(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】電力線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20220404BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H04Q9/00 311S
H04Q9/00 311H
H02J13/00 B
(21)【出願番号】P 2018131602
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000205661
【氏名又は名称】大崎電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】黒田 善雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 英樹
(72)【発明者】
【氏名】布施 昂
(72)【発明者】
【氏名】星 拓斗
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-250301(JP,A)
【文献】特開2015-115646(JP,A)
【文献】特開2013-005310(JP,A)
【文献】特開2015-115645(JP,A)
【文献】特開2007-274068(JP,A)
【文献】特開2017-050970(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/051721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04Q 9/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線を使って電力線通信方式で通信する子側電力線通信回路、無線で通信する無線通信回路、前記子側電力線通信回路および前記無線通信回路を制御する子側制御回路、並びに、電力量を計量する計量回路を有する複数の電力量計と、
前記子側電力線通信回路と電力線を介して電力線通信方式で通信する親側電力線通信回路、および、前記子側電力線通信回路より送信される前記計量回路の計量値を前記親側電力線通信回路で受信して各前記電力量計の前記計量回路で計量される計量値を収集する親側制御回路を有する集線装置と
を備える電力線通信システムにおいて、
前記親側制御回路によって前記電力線通信システムに既に登録されている前記電力量計の前記子側制御回路は、前記電力線通信システムに新たに参入する前記電力量計が前記子側電力線通信回路によって前記親側電力線通信回路と通信できないときに前記無線通信回路によって無線送信する補完接続要求を前記無線通信回路で受信した場合に、新たに参入する前記電力量計に代わって新たに参入する前記電力量計の前記電力線通信システムへの登録要求を前記子側電力線通信回路によって前記親側電力線通信回路へ行い、
前記親側制御回路は、前記親側電力線通信回路に前記登録要求を受信すると、前記登録要求を送信した前記子側電力線通信回路を有する前記電力量計に紐付けて新たに参入する前記電力量計を前記電力線通信システムに登録する
ことを特徴とする電力線通信システム。
【請求項2】
前記子側制御回路は、電源供給を受けて起動するときに前記電力量計に接続される電力線の配線方式を検知し、三相交流電圧を使った配線方式が検知される場合、前記無線通信回路によって補完接続要求を無線送信し、
単相交流電圧を使った配線方式の電力線に接続される前記電力量計の前記子側制御回路は、前記補完接続要求を前記無線通信回路で受信した場合に、三相交流電圧を使った配線方式の電力線に接続される前記電力量計の、単相交流電圧を使った配線方式の電力線における前記電力線通信システムへの登録要求を前記子側電力線通信回路によって前記親側電力線通信回路へ行い、
