(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】体外血液処理装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/34 20060101AFI20220404BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61M1/34 130
A61M1/16 110
A61M1/34 125
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017076457
(22)【出願日】2017-04-07
【審査請求日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】10 2016 107 024.6
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515143739
【氏名又は名称】ビー.ブラウン アビタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】B. BRAUN AVITUM AG
【住所又は居所原語表記】Schwarzenberger Weg 73-79, 34212 Melsungen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ ライメンシュナイダー
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-221573(JP,A)
【文献】特開2003-220131(JP,A)
【文献】特開昭61-071063(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022537(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/34
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析機(8)を備え、血液透析及び事後希釈液を用いる血液濾過透析をなすべく設計される体外血液処理装置であって、
該血液透析を用いる血液処理であって、該血液透析のデフォルト値群に基づく
該血液処理を開始すべく、ユーザにより、操作され、及び/又は、読み取られるユーザインタフェースと、
少なくとも1つの、記録/計算ユニットであって、少なくとも1つの血流、限外濾過量、置換量、及び/又は、置換のタイプに係る、現在の値群、及び/又は、比率群を決定するものと、
センサ手段(6)であって、出力信号に基づいて治療進行を記録するもの(6)と、
前記透析機(8)内における限外濾過率を決定する
第一決定手段と、
前記第一決定手段により決定された限外濾過率が示す処理血流に透析機(8)が達する時間に基づき、前記透析機(8)内における二次メンブレンの形成時間を所定時間として決定する
第二決定手段と、
所定時間の経過後に、血液透析から事後希釈液を用いる血液濾過透析へ変化するためのスイッチ手段と、
事後希釈液を用いる血液濾過透析中における、置換量を規制する規制手段とを備え、
前記所定時間は、前記センサ手段(6)において
、血流が初回記録された
後の時間
であり、且つ、前記所定時間において所定
限外濾過率が決定されると、前記血液透析から前記事後希釈液を用いる血液濾過透析への変化が自動的に発生し、
前記所定限外濾過率において、所定処理血流が達成されたものと仮定さ
れ、前記二次メンブレンが所定形成状態にあるものと仮定され
るものである装置。
【請求項2】
前記所定時間は最初は約3乃至5分であり、前記装置は、治療の開始後、デフォルト値群及び現在の計算値群に基づいて実際の時間を調節し、且つ、自動的に遅延する態様で、事後希釈液を用いる血液濾過透析を開始すべく、設計されている請求項1記載の装置。
【請求項3】
血流の前記初回記録は、前記センサ手段(6)として空気検出手段(6)上に配設される血流センサを用いて行い、且つ、前記二次メンブレン形成の被想定状態は、計算された
