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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/67 20060101AFI20220404BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20220404BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220404BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220404BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G05F1/67
H02M3/00 H
H02J3/38 150
H02J3/32
H02J7/35
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021027764
(22)【出願日】2021-02-24
(62)【分割の表示】P 2017063193の分割
【原出願日】2017-03-28
(65)【公開番号】P2021093193
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 稔
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-221959(JP,A)
【文献】特開2013-090460(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035801(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0159506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/67
H02M 3/00
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、
複数のサブシステムと、
を備え、
前記複数のサブシステムのうちの1つがCC(定電流)モードで制御され、
前記複数のサブシステムは、前記太陽電池に並列に直接接続され、
前記複数のサブシステムの各々は、電力変換装置とバッテリ又は負荷を含み、
前記電力変換装置は、制御部を備え、前記太陽電池の出力電圧を変換して前記バッテリ又は負荷側へ出力し、
CCモードの前記サブシステムの前記電力変換装置の前記制御部は、
CCモードの前記サブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させるか、又は変化させない処理を行った際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定し、
前記太陽電池の出力電力の増減の判定結果と、前記電力変換装置の出力側電流の定電流制御目標値に対する大小に基づいて、デューティー比を変化させるか、又は変化させない、
制御を繰り返し行う電力制御システム。
【請求項2】
前記複数のサブシステムに対して制御モードを指示する統合制御装置を更に含み、
前記複数のサブシステムのうちの1つの前記制御部は、前記統合制御装置からCCモードの指示を受信すると、前記制御を繰り返し行う請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記電力変換装置は、双方向DC/DCコンバータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
太陽電池と、
複数のサブシステムと、
を備え、
前記複数のサブシステムのうちの1つがCC(定電流)モードで制御され、
前記複数のサブシステムは、前記太陽電池に並列に直接接続され、
前記複数のサブシステムの各々は、電力変換装置とバッテリ又は負荷を含み、
前記電力変換装置は、制御部を備え、前記太陽電池の出力電圧を変換して前記サブシステム側へ出力する、
電力制御システムにおける電力制御方法であって、
CCモードの前記サブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させるか、又は変化させない処理を行った際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定するステップと、
前記太陽電池の出力電力の増減の判定結果と、前記電力変換装置の出力側電流の定電流制御目標値に対する大小に基づいて、デューティー比を変化させるか、又は変化させないステップと、
を繰り返し行う電力制御方法。
【請求項5】
前記複数のサブシステムに対して制御モードを指示する統合制御装置を更に含み、
前記複数のサブシステムの1つの前記制御部が、前記統合制御装置からCCモードの指示を受信すると、すべての前記ステップを繰り返し行う請求項4に記載の電力制御方法。
【請求項6】
少なくとも1つの前記電力変換装置は、双方向DC/DCコンバータであることを特徴とする請求項4又は5に記載の電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システムに関するものであり、より詳細には、電源、負荷、コンバータ等を備えるサブシステムを複数備える電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートハウスやスマートシティなど太陽光発電等の分散電源を統合的に制御するシステムとして、HEMS (Home Energy Management System)やBEMS (Building Energy Management System)等が知られている(下記特許文献1、2等参照)。これらのシステムでは、分散電源に対して1対の電力変換装置(コンバー夕、インバータ等)を接続し、それらを統合制御することで、効率的な電力の運用を提供する。
【0003】
これらのシステムにおいては、上述のように、分散電源に対して1対の電力変換装置を接続することが前提で構成されているので、電力源(太陽電池パネル等)の規模に応じて、パワーコンディショナーと呼ばれる電力変換装置の規模が大きくなる。例えば、従来から集中電源を採用している人工衛星等の宇宙機にこのようなシステムの分散電源を適用すると、電力変換装置の規模は2倍程度になり、実用的ではない。
【0004】
そこで、電力源の電力制御を、負荷側に接続されるサブシステムの電力変換装置で行うことで、電力源に接続される電力変換装置を不要とするシステムを本発明者らは提案した(非特許文献1)。
【0005】
本発明者らが提案したシステムにおいては、電力源に接続される電力変換装置が不要になることで、システムの大幅な簡略化と、それに伴うコスト低減が可能となった。また、システム構築後の電力源及び負荷機器の電力規模をフレキシブルに変更することが可能となった。
