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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】分離回収装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
B29B17/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022000725
(22)【出願日】2022-01-05
【審査請求日】2022-01-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390013457
【氏名又は名称】株式会社辰巳エヤーエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 泰廣
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-320532(JP,A)
【文献】特開平11-197605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂固形物(K)と繊維物(S)とを合体した合成体(H)を粗破砕後に取り入れるニップローラ(3)と、このニップローラ(3)に下方から近接していてニップローラ(3)で挟持搬送される合成体(H)を引っ掻きながら下方へ送るビータローラ(4)と、このビータローラ(4)の下方で合成体(H)を樹脂固形物(K)と繊維物(S)とに分離する分離部(5)とを有しており、
前記分離部(5)は、ビータローラ(4)のローラ軸(6)の下方に位置してビータローラ(4)から送られる樹脂固形物(K)を衝突させる当たり面(7)と、この当たり面(7)と対向する吸引口(8a)を有していてビータローラ(4)の下方から側方へ繊維物(S)を吸引する吸引ダクト(8)とが設けられていることを特徴とする分離回収装置。
【請求項2】
前記吸引ダクト(8)は、当たり面(7)と対向する吸引口(8a)から外方下向きに傾斜して延設されており、吸引口(8a)の下顎にビータローラ(4)の下方へ出退量調整可能に突出した吸引調整具(9)を有することを特徴する請求項1に記載の分離回収装置。
【請求項3】
前記ビータローラ(4)は、ローラ本体(4A)の外周に周方向間隔をおいて多数枚の鋸刃形状の掻き取り刃(11)が設けられており、隣り合う掻き取り刃(11)同士の刃の山(11a)がローラ軸(6)の軸心方向にずらされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の分離回収装置。
【請求項4】
前記ニップローラ(3)は、合成体(H)を最初に取り入れる1対の取入ローラ(3A)と、取り入れた合成体(H)を一方の取入ローラ(3A)とともに挟持してビータローラ(4)に供給する第3ニップローラ(3C)とを有しており、前記第3ニップローラ(3C)を取入ローラ(3A)より小径に形成していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の分離回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成体をリサイクルするために樹脂固形物と繊維物とに分離して回収する分離回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装材として、防音材、フロアマット、天井材等があり、これらは合成樹脂で樹脂固形部分(樹脂シートを含む)を形成し、この樹脂固形部分に繊維、不織布、綿、反毛等で形成された繊維層を接合して合成体を形成している。
これらの内装材は使用後にはスクラップとして回収され、また、製造時に発生する端材は産業廃棄物として廃棄するか又は回収され、回収されたものは、合成体の形状から剪断、解繊、粉砕、分離等を行って、樹脂固形物と繊維物とに分離して回収、再利用されることになる。
【0003】
特許文献1に開示された従来技術は、廃壁紙をストレーナー設置の衝撃粉砕機を用い、基材の切断を抑え綿状の紙繊維に解し被覆PVC層と剥離、粉砕して縦円筒形で中心部に円形板を配した風力分離装置の分離塔内を流れる上昇気流に乗せて上部排出口から紙成分を排出回収している(要約)。