前記限外濾過率に由来する請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記規制手段は、デフォルト適用に従って前記置換量を規制し、前記置換量は、血流の所定最大パーセント分を超えない請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記規制手段は、前記置換量を、一定値又は一定量に規制する請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記所定最大パーセント分は、血流の25乃至30%である請求項4記載の装置。
【請求項7】
血流が所定最低量を下回ると、前記規制手段は、自動的に置換量を削減し、且つ、ユーザに削減された置換量を知らせるメッセージを発する請求項4から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
所定
限外濾過率に到達すると、前記規制手段は、自動的に置換量を制限し、且つ、ユーザに置換量の制限を知らせるメッセージを発する請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
全ての必要なパラメータ群は、ユーザにより予め設定可能であり、且つ、必要であれば、装置は自動的に
前記全ての必要なパラメータ群の最大量群を削減するように設計されている請求項1から8のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液処理方法及びその装置に係り、特に、血液濾過透析処理(好ましくはオンライン血液濾過透析処理)の範囲内における最大クロスレートへの規制に関連して、遅延された血液濾過透析開始を行う、体外血液処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体外血液処理のための公知の装置は、少なくとも1つの処置部(例えば、透析機、及び/又は、透析装置、又は、フィルタ、限外濾過器、又は、異なるフィルタ部の血漿フィルタ等)であって、処理部を2つのチャンバ群に分離する半透メンブレンを有するものを備える。
体外血液循環により、患者から採取された血液の流れが第1チャンバを介して患者に戻ることとなる。
【0003】
同時に、透析液(治療流体)は、第2チャンバを介する適切に設計された循環によって、反対の方向に流れる。
更に、公知の装置は、置換流体用の注入ライン、入口側で第2チャンバと接続される流体入口ライン、及び、出口側で第2チャンバに接続される流体出口ラインとを備える。
【0004】
また、次のパラメータ群を決定すべくセンサ群が設けられる。即ち、第1パラメータは、患者の血液量に関係する。第2パラメータは、限外濾過の流量又は患者の体重喪失レートに関係する。第3パラメータは、流路、及び/又は、注入ラインを流れる流体の、導電性又は濃度に関係する。第4パラメータは、注入流量に関係する。
制御部は、血液量変動を補償し、且つ、対流の交換過程を最大化する値群を用いてメンブレンの膜内外圧力を加えるシーケンスを調整する、制御手順を実行する。
【0005】
公知の装置では、メンブレン膜内外圧力及び血流は関連付けられており、血流の速度やその速度に応じて、様々な機能群が実行される。
例えば、新たな動作モードが開始され、或いは、動作中のモードが停止される如くである。
公知種の装置群を用いる腎代替療法では、様々な混乱が起こり得る。
【0006】
例えば、ユーザによる最適でないパラメータへの干渉があり、治療結果の計算可能な(過度の)悪化が起こった場合、該装置群が干渉するようにデザインされている。
例えば、治療の開始時に、即ち、全ての治療パラメータ群と治療形態が選択済みである時に、できるだけ速やかに所定の血流をも達成して治療を開始しようとする。
【0007】
このことが直ちにはかなわず、且つ、治療が低い血流で開始されるならば、透析機中において血液濃縮が生じ得る。
現在、該事象は、系統的にモニタされているものの、例えば、既存の制限値(25%の最大値を目標とする治療では30%)のためにほんのわずかしかマージンが存在しないが、限外濾過/クロスレートの超過を示すことにより、そのような治療がかくして許容されてしまう。
【0008】
問題のあるアクセスのために、血流がほんの一時的とはいえ削減される必要があるならば、治療において、別のケースを生じる。