【0006】
このシステムにおいては、MPPT(最大電力追尾)制御に従来から広く利用されている山登り法を適用すると、サブシステム間で制御の干渉が生じ、MPPT制御が正確に行えなかった。そのため、サブシステム間での制御の干渉を低減するために、MPPT制御を行っているサブシステムの制御周波数と、CC(定電流)制御を行っているサブシステムの制御周波数を異なる制御周波数とすることを本発明者らは提案した(非特許文献1)。具体的には、MPPT制御の制御周波数を100Hzとしたまま、CC制御の制御周波数を10Hzとすることによって、サブシステム間での制御の干渉を回避することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-20488号公報
【文献】特開2013-41723号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】岩佐稔、内藤均、艸分宏昌,“分散協調制御を適用した宇宙機電源システムの研究”,電子情報通信学会技術研究報告 EE 電子通信エネルギー技術,一般社団法人電子情報通信学会,2016年1月21日,第115巻,第429号,pp.115-120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、サブシステムの制御周波数を小さくすることは、過渡応答特性を悪化させる要因となる。
【0010】
そこで、本発明は、サブシステムの制御周波数を小さくすることなく、サブシステム間での制御の干渉を抑制する電力制御システムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、太陽電池と複数のサブシステムとを備え、前記複数のサブシステムのうちの第1のサブシステムがMPPT(最大電力追尾)モードで制御され、前記複数のサブシステムは、前記太陽電池に並列に直接接続され、前記複数のサブシステムの各々は、電力変換装置とバッテリ又は負荷を含み、前記電力変換装置は、制御部を備え、前記太陽電池の出力電圧を変換して前記サブシステム側へ出力し、前記第1のサブシステムの前記電力変換装置の前記制御部は、前記第1のサブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させた際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定し、前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するのかを判定し、前記太陽電池の動作点の位置が、前記デューティー比を変化させた前後で、前記低電圧側から前記高電圧側に、又は前記高電圧側から前記低電圧側に変わった場合、前回補正制御を行ったか否かに対応する補正制御情報、及び、前記太陽電池の出力電力の増減の判定において、複数回連続で前記太陽電池の出力電力が減少したと判定されたか否かに対応する太陽電池出力電力連続減少情報を否定とし、前記補正制御情報又は前記太陽電池出力電力連続減少情報が肯定であり、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を減少させ、前記補正制御情報又は前記太陽電池出力電力連続減少情報が肯定であり、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して高電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を増加させ、前記太陽電池の出力電力の増減の判定において、前記太陽電池の出力電力が増加したと判定された場合、デューティー比を前回と同じ方向に変化させ、前記補正制御情報又は前記太陽電池出力電力連続減少情報が肯定でない場合、デューティー比を前回と反対の方向に変化させる、制御を繰り返し行う電力制御システムを提供するものである。
【0012】
前記電力制御システムは、前記複数のサブシステムに対して制御モードを指示する統合制御装置を更に含み、前記第1のサブシステムの前記制御部は、前記統合制御装置からMPPTモードの指示を受信すると、前記制御を繰り返し行うものとすることができる。
【0013】
前記複数のサブシステムのうちの第2のサブシステムがCV(定電圧)モードで制御され、前記第2のサブシステムの前記電力変換装置の前記制御部は、前記第2のサブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させた際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定し、前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するのかを判定し、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも大きい場合、デューティー比を減少させ、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも小さく、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を減少させ、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも小さく、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して高電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を増加させる、制御を繰り返し行うものとすることができる。
【0014】
前記複数のサブシステムのうちの第3のサブシステムがCC(定電流)モードで制御され、前記第3のサブシステムの前記電力変換装置の前記制御部は、前記第3のサブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させるか、又は変化させない処理を行った際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定し、前記太陽電池の出力電力の増減の判定結果と、前記電力変換装置の出力側電流の定電流制御目標値に対する大小に基づいて、デューティー比を変化させるか、又は変化させない、制御を繰り返し行うものとすることができる。
【0015】
少なくとも1つの前記電力変換装置は、双方向DC/DCコンバータであるものとすることができる。
【0016】
