(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】宿泊施設の客室管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/12 20120101AFI20220404BHJP
G06Q 10/10 20120101ALI20220404BHJP
【FI】
G06Q50/12
G06Q10/10 344
(21)【出願番号】P 2020209519
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520498745
【氏名又は名称】株式会社コンフォール
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】三浦 春生
【審査官】山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-067509(JP,A)
【文献】特開2016-139317(JP,A)
【文献】特開2020-086736(JP,A)
【文献】特開平08-287146(JP,A)
【文献】特開2005-107594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿泊施設の部屋配置を含むフロアデータベースと、前記宿泊施設の清掃スタッフチームの作業情報を含む清掃スタッフチームデータベースとにアクセス可能な管理システムであって、
前記宿泊施設の清掃管理またはリネン類を保管している箇所に配置された既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像をネットワーク経由で、リアルタイムに取得する第1のインターフェイスと、
取得した
前記既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像を解析して得られた情報に基づき、前記フロアデータベースおよび清掃スタッフチームデータベースを参照して清掃スケジュールを立案する清掃管理ユニットと、
立案された清掃スケジュールに関する情報を、ネットワーク経由で、清掃中または清掃終了後の前記清掃スタッフチームの端末に伝達する第2のインターフェイスとを有
し、前記第2のインターフェイスは、前記取得した既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像を送信する機能を含む、管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記清掃スタッフチームデータベースの前記作業情報は、清掃スタッフチーム毎の作業中の位置に関する情報を含み、
前記清掃管理ユニットは、前記取得した
既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像に示される清掃を要する部屋と前記作業中の位置とを参照して、清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュールを立案する機能を含む、管理システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記清掃スタッフチームデータベースの前記作業情報は、清掃スタッフチーム毎の過去の作業実績に関する情報を含み、
前記清掃管理ユニットは、前記取得した
既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像に示される清掃を要する部屋と前記作業中の位置とに加え、前記作業実績を参照して、清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュールを立案する機能を含む、管理システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記清掃スタッフチームデータベースの前記作業情報は、清掃スタッフチーム毎の作業中の位置に関する情報および過去の作業実績に関する情報を含み、
前記清掃管理ユニットは、各フロアの清掃を要する部屋の配置および/または数と、清掃スタッフチームの作業中の位置および作業実績とに基づき最適な清掃スケジュールを立案するように機械学習した学習モデルにより、前記取得した
既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像に示される清掃を要する部屋と前記清掃スタッフチームデータベースの前記作業情報とにより清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュールを立案する機能を含む、管理システム。
【請求項5】
請求項1ないし
4のいずれかにおいて、
