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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】PTPカセット
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019105183
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020195715
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-007097(JP,A)
【文献】特開2015-150309(JP,A)
【文献】特開2011-019928(JP,A)
【文献】特開2014-135994(JP,A)
【文献】特開2015-012893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤をシートに区分収納したPTP包装剤またはそれと等価なシート状包装剤であるPTP包装剤等を一列に並べた状態で保持する整列収納部と、前記整列収納部の下に装備されていて前記PTP包装剤等を並び順に前方へ排出する順次排出機構とを備えたPTPカセットにおいて、
前記順次排出機構は、中央部よりも後ろに寄った部位に後寄り下垂部が形成されていて前記後寄り下垂部を着脱先のベースの後端面に対面当接させた状態で前記ベースの上に装着させうる枠体と、前記ベースの後端部に形成されている被係合部に対して後方から係合離脱しうる装着維持部材と、前記ベースから後方へ突き出ている回転出力軸に対して後方から係合離脱しうる回転従動軸とを具備したものであって、前記回転従動軸の軸回転に応動して前記PTP包装剤等の排出を行うようになっていることを特徴とするPTPカセット。
【請求項2】
前記枠体のうち前記後寄り下垂部の後方部分に後端下垂部が形成されており、前記回転従動軸が前記後端下垂部によって軸回転可能に支持されて前記後端下垂部から前方へ突き出ていることを特徴とする請求項1記載のPTPカセット。
【請求項3】
ウォームからなる伝動ギヤが前記回転従動軸に設けられていることを特徴とする請求項2記載のPTPカセット。
【請求項4】
前記装着維持部材が前記後寄り下垂部と前記後端下垂部とを貫通して前後移動可能に支持されている棒状部材からなり、前記ベースの前記被係合部に対して挿抜しうる嵌入部が前記装着維持部材の前端部に形成されており、手指で操作しうる摘まみ部が前記装着維持部材の後端部に形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載されたPTPカセット。
【請求項5】
前記枠体のうち前記後寄り下垂部の後方部分に後端下垂部が形成されており、前記装着維持部材が前記後寄り下垂部と前記後端下垂部とを貫通して前後移動可能に支持されている棒状部材からなり、前記ベースの前記被係合部に対して挿抜しうる嵌入部が前記装着維持部材の前端部に形成されており、手指で操作しうる摘まみ部が前記装着維持部材の後端部に形成されていることを特徴とする請求項1記載のPTPカセット。
【請求項6】
前記装着維持部材の前記嵌入部が前記被係合部への挿抜時に径方向拡縮を伴った弾性変形を行うようになっていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載されたPTPカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、幾つかの薬剤を一枚のシートに区分収納したPTP包装剤またはそれと等価なシート状包装剤であるPTP包装剤等を整列収納して順次排出するPTPカセットに関する。
PTP包装剤と等価なシート状包装剤の典型例としてはブリスタ包装剤が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
PTP包装剤等は、片面が平坦になっているが、他面には薬剤を閉じ込めたポケット(区分収納用の突起部)が縦横に並んで形成されている。
そのようなPTP包装剤等を多数収容して逐次排出するPTPカセットは、単独で使用することも無いわけではないが、大抵は薬品類収納装置の一種のPTP払出装置の棚部などに多列多段に並べて装備されることが多い(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、PTPカセットには、個々のPTP包装剤等を縦向きの姿勢にしたうえでそれらを前後に並べて保持するとともに小刻みに振動させることで順に前送りして順次排出するようになったものがある(例えば特許文献1参照)。
さらに、PTPカセットには、個々のPTP包装剤等を横向きの姿勢にしたうえで上下に積み重ねて多数保持するとともに下から順に長手方向へ横送りして順次排出するようになったものもある(例えば特許文献2,3参照)。
【0004】
何れのPTPカセットも、収納空間を画する箱状の整列収納部(上部ユニット)と、その下に設けられた順次排出機構(下部ユニット)とを備えており、そのうち整列収納部は、PTP包装剤等を収納空間の内底の部材の上に載せて一列に整列収納させた状態で保持するようになっており、順次排出機構は、整列収納部に保持されているPTP包装剤等を最前のものから或いは最下のものから順に送り出して前方へ排出するようになっている(例えば特許文献1~3参照)。
【0005】
整列収納部は、何れのカセットでも構成が似ており、整列状態維持のため内底の上の収納空間が前板と両側板で囲まれているが、PTP包装剤等の補充のため、上面か後面あるいは両面が解放されている。また、整列状態安定化のためPTP整列収納空間の内底部材が少し前下がりに傾けられたりしている。さらに、PTP包装剤等の排出のため、前板のうち内底の前端のところが切り欠かれて、排出口が形成されており、排出確認のため排出口の近くには排出センサ(通過センサ)が置かれている。
【0006】
順次排出機構は、整列収納部に合わせて前後に長い物になっており、PTP包装剤等を排出させるために、整列収納部に振動を与えたり或いは整列収納部の内底を前後に可動部材を運動させたりする駆動機構を備えている。その駆動機構には、幾つかのタイプがあり、PTP包装剤等の特性たとえば硬軟や巻癖などに応じて使い分けられているが、多くが、ベース(保持部,駆動部)に取り付けられて、ベースのモータ(駆動源)の回転出力軸から伝動にて回転力を受け取るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-019928号公報
【文献】特開2014-135994号公報
【文献】特開2015-150309号公報
【文献】特開2015-012893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さらに、PTP包装剤等のサイズが多岐に亘るところ、使用頻度の少ないPTP包装剤等や、後発のPTP包装剤等に対してまで、漏れなく専用のPTPカセットを都合するのが困難なことから、幅や長さの違うPTP包装剤等に対して適合させることができる幅等調整可能なPTPカセットも開発され実用に供されている(例えば特許文献2参照)。
