(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/287 20210101AFI20220404BHJP
【FI】
A61B5/287 200
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016248944
(22)【出願日】2016-12-22
【審査請求日】2019-12-06
(32)【優先日】2015-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アブラム・ダン・モンタグ
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル-タル
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-137908(JP,A)
【文献】特開2015-100705(JP,A)
【文献】米国特許第5636634(US,A)
【文献】国際公開第2015/130824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/297
A61N 1/04-1/05
A61M 25/00
A61B 18/12ー18/14
A61B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
生体の心臓の中に挿入されるように適合されたプローブであって、前記プローブは、遠位端部を有する、プローブと、
前記遠位端部に配設されたフレーム枠であって、前記フレーム枠は、腔を画定する複数の導電性ワイヤループを備え、前記ワイヤループ
のそれぞれが電極を備え、独立して受信機に接続可能であり、前記ワイヤループは相互に電気的に絶縁されており、隣接する前記ワイヤループは相互に接触し、交差する、フレーム枠と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記ワイヤループは、3~8本のループを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ワイヤループは、6~7本のループを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ワイヤループは、カテーテルルーメンを通って展開するように変形可能である、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(著作権情報)
本特許文献の開示の一部は、著作権保護を受ける資料を含む。著作権者は、特許文献又は特許情報開示のうちの任意のものによる複製に対して、それが特許商標庁特許出願又は記録において明らかであるとき、異議を唱えないが、そうでなければ、たとえ何であっても全ての著作権を保有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、診断及び手術を目的とする装置及び処置に関する。より具体的には、本発明は、電磁場のセンサを有する体内プローブに関する。
【背景技術】
【0003】
電気生理学カテーテルは、通常、心臓中の電気的活性のマッピングのために使用される。異なる目的のための様々な電極の設計が知られている。具体的には、バスケット形状の電極アレイを有するカテーテルは、既知であり、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,772,590号に記載されている。そのようなカテーテルは、一般的に、電極配列が導入中に患者に損傷を与えないようにガイドシース内で折り畳んだ姿勢にある電極配列とともに、ガイドシースを通して患者の中に導入される。心臓の内部において、ガイドシースが取り外されて、電極配列は、拡張して概してバスケット形状になることが可能である。バスケットカテーテルには、適切な制御ハンドに接続されたワイヤなどの形式の追加の機構を含むことにより、電極配列の伸縮を助けるものがある。
【0004】
そのようなカテーテルは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,558,091号、同第5,443,489号、同第5,480,422号、同第5,546,951号、及び同第5,568,809号、並びに、国際公開第95/02995号、同第97/24983号、及び同第98/29033号に記載されているような磁気位置センサを組み込んでもよい。そのような電磁マッピングセンサは、一般的に約3mm~約7mmの長さを有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、複数電極カテーテルは、電極を取り付けたワイヤフレームを有する。本発明の実施形態は、ケージ状構造を形成するワイヤのいくつかのループを備えるフレーム枠を提供する。フレームが電磁場に曝されると、ループのそれぞれは、単軸磁気センサとして機能する。更に、ループを三角形に分割することによって、構造の曲がりを再構成することができる。約1ミリメートルまでの精度で、それぞれのループの場所についての解を得ることができる。ループから得られたデータから、カテーテルの位置についての全体解を導き出すことができる。
