(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】ルアー用テール
(51)【国際特許分類】
A01K 85/18 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
A01K85/18
(21)【出願番号】P 2018117041
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2020-06-24
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508292017
【氏名又は名称】有限会社マドネスジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100121418
【氏名又は名称】河野 修
(72)【発明者】
【氏名】岩本 諭
【合議体】
【審判長】森次 顕
【審判官】有家 秀郎
【審判官】土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-68275(JP,A)
【文献】特開2001-69875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/78114(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K85/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルアーの本体後端部分から後方へ突出し、且つ前記ルアーの本体後端部分に一体または別体に設けられるテールであって、該テールは、前記ルアーの本体後端部分に設けられる基部と該基部から後方に延成された尾鰭形のテール本体とからなり、該テール本体が膜状であり、前記テールの基部は
前記テール本体より厚肉となされ、前記テール本体は上下方向に分かれた略二股状となされ、且つその後縁部分が略V字形となされた魚の尾鰭の形をしており、且つ該テール本体の厚みをほぼ均一な1.4mm以下とすることにより、テール本体は、ルアーの本体後端部分を上にすると
引力で垂れ下がるゴム状弾性を有する膜状に成形されている、ルアー用テール。
【請求項2】
テール本体が透明である、請求項1記載のルアー用テール。
【請求項3】
テール本体に着色が施されている、請求項1または請求項2記載のルアー用テール。
【請求項4】
着色がテール本体の後縁部分にのみ施されている、請求項3記載のルアー用テール。
【請求項5】
テール本体に模様が付されている、請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載のルアー用テール。
【請求項6】
模様が、テール本体の基部側から後縁側に向かって放射状に描成された線模様である、請求項5記載のルアー用テール。
【請求項7】
略二股状のテール本体の上側部分が同下側部分よりも外形が大きく成形されている、請求項1~請求項6のうちのいずれか一項記載のルアー用テール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラックバス(以下、単に「バス」と略する)フィッシングやシーバスフィッシング等で使用されるルアー(疑似餌)のテールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キャッチアンドリリースを原則とするスポーツフィッシングの高まりによって、形状、材質、潜行特性等が異なる種々のルアーが開発されている。その中でも主流となるのが、魚の形をしたルアーであり、具体的には魚の頭部、胴部および尾部を有し、全体が魚の形に作製されたものである。また更に、前記魚の形に作製されたルアーにおいては、その胴部を前後方向に分割して、隣り合う部材同士をジョイントによって連結することで、リールのリトリーブ時に、ルアーが水中で本物の魚のように、ジグザグ状に湾曲して動くようにし、この動きによってアピール力を高めたものが多く開発されている。そして、テールについては、ルアーの胴部後端部分に取り換え自在に装着し得る構造とすることで、アングラーがフィッシングを行うフィールドの状況や生息するターゲットとなるバス等に応じて、テールを適宜選択して使用することが行われている。
【0003】
また近年、特にダム等のリザーバーや湖等の水系におけるバスの大型化に伴って、全長が20cm以上の「ビッグベイト」と呼ばれる大型ルアーが汎用される傾向にあり、この「ビッグベイト」についても所謂、ハード系やソフト系等といった種々の仕様のものが開発されている。例えば、ルアーの胴部を前後に二分割し、その分割された頭部を含む前側部分とテールを含む後側部分のジョイントを介して互いに揺動自在な構造としたものについて、前記前側部分と後側部分との対向面部分を所定角度で傾斜する傾斜面構造とすることで、前記前側部分と後側部分との挙動に変化を加えてバス等へのアピール力を高めたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した通り、種々のルアーのうち、ビッグベイト等のテールを有するものについては、胴部の揺動構造を変えることで、バス等へのアピール力を高めるものが多いものの、テール自体については、アピール力を向上させる手段として、毛束のような形態のフェザー系テールや太陽光線による反射光と水中での波動を生じさせるブレード系テール等があるものの、全体がバス等の魚の尾鰭の形状としたナチュラル系のテールでは、実際の魚の尾鰭と同様に、単に基部側から後側に向かって徐々に厚さを減少させる形状となっているに過ぎないため、バス等へのアピール力が低いという欠点があった。