前記清掃スタッフチームの端末に伝達する前記立案された清掃スケジュールに関する情報は、清掃スタッフチーム毎の清掃が委託される複数の部屋に関する情報を含む、管理システム。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれかにおいて、
清掃作業後の検査結果を検査員の端末から、ネットワーク経由で取得する第3のインターフェイスと、
取得した検査結果を前記清掃スタッフチームデータベースの作業情報に追加する清掃スタッフ管理ユニットとを有する、管理システム。
【請求項7】
宿泊施設の部屋配置を含むフロアデータベースと、前記宿泊施設の清掃スタッフチームの作業情報を含む清掃スタッフチームデータベースとにアクセス可能な管理システムを用いた管理方法であって、
前記管理システムは、前記宿泊施設の清掃管理またはリネン類を保管している箇所に配置された既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像をネットワーク経由で、リアルタイムに取得する第1のインターフェイスを有し、
当該管理方法は、
前記管理システムが、取得した
前記既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像を解析して得られた情報に基づき、前記フロアデータベースおよび清掃スタッフチームデータベースを参照して清掃スケジュールを立案することと、
立案された清掃スケジュールに関する情報を、ネットワーク経由で、清掃中または清掃終了後の前記清掃スタッフチームの端末に伝達することとを有
し、
前記清掃スタッフチームの端末に伝達することは、前記取得した既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像を送信することを含む、管理方法。
【請求項8】
請求項
7において、
前記清掃スタッフチームデータベースの前記作業情報は、清掃スタッフチーム毎の作業中の位置に関する情報を含み、
前記立案することは、前記取得した
既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像に示される清掃を要する部屋と前記作業中の位置とを参照して、清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュールを立案することを含む、管理方法。
【請求項9】
請求項
8において、
前記清掃スタッフチームデータベースの前記作業情報は、清掃スタッフチーム毎の過去の作業実績に関する情報を含み、
前記立案することは、前記取得した
既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像に示される清掃を要する部屋と前記作業中の位置とに加え、前記作業実績を参照して、清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュールを立案することを含む、管理方法。
【請求項10】
請求項
7において、
前記清掃スタッフチームデータベースの前記作業情報は、清掃スタッフチーム毎の作業中の位置に関する情報および過去の作業実績に関する情報を含み、
前記立案することは、各フロアの清掃を要する部屋の配置および/または数と、清掃スタッフチームの作業中の位置および作業実績とに基づき最適な清掃スケジュールを立案するように機械学習した学習モデルにより、前記取得した
既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像に示される清掃を要する部屋と前記清掃スタッフチームデータベースの前記作業情報とにより清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュールを立案することを含む、管理方法。
【請求項11】
請求項
7ないし10のいずれかにおいて、
清掃作業後の検査結果を検査員の端末から、ネットワーク経由で取得することと、
取得した検査結果を前記清掃スタッフチームデータベースの作業情報に追加することとを有する、管理方法。
【請求項12】
ネットワークにアクセス可能なコンピュータを、請求項1ないし
6のいずれかに記載の管理システムとして機能させる命令を有するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホテル、旅館、病院などの宿泊を伴う施設の部屋(客室)を管理するシステムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ホテル等で客室の利用状況や清掃作業等を管理する装置において、フロントから作業者への清掃等の作業指令及び作業者からフロントへの作業完了報告を効率よく行うことができるようにする装置が開示されている。この客室管理装置は、フロントカウンタに設置されたフロント用制御器と、各客室フロアのリネン室に設置されたリネン用制御器と、これら各制御器間の通信を制御する通信制御器とを備え、フロント用制御器から各リネン用制御器に清掃作業指令を送信して、作業者にチェックアウト後の客室の清掃指令を表示させ、作業者からリネン用制御器に清掃完了報告が入力されると、その旨をフロント用制御器に送信して、フロント側で清掃完了を検知できるようにした管理装置であり、各リネン用制御器に、無線通信可能な子器を設け、子器を介して、清掃指示及び清掃完了入力を行えるようにしている。ホテルでの客室清掃作業等の業務効率を向上することができるフロア管理システムを提供する。