【0006】
本発明の実施形態に従って、生体の心臓の中に挿入されるように適合されたプローブが提供される。遠位端部に配設されたフレーム枠は、腔を画定する複数の導電性ワイヤループによって形成される。これらのループは、独立して受信機に接続可能である。6~7本のワイヤループがあってもよい。
【0007】
本装置の一態様によれば、ワイヤループは、軸の周りに螺旋を形成する。
【0008】
本装置の一態様によれば、ワイヤループは、カテーテルルーメンを通って展開するように変形可能である。
【0009】
本装置の更なる態様によれば、ワイヤループのうちの1本は、ワイヤループのうちの少なくとも1本の別のものと接触する。
【0010】
本発明の実施形態に従って、生体の心臓の中にプローブを挿入することによって実行される方法が、更に提供される。遠位端部に配設されたフレーム枠は、腔を画定する複数の導電性ワイヤループによって形成される。これらのループは、独立して受信機に接続可能である。方法は、更に、ワイヤループをそれぞれの多角形としてモデル化する工程と、多角形を複数の三角形に細分化する工程と、ワイヤループをそれぞれの周波数の磁束に曝す工程と、それぞれの周波数の磁束に応じてワイヤループから信号を読み取る工程と、多角形における理論上の磁束を、それの三角形における理論上の磁束のそれぞれの合計として計算する工程と、フレーム枠の場所及び向きを、計算された理論上の磁束を信号に関連付けることによって決定する工程と、によって実行される。
【0011】
方法の一態様によれば、多角形は、六角形である。
【0012】
方法の一態様において、多角形を複数の三角形に細分化する工程は、三角形の局所座標を局所座標系において識別する工程と、三角形の局所座標を磁気位置追跡システムの座標に変換する工程と、を含む。
【0013】
方法の別の態様によれば、局所座標を変換する工程は、費用関数を最適化することによって実行される。
【0014】
方法の更なる態様によれば、理論上の磁束を計算する工程は、三角形の面積及び図心に基づいている。
【0015】
方法の更に別の態様によれば、ワイヤループをモデル化する工程は、第1の制約条件を適用する工程を更に含み、隣接する多角形の三角形の線分は交わることが必要である。
【0016】
方法のなお別の態様によれば、ループをモデル化する工程は、第2の制約条件を適用する工程を更に含み、1個の多角形のそれぞれの三角形の頂点は、その1個の多角形の隣接する三角形の頂点と一致する。
【0017】
方法の追加の態様によれば、ワイヤループをモデル化する工程は、第3の制約条件を適用することを更に含み、隣接する多角形は、ちょうど2個の点で相互に接触する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明についてのより良い理解のために、発明の詳細な説明が例として参照され、この説明は、同様の要素に同様の参照番号が付与された以下の図面と併せて読まれるべきである。
【
図1】本発明の実施形態に従う、生体の心臓における電気的活性を評価するためのシステムの描図である。
【
図2】本発明の実施形態に従う複数電極カテーテルの立面図である。
【
図3】本発明の実施形態に従う、
図2に示すカテーテルのフレーム枠のモデルである。
【
図4】本発明の実施形態に従う、
図3に示すモデルにおける三角形の図である。
【
図5】本発明の実施形態に従う、面の交わりを示す、
図3に類似のモデルである。
【
図6】本発明の実施形態に従う、カテーテルフレーム場所を決定するための手順の流れ図である。
【
図7】本発明の実施形態に従う、カテーテルフレーム枠の再構成である。
【
図8】
図7の再構成の一態様を説明する棒グラフである。
【
図9】本発明の実施形態に従う、シミュレートされた再構成を説明する棒グラフである。
【
図10】本発明の代替的な実施形態に従う、ワイヤフレーム枠である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明では、本発明の様々な原理が充分に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これら詳細の全てが本発明を実施するうえで必ずしも必要であるとは限らないことは当業者にとって明らかであろう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0020】