内科医との相談なしで、ユーザが、治療の定められた置換量又は種類(例えば、事後希釈液から事前希釈液へ)を、削減、及び/又は、変更することは許されない。
【0009】
更に、現在公知のアセンブリ群では、最初の数分間において、二次メンブレンが形成されることが考慮されていない。
腎代替療法での混乱が生じると、例えば、低すぎるヘパリン調合、低すぎる流量、高すぎる濾過量により、体外循環中における凝固をも引き起こし、これはしばしばフィルタ入口圧力の増加により示されることになる。
【0010】
これにより、タンパク質がフィルタ内部に堆積し、濾過性能が減少する結果となり得る。
該堆積のために、二次メンブレンが形成される。こうなると、ユーザにより取り組まざるを得なくなる。これは、十分な、ヘパリン添加、事前希釈液又は置換液の増加、及び、濾過の削減(スクリーン係数の下落)による。二次メンブレン群が形成されると、濾過圧力Pfが低減し、しかして、メンブレン膜内外圧力TMPが増加する結果となる。
【0011】
二次メンブレン発生の正確なメカニズムは、未だ完全には知られておらず、更に、血液濾過においては、溶血の危険のために、極めて限られた方法においてのみ、これらに影響する処置が可能である。加えて、いずれの場合においても、内科医との相談が必要となる。又上述したように、二次メンブレン形成は、公知アセンブリ群において不都合にも考慮されていない。
クロス流量、及び/又は、クロスレートを評価し、適用の誤りを防止する、プロセス群が自動的に実行されることはない。
【0012】
しかして、ユーザは、装置又はシステムの警告メッセージに基づき、全ての結果群を直ちに且つ正確に解釈せねばならず、にもかかわらず、2つの次善のアプローチ群のみを決め得るに過ぎない。
一方において、ユーザは、血流が再び適切となるまで、治療を中断することができる。
しかし、その結果、治療の終りも自動的に遅れることになる。
【0013】
他方において、ユーザは、メンブレンの負荷を許容し、そうして、関連する効果の低減、及び、その後の治療結果の低減が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかして、本発明の目的は、上述した不利益群及び問題群を克服し、且つ、自動的にユーザをサポートし、危機的な状況下で正確に反応する、体外血液処理、方法及び装置を提供する点にある。
更に、例えば、アクセスの一時的な問題に起因する適用誤りが認識可能となり、適切で十分な血流が達成されるまで、この適用誤りを補償することも可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明により、当該目的は、請求項1の特徴を備える体外血液処理装置、及び、請求項11の特徴を備える該当方法により達成される。
本発明の有利な更なる実施の形態は、添付従属項群の主題となる。
【0016】
本発明は、次の概念に基づく。即ち、上述した範囲内において、透析機の最大性能に照らした、置換物流れの単なる一定サイズ規制を提供することであり、右透析機は、血液濾過透析を自動的に遅延開始するものであり、右透析は、好ましくは、血液濾過透析、及び/又は、HDF(事後希釈液)、及び/又は、「事後HDF」、あるいは、HDF(事後)の治療タイプによるものであり、それにより、ストレスが削減され、且つ、治療目的がより容易に達成可能となるものである。
言い換えると、特別の規制により、二次メンブレンが十分形成された後に、遅延オンラインHDF治療が始まり、且つ、治療プロセス中における最大限可能な透析機性能を自動的に保証することにより、最大限可能な治療結果が保証されることとなる。
【0017】
本目的のため、置換物流れの一定サイズ規制が実行され、それにより、内科医の事前計算を省くことができ、ユーザ(例えば、看護師)に、最大限可能な生理学の範囲において、治療が連続的に行われるという安心感を提供するものである。
二次メンブレンの形成と、正確な(置換)量による(事後希釈液を用いる)HDFの開始とが、自動的に、安全に、且つ各適用と矛盾せずに、行われるものである。
【0018】
規制、及び/又は、制御が、簡単で且つ安全な方法を実現し、それにより、例えば、主治医又は上級職員が治療変更を実行可能となるまでに必要な時間を、危機的な状況にあるユーザに与えるのである。
