(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】水蒸気発生装置と水処理システムと水蒸気発生方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/06 20060101AFI20220404BHJP
C02F 1/04 20060101ALI20220404BHJP
G21F 9/08 20060101ALI20220404BHJP
F22B 27/16 20060101ALN20220404BHJP
【FI】
G21F9/06 591
C02F1/04 E
G21F9/08 511A
G21F9/08 521G
F22B27/16
(21)【出願番号】P 2021109616
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2021-05-21
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000170808
【氏名又は名称】黒田 重治
(72)【発明者】
【氏名】黒田 重治
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129302(JP,A)
【文献】特開2003-320399(JP,A)
【文献】特開昭54-125174(JP,A)
【文献】特開2016-049480(JP,A)
【文献】特開昭60-048101(JP,A)
【文献】特開昭63-049201(JP,A)
【文献】特公昭46-007428(JP,B1)
【文献】実開昭59-059605(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1329148(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1022367(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0017529(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/02 - 1/18
B01B 1/00 - 1/08
B01D 1/00 - 8/00
B08B 3/00 - 3/14
G21F 9/00 - 9/36
F22B 5/00 - 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を受ける供給板と、
前記供給板で、前記水を広げ、前記水を受け、表面で水蒸気を発生させる加熱プレートと、
前記加熱プレートの表面を清掃する清掃部と、を含む水蒸気発生装置であり、
前記供給板は、下部に開口があり、前記開口から、前記加熱プレートに前記水を均等に広げ提供するように形成され、
前記供給板は、内部の空洞で前記水を流し、
前記空洞は、下方へ進むにつれて、厚みが薄くなり、かつ、横幅が広くなる水蒸気発生装置。
【請求項6】
前記カバーに排気管があり、
前記排気管は、気体放出管と廃液管とに分かれ、前記廃液管には冷却部がある請求項
4に記載の水蒸気発生装置。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載
の水蒸気発生装置
が複数台と、
タンクの水を前
記水蒸気発生装置
の内の2台へ送る1つのポンプと、を含む水処理システム。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項に記載
の水蒸気発生装置
の複数台と、
タンクの水を前記水蒸気発生装置
の内の2台へ送る1つのポンプと、
前
記水蒸気発生装置
の内の2台の加熱プレート間にある1つの加熱源と、
を含む水処理システム。
【請求項10】
ポンプで水をくみ上げる工程と、
前記ホンプから連結部を経由して、供給板へ前記水が移動させる工程と、
前記供給板により前記水が水平方向へ広げられ、加熱プレートへ供給する工程と、
前記水は前記加熱プレートの下方へ進むにつれて、前記加熱プレートの熱で、蒸発し水蒸気とする工程と、
前記水蒸気は、カバーで制御され排気管へ移動させる工程と、を含む水蒸気発生方法であり、
前記供給板は、下部に開口があり、前記開口は、前記加熱プレートに前記水を均等に広げるように形成され、
前記供給板は、内部の空洞で前記水を流し、