参照により本明細書に組み込まれる文書は本出願の一体部分と見なされるべきであるが、但し、いずれかの用語が、それらの組み込まれた文書内で、本明細書で明示的又は暗示的に行われる定義と相反するように定義される限りにおいて、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【0021】
概論
ここで図面を参照し、開示される本発明の一実施形態に基づいて構築され動作可能である、生体の心臓12に対してアブレーション手術を行うためのシステム10の描図である
図1を最初に参照する。システムは、患者の脈管系を通って、心臓12の腔又は脈管構造内に操作者16によって経皮的に挿入されるカテーテル14を備えている。通常は医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端部18を、心臓壁、例えば、アブレーション標的部位と接触させる。その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本願発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示される方法に従って、電気的活性化マップが作成され得る。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に説明される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されてもよい。
【0022】
例えば電気的活性化マップの評価によって異常と判定された区域は、熱エネルギーの印加によって、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する、遠位先端部18の1つ又は複数の電極に、高周波電流をカテーテル内のワイヤを介して流すことによって、アブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、組織を電気的興奮性が永久に失われる点(一般的には約50℃)まで加熱する。支障なく行われた場合、この処置によって心臓組織に非伝導性の損傷部が形成され、この損傷部が、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理は、異なる心室に適用されて、多数の異なる心不整脈を診断及び治療することができる。
【0023】
カテーテル14は、通常、アブレーションを行うために、操作者16がカテーテルの遠位端の方向転換、位置決め、及び方向決めを所望通りに行うことを可能にする、好適な制御部を有するハンドル20を備えている。操作者16を補助するため、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に配置されたプロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。プロセッサ22は、後述のような幾つかの処理機能を果たすことができる。
【0024】
アブレーションエネルギー及び電気信号を、遠位先端部18に又は遠位先端部18の付近に配置される1つ又は2つ以上のアブレーション電極32を通して、コンソール24に至るケーブル34を介し、心臓1との間で搬送することができる。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及び電極32を介して、心臓12へと搬送することができる。また、コンソール24に接続されている検知電極33は、アブレーション電極32の間に配設されて、ケーブル34への接続部を有する。
【0025】
ワイヤ連結部35は、コンソール24を、体表面電極30、及びカテーテル14の位置座標及び向き座標を測定するための位置決めサブシステムの他の構成要素と連結する。プロセッサ22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決めサブシステムの要素であってよい。参照により本明細書に組み込まれる、Govarietらに発行された米国特許第7,536,218号において教示されているように、電極32及び体表面電極30を使用して、アブレーション部位における組織インピーダンスを測定してもよい。温度センサ(図示せず)、典型的には、熱電対又はサーミスタを、電極32のそれぞれの上に、又は電極32のそれぞれの付近に、載置することができる。
【0026】
コンソール24には通常、1つ又は2つ以上のアブレーション電力発生装置25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギー等の任意の既知のアブレーション技術を使用して、心臓にアブレーションエネルギーを伝導するように適合され得る。このような方法は、参照により本明細書に組み込まれる、本願発明の譲受人に譲渡された、米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0027】
