(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/829 20180101AFI20220404BHJP
B60N 2/821 20180101ALI20220404BHJP
B60N 2/894 20180101ALI20220404BHJP
【FI】
B60N2/829
B60N2/821
B60N2/894
(21)【出願番号】P 2019002108
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小河 卓人
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-013056(JP,U)
【文献】実開平03-112046(JP,U)
【文献】実開平02-061233(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0089737(US,A1)
【文献】実開昭61-129554(JP,U)
【文献】特開2015-151090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/38
A61G 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、
前記シートバックに支持され、上下動が可能なヘッドレストと、
を備え、
前記ヘッドレストは、
芯材を構成する筐体と、
上下方向に伸び、互いに平行に左右方向に並設される一対の軸体を有し、前記シートバックに固定されるヘッドレストステーと、
前記筐体内に収容されて当該筐体に固定され、前記ヘッドレストステーに対して上下方向に移動する電動駆動部と、
を備え、
前記電動駆動部は、
駆動モータと、
前記ヘッドレストステーの一方の軸体に対する出力軸と前記駆動モータに回転駆動される入力軸とを接続する動力変換機構と、
前記駆動モータと前記動力変換機構とを搭載し、前記一対の軸体に跨って設けられるベースプレートと、
を備える
車両用シート。
【請求項2】
請求項1の車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストステーの一方の軸体は雄ネジ部を有し、
前記出力軸に前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ部を有する
車両用シート。
【請求項3】
請求項2の車両用シートにおいて、
前記入力軸はウォームであり、その軸心は左右方向に延びており、前記出力軸は前記ウォームに噛み合うウォームホイールであり、その軸心は上下方向に延びている
車両用シート。
【請求項4】
請求項1の車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストは、さらに、前記電動駆動部が前記ヘッドレストステーに対する移動を制限するストッパ機構を有する
車両用シート。
【請求項5】
請求項4
の車両用シートにおいて、
前記ベースプレートは、その中に前記一方の軸体が挿入されるガイド部と、その中に前記ヘッドレストステーの他方の軸体が挿入されるガイド部と、を有する
車両用シート。
【請求項6】
請求項5の車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストステーは前記一方の軸体と前記他方の軸体とを連結するブラケットを有する
車両用シート。
【請求項7】
請求項6の車両用シートにおいて、
前記ヘッドレストステーの軸体は下部に突起を有し、前記ガイド部と前記突起とにより前記ストッパ機構を構成する
車両用シート。
【請求項8】
請求項7の車両用シートにおいて、
前記ブラケットと前記ベースプレートとにより前記ストッパ機構を構成する
車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両用シートに関し、例えばパワーヘッドレストを備える車両用シートに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、車両フロアにスライド機構を介して前後方向に摺動自在に支持されると共に着座者の座面を形成するシートクッションと、その後端部にリクライナを介して回動自在に支持されると共に着座者の背もたれ部を形成するシートバックと、その上端部に昇降(上下動)自在に取着されると共に着座者の頭部の後方倒れを防止するためのヘッドレストと、で構成されている。車両用シートには、そのヘッドレストの昇降を電動駆動機構により行うパワーヘッドレストを有するものがある(例えば、特開2017-178096号公報(特許文献1))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のヘッドレストの構造では、回転モータが固定部材であるヘッドレストステーの上部に固定されているため、可動部材である上下移動部に設けられたギヤに動力を伝達するためのトルクケーブルや上下移動部を上下方向に移動させるための上下スクリュ等のヘッドレスト内部に上下作動に関する部品が必要であり、部品点数が増え、質量が増加してしまう。
