IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本無線株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-特性測定装置 図1
  • 特許-特性測定装置 図2
  • 特許-特性測定装置 図3
  • 特許-特性測定装置 図4
  • 特許-特性測定装置 図5
  • 特許-特性測定装置 図6
  • 特許-特性測定装置 図7
  • 特許-特性測定装置 図8
  • 特許-特性測定装置 図9
  • 特許-特性測定装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/02 20060101AFI20220404BHJP
   G01N 29/024 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G01N29/02 501
G01N29/024
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018000379
(22)【出願日】2018-01-05
(65)【公開番号】P2019120581
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】谷津田 博美
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/137009(WO,A1)
【文献】特開2017-009493(JP,A)
【文献】特開2015-059878(JP,A)
【文献】特開2013-130526(JP,A)
【文献】特開2011-232231(JP,A)
【文献】特開2017-090472(JP,A)
【文献】米国特許第06293136(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波センサにより対象物の特性を測定する特性測定装置であり、
対象物をセンサ表面に供給することによって生じるセンサ表面上の変化を、弾性表面波の伝搬変化として測定することにより供給物質に含まれる対象物質の量を推定する装置であって、
対象物の量と弾性表面波センサの出力信号の時間変化量との対応関係を表す換算曲線若しくは換算テーブルが格納された記憶部と、
対象物の測定開始から所定の時間間隔における位相および振幅の少なくとも一方の時間変化量を算出する検出部とを有し、
前記測定開始からの時間間隔は複数設定され、それぞれの時間間隔ごとに前記換算曲線若しくは前記換算テーブルが用意され、前記時間変化量に応じて換算に適用できる換算曲線もしくは換算テーブルを選択して前記対象物の特性を決定する、
ことを特徴とする特性測定装置。
【請求項2】
前記換算曲線若しくは換算テーブルは、既知の濃度サンプルを滴下して得た値を補間することで、対象物を滴下した時に得られる弾性表面波の位相および振幅の少なくとも一方の時間変化量から濃度に換算する、
ことを特徴とする請求項に記載の特性測定装置。
【請求項3】
前記変化量が所定範囲にあるときには、2つの前記換算曲線若しくは換算テーブルを利用して、前記対象物の特性を決定する、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の特性測定装置。
【請求項4】
前記弾性表面波センサは免疫センサであって、前記測定開始からの時間間隔は少なくとも2個以上であって、前記時間間隔のひとつは、対象物滴下後1秒~15秒の間に設定され、前記時間間隔のひとつは対象物滴下後30秒~300秒の間に設定されていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の特性測定装置。
【請求項5】
前記滴下後1秒~15秒の時間間隔において、位相および振幅の少なくとも一方の時間変化は10秒以下の変化量として計算された換算曲線若しくは換算テーブルを利用することを特徴とする請求項に記載の特性測定装置。
【請求項6】
