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特許7051181ポリアミドおよびそれからなる成形体およびフィルムならびに該ポリアミドの製造方法
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  • 特許-ポリアミドおよびそれからなる成形体およびフィルムならびに該ポリアミドの製造方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】ポリアミドおよびそれからなる成形体およびフィルムならびに該ポリアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/26 20060101AFI20220404BHJP
   C08G 69/28 20060101ALI20220404BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C08G69/26
C08G69/28
C08J5/18 CFG
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022502079
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2021033552
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2020154107
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021064923
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021100247
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】八木 優介
(72)【発明者】
【氏名】廣田 亜美
(72)【発明者】
【氏名】中井 誠
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 剛史
(72)【発明者】
【氏名】高石 直樹
【審査官】佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/085360(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/106541(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69/00-69/50
C08G81/00-85/00
C08J5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位と、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位と、炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位とを含有し、融点が240℃以上、結晶融解エンタルピーが20J/g以上、ヒステリシス試験における伸長回復率が50%以上である、ポリアミド。
【請求項2】
前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)がダイマー酸である、請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)がダイマージアミンである、請求項1または2に記載のポリアミド。
【請求項4】
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)がテレフタル酸である、請求項1~3いずれかに記載のポリアミド。
【請求項5】
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)が1,10-デカンジアミンである、請求項1~4いずれかに記載のポリアミド。
【請求項6】
前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の合計の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、10~90質量%である、請求項1~5いずれかに記載のポリアミド。
【請求項7】
前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の合計の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、20~80質量%である、請求項1~6いずれかに記載のポリアミド。
【請求項8】
前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)の炭素数が30~40であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)の炭素数が30~40であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)の炭素数が6~12であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)の炭素数が6~12である、請求項1~7いずれかに記載のポリアミド。
【請求項9】
前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、3~45質量%であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、3~45質量%であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、3~45質量%であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、3~52質量%である、請求項1~8いずれかに記載のポリアミド。
【請求項10】
請求項1~9いずれかに記載のポリアミドを含む、成形体。
【請求項11】
請求項1~9いずれかに記載のポリアミドを含む、フィルム。
【請求項12】
炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)と、
炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)と、
炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)との反応生成物と、
を反応させて重合する、ポリアミドの製造方法。
【請求項13】
炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)と炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)を予め反応させたのち、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)との反応生成物を反応させて重合する、ポリアミドの製造方法。
【請求項14】
請求項1~9いずれかに記載のポリアミドを製造する、請求項12または13に記載のポリアミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性いずれにも優れたポリアミドおよびそれからなる成形体およびフィルムならびに該ポリアミドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柔軟性が高くゴム弾性を有するポリアミドは、チューブ・ホース類、日用品シューズ、シール材等に広く用いられている。このようなポリアミドには、通常、柔軟性やゴム弾性を付与するために、ポリエーテル成分やポリエステル成分を含有している。近年、このようなポリアミドは、自動車部品、電子機器周辺部品、電池材料への適用が検討されており、前記分野で用いるポリアミドにはさらに高い耐熱性が要求されている。
【0003】
耐熱性が高いポリアミドを得るためには、重合温度を高くする必要がある。重合温度を高くすると、柔軟性付与のために用いられるポリエーテル成分やポリエステル成分が分解するため分子量が低下し、さらに性能が不十分になるという問題がある。
【0004】
ポリエーテル成分やポリエステル成分を用いないポリアミドとしては、特許文献1に、テレフタル酸と1,10-デカンジアミンとダイマー酸とダイマージアミンとからなるポリアミドが開示されている。特許文献2には、アジピン酸と1,4-ブチレンジアミンとダイマー酸とダイマージアミンとからなるポリアミドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2020/085360号パンフレット
【文献】特表2014-506614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2のポリアミドは、耐熱性は向上するものの、柔軟性やゴム弾性が十分に向上しないという問題があった。
【0007】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、耐熱性、柔軟性およびゴム弾性いずれにもより十分に優れたポリアミドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)とを反応させ反応生成物を得たのち、該反応生成物を炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)と炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)と反応させて重合することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位と、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位と、炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位とを含有し、融点が240℃以上、結晶融解エンタルピーが20J/g以上、ヒステリシス試験における伸長回復率が50%以上である、ポリアミド。
(2) 炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)がダイマー酸である、(1)に記載のポリアミド。
(3) 炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)がダイマージアミンである、(1)または(2)に記載のポリアミド。
(4) 炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)がテレフタル酸である、(1)~(3)いずれかに記載のポリアミド。
(5) 炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)が1,10-デカンジアミンである、(1)~(4)いずれかに記載のポリアミド。
