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特許7051134保護アノードならびに保護アノードを製造するための方法および保護アノードを使用するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】保護アノードならびに保護アノードを製造するための方法および保護アノードを使用するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20220404BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20220404BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20220404BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20220404BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220404BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20220404BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20220404BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20220404BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220404BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20220404BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/1395
H01M4/40
H01M12/08 K
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0568
H01M10/058
H01M4/13
H01M4/134
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019520586
(86)(22)【出願日】2017-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017057008
(87)【国際公開番号】W WO2018075538
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】62/409,261
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500033634
【氏名又は名称】ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】アミン・サレヒ-コジン
(72)【発明者】
【氏名】モハマド・アサディ
(72)【発明者】
【氏名】バハーク・サヤープル
(72)【発明者】
【氏名】ペドラム・アッバシ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ジェラール
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-176323(JP,A)
【文献】特開平06-338346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64- 4/84
H01M 10/05- 10/0587
H01M 12/00- 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護アノードであって、該保護アノードは、保護層を含み、該保護層は、アノードに配置され、該アノードは、リチウムを含み、前記保護層はLi CO を含み、その量は、前記保護層の少なくとも50原子%であり、前記保護層のX線光電子スペクトルのC 1sの領域がC‐Cピークを示し、前記保護層のX線光電子スペクトルのLi 1sの領域が単一ピークを示す、保護アノード。
【請求項2】
X線光電子分光法によって前記保護層に観察されたリチウム塩が、Li CO だけである、請求項1に記載の保護アノード。
【請求項3】
前記保護層が5nm~40μmの範囲内の厚さを有する、請求項1または請求項2に記載の保護アノード。
【請求項4】
イオン液体を含む電解質と接触している、請求項1~3のいずれか1項に記載の保護アノード。
【請求項5】
前記電解質が、ジメチルスルホキシドを更に含む、請求項4に記載の保護アノード。
【請求項6】
電気化学セルを提供すること、および
放電-充電サイクルを行うこと
を含む方法に従って製造される保護アノードであって、
前記電気化学セルは、
少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含むカソード、
金属を含むアノード、
前記カソードの遷移金属ジカルコゲナイドおよび前記アノードの金属と接触する電解質、および
前記電解質に溶解した二酸化炭素
を含み、
前記放電-充電サイクルは、
前記電気化学セルを放電させること、および
前記電気化学セルを充電するのに十分な時間、前記アノードおよび前記カソードにわたって、電圧を印加すること
を含み、
前記二酸化炭素が、前記電解質中の二酸化炭素飽和濃度の少なくとも25%の濃度で、前記電解質中に存在し、
前記電気化学セルは、水を実質的に含まず、
前記保護層を形成するために1つ以上の化学種が前記アノードに沈着し、前記化学種が前記放電-充電サイクルにおいて形成され、前記電解質に溶解している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の保護アノード。
【請求項7】
前記方法において、前記電気化学セルが、前記電解質の1重量%未満の量の水を含む、請求項に記載の保護アノード。
【請求項8】
前記方法において、前記電気化学セルが、前記電解質の2重量%未満の量のHおよび前記電解質の2重量%未満の量のOを含む、請求項または請求項に記載の保護アノード。
【請求項9】
前記方法において、前記遷移金属ジカルコゲナイド含有カソードの材料が、少なくとも50重量%の遷移金属ジカルコゲナイドを含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の保護アノード。
【請求項10】
前記方法において、各遷移金属ジカルコゲナイドが、ナノフレーク、ナノシートまたはナノリボンの形態である、請求項6~9のいずれか1項に記載の保護アノード。
【請求項11】
前記方法において、前記電解質が少なくとも10%のイオン液体を含む、請求項6~10のいずれか1項に記載の保護アノード。
【請求項12】
放電-充電サイクルとしてのアノード保護サイクルの合計回数が、5~15である、請求項6~11のいずれか1項に記載の保護アノード。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の保護アノード、
カソード、および
前記アノードと接触し、必要に応じて、前記アノードの金属とも接触する電解質
を含む、電池。
【請求項14】
金属-空気の電池、金属-イオンの電池または金属-硫黄の電池として構成される、請求項13に記載の電池。
【請求項15】
前記カソードが、遷移金属ジカルコゲナイドを含まない、請求項13または請求項14に記載の電池。
【請求項16】
保護アノードを製造するための方法であって、当該方法は、
電気化学セルを提供すること、および
放電-充電サイクルを行うこと
を含み、
前記電気化学セルは、
少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含むカソード、
リチウム金属を含むアノード、
前記カソードの遷移金属ジカルコゲナイドおよび前記アノードの金属と接触する電解質、および
前記電解質に溶解した二酸化炭素
を含み、
前記放電-充電サイクルは、
前記電気化学セルを放電させること、および
前記電気化学セルを充電するのに十分な時間、前記アノードおよび前記カソードにわたって、電圧を印加すること
を含み、
前記二酸化炭素が、前記電解質中の二酸化炭素飽和濃度の少なくとも25%の濃度で、前記電解質中に存在し、
当該方法において、
前記電気化学セルは、水を実質的に含まず、
1つ以上の化学種が、前記アノードに沈着し、前記化学種は、前記放電-充電サイクルにおいて形成され、前記電解質に溶解している、
方法。
【請求項17】
1回以上の放電-充電サイクルの後、前記電気化学セルから、前記保護アノードを取り除くことをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
電池を構成すること
をさらに含み、
前記電池は、
前記保護アノード、
カソード、および
前記アノードと接触し、必要に応じて、前記アノードの金属とも接触する電解質
を含み、
当該方法において、必要に応じて、
(a)前記電池が金属-空気の電池、金属-イオンの電池または金属-硫黄の電池として構成されている、および/または
(b)前記カソードが遷移金属ジカルコゲナイドを含まない、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月17日に出願された米国仮特許出願第62/409,261号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示の背景
本開示の分野
本開示は、概して、電池(又はバッテリ)に関する。本開示は、より具体的には、電池用の保護アノード(又は保護されたアノード又はプロテクト・アノード(protected anode))、および、このような電池用の保護アノードを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
充電式(又はリチャージブル)の金属-硫黄の電池(又はメタル-サルファー・バッテリ)、金属-空気の電池(又はメタル-エア・バッテリ)および金属-イオンの電池(又はメタル-イオン・バッテリ)は、それらの際立ったエネルギー密度により、電気車両およびマイクロエレクトロニクスなどの多くの用途で主要電力源となるとてつもない可能性を示してきている。しかし、これらのシステムの実際的な性能は、アノード電極の劣化によってそれらのサイクル寿命が短くなるために制限される。
【0004】