【0003】
特許文献2には、多層階のビルの各フロアの管理用のシステムにおいて、複数のハンディターミナルと、各フロアの所定の範囲についてハンディターミナルと送受信を行う複数の無線送受信器と、無線送受信器を統合して制御するコントローラとから構成され、コントローラに備えられた各フロア毎の管理テーブルの情報に基づいて、該当フロアのハンディターミナルに各客室の空き状態等の所定のデータを送信して表示させるように構成することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、チェック及びメンテナンスを事前に計画することが困難であり、ホテルの客室のように多数の異なる管理対象箇所における状態を一覧状態で進捗状況を把握でき、点検管理を適切に行うことができる手段を提供することが記載されている。この客室点検管理システムは、端末がインターネットを介してサーバに接続され、点検日入力手段、点検指示内容入力手段、点検項目実施完了日入力手段及び管理対象一覧表示手段を有すると共に、点検日、点検指示内容及び点検項目実施完了日を記録するデータベースを有し、前記端末の画面に、管理対象一覧表示画面を表示し、該管理対象一覧表示画面において、管理対象である管理区分毎に、設備の点検日及び点検項目実施完了日を表示すると共に点検が実施されていない設定期間に応じて点検日を区別して表示することで進捗状況を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平5-92860号公報
【文献】特開平8-287146号公報
【文献】特開2016-38823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホテルなどの宿泊施設において、客室の清掃は必須の業務であり、リネン室などに、清掃スタッフに対し清掃を指示するために部屋の空き状況などを示す表示盤(制御盤)が設置されていることが多い。表示盤(ルームインジケータ)は、ホテルなど宿泊施設の電話交換機に接続されたホテル所有の装置であることが多い。したがって、ルームインジケータを含む館内のシステムを刷新してデジタル化し、清掃スタッフの端末と連携させることは可能であるとしても、ホテル側がその費用を負担することは容易ではない。さらに、昨今、清掃コストのホテル側の負担を軽減するために、清掃業務を外部の請負企業に外注するケースが多く、清掃を含めた客室管理システムの改造のために費用投資をするホテルは少ないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、宿泊施設の部屋配置を含むフロアデータベースと、宿泊施設の清掃スタッフチームの作業情報を含む清掃スタッフチームデータベースとにアクセス可能な管理システムである。この管理システムは、宿泊施設の清掃管理またはリネン類を保管している箇所に配置された既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像をネットワーク経由で、リアルタイムに取得する第1のインターフェイスと、取得した画像を解析して得られた情報に基づき、フロアデータベースおよび清掃スタッフチームデータベースを参照して清掃スケジュールを立案する清掃管理ユニットと、立案された清掃スケジュールに関する情報を、ネットワーク経由で、清掃中または清掃終了後の清掃スタッフチームの端末に伝達する第2のインターフェイスとを有する。WEBカメラなどにより既存のルームインジケータの盤面を撮像して、リアルタイムで、インターネットまたは他のコンピュータネットワークを介して、その画像を取得することにより、既存の客室管理システムとは独立した管理システムを、既存の客室管理システムを改造することなく、さらに、ネットワーク上(クラウド上)に構築することができる。また、取得した画像を解析することにより、クラウド上のシステムで、ルームインジケータに表示された情報をデジタル化することができ、それに基づき立案された清掃スケジュールに関する情報を清掃スタッフチームにネットワーク経由で配信することにより、ホテルなどの宿泊施設内のシステムとは独立したクラウド上のシステムを用いて、その宿泊施設の清掃作業等の業務効率を向上することができる管理システムを提供できる。
【0008】