本開示の課題は電動駆動機構を有するヘッドレストの部品点数を低減することができる車両用シートを提供することにある。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、車両用シートは、シートバックと、前記シートバックに支持され、上下動が可能なヘッドレストと、を備える。前記ヘッドレストは、芯材を構成する筐体と、上下方向に伸び、互いに平行に左右方向に並設される一対の軸体を有し、前記シートバックに固定されるヘッドレストステーと、前記筐体内に収容されて当該筐体に固定され、前記ヘッドレストステーに対して上下方向に移動する電動駆動部と、を備える。前記電動駆動部は、駆動モータと、前記ヘッドレストステーの一方の軸体に対する出力軸と前記駆動モータに回転駆動される入力軸とを接続する動力変換機構と、前記駆動モータと前記動力変換機構とを搭載し、前記一対の軸体に跨って設けられるベースプレートと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記車両用シートによれば、部品点数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】
図2は
図1の車両用シートのシートバックとヘッドレストとの組み付け状態の概略を示す正面図である。
【
図4】
図4はヘッドレストの上下位置調整機構を示す正面図である。
【
図7】
図7はヘッドレストステーと電動駆動部とを示す斜視図である。
【
図8】
図8は電動駆動部が最も高い位置にある状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は電動駆動部が最も低い位置にある状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0009】
(車両用シート)
実施形態に係る車両用シートについて
図1を用いて説明する。
図1は実施形態に係る車両用シートを示す斜視図である。
ここに示す車両用シート1は、例えば、車両の一種類である自動車の内部に設置される複数のシートのうちの1つである。なお、以下の説明では、車両用シート1を搭載する車両が水平面上に置かれた場合を基準として、鉛直方向を上下方向(UP,DW)と定義する。また、前後方向(FR,RR)は車両の前後方向に一致するように、左右方向(幅方向)は車両の幅方向に一致するように、定義される。FRは車両の前側方向であり、RRは車両の後側方向である。また、車両用シート1について、車両の後から見て右側(RH)、左側(LH)と呼んで説明する。
【0010】
図1に示すように、車両のフロアには、乗員の着座部を形成する車両用シート1が支持される。車両用シート1は、座面を形成するシートクッション10と、該シートクッション10の後端部に傾動(回動)自在に支持されたシートバック20と、該シートバック20の上端部に支持されたヘッドレスト30とを備えて構成される。シートバック20は、乗員の背もたれ部を形成し、ヘッドレスト30は、乗員の頭部の拘束部を形成する。なお、シートバック20には、ヘッドレスト30内に上端部が進入するヘッドレストステー31が固定されており、ヘッドレスト30は、ヘッドレストステー31を介してシートバック20に支持され、後述する位置調整機構を有している。
【0011】
図2は
図1の車両用シートのシートバックとヘッドレストとの組み付け状態の概略を示す正面図である。
図2に示すように、シートバック20は、シートバックフレーム21によって支持されたクッション材25がカバー26によって被覆されることで形成されている。そして、シートバックフレーム21のアッパフレーム部21aおよびアッパパネル21bには左右一対をなす筒状のサポートブラケット23が固着されている。これらサポートブラケット23は、左右方向に所定距離だけ離隔されて互いに平行にヘッドレスト30の昇降方向に軸線が延びる円形の開口部を形成する。
【0012】
サポートブラケット23には、ヘッドレストステー31の挿入孔を有するヘッドレストサポート24が圧入によってかつ抜け止めされた状態で装着されている。
【0013】
そして、シートバック20の上端部には、ヘッドレストサポート24に挿入されてかつ抜け止めされた状態で装着されているヘッドレストステー31によってヘッドレスト30が支持されている。ヘッドレスト30は、ヘッドレストステー31(シートバックフレーム21、シートバック20)に対し昇降する。
【0014】
(ヘッドレスト)
ヘッドレストについて