一実施形態では、位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、所定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び向きを判定する磁気位置追跡の配置構成を含む。位置決めサブシステムは、本明細書において参照により組み込まれている米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に記載されている。
【0028】
上述したように、カテーテル14は、コンソール24に結合されており、これにより操作者16は、カテーテル14を観察し、その機能を調節することができる。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは、適当な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結される。信号処理回路は、通常、カテーテル14内の遠位側に位置する上述した(図示しない)センサ及び複数の場所検知電極によって生成される信号を含むカテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めシステムによって受信され、カテーテル14の位置及び向きを計算し、電極からの電気信号を解析するために使用される。
【0029】
簡略化のために図示されないが、通常、システム10は、他の要素を備える。例えば、システム10は、心電図(ECG)モニタを含んでもよく、このECGモニタは、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ又は2つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。上述の通り、システム10はまた、通常、患者の身体の外側に取り付けられた外部から貼付された参照用パッチ、又は心臓12内に挿入され、心臓12に対して固定位置に維持されている、体内に置かれたカテーテルのいずれか、参照用位置センサを備える。アブレーション部位を冷却するための液体をカテーテル14を通して循環させるための従来のポンプ及びラインが設けられている。システム10は、画像データを外部MRIユニット等のような外部の画像診法から受信することができ、また、以下に説明される画像を生成及び表示するために、プロセッサ22に統合され得る又はプロセッサ22により起動され得る画像プロセッサを具備している。
【0030】
ここで
図2を参照すると、この図は、本発明の実施形態に従う複数電極カテーテル37の立面図である。フレーム枠39は、シャフト41を通して変形可能及び展開可能である。フレーム枠39は、
図2に示すように、いくつかの閉じた導電性で弾力性のワイヤループ43、通常、少なくとも6又は7本のループを備え、腔45を画定する。ループ43のそれぞれは、磁場生成コイル28(
図1)によって生成された磁場に曝されるとき、単軸磁気位置センサとして独立して機能する。ループ43は、相互に電気的に絶縁されている。隣接するループ43は、相互に接触し、例えば、点47においては交わり、又は、例えば、点49においては接している。フレーム枠39が変形するとき、構造体の弾力性は、ループ43を接触した状態に保ち、接点は、フレームに沿って摺動することができる。
図2に示すものよりも多いか又は少ない数のループが、フレーム枠39に提供されてもよく、数は、所望のサイズ、可撓性及び電極の数についての機械的制約条件によって制限される。3~8本のループが実用的である。ループによって囲まれた面積が、Navistar(登録商標)カテーテルのような従来のカテーテルにおける磁気センサコイルのうちの1つの面積(巻数とコイル面積との積)と同程度の大きさとなるように、本実施形態におけるループ43は、約300mm
2の面積を有する。50mm
2という小さい面積が有用であり得る。
【0031】
ループ43は、電磁場受けて単軸磁気センサとして機能する。ループが各周波数の電磁場に曝されるとき、システム10(
図1)の位置決めサブシステムを使用してループから取得される信号を結合することによって、それぞれのループの場所を1mmの範囲内で決定することができることが見出された。一旦ループの場所がわかると、カテーテルの遠位端部51の場所をも決定することができる。
【0032】
上記のように、ループ43は、ワイヤから形成される。任意の導電材料を使用することができる。好適な材料としては、銅、ステンレス鋼、及びニチノールが挙げられる。形状記憶を有する材料が、電極53と心腔の心内膜表面との間の接触を維持する上で有利であり得る。本発明者は、大きいループ上方での平均磁場強度が、ループの図心での磁場と同じであることをシミュレーションで見い出した。
【0033】
ループの必要サイズは、磁場生成コイル28(