清掃スタッフチームデータベースの作業情報は、清掃スタッフチーム毎の作業中の位置に関する情報を含み、清掃管理ユニットは、取得した画像に示される清掃を要する部屋と作業中の位置とを参照して、清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュールを立案する機能を含んでもよい。清掃スタッフチームの清掃作業間の移動による損失を抑制できる。清掃スタッフチームデータベースの作業情報は、清掃スタッフチーム毎の過去の作業実績に関する情報を含み、清掃管理ユニットは、取得した画像に示される清掃を要する部屋と作業中の位置とに加え、作業実績を参照して、清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュールを立案する機能を含んでもよい。作業実績として示される清掃スタッフの熟練度などによる作業効率を考慮して清掃スタッフ毎の作業量を調整することが可能であり、効率が良く、品質も高い清掃サービスを提供する管理システムを提供できる。
【0009】
清掃スタッフチームデータベースの作業情報は、清掃スタッフチーム毎の作業中の位置に関する情報および過去の作業実績に関する情報を含み、清掃管理ユニットは、各フロアの清掃を要する部屋の配置および/または数と、清掃スタッフチームの作業中の位置および作業実績とに基づき最適な清掃スケジュールを立案するように機械学習した学習モデルにより、取得した画像に示される清掃を要する部屋と清掃スタッフチームデータベースの作業情報とにより清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュールを立案してもよい。
【0010】
第2のインターフェイスは、取得した画像を送信する機能を含んでもよく、清掃スタッフチームがルームインジケータの盤面を随時確認できるようにしてもよい。清掃スタッフチームの端末に伝達する立案された清掃スケジュールに関する情報は、清掃スタッフチーム毎に清掃が委託される複数の部屋(清掃候補の複数の部屋)に関する情報を含んでもよい。清掃スタッフチームが現場で短期的な清掃スケジュールをフレキシブルに判断できるようにしてもよい。
【0011】
管理システムは、清掃作業後の検査結果を検査員の端末から、ネットワーク経由で取得する第3のインターフェイスと、取得した検査結果を清掃スタッフチームデータベースの作業情報に追加する清掃スタッフ管理ユニットとを有してもよい。清掃スタッフチームの作業実績を随時更新でき、最適な清掃スケジュールを立案できる。
【0012】
本発明の他の態様の1つは、宿泊施設の部屋配置を含むフロアデータベースと、前記宿泊施設の清掃スタッフチームの作業情報を含む清掃スタッフチームデータベースとにアクセス可能な管理システムを用いた管理方法である。管理システムは、宿泊施設の清掃管理またはリネン類を保管している箇所に配置された既存のルームインジケータの盤面を撮像した画像をネットワーク経由で、リアルタイムに取得する第1のインターフェイスを有し、当該管理方法は、管理システムが、取得した画像を解析して得られた情報に基づき、フロアデータベースおよび清掃スタッフチームデータベースを参照して清掃スケジュールを立案することと、立案された清掃スケジュールに関する情報を、ネットワーク経由で、清掃中または清掃終了後の清掃スタッフチームの端末に伝達することとを有する。
【0013】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、ネットワークにアクセス可能なコンピュータを上記の管理システムとして機能させる命令を有するプログラム(プログラム製品)である。プログラムは、コンピュータが読み取り可能な適当な記録媒体に記録して提供してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ホテル管理システムの概要を示すブロック図。
【
図6】清掃管理システムの処理の概要を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、清掃管理システムを含むホテル管理システムの一例を示している。ホテル管理システム1は、ホテル6内の客室管理システム5と、客室管理システム5の出力を、ウェブカメラ19を介して取得する清掃管理システム10とを含む。客室管理システム5は、ホテル6のフロントなどに設置される管理端末2と、各フロアのリネン室3などに設置されるルームインジケータ4とを含む。ルームインジケータ4は、例えば、ホテルの電話交換機に接続されたホテル所有の装置であり、各部屋(各客室)の状態を目視するだけのアナログな装置である。ルームインジケータ4は、従来、各フロアの清掃を管理するための場所あるいは部屋、典型的にはリネン類(シーツ、枕カバー、タオルなど)を保管する部屋(リネン室、リネン庫)3に配置され、各フロアの各客室の状況、すなわち、在室、清掃中、未使用などが表示されるようになっている。従来、リネン庫3は、ホテルの清掃スタッフの待機場所、アメニティ備品、清掃道具を保管する場所として利用され、リネン庫のルームインジケータ4によって、在室、退出(清掃中)等の各部屋の状態が表示されている。清掃スタッフはリネン庫3にあるルームインジケータ4を見て、清掃可能な部屋を特定し清掃作業を行う。
