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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】コントロールケーブルの長さ調整装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 1/22 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
F16C1/22 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018017395
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019132408
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】592242327
【氏名又は名称】日本フレックス工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 喬之
(72)【発明者】
【氏名】松田幸一郎
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148334(JP,A)
【文献】特開2008-95875(JP,A)
【文献】特開2006-57764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸中心部にアウターケーシングとインナーケーブルからなるコントロールケーブルを挿入
するための挿入孔を穿設するとともに、軸長手方向に前記インナーケーブルが連通される挿通孔を設け、外周面に雄ねじ部を形成した頭部付き長ボルトと、
前記長ボルトの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部を備えた軸方向の移動を規制する第1ロック部材と、
前記長ボルトの雄ねじ部に挟着可能な金属片と前記金属片を内包する保持体とで構成されて、前記金属片と前記保持体とがロック時に一体となって前記長ボルトの回転方向の移動を規制する第2ロック部材と、
前記長ボルトを軸方向にガイドすると共に、前記第1ロック部材及び前記第2ロック部材の前記保持体を、軸方向と直交する方向にガイドするガイドケースと、
を備えたコントロールケーブルのアウター長さ調整装置。
【請求項2】
請求項1において、前記長ボルトの雄ねじ部に挟着可能な金属片が、前記長ボルトの雄ねじ部の外周を跨いで挟着可能なクリップ状の金属片である構成。
【請求項3】
前記第1ロック部材および前記第2ロック部材のロックあるいはアンロックの切替え操作時に、異常操作では同時ロックあるいは同時アンロックとなる手段を用いて、前記2つのロック部材の正常な操作順を促すことを特徴とする、請求項1あるいは2の構成。
【請求項4】
前記第1ロック部材と前記第2ロック部材の前記保持体とが隣接して配置され、前記第2ロック部材の挟着可能な金属片が、前記第2ロック部材の保持体と前記第1ロック部材の隣接面で覆われて脱落不能に保持される、請求項1から3のいずれか1項の構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロールケーブルの長さ調整装置に関し、より詳しくは、車両等に装備されたコントロールケーブルのアウター長さの粗調整並びに微調整を、レンチ又はスパナ等の工具を使用することなく、左右の両手を使って簡便に行うことが可能なコントロールケーブルの長さ調整装置に関する。
ここに、粗調整とは、例えば、5~50mm間の0.3~3.0mm刻みの調整をいい、微調整とは0~5mm間の無段階又は0.01~0.3mm刻みの調整を云う。尚、本願発明の場合、微調整は無段階調整に特化している。
【背景技術】
【0002】
コントロールケーブルの長さは、必要に応じて適宜その長さを調整することが必要である。例えば、車両等のブレーキやクラッチ機構等に装備されているコントロールケーブルの張り代は、ある程度の遊びが必要であり、運転者により操作上の感覚に大きく影響するものであり、その長さを最適な張り代に微調整したり、又は粗調整する必要がある。そのためにコントロールケーブルの長さ調整装置に関する各種の技術や装置が提案されている。
【0003】