(6) 炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の合計の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、10~90質量%である、(1)~(5)いずれかに記載のポリアミド。
(7) 炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の合計の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、20~80質量%である、(1)~(6)いずれかに記載のポリアミド。
(8) 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)の炭素数が30~40であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)の炭素数が30~40であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)の炭素数が6~12であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)の炭素数が6~12である、(1)~(7)いずれかに記載のポリアミド。
(9) 前記炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、3~45質量%であり、
前記炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、3~45質量%であり、
前記炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、3~45質量%であり、
前記炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位の含有量が、前記ポリアミドを構成する全モノマー成分に対して、3~52質量%である、(1)~(9)いずれかに記載のポリアミド。
(10) (1)~(9)いずれかに記載のポリアミドを含む、成形体。
(11) (1)~(9)いずれかに記載のポリアミドを含む、フィルム。
(12) 炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)と、
炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)と、
炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)との反応生成物と、
を反応させて重合する、ポリアミドの製造方法。
(13) 炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)と炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)を予め反応させたのち、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)との反応生成物を反応させて重合する、ポリアミドの製造方法。
(14) (1)~(9)いずれかに記載のポリアミドを製造する、(12)または(13)に記載のポリアミドの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性いずれにも優れたポリアミドを提供することができる。
本発明のポリアミドやフィルムは、ハードセグメントとソフトセグメントが形成されているため、優れた柔軟性やゴム弾性を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】実施例1のヒステリシス曲線を示す図である。
図1B】実施例6のヒステリシス曲線を示す図である。
図2】比較例1のヒステリシス曲線を示す図である。
図3】ヒステリシスロス率の算出方法を説明するためのヒステリシス曲線を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリアミドは、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)(以下、成分(A)ということがある)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)(以下、成分(B)ということがある)からなる単位と、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)(以下、成分(C)ということがある)からなる単位と、炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)(以下、成分(D)ということがある)からなる単位とを含有する。成分(A)~(D)は、ポリアミド中、モノマー成分(またはモノマー残基)として含有されている。従って、「炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位」は単に「炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。「炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位」は単に「炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。「炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位」は単に「炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。「炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位」は単に「炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。
【0013】
本発明のポリアミドに用いる炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)としては、カルボキシル基以外は全て炭化水素からなる脂肪族ジカルボン酸が好ましく、例えば、ヘキサデカンジカルボン酸(炭素数18)、オクタデカンジカルボン酸(炭素数20)、ダイマー酸(炭素数36)が挙げられる。中でも、柔軟性が高くなることから炭素数20以上の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、ダイマー酸がより好ましい。ダイマー酸は、例えばオレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸から選択される2つの分子を付加反応させたものであってもよい。当該2つの分子は同種の分子であってもよいし、または相互に異種の分子であってもよい。ダイマー酸は、不飽和結合を有するジカルボン酸であってもよいが、着色しにくいことから、水添してすべての結合が飽和結合であるジカルボン酸が好ましい。成分(A)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0014】
成分(A)の炭素数は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、好ましくは20~40、より好ましくは30~40、さらに好ましくは34~38である。
【0015】
成分(A)の含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、3~45質量%であることが好ましく、5~45質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることが特に好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましい。当該含有量は、成分(A)の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリアミドが2種以上の成分(A)を含む場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0016】
本発明のポリアミドに用いる炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)としては、アミノ基以外は全て炭化水素からなる脂肪族ジカルボン酸が好ましく、例えば、オクタデカンジアミン(炭素数18)、エイコサンジアミン(炭素数20)、ダイマージアミン(炭素数36)が挙げられる。中でも、ダイマージアミンが好ましい。ダイマージアミンを用いることにより、他のモノマーより比較的少ない樹脂組成でもポリマー全体の柔軟性を効果的に向上させることができる。通常、ダイマージアミンは、ダイマー酸をアンモニアと反応させたのち、脱水し、ニトリル化し、還元することにより製造される。ダイマージアミンは、不飽和結合を有するジアミンであってもよいが、着色しにくいことから、水添してすべての結合が飽和結合であるジアミンが好ましい。成分(B)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0017】
成分(B)の炭素数は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、好ましくは20~40、より好ましくは30~40、さらに好ましくは34~38である。
【0018】
成分(B)の含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、3~45質量%であることが好ましく、5~45質量%であることがより好ましく、10~45質量%であることが特に好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましい。当該含有量は、成分(B)の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリアミドが2種以上の成分(B)を含む場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0019】
本発明のポリアミドに用いる炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)としては、例えば、テレフタル酸(炭素数8)、イソフタル酸(炭素数8)、オルトフタル酸(炭素数8)が挙げられる。中でも、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性をさらに向上させやすいことから、炭素数8以上の芳香族ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。成分(C)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0020】
