(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】レーザエネルギ測定装置、およびレーザエネルギ測定方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20220404BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20220404BHJP
G01J 4/04 20060101ALI20220404BHJP
H01L 21/268 20060101ALI20220404BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G01J1/02 K
H01S3/00 G
G01J4/04 Z
H01L21/268 T
H01L21/20
(21)【出願番号】P 2018142967
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014226818(DE,A1)
【文献】特開昭59-58885(JP,A)
【文献】特開昭60-261183(JP,A)
【文献】特開2007-214189(JP,A)
【文献】特開2005-214752(JP,A)
【文献】特開2007-33187(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208754(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0003824(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 11/00
H01S 3/00 - H01S 3/02
H01S 3/04 - H01S 3/0959
H01S 3/098 - H01S 3/102
H01S 3/105 - H01S 3/131
H01S 3/136 - H01S 3/213
H01S 3/23 - H01S 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光学系の内部又は外部において、レーザ光をP偏光反射およびS偏光反射のうちのいずれか一方により反射する第1ビームスプリッタと、
前記第1ビームスプリッタにより反射された第1反射光に対して、P偏光反射およびS偏光反射のうちのいずれか他方を施す第2ビームスプリッタと、
前記第2ビームスプリッタにより反射された第2反射光のエネルギを測定する第1測定部と、
前記第2ビームスプリッタを透過した透過光のエネルギを測定する第2測定部と、を備えているレーザエネルギ測定装置。
【請求項2】
前記第1ビームスプリッタは、前記第1反射光に対して、P偏光反射およびS偏光反射のうち、P偏光反射を行うことを特徴とする請求項1に記載のレーザエネルギ測定装置。
【請求項3】
照明光学系の内部又は外部において、レーザ光をP偏光反射およびS偏光反射のうちのいずれか一方により反射する第1偏光工程と、
前記第1偏光工程で反射された第1反射光に対して、P偏光反射およびS偏光反射のうちのいずれか他方を施す第2偏光工程と、
前記第2偏光工程で反射された第2反射光のエネルギを測定する第1測定工程と、
前記第2偏光工程で透過した透過光のエネルギを測定する第2測定工程と、を備えているレーザエネルギ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザエネルギ測定装置、およびレーザエネルギ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源からの照射されたレーザ光を照明光学系により拡張し、基板に照射することで、基板上に薄膜を形成するレーザ照射装置が知られている。
このようなレーザ照射装置として、下記特許文献1には、レーザ光を偏光させて照射する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレーザ照射装置では、照明光学系の内部で例えばP偏光反射された反射光を、さらにS偏光反射させて、出力を評価することが行われている。しかしながらこの場合、偏光成分がキャンセルされることで、光源からの出力の変化を、反射光の出力の変化により評価することができるが、照明光学系の内部における偏光特性を評価できないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、光源からの出力と、照明光学系の内部における偏光特性と、を同時に評価することで、基板に照射されるレーザ光を正確に評価することができるレーザエネルギ測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のレーザエネルギ測定装置は、照明光学系の内部又は外部において、レーザ光をP偏光反射およびS偏光反射のうちのいずれか一方により反射する第1ビームスプリッタと、前記第1ビームスプリッタにより反射された第1反射光に対して、P偏光反射およびS偏光反射のうちのいずれか他方を施す第2ビームスプリッタと、前記第2ビームスプリッタにより反射された第2反射光のエネルギを測定する第1測定部と、前記第2ビームスプリッタを透過した透過光のエネルギを測定する第2測定部と、を備えている。