例えば、本出願人による特許文献1では、アウター長さの粗調整および微調整を、調整工具なしで簡易に調整可能とする装置が開示されている。但し、第2ロック部材3がケースの壁部4d、4fとわずかではあるが隙を設けている為、長ボルト1の微少な回転変動を許容する構成となっている。この為、調整時は無段階であってもその調整位置で完全には固定されない。また、図2で示される通り、長ボルト1の雄ねじに嵌着される第2のロック部材(クリップ)3が外部に露出しており、コントロールケーブルの運搬時や装着後の作業中に前記装置のクリップが周囲物と干渉する懸念がある。このため、クリップの損傷あるいは作業者の意図しない接触による調整の変動の可能性がある。
【0004】
特許文献2では、アウター長さの粗調整および微調整を工具なしで実施できる装置が開示されている。但し、微調整は第1筒部9の雄ねじに噛み合う雌ねじナット13の所定回転角刻みであり、刻み幅は小さいが無段階調整ではない。本発明では、第1筒部9が第2筒部11の所定位置まで挿入され回転方向不能かつ軸方向可能に保持され(粗調整)、第1筒部9の外周部の雄ねじに噛み合う雌ねじナット13の手動回転により軸方向に微調整される。また、第1筒部9の雄ねじに対する雌ねじナット13の回転規制として規制部15を備える。この規制部15は掛止部材15Aやロック機構15Bの構成を必要とし、コンパクトかつ簡素な構成とは言えない。尚、本発明では、粗調整のやり直しに対しては、速やかに対応できず、操作の機動性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-148334号公報
【文献】特開2017-89796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、上記のような従来技術が有する問題点に鑑み、鋭意検討を重ねて創案されたものであり、本願発明が解決しようとする課題は以下の通りである。即ち、コントロールケーブルの長さ調整装置において、まず工具なしで粗調整とともに微調整の無段階調整を実現することであり、更にエンジン等の振動による微妙なズレ(弛み等)の防止が可能であって、コンパクトで簡素な機構によるコスト低減と操作性及び作業性の向上を実現し、かつ周囲物との意図しない干渉を防止できる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明では、コントロールケーブル長さの調整として、アウター長さ調整装置に限定している。これは、本願発明では、粗調整とともに無段階の微調整を一連の調整操作で迅速に実現して調整作業の操作性を高めるためである。この為、コントロールケーブルのアウターケーシング長手方向の中間部にて長ボルトを備えるアウター長さ調整装置を介在させ、螺合状態で前記長ボルトを軸方向に移動させることにより、アウター長さ調整装置自体を伸縮させる。アウター長さ調整装置と一体化したアウターケーシング長さが変化することになるので、結果としてインナーの張り調整が可能となる。迅速に調整するには、前記長ボルトの回転操作が容易に実施できなければならない。アウターケーシングの長さ調整の場合、アウターケーシング端を前記長ボルトと突き合わせ保持しておけば、インナーの作動操作時にアウター配索が柔軟に追従するので作動機能は確保され、かつ前記長ボルトの回転操作も容易となる利点がある。これに対し、インナー長さ調整装置では、インナーケーブル端は前記長ボルトと一体に固定する必要があるので、前記長ボルトの回転操作は実施困難である。
【0008】
以下、コントロールケーブルの長さ調整装置として、アウター長さ調整装置の採用とともに上記の種々の課題を解決する手段を述べる。
【0009】
まず、第1の発明を請求項1として、軸中心部にアウターケーシングとインナーケーブル
からなるコントロールケーブルを挿入するための挿入孔を穿設するとともに、軸長手方向
に前記インナーケーブルが連通される挿通孔を設け、外周面に雄ねじ部を形成した頭部付
き長ボルトと、
前記長ボルトの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部を備えた軸方向の移動を規制する第1ロック
部材と、
前記長ボルトの雄ねじ部に挟着可能な金属片と前記金属片を内包する保持体とで構成され
て、前記金属片と前記保持体とがロック時に一体となって前記長ボルトの回転方向の移
動を規制する第2ロック部材と、
前記長ボルトを軸方向にガイドすると共に、前記第1ロック部材及び前記第2ロック部材
の前記保持体を、軸方向と直交する方向にガイドするガイドケースと、
を備えたコントロールケーブルのアウター長さ調整装置、とした。
【0010】