該方法及び該装置は、適用誤りを防止し、且つ、過度のクロスレートによる、事後HDF治療中の透析機ブロックのリスクを最小化する。
【0019】
最早二次メンブレンが十分形成されることに注意を払う必要はなく、ユーザは、準備に先立ち、及び/又は、準備の途中で、治療の全部の該当するパラメータ群を選択できる。これは、HDからオンラインHDFへの切り替え時間と置換量とが、自動的に計算され、且つ、切り替えられるためである。
しかして、該方法を実行し、且つ該装置を備えるシステムにより、ユーザを支援し、且つ、安全性を与えるプロセスシーケンスをモニタする。
【0020】
注入量群のみならず、現在のセッティングにより可能である、及び/又は、達成可能であると期待される値群が、連続的に表示される。
比例量である患者関連値は、いつでも個別に調整可能であり、しかして、有利なことには、ユーザは他の重要な治療パラメータに注意を向けることができる。
【0021】
内科医は、患者依存の要領で、最大クロスレートを決定する。
その後、該システムは、必要な全パラメータを独立して制御する。
【0022】
言い換えると、目標(置換)量ではなく、患者依存により、血流に対する固定比率による置換の最大比のみが使用されるということになる。
しかして、如何なる危険もなしに、可能な限りの治療有効性の最大化が達成され、且つ、今まで技術的な理由により、内科医により行われていた事前計算が省略されるものである。
【0023】
より詳しくは、次の装置により、上記利点群が実現され、且つ、上記目的が達成される。
即ち、その装置は、透析機を備え、血液透析及び事後希釈液を用いる血液濾過透析をなすべく設計される体外血液処理装置であって、
該血液透析のデフォルト値群に基づく血液透析を用いる、血液処理を開始すべく、ユーザにより、操作され、及び/又は、読み取られるユーザインタフェースと、
少なくとも1つの、記録/計算ユニットであって、少なくとも1つの血流、限外濾過量、置換量、及び/又は、置換のタイプに係る、現在の値群、及び/又は、比率群を決定するものと、
センサ手段であって、出力信号に基づいて治療進行を記録するものと、
該透析機内における限外濾過率を決定する決定手段と、
決定された限外濾過率に基づき、該透析機内における二次メンブレンの形成時間を決定する決定手段と、
所定時間の経過後に、血液透析から事後希釈液を用いる血液濾過透析へ変化するためのスイッチ手段と、
事後希釈液を用いる血液濾過透析中における、置換量を規制する規制手段とを備える。
【0024】
更に、該目的は、次の方法により達成される。
即ち、該方法は、少なくとも1つの透析機を備える体外血液処理装置を用い、次のステップ群を備える体外血液処理方法であって、
血液透析のデフォルト値群に基づく血液透析を用いる血液処理を開始するステップと、
少なくとも1つの血流、限外濾過量、置換量、及び/又は、置換のタイプに係る、現在の値群、及び/又は、比率群を決定するステップと、
センサ手段の出力信号に基づいて治療進行を記録するステップと、
該透析機内における限外濾過率を決定するステップと、
決定された限外濾過率に基づき、該透析機内における二次メンブレンの形成時間を決定するステップと、
所定時間の経過後に、血液透析から事後希釈液を用いる血液濾過透析へ変化するステップと、
事後希釈液を用いる血液濾過透析中における、置換量を規制するステップとを備える。
【0025】
好ましくは、該所定時間は、該センサ手段において、血流が初回記録された後の時間である。
該所定時間において所定クロスレートが決定されると、該血液透析から該事後希釈液を用いる血液濾過透析への変化が自動的に発生し、該所定クロスレートにおいて、所定処理血流が達成されたものと仮定され、且つ、該二次メンブレンが所定形成状態にあるものと仮定される。
【0026】
好ましくは、該所定時間は最初は約3乃至5分であり、該装置/該方法は、治療の開始後、デフォルト値群及び現在の計算値群に基づいて実際の時間を調節し、且つ、自動的に遅延する態様で、事後希釈液を用いる血液濾過透析を開始すべく、設計されている。
血流の該初回記録は、該センサ手段として空気検出手段上に配設される血流センサを用いて行い、且つ、該二次メンブレン形成の被想定状態は、計算されたクロスレートに由来する。