成分(C)の炭素数は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、好ましくは4~12、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。
【0021】
成分(C)の含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、3~45質量%であることが好ましく、5~45質量%であることがより好ましく、5~40質量%であることが特に好ましく、8~35質量%であることがさらに好ましい。当該含有量は、成分(C)の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリアミドが2種以上の成分(C)を含む場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0022】
本発明のポリアミドに用いる炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)としては、例えば、1,12-ドデカンジアミン(炭素数12)、1,10-デカンジアミン(炭素数10)、1,9-ノナンジアミン(炭素数9)、1,8-オクタンジアミン(炭素数8)、1,6-ヘキサンジアミン(炭素数6)が挙げられる。中でも、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性をさらに向上させやすいことから、炭素数6以上のジアミンが好ましく、炭素数8以上のジアミンがより好ましく、1,10-デカンジアミンがさらに好ましい。(D)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0023】
成分(D)の炭素数は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、好ましくは4~12、より好ましくは6~12、さらに好ましくは8~12である。
【0024】
成分(D)の含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、3~52質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましく、5~40質量%であることが特に好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましい。当該含有量は、成分(D)の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリアミドが2種以上の成分(D)を含む場合、それらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0025】
本発明のポリアミドにおいては、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位は、ソフトセグメントを形成し、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位と、炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位は、ハードセグメントを形成するものと推定される。このようなハードセグメントとソフトセグメントの相分離構造の形成により、ポリアミドが優れた耐熱性を有しながらも、より十分に優れた柔軟性およびゴム弾性を有するものと考えられる。詳しくは、本発明のポリアミドにおいては、ハードセグメントがゴムの架橋点の役割を果たし、ソフトセグメントが自由に伸縮できるため、耐熱性が確保されながらも、柔軟性およびゴム弾性(特にゴム弾性)が発現する。成分(C)と(D)の組み合わせとしては、例えば、テレフタル酸とブタンジアミン、テレフタル酸と1,9-ノナンジアミン、テレフタル酸と1,10-デカンジアミン、テレフタル酸と1,12-ドデカンジアミンが挙げられ、中でも、テレフタル酸と1,10-デカンジアミンが好ましい。テレフタル酸と1,10-デカンジアミンを用いることにより、ハードセグメントが高結晶性のセグメントになりやすいので、ハードセグメントとソフトセグメントの相分離構造の形成が促進され、より十分に優れた柔軟性やゴム弾性を発現する。「ゴム」は、外力によって局所的に変形するが、除力すると元の形状へと戻る特性を示す物質の概念で用いている。
【0026】
ポリアミド中の炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位の合計の含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、10~90質量%であることが好ましく、15~80質量%であることがより好ましく、20~80質量%であることが特に好ましく、30~75質量%であることがさらに好ましい。当該合計含有量は、成分(A)の残基と、成分(B)の残基の合計の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。
【0027】
本発明のポリアミドには、重合時に分解しやすいポリエーテルやポリエステルを用いないことが好ましい。そのようなポリエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケートが挙げられる。ポリエーテルやポリエステルを用いた場合、重合温度が高いと、分解が生じる場合がある。
【0028】
ポリエーテル成分およびポリエステル成分の合計含有量は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。当該合計含有量範囲の下限値は通常、0質量%である。当該合計含有量は、ポリエーテル成分およびポリエステル成分の残基の含有量であって、ポリアミドを構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。ポリエーテル成分およびポリエステル成分は、ポリアミドとの共有結合によりポリアミドの一部を構成する成分であり、ポリアミドに単にブレンドされるものではない。
【0029】
本発明のポリアミドには、重合度調整や、製品の分解抑制や着色抑制等のため、末端封鎖剤を含有してもよい。末端封鎖剤としては、例えば、酢酸、ラウリル酸、安息香酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ステアリルアミン等のモノアミンが挙げられる。末端封鎖剤は上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。末端封鎖剤の含有量は、特に限定されないが、通常、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して0~10モル%である。
【0030】
本発明のポリアミドには、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状補強材;タルク、膨潤性粘土鉱物、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、グラファイト等の充填材;酸化チタン、カーボンブラック等の顔料;酸化防止剤;帯電防止剤;難燃剤;難燃助剤が挙げられる。添加剤は、重合時に含有させてもよいし、重合後溶融混練等により含有させてもよい。
【0031】
本発明のポリアミドにおいて、耐熱性の指標となる融点は、240℃以上であることが必要であり、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、270℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。融点が低すぎると、耐熱性が低下する。当該融点は通常、400℃以下(特に350℃以下)である。
【0032】
本発明のポリアミドにおいて、ハードセグメントの結晶性の指標となる結晶融解エンタルピーは、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、20J/g以上であることが好ましく、23J/g以上であることがより好ましく、25J/g以上であることがさらに好ましい。ハードセグメントの結晶性が高いほど、ハードセグメントとソフトセグメントの相分離構造の形成が促進され、柔軟性やゴム弾性が向上する。当該結晶融解エンタルピーが低すぎると、柔軟性および/またはゴム弾性が低下する。当該結晶融解エンタルピーは通常、120J/g以下(特に90J/g以下)である。
【0033】
本発明のポリアミドは、特に、後述のランダム型ポリアミドよりも十分に優れた柔軟性およびゴム弾性を有する。
【0034】
本発明のポリアミドにおいて、柔軟性の指標となる伸長回復率は、50%以上であることが必要であり、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、55%以上であることが好ましい。伸長回復率が低すぎると、柔軟性が低下する。当該伸長回復率は通常、100%以下(特に90%以下)である。
【0035】
本発明のポリアミドの伸長回復率は、本発明のポリアミドとモノマー組成が同様であって、モノマー成分(成分(A)~(D))がランダムに配列された従来のポリアミド(本明細書中、単にランダム型ポリアミドということがある)との対比により、表すことがより有効である。例えば、本発明のポリアミドの伸長回復率はランダム型ポリアミドの伸長回復率よりも大きい。本発明のポリアミドにおける伸長回復率の増加率(%)は、ランダム型ポリアミドの伸長回復率に基づいて通常は、10%以上であり、好ましくは20%以上であり、より好ましくは40%以上である。当該伸長回復率の増加率は通常、300%以下(特に200%以下)である。伸長回復率の増加率は、本発明のポリアミドの伸長回復率をX1で表し、ランダム型ポリアミドの伸長回復率をY1で表したとき、「{(X1-Y1)/Y1}×100」で表される値(%)である。ランダム型ポリアミドは、原料(全モノマー成分)をまとめて投入し重合すること以外、本発明のポリアミドの製造方法と同様の方法により得られたポリアミドである。
【0036】
本発明のポリアミドにおいて、柔軟性の指標となるショアーD硬度は、75以下であることが好ましく、65以下であることがより好ましい。当該ショアーD硬度は通常、1以上(特に2以上)である。
【0037】
本発明のポリアミドのショアーD硬度は、ポリアミドのモノマー組成にも依存するため、本発明のポリアミドとモノマー組成が同様であるランダム型ポリアミドとの対比により、表すことがより有効である。例えば、本発明のポリアミドのショアーD硬度はランダム型ポリアミドのショアーD硬度よりも小さい。本発明のポリアミドにおけるショアーD硬度の減少率(%)は、ランダム型ポリアミドのショアーD硬度に基づいて通常は、2%以上であり、好ましくは5%以上であり、より好ましくは6.5%以上である。当該ショアーD硬度の減少率は通常、70%以下(特に50%以下)である。ショアーD硬度の減少率は、本発明のポリアミドのショアーD硬度をX2と表し、ランダム型ポリアミドのショアーD硬度をY2と表したとき、「{(Y2-X2)/Y2}×100」で表される値(%)である。