【0006】
本発明の目的は、ビッグベイト等のテールを有するルアーにおいて、バス等へのアピール力を向上させることができる前記テールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明は、ルアーの本体後端部分から後方へ突出し、且つ前記ルアーの本体後端部分に一体または別体に設けられるテールであって、該テールは、前記ルアーの本体後端部分に設けられる基部と該基部から後方に延成された尾鰭形のテール本体とからなり、該テール本体が膜状であり、前記テールの基部は前記テール本体より厚肉となされ、前記テール本体は上下方向に分かれた略二股状となされ、且つその後縁部分が略V字形となされた魚の尾鰭の形をしており、且つ該テール本体の厚みをほぼ均一な1.4mm以下とすることにより、テール本体は、ルアーの本体後端部分を上にすると引力で垂れ下がるゴム状弾性を有する膜状に成形されているルアー用テールである。
【0008】
請求項2記載の本発明は、前記請求項1記載のルアー用テールについて、テール本体が透明であることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の本発明は、前記請求項1または請求項2記載のルアー用テールについて、テール本体に着色が施されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の本発明は、前記請求項3記載のルアー用テールについて、着色がテール本体の後縁部分にのみ施されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の本発明は、前記請求項1~請求項4のうちのいずれか一項記載のルアー用テールについて、テール本体に模様が付されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の本発明は、前記請求項5記載のルアー用テールについて、模様が、テール本体の基部側から後縁側に向かって放射状に描成された線模様であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7記載の本発明は、前記請求項1~請求項6のうちのいずれか一項記載のルアー用テールについて、略二股状のテール本体の上側部分が同下側部分よりも外形が大きく成形されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るルアー用テールは、ルアーの本体後端部分に、該部分と一体に成形されるか、或いはストッパーピン等の取付手段を介して別体のものとして交換可能に取り付けられるものであって、該テールの本体が魚の尾鰭の形をしており、且つ該本体の厚みがほぼ均一な2mm以下のゴム状弾性を有する膜状に成形されていることで、実際のバス等の尾鰭と同様の形態のテールに比べて、当該ルアーの動きに伴う形態変化が滑らかでありながら、大きく且つ多彩となる。そのため、バス等へのアピール力が従来のテールに比べて非常に強くなり、特にテール本体の瞬間的で多彩な形態変化が実現されるため、バス等の食性を刺激すると共に、リアクションバイトも誘発し易いという格別の効果を有する。
【0015】
また、前述した格別の効果に加えて、本発明のルアー用テールでは、その本体を無色、無模様の透明としたり、或いは着色、無模様の透明としたり、無色、模様付きとしたり、着色模様付きとする等、種々のバリエーションのものを選択することができるため、フィールドの状況や時間帯、水温、太陽光、カレント、シェード、天然ベイト等の種々のファクターに対応したフィッシングを行うことが可能となる。また特に、テール本体が略二股状であって、その上側部分が下側部分よりも外形が大きく成形された本発明に係るテールによれば、ルアー本体の動きに伴う柔らかで変化量の大きい挙動が演出され得るため、バス等の活性を高め易いという格別の利点があり、更にテールの本体の後縁部分のみを着色した場合、前記効果が更に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るルアーの側面図である。
【
図3】同ルアーの本体の一部を切欠して示す部分側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るテールの平面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係るテールの側面図である。
【
図6】
図5のテール本体に特定の着色を付した側面図である。
【
図7】本発明に係る種々の形態のテールを示す側面図である。
【
図8】
図7のテールに線模様を施した実施形態を示す側面図である。
【
図9】性能試験に使用した実際のテールを示す画像である。
【
図10】
図9のテールと同様のものについて、基部側の支持を解除した場合の垂下状態を示す画像である。
【
図11】性能試験で比較される従来のテールを示す画像である。
【
図12】性能試験における本発明の実施形態に係るテールの振れ状態を連続的に示した画像である。