更に、第2の発明を請求項2として、請求項1において、前記長ボルトの雄ねじ部で挟着可能な金属片が、前記長ボルトの前記雄ねじ部の外周を跨いで挟着可能なクリップ状の金属片である構成、とした。
【0011】
また、第3の発明を請求項3として、前記第1ロック部材および前記第2ロック部材のロックあるいはアンロックの切替え操作時に、異常操作では同時ロックあるいは同時アンロックとなる手段を用いて、前記2つのロック部材の正常な操作順を促すことを特徴とする、請求項1あるいは2の構成、とした。
【0012】
第4の発明を請求項4として、前記第1ロック部材と前記第2ロック部材の前記保持体と
が隣接して配置され、前記第2ロック部材の挟着可能な金属片が、前記第2ロック部材の
保持体と前記第1ロック部材の隣接面で覆われて脱落不能に保持される、請求項1から3
のいずれか1項の構成、とした。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明について、本装置の構成部分とその機能による効果を概略説明する。まず、長ボルトをガイドケース内での所定位置まで移動して粗調整の後、第1ロック部材と噛み合わせた後、前記長ボルトの頭部を手動回転して微調整移動をおこなう。これにより、工具なしで粗調整と微調整の無段階調整が可能となる。そして、第2ロック部材で前記長ボルトの前記雄ねじ部に金属片を挟着させる。前記金属片は保持体に内包され、かつ、ロック時には前記金属片と前記保持体が一体化されている。このため、周囲物との意図しない干渉防止が可能となる。そして、第1ロック部材も第2ロック部材もガイドケースに一体的に保持されて、エンジン等の振動による微妙なズレ(弛み等)を防止できる。さらに、本機構は、部品点数も少なく、コンパクトで簡素な機構を構成できる。
【0014】
第2の発明では、前記雄ねじ部の外周を跨いで挟着可能なクリップとしたので、跨ぎ部分のねじり剛性が抑制されてねじ溝に沿い易く、安定した締付力を提供できる効果がある。これは、前記雄ねじ部のねじ溝がらせん溝で、かつ、前記金属片が前記保持体に内包され前記金属片と前記長ボルトの雄ねじ部との挟着状態が目視確認し難いところ、確実にらせん溝に挟着できる点で望ましい形状といえる。また、本跨ぎ形状は簡素な形状で構成できるので製造も容易であり、安定した品質の確保とともにコスト面でも有利である。
【0015】
第3の発明は、第1ロック部材と第2ロック部材の同時ロックあるいは同時アンロックを避けて操作力を軽減するとともに、操作手順を促すことで粗調整と微調整の正しい実行手順を教示する効果がある。これにより、作業者への負担を軽減し、作業効率を向上するのに好適である。
【0016】
第4の発明では、第2ロック部材の保持体の第1ロック部材との隣接面側を開放面とすることができる。この為、前記金属片を保持体に装着する作業が容易となるとともに、前記金属片の脱落防止も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施例の全体斜視図である。
図2図1の第1ロック部材について、(イ)斜視図(ロ)ロック時状態(ハ)アンロック時状態を示す。
図3図1の第2ロック部材の斜視図を示す。
図4図1の第2ロック部材について、(イ)ロック時状態(ロ)アンロック時状態(ハ)使用される金属片を示す。
図5図1のガイドケースについて、(イ)上面図(ロ)側面図(ハ)A-A断面図を示す。
図6】第1ロック部材がロック状態であって、(イ)第2ロック部材がアンロック状態(ロ)第2ロック部材がロック状態を示す。
図7】第2ロック部材の第2実施例の(イ)上面図(ロ)正面図(ハ)右側面図を示す。
図8図7の第2実施例について、(イ)ロック時状態(ロ)アンロック時状態を示す。
図9】第2ロック部材の第3実施例の保持体部分についての(イ)上面図(ロ)正面図(ハ)右側面図を示す。
図10図9の第3実施例について、(イ)ロック時状態(ロ)アンロック時状態(ハ)使用される金属片を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本願発明のコントロールケーブルのアウター長さ調整装置の構成を説明する。図1は、本願発明のコントロールケーブルのアウター長さ調整装置の第1実施例の全体斜視図であり、以下の説明における上下前後左右の方向についても定義を与えている。
10は、本願発明のコントロールケーブルのアウター長さ調整装置である。アウターケーシングは分断されて、アウターケーシング一方端12aは長ボルト2の頭部2aに穿設された挿入孔2dに遊嵌され、他方端12bはガイドケース5の外ボス53のボス孔53aに挿入後、リング12cでカシメにより締結される。インナーケーブル11は、長ボルト2の軸中心部のインナー挿通孔2c及びガイドケース5の内ボス52と外ボス53に設けたインナー挿通孔56を通過する構成となっている。
