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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】スクリーン装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/58 20140101AFI20220404BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20220404BHJP
【FI】
G03B21/58
G02B7/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017030330
(22)【出願日】2017-02-21
(65)【公開番号】P2018136424
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2019-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000200666
【氏名又は名称】泉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晃之
(72)【発明者】
【氏名】亀田 周兵
(72)【発明者】
【氏名】関 和治
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-010196(JP,A)
【文献】特開昭60-047190(JP,A)
【文献】特開昭62-288287(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101865281(CN,A)
【文献】中国実用新案第2840111(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/58
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天吊式スクリーン装置であって、
ケーシング内にて回転自在に設けられたスプリングロールと、収納時に前記スプリングロールに巻き戻しされ、使用時に前記スプリングロールから巻き出されるスクリーンと
を備え、
前記スプリングロールの端部に、巻き出される前記スクリーンを所定位置に停止させるための停止手段が更に設けられており
前記停止手段が、側面視で、前記スプリングロールの前記端部に回転可能に接続されたギア部、および該ギア部の外周に沿って複数配置された突起部間に形成された溝部に係止可能な係止部を備えており、ならびに
前記スクリーンの端部に供されたエンドバーを受容するためのエンドバー受容部、および前記係止部と接触可能と成っている旋回部を更に備えており、
前記エンドバー受容部および前記旋回部が一体構造を成している、天吊式スクリーン装置。
【請求項2】
前記ギア部の前記外周に沿って50~100個の前記突起部が形成されている、請求項1に記載の天吊式スクリーン装置。
【請求項3】
前記溝部への前記係止部の係止を解除するためのハンドル部を更に備えている、請求項1又は2に記載の天吊式スクリーン装置。
【請求項4】
前記旋回部が撓み部を備え、該撓み部が前記ケーシングの側部に配置された側方プレートの主面に供された突出部と接触可能と成っている、請求項1~3のいずれかに記載の天吊式スクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン装置に関する。特に、本発明は、天吊式スクリーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、天吊式スクリーン装置が用いられている。天吊式スクリーン装置は、プロジェクタと併用して一般的に用いられる。具体的には、天吊式スクリーン装置の構成要素であるスクリーンを一方向に引き下げ、当該スクリーンにプロジェクタからの映像を投影するという形態が採られる。当該天吊式スクリーン装置では、スクリーンを任意の位置に停止するための円筒カム機構がスクリーンロールの端部に供されている(特許文献1参照)。当該円筒カム機構は円筒表面に溝を備えており、当該溝は、スクリーンを任意の位置に停止するために作用する摺動ボールが係止可能な領域を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-333603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本願発明者らは、天吊式スクリーン装置では以下の問題が生じることを見出した。