本発明の1つの態様は、太陽電池と複数のサブシステムとを備え、前記複数のサブシステムのうちの1つがCV(定電圧)モードで制御され、前記複数のサブシステムは、前記太陽電池に並列に直接接続され、前記複数のサブシステムの各々は、電力変換装置とバッテリ又は負荷を含み、前記電力変換装置は、制御部を備え、前記太陽電池の出力電圧を変換して前記サブシステム側へ出力し、CVモードの前記サブシステムの前記電力変換装置の前記前記制御部は、CVモードの前記サブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させた際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定し、前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するのかを判定し、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも大きい場合、デューティー比を減少させ、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも小さく、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を減少させ、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも小さく、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して高電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を増加させる、制御を繰り返し行う電力制御システムを提供するものである。
【0017】
前記電力制御システムは、前記複数のサブシステムに対して制御モードを指示する統合制御装置を更に含み、前記複数のサブシステムのうちの1つの前記制御部は、前記統合制御装置からCVモードの指示を受信すると、前記制御を繰り返し行うものとすることができる。
【0018】
少なくとも1つの前記電力変換装置は、双方向DC/DCコンバータであるものとすることができる。
【0019】
本発明の1つの態様は、太陽電池と複数のサブシステムとを備え、前記複数のサブシステムのうちの1つがCC(定電流)モードで制御され、前記複数のサブシステムは、前記太陽電池に並列に直接接続され、前記複数のサブシステムの各々は、電力変換装置とバッテリ又は負荷を含み、前記電力変換装置は、制御部を備え、前記太陽電池の出力電圧を変換して前記サブシステム側へ出力し、CCモードの前記サブシステムの前記電力変換装置の前記制御部は、CCモードの前記サブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させるか、又は変化させない処理を行った際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定し、前記太陽電池の出力電力の増減の判定結果と、前記電力変換装置の出力側電流の定電流制御目標値に対する大小に基づいて、デューティー比を変化させるか、又は変化させない、制御を繰り返し行うものとすることができる。
【0020】
前記電力制御システムは、前記複数のサブシステムに対して制御モードを指示する統合制御装置を更に含み、前記複数のサブシステムのうちの1つの前記制御部は、前記統合制御装置からCCモードの指示を受信すると、前記制御を繰り返し行うものとすることができる。
【0021】
前記電力変換装置は、双方向DC/DCコンバータであるものとすることができる。
【0022】
本発明の1つの態様は、太陽電池と複数のサブシステムとを備え、前記複数のサブシステムのうちの第1のサブシステムがMPPT(最大電力追尾)モードで制御され、前記複数のサブシステムは、前記太陽電池に並列に直接接続され、前記複数のサブシステムの各々は、電力変換装置とバッテリ又は負荷を含み、前記電力変換装置は、制御部を備え、前記太陽電池の出力電圧を変換して前記サブシステム側へ出力する電力制御システムにおける電力制御方法であって、前記第1のサブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させた際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定するステップと、前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するのかを判定するステップと、前記太陽電池の動作点の位置が、前記デューティー比を変化させた前後で、前記低電圧側から前記高電圧側に、又は前記高電圧側から前記低電圧側に変わった場合、前回補正制御を行ったか否かに対応する補正制御情報、及び、前記太陽電池の出力電力の増減の判定において、複数回連続で前記太陽電池の出力電力が減少したと判定されたか否かに対応する太陽電池出力電力連続減少情報を否定とするステップと、前記補正制御情報又は前記太陽電池出力電力連続減少情報が肯定であり、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を減少させるステップと、前記補正制御情報又は前記太陽電池出力電力連続減少情報が肯定であり、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して高電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を増加させるステップと、前記太陽電池の出力電力の増減の判定において、前記太陽電池の出力電力が増加したと判定された場合、デューティー比を前回と同じ方向に変化させるステップと、前記補正制御情報又は前記太陽電池出力電力連続減少情報が肯定でない場合、デューティー比を前回と反対の方向に変化させるステップと、を繰り返し行う電力制御方法を提供するものである。
【0023】
前記電力制御システムは、前記複数のサブシステムに対して制御モードを指示する統合制御装置を更に含み、前記第1のサブシステムの前記制御部が、前記統合制御装置からMPPTモードの指示を受信すると、すべての前記ステップを繰り返し行うものとすることができる。
【0024】
前記複数のサブシステムのうちの第2のサブシステムがCV(定電圧)モードで制御され、前記第2のサブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させた際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定するステップと、前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するのかを判定するステップと、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも大きい場合、デューティー比を減少させるステップと、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも小さく、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を減少させるステップと、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも小さく、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して高電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を増加させるステップと、を繰り返し行うものとすることができる。