とはいえ、そのPTPカセットのPTP整列収納空間の拡縮手段は、専らネジ止め位置の変更であったため、簡素ではあったが、薬剤師などユーザが拡縮調整作業を行うのは難しかった。そのため、調整作業はメーカ側に委ねられることが多かった。
【0009】
ところが、PTP整列収納空間の拡縮の可能なPTPカセットの利便性が認識されて、その使用が増えるに連れ、PTP整列収納空間の拡縮調整をユーザだけでも調整できるようにすることへの要請が高まって来た。そして、その要請に応えるべく、幅などの違うPTP包装剤等にPTP整列収納空間を適合させる幅等調整作業を容易にしたPTPカセットを試作して試用してみたところ、新たな技術課題が顕在化した。
すなわち、メーカ側の熟練者が調整作業を行うときにはPTPカセットがベースにネジ止めにて装着されている状態であっても手際よく作業が行われるが、ユーザに見立てた未熟練者が作業してみたところ、PTPカセットをベースに取り付けたままでは、作業に手間取り、PTPカセット単体の改良効果を十分には享受できないことがあった。
【0010】
そのため、PTPカセットをベースに対して簡便に着脱できるように改良することが求められることになったのである。
ベースに着脱できるカセットの先例としては錠剤カセットがあり(例えば特許文献4参照)、そのカセットでは、容器部の外周面に設けられた把手に手を掛けてカセットを持つことが出来るうえ、容器部を上から下げてベースに載せることで、容器部から下方へ突き出た回転伝動軸とベースの上向き回転駆動軸とが回転伝動可能に係合するようになっている。
【0011】
しかしながら、PTPカセットの場合、錠剤カセットの容器部に相当する整列収納部が板体で画成されているうえ後方等が解放されているため、整列収納部に把手を設けるには剛性も強度も足りない。幅等調整可能化のために板体を可動式にした整列収納部はもっと弱い。さらに、PTP包装剤等を後方か後寄りの所からPTP整列収納空間へ収納して前方へ送り出す構造なので、前後に把手を設けるのは難しい。薬剤払出装置等ではPTPカセットを横に列ねて装備することが多いので、左右に把手を設けることも難しい。
そこで、整列収納部を下から支える順次排出機構に工夫を凝らすことによって、把手が無くてもベースに対して容易に着脱しうるPTPカセットを実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のPTPカセットは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、
薬剤をシートに区分収納したPTP包装剤またはそれと等価なシート状包装剤であるPTP包装剤等を一列に並べた状態で保持する整列収納部と、前記整列収納部の下に装備されていて前記PTP包装剤等を並び順に前方へ排出する順次排出機構とを備えたPTPカセットにおいて、
前記順次排出機構は、中央部よりも後ろに寄った部位に後寄り下垂部が形成されていて前記後寄り下垂部を着脱先のベースの後端面に対面当接させた状態で前記ベースの上に装着させうる枠体と、前記ベースの後端部に形成されている被係合部に対して後方から係合離脱しうる装着維持部材と、前記ベースから後方へ突き出ている回転出力軸に対して後方から係合離脱しうる回転従動軸とを具備したものであって、前記回転従動軸の軸回転に応動して前記PTP包装剤等の排出を行うようになっていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のPTPカセットは(解決手段2)、上記解決手段1のPTPカセットであって、
前記枠体のうち前記後寄り下垂部の後方部分に後端下垂部が形成されており、前記回転従動軸が前記後端下垂部によって軸回転可能に支持されて前記後端下垂部から前方へ突き出ていることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明のPTPカセットは(解決手段3)、上記解決手段2のPTPカセットであって、
ウォームからなる伝動ギヤが前記回転従動軸に設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のPTPカセットは(解決手段4)、上記解決手段2,3のPTPカセットであって、
前記装着維持部材が前記後寄り下垂部と前記後端下垂部とを貫通して前後移動可能に支持されている棒状部材からなり、前記ベースの前記被係合部に対して挿抜しうる嵌入部が前記装着維持部材の前端部に形成されており、手指で操作しうる摘まみ部が前記装着維持部材の後端部に形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のPTPカセットは(解決手段5)、上記解決手段1のPTPカセットであって、
前記枠体のうち前記後寄り下垂部の後方部分に後端下垂部が形成されており、前記装着維持部材が前記後寄り下垂部と前記後端下垂部とを貫通して前後移動可能に支持されている棒状部材からなり、前記ベースの前記被係合部に対して挿抜しうる嵌入部が前記装着維持部材の前端部に形成されており、手指で操作しうる摘まみ部が前記装着維持部材の後端部に形成されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のPTPカセットは(解決手段6)、上記解決手段4,5のPTPカセットであって、前記装着維持部材の前記嵌入部が前記被係合部への挿抜時に径方向拡縮を伴った弾性変形を行うようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明のPTPカセットにあっては(解決手段1)、順次排出機構の大部を占める枠体について、後端部と中央部との間に後寄り下垂部を形成しておいて、中央部をベースに載せるとともに後寄り下垂部をベース後端に当接させる形で、枠体がベースの上に装着されるようにしたことにより、枠体がベース上で横方向に大きな領域を占めることなく順次排出機構をベースに装着することができるばかりか、ベースに対する順次排出機構の前後位置が的確に定まるうえ、装着状態も安定することになる。
【0019】
しかも、その装着作業は、枠体の後端部などを指先で摘まむといったことで順次排出機構を手に持ち、その枠体の中央部の下面などをベース上面に載せ、それから枠体を前進させて後寄り下垂部の前面をベース後端面に対面当接させるといったことで簡便に行うことができる。取り外しは逆順で行える。そのため、PTPカセットに把手が無くてもベースへのPTPカセット着脱は容易に行うことができる。
また、排出動作に必要な駆動を受ける回転従動軸がベース後方の回転出力軸に対して後方から係合離脱しうるようにしたことにより、PTPカセット装着のために枠体の後寄り下垂部をベース後端面に対面当接させる操作に随伴して排出動作の可能な状態になる。
【0020】
