(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】収穫された作物の成熟速度を調節する方法
(51)【国際特許分類】
A23B 7/16 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
A23B7/16
(21)【出願番号】P 2019500562
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(86)【国際出願番号】 US2017041167
(87)【国際公開番号】W WO2018009846
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-06
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516027797
【氏名又は名称】アピール テクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カウン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ホランド,チャンス
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ペレス,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】フレイジャー,チャールズ
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第03622191(DE,A1)
【文献】西独国特許出願公開第02505428(DE,A1)
【文献】果実のワックス、陳皮(ちんぴ)について,[online],2016年4月9日(WEBアーカイブ日)(投稿日:2015年7月25日),クミタス,[2021年7月20日検索],インターネット <URL:https://web.archive.org/web/20160409110129/https://www.kumitasu.com/contents/hyoji/806>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B
A01F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CABA/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫された作物の成熟速度を調節する方法であって、
コーティング
剤を前記作物に適用して前記作物の表面上にコーティングを形成することであって、前記コーティング
剤は、
1又は2以上のモノグリセリドを含み、前記コーティング剤の全質量のうち少なくとも80%は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、
前記作物を貯蔵することと、
前記コーティングを少なくとも部分的に除去することと
を含む方法。
【請求項2】
収穫された作物の成熟速度を調節する方法であって、
前記作物を受け取ることであって、前記作物は、その表面上に保護コーティングを有し、前記コーティングは、
コーティング剤から形成さ
れ、
前記コーティング剤は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、前記コーティング剤の全質量の少なくとも80%は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、
前記作物を貯蔵することと、
前記コーティングを少なくとも部分的に除去することと
を含む方法。
【請求項3】
収穫された作物の成熟を調節する方法であって、
コーティング組成物を前記作物の表面に適用させることであって、前記コーティング組成物は、溶媒中のコーティング剤を含み、前記コーティング剤は、前記作物の前記表面上に保護コーティングを形成するように配合さ
れ、
前記コーティング剤は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、前記コーティング剤の全質量の少なくとも80%は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、
前記コーティングされた作物を少なくとも1日間にわたって貯蔵させることと、
前記コーティングを少なくとも部分的に除去することと
を含み、
前記作物の前記表面への前記コーティング組成物の前記適用は、前記作物の成熟速度を低減し、及び
前記コーティングの前記少なくとも部分的な除去は、前記作物の前記成熟速度を増大させる、方法。
【請求項4】
作物を貯蔵する方法であって、
コーティング組成物を前記作物の表面に適用することであって、前記コーティング組成物は、溶媒中のコーティング剤を含
み、
前記コーティング剤は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、前記コーティング剤の全質量の少なくとも80%は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、
前記溶媒を少なくとも部分的に蒸発させ、それにより前記コーティング剤から前記作物の前記表面上にコーティングを形成させることであって、前記コーティングは、前記作物の呼吸速度を低減するように配合される、形成させることと、
前記作物を少なくとも1日間にわたって貯蔵することと、
前記コーティングを少なくとも部分的に除去し、それにより前記作物の前記呼吸速度を増大させることと
を含む方法。
【請求項5】
作物を貯蔵する方法であって、
作物であって、その上に形成された保護コーティングを含む作物を受け取ることであって、前記保護コーティングは、
コーティング剤から形成さ
れ、
前記コーティング剤は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、前記コーティング剤の全質量の少なくとも80%は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、
前記作物を貯蔵することと、
前記コーティングを少なくとも部分的に除去することと
を含む方法。
【請求項6】
農産物を処理する方法であって、
コーティング組成物を前記農産物の表面に適用させることであって、前記組成物は、溶媒中に溶解されたコーティング剤を含み、前記コーティング剤は、前記農産物の前記表面上に保護コーティングを形成するように配合さ
れ、
前記コーティング剤は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、前記コーティング剤の全質量の少なくとも80%は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、
前記農産物を貯蔵することと、
前記コーティングを少なくとも部分的に除去することと
を含む方法。
【請求項7】
作物を貯蔵する方法であって、
コーティング
剤を前記作物に適用して前記作物の表面上に保護コーティングを形成することであって、前記保護コーティングは、前記作物の呼吸速度を低下させるように配合さ
れ、
前記コーティング剤は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、前記コーティング剤の全質量の少なくとも80%は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、
前記作物を第1の期間にわたって貯蔵することと、
前記作物を前記第1の期間にわたって貯蔵した後、前記作物の前記呼吸速度を増大させるように前記保護コーティングを修飾することと
を含む方法。
【請求項8】
前記第1の期間中、前記作物は、第1の温度で貯蔵され、前記保護コーティングの前記修飾は、前記第1の温度よりも高い第2の温度まで前記作物を加熱することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記保護コーティングの前記修飾は、前記保護コーティングを少なくとも部分的に除去することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
農産物を処理する方法であって、
コーティング
剤を前記農産物の表面に適用し、それにより前記農産物上に保護コーティングを形成することと、
前記コーティング剤は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、前記コーティング剤の全質量の少なくとも80%は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、
前記農産物を第1の周囲温度で貯蔵することであって、前記保護コーティングは、前記農産物が前記第1の周囲温度で貯蔵されている間、前記農産物の成熟速度を低下させるように配合される、貯蔵することと、
前記農産物の前記周囲温度を第2の周囲温度まで変化させ、それにより前記保護コーティングの効力を低減することと
を含む方法。
【請求項11】
前記第2の周囲温度は、前記第1の周囲温度よりも高い、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の周囲温度は、13℃よりも低く、及び前記第2の周囲温度は、20℃よりも高い、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記農産物は、前記コーティングが形成される間、前記第2の周囲温度よりも低い第3の周囲温度に保持される、請求項
11又は
12に記載の方法。
【請求項14】
農産物を処理する方法であって、
前記農産物が熟す前にコーティング組成物を前記農産物の表面に適用することであって、前記組成物は、溶媒中のコーティング剤を含み、前記コーティング剤は、前記農産物の前記表面上に保護コーティングを形成するように配合され、
前記コーティング剤は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、前記コーティング剤の全質量の少なくとも80%は、1又は2以上のモノグリセリドを含み、
前記保護コーティングは、前記農産物の成熟を遅延させるのに役立つ、適用することと、
前記農産物を貯蔵することと
を含む方法。
【請求項15】
前記コーティング剤は、複数の脂肪酸、エステル、トリグリセリド、ジグリセリド、アミド、アミン、チオール、チオエステル、カルボン酸、エーテル、脂肪族ワックス、アルコール、塩、酸、塩基、タンパク質、酵素、モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも一の成分をさらに含む、
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティングは、架橋されたモノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せを含む、請求
項15に記載の方法。
【請求項17】
前記モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せは、前記作物の前記表面で架橋する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記収穫された作物は、前記コーティングの除去前に、その上に前記コーティングを有した状態で少なくとも1日間にわたって貯蔵される、請求項1
、2,5、6、及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記作物は、前記作物が収穫される前にコーティングされ、及び前記コーティングは、前記作物が収穫された後に少なくとも部分的に除去される、請求項1~
6、及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記コーティングの前記少なくとも部分的な除去は、前記作物を溶媒中ですすぐことを含む、請求項1~
6、及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記溶媒は、少なくとも30℃に加熱される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒は、少なくとも40℃に加熱される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒は、少なくとも50℃に加熱される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒は、水、エタノール、又はこれらの組合せを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記溶媒は、エタノールであり、及び前記エタノールは、13℃以下に冷却される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記コーティングは、前記作物の呼吸速度を低減する、請求項1~
3、5、6、及び10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記コーティングは、前記作物の呼吸速度を低下させ、及び前記コーティングの前記少なくとも部分的な除去は、前記作物の前記呼吸速度を増大させる、請求項1~
3,5、及び6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記コーティングは、前記作物に適用されたときに人間の目で実質的に検出不能である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記コーティングは、前記作物に適用されたときに実質的に無臭又は無味である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記コーティングは、前記作物からの水損失を低減するように配合される、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記コーティング
剤は、モノマー、オリゴマー、及び低分子量ポリマーの少なくとも1つを含む、請求
項15に記載の方法。
【請求項32】
前記コーティング組成物は、式I:
【化1】
(式中、
Rは、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数のC
1~C
6アルキル又はヒドロキシで任意選択的に置換されており、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されており、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数の-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されているか、又は
R
3及びR
4は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
7及びR
8は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
14及びR
15は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、又は-C
2~C
6アルキニルであり、
記号
【化2】
は、任意選択的に単結合又はシス若しくはトランス二重結合を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、3、4、又は5であり、及び
rは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8である)
の化合物を含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記
モノグリセリドの少なくとも1つは、式I-A:
【化3】
(式中、
各R
aは、独立して、-H又は-C
1~C
6アルキルであり、
各R
bは、独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、又は-OHから選択され、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されており、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数の-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されているか、又は
R
3及びR
4は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
7及びR
8は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
14及びR
15は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、又は-C
2~C
6アルキニルであり、
記号
【化4】
は、任意選択的に単結合又はシス若しくはトランス二重結合を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、3、4、又は5であり、及び
rは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8である)
の化合物
である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記
モノグリセリドの少なくとも1つは、式I-B:
【化5】
(式中、
各R
aは、独立して、-H又は-C
1~C
6アルキルであり、
各R