【0038】
本発明のポリアミドにおいて、ヒステリシスロス率は、小さければ小さいほどゴム弾性が高いことを示す。本発明のポリアミドは、モノマーがランダムに重合した従来のポリアミドと対比して、ポリマー中のハードセグメントとソフトセグメントの連鎖長が制御されているため、ヒステリシスロス率が低い。本発明のポリアミドにおいて、ヒステリシスロス率は、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。当該ヒステリシスロス率は通常、10%以上(特に30%以上)である。
【0039】
本発明のポリアミドのヒステリシスロス率は、ポリアミドのモノマー組成にも依存するため、本発明のポリアミドとモノマー組成が同様であるランダム型ポリアミドとの対比により、表すことがより有効である。例えば、本発明のポリアミドのヒステリシスロス率はランダム型ポリアミドのヒステリシスロス率よりも小さい。本発明のポリアミドにおけるヒステリシスロス率の減少率(%)は、ランダム型ポリアミドのヒステリシスロス率に基づいて通常は、2%以上であり、好ましくは4%以上であり、より好ましくは5.5%以上である。当該ヒステリシスロス率の減少率は通常、40%以下(特に30%以下)である。ヒステリシスロス率の減少率は、本発明のポリアミドのヒステリシスロス率をX3と表し、ランダム型ポリアミドのヒステリシスロス率をY3と表したとき、「{(Y3-X3)/Y3}×100」で表される値(%)である。
【0040】
本発明のポリアミドは、成分(C)と成分(D)とを、成分(A)および成分(B)とは別に反応させることにより得ることができる。例えば、本発明のポリアミドは、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)とを反応させ反応生成物を得たのち、該反応生成物を、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)および炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)と、さらに反応させて重合することにより得ることができる。詳しくは、本発明のポリアミドは、
成分(A)と、
成分(B)と、
成分(C)と成分(D)との反応生成物と、
を反応させて重合することにより得ることができる。
【0041】
このような製造方法において、成分(A)および成分(B)は、相互に反応していない状態で使用されてもよいし、または相互に反応した状態(すなわち、それらの反応生成物の形態)で使用されてもよい。例えば、本発明のポリアミドは、成分(A)と成分(B)を予め反応させたのち、得られた成分(A)と成分(B)との反応生成物と、成分(C)と成分(D)との反応生成物を反応させて重合することにより得てもよい。詳しくは、本発明のポリアミドは、
成分(A)と成分(B)との反応生成物と、
成分(C)と成分(D)との反応生成物と、
を反応させて重合することにより得てもよい。
成分(A)および成分(B)は、ポリアミドおよび当該ポリアミドを含むフィルムの耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、相互に反応した状態(すなわち、それらの反応生成物の形態)で使用されることが好ましい。
【0042】
本発明において、前記のように重合することにより、成分(A)~(D)がランダムに重合した従来のポリアミドとは異なり、成分(C)と(D)からなるハードセグメントおよび成分(A)と(B)からなるソフトセグメントから構成されるポリアミドが得られる。従来のポリアミドが「ランダム型ポリアミド」であることに対して、本発明のポリアミドは、ハードセグメントおよびソフトセグメントの含有の観点から、「ブロック型ポリアミド」と称することができる。
【0043】
本発明の製造方法においては、用いる炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)のモノマー比率[(C)/(D)]を調整することにより、得られる反応生成物の連鎖長を制御することができ、その結果、得られるポリアミドの柔軟性やゴム弾性を制御することができる。柔軟性やゴム弾性がより十分に向上することから、モル比[(C)/(D)]は、45/55~60/40とすることが好ましく、45/55~55/45とすることがより好ましい。
【0044】
本発明のポリアミドの製造過程において、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)を含有する反応生成物の製造方法(以下、単に「反応生成物の製造方法X」ということがある)は特に限定されないが、例えば、成分(D)の融点以上、かつ成分(C)の融点以下の温度に加熱し、成分(C)の粉末の状態を保つように、成分(D)を添加する方法が挙げられる。例えば、成分(C)および(D)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、加熱温度は100~240℃(特に140~200℃)であってもよい。成分(D)の添加は連続的に行うことが好ましく、例えば、1~10時間(特に1~5時間)かけて行うことが好ましい。
【0045】
成分(C)と成分(D)との反応生成物は、成分(C)と成分(D)との塩の形態を有していてもよいし、それらの縮合物(またはオリゴマーもしくはプレポリマー)の形態を有していてもよいし、またはこれらの複合形態を有していてもよい。
【0046】
成分(A)と成分(B)を予め反応させる場合、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)と炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)とを反応させる方法は特に限定されないが、例えば、80~150℃(特に100~150℃)の温度で0.5~3時間反応させる方法が挙げられる。
【0047】
成分(A)と成分(B)との反応生成物もまた、成分(C)と成分(D)との反応生成物と同様に、塩の形態を有していてもよいし、それらの縮合物(またはオリゴマーもしくはプレポリマー)の形態を有していてもよいし、またはこれらの複合形態を有していてもよい。
【0048】
本発明のポリアミドの製造過程において重合方法は特に限定されないが、例えば、ハードセグメントポリマー(すなわちハードセグメントを構成する成分(C)および(D)のみから構成されるポリアミド)の融点以下の温度(好ましくは当該融点未満の温度)で重合する方法が挙げられる。詳しくは、ハードセグメントポリマー(すなわちハードセグメントを構成する成分(C)および(D)のみから構成されるポリアミド)の融点以下の温度に加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、当該温度を維持することにより重合する。このように重合することにより、ハードセグメントは溶融することなく、ソフトセグメントだけが溶融した状態で重合することができる。ハードセグメントポリマーの融点以下の温度で重合する方法は、重合温度が高くなり分解しやすい280℃以上の高融点のポリアミドの重合において、特に効果的である。
【0049】
「ハードセグメントポリマーの融点」とは、ハードセグメントを構成する成分(C)および(D)のみをモノマー成分として十分に重合させてなるポリアミドの融点のことである。「ハードセグメントポリマーの融点」は、例えば、国際公開2013/042541号パンフレットに記載の方法により、成分(C)および(D)のみをモノマー成分として十分に重合させてなるポリアミドの融点であってもよい。詳しくは、「ハードセグメントポリマーの融点」は、成分(C)および(D)から反応生成物を得る工程(i)および得られた反応生成物を重合する工程(ii)を含む方法により得られたポリアミド(ハードセグメントポリマー)の融点である。ハードセグメントポリマーの製造過程において、工程(i)では、成分(C)および(D)を、成分(D)の融点以上、かつ成分(C)の融点以下の温度に加熱し、成分(C)の粉末の状態を保つように、成分(D)を添加することにより反応生成物を得ることができる。工程(i)では、例えば、成分(C)および(D)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、加熱温度は100~240℃(好ましくは140~200℃、特に170℃)であってもよい。成分(D)の添加は連続的に行うことが好ましく、例えば、1~10時間(好ましくは1~5時間、特に2.5時間)かけて行うことが好ましい。ハードセグメントポリマーの製造過程において、工程(ii)では、工程(i)で得られた固相状態の反応生成物を、当該固相状態を保つように、十分に加熱して、重合(すなわち固相重合)を行う。工程(ii)では、例えば、成分(C)および(D)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、加熱温度(すなわち重合温度)は220~300℃(好ましくは240~280℃、特に260℃)であってもよく、加熱時間(すなわち重合時間)は1~10時間(好ましくは3~7時間、特に5時間)であってもよい。工程(i)および(ii)は窒素不活性ガス等の気流中で行うことが好ましい。例えば、成分(C)および(D)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、「ハードセグメントポリマーの融点」は通常315℃である。
【0050】
従って、本発明のポリアミドを製造するに際しては、例えば、以下の方法を採用することができる。まず、当該ポリアミドを構成する成分(C)および(D)のみを用いて上記した工程(i)および(ii)により十分に重合を行い、ポリアミド(すなわちハードセグメントポリマー)を得る。次いで、得られたポリアミドの融点を測定する。融点の測定方法は特に限定されず、例えば、示差走査型熱量計により測定することができる。その後、前記した反応生成物の製造方法Xにより、成分(C)と成分(D)とを反応させ反応生成物を得たのち、当該反応生成物を、「ハードセグメントポリマーの融点」以下の温度で、成分(A)および成分(B)と、さらに反応させて重合することにより、本発明のポリアミドを製造することができる。成分(A)~(D)それぞれとしてダイマー酸、ダイマージアミン、テレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、重合温度は220~300℃(好ましくは240~280℃、特に260℃)であってもよい。この場合、重合時間は、十分な重合が行われる限り特に限定されず、例えば、1~10時間(好ましくは3~7時間、特に5時間)であってもよい。
【0051】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。触媒の含有量は、特に限定されないが、通常、ジカルボン酸とジアミンの総モル量に対して0~2モル%である。
