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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】露出型柱脚構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20220404BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20220404BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
E02D27/00 D
E02D27/00 A
E04B1/24 R
E04B1/58 511H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018005596
(22)【出願日】2018-01-17
(65)【公開番号】P2019124064
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】林 真嗣
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 亨
(72)【発明者】
【氏名】村田 学
(72)【発明者】
【氏名】工藤 慈野
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-203746(JP,A)
【文献】特開平10-169011(JP,A)
【文献】特開2014-020177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物を支持する露出型柱脚構造であって、
基礎コンクリートと、内側アンカーボルトと、前記内側アンカーボルトよりも前記建築物の外方に設けられる外側アンカーボルトと、を有し、前記内側アンカーボルト及び前記外側アンカーボルトは、下部が前記基礎コンクリートに埋設され、上部が前記基礎コンクリートの上面から突出している、柱型と、
鉛直方向に延びる柱材と、
前記柱材の下端に固定され、上面と下面との間で貫通する内側貫通孔及び外側貫通孔が形成されたベースプレートであって、前記内側アンカーボルトの上部が前記内側貫通孔に挿通し、前記外側アンカーボルトの上部が前記外側貫通孔に挿通することで、前記内側アンカーボルト及び前記外側アンカーボルトの上部に対して固定されるベースプレートと、
前記基礎コンクリートの上面と前記ベースプレートの下面との間の空間に設けられるグラウトと、を備え、
前記内側アンカーボルトは、前記ベースプレートの前記内側貫通孔との間が空隙なく固定され、
前記外側貫通孔の内側面と前記外側アンカーボルトとの間に、グラウトが設けられない空隙が形成されている、露出型柱脚構造。
【請求項2】
建築物を支持する露出型柱脚構造であって、
基礎コンクリートと、内側アンカーボルトと、前記内側アンカーボルトよりも前記建築物の外方に設けられる外側アンカーボルトと、を有し、前記内側アンカーボルト及び前記外側アンカーボルトは、下部が前記基礎コンクリートに埋設され、上部が前記基礎コンクリートの上面から突出している、柱型と、
鉛直方向に延びる柱材と、
前記柱材の下端に固定され、上面と下面との間で貫通する内側貫通孔及び外側貫通孔が形成されたベースプレートであって、前記内側アンカーボルトの上部が前記内側貫通孔に挿通し、前記外側アンカーボルトの上部が前記外側貫通孔に挿通することで、前記内側アンカーボルト及び前記外側アンカーボルトの上部に対して固定されるベースプレートと、
前記基礎コンクリートの上面と前記ベースプレートの下面との間の空間に設けられるグラウトと、を備え、
前記内側アンカーボルトは、前記ベースプレートに対して、グラウトまたはフィラー部材を前記内側貫通孔の内側面と前記内側アンカーボルトとの間に配置することにより固定、または、前記内側アンカーボルトが挿通する座金を前記ベースプレートに対して溶接することにより固定され、
前記外側貫通孔の内側面と前記外側アンカーボルトとの間に、グラウトが設けられない空隙が形成されている、露出型柱脚構造。
【請求項3】
前記内側貫通孔の内側面と前記内側アンカーボルトとの間にグラウトが設けられている、請求項1に記載の露出型柱脚構造。
【請求項4】
前記外側貫通孔の周辺に、未固化のグラウトの前記外側貫通孔への流入を規制する流入規制部材が配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の露出型柱脚構造。
【請求項5】
前記流入規制部材は、前記ベースプレートの下方に配置される遮蔽板を有し、
前記遮蔽板は、前記外側貫通孔を遮蔽している、請求項に記載の露出型柱脚構造。
【請求項6】
前記流入規制部材は、前記遮蔽板を前記ベースプレートの下面に圧接させる圧接部材を有している、請求項に記載の露出型柱脚構造。
【請求項7】
前記遮蔽板は、前記外側アンカーボルトを挿通させる遮蔽板貫通孔が形成され、
前記遮蔽板貫通孔の内部に、グラウトの通過を規制する一方で空気の通過を許可する通気部を有している、請求項又はに記載の露出型柱脚構造。
【請求項8】
前記流入規制部材は、可撓性を有し、前記空隙に配置されている、請求項に記載の露出型柱脚構造。
【請求項9】
前記流入規制部材は、前記ベースプレートの上面に配置される座金を有し、
前記座金は、前記外側アンカーボルトを挿通させる座金貫通孔と、前記外側貫通孔の周辺を遮蔽して通気を規制する通気規制部と、が形成されている、請求項に記載の露出型柱脚構造。