さらに、装着維持部材をベースに係合させることでPTPカセットの装着状態が安定するが、その装着維持部材が回転従動軸と同じく後方に設けられているので、回転伝動に起因する傾動や浮き上がりといった装着状態の不安定化がしっかり抑制されるとともに、ベースに対する順次排出機構の左右位置が的確に定まるので、装着状態が一層安定する。
したがって、この発明によれば、把手が無くてもベースに対して容易に着脱できるうえ装着状態が安定するPTPカセットを実現することができる。
【0021】
また、本発明のPTPカセットにあっては(解決手段2)、枠体について後寄り下垂部の後方に後端下垂部も形成したことにより、回転従動軸を後寄り下垂部の所やその後方に保持するのが容易かつ的確に具現化される。
【0022】
さらに、本発明のPTPカセットにあっては(解決手段3)、回転従動軸において回転出力軸に対する係合離脱部とウォームに噛合する輪部ギヤとが別体の場合は両軸係合のため必然的に輪部ギヤが係合離脱部の後方になって後端下垂部の近くに位置し、係合離脱部と輪部ギヤとが同軸形成等にて一体化されている場合は輪部ギヤが係合離脱部と共に後端下垂部の近くに位置することから、回転伝動が回転従動軸の支持部(後端下垂部)に近い所で行われるとともに、ウォームにて大減速と伝動方向変換もなされることとなる。そのため、駆動力を大きくして伝達する伝動機構をコンパクトに実装することができる。
【0023】
また、本発明のPTPカセットにあっては(解決手段4,5)、装着維持部材に棒状部材を採用したうえで装着維持部材が後寄り下垂部と後端下垂部とを貫通して前後移動可能に支持されるようにしたことにより、前後方向は別として装着維持部材の位置が安定する。そのため、上述のようにして枠体をベースに装着させてから維持部材の前端の嵌入部をベースの被係合部に差し込むと、枠体ひいては順次排出機構さらにはPTPカセットのベース装着状態が安定する。しかも、装着維持部材の後端部に摘まみ部が形成されているので、それを手指で操作することで容易にベース後端部へ装着維持部材を係合離脱させることができる。
【0024】
また、本発明のPTPカセットにあっては(解決手段6)、ベースの被係合部への挿抜時に径方向拡縮を伴った弾性変形を行う部材を装着維持部材の嵌入部に採用したことにより、摘まみ部を操作して装着維持部材を前進や後退させるときに少し力を強めればベースの被係合部に対する装着維持部材の嵌入部の挿抜が可能になる。
そのため、ベースに対する装着維持部材の着脱操作が簡便に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1について、列設棚のベースにPTPカセットが装着されているカセット装着状態に係り、(a)が列設棚とベースとPTPカセットとの斜視図、(b)が列設棚とベースの斜視図である。
図2】カセット装着状態の列設棚とベースとPTPカセットとに係り、(a)が左側面図、(b)が右側面図である。
図3】列設棚のベースからPTPカセットが離脱しているカセット離脱状態に係り、(a)が左側面図、(b)が右側面図である。
図4】PTPカセットの構造を示し、(a)が左側面図、(b)が右側面図である。
図5】順次排出機構の構造を示し、(a)が平面図と左側面図、(b)が平面図と右側面図である。
図6】整列収納部の構造を示し、(a)が左側機構の左側面図と正面図と右側面図、(b)が右側機構の左側面図と正面図と右側面図である。
図7】横幅拡縮機構と横幅追随機構の構造を示し、(a)と(b)が横幅拡縮機構の平面図、(c)~(e)が横幅追随機構の正面図である。
図8】横幅拡縮機構と横幅追随機構と前板昇降機構の動作状態を示し、(a)と(b)が左側機構と右側機構との平面図、(c)~(e)が左側板部と右側板部と前板の正面図である。
図9】本発明の実施例2について、ベースのモータ回転出力軸と順次排出機構の回転従動軸との係合離脱部の構造等を示し、(a)~(d)何れも左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
このような本発明のPTPカセットについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1~実施例2により説明する。
図1図8に示した実施例1は、上述した解決手段1~6(出願当初の請求項1~6)を総て具現化したものであり、図9に示した実施例2は、その変形例である。
【実施例1】
【0027】
本発明のPTPカセットの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1(b)は、PTP払出装置等の列設棚10の一部とその上面に列設されたカセット装着先のベース20とに係る斜視図である。
【0028】
また、図1(a)と図2は、列設棚10のベース20にPTPカセット30が装着されているカセット装着状態を示すものであり、それらのうち図1(a)は斜視図、図2(a)は左側面図、図2(b)は右側面図である。
これに対し、図3は、列設棚10のベース20からPTPカセット30が離脱しているカセット離脱状態を示しており、(a)が左側面図、(b)が右側面図である。
【0029】
さらに、図4は、PTPカセット30の構造を示し、(a)が左側面図、(b)が右側面図である。
図5は、PTPカセット30のうち順次排出機構40の構造を示し、(a)が平面図と左側面図、(b)が平面図と右側面図である。
図6は、PTPカセット30の整列収納部50+60+31のうち左側機構50と右側機構60の構造を示し、(a)が左側機構50の左側面図と正面図と右側面図、(b)が右側機構60の左側面図と正面図と右側面図である。
【0030】
また、図7は、PTPカセット30の整列収納部50+60+31に付設されている横幅拡縮機構70と横幅追随機構80の構造を示し、(a)と(b)が横幅拡縮機構70の平面図、(c)~(e)が横幅追随機構80の正面図である。
図8(a),(b)は、左側機構50と右側機構60の平面図であり、横幅拡縮機構70の動作状態を示している。図8(c),(d),(e)は、左側板部51と右側板部61と前板31の正面図であり、横幅追随機構80と前板昇降機構(91他)の動作状態を示している。
【0031】
更に、それらのうち図8(a),(c)は、横幅拡縮機構70を操作することで左側機構50と右側機構60とを遠ざけてPTP整列収納空間の横幅を広げた状態を示し、図8(b),(d),(e)は、横幅拡縮機構70を操作することで左側機構50と右側機構60とを近づけてPTP整列収納空間の横幅を狭めた状態を示している。
また、図8(c),(d)は、前板昇降機構の操作部91を操作して前板31を下げた状態を示し、図8(e)は、前板昇降機構の操作部91を操作して前板31を上げた状態を示している。
【0032】
PTPカセット30の装着先であるベース20は(図1(b)参照)、単独で設けられることは稀であり、大抵はPTP払出装置の薬品庫部などに多段設置された列設棚10の上面に適宜ピッチで間を空けて列設される。