【0052】
本発明の製造方法においては、必要に応じて、有機溶媒や水を加えてもよい。
【0053】
本発明の製造方法においては、重合は、密閉系でおこなってもよいし、常圧でおこなってもよい。密閉系でおこなう場合、モノマーの揮発や縮合水の発生等で圧力が上昇することがあるので、適宜圧力を制御することが好ましい。一方、用いるモノマーの沸点が高く、加圧しなくてもモノマーが系外に流出しない場合、常圧で重合することができる。例えば、ダイマー酸、ダイマージアミン、テレフタル酸、デカンジアミンの組み合わせの場合、常圧で重合することができる。
【0054】
本発明の製造方法においては、酸化劣化を防ぐため、窒素雰囲気下または真空下で重合をおこなうことが好ましい。
【0055】
重合したポリアミドは、ストランド状に押出しペレットとしてもよいし、ホットカット、アンダーウォーターカットしてペレットとしてもよい。
【0056】
本発明の製造方法においては、重合後、さらに高分子量化するために、固相重合をおこなってもよい。固相重合は、重合時の粘度が高粘度で操業が困難になる場合等に、特に効果的である。固相重合は、不活性ガス流通下または減圧下で、樹脂組成物の融点未満の温度で30分以上加熱することによりおこなうことが好ましく、1時間以上加熱することによりおこなうことがより好ましい。樹脂組成物の融点は、上記した「ハードセグメントポリマーの融点」と同様の温度であってもよい。
【0057】
本発明のポリアミドは、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、焼結成形法等により成形体とすることができる。中でも、機械的特性、成形性の向上効果が大きいことから、射出成形法が好ましい。射出成形機としては、特に限定されないが、例えば、スクリューインライン式射出成形機またはプランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミドは、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化された後、成形体として金型から取り出される。射出成形時のヒータ設定温度は、融点以上とすることが好ましい。
【0058】
本発明の成形体は、上記した本発明のポリアミドを含んでいればよく、他のポリマーをさらに含んでもよい。成形体における本発明のポリアミドの含有量は通常、成形体全量に対して、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0059】
本発明のポリアミドを加熱溶融する場合、十分に乾燥されたペレットを用いることが好ましい。ペレットは、含有する水分量が多いと、射出成形機のシリンダー内で発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。射出成形に用いるペレットの水分率は、ポリアミド100質量部に対して、0.3質量部未満とすることが好ましく、0.1質量部未満とすることがより好ましい。
【0060】
本発明のポリアミドは、ヒューエルチューブ、ブレーキ配管、吸排気系部品、吸排気系配管、制振材、冷却管等の自動車用部品;パイプ類、シート類、コネクター等の電気電子部品;ギア;バルブ;オイルバン;クーリングファン;ラジエータータンク;シリンダーヘッド;キャニスター;ホース;スポーツシューズ等のソール;医療用カテーテル;スマートウォッチ等のウェアラブルデバイスのバンド;プロテクションケース;工業用チューブ;ワイヤーケーブル;結束バンド;ドローン部品;パッキン;異形材;射出成形品;3Dプリンタ造形用や釣糸用のモノフィラメント;繊維等に用いることができる。
【0061】
本発明のポリアミドは、特にフィルムとして好適に用いることができる。
【0062】
本発明のフィルムは、上記した本発明のポリアミドを含んでいればよく、他のポリマーをさらに含んでもよい。フィルムにおける本発明のポリアミドの含有量は通常、フィルム全量に対して、50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0063】
本発明のフィルムは、240~340℃で3~15分間溶融混合した後、Tダイを通じてシート状に押出し、この押し出された物を、-10~80℃に温度調節されたドラム上に密着させて冷却することにより未延伸フィルムを製造することができる。未延伸フィルムは、さらに延伸する事が出来る。得られた未延伸フィルムは、未延伸の状態で用いることできるが、通常、延伸フィルムとして用いることが多い。延伸は一軸方向または二軸方向に延伸されていることが好ましく、二軸延伸されていることがより好ましい。延伸方法としては、同時延伸法や逐次延伸法が挙げられる。
【0064】
同時二軸延伸法の一例としては、未延伸フィルムを同時二軸延伸し、続いて熱固定処理を施す方法が挙げられる。延伸は、30~150℃で、幅方向(以下、「TD」と略称することがある。)、長手方向(以下、「MD」と略称することがある。)ともに1.5~5倍とすることが好ましい。熱固定処理は、TDのリラックス処理を数%にて、150~300℃で数秒間おこなうことが好ましい。同時二軸する前に、フィルムに1~1.2倍程度の予備縦延伸を施しておいてもよい。
【0065】
逐次二軸延伸法の一例としては、未延伸フィルムにロール加熱、赤外線加熱等の加熱処理を施したうえで、縦方向に延伸し、続いて連続的に、横延伸、熱固定処理を施す方法が挙げられる。縦延伸は、30~150℃で、1.5~5倍とすることが好ましい。横延伸は、縦延伸の場合と同じ30~150℃とすることが好ましい。横延伸は、1.5倍以上とすることが好ましい。熱固定処理は、TDのリラックスを数%として150~300℃で数秒間おこなうことが好ましい。
【0066】
フィルムの製造装置においては、シリンダー、バレルの溶融部、計量部、単管、フィルター、Tダイ等の表面に対して、樹脂の滞留を防ぐため、その表面の粗さを小さくする処理が施されていることが好ましい。表面の粗さを小さくする方法としては、例えば、極性の低い物質で改質する方法が挙げられる。または、その表面に窒化珪素やダイヤモンドライクカーボンを蒸着させる方法が挙げられる。
【0067】
フィルムを延伸する方法としては、例えば、フラット式逐次二軸延伸法、フラット式同時二軸延伸法、チューブラ法を挙げることができる。中でも、フィルムの厚み精度を向上させ、フィルムのMDの物性を均一とすることができる観点から、フラット式同時二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0068】
フラット式同時二軸延伸法を採用するための延伸装置としては、例えば、スクリュー式テンター、パンタグラフ式テンター、リニアモーター駆動クリップ式テンターが挙げられる。
【0069】
延伸後の熱処理方法としては、例えば、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法等の公知の方法が挙げられる。中でも、均一に精度良く加熱できることから、熱風を吹き付ける方法が好ましい。
【0070】
本発明のフィルムには、製膜時の熱安定性を高め、フィルムの強度や伸度の劣化を防ぎ、使用時の酸化や分解等に起因するフィルムの劣化を防止するために、熱安定剤を含有させることが好ましい。熱安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤、ヒンダードアミン系熱安定剤、リン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤、二官能型熱安定剤が挙げられる。
【0071】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、Irganox1010(登録商標)(BASFジャパン社製、ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、Irganox1076(登録商標)(BASFジャパン社製、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、Cyanox1790(登録商標)(ソルベイ社製、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸)、Irganox1098(登録商標)(BASFジャパン社製、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、SumilizerGA-80(登録商標)(住友化学社製、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)が挙げられる。
【0072】
ヒンダードアミン系熱安定剤としては、例えば、Nylostab S-EED(登録商標)(クラリアントジャパン社製、N、N’-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル-1,3-ベンゼンジカルボキシアミド)が挙げられる。
【0073】
リン系熱安定剤としては、例えば、Irgafos168(登録商標)(BASFジャパン社製、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)、Irgafos12(登録商標)(BASFジャパン社製、6,6’,6”-[ニトリロトリス(エチレンオキシ)]トリス(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン))、Irgafos38(登録商標)(BASFジャパン社製、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル)-6-メチルフェニル)エチルホスフィット)、ADKSTAB329K(登録商標)(ADEKA社製、トリス(モノ-ジノニルフェニル)ホスフィット)、ADKSTAB PEP36(登録商標)(ADEKA社製、ビス(2,6-ジ―tert―ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト)、Hostanox P-EPQ(登録商標)(クラリアント社製、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニルジホスホナイト)、GSY-P101(登録商標)(堺化学工業社製、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト)、スミライザーGP(登録商標)(住友化学社製、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン)が挙げられる。
【0074】
イオウ系熱安定剤としては、例えば、DSTP「ヨシトミ」(登録商標)(三菱ケミカル社製、化学式名:ジステアリルチオジプロピオネート)、Seenox 412S(登録商標)(シプロ化成社製、ペンタエリスリトール テトラキス-(3-ドデシルチオプロピオネート))が挙げられる。