【請求項10】
建築物を支持する露出型柱脚構造の製造方法あって、
基礎コンクリートと、内側アンカーボルトと、前記内側アンカーボルトよりも前記建築物の外方に設けられる外側アンカーボルトと、を有し、前記内側アンカーボルト及び前記外側アンカーボルトは、下部が前記基礎コンクリートに埋設され、上部が前記基礎コンクリートの上面から突出している、柱型の上面に、スペーサを配置するスペーサ配置工程と、
下端にベースプレートが固定された柱材を前記柱型の上方に配置し、前記ベースプレートに形成された内側貫通孔に前記内側アンカーボルトの上部を挿通させるとともに、前記
ベースプレートに形成された外側貫通孔に前記外側アンカーボルトの上部を挿通させ、前記ベースプレートの下面と前記スペーサの上面とを当接させる立設工程と、
前記内側アンカーボルトの上部及び前記外側アンカーボルトのそれぞれにボルトを締結することにより、前記ベースプレートを固定する固定工程と、
前記基礎コンクリートの上面と前記ベースプレートの下面との間の空間に未固化のグラウトを充填する充填工程と、を有し、
前記充填工程に先駆けて、未固化のグラウトの前記外側貫通孔への流入を規制する流入規制部材を前記外側貫通孔の周辺に配置する規制部材配置工程を有している、露出型柱脚構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物を支持する露出型柱脚構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を支持する柱脚構造は、柱型と、柱材と、を備えている。柱型は主にコンクリートにより形成され、その内部に複数の鉄筋が埋設されている。露出型柱脚構造では、アンカーボルトが、下部が基礎コンクリートに埋設され、上部が基礎コンクリートの上面から突出している。柱材は、ベースプレートを介してアンカーボルトに対して固定されることにより、柱型の上方に立設される。
【0003】
特許文献1には、ベースプレートに形成された貫通孔の内側面と、当該貫通孔に挿通されるアンカーボルトとの間に、グラウトが充填される露出型柱脚構造が記載されている。この構成では、充填されたグラウトの全ての面を拘束することにより、基礎コンクリートに対するベースプレートの移動を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-13912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の露出型柱脚構造では、地震等により建築物が加振されると、ベースプレートから、貫通孔に充填されたグラウトを介して、アンカーボルトに水平方向の外力が作用し、基礎コンクリート内で応力が発生する。この応力が過大な場合、アンカーボルトが著しく変形し、アンカーボルトの周囲のコンクリートが押し出され、基礎コンクリートの一側面が割裂しうる。このとき、アンカーボルトの周囲のコンクリート破断面は略円錐形状を呈することが多く、このような基礎コンクリートの破壊は「コーン状破壊」とも称される。コーン状破壊は、外力が作用する方向において前方に、コンクリートの押し出しに抵抗する部位が少ないアンカーボルトの周囲で、特に発生し易い。
【0006】
特許文献1記載の露出柱脚構造は、貫通孔に充填されたグラウトによりベースプレートの移動を抑制するものの、過大な外力に対するコーン状破壊の抑制については更なる向上が求められていた。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ベースプレートの移動の抑制と、基礎コンクリートのコーン状破壊の抑制と、を両立可能な露出型柱脚構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る露出型柱脚構造は、基礎コンクリートと、内側アンカーボルトと、内側アンカーボルトよりも建築物の外方に設けられる外側アンカーボルトと、を有し、内側アンカーボルト及び外側アンカーボルトは、下部が基礎コンクリートに埋設され、上部が基礎コンクリートの上面から突出している、柱型と、鉛直方向に延びる柱材と、柱材の下端に固定され、上面と下面との間で貫通する内側貫通孔及び外側貫通孔が形成されたベースプレートであって、内側アンカーボルトの上部が内側貫通孔に挿通し、外側アンカーボルトの上部が外側貫通孔に挿通することで、内側アンカーボルト及び外側アンカーボルトの上部に対して固定されるベースプレートと、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間の空間に設けられるグラウトと、を備える。内側アンカーボルトは、ベースプレートに対して固定される。外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトとの間に、グラウトが設けられない空隙が形成されている。
【0009】
この構成によれば、地震等により建築物が加振されると、柱材から、ベースプレートを介して、内側アンカーボルトに外力が作用する。ベースプレートが内側アンカーボルトから反力を受けることより、ベースプレートの移動が抑制される。
【0010】
一方、外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトとの間には、グラウトが設けられない空隙が形成されている。このため、ベースプレートが所定量移動して外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトが当接するまで、外側アンカーボルトへの外力の作用が抑制される。この結果、基礎コンクリートのコーン状破壊を抑制することができる。