【0005】
具体的には、本願発明者らは、スクリーンを略鉛直下方方向に巻き出す際、巻き出したスクリーンが一方向に(略鉛直下方方向に)全体として延在せずに、巻き出したスクリーンの局所部分が湾曲することを見出した。かかるスクリーンの局所部分の湾曲の発生は、プロジェクタから映像をスクリーンに全体として好適に投影できないことにつながる。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものである。すなわち、本発明の目的は、プロジェクタからの映像を好適にスクリーンに投影可能な天吊式スクリーン装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、天吊式スクリーン装置であって、
ケーシング内にて回転自在に設けられたスプリングロールと、収納時にスプリングロールに巻き戻しされ、使用時にスプリングロールから巻き出されるスクリーンと
を備え、
スプリングロールの端部に、巻き出されるスクリーンを所定位置に停止させるための停止手段が更に設けられており、および
停止手段が、側面視で、スプリングロールの端部に回転可能に接続されたギア部、およびギア部の外周に沿って複数配置された突起部間に形成された溝部に係止可能な係止部を備えている、天吊式スクリーン装置が提供される。
【0008】
ある好適な態様では、ギア部の外周に沿って50~100個の突起部が形成されている。
【0009】
ある好適な態様では、天吊式スクリーン装置が溝部への係止部の係止を解除するためのハンドル部を更に備えている。
【0010】
ある好適な態様では、天吊式スクリーン装置がスクリーンの端部に供されたエンドバーを受容するためのエンドバー受容部、および係止部と接触可能と成っている旋回部を更に備えており、
エンドバー受容部および旋回部が一体構造を成している。
【0011】
ある好適な態様では、旋回部が撓み部を備え、撓み部がケーシングの側部に配置された側方プレートの主面に供された突出部と接触可能と成っている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の天吊式スクリーン装置によれば、プロジェクタからの映像を好適にスクリーンに投影可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る天吊式スクリーン装置の概略全体図である。
図2図2は、ケーシングの側部の概略断面図である。
図3図3は、ケーシングの側部の概略側面図である。
図4図4は、係止部がギア部に係止している状態を示した概略側面図である。
図5図5は、係止部とギア部との係止が解除されている状態を示した概略側面図である。
図6図6は、ハンドル部の動作を示した概略側面図である。
図7図7は、エンドバー受容部と一体構造を成す旋回部の動作を示した概略側面図である。
図8図8は、エンドバー受容部と一体構造を成す旋回部の動作を示した概略側面図である。
図9図9は、スクリーン巻き出し開始前の状態を示した概略側面図である。
図10図10は、スクリーン巻き出し開始後の状態を示した概略側面図である。
図11図11は、所定箇所でスクリーンを停止させた際の状態を示した概略側面図である。
図12図12は、スクリーン巻き戻し開始時の状態を示した概略側面図である。
図13図13は、スクリーン巻き戻し中の状態を示した概略側面図である。
図14図14は、スクリーン巻き戻し完了時の状態を示した概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る天吊式スクリーン装置について図面を用いて説明する。
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る天吊式スクリーン装置について具体的に説明する前に本明細書で用いる用語の定義づけを行っておく。本明細書でいう「天吊式スクリーン装置」とは、所定箇所に配置したケーシングから略鉛直下方方向にスクリーンを巻き出すパターンのスクリーン装置を指す。本明細書でいう「ケーシング」とは、スクリーンおよびスクリーンが巻回されるスプリングロールを収容するための収容部材を指す。本明細書でいう「スプリングロール」とは、スプリング部材(バネ)により付勢されたスクリーンを巻回自在とするロールであって、その一端と他端がケーシング内部に軸支されているものを指す。