特に、金属、例えばリチウム、アノード、および液体電解質溶液の組み合わせは、電解質溶液中の任意の関連の極性の非プロトンの溶媒および/または塩アニオンとの活性金属の高反応性のために、充電式電池にとっては問題の多いものである。例えば、電解質成分とのリチウム金属の表面反応は、固体電解質界面(SEI:Solid Electrolyte Interphase)における非溶解性の表面種のモザイク構造体の形成をもたらす可能性があり、アノード材料の損失を引き起こし、低サイクリング効率、段階的な容量損失、および不十分なサイクル性につながる。さらに、複雑で不均一なSEIは、リチウム電極の不均一な電流分布をもたらし、これは、例えばリチウムイオン電池において内部短絡を引き起こす可能性がある。
【0005】
したがって、金属-硫黄電池、金属-空気電池、および金属-イオン電池においてより長いサイクル寿命を有する、より頑強な保護アノード電極が依然として求められている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の要旨
本開示の一態様は、保護アノードを製造するための方法であり、当該方法は、
電気化学セルを提供すること(又は工程又はステップ)、および
放電-充電サイクルを行うこと(又は工程又はステップ)
を含み、
上記電気化学セルは、
少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイド(又は遷移金属ジカルコゲニド又はジカルコゲン化遷移金属(transition metal dichalcogenide))を含むカソード、
金属を含むアノード、
カソードの遷移金属ジカルコゲナイドおよびアノードの金属と接触する電解質、および
電解質(中)に溶解した二酸化炭素
を含み、
上記放電-充電サイクルは、
電気化学セルを放電させること、および
電気化学セルを充電するのに十分な時間、アノードおよびカソードにわたって、電圧を印加すること
を含み、
当該方法において、
電気化学セルは、水を実質的に含まず、
1つ以上の化学種(又はケミカル・スピーシーズ(chemical species))が、アノード(上)に沈着(又は堆積又は又はデポジション又はデポジット(deposit))し、この化学種は、放電-充電サイクル(中)において形成され、電解質(中)に溶解しているものである。
【0007】
本開示の別の態様は、上記に記載されるような方法であって、さらに、
1回以上の放電-充電サイクル後、電気化学セルから、保護アノードを取り除く(又は除去する)こと(又は工程又はステップ)、および
電池(又はバッテリ)を構成すること(又は工程又はステップ)
を含み、
上記電池は、
保護アノード、
カソード、および
上記アノードと接触し、必要に応じて、上記アノードの金属とも接触する電解質
を含むものである。
【0008】
本開示の別の態様は、保護アノードであり、この保護アノードは、保護層を含み、この保護層は、アノードに配置され、このアノードは、リチウム金属を含むものであり、
この保護層は、LiCOを含み、その量は、この保護層の少なくとも50原子%である。
【0009】
本開示の別の態様は、電池(又はバッテリ)であり、この電池は、上記に記載されるような保護アノードを含み、さらに、上記アノードと接触する電解質と、カソードとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】以下の実施例2において詳細に説明されるように、800回の充電-放電サイクルにわたる、実施例1に従って作製された保護アノードを利用したリチウム-空気電池の性能のグラフである。
図2】以下の実施例3においてより詳細に説明されるように、高率サイクリング実験全体にわたる、作用電極および対電極として実施例1に従って作製された保護アノードを利用した電気化学セルの性能を示すグラフである。
図3】高率サイクリング実験後に行われた、低率ディープサイクリング実験の過程にわたる実施例3のセルの電位のグラフである。
図4】Li 1s領域に焦点を当てた、実施例1に従って作製された保護アノードの表面の典型的なXPSスペクトルである。実験は、以下の実施例4においてより詳細に説明されている。
図5】C 1s領域に焦点を当てた、実施例1に従って作製された保護アノードの表面の典型的なXPSスペクトルである。実験は、以下の実施例4においてより詳細に説明されている。
図6】O 1s領域に焦点を当てた、実施例1に従って作製された保護アノードの表面の典型的なXPSスペクトルである。実験は、以下の実施例4においてより詳細に説明されている。
図7】以下の実施例5においてより詳細に説明されているように、行われたアノード保護サイクル回数の関数としての、保護アノードを利用したリチウム-空気電池のサイクル寿命および第1のサイクル分極化ギャップのグラフである。
図8】以下の実施例6においてより詳細に説明されているように、アノード保護サイクルの回数を変えて作製された保護アノードを利用したリチウム-空気電池の電気化学インピーダンス分光法(EIS:Electrochemical Impedance Spectroscopy)である。
図9】以下の実施例7においてより詳細に説明されているように、実施例1に従って作製された保護アノードの表面の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscopy)画像である。スケールバーは、1μm、挿入画像幅は、500nmである。
図10】実施例2のリチウム-空気電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の詳細な説明
本明細書に示されている個々の項目は、単に、例として、また本発明の好ましい実施形態の例示的な考察を目的とするものであり、本発明の様々な実施形態の原理および概念的側面の最も有用で理解しやすい発明を実施するための形態であると思われるものを提供するために提示されている。この点に関して、本発明の基本的な理解に必要であるよりも詳細に本発明の構造上の詳細を示そうとはせず、本発明のいくつかの形態がどのように実際に具体化され得るかを当業者に明らかにする図面および/または例により、発明を実施するための形態を示す。したがって、本開示のプロセスおよびデバイスが説明される前に、本明細書に記載の態様が、特定の実施形態、装置、または構成に限定されるものではなく、したがって、当然ながら変わることがあることを理解されたい。本明細書において使用されている用語は、特定の態様のみを説明することを目的としており、本明細書において特に定義されていない限り、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0012】
本発明を説明する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)使用される「a」、「an」、「the」という用語、および同様の対象指示は、本明細書に特に示されていない限り、または文脈上、明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を網羅すると解釈されたい。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に含まれるそれぞれの別々の値を個々に指す簡潔な方法として役立つことを意図している。本明細書に別段に示されていない限り、それぞれの別個の値は、あたかも、それが本明細書に個々に挙げられているかのように、本明細書に組み込まれている。本明細書では、範囲は、「about(約)」ある特定の値から、および/または「about(約)」別の特定の値までとして表すことができる。このような範囲が表されている場合、別の態様は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、「about(約)」という先行詞を使用して値が近似値として表されている場合、その特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。範囲のそれぞれの終点は、他方の終点との関係において重要であるとともに、他方の終点とは無関係でもある。
【0013】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段に示されていない限り、または文脈上、明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序のステップで行われ得る。本明細書に示されているありとあらゆる例、または例示的な文言(例えば、「such as(など)」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図しており、別段に特許請求される本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のいかなる文言も、本発明の実施に不可欠であるいずれの特許請求されない要素も示すと解釈されるべきではない。
【0014】
文脈上明らかに別段に必要でない限り、発明を実施するための形態および特許請求の範囲全体を通して、「comprise(含む(又は備える))」、「comprising(含む(又は備えている))」などの語は、排他的意味の対語としての包括的意味、または網羅的意味で、すなわち、「including、but not limited to(含むがそれらに限定されない)」の意味で解釈されたい。単数または複数を使用する語は、それぞれ、複数、単数も含む。さらに、「herein(本明細書において)」、「above(上に)」、および「below(以下に)」といった語、ならびに類似の意味の語は、本出願において使用されるときには、全体としての本出願を指すものであり、本出願のいずれの特定の個所も指すものではない。
【0015】
当業者には理解されるように、本明細書に開示の各実施形態は、その特定の述べられた要素、ステップ、成分、もしくは構成要素を含むことができる、基本的にそれらからなり得る、またはそれらからなり得る。本明細書において使用される際、「comprise(含む(又は備える))」または「comprises(含む(又は備える))」という移行語は、大量であっても、不特定の要素、ステップ、成分、または構成要素を含むがそれらに限定されないことと、それらの包含を許容するここと、を意味する。「consisting of(からなる)」という移行句は、特定されていないいずれの要素、ステップ、成分、または構成要素も除外する。「consisting essentially of(基本的に~からなる)」という移行句は、特定の要素、ステップ、成分、または構成要素に、また実施形態に実質的に影響を及ぼさないものに、実施形態の範囲を限定する。
【0016】