【0025】
前記複数のサブシステムのうちの第3のサブシステムがCC(定電流)モードで制御され、前記第3のサブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させるか、又は変化させない処理を行った際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定するステップと、前記太陽電池の出力電力の増減の判定結果と、前記電力変換装置の出力側電流の定電流制御目標値に対する大小に基づいて、デューティー比を変化させるか、又は変化させないステップと、を繰り返し行うものとすることができる。
【0026】
少なくとも1つの前記電力変換装置は、双方向DC/DCコンバータであるものとすることができる。
【0027】
本発明の1つの態様は、太陽電池と複数のサブシステムとを備え、前記複数のサブシステムのうちの1つがCV(定電圧)モードで制御され、前記複数のサブシステムは、前記太陽電池に並列に直接接続され、前記複数のサブシステムの各々は、電力変換装置とバッテリ又は負荷を含み、前記電力変換装置は、制御部を備え、前記太陽電池の出力電圧を変換して前記サブシステム側へ出力する電力制御システムにおける電力制御方法であって、CVモードの前記サブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させた際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定するステップと、前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するのかを判定するステップと、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも大きい場合、デューティー比を減少させるステップと、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも小さく、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して低電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を減少させるステップと、前記電力変換装置の出力側電圧が、定電圧制御目標値よりも小さく、且つ前記デューティー比を変化させた後の前記太陽電池の動作点が、前記太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点に対して高電圧側に位置すると判定された場合、デューティー比を増加させるステップと、を繰り返し行う電力制御方法を提供するものである。
【0028】
前記複数のサブシステムに対して制御モードを指示する統合制御装置を更に含み、前記複数のサブシステムのうちの1つの前記制御部が、前記統合制御装置からCVモードの指示を受信すると、すべての前記ステップを繰り返し行うものとすることができる。
【0029】
本発明の1つの態様は、太陽電池と複数のサブシステムとを備え、前記複数のサブシステムのうちの1つがCC(定電流)モードで制御され、前記複数のサブシステムは、前記太陽電池に並列に直接接続され、前記複数のサブシステムの各々は、電力変換装置とバッテリ又は負荷を含み、前記電力変換装置は、制御部を備え、前記太陽電池の出力電圧を変換して前記サブシステム側へ出力する電力制御システムにおける電力制御方法であって、CCモードの前記サブシステムの前記電力変換装置のデューティー比を変化させるか、又は変化させない処理を行った際の前記太陽電池の出力電力の増減を判定するステップと、前記太陽電池の出力電力の増減の判定結果と、前記電力変換装置の出力側電流の定電流制御目標値に対する大小に基づいて、デューティー比を変化させるか、又は変化させないステップと、を繰り返し行う電力制御方法を提供するものである。
【0030】
前記複数のサブシステムに対して制御モードを指示する統合制御装置を更に含み、前記複数のサブシステムの1つの前記制御部が、前記統合制御装置からCCモードの指示を受信すると、すべての前記ステップを繰り返し行うものとすることができる。
【発明の効果】
【0031】
上記構成を有する本発明によれば、サブシステムの制御周波数を小さくすることなく、サブシステム間での制御の干渉を抑制する電力制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の1つの実施形態に係る電力制御システム1の全体構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る電力制御システム1の統合制御装置50のハードウエア構成の例を示す図である。
図3】モード指示処理のフローチャートである。
図4A】MPPTモード処理のフローチャートである。
図4B】MPPTモード処理のフローチャートである。
図5】太陽電池の電力電圧曲線を示す図である。
図6】CVモード処理のフローチャートである。
図7】デューティー比設定マトリクスを示す図である。
図8】CCモード処理のフローチャートである。
図9】本実施形態に係る電力制御方法の適用前のシミュレーション結果を示す図である。
図10】本実施形態に係る電力制御方法の適用後のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る電力制御システム1の全体構成を示す図である。電力制御システム1は、太陽電池10、第1のサブシステム20、第2のサブシステム30、第3のサブシステム40、統合制御装置50を備える。
【0035】
第1のサブシステム20、第2のサブシステム30、第3のサブシステム40は、太陽電池10に並列に直接接続されている。
【0036】
第1のサブシステム20は、第1の電力変換装置である第1の双方向DC/DCコンバータ210、第1のバッテリ230、第1の負荷250を備える。同様に、第2のサブシステム30は、第2の双方向DC/DCコンバータ310、第2のバッテリ330、第2の負荷350を備え、第3のサブシステム40は、第3の双方向DC/DCコンバータ410、第3のバッテリ430、第3の負荷450を備える。
