硬化接着剤の充填箇所への気泡の混入が防止される。
【0079】
溝部品2外側からの紫外線光の照射により、1層毎に光ファイバ素線アレイを固定することが可能となる。従って、光ファイバアレイ1a全体での光ファイバ素線間のピッチのバラツキや誤差を防止する事が出来る。更に後工程で接着剤の溶解による固定済みの光ファイバ素線アレイの固定位置のぐらつきが防止出来る。
【0080】
更に光ファイバ素線アレイ9の端部を溝部品2ごと研磨して、光ファイバ素線5a及び6aの端部の長さを一様に揃える。又は、光ファイバ素線アレイ9の端部のみを平坦に研磨して、光ファイバ素線5a及び6aの各端部の長さを一様に揃えても良い。
【0081】
又は、溝部品2の端面から突出した光ファイバ素線5a及び6aを回転ブレード等で切断後に、光ファイバ端部に研磨を施しても良い。
【0082】
なお各光ファイバ素線アレイ8及び9の端部の研磨を、一工程で同時に行っても良い。
【0083】
以上により、9本の光ファイバ素線から成る第1の光ファイバ素線アレイ8、及び8本の光ファイバ素線から成る第2の光ファイバ素線アレイ9が、溝部品2の端部で俵積み状に配置されて集束した光ファイバアレイ1aが形成される。
【0084】
以下、
図8~
図11を適宜参照して、本発明の第2の実施形態に係る光ファイバアレイとその製造方法を説明する。なお第1の実施形態と重複する箇所には同一番号を付し、重複する説明は省略又は簡略化して記載する。
【0085】
図8、
図9、及び
図11に示すように、第2の実施形態の光ファイバアレイは、2つの光ファイバアレイ1aと1bを備えて形成される。光ファイバアレイ1bは、第1の実施形態に係る光ファイバアレイ1aと同一部品及び同一製造方法により形成され、光ファイバアレイ1aを180°回転したものである。
【0086】
予め光ファイバアレイ1aと1bを2つ作製し、
図8に示すように上下方向から各光ファイバアレイ1aと1bを積層する。積層の際は、各光ファイバアレイ1a又は1bに於ける最上位層の光ファイバ素線アレイ9の光ファイバ素線5a、6bを、一方の光ファイバアレイ1b又は1aの最上位層の光ファイバ素線アレイ9の光ファイバ素線5a及び6b間に接触させて配列する。
【0087】
開口部2bの高さは、各光ファイバアレイ1a又は1bに於ける最上位層の光ファイバ素線アレイ9の光ファイバ素線5a、6b同士が、接触可能な程度に設定する。
【0088】
最上位層の光ファイバ素線アレイ9同士の固定は、紫外線硬化接着剤又は熱硬化接着剤を用いれば良い。具体的には紫外線硬化接着剤又は熱硬化接着剤を、少なくともどちら一方の光ファイバ素線アレイ9に於ける各光ファイバ素線5a及び6a間に予め充填する。その充填後に、各光ファイバ素線5a及び6aを一方の各光ファイバ素線5a及び6a間に配列し、配列後に溝部品2の外側から均一に紫外線光を照射又は加熱して固定する。
【0089】
又は、各光ファイバ素線5a及び6aを一方の各光ファイバ素線5a及び6a間に配列し、配列後に光ファイバ素線5a及び6aの先端から紫外線硬化接着剤又は熱硬化接着剤を塗布し、紫外線硬化接着剤又は熱硬化接着剤を各光ファイバ素線5a及び6aに回り込ませて固定しても良い。
【0090】
或いは光ファイバアレイ1a、1bの各溝部品2、2の対向する面同士を、接着剤を用いて接合しても良い。但し、各光ファイバアレイ1a又は1bに於ける最上位層の光ファイバ素線アレイ9の光ファイバ素線5a、6bを、一方の光ファイバアレイ1b又は1aの最上位層の光ファイバ素線アレイ9の光ファイバ素線5a及び6b間に接触させて配列する。
【0091】
理想的には各光ファイバ素線3a~6aの中心は、
図10に示すように、隣接する2本の光ファイバ素線の中心と共に正三角形を成すように、俵積み状に構成される。このように各光ファイバ素線3a~6aを配列する事により、光ファイバ素線3a~6a間のピッチのバラツキや誤差を解消に導ける。
【0092】
本実施形態の光ファイバアレイとその製造方法に依れば、2つの光ファイバアレイ1a、1bを上下方向に積層して1つの光ファイバアレイを形成しても、該光ファイバアレイ全体での光ファイバ素線3a~6a間のピッチのバラツキや誤差をより確実に防止出来る。
【0093】
更に
図9の光ファイバアレイに、図示しない端末金具を別途取り付けても良い。また、図示しないシリコン樹脂等の保護用樹脂を、平面部2cの空間に充填して封止しても良い。
【0094】
なお、本実施形態は種々変更可能であり、例えば各光ファイバアレイ1a、1bの溝部品2の寸法は必ずしも同一に限定されず、光ファイバ1b側の溝部品2の外形寸法を小さく変更しても良い。
【0095】
また本発明は、上記各実施形態に限られる事無く種々変更可能である。例えば、光ファイバの構成は、上述した各光ファイバ束3~6の本数に限定されない。また光ファイバの型式は、石英製の単一モード光ファイバに限定されず、プラスチック光ファイバや石英製のマルチモード光ファイバ等も使用可能である。更に溝2aの断面形状は矩形状でも良い。
【0096】
本発明に係る光ファイババンドルは、マルチキャストスイッチ(MCS:Multi Cast Switch)や、スイッチに於ける受光路の切り替え等の、空間光結合系で用いられる。
【符号の説明】
【0097】
1a、1b 光ファイバアレイ
2 溝部品
2a 溝
2b 開口部
2c 平面部
2d 面取部
3 第1の光ファイバ束
4 第2の光ファイバ束
5 第3の光ファイバ束
6 第4の光ファイバ束
3a、4a、5a、6a 光ファイバ素線
7 線状部品
8 第1の光ファイバ素線アレイ
9 第2の光ファイバ素線アレイ