bは、独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、又は-OHから選択され、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されており、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数の-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されているか、又は
R
3及びR
4は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
7及びR
8は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
14及びR
15は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、又は-C
2~C
6アルキニルであり、
記号
【化6】
は、任意選択的に単結合又はシス若しくはトランス二重結合を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、3、4、又は5であり、及び
rは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8である)
の化合物
である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前
記コーティングは、約10ミクロン未満の厚さを有する、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前
記コーティングは、可視範囲の光に対して少なくとも60%の平均透過率を有する、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記作物を熟成剤で処理することをさらに含む、請求項1~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記熟成剤による前記作物の前記処理は、前記作物をエチレンでガス処理することを含む、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも1つの前記モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せは、官能基化される、請求項
31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年7月8日に出願された米国仮特許出願第62/359,898号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
開示の分野
本開示は、成熟速度を調節するために作物などの農産物を処理するための配合物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
多くの一般的な農産物、例えばアボカド及びバナナは、通常、完全に成熟する前に収穫され、その後、収穫後、例えば貯蔵中又は出荷中に完全に成熟される。これらの産物の多くは、季節的なものであり、従って限られた時間枠中にのみ成熟するため、そうでなければ入手できないであろう時期に消費者がこれらの産物を入手できるようにするために、産物の成熟を遅延させるのが望ましいことがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本明細書には、収穫された作物などの農産物の成熟速度を遅延及び調節するための配合物及び方法が記載される。本方法は、一般的に、呼吸を遅くする保護コーティングを最初に産物上に形成し、それにより酸素又はエチレンなどの熟成剤が産物内に吸収されるのを抑制することと、産物からの水分損失率を低減することを含む。保護コーティングは、成熟の開始を遅延させ且つ産物の成熟速度を遅くするのに十分な時間にわたって産物上に保持することができ、その後、産物をより急速に成熟させるために、コーティングは、少なくとも部分的に除去又は他に修飾され得る。収穫された産物のバッチ上に形成されたコーティングを除去又は修飾する時点を調整することにより、このバッチからの成熟した産物を長期間にわたって消費者に徐々に提供することができる。
【0005】
本明細書で使用される場合、「コーティング」、「分子コーティング」、又は「保護コーティング」は、作物片などの農産物の表面上に配設された分子(例えば、モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せ)の1つ又は複数の層を指すことができる。いくつかの実施において、コーティングを形成するモノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せは、以下のように修飾又は官能基化することができる。例えば、モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せは、以下に記載される式I、式I-A、又は式I-Bを有することができる。
【0006】
1つの態様では、収穫された作物の成熟速度を調節する方法は、コーティング組成物を作物に適用して作物の表面上にコーティングを形成することを含む。コーティング組成物は、複数の脂肪酸、エステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、アミド、アミン、チオール、チオエステル、カルボン酸、エーテル、脂肪族ワックス、アルコール、塩、酸、塩基、タンパク質、酵素、モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せを含み得る。本方法は、作物を貯蔵することと、コーティングを少なくとも部分的に除去又は他に修飾することとをさらに含み得る。
【0007】
別の態様では、収穫された作物の成熟速度を調節する方法は、作物を受け取ることを含み、作物は、その表面上に保護コーティングを有する。コーティングは、モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せの組成物から形成され得る。本方法は、作物を貯蔵することと、コーティングを少なくとも部分的に除去又は他に修飾することとをさらに含み得る。
【0008】
別の態様では、収穫された作物の成熟を調節する方法は、コーティング組成物を作物の表面に適用させることを含む。コーティング組成物は、溶媒中に溶解されたコーティング剤を含み得、コーティング剤は、作物の表面上に保護コーティングを形成するように配合される。本方法は、コーティングされた作物を少なくとも1日間にわたって貯蔵させることと、コーティングを少なくとも部分的に除去又は修飾することとをさらに含み得る。作物の表面へのコーティング組成物の適用は、作物の成熟速度を低減することができ、コーティングの少なくとも部分的な除去又は修飾は、作物の成熟速度を増大させることができる。
【0009】
別の態様では、収穫された作物の成熟を遅延させる方法は、コーティング組成物を作物の表面に適用することを含み得る。コーティング組成物は、溶媒中のコーティング剤を含み得る。本方法は、コーティング剤を凝固させ、且つ作物の表面上にコーティングを形成させることと、作物を貯蔵することと、コーティングを少なくとも部分的に除去又は他に修飾することとをさらに含み得る。
【0010】
別の態様では、作物を貯蔵する方法は、コーティング組成物を作物の表面に適用することを含み得る。コーティング組成物は、溶媒中のコーティング剤を含み得る。本方法は、溶媒を少なくとも部分的に蒸発させ、それによりコーティング剤から作物の表面上にコーティングを形成させることをさらに含み得、コーティングは、作物の呼吸速度を低減するように配合される。本方法は、作物を少なくとも1日間にわたって貯蔵することと、コーティングを少なくとも部分的に除去又は他に修飾し、それにより作物の呼吸速度を増大させることとをさらに含み得る。
【0011】
別の態様では、作物を貯蔵する方法は、作物であって、その上に形成された保護コーティングを含む作物を受け取ることを含み得る。保護コーティングは、脂肪酸、エステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、アミド、アミン、チオール、チオエステル、カルボン酸、エーテル、脂肪族ワックス、アルコール、塩、酸、塩基、タンパク質、酵素、モノマー、オリゴマー、及び低分子量ポリマーの少なくとも1つから形成され得る。本方法は、作物を貯蔵することと、コーティングを少なくとも部分的に除去又は他に修飾することとをさらに含み得る。
【0012】
別の態様では、農産物を処理する方法は、コーティング組成物を農産物の表面に適用させることを含み得る。組成物は、溶媒中に溶解されたコーティング剤を含み得、コーティング剤は、農産物の表面上に保護コーティングを形成するように配合され得る。本方法は、農産物を貯蔵することと、コーティングを少なくとも部分的に除去することとをさらに含み得る。
【0013】
別の態様では、作物を貯蔵する方法は、コーティング組成物を作物に適用して作物の表面上に保護コーティングを形成することを含み得る。保護コーティングは、作物の呼吸速度を低下させるように配合され得る。本方法は、作物を第1の期間にわたって貯蔵することと、その後、作物の呼吸速度を増大させるように保護コーティングを修飾することとをさらに含み得る。任意選択的に、第1の期間中、作物は、第1の温度で貯蔵され得、及び保護コーティングの修飾は、第1の温度よりも高い第2の温度まで作物を加熱することを含み得る。保護コーティングの修飾は、代替的に、保護コーティングを少なくとも部分的に除去することを含み得る。
【0014】
別の態様では、農産物を処理する方法は、コーティング組成物を農産物の表面に適用し、それにより農産物上に保護コーティングを形成することと、農産物を第1の周囲温度で貯蔵することとを含み得、保護コーティングは、農産物が第1の周囲温度で貯蔵されている間、農産物の成熟速度を低下させるように配合される。本方法は、農産物の周囲温度を第2の周囲温度まで変化させ、それにより保護コーティングの効力を低減することをさらに含み得る。第2の周囲温度は、第1の周囲温度よりも高くても低くてもよい。任意選択的に、第1の周囲温度は、13℃よりも低いことができ、及び第2の周囲温度は、20℃よりも高いことができる。任意選択的に、農産物は、コーティングが形成される間、第2の周囲温度よりも低い第3の周囲温度に保持され得る。
【0015】
別の態様では、農産物を処理する方法は、農産物が熟す前にコーティング組成物を農産物の表面に適用することを含み得る。コーティング組成物は、溶媒中のコーティング剤を含み得、コーティング剤は、農産物の表面上に保護コーティングを形成するように配合される。保護コーティングは、農産物の成熟を遅延させるのに役立ち得る。本方法は、農産物を貯蔵することをさらに含み得る。
【0016】
本明細書に記載される方法、コーティング、配合物、及び/又は作物若しくは他の農産物は、それぞれ以下のステップ又は特徴の1つ又は複数を単独で又は互いに組み合わせて含み得る。コーティングは、架橋されたモノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せを含み得る。モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せは、作物の表面で架橋することができる。収穫された作物は、コーティングの除去前に、その上にコーティングを有した状態で少なくとも1日間にわたって貯蔵され得る。作物は、作物が収穫される前にコーティングされ、及びコーティングは、作物が収穫された後に少なくとも部分的に除去され得る。コーティングの少なくとも部分的な除去は、作物を溶媒中ですすぐことを含み得、溶媒は、任意選択的に、少なくとも30℃、少なくとも40℃、又は少なくとも50℃に加熱され得る。溶媒は、水、エタノール、又はこれらの組合せを含み得る。溶媒は、13℃以下に冷却されたエタノールであり得る。作物は、作物が収穫された後にコーティングされ、及びコーティングは、消費前に少なくとも部分的に除去され得る。いくつかの実施形態では、本開示のコーティングは、クリマクテリック作物のクリマクテリック呼吸ピークを拡大することができる。いくつかの実施形態では、本開示のコーティングは、クリマクテリック作物のクリマクテリック呼吸ピークを広くすることができる。
【0017】
コーティングは、作物の呼吸速度を低減するように配合され得る。コーティングは、作物の呼吸速度を低下させるように配合され、及びコーティングの少なくとも部分的な除去は、作物の呼吸速度を増大させることができる。コーティングは、作物に適用されたときに人間の目で実質的に検出不能であり得る。コーティングは、作物に適用されたときに実質的に無臭又は無味であり得る。コーティング組成物は、コーティングが作物からの水損失を低減するように配合され得る。コーティング組成物は、モノマー、オリゴマー、及び低分子量ポリマーの少なくとも1つを含み得る。コーティング組成物は、モノアシルグリセリドを含み得る。
【0018】
コーティング組成物は、式I:
【化1】
(式中、
Rは、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数のC
1~C
6アルキル又はヒドロキシで任意選択的に置換されており、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されており、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数の-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されているか、又は
R
3及びR
4は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
7及びR
8は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
14及びR
15は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、又は-C
2~C
6アルキニルであり、
記号
【化2】
は、任意選択的に単結合又はシス若しくはトランス二重結合を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、3、4、又は5であり、及び
rは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8である)
の化合物を含み得る。
【0019】
コーティング組成物は、式I-A:
【化3】
(式中、
各R
aは、独立して、-H又は-C
1~C
6アルキルであり、
各R
bは、独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、又は-OHから選択され、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されており、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数の-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されているか、又は
R
3及びR
4は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
7及びR
8は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
14及びR
15は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、又は-C
2~C
6アルキニルであり、
記号
【化4】
は、任意選択的に単結合又はシス若しくはトランス二重結合を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、3、4、又は5であり、及び
rは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8である)
の化合物を含み得る。
【0020】
コーティング組成物は、式I-B:
【化5】
(式中、
各R
aは、独立して、-H又は-C
1~C
6アルキルであり、
各R
bは、独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、又は-OHから選択され、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されており、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数の-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されているか、又は
R
3及びR
4は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
7及びR
8は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
14及びR
15は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、又は-C
2~C
6アルキニルであり、
記号
【化6】
は、任意選択的に単結合又はシス若しくはトランス二重結合を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、3、4、又は5であり、及び
rは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8である)
の化合物を含み得る。
【0021】