【0016】
そのため、清掃スタッフは、清掃が終わるごとに次の清掃可能な部屋を確認するためにルームインジケータ4のあるリネン庫3に戻る必要がある。広大な敷地に建つリゾートホテルでは、リネン庫3から部屋まで100m以上離れている場合もあり極めて非効率な時間が発生する。また、ホテル清掃は典型的な労働集約産業であり、機械化も進んでいない。そのため、清掃品質や生産性は、清掃スタッフチームの各清掃員と、清掃スタッフチームを率いるフロアチーフのヒューマンスキルに託されている。人による作業は各々の特性により大きく左右され、人材配置やチーム編成により作業のムラが大きい場合がある。
【0017】
ホテル6の管理システム5を、ルームインジケータ4の状態をデジタルデータ化して、清掃スタッフチームの端末と連携するシステムを構築し直す場合、ホテル規模にもよるが、数百万~数千万という電話交換機の改造費用をホテル側が負担する必要がある。近年、ホテルの清掃作業は、専門の請負企業に発注されることが多く、このようなケースでは、ホテルがシステムの改善のために費用投資することは多くはない。
【0018】
清掃管理システム10を含む本例のホテル管理システム1においては、ホテル側の管理システム5を改造することなく、上記のいくつかの問題を解決し、さらに、ホテル側においても、客室の状況が把握しやすい環境を提供する。すなわち、清掃管理システム10は、IoTの活用技術により、ホテル側(発注者)では一切の改造に係る費用投資をすることがなく、例えば、清掃を請け負う側でWebカメラと通信回線を用意し、クラウド上で画像解析等のシステムを構築する。この清掃管理システム10により、ホテルとホテル利用者の利便性とサービスの向上を図ることができ、清掃の請負企業も作業効率を飛躍的に向上できる。このため、ホテル、ホテル利用者、および清掃などのメンテナンスを提供する業者など複数の側に導入のメリットを提供できる。
【0019】
清掃管理システム10は、ホテル6などの宿泊施設の部屋配置を含むフロアデータベース(フロアDB)21と、宿泊施設の清掃スタッフチームの作業情報を含む清掃スタッフチームデータベース(チームDB)22とにアクセス可能な管理システムである。清掃管理システム10は、宿泊施設の清掃管理またはリネン類を保管している箇所、典型的にはリネン室3に配置された既存のルームインジケータ4の盤面4aをWebカメラ19により撮像した画像15をネットワーク9経由で、リアルタイムに取得する第1のインターフェイス11と、取得した画像15を解析して得られた情報に基づき、フロアDB21およびチームDB22を参照して清掃スケジュール16を立案する清掃管理ユニット30と、立案された清掃スケジュールに関する情報16を、ネットワーク9経由で、清掃中または清掃終了後の清掃スタッフチーム60の端末61に伝達する第2のインターフェイス12とを有する。
【0020】
清掃管理システム10の管理対象となる宿泊施設はホテル6に限定されることはなく、旅館、リゾートと称される他の宿泊を目的とした施設であってもよく、病院などのように宿泊を伴う施設であってもよい。フロアDB21は、客室がフロア単位で集約された施設のフロア単位の部屋配置を含んでいてもよく、敷地内に点在する客室棟あるいは建物の配置を含んでいてもよい。清掃スタッフチームデータベース(チームDB)21は、複数の清掃スタッフからなるチームの構成、経験、作業実績を含んでいてもよく、チームを構成する清掃スタッフ毎の経歴、経験、作業実績などを含んでいてもよい。
【0021】
清掃管理システム10は、典型的には、インターネット9などのコンピュータネットワークに接続できるコンピュータ資源、例えば、サーバ28により構築され、サーバ28にアクセス可能な記録媒体(ストレージ)20に格納されたプログラム(プログラム製品)29をロードすることにより清掃管理システム10として機能する。プログラム29は、コンピュータ(サーバ)28を清掃管理システム10として機能させるための命令を含む。清掃管理システム10は、ホテル6の内部に設置され、ホテル内のコンピュータネットワークにアクセスできるものであってもよい。一方、清掃管理システム10は、インターネット9などの汎用コンピュータネットワーク(クラウド)に接続されるものであってもよく、ホテル6の外部、例えば、清掃業務を提供する管理会社に配置されていてもよく、第三者が提供するクラウドサービス上に構築されてもよい。本システム1において、インターネット9と接続される様々な端末、サーバ、機器などは、有線LANでインターネット9に接続されてもよく、無線LAN、携帯電話網などの無線通信を介してインターネット9に接続されてもよい。
【0022】
サーバ28は、フロアDB21、チームDB22など、以降において説明するいくつかのデータベースを格納したストレージ20を備えていてもよい。また、これらのDB21および22を含めて、清掃管理システム10が参照する情報は、クラウド上に分散した他のサーバに格納されているものであってもよい。