【0075】
二官能型熱安定剤としては、例えば、スミライザーGM(登録商標)、(住友化学社製、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート)、スミライザーGS(登録商標)(住友化学社製、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート)が挙げられる。
【0076】
フィルム強度の劣化を防止する観点からは、ヒンダードフェノール系熱安定剤が好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤の熱分解温度は、320℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。熱分解温度が320℃以上のヒンダードフェノール系熱安定剤としては、スミライザーGA-80が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤は、アミド結合を有していれば、フィルム強度の劣化を防止することができる。アミド結合を有しているヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、イルガノックス1098が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤に二官能型熱安定剤を併用することにより、フィルム強度の劣化をさらに低減することができる。
【0077】
これらの熱安定剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤を併用すれば、フィルムの製膜時における原料濾過用フィルターの昇圧を防止することができるとともに、フィルム強度の劣化を防止することができる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤と二官能型熱安定剤を併用すれば、フィルムの製膜時における原料濾過用フィルターの昇圧を防止することができるとともに、フィルム強度の劣化をさらに低減することができる。
【0078】
ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤の組み合わせとしては、スミライザーGA-80またはイルガノックス1098と、Hostanox P-EPQまたはGSY-P101との組み合わせが好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤と二官能型熱安定剤の組み合わせとしては、スミライザーGA-80またはイルガノックス1098と、HostanoxP-EPQまたはGSY-P101と、スミライザーGSの組み合わせが好ましく、スミライザーGA-80と、GSY-P101とスミライザーGSとの組み合わせがより好ましい。
【0079】
本発明のフィルムにおける上記熱安定剤の含有量としては、ポリアミド(A)100質量部に対して、0.01~2質量部とすることが好ましく、0.04~1質量部とすることがより好ましい。熱安定剤の含有量が0.01~2質量部とすることにより、熱分解をより効率的に抑制することができる。なお、熱安定剤を2種以上併用する場合は、各々の熱安定剤の個別の含有量、および熱安定剤の合計の含有量のいずれもが、上記の範囲に入っていることが好ましい。
【0080】
本発明のフィルムには、滑り性を良好にするため、滑剤粒子が含有されていてもよい。滑剤粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等の無機粒子や、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等の有機系微粒子が挙げられる。
【0081】
本発明のフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、各種の添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、例えば、顔料・染料等の着色剤、着色防止剤、上記熱安定剤とは異なる酸化防止剤、耐候性改良剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、強化剤、改質剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、各種ポリマーが挙げられる。顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。耐候性改良剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。難燃剤としては、臭素系難燃剤やリン系難燃剤等が挙げられる。強化剤としては、タルク等が挙げられる。なお、上記各種の添加剤は、フィルムを製造する際の任意の段階でこれを添加すればよい。
【0082】
本発明のフィルムには、必要に応じて、その表面の接着性を向上させるための処理を施すことができる。接着性を向上させる方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、酸処理、火炎処理が挙げられる。
【0083】
本発明のフィルムの表面には、易接着性、帯電防止性、離型性、ガスバリア性等の機能を付与するため、各種のコーティング剤が塗布されていてもよい。
【0084】
本発明の延伸されたフィルムには、金属またはその酸化物等の無機物、他種ポリマー、紙、織布、不織布、木材等が積層されていてもよい。
【0085】
本発明のフィルムは、耐熱性に優れるものであり、耐熱性の指標となる融点は、240℃以上であることが必要であり、250℃以上であることが好ましく、270℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることがさらに好ましい。
【0086】
また、本発明のフィルムの柔軟性の指標となる弾性率は、2500MPa以下であることが好ましく、2000MPa以下であることがより好ましく、1500MPa以下であることがさらに好ましい。
【0087】
また、本発明のフィルムは、誘電正接や誘電率が低く誘電特性に優れており、さらに絶縁特性にも優れている。
【0088】
得られたフィルムは、枚葉とされてもよいし、巻き取りロールに巻き取られることによりフィルムロールの形態とされてもよい。各種用途への利用に際しての生産性の観点から、フィルムロールの形態とすることが好ましい。フィルムロールとされた場合は、所望の巾にスリットされていてもよい。
【0089】
上述のようにして得られたフィルムは、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性いずれにも優れている。このため、本発明のフィルムは、医薬品の包装材料;レトルト食品等の食品の包装材料;半導体パッケージ等の電子部品の包装材料;モーター、トランス、ケーブル、電線、多層プリント配線板等のための電気絶縁材料;コンデンサ用途等のための誘電体材料;カセットテープ、デジタルデータストレージ向けデータ保存用磁気テープ、ビデオテープ等の磁気テープ用材料;太陽電池基板、液晶板、導電性フィルム、ガラス、デジタルサイネージ、その他表示機器等のための保護材料;LED実装基板、有機EL基板、フレキシブルプリント配線板、フレキシブルフラットケーブル、フレキシブルアンテナ、スピーカー振動板等の電子基板材料;
フレキシブルプリント配線用カバーレイフィルム、耐熱マスキング用テープ等の耐熱保護フィルム;耐熱バーコードラベル、各種工業用工程テープ等の耐熱粘着フィルム;耐熱リフレクター;耐熱離型フィルム;熱伝導フィルム;ダイシングテープ、ダイシングテープ一体型ダイアタッチフィルム(ダイシング・ダイアタッチフィルム)、ダイシングテープ一体型ダイボンディングフィルム(ダイシング・ダイボンディングフィルム)、ダイシングテープ一体型ウェハ裏面保護フィルム、バックグライディングフィルム等の半導体工程用フィルム;インモールド成形、フィルムインサート成形、真空成形、圧空成形等の成形加飾用材料;積層体や多層プリント配線板用の層間接着剤、フレキシブルプリント配線板用ボンディングシート、フレキシブルフラットケーブル用ボンディングシート、カバーレイフィルム用ボンディングシート等の接着用材料;チューブ被覆、電線被覆、衝撃吸収フィルム、封止フィルム等の衝撃吸収材料;写真フィルム;農業用材料;医療用材料;土木、建築用材料;濾過膜等、家庭用、産業資材;繊維材料用のフィルムとして、好適に用いることができる。本発明のフィルムは未延伸のまま上記用途で使用されてもよいし、または延伸されて延伸フィルムとして上記用途で使用されてもよい。
【実施例
【0090】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0091】
A.評価方法
ポリアミドおよびポリアミドフィルムの物性は、以下の方法によっておこなった。
【0092】
(1)樹脂組成
得られたペレットや粉末について、高分解能核磁気共鳴装置(日本電子社製ECA-500NMR)を用いて、H-NMR分析することにより、それぞれの共重合成分のピーク強度から求めた(分解能:500MHz、溶媒:重水素化トリフルオロ酢酸と重水素化クロロホルムとの容量比が4/5の混合溶媒、温度:23℃)。表2において、樹脂組成を最終組成として質量比で示した。
【0093】
(2)融点、結晶融解エンタルピー
得られたペレットや粉末から数mg採り、示差走査熱量計DSC-7型(パーキンエルマー社製)用いて、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温した後、350℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、昇温速度20℃/分で再昇温した。
再昇温時の熱ピークのトップを融点とし、吸熱ピークの熱量を結晶融解エンタルピーとした。結晶融解エンタルピーは、融解開始から終了までの温度範囲のピーク面積から求められる。
【0094】
(3)ショアーD硬度(柔軟性)
得られたペレットや粉末を十分に乾燥した後、射出成形機を用いて、シリンダー温度340℃、金型温度80℃の条件にて成形し、ISO準拠の一般物性測定用試験片(ダンベル片)を作製した。得られた試験片を用い、ASTM D 2240に準拠して測定した。
【0095】
(4)伸長回復率(柔軟性)、ヒステリシスロス率(ゴム弾性率)
上記(3)と同様にダンベル試験片を作製し、INTESCO社製2020型試験機を用いて伸長回復率及びヒステリシスロス率の測定をおこなった。23℃環境下、チャック間距離55mm、引張試験速度5mm/minの条件で、11mm引張り、直ちに同じ速度で元に戻し、応力がゼロになった時の残留歪A(mm)を求めた。実施例1および6ならびに比較例1のヒステリシス曲線をそれぞれ図1A図1Bおよび図2に示す。
伸長回復率は、残留歪Aを用いて下記式により算出した。
伸長回復率(%)=(11-A)/11×100
