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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3244 20160101AFI20220404BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20220404BHJP
【FI】
F16J15/3244
F16J15/3232 201
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017105966
(22)【出願日】2017-05-29
(65)【公開番号】P2018200089
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-04-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 敬之
(72)【発明者】
【氏名】水田 裕賢
(72)【発明者】
【氏名】安斎 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】吉村 健一
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】田村 嘉章
【審判官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16 - 15/3296
F16J 15/46 - 15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と該軸が挿入される孔との間の環状の隙間の密封を図るための密封装置であって、
前記孔に嵌着される密封装置本体と、
前記軸に取り付けられるスリンガとを備え、
前記密封装置本体は、軸線周りに環状の補強環と、該補強環に取り付けられている弾性体から形成されている軸線周りに環状の弾性体部とを有しており、
前記スリンガは、外周側に向かって延びる前記軸線周りに環状の部分であるフランジ部を有しており、
前記弾性体部は、軸線方向において一方の側に向かって延びる、前記フランジ部に前記軸線方向において他方の側の面に接触する前記軸線周りに環状のリップである端面リップを有しており、
前記スリンガの前記フランジ部の前記他方の側の面には、周方向に一定間隔毎に内周側から外周側の外周端縁に到達するように放射状に設けられた複数の山部および複数の谷部からなると共に、前記フランジ部の前記内周側から前記外周側の前記外周端縁に向かうに連れて次第に溝幅が広く形成された放射状溝が形成されており、
前記スリンガの非回転時において前記端面リップが前記フランジ部に押しつけられたとき、前記端面リップのスリンガ接触部が前記放射状溝の形状に追従するように弾性変形して、前記スリンガ接触部と前記放射状溝とが接触し、前記端面リップと前記フランジ部との密着状態が形成される
ことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記端面リップのうち前記スリンガの前記フランジ部の前記他方の側の面に接触するスリンガ接触部は、前記放射状溝と交差するように接触している
ことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記放射状溝は、前記内周側から前記外周端縁に向かって所定の傾斜角度だけ傾斜している
ことを特徴とする請求項1または2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記放射状溝は、前記内周側から前記外周端縁に向かって曲線で形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の密封装置。
【請求項5】
前記放射状溝は、断面V字状に形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸とこの軸が挿入される孔との間の密封を図るための密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や汎用機械等において、例えば潤滑油等の密封対象物の漏洩の防止を図るために、軸とこの軸が挿入される孔との間を密封するために従来から密封装置が用いられている。このような密封装置においては、シールリップを軸に又は軸に取りけられる環状部材に接触させることにより軸と密封装置との間の密封を図っている。密封のためのこのシールリップの軸との接触は軸に対する摺動抵抗(トルク抵抗)ともなっている。近年、車両等の低燃費化の要求から、密封装置には、軸に対する摺動抵抗の低減が求められており、密封性能を維持又は向上させつつ軸に対する摺動抵抗の低減を図ることができる構造が求められている。