本明細書でいう「停止手段」とは、巻き出したスクリーンの所定位置での停止を実現するためのものを指す。本明細書でいう「ギア部」とは、外周の全体に沿って突起部が所定間隔で複数形成されたものであって、スプリングロールの回転に同伴して回転可能なものを指す。本明細書でいう「ギア部の突起部」とは、外周の全体に沿って所定間隔で形成された凸部形状および/又は歯形形状の部材を指す。本明細書でいう「ギア部の溝部」とは、ギア部の外周に沿って形成された相互に隣接する一方の突起部と他方の突起部との間に形成される凹部形状の空間領域を指す。本明細書でいう「係止」とは、係わりあって止まることを指す。本明細書でいう「係止部」とは、ギア部の溝部が形成する空間領域と略同一形状の先端部(爪部)を備えた部材を指す。
【0016】
又、本明細書でいう「ハンドル部」とは、ギア部の溝部への係止部の係止を解除するためのものであって、係止部の突起部を押圧可能と成っているものを指す。つまり、本明細書でいう「ハンドル部」とは、広義には人の手で操作する取手部であって、狭義にはギア部の溝部に対する係止部の係止を解除するためのものを指す。つまり、本明細書でいう「ハンドル部」とは、係止解除部と称し得る。本明細書でいう「エンドバー」とは、スプリングロールに接続されるスクリーンの一方の側(上端部)とは反対側のスクリーンの他方の側(下端部)の長手部分に沿って一方向に延在する棒部材を指す。本明細書でいう「エンドバー受容部」とは、広義にはスクリーンのエンドバーを受容するためのものであって、狭義にはスクリーンのエンドバーの一方の端部を受容するためのものを指す。本明細書でいう「旋回部」とは、広義には旋回可能なものを指し、狭義には軸支部分を基点として時計回り又は反時計回りに回転可能なものを指し、より狭義には係止部を押圧するように又は係止部により押圧されるように軸支部分を基点として時計回り又は反時計回りに回転可能なものを指す。本明細書でいう「撓み部」とは、曲げ変形可能な可撓性を有するものを指す。本明細書でいう「ケーシングの側方プレート」とは、ケーシングの側部の開口領域を閉じる板部材を指す。本明細書でいう「ケーシングの側方プレートの突出部」とは、広義にはケーシングの側方プレートの外側主面に形成された凸部形状の部材を指し、狭義には旋回部の撓み部と接触可能な箇所に位置付けられた凸部形状の部材を指す。
【0017】
<天吊式スクリーン装置の構成>
以下、本発明の一実施形態に係る天吊式スクリーン装置の全体的構成について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る天吊式スクリーン装置の概略全体図である。図2は、ケーシングの側部の概略断面図である。図3は、ケーシングの側部の概略側面図である。図4は、係止部がギア部に係止している状態を示した概略側面図である。図5は、係止部とギア部との係止が解除されている状態を示した概略側面図である。図6は、ハンドル部の動作を示した概略側面図である。図7は、エンドバー受容部と一体構造を成す旋回部の動作を示した概略側面図である。図8は、エンドバー受容部と一体構造を成す旋回部の動作を示した概略側面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る天吊式スクリーン装置100は、ケーシング10内にて回転自在に設けられたスプリングロール20と、スプリングロール20に巻回可能なスクリーン30とを備えている。当該スクリーン30は、収納時にスプリングロール20に巻き戻しされ、使用時にスプリングロール20から巻き出されるように構成されている。本発明の一実施形態に係る天吊式スクリーン装置100は、スプリングロール20の端部21に、巻き出されるスクリーン30を所定位置に停止させるための停止手段40を更に備えている。なお、図1に示すように、本発明の一実施形態に係る天吊式スクリーン装置100は、スプリングロール20の端部21に軸支されたロータリー・ダンパー80を更に備えていてよい。当該ロータリー・ダンパー80は、スプリングロール20の回転速度を減速させるためのものである。つまり、ロータリー・ダンパー80は、スプリングロールの回転速度減速部材として機能する。
【0020】