前記親側制御回路は、前記親側電力線通信回路に前記登録要求を受信すると、前記登録要求を送信した前記子側電力線通信回路を有する前記電力量計に紐付けて、三相交流電圧を使った配線方式の電力線に接続される前記電力量計を単相交流電圧を使った配線方式の電力線における前記電力線通信システムに登録する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力量計で計量される計量値を電力線通信方式で電力線に送信して集線装置に収集する電力線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の電力線通信システムとしては、例えば、特許文献1に開示された通信システムがある。この通信システムは、電力供給を受ける複数の検針装置と、これら検針装置を管理する管理装置を含む。各検針装置および管理装置は電力線通信(PLC)および無線通信(RF)の機能を有し、電力線通信方式を用いて互いにマルチホップで通信し、無線通信方式を用いて互いにマルチホップで通信する。管理装置の制御回路は、通信ネットワークのメイン通信方式として電力線通信方式を設定し、管理装置から4番目の検針装置までのメインルートを、最小のルートコストを有するルートに設定する。メインルートを用いた4番目の検針装置との通信に失敗すると、4番目の検針装置は通信の失敗を管理装置に通知する。管理装置の制御回路は、メインルートを用いた通信の失敗を検出すると、代替通信方式の代替ルート、メイン通信方式の代替ルート、またはこれら両者の混在通信方式の代替ルートのうちの少なくとも1つを、ルートコストに基づいて代替ルートに設定する。そして、代替ルートを用いて4番目の検針装置と通信を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の通信システムでは、管理装置と検針装置との間のメインルートにおける通信の失敗は、代替ルートを用いて補償することができるが、通信システムに新たに参入する検針装置の管理装置との間における通信の失敗については補償できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
電力線を使って電力線通信方式で通信する子側電力線通信回路、無線で通信する無線通信回路、子側電力線通信回路および無線通信回路を制御する子側制御回路、並びに、電力量を計量する計量回路を有する複数の電力量計と、
子側電力線通信回路と電力線を介して電力線通信方式で通信する親側電力線通信回路、および、子側電力線通信回路より送信される計量回路の計量値を親側電力線通信回路で受信して各電力量計の計量回路で計量される計量値を収集する親側制御回路を有する集線装置と
を備える電力線通信システムにおいて、
親側制御回路によって電力線通信システムに既に登録されている電力量計の子側制御回路は、電力線通信システムに新たに参入する電力量計が子側電力線通信回路によって親側電力線通信回路と通信できないときに無線通信回路によって無線送信する補完接続要求を無線通信回路で受信した場合に、新たに参入する電力量計に代わって新たに参入する電力量計の電力線通信システムへの登録要求を子側電力線通信回路によって親側電力線通信回路へ行い、
親側制御回路は、親側電力線通信回路に登録要求を受信すると、登録要求を送信した子側電力線通信回路を有する電力量計に紐付けて新たに参入する電力量計を電力線通信システムに登録する
ことを特徴とする。
【0006】
本構成によれば、電力線通信システムに新たに参入する電力量計の、集線装置との間における電力線通信方式による通信に失敗があった場合、電力線通信システムに新たに参入する電力量計が無線通信回路によって無線送信する補完接続要求が、電力線通信システムに既に登録されている電力量計の無線通信回路に受信される。そして、この電力量計の子側制御回路により、新たに参入する電力量計の電力線通信システムへの代理登録要求が、電力線通信システムに既に登録されている電力量計の子側電力線通信回路によって親側電力線通信回路へ電力線通信で行われる。この代理登録要求を受信した集線装置は、親側制御回路により、登録要求を送信した電力量計に紐付けて新たに参入する電力量計を電力線通信システムに登録する。このため、従来の電力線通信システムでは行えなかった、電力線通信システムに新たに参入する電力量計の集線装置との間における通信の失敗が補償されるようになる。
【0007】
また、本発明は、
子側制御回路が、電源供給を受けて起動するときに電力量計に接続される電力線の配線方式を検知し、三相交流電圧を使った配線方式が検知される場合、無線通信回路によって補完接続要求を無線送信し、
単相交流電圧を使った配線方式の電力線に接続される電力量計の子側制御回路が、補完接続要求を無線通信回路で受信した場合に、三相交流電圧を使った配線方式の電力線に接続される電力量計の、単相交流電圧を使った配線方式の電力線における電力線通信システムへの登録要求を子側電力線通信回路によって親側電力線通信回路へ行い、