【0019】
2は頭部付きの長ボルトで、軸部外周面には雄ねじ部2bが螺設される。頭部2aの軸中心部にアウターケーシング端12aを遊嵌する挿入孔2dが穿設される。また、軸中心部にインナー挿通孔2cが設けられる。
【0020】
3は第1ロック部材であり、弾性を有する硬質樹脂材からなる。図2(イ)に示すように、略「門」の字状をなし、頭部の平坦面34と三角形状突起33a、33bを備える二股状脚片35a、35bが設けられる。また、中央やや上方には半円形の雌ねじ部32が螺設される。図2(ロ)(ハ)は、第1ロック部材による長ボルトの雄ねじ部2bに対するロックとアンロックの状態を示す。ロック状態では前記長ボルトの雄ねじ部2bと前記雌ねじ部32とが螺合して、前記長ボルトの軸方向への移動を拘束する。
【0021】
4は第2ロック部材であり、図3に示すように、長ボルト2の雄ねじ部2bを跨いで挟着可能なクリップ49と前記クリップ49を内包する保持体40からなる。図4(ハ)に示す通り、クリップ49は円形の挟着部49aの一部がくびれ部49cを伴って二股状の跨ぎ脚部49bに繋がる形状からなる。クリップは、所定の締付力を付加できる形状と材質を選定する必要があるが、例えば雄ねじのねじ山の谷部に挟着する線径をもつバネ鋼線を利用することができる。尚、上記挟着材としては線材に限らず、板材で前記雄ねじ部2bと挟着可能な凹凸面を形成したものであれば適用可能である。また、挟着材の挟持部形状は円形状に限らず、角形状等であってもよい。要は、第2ロック部材のロック時およびアンロック時の操作力を抑制しつつ、挟着の保持力を高める形状が望ましい。
保持体40は、頭部43と脚部45と長ボルト2の通過用長孔部42とクリップ49の外縁部を包囲する内周壁44および脚部を保持する脚部保持壁48からなる。材質は硬質樹脂材である。また、頭部43にはロック時のストッパ用突出片43a、脚部45にはアンロック時のストッパ用突出片45aを備える。
図4(イ)(ロ)は第2ロック部材による長ボルト2の雄ねじ部2bに対するロックとアンロックの状態を示す。ロック時には、前記クリップ49が前記雄ねじ部2bを挟着しつつ、前記保持体40と一体となって、前記長ボルト2の軸周りの回転を拘束する。
【0022】
5はガイドケースであり、図5(イ)(ロ)(ハ)に示すように、長ボルト2の雄ねじ部2bを保持するU字溝51と第1ロック部材および第2ロック部材を隣接配置した場合のこれら2つのロック部材を一体に格納する格納部54と長ボルト移動スペース部55とインナー挿通孔56を有する内ボス52と外ボス53からなる。外ボス53はアウター端12bの挿入孔53aと共にインナー挿通孔56を備える。図5(ハ)に示すように、格納部54の内部壁に、第1ロック部材および第2ロック部材をスライド保持するスライド壁54aと第1ロック部材が備える三角形状突起33a、33bとアンロック時に当接する段付き壁(ストッパ)54b1,54b2を備える。また、図5(ロ)に示す通り、格納部54の上端面54cで第2ロック部材の頭部突出片43aと当接し、下端面54dの切欠き部54e1、54e2で第1ロック部材の三角形状突起33a、33bとロック時に嵌合する。尚、本実施例と異なり上記2つのロック部材を離間させる場合には、各々の格納室を設ければよい。その場合、第2ロック部材の格納室については、その壁面高さを適正寸法に設定すれば、保持体に内包される挟着材の脱落防止が可能である。
【0023】
次に、図1図5を参照しつつ、本装置の組み立てについて概略述べる。コントロールケーブル完成品の一要素として、本装置を予め組み立てる。まず、第2ロック部材4の保持体40にクリップ49を組み込み、第2ロック部材を完成する。そして、ガイドケース5の上端面54cから第2ロック部材4の脚部45を先に格納部54に挿入し、前記脚部45を前記下端面54dに当接保持する。次に、第1ロック部材3をガイドケース5の下端面54dから、頭部34を先に挿入し、脚部35a、35bを内側に押付けながら脚部突起33a、33bを進入させて、ガイドケース5の内部の段付き壁54b1,54b2に当接するまで押し込む(第1ロック部材のアンロック位置)。この時、第2ロック部材の頭部突出片43aに、第1ロック部材の頭部34が当接して、第2ロック部材は押し上げられてアンロック位置に保持される。この状態で、長ボルト2をガイドケース5のU字溝51から第1ロックおよび第2ロックの空洞部を通過させてガイドケース5の内部に載置し、その後第1ロック部材をロック状態にセットして、長ボルト2を保持する。