保護コーティングは、約10ミクロン未満の厚さを有することができる。保護コーティングは、可視範囲の光に対して少なくとも60%の平均透過率を有することができる。本方法は、作物を熟成剤で処理することをさらに含み得る。熟成剤による作物の処理は、作物をエチレンでガス処理することを含み得る。モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せは、官能基化され得る(例えば、例としてグリセロール分子を用いたエステル化による)。
【0022】
図面の簡単な説明
当業者は、図面が主として説明のためのものであり、本明細書に記載される本発明の主題の範囲を限定することが意図されないことを理解するであろう。図面は、必ずしも一定の縮尺ではなく、場合により、本明細書に開示される本発明の主題の種々の態様は、異なる特徴の理解を容易にするために図面において誇張又は拡大されて示されることもある。図面において、同様の参照文字は、一般的に、同様の特徴(例えば、機能的に類似及び/又は構造的に類似した要素)を指す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】コーティングされていない作物と、作物が成熟した時点でコーティングが適用された作物とについて、作物の相対的な成熟状態を時間の関数として示す定性的なプロットである。
【
図2】コーティングされていない作物と、作物の成熟前にコーティングが適用された作物とについて、作物の相対的な成熟状態を時間の関数として示す定性的なプロットである。
【
図3】作物上にコーティングを形成し、その後、コーティングを除去することにより、作物の成熟を調節又は遅延するためのプロセスを図解するフローチャートを示す。
【
図4】本明細書に記載される配合物でコーティングされ、且つその後、水中に浸漬することによりそのコーティングが除去されたアボカドについての質量損失率のプロットである。
【
図5】
図4において測定されたアボカドについて、面積減少パーセントの時間の関数としてのプロットである。
【
図6】コーティングされ、且つその後、22℃の実質的に純粋なエタノール中に異なる時間にわたって浸漬することによりそのコーティングが除去されたアボカドのバッチについての質量損失率のプロットである。
【
図7】コーティングされ、その後、実質的に純粋なエタノール中に様々な温度で10秒間にわたって浸漬することによりそのコーティングが除去されたアボカドのバッチについての質量損失率のプロットである。
【
図8】
図7において測定されたアボカドについて、面積減少パーセントの時間の関数としてのプロットである。
【
図9】作物上にコーティングを形成し、その後、コーティングを修飾することにより、作物の成熟を調節又は遅延するためのプロセスを図解するフローチャートを示す。
【
図10】1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート及びオレイン酸2-グリセロールを含む配合物でコーティングされたフィンガーライムについての質量損失率のプロットである。
【
図11】1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート及びオレイン酸を含む配合物でコーティングされたフィンガーライムについての質量損失率のプロットである。
【
図12】低温貯蔵庫から取り出された時間の関数としてのアボカドの呼吸速度のプロットである。
【
図13】デュロメーターにより測定される、低温貯蔵庫から取り出された時間の関数としてのアボカドの硬さのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
多くのタイプの作物及び他の農産物(例えば、果物、野菜、根菜類、塊茎、花)は、完全に成熟する前に収穫され、その後、収穫後、例えば貯蔵中又は出荷中に完全に成熟される。早期の収穫の実施は、一般的に、収穫後及び消費前に作物をより長い期間にわたって貯蔵することを必要とするが、作物の収穫と腐敗との間の時間も増大され、それにより、完全な成熟により近づいてから収穫された場合に可能であるよりも作物をより遠く離れた場所に出荷し、より広く流通させることができる。さらに、いくつかのタイプの作物は、収穫前に完全に成熟することがなく、そのため、収穫後、消費前に少なくともある程度の時間にわたって貯蔵されなければならない。多くの場合、完全な成熟前に収穫された作物は、成熟速度を増大させるために、その後、熟成剤、例えばエチレンガスで処理される。しかしながら、季節的な産物の場合、季節のピーク時に産物の供給過剰が起こり得るが、季節が終わると産物を入手できなくなるか、又は場合により遠隔地から輸入しなければならないことも依然として事実である。
【0025】
本明細書には、収穫された作物などの農産物の成熟の開始を遅延させるため、並びにその質量損失率及び/又は成熟速度を調節するための配合物及び方法が記載される。本方法は、一般的に、酸素又はエチレンなどの熟成剤が産物内に吸収されるのを抑制するため、及び/又は産物からの水分損失率を低減するために、最初に保護コーティングを産物上に形成することを含む。保護コーティングは、例えば、農産物の外側表面上に配設されるモノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せの組成物から形成され得、収穫後の成熟速度を低減するように配合され得る。保護コーティングは、産物の成熟を遅延させるのに十分な時間にわたって産物上に保持され得、その後、コーティングは、その効力を低減するために除去又は他に修飾され、産物が成熟される。収穫された産物のバッチ上に形成されたコーティングが形成及び/又は除去若しくは修飾される時点を調整することにより、このバッチからの成熟した産物を長期間にわたって消費者に徐々に提供することができる。
【0026】
作物は、一般的に、消費者が食用に適していると考え得るような完熟状態にあるときに熟したと考えられる。作物は、通常、消費者が熟したと考える時点まで熟成/完熟し、ある期間にわたって熟したままであるが、熟成し続ける。作物は、熟している間に消費されないと最終的に腐敗し、もはや食用に適さない。色、質感、及び固さ(又は柔らかさ)などのいくつかの因子は、農産物が熟しているとき及び農産物が腐っているときについての消費者の決定に影響を与える。これらの種々の成熟度の決定因子は、異なる農産物に対して消費者により異なって重み付けされる。例えば、トマトの場合、色(例えば、トマトがどの程度赤く見えるか、及び対応するトマトの色指数)は、通常、消費者の成熟度の決定における最も重要な因子であるが、固さ及び/又は肌の質感は、通常、トマトが腐ったときを決定するために消費者により使用される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「クリマクテリック呼吸」は、エチレン生成の増大に関連する細胞呼吸レベルの増大及び特定の作物種の成熟段階を意味すると理解される。
【0028】
図1は、作物の相対的な成熟状態を時間の関数として示す定性的なプロットであり、ここで、曲線102は、産物が熟したと考えられる開始点である点112に対応する時点で収穫された作物の典型的な成熟サイクルを示す。点線120は、作物が熟したと消費者が考え得る相対的な成熟レベル(例えば、作物が熟したかどうかを決定するために消費者により使用される1つ又は複数の因子の相対的な状態)を表す。熟した状態に到達する前に、作物は、点112に対応する時点まで熟成及び完熟し、その後、成熟したと考えられる。作物は、熟成し続けるため、その成熟状態は、最終的に線120よりも再び低くなり、その時点で腐ったと考えられる。いくつかの場合、作物は、成熟した後(すなわち点112で示される時点後)に収穫され得るが、他の場合、成熟前(すなわち点112で示される時点前)に収穫され得る。厳密に点112で示される時点で作物が収穫される場合、区分130は、作物の全貯蔵期間を表す。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される保護コーティングは、作物の貯蔵期間を延長するために使用することができる。例えば、
図1の点110で表される時点において、点112で示される時点で収穫された作物にコーティングが適用されると、作物が腐ったときを決定する因子は、より遅い速度で進行し、作物の相対的な成熟状態は、破線曲線104に従うことができる。従って、コーティングを適用することにより、作物の貯蔵期間を区分130で表される時間から区分140で表される時間まで延長することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される保護コーティングは、作物の成熟を遅延及び/又は調節するために使用され得る。例えば、ここで、
図2を参照すると、保護コーティングが成熟前(例えば、点250で表される時点)に作物に適用されると、作物の成熟サイクルは、曲線102ではなく、破線曲線204に沿って進行し、それにより作物が熟す開始点が遅延される。場合により、コーティングは、例えば、
図2の点260において、その効力を低下させるために除去又は他に修飾され得る。
図2に示されるように、コーティングが(点260において)除去された後、作物の成熟曲線204は、同じ成熟段階(すなわち点270)におけるコーティングされていない作物の成熟曲線102と同様に進行し得る。上記の関係は、作物の収穫前にコーティングが適用される(及び任意選択的に除去される)場合並びにまた作物の収穫後にコーティングが適用及び除去される場合にも当てはまり得る。
【0031】
作物を処理/貯蔵し、且つ/又は収穫された作物及び/若しくは他の農産物の成熟速度を調節若しくは遅延する方法300は、
図3に示される。まず、コーティング組成物は、産物に適用されて産物の表面上にコーティングを形成する(ステップ302)。コーティング組成物は、例えば、複数のモノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、溶媒中に溶解されて溶液を形成する。溶液は、農産物に適用され、次に、溶媒は、少なくとも部分的に蒸発され、それにより結果としてコーティング組成物の成分を含むコーティングが産物の表面上に形成される。コーティングは、農産物の収穫前又は収穫後のいずれかに適用され得る。
【0032】
次に、コーティングされた農産物は、例えば、選別、加工、及び/又は出荷中に貯蔵される(ステップ304)。コーティングが収穫前に適用される場合、農産物は、貯蔵前に収穫され得る。以下に詳細に記載されるように、コーティング組成物は、コーティングが、コーティングの非存在下であり得る成熟速度に対して農産物の成熟速度を低減させるように配合される。例えば、コーティング組成物は、コーティングが酸化及び/又は他の熟成剤(例えば、エチレン)に対するバリアとしての役割を果たすように配合され得る。また、コーティング組成物は、コーティングが水分に対するバリアとしての役割を果たし、それにより農産物の質量損失率を低減するように配合され得る。また、コーティング組成物は、コーティングが農産物の呼吸速度を低減させるように配合され得る。結果的に、貯蔵中、農産物は、低減した速度で成熟し、任意選択的に質量を失い、それにより成熟が遅延され、収穫された産物の寿命が長くなる。例えば、産物をコーティングする前に、産物は、第1の平均速度で成熟し得るが、コーティングが形成された後、産物は、第1の平均速度よりも低い第2の平均速度で成熟し得る。
【0033】
最後に、農産物の完全な成熟が所望される場合、例えば、コーティングを溶解させる溶媒中に産物を浸漬することにより、コーティングが少なくとも部分的に除去される(ステップ306)。いくつかの実施形態では、コーティングの実質的に全てが除去される。コーティングの除去(又は少なくとも部分的な除去)は、産物がコーティングをその上に有する間の成熟速度に対して農産物の成熟速度を増大させる。例えば、コーティングが産物上にある間、産物は、上記の第2の平均速度で成熟し得るが、コーティングが除去された後、産物は、第2の平均速度よりも高い第3の平均速度で成熟し得る。このようにして、産物の成熟は、遅延及び/又は調節され得る。
【0034】
同様に
図3に示されるように、コーティングの除去(又は少なくとも部分的な除去)後、農産物は、任意選択的に、成熟をさらに促進するために熟成剤で処理され得る(ステップ308)。例えば、成熟を促進するために産物をエチレンガスにさらすことができる。
【0035】
代替的に、本明細書に記載され且つさらに詳細に説明されるように、コーティングは、農産物上に残され、任意選択的に、成熟を遅くするか又は遅延させるその効力を低減するようにも修飾され得る。また、本明細書に記載されるコーティングは、実質的に無味、無色、及び/又は無臭であり得る。さらに、本明細書に記載されるコーティングは、食用のために安全であり得る。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるコーティングは、農産物から実質的に除去されず、消費者が食べることができる。
【0036】
ここで、プロセス300のプロセスステップ302、304、306、及び308(
図3)、並びにその関連の加工剤及び得られるコーティングがさらに詳細に説明される。ステップ302を参照すると、農産物の表面上へのコーティングの形成は、例えば、以下のステップによって達成することができる。まず、コーティング剤(例えば、モノマー及び/若しくはオリゴマー、並びに/又はポリマー単位の組成物)の固体混合物は、溶媒(例えば、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、水、又はこれらの組合せ)中に溶解されて溶液を形成する。溶媒中のコーティング剤の濃度は、例えば、約0.1~200mg/mLの範囲であり得る。次に、コーティング剤を含む溶液は、例えば、作物/産物をスプレーコーティングすることにより、又は作物/産物を溶液中に浸漬することにより、コーティングされる作物又は他の農産物の表面上に適用される。スプレーコーティングの場合、溶液は、例えば、細かいミストスプレーを発生させるスプレーボトルに入れることができる。スプレーボトルヘッドは、次に、作物/産物から約3~12インチに保持され、且つ作物/産物をスプレーすることができる。ディップコーティングの場合、作物/産物は、例えば、バッグに入れることができ、コーティング剤を含有する溶液をバッグ内に注ぎ、且つバッグを密封し、作物/産物の表面全体が湿潤するまでその内容物を軽く転がすか又は攪拌する。溶液を作物/産物に適用した後、溶媒が少なくとも部分的に蒸発されるまで、作物/産物は乾燥され、それにより、コーティング剤の成分(例えば、モノマー及び/若しくはオリゴマー、並びに/又はポリマー単位)から構成される保護コーティングが作物/産物の表面上に形成可能になる。
【0037】
溶媒中に溶解されたコーティング剤は、複数のモノマー、オリゴマー、ポリマー(例えば、低分子量ポリマー)、又はこれらの組合せを含み得る。モノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せの特定の組成物は、結果として農産物上に形成されたコーティングが産物のクチクラ層を模倣又は強化するように配合され得る。バイオポリエステルクチンは、大部分の陸上植物の空中表面(aerial surface)を構成するクチクラの主要な構造成分を形成する。クチンは、重合モノヒドロキシ及び/又はポリヒドロキシ脂肪酸及びエステルと、埋め込まれたクチクラワックスとの混合物から形成される。クチクラ層のヒドロキシ脂肪酸及びエステルは、高い架橋密度で堅固に結合したネットワークを形成し、それにより水分損失及び酸化に対するバリアの役割を果たすと共に、他の環境的ストレス要因に対する保護を提供する。
【0038】
コーティング剤を構成するモノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せは、植物物質、特に植物物質から得られるクチンから抽出又は誘導され得る。植物物質は、通常、クチンを含有し且つ/又は高密度のクチンを有するいくつかの部分(例えば、果実の皮、葉、シュートなど)、並びにクチンを含有しないか又は低密度のクチンを有する他の部分(例えば、果肉、種子など)を含む。クチン含有部分は、モノマー及び/若しくはオリゴマー、並びに/又はポリマー単位から形成可能であり、これらは、次に、農産物の表面上にコーティングを形成するために、本明細書に記載される配合物において利用される。クチン含有部分は、非ヒドロキシル化脂肪酸及びエステル、タンパク質、多糖類、フェノール、リグナン、芳香族酸、テルペノイド、フラボノイド、カロテノイド、アルカロイド、アルコール、アルカン、並びにアルデヒドなどの他の構成要素も含み得、これらは、配合物中に含まれるか又は除外され得る。
【0039】
モノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せは、まず、コーティング剤のために望ましい分子を含む植物の部分を、所望の分子を含まない部分から分離する(又は少なくとも部分的に分離する)ことによって得ることができる。例えば、コーティング剤組成物の原料としてクチンを利用する場合、植物物質のクチン含有部分は、非クチン含有部分から分離され(又は少なくとも部分的に分離され)、クチン含有部分からクチンが得られる(例えば、クチン含有部分が果実の皮である場合、クチンは、皮から分離される)。得られた植物の部分(例えば、クチン)は、次に、複数の脂肪酸若しくはエステル化クチンモノマー、オリゴマー、ポリマー(例えば、低分子量ポリマー)、又はこれらの組合せを含む混合物を得るために脱重合される(又は少なくとも部分的に脱重合される)。
【0040】
脂肪酸又はエステル化されたクチン由来のモノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せの入手方法は、(i)植物物質のクチン含有部分からクチンを得ることであって、クチン含有部分は、植物物質の非クチン含有部分から少なくとも部分的に分離される、得ることと、(ii)第1の溶媒中でクチンを少なくとも部分的に脱重合させて、第1の溶媒中に溶解された第1の中間抽出物を含む第1の溶液を得ることであって、第1の溶液は、10~14の範囲のpHを有し、第1の中間抽出物は、複数のクチン由来のモノマー、オリゴマー、又はこれらの組合せを含む、得ることと、(iii)第1の溶媒の少なくとも一部を蒸発させ、第1の中間抽出物を凝固させることと、(iv)凝固した第1の中間抽出物を極性溶媒中に溶解させて、第2の溶液を得ることと、(v)第2の溶液を酸性化し、第1の中間抽出物を再凝固させることとを含み得る。