図2図5に示すように、停止手段40は、ギア部41および係止部42を備えている。ギア部41は、スプリングロール20の端部21に回転可能に接続されている。これにより、ギア部41は、スプリングロール20の端部21との接続部分を基点としてスプリングロール20の時計回り又は反時計回りの回転に同伴して、時計回り又は反時計回りに回転可能と成っている。ギア部41は側面視で略円形形態を有しており、ギア部41の外周に沿って複数の突起部41Xが設けられている。相互に隣接する一方の突起部41Xと他方の突起部41Xとの間には溝部41Yが形成されている。なお、ギア部41が側面視で時計回りに回転移動する際には、溝部41Yは、後述する係止部42の先端部42Zが当該溝部41Yに入り込まない構造を採っている。
【0021】
一方、係止部42は、一端がケーシング10の側部の蓋として機能する側方プレート10Xに軸支され、他端42Zがギア部41に形成された溝部41Yに係止可能と成っている。つまり、係止部42は、当該軸支部分42Xを基点として回転可能に成っている。なお、ギア部41は、側面視で側方プレート10Xの面領域内に収容可能な径寸法を有する。つまり、側方プレート10Xの面領域の大きさに依存して、ギア部41の径寸法が決定される。そのため、ギア部41の外周に沿って設けられる突起部41Xの数も側方プレート10Xの面領域の大きさに実質的に依存する。従って、側方プレートの面領域の実用サイズを鑑み、突起部41Xは、特に限定されるものではないがその外周に沿って50~100個、好ましくは60~90個、例えば80個形成されていてよい。上記数値規定は一例にすぎず、突起部41Xの数は100個を上回ってもよく、例えば120個であってもよい。特に、本発明は、上述のようにギア部41が側面視で略円形形態を有しているが故、その外周に沿って設けられる突起部41Xの数を、従前の円筒カム機構を用いる態様と比べて相対的に相当程度増やすことが可能となる点で有利である。
【0022】
又、係止部42は、後述するハンドル部を動作させた際にハンドル部が係止部42を押圧するための突出部42Yを主面に有して成る。係止部42の上方領域には、スプリング部材44により付勢された被付勢部材43が位置付けられている。当該被付勢部材43は、係止部42の軸支部分42Xおよび突出部42Yが延在可能な貫通領域43X,43Yを備えている。被付勢部材43は、側方プレート10Xに対向するように位置付けられた囲い部10Yに接続されている。当該囲い部10Yは、ギア部41、係止部42、被付勢部材43等側面視で側方プレート10Xの主面上に設けられる構成部材を囲むものである。係止部42の突出部42Yが被付勢部材43の貫通領域を延在していることで、軸支部分42Xを基点とする係止部42の回転移動に伴い、係止部42の突出部42Yが貫通領域43Yを形成する被付勢部材43の壁を押圧し、それによって被付勢部材43もギア部41の溝部41Yから離隔するように回転移動可能となる。上述のように、被付勢部材43はスプリング部材44により付勢されているため、ギア部41の溝部41Yからの被付勢部材43の回転移動の程度を相対的に小さくすることが可能となる。そのため、これに起因して、被付勢部材43の下方領域に位置する係止部42が軸支部分42Xを基点としてギア部41の溝部41Yから離隔するように回転する際に、係止部42の突出部42Yの移動が、回転移動の程度が相対的に小さい被付勢部材43の貫通領域43Yを形成する壁にて抑制され、それによってスプリング部材44の長手軸よりも外側に係止部42の先端部42Zが相対的に大きく移動することを抑制することができる。
【0023】
下記の動作説明の欄でも述べるが、上述の係止部42の先端部42Z(爪部に相当)が溝部41Yに係止すると、係止部42によってギア部41の回転停止が維持される。ギア部41の回転停止が維持されると、ギア部41の回転移動に同伴して回転移動するスプリングロール20の回転停止が維持される。かかるスプリングロール20の回転停止の維持により、巻き出されたスクリーン30の所定箇所での停止を維持することが可能となる。特に、本発明の一実施形態では、ギア部41が側面視で略円形形態を有しているが故、ギア41の外周に沿って複数(例えば50~100個)の突起部41Xを供することが可能となる。そのため、ギア部41の溝部41Yの配置間隔を相対的に小さくすることができる。その結果、従前の円筒カム機構を用いる態様(摺動ボールが係止可能な領域の数:スプリングロールの径寸法を鑑みて通常最大約10個前後)と比べて、係止部42が所定箇所に形成された溝部41Yに係止し、その後所定箇所とは別の箇所に形成された溝部41Yに係止するまでの間隔を相対的に小さくすることができる。これにより、係止部42が所定箇所に形成された溝部41Yに係止することに起因してスクリーン30が所定箇所に停止してから、係止部42が所定箇所とは別の箇所に形成された溝部41Yに係止することに起因してスクリーン30が所定箇所とは異なる別の箇所に停止するまでのスクリーン30の停止間隔を相対的に小さくすることができる。