【0023】
清掃管理システム10は、リネン室3に設置されたWebカメラ19によりリアルタイムで送信される画像15を解析する画像解析ユニット(画像解析装置)40を含む。画像解析ユニット40は、ネットワーク9を介して得られたルームインジケータ4の盤面4aの画像15を解析し、各フロアの部屋状況を示す情報41を取得し、さらに、各部屋の状況を示すデータ(部屋情報)42を取得する。画像解析には、所定のプログラムを用いてもよく、盤面4aの画像情報と、それに基づく部屋情報とを事前に機械学習した学習モデル(人工知能、AI)を用いて、リアルタイムで部屋情報42を取得してもよい。各フロアの部屋情報42は纏められてホテル単位の部屋情報(部屋管理情報、部屋管理一次情報)43が生成されてもよい。部屋情報43は、部屋管理DB28に格納されてもよい。なお、本明細書においてリアルタイムとは、時間遅れが全くない状態を示すものではなく、清掃作業に無駄な遅延が発生しない程度の適当な時間間隔で画像15が得られればく、数秒または数10秒間隔でアップデートされる情報であってもよい。
【0024】
ホテル6に設置されたインジケーター4は、多くの場合フロントシステム2と連動されており、お客様がチェックアウトの手続きを行うことで、リネン庫3や控室に設置された表示盤4の色や点滅が変わる仕組みになっている。その上で、客室に設置された内線電話を清掃員が操作し、「清掃中」や「清掃完了」の状態を発信することで、インジケーター4を操作する仕組みである。例えば、緑色は清掃指示(チェックアウト済み)、赤色は在室、緑点滅は低速点滅が清掃中、高速点滅がインスペクション中、点灯が清掃済みを示す。画像解析ユニット40は、Webカメラ19から送信されたインジケーター4の映像15を、フレーム毎に画像解析を行う。例えば、撮影した画像15の中のインジケーター4上の座標軸を予め設定し、その上で、一定のフレームで画像を取得しクラウド上で解析することで、部屋ごとの色や点滅速度のデータを取得することができる。取得したデータをもとに、清掃に必要な部屋情報43へ変換する。部屋情報43には、部屋ごとの在室状況、部屋ごとの清掃状況(清掃中、インスペクション中、清掃完了)、部屋ごとのアウト時間、各作業に要した時間を含めてもよい。
【0025】
清掃管理システム10の清掃管理ユニット(清掃指示ユニット、清掃指示装置)30は、部屋情報42に基づいて各清掃スタッフチーム(清掃スタッフ、清掃チーム)60の清掃スケジュール16を立案する。清掃スケジュールあるいは清掃スケジュールに関する情報16は、各清掃チーム60が順番に清掃を行う対象の部屋を順番に示す情報であってもよく、各清掃チーム60に清掃が委託される部屋(次の清掃作業の候補となる部屋)の情報であってもよい。各清掃チーム60は、委託された部屋の中から、チームの状況、現場の状況、などに合わせて次の清掃作業を行う部屋を選択してもよい。
【0026】
チームDB22の作業情報(実績管理情報)22aは、清掃スタッフチーム毎の作業中の位置に関する情報を含んでもよく、清掃管理ユニット30は、取得した画像15から得られた部屋情報43に基づき、清掃を要する部屋と作業中の位置とを参照して、清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュール16を立案する機能31を含んでもよい。この機能31は所定のアルゴリズムまたは関数を用いたり、過去に立案された清掃スケジュールを参照して定めるエキスパート機能を備えたものであってもよい。作業中または作業が終了した清掃チーム60に近い位置の清掃可能な部屋の情報42を提供することにより、清掃チーム60の無駄な動きを抑制でき、清掃作業の時間的な損失を抑制でき、清掃チーム60の労力を軽減できる。
【0027】
チームDB22の作業情報(実績管理情報)22aは、清掃スタッフチーム毎の過去の作業実績に関する情報を含んでもよく、清掃管理ユニット30は、取得した画像15から得られた部屋情報43に基づき、清掃を要する部屋と作業中の位置とに加え、作業実績を参照して、清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュール16を立案する機能32を含んでもよい。作業実績に基づき、清掃チーム60が担当する部屋のサイズや、数を適宜選択することにより、複数の清掃チーム60でフロアの客室を効率的に、無理なく清掃する清掃スケジュール16を立案し、各チーム60に端末61を介して指示することができる。この立案した清掃スケジュール16は、清掃指示データベース(清掃指示DB)24に格納し、その後に得られる清掃完了の情報やインスペクションの情報に基づいてチームDB22の実績管理情報22aに反映されるようにしてもよい。
【0028】