【0041】
脂肪酸又はエステル化されたクチン由来のモノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せの別の入手方法は、(i)植物物質のクチン含有部分からクチンを得ることであって、クチン含有部分は、植物物質の非クチン含有部分から少なくとも部分的に分離される、得ることと、(ii)第1の溶媒中でクチンを少なくとも部分的に脱重合させて、第1の溶媒中に溶解された第1の中間抽出物を含む第1の溶液を得ることであって、第1の中間抽出物は、複数のクチン由来のモノマー、オリゴマー、又はこれらの組合せを含む、得ることと、(iii)第1の中間抽出物を酸性化することと、(iv)第1の中間抽出物を選択的にろ過して、第1の中間抽出物よりも高い純度を有する第2の中間抽出物を得ることと、(v)第2の中間抽出物を第2の溶媒中に溶解させて所望の分子を得ることとを含み得る。
【0042】
脂肪酸又はエステル化されたクチン由来のモノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せの別の入手方法は、(i)植物物質のクチン含有部分からクチンを得ることであって、クチン含有部分は、植物物質の非クチン含有部分から少なくとも部分的に分離される、得ることと、(ii)第1の溶媒中でクチンを少なくとも部分的に脱重合させて、第1の溶媒中の第1の中間抽出物を含む第1の溶液を得ることであって、第1の中間抽出物は、複数のクチン由来のモノマー、オリゴマー、又はこれらの組合せを含む、得ることと、(iii)第1の中間抽出物を選択的にろ過して、第1の中間抽出物よりも高い純度を有する第2の中間抽出物を得ることであって、第2の中間抽出物は、クチン由来モノマー、オリゴマー、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含む、得ることと、(iv)第2の中間抽出物のクチン由来のモノマー、オリゴマー、又はこれらの組合せを官能基化して(例えば、グリセロール分子を用いるエステル化などのエステル化による)所望の分子を得ることとを含み得る。
【0043】
脂肪酸又はエステル化されたクチン由来のモノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せの別の入手方法は、(i)植物物質のクチン含有部分からクチンを得ることであって、クチン含有部分は、植物物質の非クチン含有部分から少なくとも部分的に分離される、得ることと、(ii)第1の溶媒中でクチンを少なくとも部分的に脱重合させて、第1の溶媒中に溶解された第1の中間抽出物を含む第1の溶液を得ることであって、第1の溶液は、10~14の範囲のpHを有し、第1の中間抽出物は、複数のクチン由来のモノマー、オリゴマー、又はこれらの組合せを含む、得ることと、(iii)第1の溶液から第1の溶媒の体積の少なくとも25%を蒸発させることと、(iv)第1の溶液に極性溶媒を添加し、それにより第2の溶液を得ることと、(v)第2の溶液を酸性化し、それにより第1の中間抽出物を沈殿させることとを含み得る。
【0044】
脂肪酸又はエステル化されたクチン由来のモノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せの別の入手方法は、(i)クチン含有植物物質からクチンを得ることと、(ii)クチンを溶媒に添加して、第1の混合物を形成することであって、溶媒は、1気圧の圧力において第1の温度の沸点を有する、形成することと、(iii)第1の混合物を第2の温度及び第2の圧力まで加熱して、クチン由来のモノマー、オリゴマー、又はこれらの組合せを含む第2の混合物を形成することであって、第2の温度は、第1の温度よりも高く、第2の圧力は、1気圧よりも高い、形成することとを含み得る。例えば、溶媒は、水であり得、第1の温度は、約100℃であり得る。
【0045】
クチン由来の遊離脂肪酸モノマー、オリゴマー、又はこれらの組合せを含む組成物の別の調製方法は、(i)クチン含有植物物質からクチンを得ることと、(ii)クチンを水に添加して混合物を形成することと、(iii)混合物を第1の温度及び第1の圧力から第2の温度及び第2の圧力まで加熱し、それにより、クチン由来の遊離脂肪酸モノマー、オリゴマー、又はこれらの組合せを含む組成物を形成することであって、第2の温度は、1気圧で水の沸点よりも高く、第2の圧力は、1気圧よりも高い、形成することとを含み得る。
【0046】
クチン由来の脂肪酸のエステルを含む組成物の別の調製方法は、(i)クチン含有植物物質からクチンを得ることと、(ii)クチンを溶媒に添加して混合物を形成することであって、溶媒は、1気圧の圧力において第1の温度の沸点を有する、形成することと、(iii)混合物を第2の温度及び第2の圧力まで加熱し、それにより、エステルを含む組成物を形成することであって、第2の温度は、第1の温度よりも高く、第2の圧力は、1気圧よりも高い、形成することとを含み得る。いくつかの実施において、溶媒は、メタノールを含み、エステルは、メチルエステルを含む。いくつかの実施において、溶媒は、エタノールを含み、エステルは、エチルエステルを含む。いくつかの実施において、溶媒は、グリセロールを含み、エステルは、グリセリルエステルを含む。
【0047】
脂肪酸エステルを含む組成物の別の調製方法は、(i)脂肪酸を含む架橋ポリエステル(例えば、クチン)を提供することと、(ii)酸及びアルコールでポリエステルを処理することと、(iii)酸及びアルコールを除去して、得られた脂肪酸エステルを単離することとを含み得る。
【0048】
脂肪酸又はエステル化されたクチン由来のモノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せの付加的な入手方法は、2016年5月20日に出願された「PLANT EXTRACT COMPOSITIONS AND METHODS OF PREPARATION THEREOF」という名称の国際特許出願PCT/米国特許出願公開第16/33617号、2016年12月9日に出願された「PLANT EXTRACT COMPOSITIONS FOR FORMING PROTECTIVE COATINGS」という名称の国際特許出願PCT/米国特許出願公開第16/65917号、及び2016年11月17日に出願された「COMPOSITIONS FORMED FROM PLANT EXTRACTS AND METHODS OF PREPARATION THEREOF」という名称の米国仮特許出願第62/423,337号(これらの開示は、参照によりその全体が本明細書中に援用される)に記載されている。
【0049】
クチン由来のモノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せは、溶媒中に直接溶解させて、コーティングの形成で使用される溶液を形成することもでき、又は代替的に最初に活性化若しくは化学修飾(例えば、官能基化)することもできる。化学修飾又は活性化は、例えば、モノマー、オリゴマー、ポリマー、又はこれらの組合せをグリセロール化して、1-モノアシルグリセリド及び/又は2-モノアシルグリセリドの混合物を形成することを含み得、1-モノアシルグリセリド及び/又は2-モノアシルグリセリドの混合物は、溶媒中に溶解されて溶液を形成し、それにより保護コーティングの調製に利用される配合物が得られる。本明細書で使用される場合、官能基化モノマー、オリゴマー又はポリマーは、化学組成が修飾された(例えば、グリセリルなどの官能基を取り付けることによる)モノマー、オリゴマー、又はポリマーである。
【0050】
いくつかの実施において、コーティング剤は、脂肪酸、エステル、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド(例えば、モノアシルグリセリド)、アミド、アミン、チオール、チオエステル、カルボン酸、エーテル、脂肪族ワックス、アルコール、塩(無機及び有機)、酸、塩基、タンパク質、酵素、又はこれらの組合せを含む。いくつかの実施において、コーティング剤は、2016年9月15日に出願された「Precursor Compounds for Molecular Coatings」という名称の米国特許出願公開第15/330,403号(その開示は、参照によりその全体が本明細書中に援用される)に記載されるものと実質的に類似又は同一であり得る。いくつかの実施において、コーティング剤は、モノアシルグリセリド(例えば、1-モノアシルグリセリド又は2-モノアシルグリセリド)、例えばモノアシルグリセリドモノマー及び/若しくはオリゴマー、並びに/又はそれらから形成される低分子量ポリマーを含む。例えば、コーティング剤は、式I:
【化7】
(式中、
Rは、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールから選択され、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数のC
1~C
6アルキル又はヒドロキシで任意選択的に置換されており、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されており、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数の-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されているか、又は
R
3及びR
4は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
7及びR
8は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
14及びR
15は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、又は-C
2~C
6アルキニルであり、
記号
【化8】
は、任意選択的に単結合又はシス若しくはトランス二重結合を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、3、4、又は5であり、及び
rは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8である)
の化合物を含み得る。
【0051】
いくつかの実施において、Rは、-H、-CH3、又は-CH2CH3である。
【0052】
いくつかの実施において、コーティング剤は、モノアシルグリセリド(例えば、1-モノアシルグリセリド又は2-モノアシルグリセリド)エステル、及び/若しくはモノマー、及び/若しくはオリゴマー、並びに/又はそれらから形成される低分子量ポリマーを含む。1-モノアシルグリセリドと2-モノアシルグリセリドとの間の違いは、グリセロールエステルの結合点である。従って、いくつかの実施において、コーティング剤は、式I-A:
【化9】
(式中、
各R
aは、独立して、-H又は-C
1~C
6アルキルであり、
各R
bは、独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、又は-OHから選択され、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されており、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数の-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されているか、又は
R
3及びR
4は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
7及びR
8は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
14及びR
15は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、又は-C
2~C
6アルキニルであり、
記号
【化10】
は、任意選択的に単結合又はシス若しくはトランス二重結合を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、3、4、又は5であり、及び
rは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8である)
の化合物(例えば、2-モノアシルグリセリド)を含む。
【0053】
いくつかの実施において、コーティング剤は、式I-B:
【化11】
(式中、
各R
aは、独立して、-H又は-C
1~C
6アルキルであり、
各R
bは、独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、又は-OHから選択され、
R
1、R
2、R
5、R
6、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されており、
R
3、R
4、R
7、及びR
8は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、ハロゲン、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、-C
2~C
6アルキニル、-C
3~C
7シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、1つ又は複数の-OR
14、-NR
14R
15、-SR
14、又はハロゲンで任意選択的に置換されているか、又は
R
3及びR
4は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
7及びR
8は、これらが結合される炭素原子と組み合わされて、C
3~C
6シクロアルキル、C
4~C
6シクロアルケニル、又は3員~6員環複素環を形成することができ、及び/又は
R
14及びR
15は、各出現においてそれぞれ独立して、-H、-C
1~C
6アルキル、-C
2~C
6アルケニル、又は-C
2~C
6アルキニルであり、
記号
【化12】
は、任意選択的に単結合又はシス若しくはトランス二重結合を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8であり、
mは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、3、4、又は5であり、及び
rは、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8である)
の化合物(例えば、1-モノアシルグリセリド)を含む。
【0054】
式I-A及び/又は式I-Bのいくつかの実施形態では、2-グリセリル又は1-グリセリルは、-H、C1~C6アルキル、又はヒドロキシの1つ又は複数で任意選択的に置換される。1つ又は複数の実施形態において、コーティング剤中の式I-Bの化合物の式I-Aの化合物に対する質量比は、0.1~1.0の範囲である。
【0055】
いくつかの実施形態では、コーティング剤は、以下の脂肪酸化合物:
【化13】
【化14】
【化15】
の1つ又は複数を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、コーティング剤は、以下のメチルエステル化合物:
【化16】
【化17】
【化18】
の1つ又は複数を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、コーティング剤は、以下のエチルエステル化合物:
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
の1つ又は複数を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、コーティング剤は、以下の2-グリセロールエステル化合物:
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
の1つ又は複数を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、コーティング剤は、以下の1-グリセロールエステル化合物:
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
の1つ又は複数を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、コーティング剤は、少なくとも2つの異なる化合物の組合せから形成される。例えば、コーティング剤は、式I-Aの化合物及び添加剤を含み得る。添加剤は、例えば、式I-Bの飽和若しくは不飽和化合物、飽和若しくは不飽和脂肪酸、エチルエステル、又は(第1の)式I-Aの化合物と異なる(例えば、異なる長さの炭素鎖を有する)第2の式I-Aの化合物を含み得る。式I-Aの化合物は、コーティング剤の質量の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を構成することができる。式I-Aの化合物及び添加剤の合わせた質量は、コーティング剤の全質量の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%であり得る。コーティング剤中の添加剤の式I-Aの化合物に対するモル比は、0.1~5の範囲、例えば0.1~4、0.1~3、0.1~2、0.1~1、0.1~0.9、0.1~0.8、0.1~0.7、0.1~0.6、0.1~0.5、0.15~5、0.15~4、0.15~3、0.15~2、0.15~1、0.15~0.9、0.15~0.8、0.15~0.7、0.15~0.6、0.15~0.5、0.2~5、0.2~4、0.2~3、0.2~2、0.2~1、0.2~0.9、0.2~0.8、0.2~0.7、0.2~0.6、0.2~0.5、0.3~5、0.3~4、0.3~3、0.3~2、0.3~1、0.3~0.9、0.3~0.8、0.3~0.7、0.3~0.6、0.3~0.5、1~5、1~4、1~3、又は1~2の範囲であり得る。コーティング剤は、例えば、以下の表1に記載される式I-Aの化合物及び添加剤の組合せの1つから形成することができる。