【0024】
従前の円筒カム機構を用いる態様では、摺動ボールが係止可能な領域の数が相対的に少ないことに起因して、スクリーンを略鉛直下方方向に所定箇所まで巻き出した際に、巻き出したスクリーンの局所部分が湾曲していたとしても、当該所定箇所から略鉛直下方方向に相対的に大きなスクリーンの更なる巻き出しによって、スクリーンに引張力を作用させる必要があると考えられる。これに対して、本発明の一実施形態では、スクリーン30の停止間隔を相対的に小さくすることができることに起因して、スクリーン30を略鉛直下方方向に所定箇所まで巻き出した際に、巻き出したスクリーン30の局所部分が湾曲していたとしても、当該所定箇所から略鉛直下方方向に相対的に小さなスクリーン30の更なる巻き出しによって、スクリーン30に引張力を作用させることができる。そして、当該引張力を作用させることにより、スクリーン30の局所部分の湾曲を好適に解消することができる。又、当該相対的に小さなスクリーンの更なる巻き出しは、スクリーン30に対するプロジェクタからの映像の投影箇所の調整の手間を実質的に省けることにもつながる。以上の事からも、本発明は、相対的に小さなスクリーンの更なる巻き出しにより、プロジェクタから映像をスクリーン30に全体として好適に投影することができる点で有利である。
【0025】
又、図2図3および図6に示すように、ケーシング10の側方プレート10Xには、ハンドル部70が軸支されている。つまり、ハンドル部70は、当該軸支部分70Xを基点として回転可能と成っている。当該ハンドル部70は、係止部42の突出部42Yを押圧可能な突出部70Yを有して成る。これにより、軸支部分70Xを基点としてハンドル部70を回転させると、ハンドル部70の突出部70Yにより係止部42の突出部42Yを押圧することができる。かかる押圧により、所定箇所の溝部41Yへの係止部42の係止状態を解除することができる。なお、ハンドル部70はスプリング部材71により付勢されている。そのため、軸支部分70Xを基点として係止部42の突出部を押圧する方向とは反対の方向に、つまり初期位置にハンドル部を戻す付勢力を作用させることができる。
【0026】
図3および図7に示すように、側方プレート10Xの一方の主面には、係止部42と接触可能と成っている旋回部51が軸支されている。つまり、旋回部51は、当該軸支部分51Xを基点として回転可能に成っている。具体的には、旋回部51は、当該軸支部分51Xを基点として時計回り又は反時計回りに回転可能に成っている。又、旋回部51は、側方プレート10Xと囲い部10Y(具体的には、囲い部10Yの主面に対して略垂直方向に延在する突部)との間に挟まれるように位置付けられている。側方プレート10Xの他方の主面側には、スクリーン30の下端部に供されたエンドバー60を受容するためのエンドバー受容部52が供されている。後述するが、旋回部51とエンドバー受容部52とは全体として一体構造を成している。
【0027】
一例として、係止解除された係止部42が軸支部分42Xを基点として溝部41Yから離隔するように回転移動する場合を例にとる。この場合、回転移動する係止部42が旋回部51を押圧する。かかる押圧により、旋回部51は軸支部分51Xを基点として時計回りに回転移動する(図7および図8参照)。旋回部51が時計回りに回転移動すると、これに伴って旋回部51と一体化されているエンドバー受容部52も移動する。又、旋回部51は、その主面に撓み部51Yを有して成る。更に、旋回部51の回転移動に伴い撓み部51Yが通る経路に対向する側方プレート10Xの主面には、旋回部51の回転移動中に所定箇所で撓み部51Yと接触可能な突出部10Xが設けられている。そのため、旋回部51が時計回りに回転移動すると、回転移動中に所定箇所で撓み部51Yが側方プレート10Xの突出部10Xに接触し、それによって旋回部51の時計回りの回転移動速度を意図的に緩めることができる。これにより、旋回部51を押圧する係止部42の回転移動速度も緩めることができる。従って、係止解除された係止部42が軸支部分42Xを基点として溝部41Yから必要以上に離隔することを抑制することができる。
【0028】