【0037】
第1の双方向DC/DCコンバータ210は、第1の制御部211、第1の記憶部213を備える。同様に、第2の双方向DC/DCコンバータ310は、第2の制御部311、第2の記憶部313を備え、第3の双方向DC/DCコンバータ410は、第3の制御部411、第3の記憶部413を備える。第1の双方向DC/DCコンバータ210、第2の双方向DC/DCコンバータ310、第3の双方向DC/DCコンバータ410は、それぞれPWM(パルス幅変調)によって太陽電池10の出力電圧を変換して負荷側へ出力する。第1の制御部211、第2の制御部311、第3の制御部411は、それぞれの双方向DC/DCコンバータのPWMのデューティー比を制御する。
【0038】
統合制御装置50は、太陽電池10、各サブシステムの双方向DC/DCコンバータ、バッテリ、負荷の電圧や電流、バッテリの容量等のシステム全体の状態を監視し、各双方向DC/DCコンバータに対して制御モードを指示する。本実施形態においては、制御モードは、MPPT(最大電力追尾)モード、CC(定電流)モード、CV(定電圧)モードの3つである。MPPTモードは太陽電池出力を最大化する制御を行う。CCモードは定電流制御を行い、負荷機器への電流供給を一定に保つ。CVモードは定電圧制御を行い、負荷機器の電圧を一定に保つ。
【0039】
ここで、各双方向DC/DCコンバータにおけるPWMのデューティー比の制御は、各双方向DC/DCコンバータの制御部が、統合制御装置50から送信された制御モード信号に基づいて行う。
【0040】
図2は、本実施形態に係る電力制御システム1の統合制御装置50のハードウエア構成の例を示す図である。統合制御装置50は、CPU50a、RAM50b、ROM50c、外部メモリ50d、入力部50e、出力部50f、通信部50gを含む。RAM50b、ROM50c、外部メモリ50d、入力部50e、出力部50f、通信部50gは、システムバス50hを介して、CPU50aに接続されている。各双方向DC/DCコンバータの制御部のハードウエア構成も同様である。図1に示される統合制御装置50の制御部の各部は、ROM50cや外部メモリ50dに記憶された各種プログラムが、CPU50a、RAM50b、ROM50c、外部メモリ50d、入力部50e、出力部50f、通信部50g等を資源として使用することで実現される。各双方向DC/DCコンバータの制御部についても同様である。
【0041】
以上のシステム構成を前提に、本発明の1つの実施形態に係る電力制御システムの電力制御処理の例を以下に説明する。図3~8は、本実施形態に係る電力制御システムの電力制御処理のフローチャートである。
【0042】
<モード指示>
図3は、モード指示処理のフローチャートである。統合制御装置50は、太陽電池10、各サブシステムの双方向DC/DCコンバータ、バッテリ、負荷の電圧や電流、バッテリの容量等のシステム全体の状態の監視結果に基づいて、どの双方向DC/DCコンバータに対してどの制御モードを指示するかを判定し(S301)、各双方向DC/DCコンバータに対して、判定された制御モードを指示する(S303)。本実施形態においては、一例として、第1のサブシステム20にMPPTモードを指示し、第2のサブシステム30にCVモードを指示し、及び第3のサブシステム40にCCモードを指示する。フローチャートから明らかなとおり、ステップS301から進んだ処理がステップS303へと至り、その後ステップS301へと戻るループ処理が行われる。
【0043】
<MPPTモード>
図4A図4Bは、MPPTモード処理のフローチャートである。まず、第1のサブシステム20が、統合制御装置50からのMPPTモード指示を受信する(S401)。フローチャートから明らかなとおり、ステップS401ら進んだ処理がステップS441、S443、又はステップS449へと至り、その後ステップS403へと戻るループ処理が行われる。
【0044】
ステップS403においては、第1の双方向DC/DCコンバータ210が或るデューティー比duty(ステップS403が初めて実施される場合には初期値)で動作している状態で、図示しない各電圧計、電流計により、太陽電池10の動作電圧、出力電流、第1の双方向DC/DCコンバータ210の入力側電圧値、出力側電圧値、入力側電流値、出力側電流値等が測定されて、第1の制御部211に入力される。第1の制御部211は、入力された太陽電池10の動作電圧値と出力電流値の乗算により、太陽電池10の出力電力値SAS_Pを計算し、第1の記憶部213に記憶させる。
【0045】
ステップS403の処理が2回目以降に行われる場合は、第1の制御部211は、前回計算された太陽電池10の出力電力値SAS_P_oldと今回計算された現在の太陽電池10の出力電力値SAS_Pの差を計算し、第1の記憶部213に記憶させると共に、太陽電池10の出力電力の増減を判定する(S403)。判定の結果、現在の太陽電池10の出力電力SAS_Pが、前回の太陽電池10の出力電力SAS_P_old以上であった場合、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fを1とし(S405)、前回の太陽電池10の出力電力SAS_P_old未満であった場合、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fを0とし(S407)、第1の記憶部213に記憶させる。
【0046】
更に、第1の制御部211は、前回測定された太陽電池10の動作電圧値SAS_V_oldと今回測定された現在の太陽電池10の動作電圧値SAS_Vの差を計算し、太陽電池10の動作電圧値の増減を判定する(S409)。判定の結果、現在の太陽電池10の動作電圧値SAS_Vが、前回の太陽電池10の動作電圧値SAS_V_old以上であった場合、太陽電池動作電圧増加フラグSAS_V_Fを1とし(S411)、前回の太陽電池10の出力電力SAS_V_old未満であった場合、太陽電池動作電圧増加フラグSAS_V_Fを0とし(S413)、第1の記憶部213に記憶させる。
【0047】
続いて、第1の制御部211は、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fの値と太陽電池動作電圧増加フラグSAS_V_Fの値を加算し、得られた値を、太陽電池10の動作点が電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するかを判定するための位置判定準備フラグSAS_Fの値とする(S415)。
【0048】