【0061】
【0062】
いくつかの実施形態では、コーティング剤は、以下の表2に記載される化合物の組合せの1つから形成される。
【0063】
【0064】
以下の略語は、上記の表1及び2において使用される。ヘキサデカン酸(すなわちパルミチン酸)は、PAと略される。オクタデカン酸(すなわちステアリン酸)は、SAと略される。テトラデカン酸(すなわちミリスチン酸)は、MAと略される。(9Z)-オクタデセン酸(すなわちオレイン酸)は、OAと略される。1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート(すなわち2-グリセロパルミタート)は、PA-2Gと略される。1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルオクタデカノアート(すなわち2-グリセロステアラート)は、SA-2Gと略される。1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルテトラデカン酸(すなわち2-グリセロミリスタート)は、MA-2Gと略される。1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル(9Z)-オクタデセノアート(すなわち2-グリセロオレアート)は、OA-2Gと略される。2,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート(すなわち1-グリセロパルミタート)は、PA-1Gと略される。2,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルオクタデカノアート(すなわち1-グリセロステアラート)は、SA-1Gと略される。2,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルテトラデカノアート(すなわち1-グリセロミリスタート)は、MA-1Gと略される。2,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル(9Z)-オクタデセノアート(すなわち1-グリセロオレアート)は、OA-1Gと略される。エチルヘキサデカノアート(すなわちエチルパルミタート)は、EtPAと略される。
【0065】
上記の表2に示されるように、コーティング剤は、第1の成分及び第2の成分を含み得、ここで、第1の成分は、式I-Bの化合物であり、第2の成分は、脂肪酸又は(第1の)式I-Bの化合物と異なる第2の式I-Bの化合物のいずれかである。式I-Bの化合物は、コーティング剤の質量の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%を構成することができる。第1の成分及び第2の成分の合わせた質量は、コーティング剤の全質量の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%であり得る。
【0066】
プロセス300のステップ302(
図3)に戻って参照すると、コーティング剤を溶媒中に溶解させて溶液を形成した後、溶液は、表面上に保護コーティングを形成するために作物又は他の農産物の断片の表面上に適用され、保護コーティングは、コーティング剤の成分から形成される。既に記載されたように、溶液は、例えば、作物若しくは農産物を溶液中に浸漬することにより、又は溶液を表面上にスプレーすることにより表面に適用することができる。次に、例えば、溶媒を蒸発させるか又は少なくとも部分的に蒸発させることにより、溶媒は、作物又は農産物の表面から除去される。いくつかの実施形態では、溶媒を作物の表面から少なくとも部分的に除去する行為は、溶媒の少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも99%、又は実質的に全て)を作物の表面から除去することを含む。溶媒が除去される(例えば、蒸発される)につれて、コーティング剤は、作物又は農産物の表面で再凝固して表面上に保護コーティングを形成することができる。場合により、モノマー、オリゴマー、ポリマー(例えば、低分子量ポリマー)、又はこれらの組合せは、溶媒が表面から除去される間、コーティングが形成されるにつれて架橋する。得られた保護コーティングは、次に、作物若しくは農産物からの水損失及び/又は作物若しくは農産物の酸化に対するバリアとしての役割を果たし得、作物又は農産物を生物的及び非生物的なストレス要因から保護することができ、作物又は農産物の呼吸速度を低減又は修飾することができ、及び/又は他に作物又は農産物の成熟速度を低減又は修飾することができる。
【0067】
厚さ、モノマー/オリゴマー/ポリマーの架橋密度、及び透過性などのコーティングの特性は、コーティング剤の特定の組成、溶媒の特定の組成、溶媒中のコーティング剤の濃度、及びコーティング付着プロセスの条件(例えば、溶媒が除去される前に作物又は農産物の表面に溶液が適用される時間、付着プロセス中の温度、スプレーヘッドとサンプルとの間のスタンドオフ距離、及びスプレー角度)を調整することにより、特定の農産物に適するように変更することができる。例えば、短すぎる適用時間は、作物又は農産物の不完全な被覆をもたらし、長すぎる適用時間は、潜在的に溶媒により損傷された作物又は農産物をもたらし得る。従って、溶液は、1~3,600秒間、例えば100~3,000秒間又は500~2,000秒間にわたって作物又は農産物の表面に適用され得る。さらに、溶媒中のコーティング剤の濃度は、例えば、0.1~200mg/mL又は約0.1~200mg/mLの範囲、例えば約1~100mg/mL、1~50mg/mL、5~100mg/mL、又は5~50mg/mLの範囲であり得る。
【0068】
本明細書に記載されるコーティング剤から形成される保護コーティングは、食用コーティングであり得る。保護コーティングは、人間の目で実質的に検出不能であり、無臭及び/又は無味であり得る。保護コーティングは、約0.1ミクロン~300ミクロンの範囲、例えば約0.5ミクロン~100ミクロン、1ミクロン~50ミクロン、0.1ミクロン~10ミクロン、又は10ミクロン未満の範囲の平均厚さを有することができる。いくつかの実施において、保護コーティングは、完全に有機である(例えば、化学的な意味というよりは、農業的な意味で有機である)。いくつかの実施形態では、作物は、皮の薄い果実又は野菜である。例えば、作物は、ベリー又はモモであり得る。いくつかの実施形態では、作物は、カットフルーツ表面(例えば、カットしたリンゴの表面)を含み得る。
【0069】
ここで、プロセス300のステップ304(
図3)を参照すると、その成熟速度、呼吸速度、及び/又は質量損失率を低減するために農産物がコーティングされた後、コーティングされた産物を貯蔵することができる。貯蔵中、コーティングされた産物は、コーティングされていない同様の産物と比べて低減された速度で成熟し、それにより成熟及びその後の腐敗を伴わずに農産物を長期間にわたって貯蔵できるようになる。
【0070】
ここで、プロセス300のステップ306(
図3)を参照すると、農産物の成熟が所望される日が近づいたら、産物の成熟速度を増大させるために、コーティングは、産物から除去(又は少なくとも部分的に除去)される。コーティングの除去は、例えば、コーティングが溶解できるか又は少なくとも多少は溶解できる溶媒中に農産物を浸漬することによって達成することができる。溶媒及び浸漬時間は、好ましくは、農産物の品質を損傷又は他に劣化させないように選択される。溶媒は、例えば、水、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロパノール、酢酸エチル、又はこれらの組合せであり得る。農産物への損傷又は劣化を最小限にするために且つ加工時間を最小限にするために、コーティングを除去するための浸漬時間は、できるだけ短く、例えば10分未満、5分未満、3分未満、2分未満、1分未満、50秒未満、40秒未満、30秒未満、20秒未満、又は10秒未満であることが好ましい。
【0071】
いくつかの実施形態では、コーティングを除去するために使用される溶媒は、例えば、少なくとも30℃、少なくとも40℃、又は少なくとも50℃まで加熱される。溶媒の加熱は、溶媒中のコーティングの溶解度を増大させることができ、それにより、より短い適用時間でコーティングを除去(又は少なくとも部分的に除去)し、従って農産物の成熟速度を増大できるようになる。代替的に、コーティングを除去するために使用される溶媒は、例えば、25℃未満、20℃未満、15℃未満、14℃未満、12℃未満、10℃未満、8℃未満、6℃未満、5℃未満、又は4℃未満の温度まで冷却され得る。溶媒の温度の低下は、溶媒中のコーティングの溶解度を低下させ得るが、低温に保持することが好ましい選別又は加工ステップ中、溶媒の農産物への適用を行うことができる。例えば、いくつかの実施形態では、コーティングは、温度が通常約13℃以下に保持され得る作物のパッキングラインで除去される。他の実施形態では、コーティングは、作物が貯蔵されるコールドルーム(温度は、通常、約4℃以下に保持され得る)内で除去される。これらの場合のいずれにおいても、コールドチェーンの切断を防止するために、溶媒は、ほぼ周囲温度であるのが好ましいこともある。
【0072】
コーティングは、代替的に、溶媒中の浸漬以外の方法によって除去することもできる。例えば、コーティングは、例えば、コーティングされた産物をブラシベッド(brush bed)上に置くことによって機械的に除去することができる。又は、コーティングされた産物は、コーティングを弱めるためにまず溶媒中に浸漬された後、コーティングの機械的除去を行うことができる。さらに、いくつかの実施形態では、コーティングされた産物を湿潤環境(例えば、高い相対湿度)で貯蔵し、コーティングを周囲の液体中に溶解させることによってコーティングが除去される。
【0073】
既に記載したように、本明細書に記載されるコーティング剤から形成される保護コーティングは、コーティングされた産物の成熟速度を低減することができ、保護コーティングの除去は、その後、産物の成熟速度を増大させることができる。例えば、コーティングは、下側にある作物の酸化を抑制ように配合することができ、且つまた水分に対するバリアとしての役割を果たし、それによりコーティングされた産物の質量損失率を低減するように配合することができる。また、コーティングは、コーティングされた産物の呼吸速度を低減するように配合することができる。本開示の発明者らは、作物の成熟速度と、外側部分の物理的外観の変化との相関関係、作物の成熟速度と質量損失率との相関関係、及び作物の成熟速度と呼吸速度との相関関係を調査した。以下にさらに記載されるように、作物の成熟は、物理的外観の変化よりもはるかにより大きく、呼吸速度及び場合により質量損失率と相関がある。多くの場合、作物は、その外観に検出可能な変化を伴わずに成熟するが、質量損失及び縮小は、成熟の兆候である軟化と直接相関があり、呼吸は、生理学的腐敗と直接相関があり得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、作物などの産物の「呼吸速度」は、産物がCO2を放出する速度を指し、より具体的には、産物の単位質量当たりの単位時間に放出されるCO2の体積(標準温度及び圧力における)である。作物の呼吸速度は、CO2センサーを備えた既知の体積の閉鎖容器に作物を入れ、容器内のCO2濃度を時間の関数として記録し、次に、測定された濃度値を得るために必要なCO2の放出速度を計算することによって測定することができる。
【0075】
図4~8は、質量損失率(及び関連の成熟速度)を低減するためにアボカド上にコーティングを形成し、コーティングされたアボカドを貯蔵し、且つその後、質量損失率(及び関連の成熟速度)を増大させるためにコーティングを除去することの効果を示す。全てのアボカド上のコーティングは、以下のように形成した。まず、2-モノアシルグリセリド化合物及び添加剤の混合物を含む固体コーティング組成物を配合した。
図4~8のプロットについて、2-モノアシルグリセリド化合物は、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート(すなわちPA-2G)であり、添加剤は、2,3-ジヒドロキシプロピルパルミタート(すなわちPA-1G)であり、コーティング組成物中のPA-2G対PA-1Gの質量比は、70:30であった。しかしながら、1-モノアシルグリセリド化合物、2-モノアシルグリセリド化合物、及び/又は他の添加剤の他の組合せ、並びにPA-2G対PA-1Gの異なる質量比を用いて、同様の特性を有するコーティング組成物を形成することもできる。
【0076】
80体積%のエタノール及び20体積%の水である溶媒中にコーティング組成物を溶解させ、溶液を形成した。溶媒中のコーティング組成物の濃度は、10mg/mLであった。次に、アボカドを溶液中に約30秒間浸漬し、表面全体にわたる溶液の適用を保証するために攪拌し、各アボカドは、平均して約1mLの溶液がその表面に適用された。次に、アボカドを溶液から取り出し、乾燥ラック上に置き、溶媒を蒸発させた結果、アボカドのそれぞれの外側表面上に保護コーティングが形成された。
【0077】
全てのコーティングの除去は、種々の図面及びその付随する説明に示されるように、アボカドを溶媒浴(例えば、水又はエタノール)中に浸漬することにより行った。いずれの場合にも、溶媒浴中の溶媒の体積は、約700mLに、溶媒浴中に浸漬されるアボカドの数を掛けた量に等しかった。
【0078】
図4は、コーティングされ、且つその後、水中に5分間浸漬することによりそのコーティングが除去されたアボカドのバッチについての質量損失率のプロット400である。全てのアボカドは、ほぼ同じ時間及びほぼ同じ段階又は成熟度で採取した。全てのコーティングは、アボカドを採取してから約2~3日後に同時に形成し、その後、コーティングを形成してから2日後に同時に除去した。研究全体を通して、全てのアボカドを周囲条件(平均温度約20℃及び相対湿度約40%~60%)下で貯蔵した。第1の対照群(402及び404に対応する)は、コーティングせず、その後の水中での浸漬も行わなかった。第2の対照群(412及び414に対応する)は、コーティングしたが、その後、コーティングを除去しなかった。第1の試験群(422及び424に対応する)は、コーティングし、且つその後、30℃の水中に5分間浸漬してコーティングを除去した。第2の試験群(432及び434に対応する)は、コーティングし、且つその後、40℃の水中に5分間浸漬してコーティングを除去した。第3の試験群(442及び444に対応する)は、コーティングし、且つその後、50℃の水中に5分間浸漬してコーティングを除去した。バー402、412、422、432、及び442は、アボカドがその上にコーティングを有している(コーティングされていない第1の対照群を除く)期間に測定された、5つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。バー412、422、432、及び442は、それぞれ同時にコーティングがその上に形成された4つの別個の群のアボカドを表し、本明細書に記載されるコーティングによりアボカドがコーティングされている間、これらの群のそれぞれについて同時に質量損失率を測定した。バー404、414、424、434、及び444は、3つの試験群からコーティングを除去(第2の対照群では残される)した後に測定された、5つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。
【0079】
図4に示されるように、第2の対照群及び3つの試験群のアボカドがコーティングされている間、未処理のアボカド(バー402)は、1日当たり0.93%の平均質量損失率(すなわち1日当たり0.9%よりも高い)を経験したが、コーティングされたアボカド(バー412、422、432、及び442)は、それぞれ1日当たり0.38%、1日当たり0.38%、1日当たり0.41%、及び1日当たり0.39%の質量損失率を経験し、コーティングが質量損失率を2倍よりも大きく低減したことが示された。3つの試験群からコーティングを除去した後、2つの対照群の質量損失率は、ほぼ同じままであった。すなわち、コーティングされていないアボカド(バー404)の質量損失率は、1日当たり0.86%であり、コーティングされたままであるアボカド(バー414)の質量損失率は、1日当たり0.40%であった。しかしながら、30℃の水中に浸漬したアボカドは、1日当たり0.45%への質量損失率のわずかな増大を経験し(バー424)、理論に拘束されることは望まないが、コーティングが部分的に除去され、及び/又は弱められ、且つ成熟速度がわずかに増大したことが示された。40℃の水中に浸漬したアボカドは、1日当たり0.59%への質量損失率のより大きい増大を経験し(バー434)、理論に拘束されることは望まないが、コーティングのより大幅な除去及び成熟速度のより大きい増大が示された。50℃の水中に浸漬したアボカドは、1日当たり0.74%への質量損失率のさらにより大きい増大を経験し(バー444)、理論に拘束されることは望まないが、コーティングのより大幅な除去及び成熟速度のさらにより大きい増大が示された。50℃の水中に浸漬したアボカドの場合、コーティングを除去した後の質量損失率は、アボカドがコーティングされている間の質量損失率よりも50%を超えて大きかった。実際、50℃の水中に浸漬したアボカドの場合、質量損失率は、同じ期間のコーティングされていないアボカドの質量損失率の75%を上回った。