【0024】
上記の組み立ての後、コントロールケーブルのアウター12の一端部12aを長ボルト頭部の遊嵌孔2dに、他端部12bをガイドケースの外ボス孔53aに挿入しつつ、インナーケーブル11をアウターケーシング内及び本装置の長ボルト内に挿通させる。その後、アウターケーシング他端12bを外ボス53の外周面でリング12cにて一体かしめを行う。以上で、本装置部分の組み立てが完了する。
【0025】
次に、図4(ハ)のクリップ49に示される跨ぎクリップの利点について述べる。跨ぎクリップとは、解放端を脚部に有する形状であって、ロック時に長ボルト2の雄ねじ部2bを跨いで挟着するものをいう。
【0026】
さて、金属片を上記長ボルトの雄ねじ部2bに挟着する場合、安定した締付力を得るためには雄ねじ部2bの谷部に挟着するのが望ましい。雄ねじ部2bの谷部はらせん溝であり、本願発明のように挟着材を保持体40で覆う場合、挟着状態を目視できない。このため、挟着材としての金属片を挟着すべき溝に沿った金属片形状に形成するか、あるいは金属片をらせん溝に沿って変形させつつ挟着させる方法が考えられる。金属片形状の製造上の容易さと品質確保から、後者の方法が望ましい。
【0027】
図4(ハ)は、跨ぎクリップの一例であり、開放端を脚部に有する。本跨ぎクリップ49は、雄ねじ部2bを跨ぐ場合の上下軸まわりのねじり剛性が低く抑えられるので、らせん溝に沿って金属片が変形し易い。このため、跨ぎクリップ49はらせん溝に沿って挟着させるのに望ましい形状と言える。
【0028】
次に、図6(イ)(ロ)を参照して、第1ロック部材3および第2ロック部材4のロック操作及びアンロック操作の際に、本願発明ではこの2つのロック部材の操作順を促す構成を備えている点を説明する。本装置では、粗調整と微調整のいずれも長ボルト2の雄ねじ部2bを利用している。即ち、長ボルト2を軸方向に所定量移動した位置で、第1ロック部材3の雌ねじ部32と螺合させ(粗調整完了)、その後長ボルト2の手動回転で軸方向に適正量移動させ、第2ロック部材4で停止させる(微調整完了)。ここで、第2ロック部材4でのロック強さを確保するためには、雄ねじ部2bに対しクリップ締付部49aをタイトに挟着させる必要がある。このため、第2ロック部材のロック時あるいはアンロック時の操作力は増大することになる。そこで、2つのロック部材の同時操作を回避すること、あるいは第2ロック部材の操作のやり直し操作を回避することが望ましい。
【0029】
ロック操作およびアンロック操作の操作手順は、ロックとアンロックの繰り返し操作も想定すると、(1)第1ロック部材、第2ロック部材がともにアンロック状態、(2)第1ロック部材のみをロック操作、(3)その後に第2ロック部材をロック操作(ともにロック状態)、(4)第2ロック部材のみをアンロック操作、(5)その後、第1ロック部材をアンロック操作(ともにアンロック状態)の順となり、(1)に戻る。但し、手順(4)と手順(2)の操作後のロック状態が同じなので、手順(4)から手順(2)に戻り、再度微調整を行うこともできる。このように、粗調整と微調整の再調整に対しても迅速に対応できる機動性を備えている。
【0030】
第1ロック部材も第2ロック部材も、ロック操作とアンロック操作での押し込む方向は同一である。操作ミスを避ける為には好ましい構成である。上記(2)の操作では、第1ロック部材の雌ねじ部32が長ボルト2の雄ねじ部2bと螺合する位置まで押し込まれるとともに、第1ロック部材3の脚部突起33a、33bが下端面54dの切欠き部54e1、54e2で保持される。上記(3)の操作で、第2ロック部材のクリップ締結部49aが長ボルトの雄ねじ部2bに挟着するとともに、脚部45が格納室54の下端面54dから突き出る。
上記の(2)のロック操作で、仮に第1ロック部材でなく第2ロック部材を先行操作した場合、第2ロック部材の頭部突出片43aが第1ロック部材の頭部34と当接することにより、異常操作であることに気付く。また、上記(4)のアンロック操作で、仮に第2ロック部材でなく第1ロック部材を先に操作した場合、第1ロック部材3の頭部34が第2ロック部材4の頭部突出片43aと干渉する。第2ロック部材のアンロック操作時の操作力が第1ロック部材のそれに比して充分大きいため、第1ロック部材のみの操作力ではない異常操作であることに気付く。これらは正常な操作手順の促し手段である。(4)の手順通りに、第2ロック部材のアンロック操作をする場合、第2ロック部材4の脚部突起片45aを押し上げると、クリップ締結部49aのくびれ部49cにより長ボルト2の雄ねじ部2b上で保持されるとともに、保持体40の脚部突起片45aがガイドケース5の格納室54の下端面54dに当接することで上下方向の移動が阻止される。(5)の手順では、第1ロック部材3の脚部35a、35bを摘んでロック用突起33a、33bと格納室54の下端面切欠き54e1、54e2の嵌合を解除し、格納室内壁の段付き壁54b1、54b2まで押し上げ、ロック用突起33を前記段付き部にストッパ当たりさせる。このストッパ当たり状態でアンロック状態が維持される。