そして、前記風力分離装置は、分離塔の上部が円錐形キャップ状中心部に排出口を設け、下部は漏斗状中心部に空気補給口を設けた略縦円筒形で、分離塔内下方に略円形板をその周囲に通気間隙が存する様に略水平に支持し、該円形板の上中心部に前記壁紙粉砕物1を搬入する空気輸送管を設けている。
【0004】
この風力分離装置は、ひとつのブロアーから空気輸送管を経て分離塔内に送られる風量に対し別のブロアーによって排出する風量は、空気輸送管から円形板の上中心部に搬入した廃壁紙粉砕物が、分離塔内を流動し相対的に重成分であるPVC被覆層粉砕物が円形板の周囲に設けた通気間隙から降下して分離塔下部空気補給口から排出、一方相対的に軽成分である基材の綿状に解れた紙成分の粉砕物は、分離塔内部を上昇する空気流に乗せて分離塔上部減圧排出口から排出される。
【0005】
即ち、別のブロアーによって排出する風量はひとつのブロアーから送られる風量よりも多く、分離塔下部空気補給口からも空気を吸引しており、通気間隙から降下する被覆層粉砕物には、分離塔下部空気補給口から吸引されて紙成分を上昇させるための空気流によって落下が抵抗を受ける構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-262093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来技術は、紙成分と被覆層粉砕物のように比重に大きな差違がある場合には有用であるが、樹脂固形物の特に細かく粉砕されているものと繊維物とでは比重差が小さく、落下に対して空気流抵抗があると、分離効率が低下する可能性がある。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした 分離回収装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、繊維物を吸引する空気流による樹脂固形物の落下抵抗を減少できるようにした分離回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における課題解決のための具体的手段は、樹脂固形物Kと繊維物Sとを合体した合成体Hを粗破砕後に取り入れるニップローラ3と、このニップローラ3に下方から近接していてニップローラ3で挟持搬送される合成体Hを引っ掻きながら下方へ送るビータローラ4と、このビータローラ4の下方で合成体Hを樹脂固形物Kと繊維物Sとに分離する分離部5とを有しており、
前記分離部5は、ビータローラ4のローラ軸6の下方に位置してビータローラ4から送られる樹脂固形物Kを衝突させる当たり面7と、この当たり面7と対向する吸引口8aを有していてビータローラ4の下方から側方へ繊維物Sを吸引する吸引ダクト8とが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維物を吸引する空気流による樹脂固形物の落下抵抗を減少できる。
即ち、本発明は、ビータローラ4から送られる樹脂固形物Kは当たり面7に衝突してから落下し、吸引ダクト8は側方から繊維物Sを吸引するので、落下する樹脂固形物Kには繊維物Sを吸引する空気流は影響を及ぼすことがなく、樹脂固形物Kの落下抵抗を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態を示す分離回収装置の全体正面図である。
図2】同要部の拡大正面図である。
図3図1のX矢視図である。
図4】ビータローラの側面図である。
図5】ビータローラの部分拡大図である。
図6】分離回収装置の側面図である。
図7】分離回収装置の背面図である。
図8】ニップローラ及びビータローラの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~8において、分離回収装置1は、装置ケーシング21内に、ニップローラ3と、ビータローラ4と、分離部5に配置された当たり面7及び吸引ダクト8の基端部とを配置しており、ニップローラ3は粗破砕機22と投入ダクト23を介して連通し、吸引ダクト8の先端部は吸引ブロア24と連通している。
【0013】
前記ニップローラ3は、粗破砕機22によって粗破砕された合成体Hを最初に取り入れる1対の取入ローラ3Aと、取り入れた合成体Hを一方の取入ローラ3Aとともに挟持してビータローラ4に供給する第3ニップローラ3Cとを有している。