ベース20は枠体21を主体としたものであり、その枠体21は、後で詳述する係合用の小穴22(被係合部)が後端面に形成されており、内部には動力用のモータ25とそれを動作させるための駆動回路23とを保持している。モータ25の回転出力軸は枠体21の後端面から後方へ突き出ており、その端部は伝動用の外歯ギヤ24になっている。
【0033】
また、ベース20の枠体21は、後部下面の図示しない引っ掛け部を列設棚10の上面の図示しない係止部に引っ掛けてから、前部の図示しない貫通孔の所を図示の押さえネジ26で止めることで、列設棚10の上面に固定されるようになっている。さらに、ベース20の枠体21の前端部の上面には、反射光の変化状態などに基づいてPTP包装剤等の通過を検出する通過センサ27が設けられている。なお、駆動回路23や通過センサ27に関わる図示しない電線や信号線は列設棚10の下面側などに配設されている。PTPカセット30を少し前下がりの状態で使用することが多いので、ベース20を搭載する列設棚10の上面が少し傾斜していることを明示するために後端11が厚く前端13が薄い列設棚10を図示したが、列設棚10は、平板状のものでも良く、適宜な凹凸部が形成された板状体でも良い。上面の前下がり傾斜も、付けることが多いが、必須ではない。
【0034】
PTPカセット30は(図1(a),図2図4参照)、整列しているPTP包装剤等を並び順に排出するために、PTP包装剤等を各々は横にしたうえで縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持するのに適した整列収納部50+60+31と、そのPTP包装剤等のうち最下のものを一つずつ前送りする順次排出機構40とを備えたものである。
そして、順次排出機構40の改良によって、ベース20の上に装着するのも(図1(a),図2参照)、ベース20から取り外すのも(図3参照)、簡便に行えるようになっている。また、整列収納部50+60+31の改良によって、PTP整列収納空間の横幅拡縮や排出口の高さ調整を簡便に行えるようにもなっている。
【0035】
順次排出機構40は(図5参照)、前後に長い変形厚板状の枠体41を主体としたものであって、その枠体41に装備された無端ベルト44と前輪45と後輪46と輪部ギヤ47と伝動ギヤ47aと着脱ギヤ47bと装着維持部材48+49とを具備している。
順次排出機構40の枠体41には、枠体前端部のうちちょっとだけ後ろ寄りのところから下方へ突き出た前方下垂部42と、枠体後端部のうち少し前寄りのところ言い換えると中央の厚板部分41b(枠体41の中央部)の後ろ寄り部位から下方へ突き出た後寄り下垂部43と、後寄り下垂部43よりも後方に位置する枠体最後端部から下方へ突き出た後端下垂部41aとが形成されている。枠体41のうち厚板部分41b(中央部)と前方下垂部42との間は薄板状になっており、前方下垂部42の下端は厚板部分41bの下面と同位置までしか伸びていないが、後端下垂部41aと後寄り下垂部43の下端は厚板部分41bより下まで伸びている。
【0036】
順次排出機構40の枠体41における前方下垂部42と後寄り下垂部43との前後離隔距離は、上述したベース20の枠体21の前後長とほぼ同じであり、枠体41の後端部などを持って(図3参照)、枠体41の前方下垂部42を枠体21の上面の中央辺りに乗せてから枠体41の後端部を下げて厚板部分41b(中央部)も枠体21の上に乗せる等のことで、容易に、枠体41が少し後ろへずれた状態で枠体21の上に載る。それから、枠体41のうち前方下垂部42や厚板部分41bが枠体21の上面に当接している状態のまま、枠体41を前へ推し進めると、枠体41の後寄り下垂部43と枠体21の後端面とが対面当接し合って、枠体41の前進が止まる(図2参照)。そのため、ベース20に対する順次排出機構40の装着時の位置や姿勢が容易かつ的確に定まるものとなっている。
【0037】
順次排出機構40の枠体41に装備された上掲物のうち無端ベルト44と前輪45と後輪46と輪部ギヤ47と伝動ギヤ47aと着脱ギヤ47bは(図3(a),図4(a),図5(a)参照)、最下のPTP包装剤等に直接接触して又は図示しない可動部材を当接させて該PTP包装剤等を前送りする無端ベルト44を循環運動させることで最下のPTP包装剤等を前送りするためのものであり、前輪45と後輪46とに張設された無端ベルト44の上側が枠体41の上面に露出していて前進しうるようになっている。
【0038】
その後輪46には、ウォームホイールからなる輪部ギヤ47が同軸で連結されており、それと噛合するウォームからなる伝動ギヤ47aが、着脱ギヤ47bと同軸で連結されており、伝動ギヤ47aと着脱ギヤ47bとの連結軸(回転従動軸)が、枠体41の後端下垂部41aに至っていて、そこで軸回転可能に支持されている。
そのため、着脱ギヤ47bが軸回転駆動されると、伝動ギヤ47aが回転し、輪部ギヤ47への伝動に際してウォームギヤの働きによって90゜(直角)の方向変更と大きな減速とが行われるので、駆動を小形のモータ等で行っても、伝動を狭い所で行っても、後輪46ひいては無端ベルト44が安定かつ適切に駆動されるものとなっている。
【0039】
また、後端下垂部41aと伝動ギヤ47aと着脱ギヤ47bとの位置関係では、伝動ギヤ47aの方が後端下垂部41aに近くて連結軸(回転従動軸)の中間部に位置し、着脱ギヤ47bの方は後端下垂部41aから遠くて連結軸(回転従動軸)の前端部に位置している。このような着脱ギヤ47bは、回転従動軸のうち、後端下垂部41aから前方へ突き出て後寄り下垂部43の後方に位置する部分となっているが、その位置が上述の枠体21における外歯ギヤ24の後方突出位置に対応しているので、枠体41を枠体21に装着するときに少し後方で載せてから前方へずらす等のことを行うと、着脱ギヤ47bと外歯ギヤ24とが円滑に噛合し、逆順で枠体41を枠体21から外すと着脱ギヤ47bと外歯ギヤ24とが円滑に離れるようになっている。
なお、両ギヤ47b,24の内歯・外歯は逆であっても良い。
【0040】
順次排出機構40の枠体41に装備された上掲物のうち装着維持部材48+49は(図3(b),図4(b),図5(b)参照)、枠体41の後端下垂部41aを前後に貫いて前後移動可能に支持されている細い軸部と、その後端に設けられていて後端下垂部41aの後方に位置している摘まみ部48と、上記の軸部の前端に設けられていて上述したベース20の後端部の小穴22(被係合部)に対して後方からの差し込みや後方への抜き取りにて係合離脱しうる嵌入部49とを具備していて、細長い棒状部材になっている。
【0041】
その嵌入部49は、枠体41の後寄り下垂部43を前後移動可能に貫通して支持されており、ベース20の枠体21の後端面の小穴22への挿抜のために、少なくとも先端部を後寄り下垂部43から前方へ突き出すことも(図4(b)参照)、先端部を後寄り下垂部43の前面より後ろへ下げることも(図3(b)参照)、できるようになっている。