【0027】
好ましくは、置換量は、該規制手段によりデフォルト適用に従って規制され、置換量は血流の所定最大パーセント分を超えない。
好ましくは、該置換量は、該規制手段により、一定値又は一定量となるよう規制される。
【0028】
好ましくは、所定最大パーセント分は、血流の25乃至30%である。
好ましくは、血流が所定最低量を下回ると、該規制手段により、自動的に置換量が削減され、且つ、ユーザに削減された置換量を知らせるメッセージが発せられる。
【0029】
好ましくは、所定クロスレートに到達すると、該規制手段により、自動的に置換量が制限され、且つ、ユーザに置換量の制限を知らせるメッセージが発せられる。
好ましくは、全ての必要なパラメータ群は、ユーザにより予め設定可能であり、且つ、必要であれば、該装置/該方法は、自動的に最大量群を削減するように設計されている。
【0030】
本発明は、添付図群を参照しながら、好ましい実施の形態を用いて、以下詳細に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】体外血液処理方法及び装置に係る一実施の形態内に配設されたオンライン血液濾過透析(オンラインHDF)であって、事後希釈液、及び/又は、事前希釈液を用いる、血液循環の概略図である。
【
図2】透析機内における二次メンブレン形成を説明する概略図である。
【
図3】透析機内部でのオンラインHDF中における流量比群を図示する概略図である。
【
図4】一実施の形態における体外血液処理方法を概略的で且つ高度に簡素化したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図群に係る以下の記述において、同一要素群、及び/又は、同一構成要素群/要素群、及び/又は、構成要素群であって、同一の効果を有するものは、同様に/同じ符号群を伴って、示され得るものであり、且つ、冗長とならないように便宜的に記述され得る。
後続する実施の形態は、少なくとも機能的に、前の実施の形態に対応するところ、即ち、対応する、機能群、アセンブリ群、及び/又は、プロセスシーケンス群/動作手順群は、等しくカバーされるものであり、差分群のみが便宜的に扱われる。
図1は、体外血液処理方法及び装置に係る一実施の形態内に使用/配設されたオンライン血液濾過透析(オンラインHDF)であって、事後希釈液、及び/又は、事前希釈液を用いる、血液循環の概略図を示す。
【0033】
例えば、患者の腎機能が損なわれるか/停止している場合に、例えば、患者の血液を浄化する透析機のような、体外血液処理装置は、透析機を備える。該透析機は、一方では、それを介して、浄化されるべき患者の血液が流れ、且つ、他方では、それを介して、透析流体/透析溶液が流れ、これらの流れ群は、好ましくは逆流の原理によるものであり、血液からのある溶融物質(例えば、尿素)が透析液内へ移るものである。
【0034】
更に、体外血液処理装置は、次の要素群を備える。即ち、内部に血液ポンプが配設される動脈血循環、静脈血循環、新鮮な透析液を透析機に供給する透析液供給ライン、透析機からの使用済み透析液を排出、及び/又は、除去する透析液排出ライン、置換ライン、及び、置換ライン内を流れる置換物(電解質溶液)を稀釈液ポイントに供給する置換ポンプである。希釈液ポイントは、動脈血循環、及び/又は、静脈血循環内において、透析機の上流側(事前希釈液)又は下流側(事後希釈液)に位置する。
更に、制御部は、例えば所定稀釈液チャネル部中にて、血液の濃度を測定し、置換ポンプにより供給される置換量を制御する。右供給は、測定/評価された血液濃度に基づき、過度の血液濃密化を防止し、且つ、必要とされる液体除去を超え、しかして容積損失を回避する、限外濾過を連続的に補償するためのものである。
【0035】
上述されたタイプの体外血液処理装置は、オンライン血液濾過透析(オンラインHDF)/オンライン血液濾過の原理に従い、置換物を、準備、供給、及び、置換すべく、設計され得る。
オンラインHDF法の場合、置換流体、及び/又は、置換物が、透析液から抽出され、且つ、フィルタの上流にあるいは下流のいずれかに注入される。
【0036】