前記空洞は、下方へ進むにつれて、厚みが薄くなり、かつ、横幅が広くなる水蒸気発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気発生装置と水処理システムと水蒸気発生方法に関する。特にトリチウム水を蒸発される方法、装置、システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の事故で発生した放射性元素であるトリチウムを含む水の処理が問題となっている。いろいろ処理方法がある(特許文献1)。そのうちで、トリチウムを含む水を蒸発させる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、トリチウムを含む水を蒸発させる方法は、他の方法より効率が悪くコストがかかる。本発明の課題は、上記従来の課題を解決するもので、効率よく水を蒸発させ、コストを低減する水蒸気発生装置と水処理システムと水蒸気発生方法とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために、水を受ける供給板と、上記供給板で、上記水を薄く均等に広げ、上記水を受け、適度の傾斜が可能であり、表面で水蒸気を発生させる加熱プレートと、上記加熱プレートの表面を清掃する清掃部と、を含む水蒸気発生装置を用いる。また、上記水蒸気発生装置と、タンクの水を上記水蒸気発生装置へ送るポンプと、を含む水処理システムを用いる。加熱プレートは、カバーで覆われ、密閉された加熱室がある。さらに、ポンプで水をくみ上げる工程と、上記ホンプから連結部を経由して、供給板へ上記水が移動させる工程と、上記供給板により上記水が薄く均等に水平方向へ流れ、傾斜した加熱プレートへ供給する工程と、上記水は上記加熱プレートの下方へ進むにつれて、上記加熱プレートの熱で蒸発し水蒸気とする工程と、上記水蒸気は、カバーで制御され排気管へ移動させる工程と、を含む水蒸気発生方法を用いる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水蒸気発生装置と水処理システムと水蒸気発生方法では、ポンプでくみ上げた大量の水を加熱プレートの表面へ薄く均等に広げ、流下され、水蒸気化が確実になるので、効率よく、水を処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)実施の形態1の水蒸気発生装置の正面図、(b)実施の形態1の水蒸気発生装置の断面図、(c)実施の形態1の加熱プレートの変形例の断面図
【
図2】(a)~(b)実施の形態1の供給板の底面図
【
図3】(a)実施の形態1の水蒸気発生装置の使用例を示す断面図、(b)実施の形態1の水蒸気発生装置の使用例を示す上面図
【
図4】実施の形態1の水蒸気発生装置の変形例の断面図
【
図5】(a)実施の形態2の水蒸気発生装置の使用例を示す断面図、(b)実施の形態2の水蒸気発生装置の使用例を示す上面図
【
図6】(a)実施の形態2の水蒸気発生装置の別の使用例を示す断面図、(b)実施の形態2の水蒸気発生装置の別の使用例を示す上面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
<全体構成>
図1(a)と
図1(b)で実施の形態の水蒸気発生装置100を説明する。
水蒸気発生装置100は、ホンプ10と、加熱プレート12とを有する。
<加熱プレート12>加熱プレート12は、一例として、横幅1~1.5m、縦幅が2mで大きい。ヒータ14を有し、加熱プレート12の上面は加熱される。加熱プレート12は、その表面で水を蒸発させる。加熱プレート12には、供給板11と清浄部13とをさらに有する。
【0009】
供給板11は、加熱プレート12の上部にあり、ポンプ10からの水を加熱プレート12の上辺全体に薄く均等な厚み(例えば、2~5mm厚み)で広げ、加熱プレート12の上辺に流し、水は下辺へ流れる。
<供給板11>供給板11は、下部へ行くに従って横幅が広がるが、厚みが薄くなる空洞を有する。上部で水を受け、空洞で、均等な厚みの薄いシート状の水にする。
図2(a)、
図2(b)に下面の開口21の平面図を示す。
図2(a)では、長方形の開口が1つである。
図2(b)では、円形状の複数の開口が均等な間隔で設けられている。円形状でなく、多角形、楕円でも、それらの組み合わせでもよい。開口21を出た水は、加熱プレート12上で、均等な厚みの水シートとなる。供給板11に、ヒータがあるのが好ましい。水を温めて、加熱プレート12へ供給すればより早く水蒸気にできる。
【0010】
<清掃部13>清掃部13は、定期的に、加熱プレート12の表面を清浄する。全体的に金属のプレートで形成されている。