別例として、エンドバー60がエンドバー受容部52に受容される場合を例にとる。この場合、エンドバー60を受容するエンドバー受容部52は、当該エンドバー受容部52と一体化された旋回部51が回転可能に軸支されていることに起因して、エンドバー60を受容する前と比べて略上方向に僅かに移動する。エンドバー受容部52の移動に伴い、旋回部51が軸支部分51Xを基点として反時計回りに回転移動する(図7および図8参照)。旋回部51が反時計回りに回転移動すると、旋回部51は、係止解除されて溝部41Yから離隔するように回転移動した係止部42に接触した上で係止部42を押圧可能となる。これにより、軸支部分42Xを基点として係止部42(具体的には係止部42の先端部42Z)を溝部41Y側、すなわちギア41側に近づくように回転移動させることができる。
【0029】
<天吊式スクリーン装置の動作>
以下、本発明の一実施形態に係る天吊式スクリーン装置の動作について図面を用いて説明する。
【0030】
図9は、スクリーン巻き出し開始前の状態を示した概略側面図である。図10は、スクリーン巻き出し開始後の状態を示した概略側面図である。図11は、所定箇所でスクリーンを停止させた際の状態を示した概略側面図である。図12は、スクリーン巻き戻し開始時の状態を示した概略側面図である。図13は、スクリーン巻き戻し中の状態を示した概略側面図である。図14は、スクリーン巻き戻し完了時の状態を示した概略側面図である。
【0031】
(スクリーン巻き出し開始前)
スクリーン巻き出し開始前においては、図9に示すようにスクリーンの下端部に供されたエンドバー60は、エンドバー受容部52により完全に受容されている状態となる。この状態では、エンドバー60を完全受容するエンドバー受容部52は、当該エンドバー受容部52と一体化された旋回部51が回転可能に軸支されていることに起因して、エンドバー60を受容する前と比べて略上方向に僅かに移動した状態となっている。これに伴い、旋回部51が軸支部分51Xを基点として反時計回りに回転移動した状態となり、それに起因して、旋回部51は、係止部42に接触した上で係止部42を押圧可能となっている。これにより、軸支部分42Xを基点として係止部42を溝部41Y側、すなわちギア部41側に回転移動可能となっている。従って、係止部42の先端部42Zがギア部41に形成された溝部41Y側に近接させることができる。以上の事からも、図9に示すようにスクリーン巻き出し開始前においては、係止部42の先端部42Zは溝部41Yに対して近接した状態となっている。
【0032】
(スクリーン巻き出し開始後)
次に、上記のスクリーン巻き出し開始前の状態から、図10に示すようにスクリーン30のエンドバー60を持って鉛直下方方向にスクリーン30の巻き出しを開始する。スクリーン30の巻き出しを開始すると、当該巻き出しによりスプリングロールが側面視で時計回りに回転開始する。スプリングロールが時計回りに回転開始すると、スプリングロールの端部に位置付けられたギア部41も図10に示すように時計回りに回転開始する。ギア部41が時計回りに回転する際、上述のように、溝部41Yは係止部42の先端部42Zが当該溝部41Yに入り込まない構造を採っているため、スクリーン30を鉛直下方方向に連続的に巻き出すことが可能となる。
【0033】
(スクリーンの所定箇所停止)
次に、スクリーン30の所定箇所での巻き出し停止を開始する。かかる巻き出し停止開始に伴い、側面視でスプリングロールの時計回りの回転が停止する。スプリングロールの時計回りの回転が停止すると、図11に示すようにスプリングロールの端部に位置付けられたギア部41の時計回りの回転も停止する。ギア部41の回転が停止すると、係止部42の先端部42Zがギア部41の所定箇所の溝部41Yに入り込み、それによって係止部42の先端部42Zがギア部41の所定箇所の溝部41Yに係止する。
【0034】
係止部42の先端部42Zが溝部41Yに係止すると、係止部42によってギア部41の時計回りの回転停止が維持される。ギア部41の時計回りの回転停止が維持されると、ギア部41の時計回りの回転移動に同伴して回転移動するスプリングロール20の時計回りの回転停止が維持される。かかるスプリングロール20の時計回りの回転停止の維持により、巻き出されたスクリーン30の所定箇所での停止を維持することが可能となる。
【0035】