前記滴下後30秒以降の時間間隔において、位相および振幅の少なくとも一方の時間変化は30秒以上の変化量として計算された換算曲線若しくは換算テーブルを利用することを特徴とする請求項に記載の特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象物の特性を測定する特性測定装置に関し、特に、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)センサを備えた特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波センサには、水晶などの圧電性基板上に形成された1対の櫛形電極と、その1対の櫛形電極の間に形成された検出領域とを備えた通過型遅延線がある。弾性表面波センサは、液体の濃度を測定するために用いられる(例えば、特許文献1等参照。)。つまり、測定の対象物である液体を弾性表面波センサに滴下し、所定周波数のバースト状の入力信号を弾性表面波センサに加え、弾性表面波センサからの出力信号の振幅および位相を検出することで、液体の特性を測定する。
【0003】
なお、上記のように入出力1対の櫛型電極を対向して配置した構造の通過型遅延線に対し、弾性表面波センサには1つの櫛形電極と反射器とを圧電性基板上に配置した反射型遅延線もある。この弾性表面波センサでは1つの櫛形電極で所定周波数のバースト状の信号の出力と、反射器で反射された信号の検出とを行っている。
【0004】
弾性表面波センサを用いた特性測定装置として、この液体中の抗原を測定するものがある。弾性表面波センサの表面には、前もって抗体が形成されている。測定の際には、弾性表面波センサの表面に測定の対象物である液体が滴下される。この後、弾性表面波センサの表面では抗体と抗原とによる抗原抗体反応が発生し、特性測定装置は弾性表面波センサからの出力信号の振幅変化および位相変化から抗原濃度を決定する。なお、このような特性測定装置には、検出領域の表面に抗原が形成されたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-181178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、先に述べた特性測定装置には次の課題がある。例えば図9に示すように、抗原の濃度が高くなる程、弾性表面波センサからの出力信号の位相変化が大きくなる。なお、図9の中で、0μg/ml~10μg/mlは、各曲線の抗原の濃度を表している。特性測定装置は、こうした位相変化を測定するために、抗原を含む液体である対象物を弾性表面波センサに滴下した後、一般的に300秒後に、弾性表面波センサからの出力信号の振幅変化および位相変化から、対象物の特性つまり抗原濃度を決定する。この結果、従来の特性測定装置では、対象物の特性を測定するまでに、300秒の時間を必要とする。
【0007】
また、先に述べた特性測定装置には次の課題がある。弾性表面波センサに滴下される液体の抗原が高い濃度である場合に、図10に示すように、高濃度の液体A1(実線)、さらに高い濃度のA2(破線)については、滴下されてからの時間の経過によって、液体A2に比べて濃度が低い液体A1の位相変化がフック効果により逆転する場合がある。この結果、従来の特性測定装置では測定精度が低下する場合がある。
【0008】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、対象物の測定時間の短縮と、測定精度の向上とを可能にする特性測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、弾性表面波センサにより対象物の特性を測定する特性測定装置であり、対象物をセンサ表面に供給することによって生じるセンサ表面上の変化を、弾性表面波の伝搬変化として測定することにより供給物質に含まれる対象物質の量を推定する装置であって、対象物の量と弾性表面波センサの出力信号の時間変化量との対応関係を表す換算曲線若しくは換算テーブルが格納された記憶部と、対象物の測定開始から所定の時間間隔における位相および振幅の少なくとも一方の時間変化量を算出する検出部とを有し、前記測定開始からの時間間隔は複数設定され、それぞれの時間間隔ごとに前記換算曲線若しくは前記換算テーブルが用意され、前記時間変化量に応じて換算に適用できる換算曲線もしくは換算テーブルを選択して前記対象物の特性を決定する、ことを特徴とする特性測定装置である。
【0010】
請求項1の発明では特性測定装置が次の処理をする。特性測定装置の記憶部は対象物の量(濃度)と弾性表面波センサの出力信号の時間変化量との対応関係を表す換算曲線若しくは換算テーブルを格納している。検出部は対象物の測定開始から所定の時間間隔における位相/振幅の時間変化量を算出する。この後、特性測定装置は時間変化量の算出結果から換算曲線若しくは換算テーブルを利用して対象物の特性を決定する。