上述した体外血液処理装置の、システム、構造、構成要素群、及び、機能は、それ自体基本的に公知であり、従ってここに含まれており、更には記述されない。
図1に示された、事後希釈液、及び/又は、事前希釈液を用いる血液循環は、上述した体外血液処理装置の一部をなす。
【0037】
オンラインから、即ち、現在の治療中において、体外血液処理装置の内/上における置換物源2に端を発する、置換物は、オンライン置換ポンプ4から稀釈液ラインを介し、空気検出手段6へ輸送される。
透析機8(本形態では、高流量透析機)からの静脈血ラインは、空気検出手段6内へ開けている。
【0038】
更に、静脈圧変換器10は、空気検出手段6に接続される。
患者より来たる動脈血ラインは、透析機8へ開けており、該血ラインの道筋には、動脈圧変換器12、動脈血ポンプ14、透析機8の上流側動脈血拡張チャンバ上の他の圧力変換器16、及び、事前希釈液のための導入点が、それぞれ配設される。
【0039】
更に、動脈側には、血液凝固を防ぐための装置により制御されるヘパリン添加(抗凝固剤)もが設けられ得る。
図2は、透析機内での二次メンブレン形成の概略説明図を示す。
【0040】
二次メンブレンは、現在の血液処理中に、例えば、血液細胞構成要素、同タンパク質、及び/又は、血漿タンパク質が、透析機メンブレンに付着することによる、透析機8中の中空メンブレン20上の拡散層22として発生する。
二次メンブレンの形成は、メンブレン膜内外圧力TMPと結び付く。
透析機8中におけるメンブレン膜内外圧力TMPは、限外濾過において使用される、血液側と透析液側との間の静水圧勾配である。
【0041】
透析機8の働き及び完全性は、機械側において、動的な入口圧及び出口圧を計測することにより、モニタされ得る。
例えば、線形的圧力低下を仮定することにより、血液側の平均圧及び透析機側の平均圧は、該入口圧及び該出口圧に基づいて、決定可能であり、該入り口圧と該出口圧との差分は、平均メンブレン膜内外圧力TMPとなる。
【0042】
しかして、該平均メンブレン膜内外圧力TMPは、フィルタが堆積物及び二次メンブレンの形成によりブロックされているかどうかを、モニタするために使用され得る。
図2の右側に示されるように、メンブレン膜内外圧力TMPは、まず、HDF透析の開始時及び二次メンブレンの形成中に上昇し、その後、少なくともおよその、高台に達する。
【0043】
開始時におけるメンブレン膜内外圧力TMPの上昇は、透析機のポア群のブロック/目詰まりを伴う。該事象は、例えば、タンパク質が蓄積されることにより、これは実際にフィルタ表面を削減することに相当する。それにより、治療全体の効率化が低下し得るものであるが、二次メンブレン、及び/又は、拡散層の形成による、利点群が得られることになる。利点群とは、例えば、補体活性化の抑制、血栓形成の低減、血小板活性化の抑制、及び、タンパク質吸収の削減である。
本実施の形態では、低血流及び最小限の限外濾過において、十分な二次メンブレンが、治療開始後約3乃至5分の後に生じると想定されている。
【0044】
一例では、約30%の透析液流れ及び事後希釈液によるHDF透析開始時において、透析機入口で約35%のヘマトクリットレベル、及び、透析機出口で約50%のヘマトクリットレベルが生じ得るものである。
これらの量は、例えば、透析機入口で15%から約41%、透析機出口で約59%の血流量が減少すると仮定する場合、二次メンブレンの形成により、及び/又は、メンブレン膜内外圧力TMPの増加に伴い、変化し得る。
【0045】
ヘマトクリット増加は血液量の変動に反比例するのであって、つまり相対的な血液量の減少は、ヘマトクリットレベルの増加により特徴付けられる。
ヘマトクリットレベルを測定することにより、(相対的な)血液量変動を検出可能である。
【0046】
図3は、例えば
図1による透析機8である、透析機内部のオンラインHDF中における、流量比の例示概略図を示す。
更に、
図3中には、符号「32」を以て、第1フィルタステージとしてのDFフィルタ、及び/又は、透析液フィルタが、又、符号「34」を以て、透析液流れ中の第2フィルタステージとしてのHDFフィルタが、示されており、これらのフィルタ群は、同様に、体外血液処理のために装置内に配設される。
【0047】
更に、記号「Q