ここで、所定箇所に停止維持させたスクリーン30のエンドバー60を持って鉛直下方方向に僅かに巻き出し、それによってギア部41を時計回りに僅かに回転移動させると、ギア部41が側面視で時計回りに回転移動する際には、係止部42の先端部42Zが溝部41Yに入り込まない構造を採っていることに起因して、溝部41Yに対する係止部42の先端部42Zの係止を解除することができる。特に、本発明の一実施形態では、ギア部41が側面視で略円形形態を有しているが故、ギア41の外周に沿って複数(例えば50~100個)の突起部41Xを供することが可能となる。そのため、ギア部41の溝部41Yの配置間隔を相対的に小さくすることができる。その結果、従前の円筒カム機構を用いる態様(摺動ボールが係止可能な領域の数:スプリングロールの径寸法を鑑みて通常最大約10個前後)と比べて、係止部42が所定箇所に形成された溝部41Yに係止し、その後所定箇所とは別の箇所に形成された溝部41Yに係止するまでの間隔を相対的に小さくすることができる。これにより、係止部42が所定箇所に形成された溝部41Yに係止することに起因してスクリーン30が所定箇所に停止してから、係止部42が所定箇所とは別の箇所に形成された溝部41Yに係止することに起因してスクリーン30が所定箇所とは異なる別の箇所に停止するまでのスクリーン30の停止間隔を相対的に小さくすることができる。
【0036】
これにより、スクリーン30を略鉛直下方方向に所定箇所まで巻き出した際に、巻き出したスクリーン30の局所部分が湾曲していたとしても、当該所定箇所から略鉛直下方方向に相対的に小さなスクリーン30の更なる巻き出しによって、スクリーン30に引張力を作用させることができる。つまり、本発明の一実施形態では、所定箇所から略鉛直下方方向に相対的に大きなスクリーン30の更なる巻き出しをせずとも、スクリーン30に引張力を作用させることが可能である。そして、当該引張力を作用させることにより、スクリーン30の局所部分の湾曲を好適に解消することができる。又、当該相対的に小さなスクリーンの更なる巻き出しは、スクリーン30に対するプロジェクタからの映像の投影箇所の調整の手間を実質的に省けることにもつながる。以上の事からも、本発明は、相対的に小さなスクリーンの更なる巻き出しにより、プロジェクタから映像をスクリーン30に全体として好適に投影することができる点で有利である。
【0037】
(スクリーン巻き戻し開始およびスクリーン巻き戻し中)
スクリーン30の局所部分の湾曲を解消した上でプロジェクタからのスクリーン30への好適な投影が終了した後は、スクリーン30の巻き戻しを開始する。図12に示すように、スクリーン30の巻き戻し開始に際しては、ケーシング10の側方プレート10Xに
軸支されたハンドル部70を用いる。具体的には。軸支部分70Xを基点として回転可能に成っているハンドル部70を用いる。当該ハンドル部70は、上述のように係止部42の突出部42Yに押圧可能な突出部70Yを有して成る。軸支部分70Xを基点としてハンドル部70を回転させると、ハンドル部70の突出部70Yが係止部42の突出部42Yに接触し、当該突出部42Yを押圧する。かかる押圧により、所定箇所の溝部41Yへの係止部42の係止状態を解除することができる。当該係止が解除されると、ギア41と接続するスプリングロールがスプリング部材により付勢されていることで、当該スプリングロールは側面視でスクリーンを巻き戻す方向、すなわち反時計回りに回転開始する。当該スプリングロールの反時計回りの回転により、スプリングロールに接続されたスクリーン30の巻き戻しを開始することができる。
【0038】
又、上述のように係止部42の上方領域には、スプリング部材44により付勢された被付勢部材43が位置付けられており、当該被付勢部材43は、係止部42の軸支部分42Xおよび突出部42Yが延在可能な貫通領域43X,43Yを備えている。係止部42の突出部42Yが被付勢部材43の貫通領域を延在しているため、軸支部分42Xを基点とする係止部42の回転移動に伴い、係止部42の突出部42Yが貫通領域43Yを形成する被付勢部材43の壁を押圧し、それによって被付勢部材43もギア部41の溝部41Yから離隔するように回転移動可能となる。被付勢部材43はスプリング部材44により付勢されているため、ギア部41の溝部41Yからの被付勢部材43の回転移動の程度を相対的に小さくすることが可能となる。
【0039】
そのため、これに起因して、被付勢部材43の下方領域に位置する係止部42が軸支部分42Xを基点としてギア部41の溝部41Yから離隔するように回転する際に、係止部42の突出部42Yの移動が、回転移動の程度が相対的に小さい被付勢部材43の貫通領域43Yを形成する壁にて抑制され、それによってスプリング部材44の長手軸よりも外側に係止部42の先端部42Zが相対的に大きく移動することを抑制することができる。これにより、後述する軸支部分42Xを基点として係止部42を溝部41Y側への回転移動量および/または回転移動時間を相対的に小さくすることが可能となる。