【0080】
図5は、3つの試験群からコーティングが除去されてから8日間、
図4において測定されたアボカドについて、面積減少パーセントの時間の関数としてのプロット500を示す。
図5に示されるように、8日後に、コーティングされていないアボカド(504)の断面積は、5.0%減少したが、コーティングを依然としてその上に有するアボカド(514)の断面積は、2.5%のみ減少した。30℃の水中に浸漬したアボカド(524)の断面積は、8日後に3.2%減少した。40℃の水中に浸漬したアボカド(534)断面積は、8日後に3.7%減少した。50℃の水中に浸漬したアボカド(544)の断面積は、8日後に3.9%減少した。
【0081】
図6は、コーティングされ、且つその後、22℃の実質的に純粋なエタノール中に異なる時間浸漬することによりそのコーティングが除去されたアボカドのバッチについての質量損失率のプロット600である。
図4と同様に、全てのアボカドは、ほぼ同じ時間及びほぼ同じ成熟段階で採取した。全てのコーティングは、アボカドを採取してから約2~3日後に同時に形成し、その後、コーティングを形成してから2日後に同時に除去した。研究全体を通して、全てのアボカドを周囲条件(平均温度約20℃及び相対湿度約40%~60%)下で貯蔵した。第1の対照群(602及び604に対応する)は、コーティングせず、その後のエタノール中での浸漬も行わなかった。第1の試験群(652及び654に対応する)は、コーティングし、且つその後、22℃のエタノール中に10秒間浸漬してコーティングを除去した。第2の試験群(662及び664に対応する)は、コーティングし、且つその後、22℃のエタノール中に1分間浸漬してコーティングを除去した。第3の試験群(672及び674に対応する)は、コーティングし、且つその後、22℃のエタノール中に5分間浸漬してコーティングを除去した。バー602、652、662、及び672は、アボカドがその上にコーティングを有している(コーティングされていない対照群を除く)期間に測定された、4つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。バー652、662、及び672は、それぞれ同時にコーティングがその上に形成された3つの別個の群のアボカドを表し、本明細書に記載されるコーティングによりアボカドがコーティングされている間、これらの群のそれぞれについて同時に質量損失率を測定した。バー604、654、664、及び674は、3つの試験群からコーティングを除去した後に測定された、4つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。
【0082】
図6で測定されたアボカドの場合、コーティングをその上に有するアボカド(バー652、662、及び672)の質量損失率は、同時に測定したコーティングされていないアボカド(バー602)の質量損失率よりも実質的に低かった。しかしながら、3つの浸漬時間の全てについて、エタノール中に浸漬した後の質量損失率(バー654、664、及び674)は、コーティングされていないアボカド(バー604)の質量損失率とほぼ同じであり、理論に拘束されることは望まないが、エタノール浸漬は、3つ全ての浸漬時間についてコーティングの効果を実質的に排除することが示された。特に、コーティングの効果は、約5分以下、約3分以下、約1分以下、30秒未満、20秒未満、及び12秒未満にわたり、アボカドをエタノールに浸漬することによって実質的に排除された。
【0083】
図7は、コーティングされ、且つその後、実質的に純粋なエタノール中に様々な温度で10秒間浸漬することによりそのコーティングが除去されたアボカドのバッチについての質量損失率のプロット700である。全てのアボカドは、ほぼ同じ時間及びほぼ同じ段階又は成熟度で採取した。全てのコーティングは、アボカドを採取してから約2~3日後に同時に形成し、その後、コーティングを形成してから2日後に同時に除去した。研究全体を通して、全てのアボカドを周囲条件(平均温度約20℃及び相対湿度約40%~60%)下で貯蔵した。第1の対照群(702及び704に対応する)は、コーティングせず、その後のエタノール中での浸漬も行わなかった。第2の対照群(712及び714に対応する)は、コーティングしたが、その後、コーティングを除去しなかった。第1の試験群(722及び724に対応する)は、コーティングし、且つその後、22℃のエタノール中に10秒間浸漬してコーティングを除去した。第2の試験群(732及び734に対応する)は、コーティングし、且つその後、13℃のエタノール中に10秒間浸漬してコーティングを除去した。第3の試験群(742及び744に対応する)は、コーティングし、且つその後、4℃のエタノール中に10秒間浸漬してコーティングを除去した。バー702、712、722、732、及び742は、アボカドがその上にコーティングを有している(コーティングされていない対照群を除く)期間に測定された、5つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。バー704、714、724、734、及び744は、3つの試験群からコーティングを除去(第2の対照群では残される)した後に測定された、5つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。
【0084】
図7で測定されたアボカドの場合、コーティングをその上に有するアボカド(バー712、722、732、及び742)の質量損失率は、同時に測定したコーティングされていないアボカド(バー702)の質量損失率よりも実質的に低かった。さらに、3つの全ての浸漬温度について、エタノール中に浸漬した後の質量損失率(バー724、734、及び744)は、コーティングされていないアボカド(バー704)の質量損失率と実質的に類似しており、理論に拘束されることは望まないが、低温及び非常に短い浸漬時間でも、エタノール浸漬は、コーティングの効果を実質的に排除することが示された。特に、理論に拘束されることは望まないが、コーティングの効果は、約22℃以下、約20℃以下、約17℃以下、約13℃以下、約10℃以下、約8℃以下、又は約5℃以下の温度で30秒未満にわたり、アボカドをエタノールに浸漬することによって実質的に排除された。
【0085】
図8は、3つの試験群からコーティングが除去されてから9日間、
図7において測定されたアボカドについて、面積減少パーセントの時間の関数としてのプロット800を示す。
図8に示されるように、9日後に、コーティングされていないアボカド(804)の断面積は、約6%減少したが、コーティングを依然としてその上に有するアボカド(814)の断面積は、約3%のみ減少した。4℃のエタノール中に浸漬したアボカド(844)の断面積は、9日後に4.7%減少した。13℃のエタノール中に浸漬したアボカド(834)の断面積は、9日後に4.9%減少した。22℃のエタノール中に浸漬したアボカド(824)の断面積は、9日後に4.4%減少した。
【0086】
収穫された作物及び/又は他の農産物の成熟速度を調節又は遅延する別の方法900は、
図9に示される。方法900は、農産物を貯蔵した後、保護コーティングを除去するのではなく、その特性を変更する(例えば、水分損失及び/又は酸素若しくはエチレンの吸着から産物を保護するコーティングの能力を低下させる)ようにコーティングを修飾することを除いて、
図3の方法300と類似している。例えば、以下に詳述されるように、コーティングは、第1の温度範囲内に保持されている間、水分損失及び/又は酸素若しくはエチレンの吸着に対する効果的なバリアとしての役割を果たすように配合され得るが、作物の周囲温度を第1の温度範囲と異なる(例えば、それよりも高い)温度に変化させると、コーティングの効力が低下し得る。従って、第1の期間中、コーティングされた作物を第1の温度で貯蔵することができ、その後、第1の温度よりも高い第2の温度まで作物を加熱することにより、保護コーティングを修飾することができる。一例として、コーティングを形成し、農産物がコールドルーム(例えば、通常、約2℃~約15℃の範囲の温度に保持される)内にある間にわたって農産物を貯蔵することができ、コーティングは、これらのより低い温度で保持されている間、効果的なバリアとしての役割を果たすが、より高い温度(例えば、約15℃よりも高い温度、例えば、通常、約20℃である室温)ではそうではないように配合され得る。従って、産物が低温貯蔵内にある間、農産物の成熟速度は、低下し得る(コーティングされていない同様の農産物と比較して)が、農産物が低温貯蔵庫から取り出され、周囲条件(例えば、約15℃よりも高い周囲温度)に置かれた時点で、成熟速度は、同じ成熟段階のコーティングされていない産物と実質的に同様になり得る。
【0087】
図9を参照すると、まず、コーティング組成物は、農産物に適用されて産物の表面上にコーティングを形成する(ステップ902)。方法300と同様に、コーティングは、農産物の収穫前又は収穫後のいずれかに適用され得る。コーティング組成物は、例えば、複数のモノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せ(官能基化モノマー、オリゴマー、又は低分子量ポリマーを含む)を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、溶媒中に溶解されて溶液を形成し、溶液は、農産物に適用され、次に、溶媒は、少なくとも部分的に蒸発され、それにより結果としてコーティング組成物の成分を含むコーティングが産物の表面上に形成される。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、第1の温度範囲内に保持されている間、コーティングが水分損失及び/又は酸素、エチレン若しくは他の熟成剤の吸着に対する効果的なバリアとしての役割を果たすように配合することができ、農産物は、コーティングされている間、第1の温度範囲内の周囲温度に保持され得る。
【0088】
次に、コーティングされた農産物は、例えば、選別、加工、及び/又は出荷中に貯蔵される(ステップ904)。農産物は、貯蔵中、第1の温度範囲内の第1の周囲温度に保持され、それにより、農産物は、貯蔵中、低減された速度で成熟され、任意選択的に質量を失い、且つ成熟が遅延され、収穫された産物の寿命が長くなる。いくつかの実施形態では、農産物は、実質的に同じ温度でコーティングされ、貯蔵される。例えば、産物は、周囲温度が実質的に常に一定であるように制御されるコールドルーム内でコーティング及び貯蔵され得る。
【0089】
最後に、農産物の完全な成熟が所望される場合、コーティングの効力が低減され、それに応じて農産物の呼吸速度及び/又は成熟速度が増大するようにコーティングが修飾される(例えば、コーティングの特性が変更される)(ステップ906)。例えば、上記の第1の温度範囲内の周囲温度においてコーティングされ、低温貯蔵庫で貯蔵された産物は、低温貯蔵庫から取り出して、周囲条件(例えば、第1の温度範囲外の周囲温度)に置くことができる。いくつかの実施形態では、コーティングされた作物の周囲温度を第1の温度範囲外の値まで変化させると、コーティングの構造が修飾され(例えば、少なくとも部分的に相変化を受け)、それによりコーティングの効力が低減され、任意選択的に、同じ成熟段階のコーティングされていない類似の農産物と実質的に同様の速度において、コーティングされた産物が成熟される。
【0090】
同様に
図9に示されるように、保護コーティングを修飾した後、農産物は、任意選択的に、成熟をさらに促進するために熟成剤で処理され得る(ステップ908)。例えば、成熟を促進するために産物をエチレンガスにさらすことができる。
【0091】
特性及びバリア効力が上記の温度依存性を示すコーティングをフィンガーライム上に形成し、結果を
図10及び
図11に示した。全てのフィンガーライム上のコーティングは、以下のように形成した。まず、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート(すなわちPA-2G)化合物及び添加剤の混合物を含む固体コーティング組成物を配合した。
図10のプロットについて、添加剤は、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル(9Z)-オクタデセノアート(すなわち2-グリセロオレアート又はOA-2G)であり、
図11のプロットについて、添加剤は、(9Z)-オクタデセン酸(すなわちオレイン酸又はOA)であった。実質的に純粋なエタノールである溶媒中にコーティング組成物を溶解させて溶液を形成した。溶媒中のコーティング組成物の濃度は、10mg/mLであった。次に、フィンガーライムを溶液中に約30秒間浸漬し、表面全体にわたる溶液の適用を保証するために攪拌し、各フィンガーライムは、平均して約0.2mLの溶液がその表面に適用された。次に、フィンガーライムを溶液から取り出し、乾燥ラック上に置き、溶媒を蒸発させた結果、フィンガーライムのそれぞれの外側表面上に保護コーティングが形成された。
【0092】
図10は、4.4℃(バー1002)及び20℃(バー1004)における未処理の(すなわちコーティングされていない)フィンガーライムの平均質量損失率と、4.4℃(バー1012)及び20℃(バー1014)におけるコーティングされたフィンガーライムの平均質量損失率とのプロットを示す。コーティングされたフィンガーライム(バー1012及び1014)の場合、コーティング組成物中のOA-2G対PA-2Gの質量比は、25:75であった。これらのフィンガーライムセットの両方を測定するために、ライムをまず、質量損失率を測定しながら20℃で1~1.5日間保持し、次に質量損失率を測定しながら4.4℃に冷却して2~2.5日間保持した。20℃では、コーティングされていない(1004)及びコーティングされた(1014)フィンガーライムの両方の平均質量損失率は、ほぼ同じであった(いずれも1日当たり約3.6%であった)。しかしながら、4.4℃に冷却した後、コーティングされていないフィンガーライム(1002)は、1日当たり1%よりも高い平均質量損失率を経験し、コーティングされたフィンガーライム(1012)は、1日当たり0.8%未満の平均質量損失率を経験した。従って、コーティングされていないフィンガーライム(1002)の平均質量損失率は、4.4℃において、コーティングされたフィンガーライム(1012)よりも25%を超えて高かった。理論に拘束されることは望まないが、これらの結果は、より高い20℃などの温度よりも4.4℃において、コーティングがフィンガーライムの質量損失率を低減するのにより効果的であったことを示す。
【0093】
また、
図11は、4.4℃(バー1102)及び20℃(バー1104)における未処理の(すなわちコーティングされていない)フィンガーライムの平均質量損失率と、
図10で使用されたものと異なるコーティング組成物でコーティングされた2つの群のコーティングされたフィンガーライムの平均質量損失率とのプロットを示す。第1の群のコーティングされたフィンガーライム(バー1112及び1114)について、コーティング組成物中のOA対PA-2Gの質量比は、30:70であった。バー1112は、4.4℃における平均質量損失率に対応し、バー1114は、20℃における平均質量損失率に対応する。第2の群のコーティングされたフィンガーライム(バー1122及び1124)について、コーティング組成物中のOA対PA-2Gの質量比は、40:60であった。バー1122は、4.4℃における平均質量損失率に対応し、バー1124は、20℃における質量損失率に対応する。
図11におけるこれらのフィンガーライムセットを全て測定するために、ライムをまず、質量損失率を測定しながら20℃で1~1.5日間保持し、次に質量損失率を測定しながら4.4℃に冷却して2~2.5日間保持した。20℃では、コーティングされていないフィンガーライム(1104)は、1日当たり5.32%の平均質量損失率を経験したが、第1の群のコーティングされたフィンガーライム(1114)は、1日当たり4.31%の平均質量損失率を経験し、第2の群のコーティングされたフィンガーライム(1124)は、1日当たり4.35%の平均質量損失率を経験した。従って、20℃では、コーティングされていないフィンガーライム(1104)の平均質量損失率は、第1の群のコーティングされたフィンガーライム(1114)よりも約23%高く、第2の群のコーティングされたフィンガーライム(1124)よりも約22%高かった。4.4℃まで冷却した後、コーティングされていないフィンガーライム(1102)は、1日当たり1.27%の平均質量損失率を経験したが、第1の群のコーティングされたフィンガーライム(1112)は、1日当たり0.98%の平均質量損失率を経験し、第2の群のコーティングされたフィンガーライム(1122)は、1日当たり0.95%の平均質量損失率を経験した。従って、4.4℃では、コーティングされていないフィンガーライム(1102)の平均質量損失率は、第1の群のコーティングされたフィンガーライム(1112)よりも約30%高く、第2の群のコーティングされたフィンガーライム(1122)よりも約34%高かった。従って、理論に拘束されることは望まないが、コーティングの効力(コーティングされていないフィンガーライムと比較して、コーティングされたフィンガーライムの質量損失率の差異パーセントにより決定される)は、20℃よりも4.4℃において高かった。
【0094】
図10及び
図11のフィンガーライムは、まず20℃に保持され、次に4.4℃まで冷却されるが、順序は、同様に逆にすることもできる。例えば、