位置判定準備フラグSAS_Fの値が0又は2の場合、第1の制御部211は、太陽電池10の動作点が電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して低電圧側にあると判定し、太陽電池10の動作点が電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するかを示す位置フラグMountain_Ridgeの値を0とする(S419、S423)。一方、位置判定準備フラグSAS_Fの値が1の場合、第1の制御部211は、太陽電池10の動作点が電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して高電圧側にあると判定し、太陽電池10の動作点が電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するかを示す位置フラグMountain_Ridgeの値を1とする(S421)。
【0049】
この判定方法の原理は以下のとおりである。図5は、太陽電池10の電力電圧曲線を示した図である。太陽電池10の動作点が、電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して低電圧側に位置する場合、太陽電池10の出力電力が増加すると太陽電池10の動作電圧も増加し、太陽電池10の出力電力が減少すると太陽電池10の動作電圧も減少するが、これは、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fが1且つ太陽電池動作電圧増加フラグSAS_V_Fが1の場合と、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fが0且つ太陽電池動作電圧増加フラグSAS_V_Fが0の場合に相当する。一方、電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して高電圧側に位置する場合、太陽電池10の出力電力が増加すると太陽電池10の動作電圧は減少し、太陽電池10の出力電力が減少すると太陽電池10の動作電圧は増加するが、これは、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fが1且つ太陽電池動作電圧増加フラグSAS_V_Fが0の場合と、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fが0且つ太陽電池動作電圧増加フラグSAS_V_Fが1の場合に相当する。したがって、上記のような判定方法により、太陽電池10の動作点が電力電圧曲線において、最大電力点Pmaxに対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するかを判定することができる。
【0050】
上記実施形態においては、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fの値と太陽電池動作電圧増加フラグSAS_V_Fの値を加算した値に基づいて、太陽電池10の動作点が電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するかを判定したが、太陽電池10の動作点が電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するかを判定手法はこれに限定されるものではなく、例えば、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fの値と太陽電池動作電圧増加フラグSAS_V_Fの値の排他的論理和に基づいて判定する等他の適切な任意の手法を用いることができる。
【0051】
次に、第1の制御部211は、今回判定された現在の位置フラグMountain_Ridgeの値と、前回判定された位置フラグMountain_Ridge_oldの値を比較する(S425)。比較の結果、現在の位置フラグMountain_Ridgeの値と、前回判定された位置フラグMountain_Ridge_oldの値が異なる場合、前回補正制御を行ったか否かに対応する補正制御情報である補正制御フラグPPT_HELPの値を0とし、太陽電池10の出力電力が減少した回数PDを0とする(S427)。一方、比較の結果、現在の位置フラグMountain_Ridgeの値と、前回判定された位置フラグMountain_Ridge_oldの値が同じ場合、S429に進む。
【0052】
第1の制御部211は、ステップS403で計算され、第1の記憶部213に記憶された太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fの値を判定し(S429)、その値が0の場合、太陽電池10の出力電力が減少した回数PDに1を加算する(S431)。一方、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fの値が0ではない場合(1の場合)、太陽電池10の出力電力が減少した回数PDを0とする(S433)。したがって、太陽電池10の出力電力が減少した回数PDが2以上であることは、複数回連続で太陽電池10の出力電力が減少したと判定されたことを示し、太陽電池10の出力電力が減少した回数PDが0又は1であることは、複数回連続で太陽電池10の出力電力が減少したと判定されていないことを示すので、太陽電池10の出力電力が減少した回数PDは、複数回連続で太陽電池10の出力電力が減少したと判定されたか否かに対応する太陽電池出力電力連続減少情報である。
【0053】
本実施形態においては、複数回連続で太陽電池10の出力電力が減少したと判定された場合、つまり太陽電池出力電力連続減少情報が肯定の場合、サブシステム間で制御の干渉が生じていると判断し、補正制御を行う。ここで、上記ステップS425~S433の処理から理解されるように、太陽電池10の動作点の位置が、デューティー比を変化させた前後で、最大電力点Pmaxに対して低電圧側から高電圧側に、又は高電圧側から低電圧側に変わった場合、太陽電池出力電力連続減少情報を否定とする。
【0054】
第1の制御部211は、S431又はS433で得られたPDの値を判定し(S435)、S431又はS433で得られたPの値が2以上であるか、又は補正制御フラグPPT_HELPの値が1である場合、補正制御フラグPPT_HELPの値を1とし(S437)、以下のステップS439~S443の補正制御を行う。
【0055】
すなわち、まず、第1の制御部211は、現在の位置フラグMountain_Ridgeの値を判定し(S439)、現在の位置フラグMountain_Ridgeの値が0の場合、デューティー比を補正制御量HELP_Stepだけ減少させ(S441)、現在の位置フラグMountain_Ridgeの値が0ではない場合(1の場合)、デューティー比を補正制御量HELP_Stepだけ増加させる(S443)。
【0056】