親側制御回路が、親側電力線通信回路に登録要求を受信すると、登録要求を送信した子側電力線通信回路を有する電力量計に紐付けて、三相交流電圧を使った配線方式の電力線に接続される電力量計を単相交流電圧を使った配線方式の電力線における電力線通信システムに登録する
ことを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、新たに電力線通信システムに参入する電力量計が、三相交流電圧を使った配線方式の三相電力線に接続される三相電力量計であると、子側制御回路がその起動時に検知した場合、子側制御回路は無線通信回路によって補完接続要求を無線送信する。この補完接続要求が、単相交流電圧を使った配線方式の電力線における電力線通信システムに既に登録されている既登録単相電力量計の無線通信回路に受信されると、この既登録単相電力量計の子側制御回路により、三相電力量計の電力線通信システムへの代理登録要求が、既登録単相電力量計の子側電力線通信回路によって親側電力線通信回路へ電力線通信で行われる。この代理登録要求を受信した集線装置は、親側制御回路により、登録要求を送信した既登録単相電力量計に紐付けて三相電力量計を電力線通信システムに登録する。このため、従来の電力線通信システムでは行えなかった、電力線通信システムに新たに参入する電力量計の集線装置との間における通信の失敗が補償されるようになると共に、高周波利用設備の個別の設置許可を受けなければ三相電力線で電力線通信システムを構築できない三相電力量計が、型式指定を受けることで高周波利用設備の個別の設置許可が免除される単相電力線における電力線通信システムに登録され、電力線通信システムにおいて管理することが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の電力線通信システムでは行えなかった、電力線通信システムに新たに参入する電力量計の集線装置との間における通信の失敗を補償することができる電力線通信システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態による電力線通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す電力線通信システムを構成する電力量計の内部構成を示すブロック図、(b)はコンセントレータの内部構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示す電力量計とコンセントレータとの間における動作シーケンスを示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による電力線通信システムの周囲の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示す電力量計とコンセントレータとの間における動作シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明による電力線通信システムを実施するための形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態による電力線通信システム1の構成を示すブロック図である。電力線通信システム1は、複数の電力量計A,B,C…と集線装置(以下、コンセントレータと称する)2とが電力線3に接続されて構成される。
【0013】
各電力量計A,B,C…の概略の内部構成は
図2(a)のブロック図に示される。各電力量計A,B,C…は、子側電力線通信回路4、無線通信回路5および子側制御回路6から構成される端末装置7と、計量回路8から構成される計量器9とを備え、一般的にスマートメータと称される。計量器9の計量回路8は、電力線3によって需要家に供給される電圧および電流を検知して、各電力量計A,B,C…が設置される需要家の使用電力量を計量する。端末装置7の子側電力線通信回路4は、電力線3を使って電力線通信(PLC:Power Line Communication)方式で通信する機能を有し、無線通信回路5は、特定小電力無線で無線通信する機能を有する。子側制御回路6は、子側電力線通信回路4および無線通信回路5を制御し、計量回路8で計量される計量値を子側電力線通信回路4によって電力線3へ送信する。
【0014】
コンセントレータ2の概略の内部構成は