【0003】
密封装置の密封性能の向上にはシールリップの数を増やすことが考えられるが、シールリップの数を増やすことにより摺動抵抗が上昇してしまう。これに対して、シールリップの増加による密封ではなく、シールリップが接触するスリンガに溝を設け、スリンガの回転時の遠心力と溝のポンプ作用により大気側の空気と一緒に油等の密封対象物を密封対象側へ送ることによりシール性を向上させたものがある。また、シールリップとスリンガとの接触部分から滲み出た密封対象物についても、スリンガの回転時の遠心力と溝のポンプ作用により密封対象側へ戻すことができる。このように、溝のポンプ作用によって密封装置の密封性能の向上を図る構造が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-113173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなポンプ作用を利用した従来の密封装置においては、密封性能の向上を図りつつ摺動抵抗の低減を図ることができる。しかしながら、このような密封装置では、スリンガの非回転時には、当該スリンガの溝を伝って密封対象物が大気側へ漏洩してしまう場合がある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転時の摺動抵抗の低減を図るとともに非回転時における密封対象物の静止漏れを防止し得る密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る密封装置は、軸と該軸が挿入される孔との間の環状の隙間の密封を図るための密封装置であって、前記孔に嵌着される密封装置本体と、前記軸に取り付けられるスリンガとを備え、前記密封装置本体は、軸線周りに環状の補強環と、該補強環に取り付けられている弾性体から形成されている軸線周りに環状の弾性体部とを有しており、前記スリンガは、外周側に向かって延びる前記軸線周りに環状の部分であるフランジ部を有しており、前記弾性体部は、軸線方向において一方の側に向かって延びる、前記フランジ部に前記軸線方向において他方の側の面に接触する前記軸線周りに環状のリップである端面リップを有しており、前記スリンガの前記フランジ部の前記他方の側の面には、周方向に一定間隔毎に内周側から外周側の外周端縁に到達するように放射状に設けられた複数の山部および複数の谷部からなる放射状溝が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記端面リップのうち前記スリンガの前記フランジ部の前記他方の側の面に接触するスリンガ接触部は、前記放射状溝と交差するように接触していることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記放射状溝は、前記内周側から前記外周端縁に向かって所定の傾斜角度だけ傾斜していることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記放射状溝は、前記内周側から前記外周端縁に向かって曲線で形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る密封装置において、前記放射状溝は、断面V字状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る密封装置によれば、回転時の摺動抵抗の低減を図るとともに非回転時における密封対象物の静止漏れを防止し得る密封装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置の概略構成を示すための軸線xに沿う断面における断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置の軸線に沿う断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置がハウジングおよび軸孔に挿入された軸に取り付けられた使用状態における密封装置の部分拡大断面図である。
図4図1に示す密封装置におけるスリンガのフランジ部だけを外側から見た状態を示す斜視図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係るスリンガのフランジ部の構成を示す平面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るスリンガのフランジ部の構成を示す断面図である。
図7】本発明の第1の実施の形態に係るスリンガのフランジ部に形成された放射状溝の他の構成例を示す平面図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る密封装置において非回転時、または、回転時の端面リップとスリンガとの接触状態の説明に供する略線図である。
