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  • 特許-プリント配線板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】プリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/42 20060101AFI20220404BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20220404BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20220404BHJP
   H05K 3/26 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H05K3/42 630A
H05K3/18 A
H05K3/00 J
H05K3/00 K
H05K3/26 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018115996
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019220549
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】593215380
【氏名又は名称】株式会社伸光製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】小池 貴浩
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207006(JP,A)
【文献】特表2013-532390(JP,A)
【文献】特許第6261104(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/42
H05K 3/18
H05K 3/00
H05K 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板材料の表面に、第1のレジストの硬化体による配線及び貫通穴の位置に開口部を有するパターンの第1のマスクを形成する工程と、
前記第1のマスクの上に設けた、前記第1のレジストとはレジスト除去条件が異なる第2のレジストによって、前記第1のレジストの硬化体による貫通穴位置の開口部内側に開口された開口部を持つ第2のマスクを形成する工程と、
前記第2のマスクの開口部から露出する前記基板材料に、貫通穴を形成するブラスト加工をする工程と、
前記第1のマスクを残し、前記第2のマスクのみを除去する工程と、
前記第1のマスクの開口部から露出する前記基板材料の片面若しくは両面に、凹部を形成するブラスト加工をする工程と、
前記第1のマスクを除去する工程と、
前記貫通穴と前記凹部が形成された前記基板材料をめっき処理して前記貫通穴及び前記凹部を金属層で充填し、前記基板材料の片面若しくは両面を被覆するめっき工程と、
前記基板材料の表面と前記凹部及び貫通穴の表面に充填した金属層を、平坦面とする平坦化処理を行う研磨工程とを含むプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記第1のマスクの除去時間が、前記第2のマスクの除去時間より遅いことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線が絶縁性基材に埋め込まれたプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、絶縁性基材の表面に金属層を備えた基材を用いて、レーザ加工やドリル加工によって貫通穴を形成し、表裏面の導通を取るめっき加工を行い、金属層をエッチング加工によって所定の配線パターンとするプリント配線板の製造方法が一般的である。
近年では配線の微細化が進み、形成したマスクの不具合や金属層のエッチング不良によって形成された配線間で電気的短絡が起こる問題を抱えている。
【0003】
このような短絡問題に対し、特許文献1には、銅配線間に絶縁物を形成することで電気的短絡を防止する技術が開示されている。
又、特許文献2には、ブラスト加工によって貫通穴と凹部を絶縁性基材に形成し、貫通穴と凹部に導電部材を形成する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、絶縁性基材の両面に金属層を備えた材料から微細な配線を形成するためには、金属層の表面にレジストによるマスクを形成し、エッチング加工を行って金属層を配線に形成するが、露光・現像によって形成したエッチング用マスクも微細なパターンであり現像時に、除去すべきレジストの一部が残るレジスト残不良が生じることがある。
このレジスト残不良の発生は、その下の金属層のエッチングが行われず、配線間が連結した状態でエッチングが行われることであり、そのために形成された配線のショートを防止できない課題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-344920号公報