【0011】
内側貫通孔の内側面と内側アンカーボルトとの間にグラウトが設けられていてもよい。
【0012】
この構成によれば、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間の空間にグラウトを設ける際に、当該グラウトを内側貫通孔の内側面と内側アンカーボルトとの間に流入させることができる。つまり、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間の空間へのグラウトの配置と、ベースプレートに対する内側アンカーボルトの固定と、を同一工程で行うことが可能になる。
【0013】
外側貫通孔の周辺に、未固化のグラウトの外側貫通孔への流入を規制する流入規制部材が配置されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間の空間に未固化のグラウトを注入する際に、外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトとの間へのグラウトの流入を流入規制部材により規制することができる。この結果、空隙を確実に形成することが可能になる。
【0015】
流入規制部材は、ベースプレートの下方に配置される遮蔽板を有し、遮蔽板は、外側貫通孔を遮蔽していてもよい。
【0016】
この構成によれば、外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトとの間へのグラウトの流入を遮蔽板により規制することができる。この結果、空隙を確実に形成することができる。
【0017】
流入規制部材は、遮蔽板を前記ベースプレートの下面に圧接させる圧接部材を有していてもよい。
【0018】
この構成によれば、外部貫通孔を遮蔽板により確実に遮蔽し、外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトとの間へのグラウトの流入を規制することができる。この結果、空隙を確実に形成することができる。
【0019】
遮蔽板は、外側アンカーボルトを挿通させる遮蔽板貫通孔が形成され、遮蔽板貫通孔の内部に、グラウトの通過を規制する一方で空気の通過を許可する通気部を有していてもよい。
【0020】
この構成によれば、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間の空間に未固化のグラウトを注入する際に、当該空間から通気部を介して空気を排出することができる。この結果、当該空間へのグラウトの充填を妨げることなく、空隙を形成することができる。
【0021】
流入規制部材は、可撓性を有し、空隙に配置されていてもよい。
【0022】
この構成によれば、外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトとの間へのグラウトの流入を、そこに配置した流入規制部材により、確実に規制することができる。流入規制部材は、可撓性に加えて通気性を有することが好ましい。これにより、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間の空間に未固化のグラウトを注入する際に、当該空間から流入規制部材を介して空気を排出することができる。この結果、当該空間へのグラウトの充填を妨げることなく、空隙を形成することができる。
【0023】
また、ベースプレートが移動した際に、流入規制部材が撓むことにより、外側アンカーボルトへの外力の作用が抑制される。この結果、基礎コンクリートのコーン状破壊を抑制することができる。
【0024】
流入規制部材は、ベースプレートの上面に配置される座金を有し、座金は、外側アンカーボルトを挿通させる座金貫通孔と、外側貫通孔の周辺を遮蔽して通気を規制する通気規制部と、が形成されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、座金と、ベースプレートの上面との間に形成される空間に空気が滞留する。外側貫通孔の上方における空気が滞留することにより、外側貫通孔を介した空気の排出が規制される。このような規制を適切に行うことにより、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間の空間に未固化のグラウトを注入する際に、外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトとの間へのグラウトの流入を規制することができる。この結果、空隙を確実に形成することが可能になる。
【0026】
上記課題を解決するために、本発明に係る露出型柱脚構造の製造方法は、基礎コンクリートと、内側アンカーボルトと、内側アンカーボルトよりも建築物の外方に設けられる外側アンカーボルトと、を有し、内側アンカーボルト及び外側アンカーボルトは、下部が基礎コンクリートに埋設され、上部が基礎コンクリートの上面から突出している、柱型の上面に、スペーサを配置するスペーサ配置工程と、下端にベースプレートが固定された柱材を柱型の上方に配置し、ベースプレートに形成された内側貫通孔に内側アンカーボルトの上部を挿通させるとともに、ベースプレートに形成された外側貫通孔に外側アンカーボルトの上部を挿通させ、ベースプレートの下面とスペーサの上面とを当接させる立設工程と、内側アンカーボルトの上部及び外側アンカーボルトのそれぞれにボルトを締結することにより、ベースプレートを固定する固定工程と、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間の空間に未固化のグラウトを充填する充填工程と、を有する。充填工程に先駆けて、未固化のグラウトの外側貫通孔への流入を規制する流入規制部材を外側貫通孔の周辺に配置する規制部材配置工程を有している。