一方、第1の制御部211は、S431又はS433で得られたPの値が2以上、又は補正制御フラグPPT_HELPの値が1以外の場合、以下のステップS445~S449の制御を行う。
【0057】
すなわち、ステップS403で計算され、第1の記憶部213に記憶された太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fの値を判定し(S445)、その値が1の場合、デューティー比を、前回のデューティー比の制御量PPT_F(正負の符号付き)だけ増加させ、デューティー比を前回と同じ方向に変化させる(S449)。一方、太陽電池出力電力増加フラグSAS_P_Fの値が1ではない場合(0の場合)、前回のデューティー比の制御量PPT_Fの符号を反転させ(S447)、デューティー比を、符号を反転させたデューティー比の制御量PPT_Fだけ増加させ、デューティー比を前回と反対の方向に変化させる(S449)。
【0058】
上記実施形態においては、太陽電池出力電力連続減少情報として、上記のようなアルゴリズムにより得られる太陽電池10の出力電力が減少した回数PDを用いたが、これに限定されるものではなく、他の適切な任意のアルゴリズムにより得られる情報を用いることができる。
【0059】
本実施形態のMPPTモード制御によれば、太陽電池の電力電圧曲線において、現在の動作点が最大電力点の低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するのかを判定し、その判定結果に応じて、デューティー比を適切に設定することによって、サブシステム間の制御の干渉を抑制することができる。
【0060】
<CVモード>
図6は、CVモード処理のフローチャートである。まず、第2のサブシステム30が、統合制御装置50からのCVモード指示を受信する(S601)。フローチャートから明らかなとおり、ステップS601から進んだ処理がステップS619又はステップS621へと至り、その後ステップS603へと戻るループ処理が行われる。
【0061】
ステップS603においては、第2の双方向DC/DCコンバータ310が或るデューティー比duty(ステップS603が初めて実施される場合には初期値)で動作している状態で、図示しない各電圧計、電流計により、太陽電池10の動作電圧、出力電流、第2の双方向DC/DCコンバータ310の入力側電圧値、出力側電圧値、入力側電流値、出力側電流値等が測定されて、第2の制御部311に入力される。第2の制御部311は、入力された太陽電池10の動作電圧値と出力電流値の乗算により、太陽電池10の出力電力値を計算し、第2の記憶部313に記憶させる。
【0062】
ステップS603の処理が2回目以降に行われる場合は、第2の制御部311は、現在のデューティー比dutyと前回のデューティー比duty_oldを比較し(S603)、現在のデューティー比dutyが前回のデューティー比duty_oldよりも大きい場合、以下のステップS605~S609の制御を行う。
【0063】
すなわち、第2の制御部311は、今回計算された現在の太陽電池10の出力電力値SAS_Pと前回計算された太陽電池10の出力電力値SAS_P_oldを比較する(S605)。比較の結果、前回計算された太陽電池10の出力電力SAS_P_oldが、今回計算された現在の太陽電池10の出力電力SAS_P以上であった場合、太陽電池10の動作点が電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するかを示す位置フラグCV_Fを、低電圧側に位置することを示す「-1」とし(S607)、今回計算された現在の太陽電池10の出力電力SAS_P_old未満であった場合、位置フラグCV_Fを、高電圧側に位置することを示す「1」とし(S609)、第2の記憶部313に記憶させる。
【0064】
一方、現在のデューティー比dutyが前回のデューティー比duty_old以下の場合、以下のステップS611~S615の制御を行う。
【0065】
すなわち、第2の制御部311は、今回計算された現在の太陽電池10の出力電力値SAS_Pと前回計算された太陽電池10の出力電力値SAS_P_oldを比較する(S611)。比較の結果、前回計算された太陽電池10の出力電力SAS_P_oldが、今回計算された現在の太陽電池10の出力電力SAS_P以上であった場合、位置フラグCV_Fを「1」とし(S613)、今回計算された現在の太陽電池10の出力電力SAS_P_old未満であった場合、位置フラグCV_Fを「-1」とし(S615)、第2の記憶部313に記憶させる。
【0066】
このように、MTTPモードと同様の原理で、太陽電池10の動作点が、最大電力点Pmaxに対して低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するのかを判定する。
【0067】
次に、第2の制御部311は、出力側電圧BUS_Vと定電圧制御目標値CV_Vを比較し(S617)、出力側電圧BUS_Vが定電圧制御目標値CV_V以上であった場合、デューティー比を制御量Stepだけ減少させる(S619)。一方、出力側電圧BUS_Vが定電圧制御目標値CV_V未満であった場合、ステップS607、S609、S613又はS615において第2の記憶部313に記憶された位置フラグCV_Fの値に基づいて、デューティー比を制御量Step×CV_Fだけ増加させる(S621)。これにより、太陽電池10の動作点が最大電力点Pmaxの低電圧側に位置することを検出した場合は、補正制御が行われる。
【0068】
従来のCV制御モードでは、太陽電池の電力電圧曲線において最大電力点Pmaxに対して低電圧側に位置する場合には、目標値CV_Vに対して出力側電圧BUS_Vが小さく、ディーティー比を増加させる制御を行うと、最大電力点Pに対して、さらに低電圧側に移動することになるので、適切な制御ができない。本実施形態のCVモード制御によれば、太陽電池の電力電圧曲線において、現在の動作点が最大電力点の低電圧側又は高電圧側のいずれの側に位置するのかを判定し、低電圧側に位置することを検出した場合は、補正制御を行うことにより、サブシステム間の制御の干渉を抑制することができる。
【0069】
<CCモード>
定電流制御を行う場合、(サブ)システムが単一の場合は、現在の電力変換装置の出力側電流値が、定電流制御目標値よりも大きい場合にデューティー比を減少させ、定電流制御目標値よりも小さい場合にデューティー比を増加させればよい。しかしながら、サブシステムが複数の場合は、サブシステム間で制御の干渉の問題が生じる。そこで、本実施形態のCCモードでは、太陽電池10の出力電力の増減も考慮して制御を行う。
【0070】