図1)によって生成される磁場の強度に反比例する。磁場があまりに弱い場合、フレーム枠を心室腔に容易に収めることができないので、そのループのサイズは実用的でなくなる。一方、ループのサイズを減少させると、必要な磁場強度が増加することになり、その場合には、磁場生成コイル28及び発電器25が高価になり、そして、手術に関係する操作者及び別の人員のために追加の保護を必要とする可能性がある。センサ感度は、全センサ面積の関数である。全センサ面積は、センサがCARTOシステム及び別の磁気局所化システムによって生成された磁場において動作するように寸法決めされることが望ましい。コイルセンサについては、感度は、ループ毎の面積とループの数との積の関数である。磁束に対する感度についての式は、
【数1】
である。
【0034】
電極53は、通常、ループ43上に配設される。
図2では、ループ上には電極が1つだけ示されているが、フレーム枠39と標的組織との間の接触を増大させることにより、電気解剖学的マップの分解能を改善するために、任意の数の電極が、ループ43上に設置されてもよい。電極53は、個々の導体(図示せず)によってコンソール24(
図1)に連結される。
【0035】
較正
ここで
図3を参照すると、この図は、本発明の実施形態に従うフレーム枠39(
図2)のモデル55を示し、この図では、フレーム枠のループは、六角形57で示されている。しかし、任意の数の辺を有する多角形によって、ループを近似することができる。多角形は、それらの線分がループの形状にほぼ適合する限り、正多角形である必要がなく、同一であることさえ必要ではない。任意のそのような多角形を、下記のような内点を用いて、三角形に分割することができる。
【0036】
六角形57の境界は、それぞれの表面59を画定している。ループ43(
図2)のうちの1本が平面内にあるならば、その表面59上方の磁束の積分は、Aで示されて、それをループの面積で割った値は、ループの図心での磁場に等しい。このことは、大きいセンサが、図心に位置する小さいセンサと同様に挙動することを意味する。CARTO磁場の球面調和関数配備モデルを用いて、この関連を解析的及び数値的の両方において検証した。
【数2】
【0037】
いくつかのカテーテルの電気的プロトタイプは、外部構造が、
図3に示すように6本の六角形状のループを備えるように構成された。ループは、参照により本明細書に組み込まれる、共にOsadchyらに付与された、米国特許第6,370,411号及び同第6,266,551号に記載されている較正手順を用いて調整された。プロトタイプは、次に、ロボットによって制御された様々な位置ずれを用いて、CARTOシステムを使用して試験された。結果として得られた場所及び向きは、カテーテル構造内でのコイル図心の相対的な場所及びロボットによって実行されたカテーテルの移動と一致した。
【0038】
シミュレーション
ループ43の図心の場所及び向きの集合によって提供されるものよりもより詳細なカテーテルについての表現を取得することが可能である。このことは、フレーム枠39の構造についての知識、特に、ループ43の形状、及び隣接するループ同士の間の交わりの性質、すなわち、それらが交差するか又は接しているかという性質を利用することによって達成される。
【0039】
シミュレートされた1つの構成において、ループは、様々な相対的寸法を有する六角形としてモデル化される。六角形の有用な特徴は、それらを三角形に細分化できることである。つまり、六角形が変形させられて、その境界がもはや平面ではない場合でも、理論上の磁束を、定義上、平面である三角形の線分上方の理論的な磁束の合計としてモデル化することができる。
【0040】
図3は、フレーム枠が6個の六角形57を備えるカテーテルをモデル化している。図の右側に示すように、それぞれの六角形57は、共通の頂点73を有する6個の三角形61、63、65、67、69、71を含む。
【0041】
ここで
図4を参照すると、この図は、本発明の実施形態に従う三角形71(
図3)の表示である。それぞれの三角形の座標は、それ自身の局所座標系
【数3】
において画定されることができ、それぞれのTr
iは3個の点のリストである。それぞれの頂点にラベル(1,2,3)を付与すると、x軸は、点1と点2とを接続する直線である。原点は、中点である。三角形は、平面Z=0内にあり、点3は、正のy座標を有する。局所座標フレームの間の変換を
【数4】
と表示し、ここで、Rotは3×3の回転マトリクスを指し、Tは平行移動ベクトルを指す。インデックスiは、1から6まで変化して、特定の六角形を指し、インデックスjは、六角形の内部の三角形を指す。CARTO座標系では、
【数5】
である。それぞれを通る理論的な磁束を、関係
【数6】
を用いて計算することができ、
ここで、dA(x,y,z)は、三角形上方の表面要素を表し、
【数7】
は、三角形の法線であり、B
CARTO(x,y,z)は、CARTO場であって、9個のベクトルの集合である。それぞれのFlux
iは、9個の要素ベクトルである。式1を適用することによって、面積分の面倒な計算を回避することができる。