【0027】
この製造方法によれば、充填工程において、基礎コンクリートの上面とベースプレートの下面との間の空間に未固化のグラウトを注入して充填する際に、外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトとの間へのグラウトの流入を流入規制部材により規制することができる。この結果、外側貫通孔の内側面と外側アンカーボルトとの間に空隙を確実に形成することが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ベースプレートの移動の抑制と、基礎コンクリートのコーン状破壊の抑制と、を両立可能な露出型柱脚構造及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施形態に係る露出型柱脚構造を示す斜視図である。
図2図1の露出型柱脚構造を示す側面図である。
図3図2のIII-III断面を示す断面図である。
図4図2のIV-IV断面を示す断面図である。
図5図2の座金を示す斜視図である。
図6図2の流入規制部材を示す平面図及び断面図である。
図7図1の露出型柱脚構造の製造工程を示す説明図である。
図8図1の露出型柱脚構造の製造工程を示す説明図である。
図9図1の露出型柱脚構造を示す側面図である。
図10】他の実施形態に係る流入規制部材を示す斜視図である。
図11】他の実施形態に係る流入規制部材を備えた露出型柱脚構造を示す側面図である。
図12】他の実施形態に係る流入規制部材を示す斜視図である。
図13図12の流入規制部材を備えた露出型柱脚構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0031】
まず、図1を参照しながら、実施形態に係る露出型柱脚構造1(以下「柱脚構造1」ともいう。)の概要について説明する。図1は、柱脚構造1を示す斜視図であり、建築物に複数設けられる柱脚構造1のうち、当該建築物の外壁近傍に相当する部位を示している。換言すれば、後述する柱材31は、「隅柱」や「側柱」と称される柱に相当する。
【0032】
柱脚構造1は、建築物の下部に設けられ、当該建築物の支持に用いられる構造体であり、戸建や集合住宅、商業ビル等、種々の建築物に適用し得る。柱脚構造1は、柱型2と、柱材31と、ベースプレート33と、を備えている。
【0033】
柱型2は、柱脚構造1の下部に配置される。柱型2の下部は、基礎コンクリート21により構成されている。基礎コンクリート21は、流動性を有するコンクリートを不図示の型枠内に注入し、固化させることにより形成されている。後述するように、基礎コンクリート21内には複数の鉄筋が埋設されている。基礎コンクリート21の上面21aからは、内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29が2本ずつ突出し、鉛直方向に延びている。基礎コンクリート21は、少なくともその一部が地中に埋設されている。
【0034】
柱材31は鋼材であり、建築物の一部を構成している。ベースプレート33は、柱材31の下端に溶接されている。ベースプレート33は、平面視で略正方形を呈し、所定の厚みを有する板形状の部材である。後述するように、ベースプレート33は、内側貫通孔35及び外側貫通孔37(図2参照)がそれぞれ2つずつ形成されている。
【0035】
柱脚構造1は、柱材31を柱型2に対して固定することにより構成される。詳細には、柱材31を鉛直方向に延びるように配置し、内側アンカーボルト27をベースプレート33の内側貫通孔35に挿通させ、外側アンカーボルト29をベースプレート33の内側貫通孔35に挿通させる。これにより、ベースプレート33の上面33aから、内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29が突出する。
【0036】
基礎コンクリート21の上面21aと、ベースプレート33の下面33bとの間には、グラウト4が設けられる。基礎コンクリート21の上面21aに不陸があった場合でも、グラウト4を設けて平坦な面を形成し、当該グラウト4にベースプレート33を載置することにより、柱材31をより正確に鉛直方向に延びるように配置することが可能になる。
【0037】
ベースプレート33の上面33aには、内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29を挿通させて座金5a,5bが配置される。さらに、内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29に、ナット91を螺合させることにより、ナット91が座金5a,5bを介してベースプレート33を柱型2側に押圧する。これにより、柱材31は、ベースプレート33を介して、内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29に対して固定され、柱型2の上方に立設される。柱脚構造1は、柱材31が柱型2の基礎コンクリート21内に埋設されることなく、露出していることから、「露出型柱脚構造」と称される。
【0038】