【0012】
請求項の発明は、請求項に記載の特性測定装置において、前記換算曲線若しくは換算テーブルは、既知の濃度サンプルを滴下して得た値を補間することで、対象物を滴下した時に得られる弾性表面波の位相/振幅の時間変化量から濃度に換算する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の特性測定装置において、前記変化量が所定範囲にあるときには、2つの前記換算曲線若しくは換算テーブルを利用して、前記対象物の特性を決定する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項の発明は、請求項1~のいずれか1項に記載の特性測定装置において、前記弾性表面波センサは免疫センサであって、前記測定開始からの時間間隔は少なくとも2個以上であって、前記時間間隔のひとつは、対象物滴下後1秒~15秒の間に設定され、前記時間間隔のひとつは対象物滴下後30秒~300秒の間に設定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項の発明は、請求項に記載の特性測定装置において、前記滴下後1秒~15秒の時間間隔において、位相/振幅の時間変化は10秒以下の変化量として計算された換算曲線若しくは換算テーブルを利用することを特徴とする。
【0016】
請求項の発明は、請求項に記載の特性測定装置において、前記滴下後30秒以降の時間間隔において、位相/振幅の時間変化は30秒以上の変化量として計算された換算曲線若しくは換算テーブルを利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、出力信号の傾きが急である場合には、測定開始から直後の時間に、この傾きに対応する対象物の特性を検出部で決定するので、対象物の測定時間を短縮することを可能にする。また、この発明によれば、測定開始から直後の時間に対象物の特性を検出部で決定するので、フック効果の影響を防いで、測定精度を向上することができる。滴下直後は、滴下直後の表面状態の不安定性に起因する誤差が発生するが、抗原濃度の高い場合の変化は大きく、滴下直後の不安定性に起因する誤差を無視できる。
【0018】
この発明によれば、換算曲線若しくは換算テーブルにおいて既知の濃度サンプルを滴下して得た値を補間することで、実際に対象物を滴下したときに得られる弾性表面波の位相/振幅の時間変化量を濃度に換算することができる。
【0019】
この発明によれば、対象物の変化量が所定範囲にあるときには、2つの換算曲線若しくは換算テーブルを利用して対象物の特性を決定することができる。
【0020】
この発明によれば、弾性表面波センサが免疫センサである場合に対象物の濃度が高いときには、対象物滴下後1秒~15秒で濃度を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の一実施の形態による特性測定装置を示す構成図である。
図2】検出処理の一例を示すフローチャートである。
図3】測定のタイミングを示す図である。
図4】出力信号の傾きを示す図である。
図5】校正曲線を示す図である。
図6】特性曲線の傾きを示す図である。
図7】校正曲線を示す図である。
図8】フックの効果をキャンセルする様子を示す図である。
図9】弾性表面波センサからの出力信号の振幅変化を示す図である。
図10】フック効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、この発明の一実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。この実施の形態による特性測定装置を図1に示す。この特性測定装置は、発振器1と、バッファー2、4と、分配器3と、弾性表面波センサ(SAWセンサ)5、検出部6とを備えている。
【0023】
発振器1は所定周波数・所定振幅のバースト状の基準波を生成する。発振器1の所定周波数は例えば250MHzである。発振器1は、生成した基準波を送信信号として、バッファー2を経て分配器3に送る。分配器3は、バッファー2から送信信号を受け取ると、この送信信号を分配する。分配器3は、一方の送信信号を、バッファー4を経て弾性表面波センサ5に送り、他方の送信信号を検出部6に送る。
【0024】
