(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】ハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
E04B9/18 L
(21)【出願番号】P 2020179005
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2020-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0070821
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518303376
【氏名又は名称】ユン,ミンシ
【氏名又は名称原語表記】JUNG,Min Si
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ミンシ
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027273(JP,A)
【文献】特開2010-255307(JP,A)
【文献】特開平06-240807(JP,A)
【文献】特開2000-249259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
F16L 3/14
F16B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリングバー用ハンガー(10)とアンカーボルト(20)との間の保持手段であって、
前記キャリングバー用ハンガー(10)の上部水平部(12)に形成された貫通孔(11)を貫通した前記アンカーボルト(20)に締結されて前記上部水平部(12)の底面に密着した状態で、前記上部水平部(12)と、前記上部水平部(12)の一端から折り曲げられて下方に延びた垂直部(13)の上部との間に空き空間(S)が形成されるようにする大きさ及び形状を有する下部ナット(110)と、
前記貫通孔(11)を貫通した前記アンカーボルト(20)に締結されて前記上部水平部(12)の上面に密着した上部ナット(120)と、
前記垂直部(13)の上部及び前記下部ナット(110)に面接触した状態で前記空き空間(S)に介在して前記下部ナット(110)の回転を防止するスペーサ(130)、又は、上部水平部(12)の他端から折り曲げられて上方に延びたブラケット片(16)、前記上部ナット(120)、及び前記上部水平部(12)の間の空き空間(S’)に介在して前記ブラケット片(16)及び前記上部ナット(120)に面接触して、前記上部ナット(120)の回転を防止するスペーサ(130)と、を含むことを特徴とする、ハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段。
【請求項2】
前記スペーサ(130)が磁石である状態で、前記ハンガー(10)及び前記下部ナット(110)又は前記上部ナット(120)が磁性を有することを特徴とする、請求項1に記載のハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段。
【請求項3】
前記スペーサ(130)は、前記上部水平部(12)の底面又は上面に面接触することを特徴とする、請求項1に記載のハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段。
【請求項4】
前記下部ナット(110)又は前記上部ナット(120)は六角ナットであることを特徴とする、請求項1に記載のハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段。
【請求項5】
配管を天井に吊り下げるためにコンクリート天井に打ち込まれたアンカーボルト(20)と配管用ハンガー(10’)との間の保持手段であって、
前記配管用ハンガー(10’)は、前記アンカーボルト(20)に装着されるマウント部(A)と、前記マウント部(A)の下端に着脱可能に結合されて配管(40’)をクランプするクランピング部(B)とを含み、
前記保持手段(100)は、
内周面がねじ加工されて前記アンカーボルト(20)に締結される管状ナット(110’)と、
前記配管用ハンガー(10’)のマウント部(A)の上部水平部(12)に形成された貫通孔(11)を通って前記管状ナット(110’)が貫通した状態で、前記配管用ハンガー(10’)の上部水平部(12)の底面が載置され得るように前記管状ナット(110’)の下端から拡大して形成されたフランジ(111)と、
前記配管用ハンガー(10’)の上部水平部(12)と、前記上部水平部(12)の一側から折り曲げられて下方に延びた垂直部(13)の上部との間に形成された空き空間(S”)に介在して、前記垂直部(13)の上部及び前記フランジ(111)に面接触することで、前記配管用ハンガー(10’)の回転を防止するスペーサ(130)と、を含むことを特徴とする、ハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段。