具体的には、図7に示すような、太陽電池出力の増減と、定電流制御目標値に対する現在の出力側電流値の大小をマトリクスに状態判定し、その9通りの状態におけるデューティー比制御を、それぞれデューティー比の増加、減少、変更なしのいずれかに設定することで、制御干渉を抑制する。
【0071】
9通りの状態においてどのようなデューティー比制御設定が適切であるかは、システム構成によって異なるが、本実施形態においては、一例として、出力側電流値が定電流制御目標値よりも低く、太陽電池の出力電力が減少する状態のデューティー比設定を、従来の定電流制御においては「増加」となるのに対して、「変更なし」とする実施形態について説明する。出力側電流値が定電流制御目標値よりも低く、太陽電池の出力電力が減少する状態のデューティー比設定を「変更なし」としたのは、太陽電池の出力電力が減少する状態において、デューティー比を増加させると更に太陽電池の出力電力が減少する可能性があるためである。したがって、デューティー比設定を「減少」とすることも考えられる。しかしながら、上述のように、どのようなデューティー比制御設定が適切であるかは、システム構成によって異なるので、デューティー比設定を「増加」とすることが適切な場合もあることに留意が必要である。
【0072】
以下、図7に示されるデューティー比設定におけるCCモードにおける処理について説明する。図8は、CCモード処理のフローチャートである。まず、第2のサブシステム30が、統合制御装置50からのCVモード指示を受信する(S801)。フローチャートから明らかなとおり、ステップS801ら進んだ処理がステップS805又はステップS811へと至り、その後ステップS803へと戻るループ処理が行われる。
【0073】
ステップS803においては、第3の双方向DC/DCコンバータ410が或るデューティー比duty(ステップS803が初めて実施される場合には初期値)で動作している状態で、図示しない各電圧計、電流計により、太陽電池10の動作電圧、出力電流、第3の双方向DC/DCコンバータ410の入力側電圧値、出力側電圧値、入力側電流値、出力側電流値等が測定されて、第3の制御部411に入力される。第3の制御部411は、入力された太陽電池10の動作電圧値と出力電流値の乗算により、太陽電池10の出力電力値を計算し、第3の記憶部413に記憶させる。
【0074】
ステップS803の処理が2回目以降に行われる場合は、第3の制御部411は、出力側電流BUS_Iと定電流制御目標値CC_Iを比較し(S803)、出力側電流BUS_Iが定電圧制御目標値CC_Iを上回った場合、デューティー比を制御量Stepだけ減少させる(S805)。
【0075】
一方、出力側電流BUS_Iが定電圧制御目標値CC_I以下であった場合、出力側電流BUS_Iと定電流制御目標値CC_Iを比較し(S807)、出力側電流BUS_Iが定電圧制御目標値CC_I未満であった場合、前回計算された太陽電池10の出力電力値SAS_P_oldと今回計算された現在の太陽電池10の出力電力値SAS_Pを比較する(S809)。比較の結果、現在の太陽電池10の出力電力SAS_Pが、前回計算された太陽電池10の出力電力SAS_P_old以上であった場合、デューティー比を制御量Stepだけ増加させ(S811)、前回計算された太陽電池10の出力電力SAS_P_old未満であった場合、デューティー比は変更しない。また、出力側電流BUS_Iが定電圧制御目標値CC_Iと等しかった場合もデューティー比を変更しない。
【0076】
<シミュレーション例>
上記実施形態の電力制御システムにおいて、本実施形態の電力制御方法の適用前と適用後の1つのシミュレーション例について説明する。
【0077】
第1のサブシステム20がMPPTモード、第2のサブシステム30及び第3のサブシステム40がCCモードで制御され、0.5秒後に、第1のサブシステム20をCCモードに変更すると共に、第2のサブシステム30をMPPTモードに変更した。第3のサブシステム40はCCモードのままであった。
【0078】
太陽電池10の諸元は、Vocが27.4V、Iocが2.3A、Vmpが25.0V、Impが2.0Aで、バッテリの初期電圧を全て10Vとした。
【0079】
太陽電池10の動作電圧や出力電流、各双方向DC/DCコンバータの入出力電圧・電流及びデューティー比の計測は、1制御周期(100Hz)毎に行った。
【0080】
結果を、図9図10に示す。ここで、図9図10において、0.5秒付近以前において、第3のサブシステムの特性を示す線が見えない領域では、第3のサブシステムの特性と第2のサブシステムの特性が重なっており、0.5秒付近以降において、第1のサブシステムの特性を示す線が見えない領域では、第1のサブシステムの特性と第3のサブシステムの特性が重なっている。図9から分かるように、本実施形態の電力制御方法の適用前は、各サブシステム間での制御の干渉が生じるために、太陽電池10は、設定最大電力である50Wを出力できず、出力電力は30W程度で推移していた。これに対して、図10から分かるように、本実施形態の電力制御方法の適用後は、各サブシステム間での制御の干渉が抑制され、太陽電池10は、設定最大電力である50Wを出力し続けることができた。また、第1のサブシステム20と第2のサブシステム30とのモード切り替え時において、太陽電池10の出力電力が変動することなく、スムーズなモード切り替えができた。
【0081】
上記実施形態においては、すべてのサブシステムの電力変換装置を、双方向DC/DCコンバータとしたが、これに限定されるものではなく、例えばDC/DCコンバータ、DC/ACインバータ等の他の適切な任意の電力変換装置を用いることができる。
【0082】
上記実施形態においては、すべてのサブシステムが、電力変換装置、バッテリ、負荷を備えるものであったが、各サブシステムは、少なくとも電力変換装置とバッテリ又は負荷を備えていればよい。
【0083】
以上、本発明について、例示のためにいくつかの実施形態に関して説明してきたが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細について、様々な変形及び修正を行うことができることは、当業者に明らかであろう。
【符号の説明】
【0084】
1 電力制御システム
10 太陽電池
20 第1のサブシステム
30 第2のサブシステム
40 第3のサブシステム
50 統合制御装置
210 第1の双方向DC/DCコンバータ
310 第2の双方向DC/DCコンバータ
410 第3の双方向DC/DCコンバータ
211 第1の制御部
311 第2の制御部
411 第3の制御部
213 第1の記憶部
313 第2の記憶部
413 第3の記憶部
230 第1のバッテリ
330 第2のバッテリ
430 第3のバッテリ
250 第1の負荷
350 第2の負荷
450 第3の負荷
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10