図9】本発明の第1の実施の形態に係る放射状溝の傾斜角度と摩擦係数との関係の説明に供する略線図およびグラフである。
図10】本発明の第2の実施の形態に係るスリンガの構成を示す平面図である。
図11】本発明の第3の実施の形態に係るスリンガの構成のを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1の概略構成を示すための軸線xに沿う断面における断面図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1の軸線xに沿う断面の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置がハウジングおよび軸孔に挿入された軸に取り付けられた使用状態における密封装置の部分拡大断面図である。
【0016】
本実施の形態に係る密封装置1は、軸とこの軸が挿入される孔との間の環状の隙間の密封を図るための密封装置であり、車両や汎用機械において、軸とハウジング等に形成されたこの軸が挿入される孔(軸孔)との間を密封するために用いられる。例えば、エンジンのクランクシャフトとフロントカバーやシリンダブロック及びクランクケースに形成されている軸孔であるクランク孔との間の環状の空間を密封するために用いられる。なお、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1が適用される対象は、上記に限られない。
【0017】
以下、説明の便宜上、軸線x方向において矢印a(図1参照)方向(軸線方向において一方の側)を内側とし、軸線x方向において矢印b(図1参照)方向(軸線方向において他方の側)を外側とする。より具体的には、内側とは、密封対象空間の側(密封対象物側)であり潤滑油等の密封対象物が存在する空間の側であり、外側とは内側とは反対の側である。また、軸線xに垂直な方向(以下、「径方向」ともいう。)において、軸線xから離れる方向(図1の矢印c方向)を外周側とし、軸線xに近づく方向(図1の矢印d方向)を内周側とする。
【0018】
図1に示すように、密封装置1は、後述する取付対象としての孔に嵌着される密封装置本体2と、後述する取付対象としての軸に取り付けられるスリンガ3とを備えている。密封装置本体2は、軸線x周りに環状の補強環10と、補強環10に取り付けられている弾性体から形成されている軸線x周りに環状の弾性体部20とを備えている。スリンガ3は、外周側(矢印c方向)に向かって延びる軸線x周りに環状の部分であるフランジ部31を有している。弾性体部20は、軸線x方向において一方の側(内側、矢印a方向)に向かって延びる、フランジ部31に軸線方向xにおいて他方の側(外側、矢印b方向側)の面と接触する軸線x周りに環状のリップである端面リップ21を有している。
【0019】
スリンガ3のフランジ部31の他方の側(外側)の面には、後述する放射状溝33が周方向にわたって複数設けられている。
【0020】
以下、密封装置1の密封装置本体2及びスリンガ3の各構成について具体的に説明する。
【0021】
密封装置本体2において補強環10は、図1、2に示すように、軸線xを中心又は略中心とする環状の金属製の部材であり、後述するハウジングの軸孔に密封装置本体2が圧入されて嵌合されて嵌着されるように形成されている。補強環10は、例えば、外周側に位置する筒状の部分である筒部11と、筒部11の外側の端部から内周側に延びる中空円盤状の部分である円盤部12と、円盤部12の内周側の端部から内側且つ内周側へ延びる円錐筒状の環状の部分である錐環部13と、錐環部13の内側又は内周側の端部から内周側へ径方向に延びて補強環10の内周側の端部に至る中空円盤状の部分である円盤部14とを有している。補強環10の筒部11は、より具体的には、外周側に位置する円筒状又は略円筒状の部分である外周側円筒部11aと、外周側円筒部11aよりも外側及び内周側において延びる円筒状又は略筒状の部分である内周側円筒部11bと、外周側円筒部11aと内周側円筒部11bとを接続する部分である接続部11cと有している。筒部11の外周側円筒部11aは、密封装置本体2が後述するハウジング100(図3)の軸孔101に嵌着された際に、密封装置本体2の軸線xと軸孔101の軸線との一致が図られるように、軸孔101に嵌め込まれる。補強環10には、略外周側及び外側から弾性体部20が取り付けられており、当該補強環10により弾性体部20を補強している。
【0022】