【
図13】性能試験における従来のテールの振れ状態を連続的に示した連続画像である。
【
図14】性能試験における前記実施形態のテールと従来のテールとの振れ状態を比較的に示した連続画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明をビッグベイトに適用した場合の実施形態について、図面にしたがって説明するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係るルアー1は、魚形態のハード系素材(ABS樹脂)等からなるルアー本体2と、ルアー本体2の後端部に着脱自在に取り付けられたシリコーンゴムやエラストマー等で構成されたゴム状弾性を有するテール4と、フック(図示略)を取り付けるためにルアー本体2の下部に取り付けられた3つのフックアイ5と、ライン(図示略)を締結するために、ルアー本体2の先端部分(ヘッド部分)に固定されたラインアイ10等を有する。
【0019】
本実施形態では、ルアー本体2は、先端部分(ヘッド側部)と後端部分(テール側部)との間における合計三カ所で分離され、ヘッド側部2A、二つのミドル部2B・2Cと、テール側部2Dとに四分割され、隣り合う部材同士が上下一対のジョイント部材6によって、水平方向に揺動自在なものとなっている。また、ヘッド側部2Aおよびミドル部2B・2Cの各内部にはそれぞれ一般的なウエイト(図示せず)が収容されるようになされている。
【0020】
図1、
図2、
図4および
図5に示すように、前記テール4は、既存のこの種ルアーにおけるものと同様に、ルアー本体2のテール側部2D後端の凹所2a内に嵌め込まれ、ストッパーピンP1を介して係脱自在である略板状の取付部4bと、取付部4bの後側に連なる基部4cと、基部4cから後方に延成された尾鰭形のテール本体4aとからなり、テール本体4aは、厚みがほぼ均一な2mm以下のゴム状弾性を有する膜状であって、本実施形態では、側面から見て上下方向に分かれた略二股形となされている。そして、該テール本体4aは、より詳細には、前記略二股形のうち、その上側部分4Aが下側部分4Bよりも外形が大きく成形され、且つ無模様で無着色の透明な膜状となされている。しかしながら、本発明は、このような形態に限定されず、後述の通り、着色や模様等を付す場合もある。
【0021】
すなわち、
図6等に見られるように、前記テール4は、当該ルアー1の仕様によって種々の異なる構成のものに変更され、例えば、前記ルアー本体4aと同様の形のものについて、その後縁部分だけに所定幅の着色部3を設けることもあり、この場合、該着色部3によって、ルアー本体4aの水中における形状変化がバス等に対して視覚的にアピールする効果を有する。
【0022】
更に、
図7に示すように、前記テール4におけるルアー本体4aの設計変更例として、後縁部分が広角な略V字形のルアー本体24a・34a(
図7a、
図7b)、後縁部分が鋭角な略V字形のルアー本体44a(
図7c)、或いは後縁部分が略凸弧形のルアー本体54a(
図7d)といったものに成形される。
【0023】
この他、
図8に示すように、前述した
図7に示す各ルアー本体24a・34a・44a・54aについて、それらの基部側から後方に向かって放射状に線模様LPを付す場合もある。
(性能試験)
【0024】
次に、前記実施形態に係るテールと従来のテールの性能を比較した試験について説明する。
【0025】
図9および
図10に示すように、前述した本発明の実施形態に係るテール4では、その本体4aは、全体の厚みが均一な約1.4mmのゴム状弾性を有する膜状であって、ルアー本体2を下にしてテール4を上にすると、そのテール本体4aが引力によって自然に下方へ垂れ下がった湾曲形態となる。
【0026】
一方、
図11に示すように、従来のテールは、その本体の基部側部分が2mmを超える厚肉であって、後縁側に向かって厚みが徐々に減少する形状となっており、ルアー本体を下にしてテールを上にすると、そのテール本体が上方に真っ直ぐ立った形態となる。そのため、本発明の実施形態に係る前記テール4との形態特性の違いが明確である。
【0027】
そして、
図12(a)~(j)に示すように、前記本発明に係るテール4を左右に動かせば、そのテール本体4aは左右に湾曲して大きく振れるのが視認され、バス等に対して大きなアピール力を示すことが確認できる。
【0028】
一方、
図13(a)~(h)に示すように、前記従来例のテールを左右に動かせば、そのテール本体は、ほぼ真っ直ぐな形態で左右に僅かしか振れないことが視認でき、バス等に対するアピール力が小さいということが明確に認められる。
【0029】
そして、
図14に示すように、前述した本発明に係るテール本体4aの振れ状態(
図14A)と、従来例に係るテール本体の振れ状態(
図14B)とを比較すれば、両者の差は顕著に認められる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係るルアー用テールは、前述した通り、ルアー本体の動きに伴って柔らかいながらも激しく振れ、且つ変化に富んだ多彩な動きを演出し得るため、バス等の活性・食性を容易に刺激することが可能となることから、バスフィッシング等において幅広い利用が期待できる。
【符号の説明】
【0031】
1 ルアー
2 ルアー本体
3 着色部
4 テール
4a テール本体