図2(b)のブロック図に示される。コンセントレータ2は親側電力線通信回路10、無線通信回路16および親側制御回路11から構成される。親側電力線通信回路10は、電力線3を介して各電力量計A,B,C…の子側電力線通信回路4と電力線通信方式で通信する機能を有し、無線通信回路16は、特定小電力無線で無線通信する機能を有する。親側制御回路11は、子側電力線通信回路4より送信される計量回路8の計量値を親側電力線通信回路10で受信して、各電力量計A,B,C…の計量回路8で計量される計量値を30分周期で収集する。収集した計量値は、図示しないMDMS(Meter Data Management System:メータデータ管理システム)へ送信される。
【0015】
本実施形態における電力線通信はG3-PLC規格に準拠した方式で行われる。コンセントレータ2の親側制御回路11には、電力量計A,B,C…が計量値収集の対象として電力線通信システム1に既に登録されており、電力量計A,B,C…との電力線3を介する電力線通信の準備が整っている。電力量計Dは未だ電力線通信システム1に登録されておらず、親側制御回路11に認識されていない。電力量計Dは電力量計A,B,C…と同じ構成をしており、内部構成が
図2(a)に示される。今回、電力量計Dは、電力線通信システム1に新たに参入するべく、端末装置7の子側電力線通信回路4によって電力線3を介して親側電力線通信回路10との通信を試みたが、通信が行えず、通信に失敗したものと想定する。この場合、本実施形態による電力線通信システム1では、次のようにして、電力量計Dは電力線通信システム1に無線補完にて新たに参入する。
【0016】
図3は、この際の、電力量計Dと電量計Cとコンセントレータ2との間における動作シーケンスを示す図である。この動作シーケンスは図の上側から下側に向かって時間が経過するものとする。なお、電力量計A,Bも電力量計Cと同じ動作を行うため、その動作シーケンスの説明は省略する。
【0017】
電力線通信で電力線通信システム1への参入に失敗した電力量計Dは、端末装置7の無線通信回路5からビーコン信号を周囲に無線送信し、新たな相手との通信を要求する((1)ビーコン要求)。このビーコン信号を受信した電力量計Cは、このビーコン要求に応じて、自身の無線通信回路5からビーコン信号を周囲に無線送信し、応答する((2)ビーコン応答)。このビーコン応答によって最も信号強度の大きいビーコン信号を電力量計Cから受信した電力量計Dは、その無線通信回路5から、電力線通信システム1への補完接続を要求する無線信号を電力量計Cに宛てて送信する((3)補完接続要求)。電力量計Cは、この補完接続要求信号を無線通信回路5に受信すると、子側制御回路6の制御により、電力量計Dの電力線通信システム1への補完接続要求信号を電力量計Dの代わりに子側電力線通信回路4から電力線3へ送信する((4)電力量計Dの代理登録要求)。
【0018】
電力量計Cからこの電力量計Dの代理登録要求信号を親側電力線通信回路10に受信したコンセントレータ2は、計量値の収集対象となる電力量計を記憶する親側制御回路11のメモリに、新たに電力量計Dを記憶する。電力量計Dの電力線通信システム1へのこの登録の際、電力量計Dは電力量計Cに紐付けられてメモリに記憶される。コンセントレータ2は、電力量計Dの電力線通信システム1への登録を済ますと、親側制御回路11の制御により、電力量計Dの電力線通信システム1への登録が完了したことを表す応答信号を親側電力線通信回路10から電力線3へ送信する((5)電力量計Dの代理登録応答)。電力量計Cは、登録が完了したこの応答信号をコンセントレータ2から子側電力線通信回路4に受信すると、電力線通信システム1への代理登録が済んで電力線通信システム1に電力量計Dが補完接続されたことを表す応答信号を、子側制御回路6の制御によって無線通信回路5から電力量計Dへ無線送信する((6)補完接続応答)。
【0019】
すなわち、電力線通信システム1に新たに参入する電力量計Dは、子側電力線通信回路4によって親側電力線通信回路10と通信できないとき、無線通信回路5によって補完接続要求を無線送信する。親側制御回路11によって電力線通信システム1に既に登録されている電力量計Cの子側制御回路6は、電力量計Dの送信した補完接続要求を無線通信回路5に受信すると、新たに参入する電力量計Dに代わって新たに参入する電力量計Dの電力線通信システム1への代理登録要求を子側電力線通信回路4によって親側電力線通信回路10へ行う。コンセントレータ2の親側制御回路11は、親側電力線通信回路10にこの代理登録要求を受信すると、登録要求を送信した子側電力線通信回路4を有する電力量計Cに紐付けて、新たに参入する電力量計Dを電力線通信システム1に登録する。