弾性体部20は、図1,2に示すように、補強環10の円盤部14の内周側の端の部分に取り付けられている部分である基体部25と、補強環10の筒部11に外周側から取り付けられている部分であるガスケット部26と、基体部25とガスケット部26との間において外側から補強環10に取り付けられている部分である後方カバー部27とを有している。ガスケット部26は、より具体的には、図2に示すように、補強環10の筒部11の内周側円筒部11bに取り付けられている。また、ガスケット部26の外径は、後述する軸孔101を画成する内周面101a(図3参照)の径よりも大きくなっている。このため、密封装置本体2が後述する軸孔101に嵌着された場合、ガスケット部26は、補強環10の内周側円筒部11bと軸孔101との間で径方向に圧縮され、軸孔101と補強環10の内周側円筒部11bとの間を密封する。これにより、密封装置本体2と軸孔101との間が密封される。ガスケット部26は、軸線x方向全体に亘って外径が軸孔101の内周面の径よりも大きくなっていなくてもよく、一部において外径が軸孔101の内周面の径よりも大きくなっていてもよい。例えば、ガスケット部26の外周側の面に、先端の径が軸孔101を画成する内周面101aの径よりも大きい環状の凸部が形成されていてもよい。
【0023】
また、弾性体部20において、端面リップ21は、軸線xを中心又は略中心として円環状に基体部25から内側(矢印a方向)に向かって延びており、密封装置1が取付対象において所望の位置に取り付けられた使用状態において、そのリップ先端部であるスリンガ接触部22aが所定の締め代を持ってスリンガ3のフランジ部31に外側から接触するように形成されている。端面リップ21は、例えば、軸線x方向において内側(矢印a方向)に向かうに連れて拡径する円錐筒状の形状を有している。つまり、図1,2に示すように、端面リップ21は、軸線xに沿う断面(以下、単に断面ともいう。)において、基体部25から内側及び外周側に、軸線xに対して斜めに延びている。
【0024】
また、弾性体部20は、ダストリップ28と中間リップ29とを有している。ダストリップ28は、基体部25から軸線xに向かって延びるリップであり、軸線xを中心又は略中心として円環状に基体部25から延びており、後述する密封装置1の使用状態において、先端部が所定の締め代を持ってスリンガ3に外周側から接触するように形成されている。ダストリップ28は、例えば、軸線x方向において外側(矢印b方向)に向かうに連れて縮径する円錐筒状の形状を有している。ダストリップ28は、使用状態において、密封対象物側とは反対側である外側からダストや水分等の異物が密封装置1の内部に侵入することの防止を図っている。ダストリップ28は、密封装置1の使用状態においてスリンガ3と接触しないように形成されていてもよい。
【0025】
中間リップ29は、図2に示すように、基体部25から断面略L字型に内側へ向かって延びるリップであり、軸線x方向を中心または略中心として円環状に基体部25から延びており、基体部25との間に内側に向かって開放する環状の凹部を形成している。中間リップ29は、密封装置1の使用状態においてスリンガ3と接触していない。中間リップ29は、使用状態において、端面リップ21とスリンガ3とが接触するスリンガ接触部22aを越えて密封対象物が内部に滲み入った場合に、この滲み入った密封対象物がダストリップ28側へ流れ出すことの防止を図るために形成されている。中間リップ29は、軸線x方向において内側に向かうに連れて縮径する円錐筒状の形状を有していてもよい。中間リップ29は、その先端がスリンガ3に接触するように形成されていてもよい。
【0026】
上述のように、弾性体部20は、端面リップ21、基体部25、ガスケット部26、後方カバー部27、ダストリップ28、及び中間リップ29を有しており、各部分は一体となっており、弾性体部20は同一の材料から一体に形成されている。
【0027】
上述の補強環10は、金属材から形成されており、この金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。また、弾性体部20の弾性体としては、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。
【0028】
補強環10は、例えばプレス加工や鍛造によって製造され、弾性体部20は成形型を用いて架橋(加硫)成形によって成形される。この架橋成形の際に、補強環10は成形型の中に配置されており、弾性体部20が架橋接着により補強環10に接着され、弾性体部20と補強環10とが一体的に成形される。
【0029】
スリンガ3は、後述する密封装置1の使用状態において軸に取り付けられる環状の部材であり、軸線xを中心又は略中心とする円環状の部材である。スリンガ3は、断面が略L字状の形状を有しており、フランジ部31と、フランジ部31の内周側の端部に接続する軸線x方向に延びる筒状又は略筒状の筒部34とを有している。
【0030】