【0042】
図3に戻ると、それぞれの六角形57を通る磁束は、
【数8】
で表される。
【0043】
【0044】
続けて
図3及び
図4を参照すると、モデル55の六角形ループにおける信号を用いて構造の場所及び向きを決定するためには、単一センサについての追跡とは異なる様に問題を定義しなければならない。三角形71の場所及び向きは、それらの局所座標系においては既知である。課題は、それぞれの三角形のCARTO座標系への変換パラメータの値を求めることである。それぞれの三角形71について、6個の未知数、3個の回転パラメータ及び3個の平行移動パラメータが存在する。それぞれの六角形ループについて、それぞれは、6個の三角形を含むが、それぞれの伝達コイルからの1個の磁束測定値、CARTOの特定の場合に9個の磁束測定値が存在する。n個の伝導六角形ループを含むカテーテルに関して、n×9個の測定入力値を用いて見出されるべき36×n個の未知数がある。未知数の有効数を低減するために、カテーテルの機械的構造についての知識を適用して、三角形の制約条件を定義する。
【0045】
それぞれの六角形ループの内部構造を考察する。六角形内の全6個の三角形の点1は、頂点73において交わる。
【数10】
で表される。
【0046】
【0047】
内部構造における制約条件の別の集合は、それぞれの三角形の点3が、隣接する三角形の点2と一致することである。
【数12】
【0048】
また、六角形ループの相対配置に基づいて制約条件を定義することができる。本配置構成では、隣接するフレームは、
図3において最もよくわかるように、点75、77のような2個の点において相互に接触している。六角形57のそれぞれの頂点は、2つのインデックスを用いてラベルを付けられる。第1のものは、三角形61、63、65、67、69、71のそれぞれにインデックスを付ける。第2のものは、六角形のそれぞれの三角形の頂点(1,2,3)にインデックスを付ける。
【0049】
ここで
図5を参照すると、この図は、本発明の実施形態に従う、モデル55の面の交わりを示す、
図3に類似の線図である。六角形及び三角形についてのインデックスが示されている。線図の前面に見えている交わりについて考察する。右側の六角形81の(点(3,2)、(3,3)によって画定された)線分79は、六角形82の(点(2,2)、(2,3)によって画定された)線分83と交わっている。同様に、六角形81の(点(5,2)、(5,3)によって画定された)線分86は、六角形82の(点(6,2)、(6,3)によって画定された)線分84と交わっている。
【0050】
以下の条件、すなわち、
それぞれの三角形の1個の頂点が、六角形の中心で合わさること、
三角形の別の頂点が、六角形の頂点を画定する点で合わさること、
それぞれの六角形からの測定磁束が、それぞれの三角形を通る推定磁束の合計に等しいこと、
ワイヤ交差制約条件、すなわち、三角形が点で、例えば、線分79、83及び線分84、86の交点で交わるという制約条件があること、を含む適合が実行された。
【0051】
この制約条件を定義するための2つ以上の方法がある。2本の曲がった線の間の距離は、差が全てベクトルである式
【数13】
を用いて計算され得る。ベクトルx
1及びx
2は、1つの線分の端点であり、ベクトルx
3及びx
4は、他の線分の端点である。このことは、新しいパラメータの付加を含まない。計算上の理由のために、線分に沿った距離である2個のパラメータv
12及びv
34を定義すること、及び以下の式(8)に従うように制約条件を定義することがより便利であることを見い出した。
【数14】
【0052】
計算目的のために、項xiのそれぞれは、局所の三角形及びCARTO座標系への変換によって表される。
【0053】
実験又はシミュレーションのいずれかから、頂点又は点によって画定される六角形の配列についての測定値の集合が付与されると、パラメータが、第1の費用関数を最適化することによって見出され、ここで、
measiは、システムからのi番目の測定信号であり、
locMeasiは、i番目の点の場所である。
【0054】
値locMeasiは、参照によって本明細書に組み込まれる本発明の譲受人に譲渡された米国特許第8,818,486号に詳細に開示された方法によって、必要な変更を加えて決定される。手短に言えば、方法は、事前に定めた体積の中に磁場を生成することを含む。規範モデルが画定され、規範モデルは、球面調和関数を使用して、体積内の複数の点で磁場をモデル化する。磁場が磁場検出器によって測定され、この磁場検出器は、この体積内に位置する生体の器官に挿入された体内プローブに連結されている。第2の費用関数は、測定磁場を体積内の規範磁場モデルと比較することによって定義される。コスト関数についての導関数における双極子項に関する計算によってコスト関数を最小化することで、測定された磁界に整合する位置及び向きを見つける。見つけられた位置及び向きは、器官内でのプローブの位置及び向きとして出力される。