清掃管理システム10は、各フロアの清掃を要する部屋の配置および/または数と、清掃スタッフチームの作業中の位置および作業実績とに基づき最適な清掃スケジュールを立案するように機械学習した学習モデル(人工知能、AI)35を備えていてもよく、清掃管理ユニット30は、取得した画像15から得られた部屋情報43に基づき、清掃を要する部屋と、チームDB22の作業情報22aとからAI35により、清掃スタッフチーム毎の清掃スケジュール16を立案する機能33を含んでいてもよい。事前に最適な清掃スケジュール16を立案するように機械学習したAI35を用いることにより、様々な条件で最適な清掃スケジュール16を立案し、各清掃スタッフチーム60に端末61を用いて指示することができる。
【0029】
図2に、清掃スタッフチーム60の端末61に表示される清掃スケジュール16に関する情報の一例を示している。
図2(a)は、清掃開始部屋を選択する画像であり、清掃チーム60のリーダーは、最初に清掃する部屋16aをリストから選択する。この情報16aは、清掃管理システム10にフィードバックされ、これにより、各清掃チームの現在地を取得することができる。
【0030】
図2(b)は自動清掃指示中の表示の一例であり、取得したチームの位置情報と空き部屋情報をもとに、近い順番で空き部屋を最大5件表示する。この画面は一定時間で自動更新されるため、リアルタイムで次の清掃部屋を指示することができる。
図2(c)も自動清掃指示中の表示の一例であり、最新のインジケーター情報を取得し、リアルタイムで指示を行う。清掃部屋をタッチし任意で清掃順を変更することも可能である。清掃チーム60の端末61へ立案された清掃スケジュール16を送信する第2のインターフェイス12は、インジケーターの画像15を端末61へ送信する機能を含んでもよく、清掃チーム60は、実際のインジケーター4の状況を画像として閲覧することができる。これらの表示は、一定時間で自動更新される。
【0031】
清掃管理システム10は、さらに、清掃チーム60の端末61から清掃管理システム10へフィードバックされた情報に基づき、客室情報43を更新して、最新の客室管理情報18を生成するルーム管理ユニット(ルーム管理装置)39を含む。ルーム管理ユニット39は、部屋管理DB28の情報を更新し、また、第4のインターフェイス14を介して客室管理情報18を、その情報を要求する管理端末69および検査員65の端末66に送信する。管理端末69の一例は、ホテルのフロントに配置される管理端末69であり、ホテル側の管理システム5の情報に、清掃管理システム10が把握した最新の情報を加えた管理情報18が表示される。ホテル側は、管理システム5を操作することにより、その情報はインジケーター4の画像データ15を介して清掃管理システム10に送信され、清掃管理システム10に生成される管理情報18に反映される。したがって、ホテル側は、清掃管理システム10に接続された管理端末69により、清掃チーム60による清掃作業の状態を含めた情報を取得することができる。また、清掃チーム60は、内線電話などでフロントに清掃状況を伝えなくても端末61を操作することによりフロントに清掃状況を伝えることができる。
【0032】
図3に管理情報18を端末66または69に表示した例を示している。管理情報18は、全てのフロアの客室の情報を集約して表示することができ、清掃作業の進捗状態を含めて、部屋毎のステイタス状態を表示し、それを確認することができる。また、管理情報18に清掃チーム60の情報を含めることも可能であり、管理画面の一部として、全体およびチーム毎の清掃進捗率を可視化することも可能である。
【0033】
図4に、管理情報18として画面に表示される各ステイタスの例を示している。
図4(a)の表示18aは、「在室」でお客様がまだチェックアウトしていない状態を示す。
図4(b)の表示18bは、「清掃指示」でチェックアウトしており清掃可能な状態を示す。
図4(c)の表示18cは「清掃中」で作業員(清掃チーム)が入室し清掃している状態を示す。
図4(d)の表示18dは「未使用」で清掃および検査が完了して使用されていない状態を示す。「清掃完了」のステイタスを追加してもよい。
図4(e)の表示18eは、清掃作業は終了しており、インスペクション(検査)が可能な状態を示す。ステイタスは清掃中であるが、部屋番号表示の右上に「INSP」マークが表示される。このマークをもとに、検査員65が清掃後のインスペクションを行う。
【0034】
清掃管理システム10は、さらに、清掃作業後の検査結果17を検査員65の端末66から、ネットワーク9経由で取得する第3のインターフェイス13と、取得した検査結果17を、インスペクションDB23に格納する検査管理ユニット(インスペクション管理ユニット、検査管理装置)37を含んでいてもよい。検査管理ユニット37は、ネットワーク9を介して取得した検査結果17を、清掃スタッフチームデータベース(チームDB)22の作業情報に追加する清掃スタッフ管理ユニットとしての機能を含む。
【0035】