フランジ部31は、具体的には、筒部34から径方向に延びる中空円盤状の又は略中空円盤状の内周側円盤部31aと、内周側円盤部31aよりも外周側において広がっている径方向に延びる中空円盤状の又は略中空円盤状の外周側円盤部31bと、内周側円盤部31aの外周側の端部と外周側円盤部31bの内周側の端部とを接続する接続部31cとを有している。外周側円盤部31bは、内周側円盤部31aよりも軸線x方向において外側に位置している。なお、フランジ部31の形状は、上述の形状に限られるものではなく、適用対象に応じて種々の形状とすることができる。例えば、フランジ部31は、内周側円盤部31a及び接続部31cを有しておらず、外周側円盤部31bが筒部34まで延びており筒部34に接続しており、筒部34から径方向に延びる中空円盤状の又は略中空円盤状の部分であってもよい。
【0031】
スリンガ3が端面リップ21に接触する部分であるリップ接触部32は、フランジ部31において、外周側円盤部31bの外側に面する面である外側面31dに位置されている。外側面31dは径方向に広がる平面に沿う面であることが好ましい。
【0032】
図4は、図1に示す密封装置1におけるスリンガ3のフランジ部31(特に外周側円盤部31b)だけを外側から見た状態を示す斜視図である。図5は、本発明の第1の実施の形態に係るスリンガ3のフランジ部31(外周側円盤部31b)の構成を示す平面図である。図6は、本発明の第1の実施の形態に係るスリンガ3のフランジ部31(外周側円盤部31b)の構成を示す断面図である。図4乃至図6に示すように、フランジ部31の外周側円盤部31bにおける外側面31dには、内側に凹む凹部からなる複数の放射状溝33が形成されている。これら複数の放射状溝33の存在により、スリンガ3が回転した際に、当該複数の放射状溝33が設けられている領域(以下、これを「振切領域」ともいう。)において潤滑油等の密封対象物を遠心力によって外周側へ振り切る振切作用(振切効果)を発生させることが可能となる。
【0033】
フランジ部31の外側面31dにおいて、放射状溝33は、リップ接触部32よりも内周側の内周端縁31nから当該リップ接触部32よりも外周側の外周端縁31eに到達するように放射状に設けられている。特に、放射状溝33は、内周端縁31nから外周端縁31eまで直線的に延びている。この場合、端面リップ21のスリンガ接触部22aは、複数の放射状溝33を交差して横切るような位置で接触されるため、振切領域の中に常に位置することになる。
【0034】
具体的には、フランジ部31の外側面31dには、リップ接触部32よりも内周側の内周端縁31nから当該リップ接触部32よりも外周側の外周端縁31eに到達した状態で、周方向へ一定間隔毎に直線的で放射状に延びる複数の山部33yが形成されている。またフランジ部31の外側面31dには、互いに隣接する複数の山部33y間の中心に位置し、内周端縁31nから外周端縁31eに到達した状態で、周方向へ一定間隔毎に直線的で放射状に延びる複数の谷部33tが形成されている。
【0035】
この場合、山部33yは、1つの放射状溝33、および、これと隣接する隣の放射状溝33の双方における山部として機能する。また、谷部33tは、1つの放射状溝33毎に1つ設けられている。すなわち、放射状溝33は、2つの山部33yと1つの谷部33tにより構成されている。この場合、放射状溝33は、周方向に12個設けられている。ただし、これに限るものではなく、放射状溝33の山部33yは、1つの放射状溝33毎にそれぞれ2つ有していてもよく、放射状溝33の個数についても、振切作用を働かせる程度に応じて12個より多くてもよく、また少なくてもよい。
【0036】
この放射状溝33は、互いに隣接する2つの山部33yと、その中心に位置する1つの谷部33tとにより断面略V字状の断面形状を有している。放射状溝33のV字を形成する内側の角度を内角αと定義した場合、その内角αとしては約175度~179.5度程度であればよく、少なくとも例えば170度以上かつ180度未満であればよい。ただし、放射状溝33の断面形状は、V字状に限定されるものではなく、例えば略U字状等であってもよい。
【0037】
ここで、山部33yの高さは、フランジ部31の外側面31dと同じである一方、谷部33tの高さはフランジ部31の外側面31dよりも低くなっている。したがって放射状溝33の山部33yとフランジ部31の外側面31dとは面一である。ただし、これに限るものではなく、谷部33tの高さがフランジ部31の外側面31dと同じであって、山部33yの高さがフランジ部31の外側面31dより高くてもよい。
【0038】