【請求項6】
前記スペーサ(130)が磁石である状態で、前記管状ナット(110’)及び前記配管用ハンガー(10’)が磁性を有することを特徴とする、請求項5に記載のハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段。
【請求項7】
前記スペーサ(130)は、前記上部水平部(12)の底面に面接触することを特徴とする、請求項5に記載のハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段。
【請求項8】
前記垂直部(13)と対向する前記フランジ(111)の部位が面取り加工されて前記垂直部(13)と平行な平面部(111a)を有することを特徴とする、請求項
5に記載のハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段に関し、軽量鉄骨システムに適用されているキャリングバー用ハンガーとアンカーボルトとの間、又は、消防設備、通信設備、上下水道設備などの天井吊り下げシステムに適用されている配管用ハンガーとアンカーボルトとの間の締結保持手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乾式化、モジュール化が建築分野で脚光を浴びており、現代社会が直面している問題の代案として提示されている。韓国は、だんだんと高齢化が進むにつれ、専門人材を確保することが難しくなり、外国人労働者が増加する中、未熟な作業者により施工の品質は低下している。このような傾向を示す建築分野にモジュール化を導入して簡便に施工が可能なシステムを作れば、専門作業者を最小限に採用できるので、人件費が削減される。併せて、工場生産により工事品質は向上し、現場工程が最小化されるので、工期も短縮させる効果をもたらすことができる。
【0003】
このような利点のため、海外では、既にモジュラー建築がますます広がっており、韓国でも、モジュール化に関する研究が活発に進められている。建築施工現場に先端装備が多く入ってきて、直接的に人を投入する工程は減少したが、未だに専門人材の手作業に任されている工程の一つは天井工事である。天井工事は、電気配線、設備、設備配管、照明、軽量鉄骨、仕上げなどの様々な工程が重なっており、各工程が専門作業者の熟練度に依存している。そのため、天井工事において人件費が大きな比重を占めており、作業者の熟練度に応じて品質のばらつきが生じ、工程間の干渉で工期の遅延が発生することもある。
【0004】
天井工事では、通常、
図1に示されたように、そして、韓国公開特許第10-2020-0000026号公報に開示されたように、キャリングバー(carring bar)を天井に吊り下げるためにコンクリート天井に打ち込まれたアンカーボルトと、前記アンカーボルトに上端部が締結固定され、前記キャリングバーに下端が嵌合されるキャリングバー用ハンガーとが備えられている。
【0005】
また、天井工事では、通常、韓国登録特許第1687663号公報に開示されたように、消防設備、通信設備、上下水道設備などの配管(pipe)を天井に吊り下げるためにコンクリート天井に打ち込まれたアンカーボルトと、前記アンカーボルトに上端部が締結固定され、前記配管に下端が嵌合される配管用ハンガーとが備えられている。
【0006】
特に、ハンガーとアンカーボルトとの結合のために、前記ハンガーの上部水平部に貫通孔が形成されており、前記水平部を挟んで一対のナットが前記アンカーボルトに締結されるようになり、これによって、前記ハンガーが前記アンカーボルトの長手方向に移動することが防止される。
【0007】
ところが、天井に振動が発生する場合、前記ナットが前記アンカーボルトから緩みながら、前記アンカーボルトの長手方向に位置移動し、前記ハンガーも共に前記アンカーボルトの長手方向に位置移動するようになり、キャリングバーや配管がハンガーによって支持されない現象が発生するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決することに課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ハンガーの上部水平部及び上部垂直部とナットとの間に存在する空間に、前記空間を占有できるスペーサを提供することによって、上記の課題を解決することができる。
【0010】
本発明は、前記ハンガーと前記ナットが磁性材料であり、前記スペーサが磁石である場合、作業者が容易にスペーサを着脱できるようにするという観点から好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するための手段によって、天井に振動が発生しても、前記ナットが前記アンカーボルトから緩まないので、前記アンカーボルトの長手方向に前記ナットと前記ハンガーが位置移動することが抑制され、キャリングバーや配管がハンガーによって常に支持されるようにすることができる。