【0007】
また、第2ビームスプリッタは、第1反射光に対して、P偏光反射およびS偏光反射のうち、P偏光反射を行ってもよい。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のレーザエネルギ測定方法は、照明光学系の内部又は外部において、レーザ光をP偏光反射およびS偏光反射のうちのいずれか一方により反射する第1偏光工程と、前記第1偏光工程で反射された第1反射光に対して、P偏光反射およびS偏光反射のうちのいずれか他方を施す第2偏光工程と、前記第2偏光工程で反射された第2反射光のエネルギを測定する第1測定工程と、前記第2偏光工程で透過した透過光のエネルギを測定する第2測定工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レーザエネルギ測定装置が、第1測定部と第2測定部とを備えている。このため、第1測定部において、偏光成分がキャンセルされた光源からの出力を評価できるとともに、第2測定部において、照明光学系の内部における偏光特性を評価することができる。これらの結果を用いて、基板に照射されるレーザ光を正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ照射装置およびレーザエネルギ測定装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ照射装置1およびレーザエネルギ測定装置40のブロック図である。なお、
図1では、照明光学系12の内部の構成については、様々な構成が想定されるため、図示を省略している。
【0012】
図1に示すように、レーザ照射装置1は、レーザ光Lを発生する光源10と、照明光学系12と、投影レンズ20と、投影マスク30と、を備えている。
レーザ照射装置1は、薄膜トランジスタ(TFT)のような半導体装置の製造工程において、例えば、基板15上のチャネル領域形成予定領域にレーザ光を照射してアニール処理し、当該チャネル領域形成予定領域を多結晶化するための装置である。
【0013】
レーザ照射装置1は、例えば、液晶表示装置の周辺回路などの画素の薄膜トランジスタを形成する際に用いられる。このような薄膜トランジスタを形成する場合、まず、基板15上にAl等の金属膜からなるゲート電極を、スパッタによりパターン形成する。
そして、低温プラズマCVD法により、基板15上の全面にSiN膜からなるゲート絶縁膜を形成する。
【0014】
その後、ゲート絶縁膜上に、例えば、プラズマCVD法によりアモルファスシリコン薄膜を形成する。すなわち、基板15の全面にアモルファスシリコン薄膜が成膜(被着)される。最後に、アモルファスシリコン薄膜上に二酸化ケイ素(SiO
2)膜を形成する。
そして、
図1に例示するレーザ照射装置1により、アモルファスシリコン薄膜のゲート電極上の所定の領域(薄膜トランジスタにおいてチャネル領域となる領域)にレーザ光を照射してアニール処理し、当該所定の領域を多結晶化してポリシリコン化する。なお、基板15には、例えばガラス基板等を採用することができるが、必ずしもガラス素材である必要はなく、樹脂などの素材で形成された樹脂基板など、どのような素材を採用してもよい。
【0015】
図1に示すように、レーザ照射装置1において、光源10から出射されたレーザ光Lは、照明光学系12によりビーム系が拡張され、輝度分布が均一化される。
照明光学系12の内部には、第1ビームスプリッタ13が設けられている。第1ビームスプリッタ13は、P偏光反射およびS偏光反射のうちのいずれか一方により、レーザ光Lを反射および透過する。これにより、第1反射光L1が生成される。本実施形態では、第1ビームスプリッタ13は、P偏光反射を行う。なお、第1ビームスプリッタ13は、照明光学系12の外部に設けられてもよい。
また、レーザ光Lのうち、第1ビームスプリッタ13を透過した成分は、照射光L4として投影レンズ20を通して基板15に照射される。
【0016】
光源10は、例えば、波長が308nmや248nmなどのレーザ光Lを、所定の繰り返し周期で放射するエキシマレーザである。なお、波長は、これらの例に限られず、どのような波長であってもよい。
【0017】
その後、照射光L4は、投影レンズ(マイクロレンズアレイ)20上に設けられた投影マスク30を透過し、複数のレーザ光に分離され、基板15に被膜されたアモルファスシリコン薄膜の所定の領域に照射される。
基板15に被膜されたアモルファスシリコン薄膜の所定の領域に照射光L4が照射されると、当該アモルファスシリコン薄膜が瞬間加熱されて溶融し、ポリシリコン薄膜となる。
【0018】
なお、投影レンズ20として、マイクロレンズアレイを用いた例を説明したが、必ずしもマイクロレンズアレイを用いる必要はなく、投影レンズ20として単レンズを用いてもよい。