さらに、放射状溝33の山部33yおよび谷部33tは、フランジ部31の外側面31dにおいて内周側から外周側へ向かって(軸線xとは垂直な方向へ)軸線xを中心とした放射状に延びているが、これに限るものではない。図7は、本発明の第1の実施の形態に係るスリンガ3のフランジ部31に形成された放射状溝33の他の構成例を示す平面図である。図7に示すように、仮に、フランジ部31の内周端縁31nに対する接線(図示せず)と平行に沿うように放射状溝33が存在する場合を想定したとき、そこから放射状溝33が当該接線とは垂直な方向へ向かって次第に起き上がるようにしたときの傾斜の角度を傾斜角度βと定義すると、任意の傾斜角度βで内周側から外周側へ直線的に向かう放射状溝33が形成されていてもよい。ただし、傾斜角度βが0度の場合については、放射状溝33が内周側から外周側へ向かって放射状に延びることにはならないために除外する。ここで、放射状溝33の傾斜角度βが接線とは垂直な90度未満の場合、遠心力による振切作用に加えて所謂ポンプ作用についても生じることになる。
【0039】
また、スリンガ3において、筒部34は、図2に示すように、少なくとも部分的に、円筒状又は略円筒状の部分である円筒部35を有しており、この円筒部35は軸に嵌着可能に形成されている。つまり、円筒部35が軸に締り嵌め可能となるように、円筒部35の内径が軸の外周面の径よりも小さくなっている。スリンガ3は、円筒部35が軸に締り嵌めされることにより固定されるものに限られず、筒部34において軸に接着されて固定されるものであってもよく、他の公知の固定方法によって軸に固定されるものであってもよい。なお、筒部34は、その全体が円筒部35によって形成されているものであってもよい。
【0040】
スリンガ3は、金属材料を基材として作られており、例えば、SPCC(冷間圧延鋼)を基材とし、SPCCにリン酸塩皮膜処理が施されて防錆処理がなされて作られている。リン酸塩皮膜処理としては、例えばリン酸亜鉛皮膜処理がある。防錆性能の高いスリンガ3により、端面リップ21に対する摺動部であるフランジ部31のリップ接触部32に錆が発生することを抑制することができ、端面リップ21の密封機能や密封性能を長く維持することができる。また、錆が発生することにより、放射状溝33の形状が変化することを抑制することができ、放射状溝33の発揮する振切効果の低減を抑制することができる。スリンガ3の基材としては、ステンレス等の耐錆性、防錆性に優れている他の金属が用いられてもよい。また、スリンガ3の基材の防錆処理は、金属メッキ等の他の処理であってもよい。
【0041】
次いで、上述の構成を有する密封装置1の作用について説明する。図3に示したようにハウジング100は、例えばエンジンのフロントカバー、又はシリンダブロック及びクランクケースであり、軸孔101は、フロントカバー、又はシリンダブロック及びクランクケースに形成されたクランク孔である。また、軸102は、例えば、クランクシャフトである。
【0042】
図3に示したように、密封装置1の使用状態において、密封装置本体2は軸孔101に圧入されて軸孔101に嵌着されており、スリンガ3は軸102に締り嵌めされて軸102に取り付けられている。より具体的には、補強環10の外周側円筒部11aが軸孔101の内周面101aに接触して、密封装置本体2の軸孔101に対する軸心合わせが図られ、また、弾性体部20のガスケット部26が軸孔101の内周面101aと補強環10の内周側円筒部11bとの間で径方向に圧縮されてガスケット部26が軸孔101の内周面101aに密着して、密封装置本体2と軸孔101との間の密封が図られている。また、スリンガ3の円筒部35が軸102に圧入され、円筒部35の内周面35aが軸102の外周面102aに密着し、軸102にスリンガ3が固定されている。
【0043】
密封装置1の使用状態において、弾性体部20の端面リップ21が、その内周面22の先端21a側の部分であるスリンガ接触部22aにおいて、スリンガ3のフランジ部31の外周側円盤部31bの外側面31dの部分であるリップ接触部32と接触するように、密封装置本体2とスリンガ3との間の軸線x方向における相対位置が決められている。また、ダストリップ28は先端側の部分においてスリンガ3の筒部34に外周側から接触している。ダストリップ28は、例えば、スリンガ3の円筒部35の外周面35bに接触している。
【0044】
このように、密封装置1の使用状態において、端面リップ21は、スリンガ接触部22aにおいて、フランジ部31のリップ接触部32と摺動可能に接触しており、端面リップ21及びスリンガ3は、スリンガ接触部22a及びリップ接触部32を越えて密封対象物側からフランジ部31と端面リップ21との間の空間である挟空間Sに潤滑油等の密封対象物が滲み出ることの防止を図っている。また、ダストリップ28はスリンガ3の筒部34が摺動可能に筒部34に接触しており、外部から内部への異物の進入の防止を図っている。
【0045】
また、密封装置1の使用状態において、スリンガ3のフランジ部31の外周側円盤部31bに形成された複数の放射状溝33は、軸(スリンガ3)が回転した場合に振切作用をもたらす。すなわち、スリンガ3(軸102)の回転により、フランジ部31と端面リップ21との間の挟空間Sにおいて、スリンガ接触部22a及びリップ接触部32近傍の領域に複数の放射状溝33による振切作用が生じる。