別段に示されていない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の数量、分子量などの特性、反応条件などを表すすべての数字は、あらゆる場合で、「about(約)」という用語によって修飾されると理解されたい。したがって、そうではないことが示されていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に示された数値パラメータは、本発明によって得られるよう求められる所望の特性に応じて変わる可能性のある近似値である。少なくとも、また均等論の本出願を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数を考慮して、また普通の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。一層の明瞭さが必要とされる場合、「about(約)」という用語は、表示の数値または範囲と併せて使用される場合、当業者によって当然それに属すると見なされる意味を有し、すなわち、表示値の±20%、表示値の±19%、表示値の±18%、表示値の±17%、表示値の±16%、表示値の±15%、表示値の±14%、表示値の±13%、表示値の±12%、表示値の±11%、表示値の±10%、表示値の±9%、表示値の±8%、表示値の±7%、表示値の±6%、表示値の±5%、表示値の±4%、表示値の±3%、表示値の±2%、または表示値の±1の範囲内で、表示の値もしくは範囲よりもやや多いまたはやや少ないことを意味する。
【0017】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の例に示されている数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。
【0018】
本明細書に開示の本発明の代替的な要素または実施形態のグループ化は、限定と解釈されるべきものではない。各グループメンバは、個々に、または本明細書に見られるグループの他のメンバもしくは他の要素とのいずれの組み合わせにおいても、言及され、特許請求され得る。グループのうちの1つ以上のメンバが、便宜上かつ/または特許要件上、グループに包含される、またはグループから削除される可能性のあることが予想される。いかなるこのような包含または削除が生じるときも、本明細書は、修正されたものとしてのグループを含み、したがって、添付の特許請求の範囲で使用されるすべてのマーカッシュグループの書面による説明を満たすものと見なされる。
【0019】
本発明を実施するための本発明者らが知っている最良の形態を含む本発明のいくつかの実施形態が、本明細書に説明されている。当然のことながら、これらの記載の実施形態に対する変形形態が、上記の説明を読んだ時点で、当業者には明らかになるであろう。本発明者は、当業者がこのような変形形態を適切に採用することを期待しており、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外に本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された発明の対象のすべての変更形態および均等物を含む。さらに、それらのすべての考えられる変形形態における上記の要素のいずれの組み合わせも、本明細書に別段に示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、本発明に含まれる。
【0020】
また、本明細書全体にわたり、特許および印刷出版物への参照がなされている引用された参考文献および印刷出版物のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に個々に組み込まれている。
【0021】
最後に、本明細書に開示の本発明の実施形態が、本発明の原理を例証するものであることを理解されたい。採用され得る他の変更形態は、本発明の範囲内である。このように、限定ではなく例として、本明細書の教示に従って本発明の代替構成が利用されてもよい。したがって、本発明は、正に図示され、説明された通りのものに限定されない。
【0022】
様々な態様および実施形態において、本開示は、少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含むカソード、金属を含むアノード、電解質、および電解質に溶解した二酸化酸素を含む電気化学セルを放電させ、充電することによって作製される保護アノードに関する。本開示は、このような保護アノードが、大幅に向上したサイクル寿命を保ちながら電池性能に悪影響を及ぼさないことを実証する。
【0023】
本開示の一態様は、保護アノードを作製する方法である。この方法は、少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含むカソードと、金属を含むアノードと、カソードの遷移金属ジカルコゲナイドおよびアノードの金属と接触する電解質と、電解質に溶解した二酸化炭素と、を備える、電気化学セルを提供することを含む。この方法は、電気化学セルを放電させること、ならびに電気化学セルを充電するのに十分な時間、アノードおよびカソードにわたって電圧を印加することを含む、放電-充電サイクルを行うことを含む。放電-充電サイクルにおいて形成され、電解質に溶解した1つの以上の化学種がアノードに沈着(又は堆積又はデポジション又はデポジット(deposit))する。この方法の電気化学セルは、実質的に水を含まない。
【0024】
ある実施形態において、電気化学セルは、電解質の5重量%未満、例えば、電解質の4.5重量%未満、または4重量%未満、または3.5重量%未満、または3重量%未満、または2.5重量%未満、または2重量%未満、または1.5重量%未満、または1重量%未満、または0.75重量%未満、または0.5重量%未満の量の水を含む。
【0025】
本明細書に別途記載の方法のある実施形態において、電気化学セルは、HおよびOを実質的に含まない。ある実施形態において、電気化学セルは、電解質の約5重量%未満、例えば、電解質の約4重量%未満、または約3重量%未満、または約2重量%未満、または約1重量%未満の量のHを含む。ある実施形態において、電気化学セルは、電解質の約5重量%未満、例えば、電解質の約4重量%未満、または約3重量%未満、または約2重量%未満、または約1重量%未満の量のOを含む。ある実施形態において、電気化学セルは、電解質の約10重量%未満、例えば、電解質の約9重量%未満、または約8重量%未満、または約7重量%未満、または約6重量%未満、または約5重量%未満、または約重量%未満、または約3重量%未満、または約2重量%未満、または約1重量%未満の合わせた量のOおよびHを含む。
【0026】
本明細書に別途記載の方法のある実施形態において、方法は、1つ以上の追加の放電-充電サイクルをさらに含む。ある実施形態において、放電-充電サイクルの合計回数は、2~25、例えば、2~24、または2~23、または2~22、または2~21、または2~21、または2~20、または2~19、または2~19、または2~18、または2~17、または2~16、または2~16、または2~15、または2~14、または2~13、または2~12、または2~11、または2~10、または2~9、または2~8、または2~7、または2~6、または2~5、または3~25、または4~25、または5~25、または6~25、または7~25、または8~25、または9~25、または10~25、または11~25、または12~25、または13~25、または14~25、または15~25、または16~25、または17~25、または18~25、または19~25、または20~25、または3~24、または4~23、または5~22、または5~21、または5~20、または5~19、または5~18、または5~17、または5~16、または5~15、または6~14、または7~13、または8~12、または9~11である。
【0027】
本明細書に別途記載の方法のある実施形態において、印加される電圧は、約1V~約5V、例えば、約1.25V~4.75V、もしくは約1.5V~4.5V、もしくは約1.75V~4.25V、もしくは2V~4V、もしくは2.25V~3.75V、もしくは2.5V~3.5Vの範囲内であり、または電圧は、約1.5V、もしくは約1.75V、もしくは約2V、もしくは約2.25V、もしくは約2.5V、もしくは約2.75V、もしくは約3V、もしくは約3.25V、もしくは3.5V、もしくは約3.75V、もしくは約4V、もしくは約4.25V、もしくは約4.5Vである。
【0028】
上記のように、本開示の方法およびデバイスにおいて、アノードは、金属を含む。当業者であれば理解するように、アノードには様々な構造が使用可能である。アノードは、例えば、基本的に金属からなり得る(例えば、棒、板、またはその他の形状として)。他の実施形態において、アノードは、金属の合金から形成されてもよく、または基板(例えば、異なる金属から、または別の導電材料から形成された基板)上の金属の沈着物(又は堆積物又はデポジット(deposit))として形成されてもよい。当業者には理解されるように、そのゼロ価状態にある金属を含む他の金属が使用されてもよい。例えば、ある実施形態において、金属は、金属イオンおよび1つ以上の電子を提供するために、それから金属が還元され得る複合金属酸化物または炭素質材料の一部として提供され得る。
【0029】
上記のように、本開示の方法およびデバイスにおいて、アノードは、金属を含み、例えば、棒、板、チップ、ディスクなどとして形作られてもよい。当業者には、アノードが、様々な異なる寸法、例えば、0.15mm、0.25mm、0.5mm、0.65mmなどの厚さのチップを有してもよいことが理解されるであろう。
【0030】
アノードの金属としてリチウムが使用されることが多いが、本開示の他の実施形態は、本明細書に記載の他のアノード金属を対象としている。したがって、リチウムに関連した本明細書における発明を実施するための形態は、単に例としてのものであり、本開示の他の実施形態において、リチウムの代わりにかつ/またはそれに加えて、本明細書に記載のものを含む、他の金属が使用され得る。本開示のアノードにおける使用に好適な金属には、リチウム、ナトリウム、およびカリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムおよびカルシウムなどのアリカル土類金属、アルミニウムなどの第13族元素、亜鉛、鉄および銀などの遷移金属、ならびにこれらの金属のいずれかを含む合金材料、またはこれらの金属のいずれかを含む材料が含まれるが、これらに限定するものではない。特定の実施形態において、金属は、リチウム、マグネシウム、亜鉛、およびアルミニウムのうちの1つ以上から選択される。他の特定の実施形態において、金属は、リチウムである。
【0031】
アノードの金属としてリチウムが使用される場合、リチウム含有炭素質材料、リチウム元素を含む合金、またはリチウムの複合酸化物、窒化物、もしくは硫化物が使用されてもよい。リチウム元素を含む合金の例には、リチウム-アルミニウム合金、チリウム-スズ合金、リチウム-鉛合金、およびリチウム-ケイ素合金が含まれるが、これらに限定するものではない。リチウム含有複合金属酸化物の例には、リチウムチタン酸化物が含まれる。リチウム含有複合金属窒化物の例には、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、およびリチウムマンガン窒化物が含まれる。