図3を用いて説明する。
図3は
図1のヘッドレストの側面図である。
ヘッドレスト30は、ヘッドレストステー31と芯材40とカバー41とクッション材42とを有している。
【0015】
芯材40は前側芯材と後側芯材等複数の芯材を結合することによって筐体を構成している。芯材40の後側には後述するベースプレートを芯材40に固定するための締結具が挿入される穴(凹部)40aを有する。芯材40は硬質樹脂、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS樹脂によって形成されている。
【0016】
カバー41は、表皮材を縫い合わせることによって袋状に形成されている。カバー41の底部には開口が形成されている。芯材40をカバー41の底部の開口からカバー41の内部へ挿入して開口を塞ぐことにより、芯材40がカバー41で覆われている。また、カバー41の底部の開口を塞いだ状態の底部に注入ノズルが挿入される注入孔(不図示)が設けられる。なお、芯材40とカバー41の間には表皮一体発泡成形によりクッション材42が形成されている。クッション材42としては、例えばポリウレタンフォームを用いている。
【0017】
(位置調整機構)
ヘッドレスト30の位置調整機構について
図4~6を用いて説明する。
図4はヘッドレストの位置調整機構を示す正面図である。
図5は
図4の位置調整機構の分解斜視図である。
図6は電動駆動部の概略側断面図である。
上述したように、ヘッドレスト30は、シートバック20に対する上下位置が調整可能である位置調整機構50を備えている。位置調整機構50は固定部であるヘッドレストステー31と作動部である電動駆動部51とを備える。
【0018】
すなわち、
図4、5に示すように、ヘッドレストステー31は、上下方向に中心線の延びる一対の略円筒状の軸体32,33を有する。軸体32,33は、互いに平行に左右方向に並設されている。そして、両軸体32,33のヘッドレスト30内に進入する上端同士は、左右方向に延在する連結ブラケット34により当該方向に接続されている。この連結ブラケット34は、軸体32,33が挿入可能な穴を有しそこに雌ネジが形成されている雌ネジ部34a,34bを左右端部に有する。
【0019】
図5に示すように、軸体32はその上端に連結ブラケット34の端部の雌ネジ34aと螺合する雄ネジが形成されている雄ネジ部32aを有する。軸体33はその上下方向中央部から上端に連結ブラケット34の端部の雌ネジ部34bと螺合すると共に、電動駆動部51と螺合する雄ネジが形成されている雄ネジ部33aを有する。雄ネジ部33aはヘッドレスト30の上下作動量に基づいて位置、範囲が設定される。
【0020】
一方、電動駆動部51は、動力方向変換機構であるギヤ部52と、駆動モータ53と、ベースプレート55と、搭載ブラケット56と、を備える。ベースプレート55は、ヘッドレスト30内で左右方向に延在し上下方向に移動可能なように、連結ブラケット34の下方に配置されている。ベースプレート55は、軸体32,33と同心で上下方向に開口する孔を有するガイド部55a,55b,55cが形成されており、ガイド部55aに右側の軸体32が挿入され、ガイド部55b,55cに左側の軸体33が挿入されている。つまり、ベースプレート55は、ガイド部55a,55b,55cを軸体32,33に沿って摺動させつつ上下方向に移動する。
【0021】
また、ベースプレート55の中央部には、前後方向に中心線の延びる四つのナット孔55dが形成されている。これらのナット孔55dは芯材40にベースプレート55を固定するためのものである。
【0022】
図5に示すように、ベースプレート55には、ギヤ部52を搭載する搭載ブラケット56が固着されている。この搭載ブラケット56は、上下方向に起立する取付部56a及び該取付部56aの上端に接続されて前方に延びる台座部56bを有して略L字形状を呈する。取付部56aはベースプレート55の後側に固着されている。そして、台座部56bの左右方向中央部には、軸体33と同心の略円形状の孔56cが形成されている。孔56cは、軸体33(雄ネジ部33a)に上下方向に摺動自在に挿入されている。台座部56bには、ギヤ部52がねじにより締結されている。ギヤ部52には駆動モータ53が装着されている。
【0023】
駆動モータ53はギヤ部52と一体になっており、ブラケット56に固定されている。駆動モータ53には配線54(
図2参照)が接続され、左側の軸体33の内側を通して軸体33の下端部から引き出されている。配線54の先には駆動モータ53を正回転、逆回転および停止させるためのスイッチ等の操作部(不図示)が接続される。
【0024】