さらに、得られたヒステリシス曲線から、下記式により算出した。
ヒステリシスロス率(%)=面積(Oabcd)/面積(OabeO)×100
例えば、図3において、面積(Oabcd)は破線(縦破線)により示される領域の面積のことであり、面積(OabeO)は実線(横実線)により示される領域の面積のことである。図3は、ヒステリシスロス率の算出方法を説明するためのヒステリシス曲線を示す模式図である。
【0096】
(5)フィルムの引張破断強度、引張破断伸度(柔軟性)および引張弾性率
JIS K 7127に従って、温度20℃、湿度65%の環境下で測定した。試料の大きさは10mm×150mm、チャック間の初期距離は100mm、引張速度は500mm/分とした。
【0097】
(6)フィルムの吸水率
50℃で24時間の真空乾燥をおこなって重量を測定し、23℃の純水に浸漬した。24時間後、表面の水分をふき取って重量を測定し、浸漬前後の重量変化から吸水率を求めた。
【0098】
(7)フィルムの熱収縮率
JIS K7133に従って、200℃で15分間熱処理をした際のフィルムの収縮率を測定した。
【0099】
(8)フィルムの誘電特性
空洞共振器摂動法により、5.8GHzにおける比誘電率および誘電正接を測定した。試料の大きさは2mm×50mmとした。
【0100】
B.原料
原料は、以下のものを用いた。
・ダイマー酸:クローダ社製 プリポール1009
・テレフタル酸:
・ダイマージアミン:クローダ社製 プリアミン1075
・デカンジアミン:
・次亜リン酸ナトリウム:
・熱安定剤:住友化学社製 Sumilizer GA-80
【0101】
実施例1
・反応生成物の作製
リボンブレンダー式の反応装置にテレフタル酸23.5質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.1質量部を投入し、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温した1,10-デカンジアミン24.4質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、テレフタル酸:1,10-デカンジアミン=50.0:50.0であった。
【0102】
・ポリアミドの作製
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器にダイマー酸26.7質量部、ダイマージアミン25.3質量部を投入した。100℃で1時間撹拌した後に上記反応生成物を47.9質量部撹拌しながら投入した。
その後260℃まで撹拌しながら加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁溶液の状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥してペレット形態のポリアミドP1を得た。
【0103】
・フィルムの作製(同時二軸延伸フィルム)
得られたペレット 100質量部とスミライザーGA-80 0.4質量部とをドライブレンドし、シリンダー温度を330℃に加熱したスクリュー径が26mmである二軸押出機に投入し、溶融混練して、ストランド状に押出した。その後、冷却、切断して、ペレットを得た。
得られたペレットを、シリンダー温度330℃に加熱したところの、スクリュー径が50mmである単軸押出機に投入し溶融して、溶融ポリマーを得た。該溶融ポリマーを金属繊維焼結フィルター(日本精線社製、「NF-13」、公称濾過径:60μm)を用いて濾過した。その後、330℃にしたTダイより溶融ポリマーをフィルム状に押出し、フィルム状の溶融物とした。該溶融物を0℃に設定した冷却ロール上に静電印加法により密着させて冷却し、実質的に無配向の未延伸のポリアミドフィルムを得た。
得られた未延伸のフィルムのポリアミド成分の樹脂組成を求めたところ、用いたポリアミドの樹脂組成と同一であった。
得られたポリアミド未延伸フィルムの両端をクリップで把持しながら、フラット式同時二軸延伸機にて、二軸延伸をおこなった。延伸条件は、予熱部の温度が80℃、延伸部の温度が80℃、MDの延伸歪み速度が2400%/分、TDの延伸歪み速度が2400%/分、MDの延伸倍率が2.3倍、TDの延伸倍率が2.3倍であった。延伸後連続して、二軸延伸機の同じテンター内で250℃にて熱固定をおこない、フィルムの幅方向に6%のリラックス処理を施し、二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
得られた延伸フィルムのポリアミド成分の樹脂組成を求めたところ、用いたポリアミドの樹脂組成や未延伸のフィルムのポリアミド成分の樹脂組成と同一であった。
【0104】
実施例2~5
反応容器に投入するモノマーの量を表1のように変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこない、ポリアミドP2~P5を得た。また、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作をおこなって、溶融混練、未延伸のフィルムの作製、同時二軸延伸をおこない、同時二軸延伸フィルムを得た。
ポリアミドの作製工程において、反応容器に添加される反応生成物の量は、反応生成物の作製工程で使用されたテレフタル酸およびデカンジアミンとの合計使用量に等しい量であった。
【0105】
実施例6
・反応生成物の作製
リボンブレンダー式の反応装置にテレフタル酸26.8質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.1質量部を投入し、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温した1,10-デカンジアミン23.4質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、テレフタル酸:1,10-デカンジアミン=54.3:45.7であった。
【0106】
・ポリアミドの作製
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器にダイマー酸18.6質量部、ダイマージアミン31.1質量部を投入した。100℃で1時間撹拌した後に上記反応生成物を50.2質量部撹拌しながら投入した。
その後260℃まで撹拌しながら加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁溶液の状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥してポリアミドP6を得た。
【0107】
・同時二軸延伸フィルムの作製
得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作をおこなって、溶融混練、未延伸のフィルムの作製、同時二軸延伸をおこない、同時二軸延伸フィルムを得た。
【0108】
実施例7~9
反応容器に投入するモノマーの量を表1のように変更する以外は、実施例6と同様の操作をおこない、ポリアミドP7~P9を得た。また、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作をおこなって、溶融混練、未延伸のフィルムの作製、同時二軸延伸をおこない、同時二軸延伸フィルムを得た。
ポリアミドの作製工程において、反応容器に添加される反応生成物の量は、反応生成物の作製工程で使用されたテレフタル酸およびデカンジアミンとの合計使用量に等しい量であった。
【0109】
実施例10
・反応生成物の作製
リボンブレンダー式の反応装置にテレフタル酸29.7質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.1質量部を投入し、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温した1、6-ヘキサンジアミン20.8質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、テレフタル酸:1、6-ヘキサンジアミン=50.0:50.0であった。
【0110】
・ポリアミドの作製
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器にダイマー酸25.4質量部、ダイマージアミン24.0質量部を投入した。100℃で1時間撹拌した後に上記反応生成物を50.5質量部撹拌しながら投入した。
その後260℃まで撹拌しながら加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁溶液の状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥してペレット形態のポリアミドP10を得た。
【0111】
・同時二軸延伸フィルムの作製
得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作をおこなって、溶融混練、未延伸のフィルムの作製、同時二軸延伸をおこない、同時二軸延伸フィルムを得た。
【0112】
実施例11、16、19
・未延伸フィルムの作製
実施例11、16、19それぞれにおいて、実施例1、3および4で得られた、実質的に無配向の未延伸ポリアミドフィルムを250℃にて熱処理をおこなった。
【0113】
実施例12~14
・同時二軸延伸フィルムの作製
実施例1で得られた、実質的に無配向の未延伸ポリアミドフィルムを用いること、製造条件を表3に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0114】
実施例17、18
・同時二軸延伸フィルムの作製
実施例3で得られた、実質的に無配向の未延伸ポリアミドフィルムを用いること、製造条件を表3に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0115】
実施例20、21
・同時二軸延伸フィルムの作製
実施例4で得られた、実質的に無配向の未延伸ポリアミドフィルムを用いること、製造条件を表3に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0116】
実施例15(逐次二軸延伸フィルム)
実施例1で得られた、実質的に無配向の未延伸ポリアミドフィルムを、フラット式逐次軸延伸機によって二軸延伸をおこなった。まず、未延伸フィルムをロール加熱や赤外線加熱等によって80℃に加熱し、MDに延伸歪み速度2400%/分で3.0倍延伸して、縦延伸フィルムを得た。続いて連続的に、フィルムの幅方向の両端を横延伸機のクリップに把持させ、横延伸をおこなった。TD延伸の予熱部の温度は85℃、延伸部の温度は85℃、延伸歪み速度は2400%/分、TDの延伸倍率が3.0倍であった。そして、横延伸機の同じテンター内で、250℃で熱固定をおこない、フィルムの幅方向に6%のリラックス処理を施し、二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0117】