【0032】
上記のように、本開示の方法およびデバイスにおいて、カソードは、少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含む。遷移金属ジカルコゲナイドの例には、TiX、VX、CrX、ZrX、NbX、MoX、HfX、WX、TaX、TcX、およびReXからなる群から選択されるものが含まれ、ここでは、Xは、独立して、S、Se、またはTeである。一実施形態において、各遷移金属ジカルコゲナイドは、TiX、MoX、およびWXからなる群から選択され、ここでは、Xは、独立して、S、Se、またはTeである。別の実施形態において、各遷移金属ジカルコゲナイドは、TiS、TiSe、MoS、MoSe、WS2、およびWSeからなる群から選択される。例えば、一実施形態において、各遷移金属ジカルコゲナイドは、TiS、MoS、またはWSである。別の実施形態において、各遷移金属ジカルコゲナイドは、MoSまたはMoSeである。一実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドは、MoSであってもよい。
【0033】
少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイド自体は、例えばバルク材料として、ナノ構造形態で、粒子の集合体として、および/または担持粒子の集合体として、様々な形態で提供され得る。当業者には理解されるように、バルク(bulk)の形態の遷移金属ジカルコゲナイドは、そのような化合物に典型的であるように層状構造を有してもよい。遷移金属ジカルコゲナイドは、モノレイヤー(又は単層)、ナノチューブ、ナノ粒子(又はナノパーティクル(nanoparticles))、ナノフレーク(nanoflakes)(例えば、多層ナノフレーク)、ナノシート(nanosheets)、ナノリボン(nanoribbons)、ナノ多孔質固体などを含むが、これらに限定されないナノ構造形態を有してもよい。本明細書で使用されるように、「ナノ構造」という用語は、ナノメートル範囲(すなわち、1nm超かつ1μm未満)の寸法(例えば、構造体に適切な場合、細孔、厚さ、直径の寸法)を有する材料に言及している。いくつかの実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドは、金属原子終端エッジを有する層状積層バルク遷移金属ジカルコゲナイド(例えば、モリブデン終端エッジを有するMoS)である。他の実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノ粒子(例えば、MoSナノ粒子)は、本開示のデバイスおよび方法に使用されてもよい。他の実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノフレーク(例えば、MoSのナノフレーク)は、本開示のデバイスおよび方法に使用されてもよい。ナノフレークは、例えば、それぞれのその全体が参照により本明細書に組み込まれている、Coleman,J.N.らによるTwo-dimensional nanosheets produced by liquid exfoliation of layered materials. Science331、568-71(2011)、およびYasaei,P.らによるHigh-Quality Black Phosphorus Atomic Layers by Liquid-Phase Exfoliation. Adv.Mater.(2015)(doi:10.1002/adma.201405150)に記載されているように、液体剥離によって作られ得る。他の実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノリボン(例えば、MoSのナノリボン)が本開示のデバイスおよび方法において使用されてもよい。他の実施形態において、TMDCナノシート(例えば、MoSのナノシート)は、本開示のデバイスおよび方法において使用されてもよい。当業者は、特定のデバイスに対する適切な形態を選択することができる。
【0034】
本明細書に別途記載の方法のある実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノ構造(例えば、ナノフレーク、ナノ粒子、ナノリボンなど)は、約1nmと1000nmの平均サイズ(又はアベレージ・サイズ(average size))を有する。ナノ粒子に関連するサイズは、その最大直径である。ナノフレークに関連するサイズは、その主面に沿ったその最大幅である。ナノリボンに関連するサイズは、リボン全体の幅である。ナノシートに関連するサイズは、その厚さである。いくつかの実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノ構造は、約1nm~約400nm、または約1nm~約350nm、または約1nm~約300nm、または約1nm~約250nm、または約1nm~約200nm、または約1nm~約150nm、または約1nm~約100nm、または約1nm~約80nm、または約1nm~約70nm、または約1nm~約50nm、または50nm~約400nm、または約50nm~約350nm、または約50nm~約300nm、または約50nm~約250nm、または約50nm~約200nm、または約50nm~約150nm、または約50nm~約100nm、または約10nm~約70nm、または約10nm~約80nm、または約10nm~約100nm、または約100nm~約500nm、または約100nm~約600nm、または約100nm~約700nm、または約100nm~約800nm、または約100nm~約900nm、または約100nm~約1000nm、または約400nm~約500nm、または約400nm~約600nm、または約400nm~約700nm、または約400nm~約800nm、または約400nm~約900nm、または約400nm~約1000nm、の平均サイズを有する。ある実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノ構造は、約1nm~約200nmの平均サイズを有する。他のある実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノ構造は、約1nm~約400nmの平均サイズを有する。他のある実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノ構造は、約400nm~約1000nmの平均サイズを有する。ある実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノ構造は、約1nm~約200nmの平均サイズを有するナノフレークである。他のある実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノフレークは、約1nm~約400nmの平均サイズを有する。他のある実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノフレークは、約400nm~約1000nmの平均サイズを有する。
【0035】
本明細書に別途記載の方法のある実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノフレークは、約1nm~約100μmの平均の厚さ(又はアベレージ・シックネス(average thickness))(例えば、約1nm~約10μm、または約1nm~約1μm、または約1nm~約1000nm、または約1nm~約400nm、または約1nm~約350nm、または約1nm~約300nm、または約1nm~約250nm、または約1nm~約200nm、または約1nm~約150nm、または約1nm~約100nm、または約1nm~約80nm、または約1nm~約70nm、または約1nm~約50nm、または約50nm~約400nm、または約50nm~約350nm、または約50nm~約300nm、または約50nm~約250nm、または約50nm~約200nm、または約50nm~約150nm、または約50nm~約100nm、または約10nm~約70nm、または約10nm~約80nm、または約10nm~約100nm、または約100nm~約500nm、または約100nm~約600nm、または約100nm~約700nm、または約100nm~約800nm、または約100nm~約900nm、または約100nm~約1000nm、または約400nm~約500nm、または約400nm~約600nm、または約400nm~約700nm、または約400nm~約800nm、または約400nm~約900nm、または約400nm~約1000nm)と、約20nm~約100μmの主面(又はメジャー・サーフェス(major surface))に沿う平均の寸法(又はアベレージ・ディメンションズ(average dimentions))(例えば、約20nm~約50μm、または約20nm~約10μm、または約20nm~約1μm、または約50nm~約100μm、または約50nm~約50μm、または約50nm~約10μm、または約50nm~約1μm、または約100nm~約100μm、または約100nm~約50μm、または約100nm~約10μm、または約100nm~約1μm)の主面に沿う平均の寸法と、を有し、ナノフレークのアスペクト比(aspect ratio)(最大主寸法:厚さ)は平均して、例えば、少なくとも約5:1、少なくとも約10:1、または少なくとも約20:1とすることができる。例えば、ある実施形態において、遷移金属ジカルコゲナイドナノフレークは、約1nm~約1000nm(例えば、約1nm~約100nm)の範囲の平均厚さ、約50nm~約10μmの主面に沿った平均の寸法、および少なくとも約5:1のアスペクト比を有する。
【0036】