D」は透析液流れを示し、記号「Q
B」は血流を示し、記号「Q
UF」は限外濾過流れを示し、また、記号「Q
S」は、事前希釈液/事後希釈液の置換物流れを示す。
図3に示されるように、元の透析液全体流れ(本実施の形態において、例えば、Q
D=600[mL/min])は、DFフィルタ32を通るように向けられる。
【0048】
透析液流れQD(例えば520[mL/min]の量)のDFフィルタ32部分の下流は、透析機8を通るように向けられる。
加えて、透析液流れQDの残りの部分は、HDFフィルタ34と事前希釈液/事後希釈液の置換物流れQS(=80[mL/min])として設けられる前記フィルタの下流とを通るように向けられる。
【0049】
透析機8を通る透析液流れの逆流方向には、血流QB(本実施の形態では、例えば、透析機入口でQB=300[mL/min]、及び透析機出口でまだQB=210[mL/min])が透析機8を通って流れる。
この点に基づき、本実施の形態では、クロスレート/限外濾過のクロスレートが、QUF=90[mL/min]又は約27%と計算される。
【0050】
言い換えると、QUF=90[mL/min]の流体が、透析機8のメンブレンを流通(対流輸送)する。
HDFフィルタの右側に示されるように、置換物流れQS(=80[mL/min])が、透析機出口上の血流QB(=210[mL/min])に事後希釈的に加えられ、それにより、静脈血が血流QB(=290[mL/min])で流れ出る結果となる。
【0051】
事後希釈の場合、全限外濾過に対する血液の比率は、25乃至最大30%であるべきであり、且つ同時に、置換量の合計が患者の体重の約三分の一であるべきであるため、一例では、体重81[kg]の患者について、次の計算値が事後希釈について計算される結果となる。
【0052】
体重:81[kg]
体重損失:3[kg]
治療時間:5[h]
81[kg]の30%=27[L]の置換量
27[L]の置換量+3[L]の体重損失=30[L]の正味限外濾過量
30[L]、5[h]の治療時間は、6[L/h]又は100[mL/min]の限外濾過率を生ずる。
【0053】
しかして、限外濾過量全体は3[L]となり、且つ、血流QBは、少なくとも約350[mL/min]となるべきである。
上述したところに従い、本実施の形態に係る体外血液処理方法及び装置において、血液濾過透析処理(好ましくはオンライン血液濾過透析処理)の範囲内における最大クロスレートへの規制に関連して、遅延された治療開始が、実行されるものである。
【0054】
本目的のため、治療に先立ち、且つ、実用規模に基づく例を用いて示される如く、まずは、適用可能な比群が、血流、限外濾過量、置換量及び置換物のタイプに基づき決定/計算されることになる。
【0055】
図4は、該方法を概略的且つ高度に簡素化したフローチャートを示す。
必要な処理/治療パラメータ群を決定し、且つ、治療の形態を選択/決定した後、ステップS01にて、ユーザ(例えば、透析ステーションの看護師)により、治療が開始される。右開始は、血液透析のためのデフォルト値群に基づく血液透析を用いて行われる。
【0056】
続いて、手順はステップS02へ進む。
ステップS02にて、少なくとも血流、限外濾過量、置換量、及び/又は、置換物のタイプの、現在値群、パラメータ群、及び/又は、比群が、決定/調節される。
【0057】
決定された値群は、体外血液処理装置のユーザインタフェースを介して、修正可能である。
この段階で、ユーザは、実際の治療を開始可能とするため、所定血流をできるだけ速やかに成そうとする。
【0058】
ユーザは、全ての値群及びパラメータ群を入力することができるが、必要なら、最大量群は、適切な態様で装置によって減縮される。
手順は、次のステップS03へ進む。
【0059】
ステップS03にて、センサ手段の出力信号に基づいて、治療進行が記録される。
例えば、空気検出装置6内/上の血液センサを用いて、初回の血液量の到着を記録することにより、治療進行は、記録され得る。
【0060】
十分な治療進行が記録されたなら(ステップS03中にて「YES」のとき)、手順は、次のステップS04に進む。
治療が未だ十分に進行していないなら(ステップS03中にて「NO」のとき)、手順は、ステップS02に戻る。