【0031】
次に、第1ロック部材3と第2ロック部材4の隣接配置により、第2ロック部材4の挟着部材を第1ロック部材3の隣接面により脱落防止し得る点について説明する。
【0032】
本事例の跨ぎクリップ49はロック状態では長ボルト2の雄ねじ2bに挟着しているので、脱落は考えにくく、アンロック状態のみが問題となる。
まず、第1ロック部材3がロック状態で、第2ロック部材4がアンロック状態の場合について、図6(イ)を参照しつつ説明する。第2ロック部材4の頭部43が第1ロック部材3の上方に突出し、跨ぎクリップ49の締結部49aの上部が第1ロック部材3の後部隣接面36によっては閉塞されない。しかし、前記締結部49aの上端部はクリップ収納室44の天井部により、くびれ部49cは長ボルト2の雄ねじ部2bにより保持され、上下方向の移動が拘束される。更に、前後方向には、跨ぎ部49bがクリップ収納部44の背面と脚部保持壁48で拘束され、くびれ部49cが第1ロック部材の後部隣接面36で閉塞される。左右方向は、クリップ収納室44の内周面に拘束される。以上から、いずれの方向にも脱落隙はないので、脱落を防止できる。
次に、第1ロック部材3も第2ロック部材4もアンロック状態について、図6(ロ)を参照しつつ説明する。この場合、第2ロック部材4の頭部43が第1ロック部材3の後部隣接面36で閉塞されるので、脱落隙がなく、脱落防止できる。
以上から、本事例では第2ロック部材4の跨ぎクリップ49の収納部44に開放面を設けるとともに、第1ロック部材3を隣接配置して、前記跨ぎクリップ49の脱落を防止できる。このため、2つのロック部材を合体して1つの格納室54に収容可能となるとともに、跨ぎクリップ49のクリップ収納部44への装着が容易となり、装置の簡素化と作業効率の向上を図れる。
【0033】
さて、上記の機構を備える本装置において、図1を参照しつつ、アウター長さ調整の方法を説明する。一般に、コントロールケーブルの長さ調整は、アウターケーシングからのインナーの出代寸法を調整することと解される。この為、インナー端部と一体に長さ調整装置を設ける場合(インナー長さ調整)と、アウター配索の途中経路でアウター長さ調整装置を介在させてアウターケーシングと一体化してアウターケーシング長さを調整する場合(アウター長さ調整)がある。アウター長さ調整では、アウターケーシング両端部を不動にした場合、インナーの操作時にアウターの中間配索が柔軟に追従するため、間接的にインナーの出代寸法の調整となる。本願発明は、前述の課題を解決するためには、このアウター長さ調整を採用している。
【0034】
本装置は、アウターの一方端12aと他方端12bの間の寸法を調整する装置である。
本装置の初期状態は第1ロック部材3のみがロック状態にある。まず、ガイドケース5の長ボルト移動スペース部55を把持しつつ、第1ロック部材3をアンロック状態にセットする。そして、長ボルト2の頭部2aを片手で掴んで、凡その調整位置まで移動させ、第1ロック部材3をロック保持する(粗調整完了)。その後、インナーケーブルのゆるみあるいは突っ張り状況を目視と手感で確認しつつ、長ボルト2の頭部2aを適正量まで回転させる。適正と判断された場合は、第2ロック部材4でロック保持する(微調整完了)。再度調整が必要ならば、まず第2ロック部材4をアンロックする。この時、微調整が再度行える。更に、粗調整も再度必要ならば、ここで第1ロック部材3をアンロックすればよい。以下、適宜、粗調整と微調整を選択的に実施すればよい。
【0035】
以上、アウター長さ調節装置10として本願発明の代表的な実施例を紹介した。以下では、本装置における第2ロック部材4の他の実施形態を、第2実施例および第3実施例として追加説明する。
【0036】
第2ロック部材4の第2実施例を図7(イ)~(ハ)に、ロック時及びアンロック時のそれぞれの状態を図8(イ)及び(ロ)に示す。保持体60が収納部64を備え、長ボルト2を挿通する長孔62を有する点は実施例1と共通である。また、保持体60が頭部の突出片63aと脚部の突出片65aを有し、側面ガイド部61と後部ガイド面66および前部隣接面67を備える点も同様である。