当業者は、カソードの少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドが、それが電解質と接触している限り、様々な形態で提供されてもよいことを認識するであろう。例えば、遷移金属ジカルコゲナイドは、基板上に配置されることができる。例えば、遷移金属ジカルコゲナイドは、多孔質部材(又は多孔質メンバー又はポーラス・メンバー(porous member))(上)に配置され得、それによってガス(例えば、CO)を、部材を通してTMDCまで拡散させることができる。多孔質部材は、導電性(又は電気伝導性(electrically-conductive))であってもよい。多孔質部材が導電性ではない場合、当業者は、カソードの他の部分に対して行われるべきカソードの電気接続の手配をすることができる。基板は、COが、デバイス内に相当な量が吸収されて、TMDCに伝達されることを可能にするように選択されてもよい。基板の多孔質材料としては、カーボンの他、カーボンブラック(例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、メソポーラスカーボン)、活性炭、炭素繊維等の炭素系材料が挙げられる。一実施形態において、大きな比表面積を有する炭素材料が使用される。1mL/g程度の細孔容積を有する材料が使用され得る。別の場合では、カソードは、TMDCを導電性材料(例えば、SUPER Pブランドのカーボンブラック)およびバインダー(例えば、PTFE)と混合し、続いて集電体(又はカレント・コレクタ(current collector))(例えば、アルミニウムメッシュ)上にコーティングすることによって作製され得る。これらの元素の比率は、通常は変わり得る。様々な実施形態において、TMDC含有カソード材料(例えば、集電体上に被覆されている材料)は、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、10~99重量%、20~99重量%、50~99重量%、10~95重量%、20~95重量%、50~95重量%、10~70重量%、20~70重量%、40~70重量%、または70~99重量%を含む。ある実施形態において、それは95重量%のTMDC、4重量%のPTFEバインダーおよび5重量%のスーパーPであり得るか、または、50重量%のTMDC、40重量%のPTFEバインダーおよび10重量%のスーパーPであり得る。
【0037】
TMDC含有材料は、任意の都合のよい厚さ、例えば1000μmまでの厚さで、集電体または多孔質部材上にコーティングされ得る。COがTMDC材料に提供され得るように、カソード全体はいくらかの多孔度を有することが望ましい。
【0038】
当業者は、カソードに存在するガス拡散材料中に存在するTMDCの量を最適化することができよう。
【0039】
上述のように、本開示のデバイスおよび方法において、電解質は少なくとも1%のイオン液体(ionic liquid)を含む。当業者はまた、「イオン液体」という用語は、標準温度および圧力(25℃、1気圧)で液体であるイオン性物質(すなわちカチオンとアニオンの組み合わせ)を指すことを認識するであろう。ある実施形態において、イオン液体は、少なくとも1つの正電荷を帯びた窒素、硫黄、またはリン基(例えば、ホスホニウムまたは第四級アミン)を含む化合物である。ある実施形態において、電解質は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも85%、少なくとも90%、またはさらに、少なくとも95%のイオン液体を含む。
【0040】
イオン液体の具体例としては、アセチルコリン、アラニン、アミノアセトニトリル、メチルアンモニウム、アルギニン、アスパラギン酸、トレオニン、クロロホルムアミジニウム、チオウロニウム、キノリニウム、ピロリジノール、セリノール、ベンズアミジン、スルファメート、アセテート、アセテート、アセテート、カルバメート、インフレート、およびシアン化物、の1つ以上の塩が挙げられるが、これに限定されない。当業者は、標準温度および圧力で液体形態であるような塩を選択するであろう。これらの例は説明目的のためだけのものであり、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。
【0041】
いくつかの実施形態において、本開示のイオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、または1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネートなどのイミダゾリウム塩と、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、または1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネートなどのピロリジニウム塩と、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、または1-ブチル-1-メチルピペリジニウムトリフルオロメタンスルホネートなどのピペリジニウム塩と、アミルトリエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、またはメチルトリ-n-オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのアンモニウム塩と、1-エチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのピリジニウム塩であってもよい。
【0042】
ある実施形態において、本開示のイオン液体は、イミダゾリウム(類)、ピリジニウム(類)、ピロリジニウム(類)、ホスホニウム(類)、アンモニウム(類)、スルホニウム(類)、プロリネート(類)(又はプロリン酸塩(prolinates))、およびメチオニネート(類)(又はメチオニン酸塩(methioninates))の塩を含むが、これらに限定されない。カチオンとともに塩を形成するのに好適なアニオンには、C-Cアルキルスルフェート、トシレート、メタンスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、トリフレート、ハライド(又はハロゲン化物(halide))、カルバメート、およびスルファメートが含まれる。特定の実施形態において、イオン液体は、以下に例示されるものから選択されるカチオンの塩であり得る。
【0043】
【化1】
【0044】
式中、R~R12は、水素、-OH、直鎖脂肪族C-C基、分岐脂肪族C-C基、環状脂肪族C-C基、-CHOH、-CHCHOH、-CHCHCHOH、-CHCHOHCH、-CHCOH、-CHCHCOH、および-CHCOCHからなる群から独立して選択される。
【0045】
ある実施形態において、本開示の方法およびデバイスのイオン液体は、以下の式を有するイミダゾリウム塩である。
【0046】
【化2】
【0047】
式中、R、RおよびRは、水素、直鎖脂肪族C-C基、分岐脂肪族C-C基、環状脂肪族C-C基からなる群から独立して選択される。
他の実施形態において、Rは、水素であり、RおよびRは、直鎖状または分岐状C-Cアルキルから独立して選択される。
特定の実施形態において、本開示のイオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩である。
他の実施形態において、本開示のイオン液体は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIM-BF)である。
【0048】
一般に、当業者は、所与のイオン液体が、以下のようにTMDCによって触媒される反応(R)のための助触媒であるかどうかを決定することができる。
(a)標準的な3電極電気化学セルを、反応Rのために一般的に使用される電解質で満たす。一般的な電解質は、0.1M硫酸などを含み、または水中の0.1M KOHなども使用され得る。
(b)TMDCを、3電極電気化学セルおよび適切な対電極に取り付ける。
(c)セルを清掃するために数回のCVサイクルを実行する。
(d)電解質中の可逆水素電極(RHE)電位を測定する。
(e)反応Rのための反応物をセルに充填し、反応Rに関連するピークの電位に注目して、反応RのCVを測定する。
(f)反応に関連するピークの開始電位とRHEとの間の差であるVIを計算する。
(g)反応に関連するピークの最大電位とRHEとの間の差であるVIAを計算する。
(h)電解質に0.0001~99.9999重量%のイオン液体を添加する。
(i)イオン液体との反応におけるRHEを測定する。
(j)反応Rに関連するピークの電位に注目して、反応RのCVを再度測定する。
(k)反応に関連するピークの開始電位とRHEとの間の差であるV2を計算する。
(l)反応に関連するピークの最大電位とRHEとの間の差であるV2Aを計算する。
任意の濃度のイオン液体(例えば、0.0001~99.9999重量%)において、V2<V1またはV2A<VIAの場合、イオン液体は反応のための助触媒である。
【0049】
いくつかの実施形態において、イオン液体は、水溶液の約50重量%~約100重量%、もしくは約50重量%~約99重量%、もしくは約50重量%~約98重量%、もしくは約50重量%~約95重量%、もしくは約50重量%~約90重量%、もしくは約50重量%~約80重量%、もしくは約50重量%~約70重量%、もしくは約50重量%~約60重量%、もしくは約80重量%~約99重量%、約80重量%~約98重量%、もしくは約80重量%~約95重量%、もしくは約80重量%~約90重量%、もしくは約70重量%~約99重量%、約70重量%~約98重量%、もしくは約70重量%~約95重量%、もしくは約70重量%~約90重量%、もしくは約70重量%~約80重量%の範囲内で、または約50重量%、もしくは約70重量%、もしくは約80重量%、もしくは約90重量%、もしくは約95重量%、もしくは約96重量%、もしくは約97重量%、もしくは約98重量%、もしくは約99重量%で、電解質中に存在する。ある実施形態において、イオン液体は、約75重量%~約100重量%、または約90重量%~約100重量%の範囲内で電解質中に存在する。いくつかの他の実施形態において、イオン液体は、電解質中に約90重量%で存在する。他の実施形態において、電解質は、基本的にイオン液体からなる。
【0050】
ある実施形態において、電解質は、溶媒、緩衝液、システムの構成要素への添加剤、またはシステム内の触媒のうちの少なくとも1つに結合している溶液をさらに含んでもよい。ある実施形態において、電解質は、非プロトンの有機溶媒を含んでもよい。いくつかの好適な溶媒には、ジオキソラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、テトラヒドロフラン(THF)、ブチレンカーボネート、ラクトン、エステル、グライム、スルホキシド、スルホラン、ポリエチレンオキシド(PEO)、およびポリアクリロニトリル(PAN)が、単独でまたは任意の組み合わせで含まれるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態において、非イオン性の液体の有機溶媒は、約40重量%未満、約30重量%未満、約20重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、または約1重量%未満でさえも、それらの量で存在する。ある実施形態において、電解質は、実質的に遊離の非イオン性の液体の有機溶媒である。