その進退動作が、順次排出機構40の後方から摘まみ部48を指先等で摘まんで前後移動させる操作に応じてなされるようにもなっている。
【0042】
また、嵌入部49は、弾性体から作られ、例えば管状部に縦の切れ目を周方向に等ピッチで幾つも形成されて、軸方向変形はし難いが径方向には変形し易いものになっている。そして、ベース20の枠体21の後端面の小穴22に対して十分に挿し込まれて、先端部が小穴22から前方の拡径用穴28へ抜け出すと、その抜け出た部分が少し外径方向へ拡がって、自然には抜けない状態になる(図2(b)参照)。一方、人為的な強い力で後ろに引かれると、小穴22に絞られて前方の拡径部分が内径方向へ縮んで、小穴22から後方へ抜け出すようになっている(図3(b)参照)。
【0043】
さらに、順次排出機構40の枠体41の上面のうち後方部分には左右に伸びた一本の横溝41cが彫り込み形成されている(図5参照)。横溝41cの断面は、文字「亠」に似た形状をしており、溝底の幅が広いのに対し溝口の幅が狭い。そのため、何れも後述する左側機構50の左側板部51の左底板部52のスライダ52aや右側機構60の右側板部61の右底板部62のスライダ62aが溝端開口から嵌め込まれると、それら52a,62aを摺動可能な状態で溝内に保持する対面維持手段として機能する。具体的には、左右方向への相対移動は許容するが上下方向と前後方向への相対移動を阻止することで、左側板部51の下面と順次排出機構40の上面との対面状態を維持するとともに、右側板部61の下面と順次排出機構40の上面との対面状態を維持するものとなっている。
【0044】
整列収納部50+60+31は(図1(a),図2図4参照)、順次排出機構40の上に装着されてPTP整列収納空間を画するものであり、順次排出機構40の上面の左端近傍の上方に位置する左側機構50と、順次排出機構40の上面のうち右端近傍の上方に位置する右側機構60と、順次排出機構40の上面の前端近傍から中央近傍の上方に位置して下端の下方に排出口を確保する前板31と具備したものである。
この整列収納部50+60+31には、左側機構50の左側板部51と右側機構60の右側板部61との間隙を拡縮しうる横幅拡縮機構70と、左側板部51と右側板部61との間隙の拡縮に追随して横方向へ拡縮する横幅追随機構80と、横幅追随機構80に対して前板31を上下に移動させる前板昇降機構(91)とが付設されている。
【0045】
左側機構50は(図6(a)参照)、順次排出機構40の左上に立ってPTP整列収納空間の左側面を画する左側板部51と、その下端から右方へ突き出てPTP整列収納空間の底面のうち左側部分を画する左底板部52と、この左底板部52の後端部から下方へ突き出た小さなスライダ52aと、左側板部51の中央部に上下に分かれてほぼ平行に二つ形成された横長の打ち抜き穴54の上側部分を塞ぐカバー55と、横幅追随機構80の左端部を軸支する支軸57を両端部に具備した支軸枠56と、横幅拡縮機構70の左端部を軸支する支軸59を両端部に具備した支軸枠58とを備えている。この支軸枠58は、定常状態では左側板部51の上端部に横向きで固定されている。
【0046】
打ち抜き穴54は、上側部分が横に連なった長穴状になっており、そこから下側へ突き出た略半円状の切欠がほぼ等ピッチで形成されている。そのため、何れか適宜な切欠に止めネジ53のネジ部を通して締めることで支軸枠56を少し前屈みの縦向き状態で左側板部51に取り付けることができ、その取付位置を前後に変更するときには、止めネジ53を緩めて上側の長穴部分を通すことで他の切欠に止めネジ53を移し、それから締め直すことで、簡便に行うことができる。取付位置が決まったらカバー55を左側板部51に装着して打ち抜き穴54の上側部分を塞ぐことで、打ち抜き穴54の長穴部分・連続部分からPTP包装剤等がはみ出すのを防止するのも簡便に行えるものとなっている。
【0047】
右側機構60は(図6(b)参照)、順次排出機構40の右上に立ってPTP整列収納空間の右側面を画する61と、その下端から左方へ突き出てPTP整列収納空間の底面のうち右側部分を画する右底板部62と、この右底板部62の後端部から下方へ突き出た小さなスライダ62aと、右側板部61の中央部に上下に分かれてほぼ平行に二つ形成された横長の打ち打ち抜き穴64の上側部分を塞ぐカバー65と、横幅追随機構80の右端部を軸支する支軸67を両端部に具備した支軸枠66と、横幅拡縮機構70の右端部を軸支する支軸69を両端部に具備した支軸枠68とを備えている。この支軸枠68は、定常状態では右側板部61の上端部に横向きで固定されている。
【0048】
打ち抜き穴64は、上側部分が横に連なった長穴状になっており、そこから下側へ突き出た略半円状の切欠がほぼ等ピッチで形成されている。そのため、何れか適宜な切欠に止めネジ63のネジ部を通して締めることで支軸枠66を少し前屈みの縦向き状態で右側板部61に取り付けることができ、その取付位置を前後に変更するときには、止めネジ63を緩めて上側の長穴部分を通すことで他の切欠に止めネジ63を移し、それから締め直すことで、簡便に行うことができる。取付位置が決まったらカバー65を右側板部61に装着して打ち抜き穴64の上側部分を塞ぐことで、打ち抜き穴64の長穴部分・連続部分からPTP包装剤等がはみ出すのを防止するのも簡便に行えるものとなっている。
【0049】
それらのうち左側機構50のスライダ52aと右側機構60のスライダ62aは、何れも、断面が上述の順次排出機構40の枠体41の横溝41cと同じく文字「亠」に似た形状をしていて、下端部の幅が広いのに対しその上の連結部の幅が狭くなっているが、断面のサイズは横溝41cより僅かに小さい。
そのため、スライダ52a,62aは、何れも、上述したように横溝41cに嵌め込まれて左右方向だけには移動しうるが前後方向や上下方向といった他方向には移動が阻止されるものとなっている。
【0050】
そして、そのようなスライダ52a,62aが横溝41cに嵌め込まれると、それら52a,62a,41cによって対面維持手段が構成されて、左側板部51の下面および右側板部61の下面と順次排出機構40の上面との対面状態が維持されるようになる。
そして、左側板部51と右側板部61は、左右に分かれてそれぞれ順次排出機構40の上方に立つことでPTP整列収納空間の左右を画するものとなる。
しかも、スライダ52aも、スライダ62aも、個々については横溝41cに従って左右方向へ移動することが許容されているため、両側板部51,61の立ち位置は左右方向であれば軽く押す程度でも円滑に変更することができるものとなる。
【0051】
横幅拡縮機構70は(図7(a),(b)参照)、機械式パンタグラフジャッキを応用したものであり、具体的には、前方に位置する前方進退部74(前のリンク連結部)と、後方に位置する後方進退部79(後ろのリンク連結部)と、一本の棒状体に対して後方進退部79に螺合する後方ネジ部73と前方進退部74に螺合する前方ネジ部72と前端の操作部71とが形成された横棒71~73と、一端部が前方進退部74の一端で軸支され他端部が左側機構50の前側の支軸59で軸支された前左リンク75と、一端部が前方進退部74の他端で軸支され他端部が右側機構60の前側の支軸69で軸支された前右リンク76と、一端部が後方進退部79の一端で軸支され他端部が左側機構50の後ろ側の支軸59で軸支された後左リンク77と、一端部が後方進退部79の他端で軸支され他端部が右側機構60の後ろ側の支軸69で軸支された後右リンク78とを具備している。