比較例1
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器に、ダイマー酸26.7質量部、ダイマージアミン25.3質量部、テレフタル酸23.5質量部、1,10-デカンジアミン24.4質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.1質量部を投入した。
その後、撹拌しながら260℃まで加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥してペレット形態のポリアミドP11を得た。
また、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作をおこなって、溶融混練、未延伸のフィルムの作製、同時二軸延伸をおこない、同時二軸延伸フィルムを得た。
【0118】
比較例2~5
ダイマー酸、ダイマージアミン、テレフタル酸、1,10-デカンジアミンの投入量を表1の投入量に変更する以外は、比較例1と同様の操作を行い、ポリアミドP12~15を得た。
また、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作をおこなって、溶融混練、未延伸のフィルムの作製、同時二軸延伸をおこない、同時二軸延伸フィルムを得た。
【0119】
比較例6
加熱機構を備えた粉末撹拌装置に、テレフタル酸49.0質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.1質量部を投入した。170℃加熱下、撹拌しながら、1,10-デカンジアミン50.9質量部を3時間かけて少量ずつ加え、反応生成物を得た。その後、攪拌しながら前記反応生成物を250℃まで加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、250℃で7時間重合をおこなった。重合中、系は粉末の状態であった。
重合終了後、払い出し、粉末形態のポリアミドP16を得た。
また、得られた粉末を用いて、実施例1と同様の操作をおこなって、溶融混練、未延伸のフィルムの作製、同時二軸延伸をおこない、同時二軸延伸フィルムを得た。
【0120】
比較例7
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器に、ダイマー酸51.3質量部、ダイマージアミン48.6質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.1質量部を投入した。
その後、撹拌しながら、260℃まで加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は均一な溶融状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥して、ペレット形態のポリアミドP17を得た。
また、得られたペレットを用いて、実施例1と同様の操作をおこなって、溶融混練、未延伸のフィルムの作製、同時二軸延伸をおこなったが、延伸フィルムを得ることが出来なかった。
【0121】
比較例8
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器に、両末端の水酸基に代えてアミノ基を有する数平均分子量1000のポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG1000)51.0質量部、テレフタル酸28.3質量部、1,10-デカンジアミン20.6質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.1質量部を投入した。
その後、撹拌しながら250℃まで加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、250℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁溶液の状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥して、ペレット形態のポリアミドP18を得たが、脆く、実用には適さないものであった。
【0122】
比較例9、11、13
・未延伸フィルムの作製
比較例9、11、13それぞれにおいて、比較例1、3、および4で得られた、実質的に無配向の未延伸ポリアミドフィルムを、200℃にて熱処理をおこなった。
【0123】
比較例10、12、14
比較例10、12、14それぞれにおいて、比較例1、3及び4で得られた、実質的に無配向の未延伸ポリアミドフィルムを用いること、製造条件を表3に示すように変更すること以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、二軸延伸ポリアミドフィルムを得た。
【0124】
実施例1~10、比較例1~8で得られたポリアミドの仕込み組成、成分(C)と(D)のモル比、重合方法、を表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
表1中の略号は以下の通りである。
A=炭素18以上の脂肪酸ジカルボン酸(A)(ダイマー酸)
C=炭素数が12以下の芳香族ジカルボン酸(C)(テレフタル酸)
B=炭素数が18以上の脂肪族ジアミン(B)(ダイマージアミン)
D1=炭素数が12以下の脂肪族ジアミン(D)(デカンジアミン)
D2=炭素数が12以下の脂肪族ジアミン(D)(1,6-ヘキサンジアミン)
E=両末端にアミノ基を有するPTMG1000
F=次亜リン酸Na一水和物
【0127】
実施例1~10、比較例1~8で得られたポリアミドの最終組成および得られたポリアミド、得られた二軸延伸フィルムの評価を表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
表2中の略号は以下の通りである。
A~C、D1、D2およびEそれぞれは表1のA~C、D1、D2およびEと同様である。
(1)ショアーD硬度の減少率(%);
(2)伸長回復率の増加率(%);
(3)ヒステリシスロス率の減少率(%)。
【0130】
表2において、実施例1~5のみにおいて、上記(1)~(3)の値を示すのは、当該実施例1~5それぞれと同様のモノマー組成の比較例1~5が存在するためである。同様のモノマー組成の実施例および比較例での値を相互に比較することが有意である。
【0131】
実施例1~5におけるショアーD硬度の減少率(%)はそれぞれ比較例1~5のショアーD硬度からの減少分の割合である。
ショアーD硬度の減少率は通常、2%以上(△:実用上問題のない範囲)であり、好ましくは5%以上(○:良)であり、より好ましくは6.5%以上(◎:優良)である。
【0132】
実施例1~5における伸長回復率の増加率(%)はそれぞれ比較例1~5の伸長回復率からの増加分の割合である。
伸長回復率の増加率は通常、10%以上(△:実用上問題のない範囲)であり、好ましくは20%以上(○:良)であり、より好ましくは40%以上(◎:優良)である。
【0133】
実施例1~5におけるヒステリシスロス率の減少率(%)はそれぞれ比較例1~5のヒステリシスロス率からの減少分の割合である。
ヒステリシスロス率の減少率は通常、2%以上(△:実用上問題のない範囲)であり、好ましくは4%以上(○:良)であり、より好ましくは5.5%以上(◎:優良)である。
【0134】
実施例1~5において、融点は通常、240℃以上(△:実用上問題のない範囲)であり、好ましくは270℃以上(○:良)、より好ましくは300℃以上(◎:優良)である。
【0135】
実施例1~5において、融点、ショアーD硬度の減少率(%)、伸長回復率の増加率(%)およびヒステリシスロス率の減少率(%)の全ての評価結果について、◎となる評価項目の数が多いほど好ましい。
【0136】
実施例11、16、19で得られた未延伸フィルムの評価および実施例12~15、17、18、20、21で得られた二軸延伸フィルムの評価を表3に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
実施例11、1、3、4および比較例9、1、3、4、6について、200℃熱収縮率および誘電特性(比誘電率、誘電正接)の評価を表4に示す。
【0139】
【表4】
【0140】
実施例1~10のポリアミドは、本発明で規定する要件を満たしていたために、いずれも、耐熱性の指標である融点が240℃以上で、柔軟性の指標であるヒステリシス試験における伸長回復率が50%以上で、耐熱性、柔軟性に優れていた。また、実施例1~10のポリアミドは、ハードセグメントの結晶性の指標である結晶融解エンタルピーが20J/g以上であったため、ハードセグメントが架橋点の役割を十分に果たすことができ、ゴム弾性に優れていた。得られた延伸フィルムも柔軟性に優れていた。
【0141】
実施例1~5のポリアミドと比較例1~5のポリアミドを対比することにより、ハードセグメントの反応生成物を作製したのち、ソフトセグメントの反応生成物に添加して重合する二工程の方法により得られたポリアミドは、原料をまとめて投入し重合する従来の一工程の方法で得られたポリアミドよりも、伸長回復率および結晶融解エンタルピーが大きく、またショアーD硬度およびヒステリシスロス率が小さく、柔軟性やゴム弾性が向上していることがわかる。得られた延伸フィルムについても伸度が向上し、弾性率も低下していた。
【0142】
比較例1、3~5のポリアミドは、伸長回復率が低く、柔軟性が低かった。
比較例2のポリアミドは、結晶融解エンタルピーが小さく、ハードセグメントの結晶性が低かった。
比較例6のポリアミドは、ソフトセグメントを形成する成分(A)と(B)を有していなかったため、伸長回復率が低く、柔軟性が低かった。
比較例7のポリアミドは、ハードセグメントを形成する成分(C)と(D)を有していなかったため、融点がなく耐熱性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のポリアミドおよびフィルムは、耐熱性、柔軟性およびゴム弾性のいずれの特性にも優れているため、これらの特性が要求される、包装材料等のあらゆる用途に有用である。
【要約】
本発明は、耐熱性、柔軟性およびゴム弾性いずれにもより十分に優れたポリアミドおよびポリアミドフィルムを提供する。本発明は、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(A)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(B)からなる単位と、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(C)からなる単位と、炭素数12以下の脂肪族ジアミン(D)からなる単位とを含有し、融点が240℃以上、結晶融解エンタルピーが20J/g以上、ヒステリシス試験における伸長回復率が50%以上であるポリアミド、および該ポリアミドを含むポリアミドフィルムに関する。
図1A
図1B
図2
図3