【0012】
また、本発明は、ハンガー及びナットが磁性を有しており、かつスペーサが磁石であるので、高所作業を行う作業者が容易にスペーサを着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来の軽量鉄骨天井システムを示す模式図である。
【
図2】本発明の実施例に係るキャリングバー用ハンガーとアンカーボルトとの間の保持手段を示す斜視図である。
【
図3】
図2の実施例の変形実施例を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施例に係る配管用ハンガーとアンカーボルトとの間の保持手段を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施例が、
図2乃至
図4を参照して詳細に説明される。
【0015】
図2には、本発明の実施例に係るキャリングバー用ハンガー10とアンカーボルト20との間の保持手段が符号100として示されている。
【0016】
前記キャリングバー用ハンガー10は、従来のように、前記アンカーボルト20が貫通する貫通孔11を備え、水平方向に延びた上部水平部12と;前記上部水平部12の一端から折り曲げられて下方に延びた垂直部13と;前記垂直部13の下端から前記上部水平部12に対向するように折り曲げられて水平方向に延びた下部水平部14と;前記下部水平部14の他端から折り曲げられて上方に延びた爪部15とを一体に含んでいる。
【0017】
前記保持手段100は、前記貫通孔11を貫通した前記アンカーボルト20に締結されて前記上部水平部12の底面に密着した状態で、前記上部水平部12と前記垂直部13の上部との間に空き空間Sが形成されるようにする大きさ及び形状を有する下部ナット110と;前記貫通孔11を貫通した前記アンカーボルト20に締結されて前記上部水平部12の上面に密着した上部ナット120と;前記垂直部13の上部及び前記下部ナット110に面接触した状態で前記空き空間Sに介在して前記下部ナット110の回転を防止するスペーサ130と、を含んでいる。
【0018】
前記下部ナット110が六角ナットであれば、前記スペーサ130を前記下部ナット110の6つの面のいずれかの面に面接触させるのに容易であるという観点から好ましい。
【0019】
また、前記スペーサ130が磁石である状態で、前記下部ナット110及び前記ハンガー10が磁性を有する場合、高所作業を行う作業者に便宜を提供できるという観点から好ましい。
【0020】
前記のように構成された保持手段100は、前記上部ナット120、前記ハンガー10及び前記下部ナット110を前記アンカーボルト20に順次貫通させた状態で、前記垂直部13、前記下部水平部14及び前記爪部15によって区画形成された空間にキャリングバー40が嵌合され得る高さレベルに合わせて、前記上部ナット120と前記下部ナット110が前記上部水平部12の上面及び底面に密着するように締め付けた後、前記スペーサ130を前記空き空間Sに挿入させる場合、前記上部ナット120と前記下部ナット110が回転することが防止されるので、天井に振動が発生しても、前記ハンガー10が常にキャリングバー40に対する結合を維持することで、キャリングバーを支持することができる。
【0021】
特に、前記スペーサ130が磁石である状態で、前記下部ナット110及び前記ハンガー10が磁性を有する場合、前記スペーサ130を前記空き空間Sに作業者が挿入させる際に、作業者が前記空き空間Sの付近にスペーサ130を把持して位置させた状態で把持を解除すると、磁力によって前記スペーサ130が前記空き空間Sに引き寄せられて装着される。
【0022】
また、スペーサ130を前記空き空間Sから離脱させる際には、前記キャリングバー40の長手方向に、図示していない道具を用いて前記スペーサ130を押し出すと、容易に前記スペーサ130が結合解除され得る。
【0023】
前記実施例において、前記スペーサ130が前記下部ナット110と前記垂直部13の上部に面接触するものとして説明されているが、本発明は、これに限定されず、前記上部水平部12の底面においても面接触し得る大きさ及び形状を有することができ、このときには、前記下部ナット110が六角ナットであれば、前記スペーサ130を前記下部ナット110の6つの面のいずれかの面に面接触させるのに容易であるという観点から好ましい。
【0024】
前記実施例において、前記スペーサ130が下部ナット110に面接触するものとして説明されているが、本発明は、これに限定されず、
図3に示されたように、上部ナット120に面接触することもできる。
【0025】
このときには、上部水平部12の他端から折り曲げられて上方に延びたブラケット片16を前記ハンガー10がさらに含んでおり、前記上部ナット120、前記ブラケット片16及び前記上部水平部12の間の空き空間S’に前記スペーサ130が介在して前記ブラケット片16及び前記上部ナット120に面接触することで、前記上部ナット120の回転を防止するようになり、さらに、このときにも、前記スペーサ130は前記上部水平部12の上面にも面接触することもできる。