【0020】
電力量計Dの電力線通信システム1への登録後に、コンセントレータ2から電力量計Dに宛てて随時送信される計量値送信指令等の指令要求信号は、電力量計Dに紐付けられた電力量計Cに宛てて、親側制御回路11の制御によって親側電力線通信回路10から電力線3へ送信される((7)電力量計D宛て随時指令要求)。電力量計Cは、コンセントレータ2から子側電力線通信回路4にこの随時指令信号を受信すると、受信した随時指令信号を電力量計Dへ無線通信回路5から無線通信によって転送する((8)随時指令要求)。電力量計Dは、電力量計Cからこの随時指令要求信号を無線通信回路5に受信すると、計量回路8で計量した計量値を送信するといった、随時指令要求に応じた応答信号を子側制御回路6の制御により無線通信回路5から無線送信する((9)随時指令応答)。電力量計Cは、この随時指令応答信号を電力量計Dから受信すると、電力量計Dから受信した応答信号を、子側制御回路6の制御により子側電力線通信回路4から電力線3へ送信する((10)電力量計D宛て随時指令応答)。
【0021】
このような本実施形態による電力線通信システム1によれば、電力線通信システム1に新たに参入する電力量計Dの、コンセントレータ2との間における電力線通信方式による通信に失敗があった場合、電力線通信システム1に新たに参入する電力量計Dが無線通信回路5によって無線送信する補完接続要求が、電力線通信システム1に既に登録されている電力量計Cの無線通信回路5に受信される。そして、この電力量計Cの子側制御回路6により、新たに参入する電力量計Dの電力線通信システム1への代理登録要求が、電力線通信システム1に既に登録されている電力量計Cの子側電力線通信回路4によって親側電力線通信回路10へ電力線通信で行われ、親側制御回路11により、登録要求を送信した電力量計Cに紐付けて新たに参入する電力量計Dが電力線通信システム1に登録される。このため、従来の電力線通信システムでは行えなかった、電力線通信システム1に新たに参入する電力量計Dのコンセントレータ2との間における通信の失敗が補償されるようになる。
【0022】
なお、上記の実施形態では、電力線通信システム1に新たに参入する電力量計Dが、電力量計Cの子側電力線通信回路4を介して親側電力線通信回路10と電力線通信し、電力量計Cによって電力線通信システム1に代理登録される場合について、説明した。しかし、電力量計Dがコンセントレータ2に近い位置にあり、電力量計Dの無線通信回路5がコンセントレータ2の無線通信回路16と通信できる距離にある場合には、電力量計C等を介さずに、電力量計Dは、コンセントレータ2と直接無線通信を行うことでも、電力線通信システム1に新たに参入することができる。
【0023】
次に、本発明の第2の実施形態による電力線通信システムについて、説明する。
図4は、この第2の実施形態による電力線通信システム1の周囲の構成を示すブロック図である。
図4において
図1と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0024】
第2の実施形態による電力線通信システム1では、コンセントレータ2および複数の電力量計A,B,C…が接続されている電力線3は単相交流電源12から出力される単相交流電源を電灯用として需要家に供給する。一方、三相電力量計E,Fが接続されている電力線13は三相交流電源14から出力される三相交流電源を動力用として需要家に供給する。三相電力量計E,Fも、その内部構成は基本的に
図2(a)に示される構成と同じ構成をしている。
【0025】
電線路に10kHz以上の高周波電流を通ずる通信設備は、総務大臣の高周波利用設備設置許可を受けなければならない。G3-PLC規格の電力線通信方式を使用する電力線通信システム1は、この「10kHz以上の高周波電流を通ずる通信設備」に該当する。総務大臣の型式指定を受けた通信設備は、高周波利用設備の個別の設置許可が免除されるが、単相交流を通ずる単相2線式もしくは単相3線式の電力線の使用に限られる。
【0026】