【0040】
なお、上述のようにハンドル部70はスプリング部材71により付勢されているため、軸支部分70Xを基点として係止部42の突出部42Yを押圧する方向とは反対の方向に付勢力を作用させることができる。これにより、図13に示すようにスクリーン30を巻き戻し中に初期位置にハンドル部70を戻すことができる。
【0041】
又、図12に示すようにハンドル部70の押圧力により、係止部42が軸支部分42Xを基点として溝部41Yから離隔するように回転移動すると、かかる係止部42の回転移動により、係止部42は、係止部42に接触可能に近接配置された旋回部51に接触した上で当該旋回部51を押圧する。かかる押圧により、旋回部51は軸支部分51Xを基点として時計回りに回転移動する。旋回部51が時計回りに回転移動すると、これに伴って旋回部51と一体化されているエンドバー受容部52も図12に示す矢印方向に移動する。
【0042】
上述のように、旋回部51はその主面に撓み部51Yを有して成る。又、旋回部51の回転移動に伴い撓み部51Yが通る経路に対向する側方プレート10Xの主面には、旋回部51の回転移動中に所定箇所で撓み部51Yと接触可能な突出部10Xが設けられている。そのため、旋回部51が時計回りに回転移動している際、回転移動中に所定箇所で撓み部51Yが側方プレート10Xの突出部10Xに接触し、それによって旋回部51の時計回りの回転移動速度を意図的に緩めることができる。これにより、旋回部51を押圧する係止部42の回転移動速度も緩めることができる。従って、係止解除された係止部42が軸支部分42Xを基点として溝部41Yから必要以上に離隔することを抑制することができる。
【0043】
(スクリーン巻き戻し完了)
スクリーン30の巻き戻し完了時においては、図14に示すようにスクリーン30の下端部に供されたエンドバー60は、エンドバー受容部52により完全に受容されている状態となる。この状態では、エンドバー60を完全受容するエンドバー受容部52は、当該エンドバー受容部52と一体化された旋回部51が回転可能に軸支されていることに起因して、エンドバー60を受容する前と比べて略上方向に僅かに移動した状態となっている。これに伴い、旋回部51が軸支部分51Xを基点として反時計回りに回転移動した状態となり、それに起因して、旋回部51は、係止部42に接触した上で係止部42を押圧可能となっている。これにより、軸支部分42Xを基点として係止部42を溝部41Y側、すなわちギア部41側に回転移動可能となっている。従って、係止部42の先端部42Zがギア部41に形成された溝部41Y側に近接させることができる。以上により、係止部42の先端部42Zが溝部41Yに対して近接した状態である上記の巻き出し開始前の状態にすることができる(図9参照)。
【0044】
以上、本発明の一実施形態に係る天吊式スクリーン装置について説明してきた。しかしながら、これに限定されることなく、特許請求の範囲に規定される範囲から逸脱することなく種々の変更が当業者によってなされると理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の一実施形態に係る天吊式スクリーン装置は、プロジェクタ、特に超短焦点プロジェクタを搭載するために利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 ケーシング
10X ケーシングの側方プレート
10X ケーシングの側方プレートの主面に供された突出部
10Y 囲い部(ケーシングの側方プレートに対向配置されたもの)
20 スプリングロール
21 スプリングロールの端部
30 スクリーン
40 停止手段
41 ギア部
41X ギア部の突起部
41Y ギア部の溝部
42 係止部
42X 係止部の軸支部分
42Y 係止部の突出部
42Z 係止部の先端部
43 被付勢部材
43X 被付勢部材の貫通領域
43Y 被付勢部材の貫通領域
44 スプリング部材
51 旋回部
51X 旋回部の軸支部分
51Y 旋回部の撓み部
52 エンドバー受容部
60 スクリーンのエンドバー
70 ハンドル部
70X ハンドル部の軸支部分
70Y ハンドル部の突出部
71 スプリング部材
80 ロータリー・ダンパー
100 天吊式スクリーン装置
図1
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