投影レンズ20には、レーザ光Lを透過させる投影マスク30が配置されている。
【0019】
次に、前述したレーザ照射装置1の出力を評価する本発明のレーザエネルギ測定装置40について説明する。
図1に示すように、レーザエネルギ測定装置40は、第2ビームスプリッタ41、第1測定部42、および第2測定部43を備えている。
【0020】
第2ビームスプリッタ41は、第1反射光L1に対して、P偏光反射およびS偏光反射のうち、第1ビームスプリッタ13とは異なる偏光反射を施して、第2反射光L2と透過光L3とを生成する。本実施形態では第2ビームスプリッタ41は、S偏光反射を行う。
ここで、本実施形態では、第1ビームスプリッタ13および第2ビームスプリッタ41はガラス板であり、レーザ光Lおよび第1反射光L1を分離する過程において、必然的に偏光特性を持ってしまう。
第1測定部42は、第2反射光L2のエネルギを測定し、第2測定部43は、透過光L3のエネルギを測定する。
【0021】
また、レーザエネルギ測定装置40はミラー44を備えている。ミラー44は、透過光L3を反射して、第2測定部43に照射する。なお、レーザエネルギ測定装置40はミラー44を備えていなくてもよい。
【0022】
すなわち、本実施形態に係るレーザエネルギ測定方法では、第2ビームスプリッタ41により第1反射光L1を偏光される偏光工程と、第1測定部42により第2反射光L2を測定する第1測定工程と、第2測定部43により透過光L3を測定する第2測定工程と、を備えている。
【0023】
次に、本発明のレーザエネルギ測定装置40を用いた測定結果について説明する。
この測定では、P偏光の状態における出力の狙い値が100[mJ]である光源10からのレーザ光Lが、レーザ内部あるいは照明光学系12における屈折率のひずみにより、P偏光が乱れた場合を、
図2に示す各偏光状態と仮定した。
そして、それぞれの状態において、第1測定部42および第2測定部43でエネルギを評価した。さらに、第1測定部42および第2測定部43それぞれで得られた測定結果をもとに、既知の下記式(1)に従って、基板15に照射される照射光L4の出力値Pを算出した。その結果を表1に示す。
P=a×A-(A+0.9A+B)
P:照射光L4の出力値[mJ]、a:係数=455.4202[-]
A:第1測定部42で測定した第2反射光L2の出力値[mJ]
B:第2測定部43で測定した透過光L3の出力値[mJ]
【0024】
【0025】
表1に示すように、第1測定部42で測定した第2反射光L2の出力値Aは、偏光の程度にかかわらず、一定の値が測定されている。これはすなわち、光源10からの出力が一定であることを意味している。
一方、第2測定部43で測定した透過光L3の出力値Bは、偏光の程度によって変化している。これはすなわち、第1ビームスプリッタ13によりP偏光された第1反射光L1を、さらに第2ビームスプリッタ41によりS偏光することなく、透過光L3として測定していることにより、照明光学系12内における偏光乱れによるエネルギ変動成分を評価することができていることを意味している。
【0026】
従って、これらの値A、Bを基に算出した照射光L4の出力値Pを確認することで、光源10の出力、および照明光学系12内の偏光乱れを、両方とも評価できていることとなる。
すなわち、例えば表1の偏光7における照射光L4の出力値Pが84.455[mJ]であるため、光源10の出力を調整することで、この値を、偏光が無い状態における狙い値である100[mJ]に近づけることができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係るレーザエネルギ測定装置40は、第1測定部42と第2測定部43とを備えている。このため、第1測定部42において、偏光成分がキャンセルされたレーザ光の出力を評価できるとともに、第2測定部43において、偏光成分が残っているレーザ光の出力を評価することができる。これらの結果を用いて、レーザ光の出力を正確に評価することができる。
【0028】
なお、上記実施形態は、本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態に対して種々の変形を行ってもよい。
【0029】
例えば、上記実施形態においては、第1ビームスプリッタ13がP偏光反射を行い、第2ビームスプリッタ41がS偏光反射を行う構成を示したが、このような態様に限られない。すなわち、第1ビームスプリッタ13と第2ビームスプリッタ41との偏光反射の種類が異なっていればよく、第1ビームスプリッタ13がS偏光反射を行い、第2ビームスプリッタ41がP偏光反射を行ってもよい。
【0030】
また、前述した変形例に限られず、これらの変形例を選択して適宜組み合わせてもよいし、その他の変形を施してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 レーザ照射装置
10 光源
13 第1ビームスプリッタ
15 基板
40 レーザエネルギ測定装置
41 第2ビームスプリッタ
42 第1測定部
43 第2測定部