弾性表面波センサ5は、物理的、生物学的あるいは化学的などの変化を、弾性表面波の伝播変化として測定するものであり、圧電性基板上に櫛型電極と検出領域とを配置して構成したセンサである。さらに、検出領域の表面には金膜が設けられ、金膜の表面には抗体が設けられている。そして、弾性表面波センサ5は、例えば250MHz付近の信号だけを通過させるように構成、設計されている。
【0025】
弾性表面波センサ5は、分配器3からの送信信号を入力信号とする。弾性表面波センサ5に入力信号が加えられた状態で、抗原を含む液体が弾性表面波センサ5の金膜に滴下されると、金膜の抗体と液体中の抗原との抗原抗体反応により出力信号が変化する。つまり、液体中の抗原濃度に応じて位相および振幅が変化する。検出部6により、入力信号に対する出力信号の変化分、つまり入力信号の位相および振幅が変化した信号を測定する。以下では、位相測定で記述するが、振幅測定でも良いし、位相および振幅の両方を測定しても良い。
【0026】
検出部6は、弾性表面波センサ5からの出力信号を基に、弾性表面波センサ5に滴下された液体中の抗原濃度を検出する。つまり、測定の対象物である液体が弾性表面波センサ5に滴下されて図2に示す検出処理が開始されると、検出部6は、測定開始時から経過する時間(「経過時間」と記す)を基に抗原濃度を検出する。この実施の形態では、経過時間に対して次の設定時間が設けられている。
T0<T1<T2<T3<T4(300秒)
【0027】
設定時間T0、T1は次のようにして設定されている。検出部6は、分配器3からの分配された送信信号と、弾性表面波センサ5からの出力信号とを基に、出力信号の変化を調べる。この実施の形態では、検出部6は、出力信号の位相の時間変化の傾きを調べている。例えば図3に示すように、抗原の濃度が高くなる程、弾性表面波センサ5からの出力信号の位相の時間変化の傾き大きくなる。特に、経過時間が短いときには、抗原の濃度が高くなる程、曲線の傾きが急になる。この実施の形態では、液体の滴下直後の時間T0、T1が設定されている。例えば、設定時間T0が3秒であり、設定時間T1が10秒である。
【0028】
設定時間T2、T3は次のようにして設定されている。先に述べたように、検出部6は、分配器3からの分配された送信信号と、弾性表面波センサ5からの出力信号とを基に、出力信号の位相の時間変化の傾きを調べる。抗原の濃度が低くなる程、弾性表面波センサ5からの出力信号の位相の時間変化の傾きが緩やかになる。つまり、経過時間が長くなるに従って、曲線の傾きが緩やかになっていく。この実施の形態では、傾きが穏やかになる時間T2、T3が設定されている。例えば設定時間T2が100秒であり、設定時間T3が200秒である。なお、設定時間T4の300秒は従来の測定で必要とした測定時間に該当している。
【0029】
このように設定時間T0、T1、T2、T3、T4(300秒)秒が設定されている状態で、検出部6は、図2に示す検出処理を行い、測定開始時から経過時間を調べる(ステップS1)。検出部6は、経過時間が設定時間のT0~T1の間での出力信号の位相を測定し、T0~T1の時間間隔での位相の時間変化の傾き、例えば図4に示すように傾きa(deg/s)を計算する(ステップS2)。この傾きaが所定値B1より大きいかを判断し(ステップS3)、傾きaが所定値B1より大きい場合、検出部6は、図5で示すように、傾きaに対する高濃度領域の校正曲線(換算曲線若しくは換算テーブル)より濃度を決定する(ステップS4)。なお、この校正曲線は検出部6内の記憶部(図示を省略)に記憶されている。図5では、曲線L1が校正曲線を表し、曲線L11が誤差を表している。そして、図5の矢印により誤差がゼロの範囲を表している。
【0030】
ステップS3で傾きaが所定値B1より小さいと判断した場合、検出部6は、次の設定時間のT1~T2の間で出力信号の位相の時間変化の傾きaを計算し(ステップS5)、傾きaが所定範囲にあるかどうかを判断する(ステップS6)。ステップS6で傾きaが所定範囲にあると、検出部6は、前述の図5に示す校正曲線(換算曲線若しくは換算テーブル)と後述の図7に示す校正曲線(換算曲線若しくは換算テーブル)との両方を基に濃度を決定する(ステップS7)。
【0031】
ステップS6で傾きaが所定範囲にないと判断した場合、検出部6は、次の設定時間のT2~T3の間での出力信号の位相の時間変化の傾きを測定し、設定時間のT2~T3の時間間隔での位相の傾き、例えば図6に示すように傾きb(deg/s)を計算する(ステップS8)。