1対の取入ローラ3Aは比較的に大径であり、例えば直径30~50mm程度に粗破砕された合成体Hを挟持することにより下方へ供給する。ビータローラ4はこの1対の取入ローラ3Aの挟持点の下方に配置することもできるが、取入ローラ3Aは比較的に大径であるが故に、1対の取入ローラ3Aの挟持点からビータローラ4までの距離が比較的に長くなる。この距離を縮めるために第3ニップローラ3Cが設けられている。
【0014】
前記第3ニップローラ3Cは、1対の取入ローラ3Aで取り入れた合成体Hを、一方の取入ローラ3Aと相まって挟持してビータローラ4に供給するものであり、第3ニップローラ3Cは取入ローラ3Aより小径であるが故に、一方の取入ローラ3Aとの間の挟持点からビータローラ4までの距離が、前記1対の取入ローラ3Aの挟持点からビータローラ4までの距離より短くできる。
【0015】
第3ニップローラ3Cと一方の取入ローラ3Aとの間の挟持点からビータローラ4までの距離が短いことは、ビータローラ4で引っ掻くときに合成体Hがより長く挟持されている、またはより小さな合成体Hでも挟持しておける、ということになり、ビータローラ4による引っ掻き効率が向上する。
図1、2、4、5において、前記ビータローラ4は、ニップローラ3で挟持搬送される合成体H、特に繊維物Sを樹脂固形物Kから掻き取るローラであり、ローラ本体4Aがローラ軸6に装着され、ローラ本体4Aの外周に周方向間隔をおいて多数枚の掻き取り刃11が設けられている。
【0016】
掻き取り刃11は直線的な鋸刃形状であり、隣り合う掻き取り刃11同士の刃の山11aがローラ軸6の軸心方向に半山ピッチだけずらされている。隣り合う掻き取り刃11同士の刃の山11aは半山ピッチ以外のずれ量でもよく、ずれ量がなくても合成体Hの引っ掻きは可能であるが、半山ピッチのずれにすることにより、刃の山11a間での合成体Hの詰まりを減少できる。
【0017】
ビータローラ4は取入ローラ3Aよりも高速回転(例えば800~1000r/min
)し、その外周の多数枚の掻き取り刃11の多数の刃の山11aで合成体Hの繊維物Sを引っ掻き、引き離し、樹脂固形物Kも引っ掻き、粉砕することができ、繊維物S内に小さな粉砕粒が紛れ込んでいても、ほぐし出すことができる。
ビータローラ4の外方には、ビータローラ4の送り出し側に配置された前ガイド板31と戻り側に配置された後ガイド板32が設けられている。
【0018】
後ガイド板32はビータローラ4の後ろ側半分を覆う円弧面を有しており、その円弧面の下部に樹脂固形物Kを衝突させる当たり面7が垂直壁として形成されている。
前ガイド板31はビータローラ4の前側を覆う円弧面を有しており、その円弧面の下部と後ガイド板32の当たり面7との間に分離部5が形成されている。ビータローラ4が第3ニップローラ3Cから引っ掻いてきた合成体Hは、樹脂固形物Kが細かく粉砕され、繊維物Sは樹脂固形物Kから分離しかつばらけられており、それらの放出は前ガイド板31によって当たり面7へ案内されている。
【0019】
前記前ガイド板31の下端には吸引ダクト8の吸引口8aが接続されている。分離部5においては、当たり面7と吸引口8aとが間隔をおいて対向しており、ビータローラ4の回転により放出される樹脂固形物Kは当たり面7に衝突して、その放出力が減少して落下し、繊維物Sは殆どが当たり面7に衝突する前に下降して吸引口8aに吸引される。
吸引ダクト8の吸引口8aは、分離部5内における落下方向、下降方向と交差する側方に空気を吸引することになり、下方から吸引する空気は極めて少ない。即ち、吸引口8aの空気吸引方向は、落下方向、下降方向と対向する方向ではないので、落下する樹脂固形物Kに対して抵抗となる空気流の発生は極めて少ない。
【0020】
前記吸引ダクト8は吸引口8aの下顎に吸引調整具9を設けている。この吸引調整具9は、ビータローラ4の下方へ出退量調整可能に突出しており、吸引口8aの大きさ及び向きを調整できる。
吸引ダクト8は吸引口8aから外方下向きに傾斜して延設されており、水平部8bを経て立ち上がり部8cが形成されており、図3に示す如く、吸引口8aから立ち上がり部8cの下部まで、ビータローラ4の軸方向長さに合わせた横長のダクトであるが、立ち上がり部8cの横長下部から円筒上部に絞られており、円筒上部に吸引ブロア24が接続されている。
【0021】
装置ケーシング21の分離部5の下方には、分離されて落下する樹脂固形物Kを受持するコンベア37が配置されている。
前記装置ケーシング21及びコンベア37は機台38に支持されており、この機台38には第1モータ41及び第2モータ42も支持されている。