次に、図2から図6を参照しながら、柱脚構造1について詳細に説明する。図2は、柱脚構造1を示す側面図である。図3は、図2のIII-III断面を示す断面図である。図4は、図2のIV-IV断面を示す断面図である。図2から図4は、理解を容易にするため、一部の部材を断面視したり、透視したりして、柱脚構造1を模式的に示している。図5は、座金5a,5bを示す斜視図であり、座金5a,5bを2方向から示している。図6(A)は、流入規制部材6を示す平面図であり、図6(B)は、図6(A)のVIB-VIB断面を示す断面図である。
【0039】
図2及び図4に示されるように、柱型2の基礎コンクリート21内には、立上筋23と、フープ筋25と、内側アンカーボルト27と、外側アンカーボルト29と、が埋設されている。
【0040】
12本の立上筋23は、水平方向に互いに間隔を空け、基礎コンクリート21の外形に沿って配置されている。各立上筋23は、鉛直方向に延びている。フープ筋25は、立上筋23を囲んでおり、鉛直方向に互いに間隔を空けて配置されている。立上筋23及びフープ筋25の数は、支持する建築物等に応じて適宜設定される。
【0041】
内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29は、立上筋23及びフープ筋25よりも基礎コンクリート21の中央部側に配置されている。内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29は、いずれも鉛直方向に延びるように配置されている。外側アンカーボルト29は、内側アンカーボルト27よりも建築物の外方に設けられる。図2に示されるように、内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29は、それらの下部27a,29aが基礎コンクリート21内に埋設され、上部27b,29bが基礎コンクリート21の上面21aから突出している。上部27b,29bの外周面には雄ねじが形成されている。
【0042】
前述したように、基礎コンクリート21の上面21aと、ベースプレート33の下面33bとの間には、グラウト4が設けられている。グラウト4は、流動性を有するモルタルを、基礎コンクリート21の上面21aと、ベースプレート33の下面33bとの間に注入し、固化させることにより形成されている。当該モルタルは流動性に優れ、固化に伴う収縮量が比較的小さいものが用いられる。グラウト4の圧縮強度(例えば、40~60N/mm2)は、基礎コンクリート21の圧縮強度(例えば、18~30N/mm2)よりも大きい。
【0043】
図2に示されるように、グラウト4内には流入規制部材6が埋設されている。詳細には、流入規制部材6は、固化したグラウト4内に埋設されており、流入規制部材6の下部はグラウト4により覆われている。図6に示されるように、流入規制部材6は、遮蔽板61と、ばね67と、を有している。
【0044】
遮蔽板61は、円板形状を呈しており、その直径は外側貫通孔37の直径よりも大きい。遮蔽板61の中央部には、遮蔽板貫通孔63が形成されている。遮蔽板貫通孔63は、遮蔽板61を厚さ方向に貫通しており、その直径は外側アンカーボルト29の直径よりもやや大きい。遮蔽板貫通孔63の内部には、ブラシ65が設けられている。ブラシ65は、本発明に係る通気部の一例である。ブラシ65は、遮蔽板貫通孔63の内周面から、遮蔽板貫通孔63の中央部に向かって延びる繊維状の部材である。
【0045】
ばね67は、本発明に係る圧接部材の一例である。ばね67は、金属材料により形成されたつるまきばねであり、遮蔽板61の下面に固定されている。ばね67は、鉛直方向に伸縮し、伸縮量に応じた反力を発生させる。
【0046】
内側アンカーボルト27が挿通する座金5aと、外側アンカーボルト29が挿通する座金5bとは、互いに同一形状を呈している。図5に示されるように、座金5a,5bは座金本体51を有している。座金本体51の下面側には、凹部53が形成されている。また、座金本体51には、上面側から凹部53まで貫通する第1貫通孔55及び第2貫通孔57が形成されている。第1貫通孔55の直径は、第2貫通孔57の直径や、内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29の直径よりも大きい。
【0047】
次に、図7から図9を参照しながら、柱脚構造1の製造工程について説明する。図7及び図8は、柱脚構造1の製造工程を示す説明図である。図7は、当該工程の一部を示しており、図8は、当該工程の残部を示している。図9は、柱脚構造1を示す側面図であり、外側貫通孔37の周辺を拡大して示している。
【0048】
[スペーサ配置工程]
まず、図7(A)に示されるスペーサ配置工程において、柱型2の基礎コンクリート21の上面21aに、スペーサ41が配置される。スペーサ41は、モルタルにより形成され、例えば30mmの厚みを有する円板形状を呈している。当該モルタルは、グラウト4の形成に用いられるものと同種である。スペーサ41の直径は、ベースプレート33の一辺の長さよりも小さい。スペーサ41は、内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29よりも、基礎コンクリート21の中央部側に配置される。
【0049】
[規制部材配置工程]
次に、図7(B)に示される規制部材配置工程において、柱型2の基礎コンクリート21の上面21aに、流入規制部材6が配置される。流入規制部材6は、遮蔽板61の遮蔽板貫通孔63及びばね67に外側アンカーボルト29を挿通させて配置される。流入規制部材6のブラシ65は、遮蔽板貫通孔63の内側面と、外側アンカーボルト29との間に配置される。ばね67は基礎コンクリート21の上面21aと当接し、遮蔽板61はスペーサ41の上面41aよりも上方に配置される。