【0026】
本実施例の保持手段100において、一つのスペーサ130が下部ナット110に面接触するか、または上部ナット120に面接触するものとして説明されているが、本発明は、これに限定されず、2つのスペーサが前記ハンガー10に面接触した状態で、前記下部ナット110と上部ナット120にそれぞれ面接触することもできる。
【0027】
図2及び
図3に示された保持手段100は、
図4に示されたように、第2実施例として、消防設備、通信設備、上下水道設備などの配管(pipe)を天井に吊り下げるためにコンクリート天井に打ち込まれたアンカーボルトに上部が装着された状態で、配管が下部に嵌合される配管用ハンガー10’に備えられ得る。
【0028】
前記配管用ハンガー10’は、前記キャリングバー用ハンガー10とは異なり、前記アンカーボルト20に装着されるマウント部Aと、前記マウント部Aの下端に着脱可能に結合されて配管40’をクランプするクランピング部Bとを含んでいる。
【0029】
第2実施例の保持手段100は、内周面がねじ加工されて前記アンカーボルト20に締結される管状ナット110’と;前記配管用ハンガー10’のマウント部Aの上部水平部12に形成された貫通孔11を通って前記管状ナット110’が貫通した状態で、前記配管用ハンガー10’の上部水平部12の底面が載置され得るように前記管状ナット110’の下端から拡大して形成されたフランジ111と;前記配管用ハンガー10’の上部水平部12と、前記上部水平部12の一側から折り曲げられて下方に延びた垂直部13の上部との間に形成された空き空間S”に介在して、前記垂直部13の上部及び前記フランジ111に面接触することで、前記配管用ハンガー10’の回転を防止するスペーサ130と、を含んでいる。
【0030】
前記垂直部13と対向する前記フランジ111の部位が面取り加工されて前記垂直部13と平行な平面部111aを有する場合、前記スペーサ130を前記フランジ111の平面部111aに面接触させるのに容易であるという観点から好ましい。
【0031】
また、前記スペーサ130が磁石である状態で、前記管状ナット110’及び前記配管用ハンガー10’が磁性を有する場合、高所作業を行う作業者に便宜を提供できるという観点から好ましい。
【0032】
前記のように構成された第2実施例の保持手段100は、前記配管用ハンガー10’のマウント部Aに形成された貫通孔11を通って前記管状ナット110’を貫通させ、前記マウント部Aが前記フランジ111に載置されるようにした状態で、前記クランピング部Bに前記配管40’がクランプされ得る高さレベルに合わせて、前記管状ナット110’を前記アンカーボルト20に締結した後、前記スペーサ130を前記空き空間S”に挿入させる場合、前記管状ナット110’が回転することが防止されるので、天井に振動が発生しても、前記配管用ハンガー10’が常に配管40’に対する結合を維持することで、配管40’を支持することができる。
【0033】
特に、前記スペーサ130が磁石である状態で、前記管状ナット110’及び前記配管用ハンガー10’が磁性を有する場合、前記スペーサ130を前記空き空間S”に作業者が挿入させる際に、作業者が前記空き空間S”の付近にスペーサ130を把持して位置させた状態で把持を解除すると、磁力によって前記スペーサ130が前記空き空間S”に引き寄せられて装着される。
【0034】
また、スペーサ130を前記空き空間S”から離脱させる際には、前記配管40’の長手方向に、図示していない道具を用いて前記スペーサ130を押し出すと、容易に前記スペーサ130が結合解除され得る。
【0035】
前記第1及び第2実施例において、前記スペーサ130は、前記下部ナット110、前記上部ナット120、または前記管状ナット110’のフランジ111と面接触した状態で、前記キャリングバー用ハンガー10又は前記配管用ハンガー10’の上部水平部12及び垂直部13のうちの少なくともいずれか1つに面接触し得るいかなる形状にも製造可能である。例えば、2つ以上の平面を有する円柱体、六面体、三角柱体などであってもよい。
【0036】
前記スペーサ130は、前記下部ナット110、前記上部ナット120、または前記管状ナット110’のフランジ111と面接触した状態で、前記キャリングバー用ハンガー10又は前記配管用ハンガー10’の上部水平部12及び垂直部13の両方に面接触する際には、六面体が好ましい。
【符号の説明】
【0037】
10 キャリングバー用ハンガー
10’ 配管用ハンガー
11 貫通孔
12 上部水平部
13 垂直部
14 下部水平部
15 爪部
16 ブラケット片
20 アンカーボルト
40 キャリングバー
40’ 配管
100 保持手段
110 下部ナット
110’ 管状ナット
111 フランジ
111a 平面部
120 上部ナット
130 スペーサ
A マウント部
B クランピング部
S 空き空間
S’ 空き空間
S” 空き空間