【文献】特開2008-159969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況に鑑み、本発明は微細な配線パターンであってもエッチング残不良による配線の短絡を無くしたプリント配線板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の発明は、基板材料の表面に、第1のレジストの硬化体による配線及び貫通穴の位置に開口部を有するパターンの第1のマスクを形成する工程と、前記第1のマスクの上に設けた、前記第1のレジストとはレジスト除去条件が異なる第2のレジストによって、前記第1のレジストの硬化体による貫通穴位置の開口部内側に開口された開口部を持つ第2のマスクを形成する工程と、前記第2のマスクの開口部から露出する前記基板材料に、貫通穴を形成するブラスト加工をする工程と、前記第1のマスクを残し、前記第2のマスクのみを除去する工程と、前記第1のマスクの開口部から露出する前記基板材料の片面若しくは両面に、凹部を形成するブラスト加工をする工程と、前記第1のマスクを除去する工程と、前記貫通穴と前記凹部が形成された前記基板材料をめっき処理して前記貫通穴及び前記凹部を金属層で充填し、前記基板材料の片面若しくは両面を被覆するめっき工程と、前記基板材料の表面と前記凹部及び貫通穴の表面に充填した金属層を、平坦面とする平坦化処理を行う研磨工程とを含むプリント配線板の製造方法である。
【0008】
本発明の第2の発明は、第1の発明における第1のマスクの除去時間が、前記第2のマスクの除去時間より遅いことを特徴とするプリント配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る製造方法によれば、ブラスト加工により配線を形成すべき部位に凹部を形成するため、形成したレジストによるマスクが部分的なエッチング残となる不良が生じた現像工程であっても、ブラスト加工によって部分的なエッチング残となったマスクの一部は、配線間に残らず除去されるために、設定した凹が形成され、その凹部に配線を形成することから短絡の無いプリント配線板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の製造方法のフローを示した図である。
図2】本発明の製造方法により得られたプリント配線板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を、本発明に係る一実施形態を示す図1を用いて説明する。
図1(1)に示すように、絶縁性基材を基板材料として、その両面に除去時間の長い条件である第1のレジストをラミネートし、露光・現像によってレジストの硬化体による配線や貫通穴等の製品に必要な部分が開口された開口部を有する第1のマスク30を形成する。
次に図1(2)に示すように、第1のマスクの上に第1のマスクよりも除去時間の短い条件である第2のレジストをラミネートし、露光・現像によって第2のレジストの硬化体による貫通穴の位置に開口部を有する第2のマスク31を形成する。なお、第2のマスク31に形成された貫通穴の開口部の大きさは、第1のマスクの貫通穴の開口部の内側に設けられる大きさである。
この絶縁性基材への第1のマスクの形成後、第2のマスクを形成する工程では、絶縁性基材に穴加工等が施されないことから絶縁性基材に加工歪が生じることがなく反り等による変形が無い状態で第1のマスクの上に第2のマスクが形成されるので、第1のマスクと第2のマスクの位置ズレを生じることなく形成できる。
【0012】
次に図1(3)に示すように、ブラスト加工によって第2のマスクの開口部から露出している絶縁性基材10に貫通穴11を形成する。
このブラスト加工は、一方の面側からブラスト加工を行って貫通穴11を形成してもよいし、一方の面側から絶縁性基材の厚さの半分程度までブラスト加工によって凹部を形成した後、他方の面側からブラスト加工を行って残りの半分の厚さを貫通穴として形成してもよいが、一方の面側から貫通穴を形成するより、両面側から貫通穴を形成した方が、ブラスト加工による第2のマスクの劣化が少ないため、第2のマスクの厚さを薄くすることができる。
【0013】
貫通穴を作製した後、図1(4)に示すように第2のマスクのみを除去して第1のマスクを出現させる。
この第2のマスクは、硬化したレジストを除去する除去液中への浸漬時間が第1のレジストで形成された第1のマスクより短い条件で除去が可能なレジストで形成されているので、第1のマスクが除去されることは無い。
【0014】
その後、図1(5)に示すように、第1のマスクの開口部から露出している絶縁性基材10に対し、一方の面側から配線に必要な高さに後工程で研磨する厚さを加えた深さの凹部12をブラスト加工によって形成し、他の面側からも同様に所定の深さの凹部をブラスト加工によって形成する。