<ポンプ>ホンプ10は、水をくみ上げ、供給板11で水の厚みを均等化し、加熱プレート12の表面へ流す。ホンプがなくとも、水が供給されればよい。たとえば、タンクが上部にあり、下部に水蒸気発生装置100がある場合などである。ホンプ10は、水を送るポンプでダイヤフラム式でもピストン式でもよい。図示しない制御部で、送る水の量が制御される。
<連結部15>ホンプ10と、加熱プレート12とは、連結部15で接続されている。連結部15は、水をホンプ10から加熱プレート12へ渡たす管、筒、ホースなどである。
【0011】
<加熱プレート12>加熱プレート12には、鉄の板が表面にあり、裏側にヒータ14がある。加熱プレート12の表面は加熱され、その上を流れる水を水蒸気にする。加熱プレート12の上部ほど、加熱させるため、ヒータ14の密度を上げるのが好ましい。水が、下部へ移動するまでに水蒸気へ変えるためである。加熱プレート12は、カバー19で覆われており、発生した水蒸気を外部へ逃がさず、排気管16から外部(建物外)へ放出する。なお、ヒータ14がなく、裏面から加熱源で加熱してもよい。加熱プレート12の表面は凹凸がないのが好ましい。水が表面の全体に広がりやすく、効率がよい。
図1(c)に加熱プレート12の変形例を示す。下部が上方へ曲がっている。この場合、水が、加熱プレート12の表面を流れる時、下方でその速度を緩め、より水蒸気となりやすくできる。
【0012】
<清浄部13>清浄部13は、加熱プレート12の表面を洗浄する。洗浄部13は、加熱プレート12の下部に位置する。洗浄時は、加熱プレート12の表面を上方へ移動可能である。1つの例として、円筒形状の回転ブラシで、表面に凹凸があり、回転しながら、上下して、加熱プレート12の汚れを取りさる。または、板状体で、そのエッジで、加熱プレート12の表面の汚れをかぎ取る。
<移動部17>水蒸気発生装置100の下面には、移動部17がある。コマなどであり、水蒸気発生装置100を移動できる。また、微動できる。特に、加熱プレート12の傾斜を微調整する時に有効である。
【0013】
<角度調整部31>水蒸気発生装置100に、角度調整部31がさらにあると好ましい。角度調整部31は、加熱プレート12の裏面にあり、加熱プレート12を傾斜させることができる。角度調整部31は、つっかえ棒的な構造で、加熱プレート12の裏面の凹凸37と、下面との間に棒を立てることで、加熱プレート12を傾斜させ固定できる。なお、別の機構で加熱プレート12を傾斜させてもよい。この例では、左右に2つの角度調整部31あり、左右の傾きも調整できる。この角度調整部31により、加熱プレート12の傾斜角度を調整でき、その上を流れる水の流下速度を調整にできる。完全に蒸発させることができる。
【0014】
<プロセス>1:ポンプ10が水をくみ上げる。2:ホンプ10から連結部15を経由して、供給板11へ水が移動する。3:供給板11により水が水平方向へ薄く均等な厚みに広げられ、加熱プレート12へ流される。水は加熱プレート12の下方へ流れるにつれて、加熱プレート12の熱で、蒸発し水蒸気となる。水は、加熱プレート12の下辺へ流れるまでに蒸発される。4:水蒸気は、カバー19で包囲された加熱室から排気管16へ移動する。その後、水蒸気は、外部へ放出される。なお、排気管16やカバー19で水蒸気の温度が下がらないように、保温、または、加温されているのが好ましい。水が、加熱プレート12の下端に到達する前に蒸発させるように、水量と、加熱プレート12の温度と、加熱プレート12の傾斜のいずれか1つ以上を調整する。図示しない制御部がある。また、水温と加熱源との関係で水の厚さを調整してもよい。時間を優先し、水量と、加熱プレート12の温度(水温)と、加熱プレート12の傾斜との関係から、少なくとも1つ以上を調整する。
【0015】
<使用例>
図3(a)、
図3(b)で、水蒸気発生装置100の使用例(水処理システム101)を説明する。タンク30には、水22が保管されている。タンク30に水蒸気発生装置100をセットする。ホンプ10を、タンク30上部にセットし、加熱プレート12をタンク30の側面に配置する。ホンプ10は、吸い上げ管23で水22を吸い上げ、連結部15を介して、加熱プレート12へ供給する。上記と同様である。加熱プレート12は、斜め目に保持され、その上を水22が流れつつ水蒸気へ変換される。傾斜角度は、水平方向に対して、30度から75度が好ましい。ただしそれ以外でも傾斜していればよい。
図3(a)、
図3(b)では、1つのタンク30に1つの水蒸気発生装置100であるが、複数の水蒸気発生装置100を設けるのがよい。例えば、