【0052】
操作部71を操作して前方ネジ部72と後方ネジ部73とを軸回転させると、前方進退部74と後方進退部79との離隔距離が伸縮変化するが、前方ネジ部72と後方ネジ部73とが逆ネジなので、操作部71を含む横棒71~73の前後位置がほとんど変わらないようになっている。また、前方進退部74と後方進退部79との離隔距離が変わると、それに応じて上述の複数リンク74,75,77,79の傾き具合が変化するが、それらの複数リンク74,75,77,79が前後対称かつ左右対称に配置されているので、それらのリンクに連結されている支軸59,69を保持している左右の支軸枠58,68の接離が平行状態を維持したまま行われるようになっている。横棒71~73の左右位置が左右の支軸枠58,68の中央にとどまるようにもなっている。
【0053】
さらに、上述したように、左側機構50では、左方の支軸枠58が左側板部51の上端寄り部位に固定されるとともに、左底板部52が順次排出機構40の上で左右移動可能になっており、右側機構60では、右方の支軸枠68が右側板部61の上端寄り部位に固定されるとともに、右底板部62が順次排出機構40の上で左右移動可能になっている。
そのため、横幅拡縮機構70は、順次排出機構40の上方に立つ両側板部51,61の立ち姿を崩すことなく左側板部51と右側板部61との対向間隙ひいてはPTP整列収納空間の横幅を拡縮しうるものとなっている(図8(a),(b)参照)。
【0054】
横幅追随機構80は(図7(c),(d)参照)、下方に位置する下方進退部83(下のリンク連結部)と、上方に位置する上方進退部88(上のリンク連結部)と、それら83,88何れに対してもすべり対偶で係合してスライド可能になっている縦棒82と、一端部が下方進退部83の一端で軸支され他端部が左側機構50の下側の支軸59で軸支された左下リンク85と、一端部が下方進退部83の他端で軸支され他端部が右側機構60の下側の支軸67で軸支された右下リンク84と、一端部が上方進退部88の一端で軸支され他端部が左側機構50の上側の支軸57で軸支された左上リンク86と、一端部が上方進退部88の他端で軸支され他端部が右側機構60の上側の支軸69で軸支された右上リンク87とを具備したものである。それらの複数リンク84,85,86,87に加え上下の進退部88,83は、上下対称かつ左右対称に配置されている。
【0055】
それらに加え、横幅追随機構80は、前板昇降機構ひいては前板31を保持する横中央維持部材81と、この横中央維持部材81と下方進退部83との間に配設されたコイルバネ83a(下方弾性体)と、横中央維持部材81と上方進退部88との間に配設されたコイルバネ88a(上方弾性体)も具備している。これらのうち横中央維持部材81は縦棒82に固定されているが、上下のコイルバネ83a,88aは、何れも縦棒82に対して緩やかな外嵌めにて装着されて、縦棒82の軸方向に移動可能であって縦方向に伸縮可能なものとなっている。そのため横中央維持部材81は縦棒82と共に横幅追随機構80における横方向の中央部位に位置し続けるものとなっている。
【0056】
しかも、コイルバネ83a,88aが何れも圧縮状態で横中央維持部材81と上下の進退部88,83との間に組み込まれているので、両者の弾撥力の釣り合いに基づいて横中央維持部材81の上下方向位置が定まる。さらに、両コイルバネ83a,88aのバネ感度ができるだけ同じになるよう両コイルバネ83a,88aが設計・選定されているので、横幅追随機構80の横幅が変動しても横中央維持部材81は横方向位置だけでなく上下方向位置についても位置変動が少ないものとなっている。
【0057】
このような横幅追随機構80は、上述の横幅拡縮機構70を縦向きにしたかのように見えるが、縦棒82と上下の進退部88,83の何れかとの係合が螺合でなくスライド可能・摺動自在になっているため、単体では形状が固定されず、支軸57を介して連結された左側板部51と、支軸67を介して連結された右側板部61との間に位置して、両側板部51,61の間隙の拡縮に追随して横方向へ拡縮するものとなっている。また、両側板部51,61に随伴して左右の支軸枠56,66の離隔距離が変わると、それに応じて複数リンク84,85,86,87の傾き具合が変化するが、それらの複数リンク84,85,86,87が上下対称かつ左右対称に配置されているので、支軸枠58,68の接離が両側板部51,61と共に平行状態を維持したまま円滑に行われる。縦棒82の左右位置については、支軸枠58,68の移動の影響が相殺しあうので、縦棒82が両側板部51,61の中央に居続けるようにもなっている(図8(c),(d)参照)。
【0058】
前板31が(図7(d),(e)参照)、そのような横幅追随機構80のうち横方向の中央部位に対して装着されているので、具体的には横中央維持部材81を介して縦棒82の中間部に対して取り付けられていて、前板31もPTP整列収納空間の横幅拡縮の如何にかかわらず両側板部51,61のほぼ中央に居続けるものとなっている。
しかも、その横中央維持部材81と前板31との間には前板昇降機構が介装されており、その前板昇降機構の操作部91が前面に出ていることから、操作部91を摘まんで回転させる等のことで簡便に前板31を上下に移動させることができる。そのため、前板31の下の排出口の高さも簡便に拡縮することができる(図8(d),(e)参照)。
なお、前板昇降機構は、公知のラック・アンド・ピニオン等で構成できるので、煩雑となる詳細な図示は割愛した。
【0059】
この実施例1のPTPカセット30について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1(b)はカセット装着先のベース20が列設棚10の上に列設されている状態を示しており、図4はPTPカセット30の外観を示している。
【0060】
また、図3はPTPカセット30をベース20の上方に持ってきた状態あるいはPTPカセット30をベース20から取り外した状態を示し、図2図1(a)はPTPカセット30がベース20に装着されている状態を示している。
更に、図6は前板31を保持する支軸枠56,66の取付状態を示し、図7(a),(c)と図8(a),(c)はPTP整列収納空間の横幅を広げた状態を示し、図7(b),(d)と図8(b),(d)はPTP整列収納空間の横幅を狭めた状態を示し、図7(e)と図8(e)は前板31を少し上げた状態を示している。
【0061】