【0050】
[立設工程]
次に、図7(C)に示される立設工程において、柱型2の上方に柱材31が配置される。このとき、柱材31は、ベースプレート33の下面33bが、スペーサ41の上面41aと当接するまで下方に移動する。これにより、ベースプレート33の下面33bと、基礎コンクリート21の上面21aの上面とは、スペーサ41を挟んで対向し、両者の間に空間Cが形成される。また、ベースプレート33の内側貫通孔35に内側アンカーボルト27が挿通し、外側貫通孔37に外側アンカーボルト29が挿通し、それぞれの上部27b,29bがベースプレート33よりも上方に配置される。
【0051】
また、ベースプレート33が下方に移動すると、その下面33bが流入規制部材6の遮蔽板61を下方に押圧する。これにより、流入規制部材6のばね67が圧縮されて反力を発生させ、遮蔽板61を押圧してベースプレート33の下面33bに圧接させる。この遮蔽板61により、外側貫通孔37が下方から遮蔽される。
【0052】
[固定工程]
次に、図8(A)に示される固定工程において、ベースプレート33が、ナット91により固定される。具体的には、まず、座金5a,5bの第1貫通孔55に、内側アンカーボルト27の上部27b、及び、外側アンカーボルト29の上部29bが挿通し、ベースプレート33の上面33aに座金5a,5bが配置される。凹部53により、座金5a,5bと、ベースプレート33の上面33aとの間に空間が形成される。
【0053】
さらに、内側アンカーボルト27の上部27b、及び、外側アンカーボルト29の上部29bのそれぞれに、ナット91が2つずつ螺合する。下方のナット91は、座金5a,5bを介してベースプレート33を下方に押圧する。これにより、ベースプレート33がスペーサ41に押し付けられ、柱型2に対して固定される。上方のナット91は、下方のナット91を押圧し、その緩みを抑制する。
【0054】
[充填工程]
次に、図8(B)に示される充填工程において、空間Cは型枠93により包囲されるとともに、注入器95から座金5aの第2貫通孔57に未固化のグラウト4が注入される。注入されたグラウト4は、座金5aと、ベースプレート33の上面33aとの間に形成された空間を流れ、ベースプレート33の内側貫通孔35を通過して、空間Cに流入する。
【0055】
空間Cに流入したグラウトは、破線の矢印で示されるように、建築物の外方に向かって流れる。これにより、空間Cに配置されているスペーサ41、内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29が、グラウト4内に埋設される。
【0056】
このとき、空間Cの空気も、空間Cを流れるグラウトに加圧されることにより、建築物の外方に向かって流れる。空気は、流入規制部材6のばね67の内側に流入し、ブラシ65(図6参照)を通過する。当該空気は、さらに、ベースプレート33の外側貫通孔37を通過して、座金5bと、ベースプレート33の上面33aとの間に形成された空間に流入し、第2貫通孔57から排出される。
【0057】
一方、未固化のグラウト4の、ベースプレート33の外側貫通孔37への流入は、遮蔽板61及びブラシ65により規制される。つまり、ブラシ65は、空気を通過させるものの、グラウト4の通過は妨げる。このため、空間Cにグラウト4が充填されると、注入器95からのグラウト4の注入が困難になる。
【0058】
[完成]
充填工程の終了後、グラウト4を所定時間養生し、固化させる。グラウト4が固化した後、図8(C)に示されるように型枠93を除去することにより、柱脚構造1が完成する。
【0059】
ベースプレート33の内側貫通孔35の内側面と内側アンカーボルト27との間には、固化したグラウトである内側グラウト43が設けられる。内側グラウト43は、環状を呈しており、内側アンカーボルト27を囲んでいる。内側アンカーボルト27は、この内側グラウト43によりベースプレート33に対して固定される。
【0060】
一方、ベースプレート33の外側貫通孔37の周辺では、図9に示されるように、遮蔽板61よりも上方にはグラウト4が設けられていない。外側貫通孔37の内側面と外側アンカーボルト29との間には、グラウト4が設けられない空隙39が形成されている。
【0061】
次に、柱脚構造1の作用及び効果について説明する。
【0062】
柱脚構造1の構成によれば、地震等により建築物が加振されると、柱材31から、ベースプレート33及び内側グラウト43を介して、内側アンカーボルト27に外力が作用する。ベースプレート33が内側グラウト43を介して内側アンカーボルト27から反力を受けることより、ベースプレート33の移動が抑制される。
【0063】
一方、外側貫通孔37の内側面と外側アンカーボルト29との間には、グラウト4が設けられない空隙39が形成されている。このため、ベースプレート33が所定量移動して外側貫通孔37と外側アンカーボルト29が当接するまで、外側アンカーボルト29への外力の作用が抑制される。この結果、基礎コンクリート21のコーン状破壊を抑制することができる。
【0064】