図6に示すように、ギヤ部52には、駆動モータ53の出力軸の先端部に設けられた略円筒状のウォーム52aとそのウォーム52aに噛み合うウォームホイール52bとがそれぞれ回転可能に内設されている。ウォーム52aは駆動モータ53の回転軸と一体回転する。ウォーム52aの軸線は左右方向に延びており、ウォームホイール52bの軸線は上下方向に延びている。
【0025】
また、
図6に示すように、ギヤ部52には、ヘッドレストステー31の片側の軸体33に形成された雄ネジ部33aが挿通可能な挿通孔52cが軸体33と同一中心線上に貫設されている。
【0026】
図6に示すように、軸体33の雄ネジ部33aは、ウォームホイール52bの中心部に形成された雌ネジに螺合した状態でギヤ部52の挿通孔52cを貫通して所定長さだけ上下に突出している。ギヤ部52は駆動モータ53の左右方向の軸線回りの回動動作をウォームホイール52bの上下方向の軸線回りの回動動作に変換し、ギヤ部52自信およびギヤ部52を搭載したベースプレート55の昇降動作に変換する。
【0027】
すなわち、駆動モータ53の正逆方向の作動によってウォーム52aと噛み合うウォームホイール52bが正逆回転されることで、軸体33の雄ネジ部33aに対してウォームホイール52bが螺進・螺退し、これによってギヤ部52および駆動モータ53が搭載されたベースプレート55のガイド部55a内の軸体32およびガイド部55b,55c内の軸体33に沿って昇降動作するようになっている。ベースプレート55は右側の軸体32にロックされない自由な形態で、左側の軸体33にロックされ得る形態で昇降する。
【0028】
よって、ベースプレート55は芯材40に固定されているので、芯材40、クッション材42およびカバー41で構成されるヘッドレスト30は、ヘッドレストステー31に対して昇降動作が可能になる。
【0029】
位置調整機構の動作について
図7~9を用いて説明する。
図7はヘッドレストステーと電動駆動部とを示す斜視図である。
図8は電動駆動部が最も高い位置にある状態を示す斜視図である。
図9は電動駆動部が最も低い位置にある状態を示す斜視図である。
【0030】
通常時は、ヘッドレストステー31の軸体33の雄ネジ部33aと電動駆動部51の駆動モータ53がギヤ部52を介して常時噛み合っていることにより、電動駆動部51が保持されている。
【0031】
作動時は、
図7に示すように、電動駆動部51の駆動モータ53の作動によって、電動駆動部51が、ヘッドレストステー31の軸体32、軸体33に沿って上下に作動する。その際、電動駆動部51のベースプレート55がガイドの役割をする。電動駆動部51は芯材40に固定しているので、電動駆動部51が上下動することによりヘッドレスト30が上下動する。
【0032】
電動駆動部51の上方向の作動において、操作部によって停止されない場合でも、
図8に示すように、連結ブラケット34(雌ネジ部34a,34b)の下端部にベースプレート55(ガイド部55a,55b)の上端部を当てることで上方向の動きを停止させることが可能である。電動駆動部51の下方向の作動においては、
図9に示すように、ヘッドレストステー31の軸体33に設けた突起(膨らみ(バルジ))33b等のストッパ機構にベースプレート55(ガイド部55c)の下端部を当てることで下方向の動きを停止させることが可能である。
【0033】
実施形態では、ヘッドレストの構造が固定側のヘッドレストステーと作動側の電動駆動部とに分かれており、ヘッドレストステーを固定としてヘッドレストが上下作動する。すなわち、ヘッドレスト内の作動側に駆動モータが設けられている。よって、駆動モータと作動機構とを直結することが可能になり、特許文献1のトルクケーブルが不要になる。
【0034】
また、片側のヘッドレストステー上部に直接リードスクリュのネジが形成されている。これにより、特許文献1の上下スクリュが不要になる。
【0035】
また、ヘッドレストステー本体に突起部を設け、ストッパの機能を持たせている。
【0036】
ヘッドレストステーにリードスクリュ機構とストッパ機構とが一体型に形成されているので、部品点数を削減することができ、軽量化することができる。
【0037】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【0038】
例えば、実施形態では軸体32が右側に、軸体33が左側に配置されているが、左右逆に配置されてもよい。
【0039】
また、実施形態では、軸体33に突起33bを有しているが、軸体32に突起を有してもよいし、軸体32,33の両方に突起を有してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1・・・車両用シート
10・・・シートクッション
20・・・シートバック
30・・・ヘッドレスト
31・・・ヘッドレストステー
32・・・軸体
33・・・軸体
40・・・芯材
50・・・位置調整機構
51・・・電動駆動部
52・・・ギヤ部
53・・・駆動モータ
55・・・ベースプレート