本事例の特徴は、挟着クリップ69を硬質樹脂材の保持体60に埋設して一体成形した点にある。挟着クリップ69は締結部と保持体に埋設される支持部からなる。左右一対の挟着クリップ69の締結部で長ボルトの雄ねじ部2bを挟着する。
アンロック状態は、挟着クリップ69の折り曲げ部の下端側が長ボルト2の雄ねじ部2bに載置されるとともに、脚部突出片65aによる上方への移動が拘束される。尚、本実施例によるアウター長さ調整装置10の組み付けは実施例1と同様である。
【0037】
第2ロック部材4の第3実施例を図9(イ)~(ハ)に、ロック時及びアンロック時のそれぞれの状態を図10(イ)及び(ロ)に、組み込まれる金属片のトーションクリップ79を図10(ハ)に示す。保持体70が収納部74を備え、長ボルト2を挿通する長孔72を有する点は実施例1、2とも共通である。また、保持体70が頭部の突出片73aと脚部の突出片75aを有し、側面ガイド部71と後部ガイド面76および前部隣接面77を備える点も同様である。
本実施例の特徴は、トーションクリップ79の摘み部79bを格納部74の摘みガイド面78に沿わせて、ロックとアンロックの切り替えをする点にある。トーションクリップ79は、摘みガイド面78上でスライドし、ロック時においても保持体70と一体に保持される。
前記摘みガイド面78は、下端部に摘み部79bを内方に押しつけるアンロック保持部78aと摘み部79bの内方押し付け力を開放するロック移行部78bからなる。本装置10の組み立ては、第2ロック部材4をアンロック状態にしておけば、トーションクリップ79の締結部79aの巻き付け円が拡径しているので、長ボルト2はその拡径円の内部を挿通させることが出来る。尚、本事例では、トーションクリップ79が長ボルト2の外周に常時巻き付いているので、脱落の懸念はない。
【0038】
以上、本願発明に係るコントロールケーブルのアウター長さ調整装置10について、好適な実施形態について説明した。本願発明は、上記実施形態に記載の構成に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本願発明は、乗用車、自転車、建設機械用機器、農業用機器、事務用機器、医療用機器、医療用ベッド、開閉扉、開閉窓その他各種機器に装備されるコントロールケーブルのアウター長さ調整装置10として利用することができる。粗調整と無段階の粗調整の組み合わせを選択的かつ連続的に、微妙な調整を簡素な構成で迅速に実施でき、汎用的で有効な発明である。
【符号の説明】
【0040】
1…コントロールケーブル
10…アウター長さ調整装置
11…インナーケーブル
12…アウターケーシング
12a…一端
12b…他端
12c…リング
2…長ボルト
2a…頭部
2b…雄ねじ部
2c…インナー挿通孔
2d…アウター挿入孔
3…第1ロック部材
31…側面ガイド面
32…雌ねじ部
33…ロック用突起
34…頭部
35a,35b…脚部
36…後部隣接面
37…全面ガイド面
4…第2ロック部材
40…保持体
41…側面ガイド面
42…長ボルト用長孔
43…頭部
43a…突出片
44…クリップ収納部
45…脚部
45a…突出片
46…後部ガイド面
47…前部隣接面
48…脚部保持壁
49…跨ぎクリップ
49a…締付部
49b…跨ぎ部
49c…くびれ部
5…ガイドケース
51…U字溝
52…内ボス
53…外ボス
53a…アウター挿入孔
54…格納室
54a…ロック部材スライド壁
54b1、54b2…段付き壁(ストッパ)
54c…上端面
54d…下端面
54e1、54e2…切欠部
55…長ボルト移動スペース
56…インナー挿通孔
6…第2ロック部材(実施例2)
60…保持体
61…側面ガイド面
62…長ボルト用長孔
63…頭部
63a…突出片
64…クリップ収納部
65…脚部
65a…突出片
66…後部ガイド面
67…前部隣接面
69…挟着クリップ
7…第2ロック部(実施例3)
70…保持体
71…側面ガイド面
72…長ボルト用長孔
73…頭部
73a…突出片
74…クリップ収納部
75…脚部
75a…突出片
76…後部ガイド面
77…前部隣接面
78…摘みガイド面
78a…アンロック保持部
78b…ロック移行部
79…トーションクリップ
79a…締付部
79b…摘み部
図1
図2
図3
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図10