内側貫通孔35の内側面と内側アンカーボルト27との間に内側グラウト43が設けられている。この構成によれば、基礎コンクリート21の上面21aとベースプレート33の下面33bとの間の空間Cにグラウト4を設ける際に、当該グラウト4を内側貫通孔35の内側面と内側アンカーボルト27との間に流入させることができる。つまり、基礎コンクリート21の上面21aとベースプレート33の下面33bとの間の空間Cへのグラウト4の配置と、ベースプレート33に対する内側アンカーボルト27の固定と、を同一工程で行うことが可能になる。
【0065】
外側貫通孔37の周辺に、未固化のグラウト4の外側貫通孔37への流入を規制する流入規制部材6が配置されていている。この構成によれば、基礎コンクリート21の上面21aとベースプレート33の下面33bとの間の空間Cに未固化のグラウト4を注入する際に、当該グラウト4が外側貫通孔37の内側面と外側アンカーボルト29との間に流入することを、流入規制部材6により規制することができる。この結果、空隙39を確実に形成することが可能になる。
【0066】
流入規制部材6は、ベースプレート33の下方に配置される遮蔽板61を有し、遮蔽板61は、外側貫通孔37を遮蔽している。この構成によれば、外側貫通孔37の内側面と外側アンカーボルト29との間へのグラウト4の流入を、遮蔽板61により規制することができる。この結果、空隙39を確実に形成することができる。
【0067】
流入規制部材6は、遮蔽板61をベースプレート33の下面33bに圧接させるばね67を有している。この構成によれば、外側貫通孔37を遮蔽板61により確実に遮蔽し、外側貫通孔37の内側面と外側アンカーボルト29との間へのグラウト4の流入を規制することができる。この結果、空隙39を確実に形成することができる。
【0068】
遮蔽板61は、外側アンカーボルト29を挿通させる遮蔽板貫通孔63が形成され、遮蔽板貫通孔63の内部に、グラウト4の通過を規制する一方で空気の通過を許可するブラシ65を有していてもよい。この構成によれば、基礎コンクリート21の上面21aとベースプレート33の下面33bとの間の空間Cに未固化のグラウト4を注入する際に、空間Cからブラシ65を介して空気を排出することができる。この結果、空間Cへのグラウトの充填を妨げることなく、空隙39を形成することができる。
【0069】
規制部材配置工程において、外側貫通孔37を遮蔽する遮蔽板61をベースプレート33の下方に配置してもよい。この製造方法によれば、外側貫通孔37の内側面と外側アンカーボルト29との間へのグラウト4の流入を遮蔽板61により規制することができる。この結果、空隙39を確実に形成することができる。
【0070】
次に、本発明に係る流入規制部材の他の実施形態について、図10を参照しながら説明する。図10は、他の実施形態に係る流入規制部材6Aを示す斜視図である。
【0071】
流入規制部材6Aは、その圧接部材が、前述した流入規制部材6のものと異なるが、流入規制部材6と同様にグラウト4内に埋設される。流入規制部材6Aのうち、流入規制部材6と同一の構成については同一の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0072】
流入規制部材6Aは、圧接部材として3つの脚部69を有している。3つの脚部69は互いに離間しており、遮蔽板61から下方に延びるように形成されている。脚部69は弾性を有し、外力を受けて開く(つまり、互いに離間する)ように変形することにより反力を発生させる。
【0073】
流入規制部材6Aを用いた不図示の露出型柱脚構造では、前述した規制部材配置工程(図7(B)参照)において、流入規制部材6に代えて流入規制部材6Aが配置される。脚部69は基礎コンクリート21の上面21aと当接し、遮蔽板61はスペーサ41の上面41aよりも上方に配置される。
【0074】
次の立設工程(図7(C)参照)において、ベースプレート33が下方に移動すると、その下面33bが流入規制部材6Aの遮蔽板61を下方に押圧する。これにより、流入規制部材6Aの脚部69が開いて反力を発生させ、遮蔽板61を押圧してベースプレート33の下面33bに圧接させる。この遮蔽板61により、外側貫通孔37が下方から遮蔽される。
【0075】
次に、本発明に係る流入規制部材のさらに他の実施形態について、図11を参照しながら説明する。図11は、他の実施形態に係る流入規制部材6Bを備えた露出型柱脚構造1Bを示す側面図である。
【0076】
流入規制部材6Bは、可撓性及び通気性を有する部材である。流入規制部材6Bとして、例えば、グラスウール等の繊維状物質や、スポンジ等の多孔質体を用いることができる。
【0077】
流入規制部材6Bを用いた露出型柱脚構造1Bでは、前述した規制部材配置工程(図7(B)参照)において、流入規制部材6に代えて流入規制部材6Bが配置される。流入規制部材6Bは、空隙39に配置される。
【0078】
この構成によれば、外側貫通孔37の内側面と外側アンカーボルト29との間へのグラウト4の流入を、そこに配置した流入規制部材6Bにより、確実に規制することができる。また、基礎コンクリート21の上面21aとベースプレート33の下面33bとの間の空間Cに未固化のグラウト4を注入する際に、当該空間Cから流入規制部材6Bを介して空気を排出することができる。この結果、当該空間Cへのグラウトの充填を妨げることなく、空隙39を形成することができる。
【0079】
また、ベースプレート33が移動した際に、流入規制部材6Bが撓むことにより、外側アンカーボルト29への外力の作用が抑制される。この結果、基礎コンクリート21のコーン状破壊を抑制することができる。
【0080】
次に、本発明に係る流入規制部材のさらに他の実施形態について、図12及び図13を参照しながら説明する。図12は、他の実施形態に係る流入規制部材である座金6Cを示す斜視図であり、座金6Cを2方向から示している。図13は、座金6Cを備えた露出型柱脚構造1Cを示す側面図である。