【0051】
ある実施形態において、電解質は、酸、塩基、および塩などの他の種をさらに含んでもよい。ある実施形態において、電解質は、金属イオン、例えば、リチウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンなどを含んでもよい。一実施形態において、電解質は、リチウムイオンを含んでもよい。ある実施形態において、電解質は、アノードの金属の塩を含んでもよい(例えば、アノードが金属リチウムを含む場合、電解質は、過塩素酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムトリフレート、リチウムヘキサフルオロアルセナートなどのリチウム塩を含んでもよい)。ある実施形態において、アノードの金属の塩は、約0.005M~約5M、約0.01M~約1M、または約0.02M~約0.5Mの範囲の濃度で存在する。このような他の種の包含は、電解質に対する所望の電気化学的性質および物理化学的性質に応じて、当業者には明らかであろうし、本開示の範囲を限定することを意味していない。
【0052】
上記のように、本開示のデバイスおよび方法において、電気化学セルは、電解質に溶解した二酸化炭素を含む。ある実施形態において、二酸化炭素は、電解質中の二酸化炭素の飽和濃度の少なくとも約5%、例えば、少なくとも約7.5%、または少なくとも約10%、または少なくとも約12.5%、または少なくとも約15%、または少なくとも約17.5%、または少なくとも約20%、または少なくとも約22.5%、または少なくとも約25%、または少なくとも約30%、または少なくとも約35%、または少なくとも約40%、または少なくとも約45%、または少なくとも約50%、または少なくとも約55%、または少なくとも約60%、または少なくとも約65%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の濃度で電解質中に存在する。
【0053】
ある実施形態において、この方法は、1回以上の放電-充電サイクルの後に保護アノードを電気化学セルから取り除くことと、保護アノード、カソード、ならびにアノードと、および必要に応じてアノードの金属と接触する電解質を備える、電池を構成することと、をさらに含む。
【0054】
本開示の別の態様は、本明細書に別途記載の方法によって作られた保護アノードである。
【0055】
本開示の別の態様は、リチウム金属を含むアノード上に配置された保護層を含む保護アノードであり、保護層は、保護層の少なくとも50原子%の量のLiCOを含む。いくつかの実施形態において、保護層は、約5nm~約5μm、例えば、約5nm~約40μm、または約5nm~約30μm、または約5nm~約20μm、または約5nm~約10μm、または約5nm~約9μm、または約5nm~約8μm、または約5nm~約7μm、または約5nm~約6μm、または約5nm~約5μm、または約5nm~約4μm、または約5nm~約3μm、または約5nm~約2μm、または約5nm~約1μm、または約5nm~約900nm、または約5nm~約800nm、または約5nm~約700nm、または約5nm~約600nm、または約5nm~約500nm、または約5nm~約450nm、または約5nm~400nm、または約5nm~約350nm、または約5nm~約300nm、または約5nm~約250nm、または約5nm~約200nm、または約10nm~約5μm、または15nm~約5μm、または約20nm~約5μm、または約25nm~約5μm、または約50nm~約5μm、または約75nm~約5μm、または約100nm~約5μm、または約150nm~約5μm、または約200nm~約5μm、または約250nm~約5μm、または約300nm~約5μm、または約350nm~約5μm、または約400nm~約5μm、または約450nm~約5μm、または約500nm~約5μm、または約600nm~約5μm、または700nm~約5μm、または約800nm~約5μm、または約900nm~約5μm、または約1μm~約5μm、または約1.25μm~約5μm、または約1.5μm~約5μm、または約1.75μm~約5μm、または約2μm~約5μm、または約2.25~約5μm、または約2.5μm~約5μmの範囲内の厚さを有する。
【0056】
本開示の別の態様は、本明細書に記載のまたは本明細書に記載の方法によって作られた保護アノードと、カソードと、そのアノードと、および必要に応じてアノードの金属と接触する電解質と、を備える、電池である。
【0057】
当業者には、電池が、本明細書に記載の方法によって作製された保護アノードが好適であるいずれの電池でも、例えば、金属-硫黄電池、金属-空気電池、または金属-イオン電池でもよいことが理解されるであろう。ある実施形態において、電池は、金属-空気電池である。ある実施形態において、電池は、金属-空気電池であり、カソードは、少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含む。例えば、一実施形態において、電池は、WO2016/100204に記載の金属-空気電池である。他の実施形態において、電池のカソードは、遷移金属ジカルコゲナイドを含まない。ある実施形態において、電池は、金属-空気電池であり、電解質は、少なくとも50重量%のイオン液体を含む。ある実施形態において、電池セルは、本明細書に別途記載の保護アノードを製造する方法の電気化学セルを含む、水、H、および/またはOの量よりも多い量の水、H、および/またはOを含む。
【実施例
【0058】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態、およびその様々な用途の例証となるものである。それらは、説明目的のみで示されており、本発明を限定するものととられるべきではない。
【0059】
実施例1
アノードの保護
保護アノードは、MoSナノフレークカソードおよび電解質も含む電気化学電池セル内に保護されるアノードを含めることによって、保護アノードを作製した。
【0060】
カソードの作製
300mgのMoS粉末(99%、Sigma-Aldrich)を60mLのイソプロピルアルコール(IPA)(>99.5%、Sigma-Aldrich)に分散させる液体剥離法を使用して、MoSナノフレークを合成した。次に、その溶液を30時間剥離させ、1時間遠心分離して、剥離していない粉末からナノフレークを抽出した。動的光散乱(DLS:Dynamic Light Scattering)分析は、135nmの平均フレークサイズを有する110~150nmの狭い範囲の合成MoSナノフレークの均一なサイズ分布を示した。MoSナノフレーク(0.2mg)を、1cm-2の表面積を有するガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)(0.2mm厚、80%多孔度、燃料セルなど)の導電性基板上にコーティングした。作製したカソードを真空オーブン内で、85℃で24時間乾燥させ、カソードを安定化させ、不純物を除去した。この手順により、GDL基板上に0.2mg/cm-2の一貫した触媒充填量を有する、同様に作製されたカソード試料が得られた。
【0061】
アノードの作製
保護されるアノードを、0.25mm(>99.9%、Sigma Aldrich)の厚さの純リチウムチップから作製した。
【0062】
電解質の作製
0.1Mリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)(>99.0%、Sigma-Aldrich)を、25%1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIM BF4)(HPLC、>99.0、Sigma-Aldrich)と75%ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma-Aldrich)との混合液に溶解させることによって、電解質溶液を作製した。
【0063】
電池セルの作製
すべての電池システムを、アルゴン(Ar)充填グローブ-ボックスに、特別注文のSwagelok電池仕組みとともに組み立てた。この仕組みは、カソード、アノード、および3滴の電解質を含んでいた。ガラス極細繊維フィルタをセパレータとして使用して、カソードとアノードとの直接接触を防止した。
【0064】
アノード保護の手順(又は処置)
組み立てた電池セルを、まず、ガス不純物を除去し、寄生反応を防ぐために、純CO(99.99%、Praxair Inc.)でパージした。次に、CO充填の電池を、サイクリング測定に向けて、ポテンショスタット(MTI Corporation)に接続した。0.1mA/cm-1の定電流を10回の連続サイクルで印加し、各サイクルは、1時間の充電プロセスとそれに続く1時間の放電プロセスからなっていた。時間および容量の関数としての電圧のその場測定値を記録した。
【0065】
実施例2
保護アノードを有するリチウム-空気の電池の性能
実施例1に従って作製された保護アノードを図10に示されるように構成されたリチウム空気電池に組み入れ、ここで、保護アノードとカソードとは、電解質で湿らせたガラス繊維フィルタによって分離された。カソードおよび電解質を実施例1に従って作製した。組み立てた電池を、まず、ガス不純物を除去し、寄生反応を防ぐために、~21%酸素(O)、~79%窒素(N)、500ppmCO、および45%相対湿度(RH:Relative Humidity)の空気混合気でパージした。空気混合気は、COについて±1%、Oについて±0.02%の精度を有する特別注文品(Praxair Inc.)であった。電池への導入前に、ガス流に湿気を加えた。パージ中、センサ(Silicon Labs SI 700 x)によって、空気流のRHおよび温度を追跡して、RHを45%に、温度を25℃±1℃(室温)に維持した。RHおよび温度対時間を連続的に記録した(Si700x評価ソフトウェア)。リチウム-空気電池を、サイクリング測定用のポテンショスタットに接続した。0.1mA/cm-1の定電流を800サイクルで印加し、各サイクルは、1時間の充電プロセスとそれに続く1時間の放電プロセスからなっていた。サイクル回数および容量の関数としての電圧のその場測定値を記録した(図1参照)。800サイクルを通して、電池性能の変動は、ごくわずかであった。これらの結果は、電池全体の性能に何ら悪影響を及ぼすことなく、裸のリチウムアノードを利用する電池にわたる分極化ギャップが一桁より多く変化しないサイクル回数における増加を示した。
【0066】
実施例3
保護アノードのクーロン効率(又はコロンビウム効率(Columbic Efficiency))