ベース20に装着されていない自由状態のPTPカセット30のPTP整列収納空間を収納予定のPTP包装剤等に適合させるときには、順次排出機構40の枠体41に指を掛けてPTPカセット30を片手に持ち、他の手でPTP包装剤等を持ってPTPカセット30の後方からPTP包装剤等をPTP整列収納空間に入れて収まり具合を試してみる。そして、先ず前板31の前後位置調整を行い(図6参照)、次にPTP整列収納空間の横幅調整を行い(図7(a)~(d),図8(a)~(d)参照)、それから排出口の高さ調整を行う(図7(d),(e),図8(d),(e)参照)。
【0062】
各調整を詳述すると、先ず前板31の前後位置調整では(図6参照)、一枚か少数枚のPTP包装剤等をPTP整列収納空間に後方から差し込むかあるいは側板部51,61の外面に並べてみて、PTP包装剤等がPTP整列収納空間の後寄り部分に来て而もPTP包装剤等が後端までPTP整列収納空間に収まるときのPTP包装剤等の前端位置を把握する。そして、その直ぐ前に位置する打ち抜き穴54,64の下向き切欠の位置を確認しておき、側板部51,61からカバー55,65を外し、止めネジ53,63を緩めてから確認済み切欠の位置へ移動させ、止めネジ53,63を締め直したら、側板部51,61にカバー55,65を再装着する。打ち抜き穴54において多数の下向き切欠が上方で繋がっているため、止めネジ53,63を外さなくて良いので、前板31の前後位置調整作業は容易かつ迅速に行うことができる。
【0063】
次にPTP整列収納空間の横幅調整では(図7(a)~(d),図8(a)~(d)参照)、一枚か少数枚のPTP包装剤等をPTP整列収納空間に後方から差し込んでから、PTP包装剤等の収まり具合や重なり具合を目視で確認しつつ、操作部71を摘まんで横棒71~73を軸回転させる。これで、横幅拡縮機構70の働きによって左側板部51と右側板部61とが平行状態を保ちながら接近・離隔するので、PTP整列収納空間の大まかな横幅調整も容易かつ迅速に行うことができる。
【0064】
このようにPTP整列収納空間の横幅を変更すると、左側板部51と右側板部61との何れか一方または双方の立ち位置が変化し、それに伴って、順次排出機構40の枠体41の横溝41cの中を、左側板部51の左底板部52のスライダ52aと右側板部61の右底板部62のスライダ62aとの何れか一方または双方が移動するが、スライダ52a,62aが横溝41cの中にとどまっていればPTPカセット30は正常に動作する。なお、左側板部51や右側板部61を左右から指先等で押すと、スライダ52a,62aが横溝41cに沿って押された方へ移動し、それに伴って整列収納部50+60+31が順次排出機構40に対して左右に移動するので、順次排出機構40に対する整列収納部50+60+31の左右位置調整も簡便に行うことができる。
【0065】
更に排出口の高さ調整では(図7(d),(e),図8(d),(e)参照)、横幅調整の後、PTPカセット30の前面を手前に向けてから、前板31の下の排出口とその奥のPTP包装剤等とを前から目視しつつ、操作部91を摘まんで回すことで前板31を昇降させる。そして、排出枚数のPTP包装剤等の前端面は総て良く見えるが他のPTP包装剤等は大部分が隠れるような状態にする。これで、排出口の大まかな高さ調整も容易に行えて迅速に済ませることができる。
【0066】
こうしてPTPカセット30の大まかな調整が済んだら、そのPTPカセット30(図4参照)を装着先ベース20(図1(b)参照)に装着するが、そのときは、PTPカセット30をベース20の上方に持っていき(図3参照)、PTPカセット30の順次排出機構40の枠体41の前方下垂部42を枠体21の上面の中央の辺りに軽く載せ、更にその枠体41の厚板部分41b(中央部)を枠体21の上面の後方部分に軽く載せてから、順次排出機構40の着脱ギヤ47bとベース20の外歯ギヤ24とを対向させ、その対向状態を維持しながらPTPカセット30を慎重に前進させる。
そうすると、それら着脱ギヤ47bと外歯ギヤ24とが噛合する。
【0067】
そして、更に前進させると、PTPカセット30の順次排出機構40の枠体41の後寄り下垂部43がベース20の枠体21の後端面に当接するとともに、PTPカセット30の順次排出機構40の枠体41の厚板部分41bがベース20の枠体21の上面の中央部まで来て、順次排出機構40がベース20の上に載った状態で安定する(図2図1(a)参照)。そうしたら、順次排出機構40の後から装着維持部材48+49の摘まみ部48を押して、装着維持部材48+49の嵌入部49を後寄り下垂部43から前方へ突出させることで、嵌入部49をベース20の小穴22に進入させる(図2(b)参照)。こうして、迅速かつ確実にPTPカセット30がベース20に装着され固定される。
【0068】
それから更に、なるべく最終調整も行う。具体的には、例えば多数のPTP包装剤等をPTPカセット30に整列収納してからPTPカセット30をテストモード等で連続動作させる。そして、その逐次排出状態を監視しながら、操作部71や操作部91を適宜操作することでPTP整列収納空間の横幅や排出口の高さを微調整して、PTP包装剤等の逐次排出状態が十分に安定したら、実用に供する。順次排出機構40に対する整列収納部50+60+31の左右位置調整も、簡便に行えるので、必要に応じて随時行う。
なお、調整後の排出状況などは従来と同様なので、その図示や説明は割愛する。
【0069】
その後、そのPTPカセット30で取り扱うPTP包装剤等が変更になったときなどには再調整が必要になるが、PTP整列収納空間の横幅調整と排出口の高さ調整とで足りるうえPTPカセット30の設置位置が目視可能で手も楽に届くところであれば、PTPカセット30を取り外さなくても、操作部71,91の操作だけで対処することができる。これに対し、それだけでは対処しきれない場合は、上述の装着手順とは逆の手順でPTPカセット30をベース20から取り外して再調整を行うが、その取り外しは、摘まみ部48の引き出し操作による嵌入部49の係合解消と、順次排出機構40の後退操作による装着解消および伝動解消にて簡便に行える。
【実施例2】
【0070】
本発明のPTPカセットの実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図9は、ベース20のモータ25の回転出力軸25aの外歯ギヤ24と、順次排出機構40の回転従動軸の着脱ギヤ47b及び伝動ギヤ47aとに係る左側面図である。そのうち、(a)~(c)は離脱状態を示し、(d)は係合寸前の状態を示し、(e)は係合状態を示している。しかも(b)は、外歯ギヤ24を支持する各部材24a,25a,25b,25cを前後(図では左右)に展開させた状態を示している。
【0071】
この実施例2のPTPカセットが上述した実施例1のPTPカセット30と相違するのは、回転従動軸において着脱ギヤ47bより後方に装備されていた伝動ギヤ47aが着脱ギヤ47bと一体化されていることである(図9(a),(b)参照)。
詳述すると、順次排出機構40の回転従動軸において前端に位置する大径部について、内径部分に対して前端面から後方へ内歯の着脱ギヤ47bが彫り込み形成されるとともに、外径部分に対して外歯の伝動ギヤ47aが形成されており、役目の異なる二つのギヤが径方向に分かれることで前後方向の位置が重なる状態で不都合なく一体化されている。