【0081】
座金6Cは、外側アンカーボルト29が挿通する座金5b(図2等参照)に代えて用いられる。一方、内側アンカーボルト27が挿通する座金5a(図2等参照)は、前述した実施形態と同様に用いられる。座金6Cの構成要素のうち、座金5a,5bの構成要素と同一のものには同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0082】
図12に示されるように、座金6Cは、座金本体51に第1貫通孔55が形成されている。座金6Cの第1貫通孔55は、本発明に係る座金貫通孔の一例である。一方、座金本体51には第2貫通孔57(図5参照)が形成されていない。座金6Cは、第2貫通孔57に代えて、通気規制部59を有している。
【0083】
図13に示されるように、座金6Cは、第1貫通孔55に外側アンカーボルト29を挿通させ、ベースプレート33の上面33aに配置される。さらに、外側アンカーボルト29にナット91が螺合することにより、第1貫通孔55の内側面と外側アンカーボルト29との間の空隙は、ナット91により上方から遮蔽される。
【0084】
座金6Cと、ベースプレート33の上面33aとの間に形成される空間は、通気規制部59が設けられたことにより、その上部が遮蔽されたものとなる。すなわち、当該空間に空気が滞留し易くなる。
【0085】
この構成によれば、座金6Cと、ベースプレート33の上面33aとの間に形成される空間に空気が滞留する。外側貫通孔37の上方における空気が滞留することにより、外側貫通孔37を介した空気の排出が規制される。このような規制を適切に行うことにより、基礎コンクリート21の上面21aとベースプレート33の下面33bとの間の空間Cに未固化のグラウト4を注入する際に、外側貫通孔37の内側面と外側アンカーボルト29との間へのグラウト4の流入を規制することができる。この結果、空隙39を確実に形成することが可能になる。
【0086】
座金6Cを流入規制部材として用いる場合、前述した製造工程のうち、図7(B)に示した工程を省略することができる。また、固定工程として図8(A)に示した工程が、規制部材配置工程を兼ねるものとなる。
【0087】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されず、適宜変更することができる。
【0088】
例えば、前述した流入規制部材6,6Aは、通気部としてブラシ65を有している。しかしながら、本発明に係る通気部は、この態様に限定されない。通気部は、例えば、遮蔽板貫通孔の内周面に形成されるスリットであってもよい。
【0089】
例えば、前述した座金6Cは、座金本体51に第2貫通孔57が形成されないことで、通気規制部59が設けられている。しかしながら、本発明に係る通気規制部は、この態様に限定されない。通気規制部は、例えば、座金本体51に形成された第2貫通孔57を、栓で閉塞することにより設けられていてもよい。
【0090】
例えば、前述した実施形態では、内側アンカーボルト27は、内側グラウト43によりベースプレート33に対して固定されている。しかしながら、本発明に係る、ベースプレートに対する内側アンカーボルトの固定は、この態様に限定されない。例えば、樹脂材料や金属材料で形成されたフィラー部材を内側貫通孔の内側面と内側アンカーボルトとの間に配置することにより、ベースプレートに対して内側アンカーボルトを固定してもよい。また、内側アンカーボルトが挿通する座金をベースプレートに対して溶接等することにより、ベースプレートに対して内側アンカーボルトを固定してもよい。
【0091】
例えば、前述した柱脚構造1の製造方法では、スペーサ配置工程(図7(A)参照)に続く工程として、規制部材配置工程(図7(A)参照)を有している。しかしながら、本発明に係る露出型柱脚構造の製造方法は、この態様に限定されない。規制部材配置工程は、例えばスペーサ配置工程に先駆けて行われる工程であってもよい。また、流入規制部材の配置を、スペーサの配置と同時に行ってもよい。
【0092】
例えば、前述した柱脚構造1では、それぞれ2本の内側アンカーボルト27及び外側アンカーボルト29を備えている。しかしながら、本発明に係る露出型柱脚構造は、この態様に限定されない。例えば、本発明に係る露出型柱脚構造は、それぞれ3本以上の内側アンカーボルト及び外側アンカーボルトを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1,1B,1C:露出型柱脚構造
2:柱型
21:基礎コンクリート
21a:(基礎コンクリートの)上面
27:内側アンカーボルト
27a:(内側アンカーボルトの)下部
27b:(内側アンカーボルトの)上部
29:外側アンカーボルト
29a:(外側アンカーボルトの)下部
29b:(外側アンカーボルトの)上部
31:柱材
33:ベースプレート
33a:(ベースプレートの)上面
33b:(ベースプレートの)下面
35:内側貫通孔
37:外側貫通孔
39:空隙
4:グラウト
41:スペーサ
43:内側グラウト
5a,5b,6C:座金
51:座金本体
59:通気規制部
6,6A,6B:流入規制部材
6C:座金(流入規制部材)
61:遮蔽板
63:遮蔽板貫通孔
65:ブラシ(通気部)
67:ばね(当接部材)
69:脚部(当接部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13