このブラスト加工による貫通穴や配線となる凹部の形成は、レジストによるマスク形成時の不良であるレジスト残不良(現像後に除去されるべき膨潤したレジストの一部がマスクの開口部に残る現象)が生じても、砥粒が衝突することによって除去されるため、貫通穴11や凹部12は形状不良が発生しないことになる。
【0015】
次に図1(6)に示すように第1のマスクを除去する。
そして図1(7)で示されるように、貫通穴11と凹部12が形成された絶縁性基材10の両面に、無電解めっき法によって銅めっき層20を形成する。なお、符号11aは貫通穴11に充填された金属層を表し、符号12aは、凹部12に充填された金属層を表している。
【0016】
次に図1(8)に示すように、凹部12及び貫通穴11に充填された金属層の銅めっき層12a、11aの表面Sと、絶縁性基材10の表面Sが略平坦面となるよう、金属層の銅めっき層と絶縁性基材10の表面を研磨加工する。
このような工程によって、貫通穴11に形成した銅めっき層11aにより表裏の配線の導通が取れた絶縁性基材10に埋め込まれた配線を有する図2に示すようなプリント配線板1が得られる。
【実施例
【0017】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
厚さ60μmの絶縁性基材10を基板材料として、その両面に厚さ25μmの第1のレジストをラミネートした。この第1のレジストは、除去液中の浸漬時間が240秒であるレジストを用いた。
次に配線や貫通穴の製品に必要なパターンが描写されたガラスマスクを介して露光を行い、現像を行って第1のマスク30を形成した。
【0019】
次に、剥離除去条件が第1のレジストと異なる厚さ25μmの第2のレジストを、第1のマスク30の上にラミネートした。この第2のレジストは、除去液中の浸漬時間が60秒であるレジストを用いた。
次に貫通穴のパターンが描写されたガラスマスクを介して露光を行い、現像を行って第2のマスク31を形成した。
【0020】
次に、貫通穴を作製すべく、貫通穴の位置で、第2のマスク31と第1のマスク30の開口部から露出している絶縁性基材10に対して、片面側からブラスト加工を行って略半分の厚さの凹部12を形成し、更に反対面側からブラスト加工を行い先に形成した凹部12と結合して貫通穴11として形成した。
次に除去液に60秒間浸漬して第2のマスク31を除去した。
【0021】
次いで、第1のマスク30の開口部から露出している絶縁性基材10に対し、片面側から約15μmの深さの凹部12をブラスト加工によって形成し、反対面側も約15μmの深さとなる凹部12をブラスト加工によって形成した。
この工程では、第1のマスク30や第2のマスク31を形成する露光・現像工程において、レジストが現像によって膨潤した状態で残るレジスト残が生じていたとしても、ブラスト加工によって物理的に膨潤したレジストは除去されることから、レジスト残の状況が解消されて所定形状の貫通穴11や凹部12が形成されることになる。
次に除去液に240秒間浸漬して、第1のマスク30を剥離除去した。
【0022】
その後、貫通穴11と凹部12が形成された絶縁性基材10の表面に無電解めっき法によって銅めっき層20を形成した。
次に凹部12及び貫通穴11に形成した銅めっき層11a、12aの表面Sと絶縁性基材10の表面Sが略平坦面となるよう、形成しためっき層と絶縁性基材の表面を研磨加工した。
以上の工程によって、貫通穴11に形成した銅めっき層11aにより表裏の配線の導通が取れた絶縁性基材10に埋め込まれた配線を有するプリント配線板1を得た。
従来の製造方法により微細パターンである製品の製造では、数%のエッチング残による配線短絡不良が発生していたが、本発明の製法では同じ微細パターンであるにもかかわらず、短絡不良は発生しなくなった。
【0023】
さらに、従来方法との比較では、本発明は銅層の無い絶縁性基材を用いて、「第1のレジストによる第1のマスク形成、第2のレジストによる第2のマスク形成、ブラスト加工による貫通穴形成、第1のマスク除去、ブラスト加工による凹部形成、第2のマスク除去、無電解めっき、研磨」の8工程の加工処理を行うことでプリント配線板が得られる。
一方、従来の方法は、銅張積層基板を用いて、「貫通穴用第1のレジストによる第1のマスク形成、銅層エッチング、レーザによる貫通穴形成、第1のマスク除去、貫通穴と全面に無電解めっき、第2のレジストによるマスク形成、エッチングによる配線形成、第2のマスク除去」の8工程の加工処理を行うことでプリント配線板を得ている。
このように本発明と従来の方法とは、工程数は同じであり、本発明の製造方法を採用しても製造におけるパフォーマンスの低下はなく、不良が低減されたプリント配線板が得られる。
【符号の説明】
【0024】
1 プリント配線板
10 絶縁性基材(基板材料)
11 貫通穴
11a 貫通穴11に充填された銅めっき層
12 凹部(配線)
12a 凹部12に充填された銅めっき層
20 銅めっき層
30 第1のマスク
31 第2のマスク
絶縁性基材(基板材料)表面
貫通穴及び凹部に充填された銅めっき層の表面
図1
図2