図10のフィンガーライムは、まず4.4℃に保持され、次に20℃に加熱され得る。この場合、コーティングは、初期温度(4.4℃)において呼吸速度を低減し且つ/又は成熟を遅延させるのに効果的であり得るが、最終温度(20℃)では効果的でない。同様に、
図11のフィンガーライムは、まず4.4℃で保持され、次に20℃に加熱することができ、この場合、コーティングの効力(コーティングされていないフィンガーライムと比較して、コーティングされたフィンガーライムの質量損失率の差異パーセントにより決定される)は、最終温度(20℃)よりも初期温度(4.4℃)において高いことが可能である。
【0095】
図12及び
図13は、低温貯蔵庫から取り出された時間の関数としてアボカドの呼吸速度及び硬さ(デュロメーターステージ)のプロットをそれぞれ示す。アボカドを5℃及び85%の相対湿度で5週間にわたって貯蔵し、次に低温貯蔵庫から取り出し、周囲条件で保持して、
図12及び
図13に対応する測定を行った。プロット1202及び1302は、90個の未処理アボカドの群に対応する。プロット1206及び1306は、低温貯蔵庫に入れる前にコーティングされた90個のアボカドの群に対応し、プロット1204及び1304は、低温貯蔵庫に入れる前にコーティングされたが、低温貯蔵庫から取り出した直後にそのコーティングが除去された90個のアボカドの群に対応する。コーティング組成物並びに付着及び除去手順は、以下の実施例5に詳細に記載される。
【0096】
図12で明らかであるように、低温貯蔵庫から取り出してから、且つプロット1204に対応するアボカドからコーティングを除去してから1日後に、未処理のアボカド(1202)及びそのコーティングが除去されたアボカド(1204)の呼吸速度は、コーティングされたアボカドの呼吸速度よりも実質的に大きかった(20%を超えて大きい)。次の3日間にわたり、コーティングされたアボカド(1206)の呼吸速度は、わずかに低下したが、未処理のアボカド(1202)及びそのコーティングが除去されたアボカド(1204)の呼吸速度は、より大幅に低下し、その結果、低温貯蔵庫から取り出してから4日後に、プロット1202及び1204に対応するアボカドの呼吸速度は、コーティングされたアボカド(1206)の呼吸速度よりもわずかに大きいのみであった(約10%大きい)。
【0097】
理論に拘束されることは望まないが、コーティングは、アボカドの呼吸速度を低減し、それにより成熟プロセスを遅延させるのに役立つと共に、アボカドのクリマクテリック呼吸ピークを低く且つ広くするのにも役立つと考えられる。
図12の呼吸測定結果は、この現象と一致する。低温貯蔵庫から取り出してから1日後に、未処理のアボカド及びコーティングが除去されたアボカドは、本質的に同じ高い呼吸速度を有したが、コーティングが無傷のアボカドは、より低い呼吸速度を有した。クリマクテリック呼吸ピークが既に起こっていたため、全てのアボカドの呼吸速度は、次に時間と共に低下した。未処理のアボカド及びコーティングが除去されたアボカドの呼吸速度の低下率は、非常に類似していた。コーティングが無傷のアボカドの呼吸の低下率は、未処理のアボカド及びコーティングが除去されたアボカドよりも低かった。
【0098】
図13は、
図12で測定されたものと同じアボカドについて、低温貯蔵庫から取り出された時間の関数として硬さ(デュロメーターステージ)のプロットを示す。硬さは、標準的なデュロメーターにより測定した。ここで、デュロメーターステージの増大は、硬さの低下に対応する。アボカドの4.0のデュロメーターステージは、通常、食用のために十分に熟していると考えられる。図示されるように、低温貯蔵庫から取り出してから2日目~4日目に3つ全ての群のアボカドのデュロメーターステージ示度が増大し、アボカドが硬くなくなる(従って、より熟す)ことが示された。しかしながら、そのコーティングが無傷のアボカド(1306)は、未処理のアボカド(1302)及びコーティングが除去されたアボカド(1304)よりも硬かった。理論に拘束されることは望まないが、これらの結果により、コーティングされたアボカドは、より遅い速度で成熟したが、コーティングの除去は、未処理のアボカドと同様の速度でアボカドを成熟させたことが示される。
【0099】
1つ又は複数の実施形態において、本明細書に記載されるコーティングは、架橋されたモノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、又はこれらの組合せは、作物の表面で架橋する。
【0100】
いくつかの実施形態では、収穫された作物は、コーティングの除去前に、その上にコーティングを有した状態で少なくとも1日間にわたって貯蔵される。いくつかの実施形態では、作物は、作物が収穫される前にコーティングされ、及びコーティングは、作物が収穫された後に少なくとも部分的に除去される。いくつかの実施形態では、コーティングを少なくとも部分的に除去するステップは、作物を溶媒中ですすぐことを含む。例えば、溶媒は、少なくとも30℃、少なくとも40℃、又は少なくとも50℃に加熱され得る。溶媒は、水、エタノール、又はこれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、エタノールであり、及びエタノールは、13℃以下に冷却される。
【0101】
いくつかの実施形態では、コーティングは、作物の呼吸速度を低減する。呼吸速度の低減は、作物からの水分損失率の低減及び/又は酸素若しくはエチレンなどのガス若しくは蒸気の吸着速度の低減を含み得る。いくつかの実施形態では、コーティングは、作物の呼吸速度を減少させ、及びコーティングの少なくとも部分的な除去は、作物の呼吸速度を増大させる。いくつかの実施形態では、コーティングは、作物に適用されたときに人間の目で実質的に検出不能である。いくつかの実施形態では、コーティングは、作物に適用されたときに実質的に無臭又は無味である。いくつかの実施形態では、コーティングは、作物からの水損失を低減するように配合される。
【0102】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、モノマー、オリゴマー、及び低分子量ポリマーの少なくとも1つを含む。モノマー、オリゴマー、及び/又は低分子量ポリマーは、官能基化モノマー、オリゴマー、及び/又は低分子量ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、モノアシルグリセリドを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、約1ミクロン未満又は約10ミクロン未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、コーティングは、可視範囲の光に対して少なくとも60%の平均透過率を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、本開示は、コーティングを少なくとも部分的に除去した後、作物を熟成剤で処理することを提供する。例えば、熟成剤による作物の処理は、作物をエチレンでガス処理することを含み得る。
【0105】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、コーティングは、収穫前又は収穫後のいずれかに適用され得る。すなわち、コーティングは、作物を成長させる植物に作物が依然として付いている間に適用され得る(例えば、一片の果実は、つるに付いたままであり得る)。代替的に、コーティングは、作物が収穫(例えば、採取)されたときに適用され得る。コーティングは、収穫の直後又は収穫の数時間若しくは数日以内に適用され得る。コーティングは、例えば、作物が梱包される(例えば、出荷コンテナに)ときに適用され得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、作物のコーティング、貯蔵及び作物、並びにコーティングの除去及び/又は修飾は、複数の当事者によって実行される。例えば、農業家がコーティングを作物に適用し、次に作物を荷送人、分配者、又は小売業者に移動させ、荷送人、分配者、又は小売業者が、コーティングされた作物を貯蔵し、且つその後、コーティングを除去又は他に修飾することができる。代替的に、農業家がコーティングを作物に適用し、作物を貯蔵し、その後、農業家が作物を分配者又は小売業者に移動させ、分配者又は小売業者がコーティングを後に除去又は他に修飾することもできる。
【0107】
複数の当事者が関与するいくつかの場合、第1の当事者(例えば、コーティングを形成する当事者)は、任意選択的に、(i)作物がその上にコーティングを有しており、作物を販売する前にコーティングを除去又は修飾されること、及び/又は(ii)コーティングを除去又は修飾するのに適した条件及び/又は方法の1つ又は複数を示す、作物の処理又は取扱いについての指示又は推奨を文書又は口頭のいずれかで提供することができる。指示又は推奨は、第1の当事者により、コーティングされた作物と共に直接提供され得る(例えば、作物が貯蔵されている梱包の上に)が、代替的に、指示又は推奨は、例えば、第1の当事者により所有若しくは管理されるウェブサイト上で、又は第1の当事者によって若しくは第1の当事者の代理として提供される材料の宣伝又は販売時に別個に供給され得る。
【0108】
上記のことを考慮して、場合により、本明細書に記載される1つ又は複数の方法に従って農産物をコーティングする当事者(すなわち第1の当事者)は、直接産物を貯蔵せず、及び/又はコーティングを除去若しくは修飾しないことがあり得るが、代替的に、第2の当事者に産物を貯蔵すること及び/又はコーティングを除去若しくは修飾することを指導できる(例えば、指示又は要求できる)ことが認識される。すなわち、第1の当事者が農産物を貯蔵せず、及び/又はコーティングを除去若しくは修飾しない場合でも、第1の当事者は、それでもなお、例えば、上記のような指示又は推奨を提供することにより農産物を貯蔵させ、及び/又はコーティングを除去又は修飾させることができる。同様に、コーティングを除去又は修飾する当事者(すなわち第2の当事者)は、農産物上にコーティングを形成しないことがあり得るが、第2の当事者は、それでもなお、例えば、第2の当事者が産物を受け取る前に農産物がコーティングされるという指示又は推奨を第1の当事者に提供することにより農産物をコーティングさせることができる。従って、本明細書で使用される場合、植物抽出物組成物を産物(例えば、植物又は農産物)に適用する行為は、植物抽出物組成物を産物に適用するように、又は植物抽出物組成物を産物に適用させるように別の当事者に指導又は指示することも含む。さらに、本明細書で使用される場合、コーティングを産物(例えば、植物又は農産物)から除去する行為は、コーティングを産物から除去するように、又はコーティングを産物から除去させるように別の当事者に指導又は指示することも含む。
【実施例】
【0109】
実施例
本開示は、以下の実施例によりさらに説明され、これらの実施例は、範囲又は趣旨において本開示を本明細書に記載される特定の手順に限定すると解釈されてはならない。実施例は、特定の実施形態を説明するために提供され、それにより本開示の範囲に対する限定は全く意図されないと理解されるべきである。さらに、本開示の趣旨及び/又は添付の請求項の範囲から逸脱することなく、それら自体を当業者に示唆し得る種々の他の実施形態、変更形態、及びそれらの均等物に対する手段を有し得ると理解されるべきである。
【0110】
実施例1~3は、アボカド上にコーティングを形成し、コーティングされたアボカドを貯蔵し、次にコーティングを除去することの効果を示す。実施例1~3におけるコーティングされたアボカドの全てのコーティングは、以下のように形成される。まず、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート(すなわちPA-2G)及び2,3-ジヒドロキシプロピルパルミタート(すなわちPA-1G)の混合物を含む固体コーティング組成物を配合し、コーティング組成物中のPA-2G対PA-1Gの質量比は、70:30であった。約80体積%のエタノール及び20体積%の水である溶媒中にコーティング組成物を溶解させ、溶液を形成した。溶媒中のコーティング組成物の濃度は、10mg/mLであった。次に、アボカドを溶液中に約30秒間浸漬し、表面全体にわたる溶液の適用を保証するために攪拌し、各アボカドは、平均して約1mLの溶液がその表面に適用された。次に、アボカドを溶液から取り出し、乾燥ラック上に置き、溶媒を蒸発させた結果、アボカドのそれぞれの外側表面上に保護コーティングが形成された。
【0111】
実施例1~3のそれぞれにおいて、その後の全てのコーティングの除去は、種々の図面及びその付随する説明に示されるように、アボカドを溶媒浴(例えば、水又はエタノール)中に浸漬することにより行った。いずれの場合にも、溶媒浴中の溶媒の体積は、700mLに、溶媒浴中に浸漬されるアボカドの数を掛けた量に等しかった。
【0112】
実施例1:アボカド上に形成され、水中に浸漬することにより除去されたコーティング - 水温の効果
50個のアボカドを同時にほぼ同じ段階又は成熟度で採取し、それぞれ10個のアボカドを含有する5つの群に分けた。全てのコーティングは、アボカドを採取してから約2~3日後に同時に形成し、その後、コーティングを形成してから2日後に同時に除去した。研究全体を通して、全てのアボカドを周囲条件(平均温度約20℃及び相対湿度約40%~60%)下で貯蔵した。
【0113】
結果は、
図4及び5に示される。第1の対照群(402及び404に対応する)は、コーティングせず、その後の水中での浸漬も行わなかった。第2の対照群(412及び414に対応する)は、コーティングしたが、その後、コーティングを除去しなかった。第1の試験群(422及び424に対応する)は、コーティングし、且つその後、30℃の水中に5分間浸漬してコーティングを除去した。第2の試験群(432及び434に対応する)は、コーティングし、且つその後、40℃の水中に5分間浸漬してコーティングを除去した。第3の試験群(442及び444に対応する)は、コーティングし、且つその後、50℃の水中に5分間浸漬してコーティングを除去した。バー402、412、422、432、及び442は、アボカドがその上にコーティングを有している(コーティングされていない第1の対照群を除く)期間に測定された、5つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。バー412、422、432、及び442は、それぞれ同時にコーティングがその上に形成された4つの別個の群のアボカドを表し、本明細書に記載されるコーティングによりアボカドがコーティングされている間、これらの群のそれぞれについて同時に質量損失率を測定した。バー404、414、424、434、及び444は、3つの試験群からコーティングを除去(第2の対照群では残される)した後に測定された、5つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。
【0114】
図4に示されるように、第2の対照群及び3つの試験群のアボカドがコーティングされている間、未処理のアボカド(バー402)は、1日当たり0.93%の平均質量損失率を経験したが、コーティングされたアボカド(バー412、422、432、及び442)は、それぞれ1日当たり0.38%、1日当たり0.38%、1日当たり0.41%、及び1日当たり0.39%の質量損失率を経験した。3つの試験群からコーティングを除去した後、コーティングされていないアボカド(バー404)の質量損失率は、1日当たり0.86%であり、コーティングされたままであるアボカド(バー414)の質量損失率は、1日当たり0.40%であった。30℃の水中に浸漬したアボカドは、1日当たり0.45%への質量損失率のわずかな増大を経験した(バー424)。40℃の水中に浸漬したアボカドは、1日当たり0.59%への質量損失率のより大きい増大を経験した(バー434)。50℃の水中に浸漬したアボカドは、1日当たり0.74%への質量損失率のさらにより大きい増大を経験した(バー444)。
【0115】
図5は、3つの試験群からコーティングが除去されてから8日間、
図4において測定されたアボカドについて、面積減少パーセントの時間の関数としてのプロット500を示す。
図5に示されるように、8日後に、コーティングされていないアボカド(504)の断面積は、5.0%減少し、コーティングを依然としてその上に有するアボカド(514)の断面積は、2.5%減少し、30℃の水中に浸漬したアボカド(524)の断面積は、3.2%減少し、40℃の水中に浸漬したアボカド(534)の断面積は、3.7%減少し、且つ50℃の水中に浸漬したアボカド(544)の断面積は、3.9%減少した。
【0116】
実施例2:アボカド上に形成され、エタノール中に浸漬することにより除去されたコーティング - 浸漬時間の効果
40個のアボカドを同時にほぼ同じ成熟段階で採取し、それぞれ10個のアボカドの4つの群に分けた。全てのコーティングは、アボカドを採取してから約2~3日後に同時に形成し、その後、コーティングを形成してから2日後に同時に除去した。研究全体を通して、全てのアボカドを周囲条件(平均温度約20℃及び相対湿度約40%~60%)下で貯蔵した。
【0117】
結果は、
図6に示される。第1の対照群(602及び604に対応する)は、コーティングせず、その後のエタノール中での浸漬も行わなかった。第1の試験群(652及び654に対応する)は、コーティングし、且つその後、22℃のエタノール中に10秒間浸漬してコーティングを除去した。第2の試験群(662及び664に対応する)は、コーティングし、且つその後、22℃のエタノール中に1分間浸漬してコーティングを除去した。第3の試験群(672及び674に対応する)は、コーティングし、且つその後、22℃のエタノール中に5分間浸漬してコーティングを除去した。バー602、652、662、及び672は、アボカドがその上にコーティングを有している(コーティングされていない対照群を除く)期間に測定された、4つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。バー652、662、及び672は、それぞれ同時にコーティングがその上に形成された3つの別個の群のアボカドを表し、本明細書に記載されるコーティングによりアボカドがコーティングされている間、これらの群のそれぞれについて同時に質量損失率を測定した。バー604、654、664、及び674は、3つの試験群からコーティングを除去した後に測定された、4つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。