このため、単相交流電源12から単相交流を電力線3に通ずる電力線通信システム1は、総務大臣の型式指定を1回受けることで、個別に、つまり、電力線通信システム1を設置する物件毎に、高周波利用設備の設置許可を受けずに済む。しかし、三相交流電源14から三相交流を電力線通信システムによって三相3線式もしくは三相4線式の電力線13に通ずる場合には、電力線通信システムを設置する物件毎に、総務省通信局へ「高周波利用設備申請」を行い、総務大臣の高周波利用設備設置許可を受ける必要がある。この「高周波利用設備申請」を行うには、設置する機器の製造番号や仕様、建物の単線結線図等の多くの申請書類を用意しなければならない。したがって、申請から設置許可までに1ヶ月程度の期間がかかることから、三相交流を通ずる電力線13に電力線通信システムを構築するには多くの時間と労力が必要とされる。このため、三相3線式もしくは三相4線式の電力線13に接続された三相電力量計E,Fで計量される計量値を収集するのは従来容易ではなかった。
【0027】
第2の実施形態による電力線通信システム1では、次のようにして、三相電力量計E,Fを新たに電力線通信システム1に登録し、三相交流電圧の電力線13に接続された三相電力量計E,Fで計量される計量値の収集を容易に行う。
【0028】
図5は、三相電力量計Fと単相電力量計D,Cとコンセントレータ2との間における動作シーケンスを示す図である。この動作シーケンスも図の上側から下側に向かって時間が経過するものとする。また、点線15で囲む動作シーケンスは、
図3に示す動作シーケンスと同じであり、その説明は省略する。また、三相電力量計Eについても三相電力量計Fと同じ動作を行うため、その動作シーケンスの説明は省略する。
【0029】
各電力量計C,D,Fの子側制御回路6は、電力線3,13から電源供給を受けて起動するときに、電力量計C,D,Fに接続される電力線3,13の配線方式を検知する((11)配線方式チェック)。この配線方式チェックは、端末装置7の子側制御回路6によって計量器9の計量回路8が参照されることで行われる。単相電力量計C,Dは、単相交流電源12から単相交流を配電する電力線3に接続されているため、子側制御回路6によって単相2線式もしくは単相3線式の配線方式が検知される。このため、単相電力量計C,Dの各端末装置7は、起動すると、子側電力線通信回路4によって電力線通信で親側電力線通信回路10と通信する。
【0030】
三相電力量計Fは、三相交流電源14から三相交流を配電する電力線13に接続されているため、子側制御回路6によって三相3線式もしくは三相4線式の配線方式が検知される。このため、三相交流を検知した三相電力量計Fの端末装置7は、起動すると、無線通信回路5からビーコン信号を周囲に無線送信し、新たな相手との通信を要求する((12)ビーコン要求)。すなわち、三相電力量計Fは、その端末装置7の子側制御回路6が電力線13から電源供給を受けて起動するときに、三相電力量計Fに接続される電力線13の配線方式を検知する。そして、三相交流電圧を使った配線方式が検知される場合、三相電力量計Fは、その端末装置7の無線通信回路5によって補完接続要求を無線送信する。
【0031】
このビーコン信号を受信した単相電力量計Cは、このビーコン要求に応じて、自身の無線通信回路5からビーコン信号を周囲に無線送信し、応答する((13)ビーコン応答)。このビーコン応答によって最も信号強度の大きいビーコン信号を単相電力量計Cから受信した三相電力量計Fは、その無線通信回路5から、電力線通信システム1への補完接続を要求する無線信号を単相電力量計Cに宛てて送信する((14)補完接続要求)。単相電力量計Cは、この補完接続要求信号を無線通信回路5に受信すると、子側制御回路6の制御により、三相電力量計Fの電力線通信システム1への補完接続要求信号を三相電力量計Fの代わりに子側電力線通信回路4から電力線3へ送信する((15)電力量計Fの代理登録要求)。すなわち、単相交流電圧を使った配線方式の電力線3に接続される単相電力量計Cは、その端末装置7の子側制御回路6が補完接続要求を無線通信回路5で受信した場合、三相交流電圧を使った配線方式の電力線13に接続される三相電力量計Fの、単相交流電圧を使った配線方式の電力線3における電力線通信システム1への登録要求を子側電力線通信回路4によって親側電力線通信回路10へ行う。
【0032】