【0055】
以下の制約条件は、費用関数の中に組み込まれる。
図心制約条件
【数15】
【0056】
それぞれの六角形の三角形における第1の点1の場所は、六角形からの測定信号を用いることによって見つけられた場所と一致する。
【0057】
磁束合計制約条件:
項B
CARTO(x,y,z)は、上記の米国特許第8,818,486号に記載されたような数学モデルを用いて場所において推定された磁場値である。このことは、値Signal
iもまたモデルベースの値
【数16】
であることを含意する。
【0058】
最適には、それぞれの六角形における推定磁束は、測定磁束に一致する。
【0059】
それぞれの六角形についての三角形の点1は、合わさる。
【数17】
【0060】
六角形におけるそれぞれの三角形の点3は、次の三角形の点2と合わさる。
【数18】
【0061】
隣接する六角形は、1個の点で合わさる。以下の式は、1個の六角形からの三角形3と隣接する六角形の三角形4とが、例えば、線分79、83が合わさることを示す。
【数19】
【0062】
以下の式は、1個の六角形からの三角形6と隣接する六角形の三角形1とが、例えば、線分84、86(
図5の84及び85)が合わさることを示す。
【数20】
【0063】
最小にされるべき全体費用関数は、次式である。
【数21】
【0064】
変数w1~w6は、相対加重項である。ここで提示された結果では、それらは、全て1に設定されている。
【0065】
パラメータは、上記の費用関数を最小にすることによって見つけられる。シミュレーションにおいて、最適化は、六角形接続部のうちのいくつかにおける曲げによって変位及び変形させられた全体構造によって開始される。再構成精度は、mm未満レベルにあった。
【0066】
ここで
図6を参照すると、この図は、本発明の実施形態に従う、カテーテル場所を決定するための手順を要約する流れ図である。
【0067】
開始工程85では、カテーテルフレーム枠は、三角形に細分化される一連の六角形としてモデル化される。
【0068】
次に、工程87では、それぞれの三角形の局所座標が画定される。
【0069】
次に、工程89では、三角形の局所座標がCARTO座標に変換される。初期変換パラメータは、工程90に示すように、経験値であり得るか、又は、前の解から取得されることができる。
【0070】
次に、工程101では、三角形及び六角形についての理論上の磁束及び信号が上記のように取得される。
【0071】
工程103は、測定された信号を工程103において解に適用して、上述の費用関数を最適化することによって、それぞれの三角形のCARTO座標系への変換パラメータを求める、すなわち、三角形の(CARTO座標における)面積及び図心を用いて、式4及び式5を三角形に適用することにより、六角形のそれぞれにおける磁束を計算し、次に、六角形のそれぞれから取得した信号を計算する。
【0072】
最終工程107では、カテーテルの場所が、変換パラメータの最適値及びCarto座標を用いて報告される。
【実施例】
【0073】
以下の条件、すなわち、
それぞれの三角形の1個の頂点が、六角形の中心で合わさること、
三角形の別の頂点が、六角形の頂点を画定する点で合わさること、
それぞれの六角形からの測定磁束が、それぞれの三角形を通る推定磁束の合計に等しいこと、
六角形は変形されていないこと、及び、
ワイヤ交差制約条件が式
【数22】
を用いて満たされること、を含む適合が実行される。
【0074】
ここで
図7を参照すると、この図は、本発明の実施形態に従う、そして、上記の条件に応じた、ロボットを用いて取得されたデータを使用する、フレーム枠39(
図2)に類似のカテーテルフレーム枠の例示的な再構成を示す。図は、例示的なロボット位置を示す。
図6に関して説明した手順を、六角形93から取得された信号を計算するために使用してもよい。より一般的に、
図6の手順は、任意の数のループを含むフレーム枠のモデルに適用可能である。再構成された六角形93を実線で示し、六角形95を点線で示す。六角形95は、ロボット場所についての知識及びカテーテルの設計された幾何形状に基づいて、ループの現実の位置を表している。
【0075】
ここで
図8を参照すると、この図は、適合の結果を示す棒グラフである。グラフは、三角形のそれぞれの点の場所における誤差分布を示す。この結果は、27個のロボットの場所のうちの1個に対するものである。別の場所は、類似した結果を与える。
【0076】
六角形が頂点での曲げによって変形することが許容される場合、これが現実の可撓性カテーテルにおける場合であるが、シミュレーションは、精度についてわずかな損失を示す。ここで
図9を参照すると、この図は、シミュレートされた適合を示し、この適合において、六角形が本発明の実施形態に従って、変形することが許容されている。頂点場所の誤差は、
図8に示されたものよりも大きいという傾向がある。