【0118】
3つの群のアボカドがコーティングされている間(バー652、662、及び672に対応する)、コーティングされていないアボカド(バー602)は、1日当たり0.85%の平均質量損失率を示したが、コーティングされたアボカド(バー652、662、及び672)は、それぞれ1日当たり0.45%、1日当たり0.26%、及び1日当たり0.50%の平均質量損失率を示した。コーティングされたアボカドからコーティングを除去した後、予めコーティングされていない対照群(バー604)の質量損失率は、1日当たり1.06%であり、22℃のエタノール中に10秒間浸漬したアボカド(バー654)の質量損失率は、1日当たり0.98%であり、22℃のエタノール中に1分間浸漬したアボカド(バー664)の質量損失率は、1日当たり1.02%であり、22℃のエタノール中に5分間浸漬したアボカド(バー674)の質量損失率は、1日当たり1.03%であった。
【0119】
実施例3:アボカド上に形成され、エタノール中に浸漬することにより除去されたコーティング - 浸漬温度の効果
50個のアボカドを同時にほぼ同じ段階又は成熟度で採取し、それぞれ10個のアボカドの5つの群に分けた。全てのコーティングは、アボカドを採取してから約2~3日後に同時に形成し、その後、コーティングを形成してから2日後に同時に除去した。研究全体を通して、全てのアボカドを周囲条件(平均温度約20℃及び相対湿度約40%~60%)下で貯蔵した。
【0120】
結果は、
図7及び8に示される。第1の対照群(702及び704に対応する)は、コーティングせず、その後のエタノール中での浸漬も行わなかった。第2の対照群(712及び714に対応する)は、コーティングしたが、その後、コーティングを除去しなかった。第1の試験群(722及び724に対応する)は、コーティングし、且つその後、22℃のエタノール中に10秒間浸漬してコーティングを除去した。第2の試験群(732及び734に対応する)は、コーティングし、且つその後、13℃のエタノール中に10秒間浸漬してコーティングを除去した。第3の試験群(742及び744に対応する)は、コーティングし、且つその後、4℃のエタノール中に10秒間浸漬してコーティングを除去した。バー702、712、722、732、及び742は、アボカドがその上にコーティングを有している(コーティングされていない対照群を除く)期間に測定された、5つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。バー704、714、724、734、及び744は、3つの試験群からコーティングを除去(第2の対照群では残される)した後に測定された、5つの群のアボカドの1日平均質量損失率パーセントである。各バーは、別個の群の10個のアボカドを表す。
【0121】
3つの試験群のアボカド(バー722、732、及び742に対応する)がコーティングされている間、コーティングされていないアボカド(バー702)は、1日当たり0.84%の平均質量損失率を示し、第2の対照群のコーティングされたアボカド(バー712)は、1日当たり0.35%の平均質量損失率を示し、第1の試験群のコーティングされたアボカド(バー722)は、1日当たり0.40%の平均質量損失率を示し、第2の試験群のコーティングされたアボカド(バー732)は、1日当たり0.38%の平均質量損失率を示し、第3の試験群のコーティングされたアボカド(バー742)は、1日当たり0.41%の平均質量損失率を示した。3つの試験群のアボカドからコーティングを除去した後、予めコーティングされていない第1の対照群のアボカド(バー704)の質量損失率は、1日当たり0.81%であり、第2の対照群のコーティングされたアボカド(バー714)の質量損失率は、1日当たり0.35%であり、22℃のエタノール中に10秒間浸漬したアボカド(バー724)の質量損失率は、1日当たり0.76%であり、13℃のエタノール中に10秒間浸漬したアボカド(バー734)の質量損失率は、1日当たり0.72%であり、4℃のエタノール中に10秒間浸漬したアボカド(バー744)の質量損失率は、1日当たり0.79%であった。
【0122】
図8は、3つの試験群からコーティングが除去されてから9日間、
図7において測定されたアボカドについて、面積減少パーセントの時間の関数としてのプロット800を示す。
図8に示されるように、9日後に、第1の対照群のコーティングされていないアボカド(804)の断面積は、6.0%減少し、コーティングを依然としてその上に有する第2の対照群のアボカド(814)の断面積は、3.0%減少し、4℃のエタノール中に10秒間浸漬したアボカド(844)の断面積は、4.7%減少し、13℃のエタノール中に10秒間浸漬したアボカド(834)の断面積は、4.9%減少し、且つ22℃のエタノール中に10秒間浸漬したアボカド(824)の断面積は、4.4%減少した。
【0123】
実施例4:フィンガーライム上に形成されたコーティング
図10及び
図11にその結果が示される、フィンガーライム上に形成されたコーティングは、以下のように形成した。まず、3つの固体コーティング組成物を配合した。第1のコーティング組成物は、3:1の質量比で混合した1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート(すなわちPA-2G)及び1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル(9Z)-オクタデセノアート(すなわち2-グリセロオレアート又はOA-2G)から形成した。第2のコーティング組成物は、7:3の質量比で混合したPA-2G及び(9Z)-オクタデセン酸(すなわちオレイン酸又はOA)から形成した。第3のコーティング組成物は、3:2の質量比で混合したPA-2G及び(9Z)-オクタデセン酸(すなわちオレイン酸又はOA)から形成した。第1のコーティング組成物を実質的に純粋なエタノール中に10mg/mLの濃度で溶解させて第1の溶液を形成した。第2のコーティング組成物を実質的に純粋なエタノール中に10mg/mLの濃度で溶解させて第2の溶液を形成した。第3のコーティング組成物を実質的に純粋なエタノール中に10mg/mLの濃度で溶解させて第3の溶液を形成した。
【0124】
第1の実質的に同様の(すなわち同時に同様の成熟段階で収穫された)フィンガーライムセットを24個のフィンガーライムの2つの群に分けた。第1の群のフィンガーライムは、未処理であり、第2の群は、第1の溶液中に約30秒間浸漬し、各フィンガーライムの表面全体にわたる第1の溶液の適用を保証するために攪拌し、各フィンガーライムは、平均して約0.2mLの第1の溶液がその表面に適用された。次に、フィンガーライムを溶液から取り出し、乾燥ラック上に置き、溶媒を蒸発させた結果、第2の群のフィンガーライムのそれぞれの外側表面上に保護コーティングが形成された。
【0125】
図10は、4.4℃(バー1002)及び20℃(バー1004)における第1の群の未処理の(すなわちコーティングされていない)フィンガーライムの平均質量損失率と、4.4℃(バー1012)及び20℃(バー1014)における第2の群のコーティングされた(すなわち3:1の質量比のPA-2G及びOA-2Gでコーティングされた)フィンガーライムの平均質量損失率とのプロットを示す。これらのフィンガーライム群の両方を測定するために、ライムをまず、質量損失率を測定しながら20℃で1~1.5日間保持し、次に質量損失率を測定しながら4.4℃に冷却して2~2.5日間保持した。20℃では、コーティングされていない(1004)及びコーティングされた(1014)フィンガーライムの両方の平均質量損失率は、1日当たり3.6%であった。4.4℃に冷却した後、コーティングされていないフィンガーライム(1002)は、1日当たり1.0%の平均質量損失率を経験し、コーティングされたフィンガーライム(1012)は、1日当たり0.8%の平均質量損失率を経験した。
【0126】
第2の実質的に同様の(すなわち同時に同様の成熟段階で収穫された)フィンガーライムセットを24個のフィンガーライムの3つの群に分けた。第1の群のフィンガーライムは、未処理であった。第2の群は、第2の溶液(すなわち7:3の質量比のPA-2G及びOA)中に約30秒間浸漬し、各フィンガーライムの表面全体にわたる第2の溶液の適用を保証するために攪拌し、各フィンガーライムは、平均して約0.2mLの第2の溶液がその表面に適用された。第3の群は、第3の溶液(すなわち3:2の質量比のPA-2G及びOA)中に約30秒間浸漬し、各フィンガーライムの表面全体にわたる第3の溶液の適用を保証するために攪拌し、各フィンガーライムは、平均して約0.2mLの第3の溶液がその表面に適用された。次に、フィンガーライムをそのそれぞれの溶液から取り出し、乾燥ラック上に置き、溶媒を蒸発させた結果、第2及び第3の群のフィンガーライムのそれぞれの外側表面上に保護コーティングが形成された。
【0127】
図11は、4.4℃(バー1102)及び20℃(バー1104)における第1の群の未処理の(すなわちコーティングされていない)フィンガーライムの平均質量損失率と、4.4℃(バー1112)及び20℃(バー1114)における第2の群(すなわち7:3の質量比のPA-2G及びOA)のコーティングされたフィンガーライムの平均質量損失率と、4.4℃(バー1122)及び20℃(バー1124)における第3の群(すなわち3:2の質量比のPA-2G及びOA)のコーティングされたフィンガーライムの平均質量損失率とのプロットを示す。これらのフィンガーライム群のそれぞれを測定するために、ライムをまず、質量損失率を測定しながら20℃で1~1.5日間保持し、次に質量損失率を測定しながら4.4℃に冷却して2~2.5日間保持した。20℃では、第1の群のコーティングされていないフィンガーライム(1104)は、1日当たり5.32%の平均質量損失率を経験し、第2の群のコーティングされたフィンガーライム(1114)は、1日当たり4.31%の平均質量損失率を経験し、第3の群のコーティングされたフィンガーライム(1124)は、1日当たり4.35%の平均質量損失率を経験した。4.4℃に冷却した後、第1の群のコーティングされていないフィンガーライム(1102)は、1日当たり1.27%の平均質量損失率を経験し、第2の群のコーティングされたフィンガーライム(1112)は、1日当たり0.98%の平均質量損失率を経験し、第3の群のコーティングされたフィンガーライム(1122)は、1日当たり0.95%の平均質量損失率を経験した。
【0128】
実施例5:アボカド上に形成され、エタノール中に浸漬することにより除去されたコーティング - 呼吸速度及び硬さに対する効果
図12及び
図13にその結果が示される、アボカド上に形成されたコーティングは、以下のように形成した。まず、2,3-ジヒドロキシプロパン-2-イル(9Z)-オクタデセノアート(すなわち1-グリセロオレアート又はOA-1G)、2,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート(すなわちPA-1G)、1,3-ジヒドロキシプロパン-2-イルパルミタート(すなわちPA-2G)、及びヘキサデカン酸(すなわちパルミチン酸又はPA)を30:30:5:35の質量比で混ぜ合わせることにより、固体コーティング組成物を形成した。固体コーティング組成物を実質的に純粋なエタノール中に7.5mg/mLの濃度で溶解させて溶液を形成した。
【0129】
実質的に同様のアボカド(すなわち同時に同様の成熟段階で収穫された)セットを3つの群に分け、各群は90個のアボカドを有した。第1の群のアボカドは、未処理であり、第2及び第3の群のアボカドは、各アボカドの表面全体にわたって溶液をスプレーすることにより溶液でコーティングし、エタノールを蒸発させた。次に、3つ全ての群のアボカドを5℃及び85%の相対湿度で5週間にわたって貯蔵し、その後、3つ全ての群を低温貯蔵庫から取り出し、第2の群のアボカドをそれぞれエタノール(室温)中に約1秒間浸漬して、そのコーティングを除去した(第3の群のアボカドは、エタノール中に浸漬せず、従って、そのコーティングは、無傷で保持された)。次に、アボカドの呼吸速度及び硬さ(固さ)(それぞれ
図12及び
図13)を測定しながら、アボカドを周囲温度及び湿度で4日間保持した。赤外線に基づくCO
2センサーを備えた既知の体積のアボカドを閉鎖容器内で貯蔵し、容器内のCO
2濃度を時間の関数として記録し、次に測定された濃度値を得るために必要なCO
2の放出速度を計算することにより、呼吸速度を決定した。硬さは、標準的なデュロメーターにより測定した。ここで、デュロメーターステージの増大は、硬さの低下に対応する。アボカドの4.0のデュロメーターステージは、通常、食用のために十分に熟していると考えられる。
【0130】
図12は、未処理のアボカド(1202)、そのコーティングが除去されたアボカド(1204)、及びコーティングされたままであるアボカド(1206)について、低温貯蔵庫から取り出してからの時間の関数としての呼吸速度のプロットを示す。低温貯蔵庫から取り出してから1日後に、未処理のアボカド(1202)は、95.0mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示し、そのコーティングが除去されたアボカド(1204)は、93.7mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示し、コーティングされたままであるアボカド(1206)は、76.6mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示した。低温貯蔵庫から取り出してから2日後に、未処理のアボカド(1202)は、92.5mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示し、そのコーティングが除去されたアボカド(1204)は、87.2mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示し、コーティングされたままであるアボカド(1206)は、75.2mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示した。低温貯蔵庫から取り出してから3日後に、未処理のアボカド(1202)は、78.4mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示し、そのコーティングが除去されたアボカド(1204)は、85.9mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示し、コーティングされたままであるアボカド(1206)は、74.7mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示した。低温貯蔵庫から取り出してから4日後に、未処理のアボカド(1202)は、73.1mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示し、そのコーティングが除去されたアボカド(1204)は、75.6mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示し、コーティングされたままであるアボカド(1206)は、68.0mL CO
2/kg・hrの呼吸速度を示した。
【0131】
図13は、未処理のアボカド(1302)、そのコーティングが除去されたアボカド(1304)、及びコーティングされたままであるアボカド(1306)について、低温貯蔵庫から取り出してからの時間の関数として硬さ(デュロメーターステージ)のプロットを示す。低温貯蔵庫から取り出してから2日後に、未処理のアボカド(1302)は、2.88のデュロメーターステージ示度を示し、そのコーティングが除去されたアボカド(1304)は、2.97のデュロメーターステージ示度を示し、コーティングされたままであるアボカド(1306)は、2.37のデュロメーターステージ示度を示した。低温貯蔵庫から取り出してから3日後に、未処理のアボカド(1302)は、3.63のデュロメーターステージ示度を示し、そのコーティングが除去されたアボカド(1304)は、3.66のデュロメーターステージ示度を示し、コーティングされたままであるアボカド(1306)は、2.99のデュロメーターステージ示度を示した。低温貯蔵庫から取り出してから4日後に、未処理のアボカド(1302)は、4.00のデュロメーターステージ示度を示し、そのコーティングが除去されたアボカド(1304)は、4.13のデュロメーターステージ示度を示し、コーティングされたままであるアボカド(1306)は、3.53のデュロメーターステージ示度を示した。
【0132】
組成物及び方法の種々の実施が上記で記載された。しかしながら、これらが単なる例として提供されており、限定でないことが理解されるべきである。上記の方法及びステップが特定の順序で起こる特定の事象を示す場合、本開示の利益を得る当業者は、特定のステップの順序付けが変更可能であり、このような変更が本開示の変形形態に従うものであることを認識するであろう。実施が具体的に図示及び記載されたが、形態及び詳細における種々の変更形態がなされ得ることが理解されるであろう。従って、他の実施も以下の特許請求の範囲内に含まれる。