図5に検査員65の端末66に表示される進捗確認画面66aの一例を示す。この確認画面に沿って検査員65がチェック項目を入力することにより、検査結果17が生成され、ネットワーク9を介して清掃管理システム10へフィードバックされる。検査員65が、端末66に表示される管理情報18の中の、インスペクション可能部屋をタッチすると、部屋ごとのインスペクションチェック画面66aに移行する。このインスペクションチェック画面66aでは、ホテルの基準に合わせ予め設定したチェック項目が表示される。インスペクター65は、各項目を確認しながらチェックボックスに入力を行う。検査結果17は、清掃管理システム10においてインスペクションDB23に履歴として蓄積され、関連スタッフは、インスペクション履歴画面で参照することができる。
【0036】
図6に、清掃管理システム10における処理の一例をフローチャートにより示している。ステップ81において、第1のインターフェイス11を介してルームインジケータ4の盤面4aの画像情報15を、ネットワーク9を介して取得し、ステップ82において画像解析ユニット40によりインジケーター4の画像15から客室情報43を取得する。ステップ83において、ルーム管理ユニット39が客室情報43に基づいて客室管理情報18を更新する。ステップ84において、清掃管理ユニット30が、客室管理情報18の清掃を要する部屋の情報と、フロアDB21およびチームDB22との情報に基づいて清掃スケジュール16を立案または更新する。清掃管理ユニット30は、AI35を用いて清掃スケジュール16を立案してもよい。ステップ85において、第2のインターフェイス12により、ネットワーク9を介して、各清掃チーム60の端末61へ各清掃チーム60に対して立案した清掃スケジュール16を送信する。ステップ86において、清掃チーム60の端末61から清掃状況がフィードバックされると、ステップ87において、ルーム管理ユニット39は、客室管理情報18をアップデートして、管理端末69などにネットワーク9を介して配信する。ステップ88において、検査員65の端末66から検査情報(インスペクション情報)17を受信すると、インスペクション管理ユニット37は、ステップ89において、検査情報17によりインスペクションDB23およびチームDB22の情報を更新する。
【0037】
日本全体の宿泊市場の規模は年々大きくなっている。このため、ホテル清掃を受託するビルメンテナンス業者などの請負業者は、人手確保と同時にオペレーションの改革による生産性の向上が喫緊の課題となっている。人手不足に悩む同業他社、および自前で清掃員を雇用しているホテルなどの宿泊業者に対し、上記の清掃管理システム10を提供することにより、清掃作業の効率を大幅に向上することが可能となり、清掃コストの低減と、清掃スタッフの労力の低減との両立を図ることができる。
【0038】
さらに、清掃完了後は、品質インスペクター65のタブレット66に、完了した部屋のチェックリストが表示され、チェックリストにしたがい、品質チェック確認を行うことができる。検査情報17としては、チェックリストだけではなく、チェック前写真とチェック完了写真をインスペクション管理DB23に画像(写真)として送信し蓄積することが可能であり、将来は機械学習を行ったAIを用いて清掃の品質向上に活用することも可能となる。
【0039】
さらに、清掃実績は、チームDB22およびインスペクションDB23に蓄積されるので、各清掃チームあるいは清掃チームを構成する各スタッフの単位で、作業能力および実績を可視化することが可能となる。このため、清掃スタッフの評価を客観的に行えるとともに、その評価に基づいて清掃スケジュールを最適化したり、評価に値するフィードバックをスタッフにもたらすことも可能となる。さらに、この清掃管理システム10は、清掃チームの動線などのデータを組み合わせた「最適な清掃ルートの自動指示」や、紙ベースで蓄積されたデータのデジタル化、清掃完了写真の蓄積とそれを踏まえた機械学習による「オペレーション・品質管理のAI化」、スマートスピーカーによる「システムの多言語化」など多岐に渡る将来的な機能の追加が可能であり、日本のみならず、今後、宿泊施設のサービス向上が望まれる諸外国においても有用である。
【符号の説明】
【0040】
10 清掃管理システム
【要約】
【課題】清掃作業の効率を向上できるシステムを提供する。
【解決手段】宿泊施設の部屋配置を含むフロアDB21と、宿泊施設の清掃スタッフチームの作業情報を含むチームDB22とにアクセス可能な管理システム10を提供する。管理システム10は、リネン室3などに配置された既存のルームインジケータ4の盤面4aを撮像した画像15をネットワーク9経由で、リアルタイムに取得する第1のインターフェイス11と、取得した画像を解析して得られた情報に基づき清掃スケジュール16を立案する清掃管理ユニット30と、立案された清掃スケジュールに関する情報を、ネットワーク経由で、清掃スタッフチームの端末61に伝達する第2のインターフェイス12とを有する。
【選択図】
図1