【0077】
代替的実施形態
ワイヤフレーム枠の構成は、
図2に示す実施形態に限定されない。本発明の原理を、別のフレーム形状及び配列に適用することができる。ここで
図10を参照すると、この図は、本発明の代替的な実施形態に従う、カテーテル99を通して展開可能なワイヤフレーム枠97を示す。個々のワイヤは、
図2におけるように、軸の周りで螺旋を描き、相互に接触して、閉ループを形成する。螺旋のピッチは同じであってもよいが、必ずしもそうであるわけではない。別の構成が、当業者に想起されて、前述のように適用されてもよい。
【0078】
当業者であれば、本発明が上記で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者が想到するであろう、先行技術にはない特徴の変形例及び改変例をも含むものである。
【0079】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
生体の心臓の中に挿入されるように適合されたプローブであって、前記プローブは、遠位端部を有する、プローブと、
前記遠位端部に配設されたフレーム枠であって、前記フレーム枠は、腔を画定する複数の導電性ワイヤループを備え、前記ループは、独立して受信機に接続可能である、フレーム枠と、
を備える、装置。
(2) 前記ワイヤループは、3~8本のループを備える、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記ワイヤループは、6~7本のループを備える、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記ワイヤループは、軸の周りに螺旋を形成する、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記ワイヤループは、カテーテルルーメンを通って展開するように変形可能である、実施態様1に記載の装置。
【0080】
(6) 前記ワイヤループのうちの1本は、前記ワイヤループのうちの少なくとも1本の別のものと接触する、実施態様1に記載の装置。
(7) 方法であって、
生体の心臓の中にプローブを挿入する工程であって、前記プローブは、遠位端部を有して、前記遠位端部にフレーム枠が配設されており、前記フレーム枠は、腔を画定する複数の導電性ワイヤループを備え、前記ループは、独立して受信機に接続されている、工程と、
前記ワイヤループをそれぞれの多角形としてモデル化する工程と、
前記多角形を複数の三角形に細分化する工程と、
前記ワイヤループをそれぞれの周波数の磁束に曝す工程と、
前記それぞれの周波数の磁束に応じて前記ワイヤループから信号を読み取る工程と、
前記多角形における理論上の磁束を、それの前記三角形における理論上の磁束のそれぞれの合計として計算する工程と、
前記フレーム枠の場所及び向きを、前記計算された理論上の磁束を前記信号に関連付けることによって決定する工程と、を含む、方法。
(8) 前記多角形は、六角形である、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記多角形を複数の三角形に細分化する工程は、
前記三角形の局所座標を局所座標系において識別する工程と、
前記三角形の前記局所座標を磁気位置追跡システムの座標に変換する工程と、を含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記局所座標を変換する工程は、費用関数を最適化することによって実行されている、実施態様9に記載の方法。
【0081】
(11) 前記理論上の磁束を計算する工程は、前記三角形の面積及び図心に基づいている、実施態様7に記載の方法。
(12) 前記ワイヤループをモデル化する工程は、第1の制約条件を適用する工程を更に含み、隣接する多角形の前記三角形の線分が交わることを必要とする、実施態様7に記載の方法。
(13) 前記ワイヤループをモデル化する工程は、第2の制約条件を適用する工程を更に含み、1個の多角形のそれぞれの三角形の頂点は、前記1個の多角形の隣接する三角形の頂点と一致する、実施態様7に記載の方法。
(14) 前記ワイヤループをモデル化する工程は、第3の制約条件を適用する工程を更に含み、隣接する多角形が、ちょうど2個の点で相互に接触する、実施態様7に記載の方法。
(15) 前記ループは、3~8本のループを備える、実施態様7に記載の方法。
【0082】
(16) 前記ループは、6~7本のループを備える、実施態様7に記載の方法。
(17) 前記ループは、軸の周りに螺旋を形成する、実施態様7に記載の方法。
(18) 前記ワイヤループは変形可能であり、前記フレーム枠を前記プローブのルーメンを通して展開させる工程を更に含む、実施態様7に記載の方法。
(19) 前記ループのうちの1本は、前記ループのうちの少なくとも1本の別のものと接触する、実施態様7に記載の方法。