保護アノードのクーロン効率(又はコロンビウム効率(columbic efficiency))(CE:Columbic Efficiency)を、高速サイクリングとそれに続くアノードの徹底的な剥離によって試験した。セルを作製するために、Q=10.2mAh/cmの初期理論容量を有する2つのリチウムアノードを、実施例1に従って別々に保護した。次に、保護アノードを、作用電極および対電極として、ガラス状繊維セパレータと、0.1MのLiTFSI含有の25%/75%のイオン液体/DMSOを含む電解質とを利用して、2016コインセルに組み込んだ。
【0067】
高率サイクリング(又はハイ・レート・サイクリング)
セルを特定のサイクル回数(N=51サイクル)にかけ、各サイクルは、2mA/cmの電流密度を印加する1時間の充電プロセスとそれに続く1時間の放電プロセスとからなっていた。これにより、Q=2mAh/cmのサイクル容量が得られた。放電中に、作用電極の19.6重量%のリチウムが対電極に移動した。充電中、同量のリチウムが作用電極に戻った。作用電極と対電極との間で往復移動するリチウムの量がサイクリング実験を通して同じままである図2に示されるこれらの結果は、対電極におけるリチウムの蓄積がシステムのクーロン効率を低下させる可能性があることから、理想的である。
【0068】
低率ディープサイクリング(又はロー・レート・ディープ・サイクリング)
高率サイクリング実験の後、作用電極上で低率ディープサイクリング実験を行った。0.5mA/cmの電流密度を印加した(リチウムデンドライトの成長および固体電解質界面(SEI)(すなわち、リチウム電極と電解質との間の界面)の変形を最小限にするために、サイクリング実験で使用した電流密度よりも4倍低い)。セル電圧が-0.5Vに達するまで電流を連続的に印加し(図3)、その時点で、作用電極にあるリチウムは完全に剥がされた。電圧が-0.5Vに達したときの容量、この場合は9.98mAh/cmが、作用電極の最大容量である。
【0069】
クーロン効率計算
次に、リチウムアノードのクーロン効率を以下の式を使用して計算した。
【0070】
【数1】
【0071】
ここで、Qは、電極の理論リチウム容量(10.2mAh/cm)、Qは、ディープサイクリング実験後の作用電極の最大容量(9.98mAh/cm)であり、Qは、高率サイクリング中のセルの容量(2mA/cm)であり、Nは、行われた高率サイクル回数(51サイクル)である。
【0072】
保護アノードのクーロン効率は、したがって98.9%であった。
【0073】
実施例4
保護アノード表面のXPS
X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)実験を、Thermo Scientific ESCALAB 250Xi計器を使用して実施した。装置には、電子フラッドおよび走査イオン銃が備えられていた。試料の酸化および汚染を防ぐために、保護アノードを炭酸ジメチル(DMC:DiMethyl Carbonate)で慎重にすすぎ、特徴付けの前にアルゴン流下で乾燥させた。Arを充填した移動式グローブボックスを使用して、試料を計器のローディングチャンバーに移した。すべてのスペクトルを、284.8eVのC1s結合エネルギーに対して較正した。各元素の原子濃度を定量化するために、Scofield感度係数に基づいて、すべてのデータをThermo Avantageソフトウェアによって処理した。背景信号は、Shirly法により取り除いた。Li 1s、C 1s、およびO 1sの領域におけるアノード表面の典型的なXPSスペクトルが、アノード表面上の保護層が主にLiCOであることを一貫して示した。スペクトルに示されるように(図4~6参照)、Li 1s、C 1s、およびO 1sの領域におけるLiCOに対する基準結合エネルギーは、それぞれ、55.15eV、289.5eV、および531.5eVである。
【0074】
LiO、Li、またはLiOHなどの他の生成物の証拠は観察されなかった。Li 1s領域におけるこれらの生成物の標準結合エネルギーは、それぞれ、55.6eV、54.5eV、54.9eVであり、O 1s領域においては、それぞれ、531.3eV、531eV、および531eVである。これらのスペクトルは、LiCOの標準結合エネルギーとうまく一致する結合エネルギーを示す。
【0075】
各元素の対応するピークの表面積に基づく元素定量化結果は、リチウムアノードの表面上の主生成物としてのLiCOの原子比をさらに裏付ける。
【0076】
【表1】
【0077】
LiCOの物理的および電子的性質は、イオン伝導性および電子絶縁性の両方を提供し、これらは、例えば二次リチウム電池において利用される任意の保護中間期の2つの基本的な性質である。理論に縛られることなく、LiCO層のイオン伝導性は、下にあるアノードへのまたはそれからのLi拡散を可能にし得る一方で、電子絶縁性は、アノードの被毒を防止する。
【0078】
実施例5
保護層の厚さ依存性(又は厚さ依存の性能(又はパフォーマンス)(Thickness-Dependant Performance of Protective Layer))
アノード保護プロセスにおいて行われたサイクル回数の影響を調べた。保護アノードを実施例1に従って作製したが、充電-放電サイクル(すなわち、アノード保護サイクル)の回数を変えた(5、10、15、および20サイクル)。保護後、実施例2に従って作製したリチウム空気電池にアノードを組み込んだ。次に、空気充填の電池をサイクリング測定に向けてポテンショスタット(MTI Corporation)に接続した。セルを特定の回数のサイクルにかけ、各サイクルは1時間の充電プロセスからなり、ここで、0.1mA/cmの電流密度を印加し、続いて1時間の放電プロセスを行った。時間および容量の関数としての電圧のその場測定値を記録した。
【0079】
図7は、保護サイクル回数(保護層の厚さに相関している)の関数としてのリチウム空気電池のサイクル寿命および第1のサイクル分極化ギャップを示す。電池のサイクル寿命は、5アノード保護サイクル後に約60サイクル、また10アノード保護サイクル後に800サイクルであることが示された。アノード保護サイクル回数の関数としてのLi-空気電池の分極化ギャップでは、反対の傾向が観察され、最小の分極化ギャップが、5アノード保護サイクルで観察された。アノード保護のない第1のサイクルに対する分極化ギャップは、1.366Vであった。5保護サイクル後にアノードを含む電池に対して、電位ギャップが0.4933Vに低下した。5保護サイクルを超えると、第1のサイクル分極化ギャップは、アノード保護サイクル回数が増加するにつれて最大20サイクルまで増加した。
【0080】
これらの結果は、リチウム-空気電池の場合、アノード保護ステップの最適回数が約10サイクルであることを示唆している。
【0081】
実施例6
保護アノードを有するリチウム-空気電池のEIS特徴付け(又はEISキャラクテリゼーション(EIS Characterization))
セルの安定性および効率に対するアノード保護層の厚さの影響を調べるために、保護アノードを実施例1に従って、ただしアノード保護サイクル回数を変えて(5、10、および15サイクル)作製し、実施例2に従って作製したリチウム-空気電池に組み込んだ。各電気化学インピーダンス分光法(EIS)実験では、保護アノードの電気化学的性質の独立した調査を確保するために、触媒の既知の装填量および同一の電解質を有する新しいカソードを使用して、システムにおける汚染または外部抵抗を回避した。電池セルをポテンショスタット(Volta Lab PGZ 100)に接続し、10Hz~100kHzの周波数範囲において700mVの過電圧で測定を行った。
【0082】
図8は、アノード保護サイクル回数に関するEIS結果を示す。10保護サイクル後のアノードの電荷移動抵抗(Rct)は、約550キロオームであったが、5サイクル後、15サイクル後には、それぞれ、約160キロオーム、約1350キロオームであった。無保護のアノードに対する電荷移動抵抗は、30キロオームであった。
【0083】
理論に縛られず、セル抵抗における増加は、アノード表面上のLiCOの存在に起因する可能性がある。保護層が厚いほど、セル内の電荷移動抵抗が大きくなる。5アノード保護サイクル後の保護層の厚さは、長時間にわたってリチウム-空気電池を保護するのに十分ではなかったが、15アノード保護サイクルは、セル内の抵抗を高くしすぎて、このような電池には好適ではないと考えられる。
【0084】
これらの結果に基づいて、10保護サイクル後のアノードが、最良の電気化学的性能を示した。
【0085】
実施例7
保護アノード表面のSEM特徴付け(又はSEMキャラクテリゼーション(SEM Characterization))
保護アノードの表面構造および形態を、走査型電子顕微鏡(SEM)を通して調べた。実施例1に従って作製した保護リチウムアノードを特徴付けた。SEM画像を、15kXのレンズ倍率で(EHT)10kVの加速電圧、および25kXのレンズ倍率で(EHT)10kVの加速電圧において取得した。保護アノードの表面のSEM画像(図9参照)は、LiCO種と一致する棒形状生成物の形成を示す。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
保護アノードを製造するための方法であって、当該方法は、
電気化学セルを提供すること、および
放電-充電サイクルを行うこと
を含み、
前記電気化学セルは、
少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含むカソード、
金属を含むアノード、
前記カソードの遷移金属ジカルコゲナイドおよび前記アノードの金属と接触する電解質、および
前記電解質に溶解した二酸化炭素
を含み、
前記放電-充電サイクルは、
前記電気化学セルを放電させること、および
前記電気化学セルを充電するのに十分な時間、前記アノードおよび前記カソードにわたって、電圧を印加すること
を含み、
当該方法において、
前記電気化学セルは、水を実質的に含まず、
1つ以上の化学種が、前記アノードに沈着し、前記化学種は、前記放電-充電サイクルにおいて形成され、前記電解質に溶解している、
方法。
(態様2)
前記電気化学セルが、前記電解質の約5重量%未満の量の水を含む、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記電気化学セルが、前記電解質の約2重量%未満の量の水を含む、態様1に記載の方法。
(態様4)
前記電気化学セルが、前記電解質の約1重量%未満の量の水を含む、態様1に記載の方法。
(態様5)
前記電気化学セルが、H およびO を実質的に含まない、態様1~4のいずれか1項に記載の方法。
(態様6)
前記電気化学セルが、前記電解質の5重量%未満の量のH を含む、態様5に記載の方法。
(態様7)
前記電気化学セルが、前記電解質の2重量%未満の量のH を含む、態様5に記載の方法。