【0032】
検出部6は、ステップS2等で位相の時間変化の傾きを計算する。この実施の形態では、設定時間T0~T1(3秒~10秒)、設定時間T1~T2(10秒~100秒)、設定時間T2~T3(100秒~200秒)の時間間隔での位相の傾きについては、時間に対する位相の変化を最小二乗近似法により傾きを算出する等の手法が取られる。特に、設定時間T2~T3間隔では、ほぼ位相の変化は1次傾斜となるため、多くのデータを利用することにより、ホワイトノイズを抑制することができる。設定時間T2~T3の領域を使うのは、低濃度領域を測定する場合であり、位相変化量は極めて小さいため、多くのデータを使うことにより誤差を小さくすることができ、精度向上に極めて有利である。
【0033】
弾性表面波センサ5が免疫センサである場合には測定開始からの時間間隔は少なくとも2個以上である。時間間隔のひとつは対象物である液体の滴下後1秒~15秒の間に設定され、時間間隔のもうひとつは対象物滴下後30秒~300秒の間に設定されている。ここで、免疫センサとは抗体、抗原を使ったものである。
【0034】
ステップS8の後、検出部6は、図7で示すように、傾きbに対する低濃度領域の校正曲線(換算曲線若しくは換算テーブル)より濃度を決定する(ステップS9)。なお、この校正曲線は検出部6内の記憶部(図示を省略)に記憶されている。図7では、曲線L2が校正曲線を表し、曲線L21が誤差を表している。そして、図7の矢印により誤差がゼロの範囲を表している。検出部6は、ステップS9およびステップS4で2つの校正曲線を用いている。この実施の形態では、検出部6はあらかじめ傾きを濃度に変換するための校正曲線を記憶している。これらの校正曲線は、抗原が高濃度である場合と、抗原が低濃度である場合とを基に作成されている。これらの校正曲線(図5図7)は、既知の濃度サンプルを滴下することにより得られ、この実験値を補間することにより、実際に検体を滴下した時に得られる位相の傾きに対して濃度を計算できるようにしておく。
【0035】
一方、高濃度と低濃度に完全に分離するのではなく、高濃度と低濃度の境界領域を設定し、境界領域では、高濃度領域での解と低濃度領域での解の両方を利用して、濃度を決定する場合もある。例えば、境界領域では、高濃度領域での解と低濃度領域での解の平均値として、解を決定することもできる。
【0036】
さらに、この実施の形態では、高濃度領域と低濃度領域の2領域に分割したが、高濃度領域、中濃度領域、低濃度領域の3領域に分割することも考えられ、さらに、その2箇所の境界領域において、上記と同様に、2領域の解の平均として解を決定することもできる。
【0037】
検出部6は、ステップS7の処理またはステップS4の処理またはステップS9の処理が終了すると、検出処理を終了する。
【0038】
以上がこの実施の形態による特性測定装置の構成である。次に、この特性測定装置による特性測定方法について説明する。測定の対象物である液体が弾性表面波センサ5に滴下されて測定が開始されると、検出部6は検出処理を行う。この検出処理により、検出部6は、設定時間T0~T1間での位相の時間変化の傾きを調べる。この傾きが所定値B1より大きい場合、検出部6は、傾きを基に液体の抗原濃度を決定する。この後、検出部6は決定した濃度を出力する。
【0039】
また、検出部6は、設定時間T0~T1間での位相の傾きが所定値B1より小さい場合、設定時間T2~T3間での位相の時間変化の傾きを調べる。次に、検出部6は、この傾きに対応する濃度を決定する。この後、検出部6は決定した濃度を出力する。
【0040】
こうしてこの実施の形態によれば、測定の対象物である液体の濃度を測定する場合に、濃度の濃いものは先に測定することにより、対象物の測定時間を短縮することを可能にする。
【0041】
また、この実施の形態によれば、図8に示すように、濃度の濃いものは先に測定することにより、液体A1に比べて濃度が低い液体A2の位相変化がフック効果により逆転する前に、つまり、フック効果の影響を除いて測定精度の向上を可能にする。
【0042】
さらに、抗原の濃度が低い場合に、複数の傾きの平均値から濃度を決定することにより、濃度が低い場合の測定精度を高めることを可能にする。
【符号の説明】
【0043】
1 発振器
2、4 バッファー
3 分配器
5 弾性表面波センサ
6 検出部(記憶部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10