そして、それによって、回転従動軸の軸方向の長さ短縮が可能になっている。
【0072】
また、ベース20に関して実施例2のものが実施例1のものと相違するのは、外歯ギヤ24がモータ25の回転出力軸25aに対して直付けでなく軸方向移動可能状態・前進後退可能状態で装備されていることである(図9(a)~(e)参照)。
具体的には(図9(b)参照)、外歯ギヤ24の前端面(図では右端面)に筒部が形成されており、その筒部が前方(図では右方)へ突き出ており、その筒部の中空に連通する横長のスリット24aが筒部を横(図では表裏方向)に貫通して形成されている。
【0073】
しかも、モータ25の回転出力軸25aは、その径が上述の筒部の中空より少し細くて軸方向移動可能な状態で上述の筒部に嵌入することができるものである。その回転出力軸25aは、先端(図では左端)の近くに、摺動ピン25cを挿着しうる小孔が貫通形成されている。摺動ピン25cは、細いので、スリット24aに遊挿されて前後方向・軸方向(図では左右)に移動することができる。しかも、回転出力軸25aにはコイルバネ25bが緩く外嵌めされるが、コイルバネ25bは外歯ギヤ24の筒部の先端面とモータ25の回転出力軸の根元部分とによって少し圧縮された状態になる(図9(c)参照)。
【0074】
そのため、順次排出機構40がベース20に装着されていないときは(図9(a)参照)、順次排出機構40の着脱ギヤ47bとベース20の外歯ギヤ24とが離脱していて(図9(c)参照)、ベース20では外歯ギヤ24がモータ25から最も離れて後方(図では左方)へ突き出している。
その非装着状態からPTPカセット装着のために、実施例1で詳述したように順次排出機構40をベース20に載せてから前へ進めて順次排出機構40をベース20に載置させると、大抵は着脱ギヤ47bと外歯ギヤ24とが噛合して回転伝動可能になる。
【0075】
ところが、着脱ギヤ47bと外歯ギヤ24との歯位置がずれていて両ギヤ47b,24がうまく噛み合わないこともありうる。その場合、回転従動軸などのうち手を触れ易い部分を操作して着脱ギヤ47bを少し回転させる等のことで着脱ギヤ47bと外歯ギヤ24とを噛合可能にしても良いが、この実施例2の構成では、そのような手動調整は行わなくても良い。すなわち、両ギヤ47b,24が噛合しないときには(図9(d)参照)、コイルバネ25bが縮んで外歯ギヤ24が前方(図では右方)へ逃げるので、不所望な部材変形はもちろん過大な衝撃を生じることなく順次排出機構40をベース20に載置装着することができる。そして、モータ25が動作を開始して両ギヤ47b,24が噛合状態になると、直ぐに、コイルバネ25bの力で外歯ギヤ24が着脱ギヤ47bに押し込まれるので(図9(e)参照)、両ギヤ47b,24が噛合して回転伝動可能になる。
【0076】
[その他]
上記の実施例1では、順次排出機構40と左側板部51及び右側板部61との対面維持手段が、順次排出機構40の枠体41の横溝41cと、左側板部51の左底板部52のスライダ52aと、右側板部61の右底板部62のスライダ62aとで構成され、横溝41cが両スライダ52a,62aに共用されるようになっていたが、横溝41cはスライダ52a係合部分とスライダ62a係合部分とに分かれていても良い。また、摺動用スライダの形成先とスライダ案内用横溝の彫り込み先とが逆であっても良い。さらに、対面維持手段は一組に限られる訳で無く、複数組の対面維持手段が形成されていても良い。
【0077】
上記の実施例1では、縦棒82に対する横中央維持部材81と上方進退部88と下方進退部83の係合態様が、横中央維持部材81は固定的で下方進退部83と上方進退部88は摺動自在になっていたが、下方進退部83は固定的で横中央維持部材81と上方進退部88は摺動自在にしても良く、さらには上方進退部88は固定的で横中央維持部材81と下方進退部83は摺動自在にしても良い。何れの係合態様でも、上下のコイルバネ83a,88aの力バランスにて横中央維持部材81の上下位置を安定させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の適用は、上記実施例で示した「PTP包装剤等のうち最下のものを一枚ずつ前送りするPTPカセット」に限定されるものでなく、「PTP包装剤等のうち最下のものを二枚ずつ前送りするPTPカセット」などにも適用することができる。
また、本発明の適用は、上記実施例に挙げた整列収納方式や順次排出方式のものに限定される訳でなく、PTP包装剤等を各々は縦にしたうえで前後一列に並べた状態で保持する整列収納方式のものや、PTP包装剤等を前のものから順に排出する順次排出方式のものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10…列設棚、11…後端、12…上面、13…前端、
20…ベース(保持部,駆動部)、
21…枠体、22…小穴(被係合部)、
23…駆動回路、24…外歯ギヤ、24a…スリット、
25…モータ、25a…回転出力軸、
25b…コイルバネ(付勢部材)、25c…摺動ピン、
26…押さえネジ、27…通過センサ、28…拡径用穴、
30…PTPカセット、31…前板、
40…順次排出機構(下部ユニット)、
41…枠体、41a…後端下垂部、41b…厚板部分(中央部)、
41c…横溝、42…前方下垂部、43…後寄り下垂部、44…無端ベルト、
45…前輪、46…後輪、47…輪部ギヤ(ウォームホイール)、
47a…伝動ギヤ(ウォーム)、47b…着脱ギヤ(内歯,回転従動軸)、
48+49…装着維持部材、48…摘まみ部、49…嵌入部
50+60+31…整列収納部、
50…左側機構(PTP整列収納空間左下画成ユニット)、
51…左側板部、52…左底板部、
52a…スライダ、53…止めネジ、54…打ち抜き穴、
55…カバー、56…支軸枠、57…支軸、58…支軸枠、59…支軸、
60…右側機構(PTP整列収納空間右下画成ユニット)、
61…右側板部、62…右底板部、
62a…スライダ、63…止めネジ、64…打ち抜き穴、
65…カバー、66…支軸枠、67…支軸、68…支軸枠、69…支軸、
70…横幅拡縮機構、
71~73…横棒、71…操作部、72…前方ネジ部、73…後方ネジ部、
74…前方進退部(リンク連結部)、75…前左リンク、76…前右リンク、
77…後左リンク、78…後右リンク、79…後方進退部(リンク連結部)、
80…横幅追随機構、
81…横中央維持部材、82…縦棒、
83…下方進退部(リンク連結部)、83a…コイルバネ(下方弾性体)、
84…右下リンク、85…左下リンク、86…左上リンク、87…右上リンク、
88…上方進退部(リンク連結部)、88a…コイルバネ(上方弾性体)、
91…操作部(前板昇降機構)
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図9