第1モータ41はチエーン伝導手段43を介して1対の取入ローラ3Aを駆動し、かつ一方の取入ローラ3Aからギヤ伝導で第3ニップローラ3Cを駆動しており、第2モータ42はベルト伝導手段44を介してビータローラ4を高速回転している。
【0022】
前述した実施形態においては、樹脂固形物Kと繊維物Sとを合体した合成体Hを粗破砕後に取り入れるニップローラ3と、このニップローラ3に下方から近接していてニップローラ3で挟持搬送される合成体Hを引っ掻きながら下方へ送るビータローラ4と、このビータローラ4の下方で合成体Hを樹脂固形物Kと繊維物Sとに分離する分離部5とを有しており、前記分離部5は、ビータローラ4のローラ軸6の下方に位置してビータローラ4から送られる樹脂固形物Kを衝突させる当たり面7と、この当たり面7と対向する吸引口8aを有していてビータローラ4の下方から側方へ繊維物Sを吸引する吸引ダクト8とが設けられている。
【0023】
この構成によって、ビータローラ4から送られる樹脂固形物Kは当たり面7に衝突してから落下し、吸引ダクト8は側方から繊維物Sを吸引するので、落下する樹脂固形物Kには繊維物Sを吸引する空気流は影響を及ぼすことがなく、樹脂固形物Kの落下抵抗を減少できる。
また、前記実施形態においては、前記吸引ダクト8は、当たり面7と対向する吸引口8aから外方下向きに傾斜して延設されており、吸引口8aの下顎にビータローラ4の下方へ出退量調整可能に突出した吸引調整具9を有する。


【0024】
この構成によって、吸引ダクト8は当たり面7と対向する吸引口8aから繊維物Sを吸引するので、その吸引する空気流は樹脂固形物Kの落下に影響を及ぼすことがない。
さらに、前記実施形態においては、前記ビータローラ4は、ローラ本体4Aの外周に周方向間隔をおいて多数枚の鋸刃形状の掻き取り刃11が設けられており、隣り合う掻き取り刃11同士の刃の山11aがローラ軸6の軸心方向にずらされている。
この構成によって、ビータローラ4で合成体Hから繊維物Sを引っ掻きながら効率良く分離することができる。
【0025】
さらにまた、前記実施形態においては、前記ニップローラ3は、合成体Hを最初に取り入れる1対の取入ローラ3Aと、取り入れた合成体Hを一方の取入ローラ3Aとともに挟持してビータローラ4に供給する第3ニップローラ3Cとを有しており、前記第3ニップローラ3Cを取入ローラ3Aより小径に形成している。
【0026】
この構成によって、一方の取入ローラ3Aと第3ニップローラ3Cとに挟持される合成体Hにビータローラ4を可及的近くに近づけることができ、ビータローラ4で合成体Hから繊維物Sを引っ掻く引っ掻き効率を高めることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、部材の形状、構成及び組み合わせ等を変更したりすることもできる。
【0027】
例えば、ニップローラ3は1対の取入ローラ3Aのみで構成したり、1対の取入ローラ3Aの下方にそれより小径の第3ニップローラ3Cを1対配置して構成したりしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 分離回収装置
3 ニップローラ
3A 取入ローラ
3C 第3ニップローラ
4 ビータローラ
4A ローラ本体
5 分離部
6 ローラ軸
7 当たり面
8 吸引ダクト
8a 吸引口
8b 水平部
8c 立ち上がり部
9 吸引調整具
11 掻き取り刃
11a 刃の山
21 装置ケーシング
22 粗破砕機
23 投入ダクト
24 吸引ブロア
31 前ガイド板
32 後ガイド板
37 コンベア
38 機台
41 第1モータ
42 第2モータ
43 チエーン伝導手段
44 ベルト伝導手段
H 合成体
K 樹脂固形物
S 繊維物
【要約】
【課題】 繊維物を吸引する空気流による樹脂固形物の落下抵抗を減少できるようにする。
【解決手段】 樹脂固形物Kと繊維物Sとを合体した合成体Hを粗破砕後に取り入れるニップローラ3と、このニップローラ3に下方から近接していてニップローラ3で挟持搬送される合成体Hを引っ掻きながら下方へ送るビータローラ4と、このビータローラ4の下方で合成体Hを樹脂固形物Kと繊維物Sとに分離する分離部5とを有する。前記分離部5は、ビータローラ4のローラ軸6の下方に位置してビータローラ4から送られる樹脂固形物Kを衝突させる当たり面7と、ビータローラ4の下方から繊維物Sを吸引する吸引ダクト8とを設ける。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8