(態様8)
前記電気化学セルが、前記電解質の5重量%未満の量のO を含む、態様5~7のいずれか1項に記載の方法。
(態様9)
前記電気化学セルが、前記電解質の2重量%未満の量のO を含む、態様5~7のいずれか1項に記載の方法。
(態様10)
前記電気化学セルが、H およびO を含み、その合計量が、前記電解質の約10重量%未満である、態様5~9のいずれか1項に記載の方法。
(態様11)
1回以上の追加の放電-充電サイクルを行うことをさらに含む、態様1~10のいずれか1項に記載の方法。
(態様12)
前記放電-充電サイクルの合計回数が、2~25である、態様11に記載の方法。
(態様13)
前記放電-充電サイクルの合計回数が、5~15である、態様11に記載の方法。
(態様14)
前記電圧が、約1V~約5Vの範囲内である、態様1~13のいずれか1項に記載の方法。
(態様15)
前記アノードが、基本的に金属からなる、態様1~14のいずれか1項に記載の方法。
(態様16)
前記アノードの金属が、リチウム、マグネシウム、亜鉛またはアルミニウムである、態様1~15のいずれか1項に記載の方法。
(態様17)
前記アノードの金属が、リチウムである、態様1~15のいずれか1項に記載の方法。
(態様18)
前記電解質が、金属イオンを含む、態様1~17のいずれか1項に記載の方法。
(態様19)
前記金属イオンが、リチウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオンまたはアルミニウムイオンである、態様18に記載の方法。
(態様20)
前記金属イオンが、リチウムイオンである、態様18に記載の方法。
(態様21)
前記金属イオンが、約0.005M~約5Mの範囲内の濃度で、前記電解質に存在する、態様18~20のいずれか1項に記載の方法。
(態様22)
前記金属イオンが、約0.01M~約1Mの範囲内の濃度で、前記電解質に存在する、態様18~20のいずれか1項に記載の方法。
(態様23)
前記金属イオンが、約0.02~約0.5Mの範囲内の濃度で、前記電解質に存在する、態様18~20のいずれか1項に記載の方法。
(態様24)
前記アノードの金属と、金属イオンの元素とが同じである、態様18~23のいずれか1項に記載の方法。
(態様25)
前記二酸化炭素が、前記電解質中の二酸化炭素飽和濃度の少なくとも約5%の濃度で、前記電解質中に存在する、態様1~24のいずれか1項に記載の方法。
(態様26)
前記二酸化炭素が、前記電解質中の二酸化炭素飽和濃度の少なくとも約25%の濃度で、前記電解質中に存在する、態様1~24のいずれか1項に記載の方法。
(態様27)
前記二酸化炭素が、前記電解質中の二酸化炭素飽和濃度の少なくとも約50%の濃度で、前記電解質中に存在する、態様1~24のいずれか1項に記載の方法。
(態様28)
前記遷移金属ジカルコゲナイド含有カソードの材料が、少なくとも50重量%の遷移金属ジカルコゲナイドを含む、態様1~27のいずれか1項に記載の方法。
(態様29)
前記カソードが、多孔質部材または集電体に配置された少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含む、態様1~28のいずれか1項に記載の方法。
(態様30)
前記カソードが、多孔質炭素部材に配置された少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含む、態様1~28のいずれか1項に記載の方法。
(態様31)
前記多孔質部材が、導電性である、態様29または30に記載の方法。
(態様32)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、TiX 、VX 、CrX 、ZrX 、NbX 、MoX 、HfX 、WX 、TaX 、TcX またはReX であり、
各Xが、独立して、S、SeもしくはTeまたはそれらの組み合わせである、
態様1~31のいずれか1項に記載の方法。
(態様33)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、TiX 、MoX またはWX であり、
各Xが、独立して、S、SeもしくはTeまたはそれらの組み合わせである、
態様1~31のいずれか1項に記載の方法。
(態様34)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、TiS 、TiSe 、MoS 、MoSe 、WS またはWSe である、態様1~31のいずれか1項に記載の方法。
(態様35)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、TiS 、MoS またはWS である、態様1~31のいずれか1項に記載の方法。
(態様36)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、MoS またはMoSe である、態様1~31のいずれか1項に記載の方法。
(態様37)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、MoS である、態様1~31のいずれか1項に記載の方法。
(態様38)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、ナノ粒子の形態である、態様1~37のいずれか1項に記載の方法。
(態様39)
前記遷移金属ジカルコゲナイドのナノ粒子が、約1nm~約1000nmの範囲内の平均サイズを有する、態様38に記載の方法。
(態様40)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、ナノフレークの形態である、態様1~37のいずれか1項に記載の方法。
(態様41)
前記遷移金属ジカルコゲナイドのナノフレークが、約1nm~約400nmの範囲内の平均サイズを有する、態様40に記載の方法。
(態様42)
前記遷移金属ジカルコゲナイドのナノフレークが、約1nm~約100nmの範囲の平均の厚さ、約50nm~約10μmの主表面に沿う平均の寸法、および少なくとも約5:1のアスペクト比を有する、態様40に記載の方法。
(態様43)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、ナノシートまたはナノリボンの形態である、態様1~37のいずれか1項に記載の方法。
(態様44)
前記遷移金属ジカルコゲナイドナノシートまたはナノリボンが、約1nm~約400nmの範囲内の平均サイズを有する、態様43に記載の方法。
(態様45)
各遷移金属ジカルコゲナイドが、バルクの形態である、態様1~37のいずれか1項に記載の方法。
(態様46)
前記電解質が、イオン液体を含む、態様1~45のいずれか1項に記載の方法。
(態様47)
前記イオン液体が、
イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム、コリン、スルホニウム、プロリネートおよびメチオニネートから選択されるカチオンと、
アニオンと
を含む、態様46に記載の方法。
(態様48)
前記カチオンが、イミダゾリウムカチオンである、態様47に記載の方法。
(態様49)
前記カチオンが、イミダゾリウムカチオンであり、該イミダゾリウムカチオンは、以下の式:
【化1】
[式中、R 、R およびR は、水素、直鎖脂肪族C ~C 基、分岐脂肪族C ~C 基および環状脂肪族C ~C 基からなる群から独立して選択される]
を有する、態様47に記載の方法。
(態様50)
が、水素であり、
およびR が、直鎖または分岐のC ~C アルキルから独立して選択される、
態様49に記載の方法。
(態様51)
前記アニオンが、C ~C アルキルスルフェート、トシレート、メタンスルホネート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、トリフレート、ハライド、カルバメートまたはスルファメートである、態様47~50のいずれか1項に記載の方法。
(態様52)
前記イオン液体が、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートである、態様46~51のいずれか1項に記載の方法。
(態様53)
前記電解質が、少なくとも50重量%のイオン液体を含む、態様46~52のいずれか1項に記載の方法。
(態様54)
前記電解質が、少なくとも90重量%のイオン液体を含む、態様46~52のいずれか1項に記載の方法。
(態様55)
前記電解質が、水および非イオン性の液体の有機溶媒を実質的に含まない、態様1~54のいずれか1項に記載の方法。
(態様56)
前記電解質が、非プロトン性の有機溶媒を含む、態様1~54のいずれか1項に記載の方法。
(態様57)
前記溶媒が、エーテルである、態様56に記載の方法。
(態様58)
前記溶媒が、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタンまたはジメチルスルホキシドである、態様56に記載の方法。
(態様59)
1回以上の放電-充電サイクルの後、前記電気化学セルから、前記保護アノードを取り除くこと、および
電池を構成すること
をさらに含み、
前記電池は、
前記保護アノード、
カソード、および
前記アノードと接触し、必要に応じて、前記アノードの金属とも接触する電解質
を含む、態様1~58のいずれか1項に記載の方法。
(態様60)
前記電池のカソードが、遷移金属ジカルコゲナイドを含まない、態様59に記載の方法。
(態様61)
態様1~58のいずれか1項に記載の方法に従って製造される保護アノード。
(態様62)
保護アノードであって、該保護アノードは、保護層を含み、該保護層は、アノードに配置され、該アノードは、リチウム金属を含み、前記保護層は、Li CO を含み、その量は、前記保護層の少なくとも50原子%である、保護アノード。
(態様63)
態様61または態様62に記載の保護アノード、
カソード、および
前記アノードと接触し、必要に応じて、前記アノードの金属とも接触する電解質
を含む、電池。
(態様64)
金属-空気の電池として構成されている、態様63に記載の電池。
(態様65)
前記カソードが、少なくとも1つの遷移金属ジカルコゲナイドを含む、態様64に記載の金属-空気の電池。
(態様66)
前記電解質が、少なくとも50重量%のイオン液体を含む、態様64または65に記載の金属-空気の電池。
(態様67)
金属-イオンの電池として構成されている、態様63に記載の電池。
(態様68)
金属-硫黄の電池として構成されている、態様63に記載の電池。
(態様69)
前記カソードが、遷移金属ジカルコゲナイドを含まない、態様64、67および68のいずれか1項に記載の電池。
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