単相電力量計Cからこの三相電力量計Fの代理登録を要求する信号を親側電力線通信回路10に受信したコンセントレータ2は、計量値の収集対象となる電力量計を記憶する親側制御回路11のメモリに、新たに三相電力量計Fを記憶する。三相電力量計Fの電力線通信システム1へのこの登録の際、三相電力量計Fは単相電力量計Cに紐付けられてメモリに記憶される。すなわち、コンセントレータ2は、親側制御回路11が、親側電力線通信回路10に登録要求を受信すると、登録要求を送信した子側電力線通信回路4を有する単相電力量計Cに紐付けて、三相交流電圧を使った配線方式の電力線13に接続される三相電力量計Fを単相交流電圧を使った配線方式の電力線3における電力線通信システム1に登録する。
【0033】
コンセントレータ2は、三相電力量計Fの電力線通信システム1への登録を済ますと、親側制御回路11の制御により、三相電力量計Fの電力線通信システム1への登録が完了したことを表す応答信号を親側電力線通信回路10から電力線3へ送信する((16)電力量計Fの代理登録応答)。単相電力量計Cは、登録が完了したことを表すこの応答信号をコンセントレータ2から子側電力線通信回路4に受信すると、電力線通信システム1への代理登録が済んで電力線通信システム1に三相電力量計Fが補完接続されたことを表す信号を、子側制御回路6の制御によって無線通信回路5から三相電力量計Fへ無線送信する((17)補完接続応答)。
【0034】
三相電力量計Fの電力線通信システム1への登録後に、コンセントレータ2から三相電力量計Fに宛てて随時送信される計量値送信指令等の指令要求信号は、三相電力量計Fに紐付けられた単相電力量計Cに宛てて、親側制御回路11の制御によって親側電力線通信回路10から電力線3へ送信される((18)電力量計F宛て随時指令要求)。単相電力量計Cは、コンセントレータ2から子側電力線通信回路4にこの随時指令信号を受信すると、受信した随時指令信号を三相電力量計Fへ無線通信回路5から無線通信によって転送する((19)随時指令要求)。三相電力量計Fは、単相電力量計Cからこの随時指令要求信号を無線通信回路5に受信すると、計量回路8で計量した計量値を送信するといった、随時指令要求に応じた応答信号を子側制御回路6の制御により無線通信回路5から無線送信する((20)随時指令応答)。単相電力量計Cは、この随時指令応答信号を三相電力量計Fから無線通信回路5に受信すると、三相電力量計Fから受信した応答信号を、子側制御回路6の制御により子側電力線通信回路4から電力線3へ送信する((21)電力量計F宛て随時指令応答)。
【0035】
このような第2の実施形態による電力線通信システム1によれば、新たに電力線通信システム1に参入する電力量計が、三相交流電圧を使った配線方式の三相電力線13に接続される三相電力量計E,Fであると、それらの端末装置7の子側制御回路6がその起動時に検知した場合、子側制御回路6は無線通信回路5によって補完接続要求を無線送信する。この補完接続要求が、単相交流電圧を使った配線方式の電力線3における電力線通信システム1に既に登録されている既登録単相電力量計Cの端末装置7の無線通信回路5に受信されると、この既登録単相電力量計Cの子側制御回路6により、三相電力量計E,Fの電力線通信システム1への代理登録要求が、既登録単相電力量計Cの子側電力線通信回路4によってコンセントレータ2の親側電力線通信回路10へ電力線通信で行われる。この代理登録要求を受信したコンセントレータ2は、親側制御回路11により、登録要求を送信した既登録単相電力量計Cに紐付けて三相電力量計E,Fを電力線通信システム1に登録する。
【0036】
このため、第2の実施形態による電力線通信システム1によれば、従来の電力線通信システムでは行えなかった、電力線通信システム1に新たに参入する電力量計Dのコンセントレータ2との間における通信の失敗が補償されるようになると共に、高周波利用設備の個別の設置許可を受けなければ三相電力線を使った電力線通信システムを構築できない三相電力量計E,Fが、型式指定を受けることで高周波利用設備の個別の設置許可が免除される単相電力線における電力線通信システム1に登録され、電力線通信システム1において管理することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1…電力線通信システム
2…コンセントレータ(集線装置)
3,13…電力線
4…子側電力線通信回路
5,16…無線通信回路
6…子側制御回路
7…端末装置
8…計量回路
9…計量器
10…親側電力線通信回路
11…親側制御回路
12…単相交流電源
14…三相交流電源