【0061】
ステップS04にて、限外濾過率、及び/又は、限外濾過クロスフローが、透析機8内のメンブレンにより決定される。
言い換えると、クロスレート計算が行なわれる。
【0062】
その後、手順はステップS05へ進む。
ステップS05にて、他のパラメータ群と矛盾しない(即ち、所望の処理血流に係る)クロスレートに達したかどうか、及び、二次メンブレンが十分に形成されたかどうかが、チェックされる。
【0063】
処理血流に到達し、且つ、二次メンブレンが十分に形成されていれば(ステップS05にて「YES」の場合)、手順は、ステップS06に進む。
処理血流に未だ到達していないか、及び/又は、二次メンブレンは未だ十分に形成されていないなら(ステップS05にて「NO」の場合)、手順は、ステップS02に戻る。
【0064】
これに代えて、手順がステップS04に戻るように構成されても良い。
ステップS06にて、事後希釈液、及び/又は、HDF(事後)を用いた、血液濾過透析の遅延開始が行われるが、これは、仕様と計算に従い自動的に実行される。
適切なクロスレートが達成され(つまり、処理血流が達成され)、且つ、二次メンブレンが十分に形成されているなら、HDF(事後)の自動開始、つまり初期血液透析から血液濾過透析への変更には、実際上、血液が空気検出装置6に初めて接触してから、約5分かかるものと想定される。
【0065】
その後、手順はステップS07へ進む。
ステップS07にて、置換量(即ち、事後希釈液を用いて供給された置換物の量)は、デフォルト適用に従って、血流の25乃至最大30%に調節される。
【0066】
例えば、血流が依然として一定である場合は、置換量は、血流の25乃至最大30%の一定値に規制され、そして、血流が変化する場合は、絶えず血流の25乃至最大30%の値に規制される。
該当する場合、血流変化が不十分であるなら、上述したパーセント量を維持すべく、同様に置換量が削減されるものである。
【0067】
この場合、該方法及び該装置は、次のように構成される。即ち、例えば、該装置のユーザインタフェース等を介して、ユーザに、置換量が自動的に削減されたとの指摘を発するものである。
ステップS07に続いて、高度に簡略化された態様で示されるステップS08にて、更なる治療/血液処理が実行され、そうして、該方法、及び/又は、そのプロセス(群)は、ステップS09における治療の終了点で、終了することになる。
【0068】
上述されたように、本発明によれば、透析機の最大限の性能が、使用され且つ維持される。
例えば、ユーザによりパラメータへの最適でない干渉によって、治療結果への計算可能な(重大な)悪化が起こった場合、該システムによる干渉が行われることになる。
【0069】
当該システムによる干渉の原因群は、種々あり得る。
例えば、増加的な専門知識を要求する適用種群の複雑性及び多様性、各個人のキー及びオペレータの資格、信頼できる内科医を即時的に利用できないこと、及び、縮減された治療結果の理由群によるものである。
本発明に係る方法、及び本発明に係る装置は、透析機の性能を直接的に損なう適用群において、ユーザを支援する。
【0070】
必要なパラメータは、プロセス中において自動的に修正される。
加えて、通知も発せられるが、ともかくこのような場合、本発明が置換量を最大係数に制限するので透析機の性能は害されない。
最大係数への制限(つまり、置換物流れの一定値規制)のおかげで、透析機は、最早限界を越えて負担を負うことはない。
【0071】
クロスレートに達したら、置換量は自動的に制限され、しかして、この点がユーザに通知されるものである。
例えば、表示又はメッセージは、次のように発行され得る。
「警告!:注入量が削減されました。治療目的は、最早達成されないかもしれません。」
置換目標量は、ユーザにより、いつでも修正可能である。
同様に、ユーザは、目標に関する警告群を、スイッチオン及びスイッチオフすることができる。
【0072】
本発明は、次の通り理解されねばならない。
即ち、本発明は、既述された各実施の形態群により制限されるものではなく、その変形例、組み合わせ群、該実施の形態群の少なくとも部分群であって当業者に自明のもの、その変形例群、等価な技術群は、特許請求の範囲により定義される発明の保護範囲内に属するものである。