図3(a)、
図3(b)で、タンク30の2辺に2個の水蒸気発生装置100、4辺に4つの水蒸気発生装置100を設けてもよい。
【0016】
<別の例>
図4で、別の例を説明する。水蒸気発生装置100にさらに、気体排出管32、廃液管35,冷却部33がある。水処理システム101の水蒸気発生装置100でも、水蒸気発生装置100単独でもよい。排気管16の先が2つに分かれ、1方が、気体排出管32で、他方が、廃液管35である。廃液管35には、冷却部33がある。排気管16を流れてきた水蒸気は、一部、気体排出部32から外部へ放出され、残りは、廃液管35の冷却部33で、水になり、外部へ放出される。気体排出部32には、弁41があり、開口度合いを調整できる。例えば、トリチウム水の場合、トリチウムが、気体排出部32から出され、水が廃液管35へ流れる。水は廃棄される。トリチウムの気体は、外部へ放出してもよいし、タンクなどに貯め廃棄してもよい。水22中の不純物ガスを除去できる。気体排出部32は、弁41で調節できる。不純物ガスを通し、水蒸気を通さない程度にしめるのが好ましい。なお、不純物ガスが、空気より重たい場合、気体排出口32を下向きに設ける。また、廃液管35からの水を再度、連結部15から、加熱プレート12へ供給して、さらに、不純物ガスを取り除いてもよい。
【0017】
(実施の形態2)
図5(a)、
図5(b)で、実施の形態2の水処理システム102を説明する。説明しない事項は実施の形態1と同様である。水処理システム102では、2つの加熱プレート12を用いて、内部に加熱源40を設けた。接続プレート42で2つの加熱プレート12間を接続し、内部に加熱源40を配置した。供給板11、連結部15、カバー19などはそれぞれある。ホンプ10は、1つでそれぞれに供給するのがよいが、それぞれに2つのポンプ10をもうけてもよい。
加熱プレート12に、ヒータを設けてもよいが、ヒータを無くし、加熱源40により2つの加熱プレート12を加熱してもよい。加熱源40として、ガス、赤外線などいろいろな加熱機構をとることができる。加熱源40により効率的に加熱できる。
【0018】
<変形例>
図6(a)、
図6(b)に、
図5(a)、
図5(b)の例を変形した水処理システム103をしめす。説明しない事項は、上記と同様である。異なる点を説明する。水処理システム102では、接続プレート42がなく、ドーナツ状の1つの供給板11と、円錐の側面形状の1つの加熱プレート12とがある。内部には加熱源40がある。1つの供給板11で、1つの加熱プレート12の全体へ広げ、水蒸気にする。
(全体として)
タンク30より低部に、水蒸気発生装置100を配置すると、ホンプ10は不要である。例えば、タンク30の下部に蛇口を設け、蛇口と連結部15を接続すれば、ポンプ10は不要である。蛇口で水量を調整できる。
水処理システム101の水蒸気発生装置100は、それ単独で水蒸気発生装置100として利用できる。実施の形態は組み合わせできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本願の水蒸気発生装置、方法は、原発の汚染水の処理で用いることができる。原発以外の汚染水の除去にも用いることができる。
【符号の説明】
【0020】
10 ポンプ、11 供給板、12 加熱プレート、13 清浄部、14 ヒータ、15 連結部、16 排気管、17 移動部、19 カバー、21 開口、21a 第1開口、21b 第2開口、22 水、23吸い上げ管、29 貯め部、30 タンク、31 角度調整部、32 気体排出部、33 冷却部、35 廃液管、40 熱源、41 弁、42 接続プレート、100 水蒸気発生装置、101,102,103 水処理システム
【要約】
【課題】効率のよく水を蒸発させる水蒸気発生方法と水蒸気発生装置を提供すること。
【解決手段】水を受ける供給板と、上記供給板で、上記水を広げ、上記水を受け、表面で水蒸気を発生させる加熱プレートと、上記加熱プレートの表面を清掃する清掃部と、を含む水蒸気発生装置を用いる。上記水蒸気発生装置と、タンクの水を上記水蒸気発生装置へ送るポンプと、を含む水処理システムを用いる。ポンプで水をくみ上げる工程と、上記ホンプから連結部を経由して、供給板へ上記水が移動させる工程と、上記供給板により上記水が水平方向へ広げられ、加熱プレートへ供給する工程と、上記水は上記加熱プレートの下方へ進むにつれて、上記加熱プレートの熱で、蒸発し水蒸気とする工程と、上記水蒸気は、カバーで制御され排気管へ移動させる工程と、を含む水蒸気発生方法を用いる。
【選択図】
図1