【0046】
この振切作用により、密封対象物側から密封対象物が挟空間Sに滲み出た場合であっても、滲み出た密封対象物が挟空間Sからスリンガ接触部22a及びリップ接触部32を越えて密封対象物側に戻される。このように、スリンガ3のフランジ部31に形成された複数の放射状溝33が生ずる振切作用により、挟空間Sへの密封対象物の滲み出が抑制されている。
【0047】
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1において非回転時、または、回転時の端面リップ21とスリンガ3との接触状態の説明に供する略線図である。図8(A)に示すように、密封装置1において、スリンガ3の非回転時では、端面リップ21が所定の締め代でフランジ部31の外側面31dに押し付けられたとき、放射状溝33の山部33yおよび谷部33tにより形成された断面V字の形状に追従するように端面リップ21のスリンガ接触部22aが弾性変形し、リップ接触部32との密着状態が形成される。スリンガ3の非回転時においては、端面リップ21のスリンガ接触部22aと、フランジ部31のリップ接触部32との密着状態が形成されることにより、密封対象物の挟空間Sに対する滲み出しを防止し、静止漏れを抑制することができる。
【0048】
ここで、端面リップ21の締め代や、放射状溝33の内角α、端面リップ21の材質等の他の種々の要因によって端面リップ21のスリンガ接触部22aとフランジ部31のリップ接触部32との密着状態は変化するため、所定の締め代において密着可能な条件が満たされていることを前提とする。
【0049】
したがって、スリンガ3の非回転時においては、端面リップ21のスリンガ接触部22aとフランジ部31のリップ接触部32との接触面の密着状態が維持されているため、密封対象物側から密封対象物が挟空間Sに滲み出すことを未然に防止し得、ひいては、狭空間Sから密封対象物がダストリップ28から大気側へ漏洩することを防止することができる。すなわち、密封装置1においては、非回転時における密封性能を維持することができる。
【0050】
一方、図8(B)に示すように、密封装置1において、スリンガ3の回転時(アイドリング回転状態を含む)では、フランジ部31の回転により端面リップ21のスリンガ接触部22aが断面V字の形状に追従できなくなり、山部33yおよび谷部33tから端面リップ21が矢印の方向へ離間して浮き上がる。
【0051】
しかしながら、フランジ部31の回転時には複数の放射状溝33による振切作用が働いているため、密封対象物側から狭空間Sに滲み出た密封対象物は、振切領域の振切作用により密封対象物側へ戻されることになる。この場合、端面リップ21のスリンガ接触部22aがフランジ部31のリップ接触部32から離間しているため、摺動抵抗が格段に低減され、低トルク化を実現することができる。すなわち、密封装置1においては、回転時における密封性能を維持しながらも低トルク化を実現することができる。
【0052】
このように、本発明の第1の実施の形態に係る密封装置1によれば、回転時の密封対象物の滲み出を抑制し、かつ、回転時の摺動抵抗の低減を図るとともに、非回転時における密封対象物の静止漏れを防止することができる。
【0053】
<第1の実施の形態に対応した実施例>
本発明の密封装置1において、上述した放射状溝33の傾斜角度βを0度~90度までの範囲で変化させた場合に、端面リップ21のスリンガ接触部22aとフランジ部31のリップ接触部32との間の摩擦係数μについて調査した。図9は、傾斜角度βと摩擦係数μとの関係を表したグラフである。
【0054】
この計測結果では、傾斜角度βが大きくなるほど、すなわち内周端縁31nの接線に沿う状態から放射状溝33が次第に起き上がり、当該放射状溝33が軸線xと垂直に近い状態に近付くほど摩擦係数μが低減するという傾向が示されている。この場合、傾斜角度βが30度を越えると摩擦係数μはほぼ一定となることが分かった。
【0055】
したがって、密封装置1では、放射状溝33の傾斜角度βが少なくとも30度以上であることが好ましい。また、密封装置1では、放射状溝33の傾斜角度βが約45度近傍のとき、摩擦係数μが極小値を取るので、傾斜角度βが40度以上50度以下であることが更に好ましい。更に、願わくば、放射状溝33の傾斜角度βが45度であれば理想的である。
【0056】
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態においては、スリンガ3のフランジ部31に渦巻き状の放射状溝43が設けられていることを特徴とする。図10に示すように、本発明の第2の実施の形態に係るスリンガ3のフランジ部31は、上述の本発明の第1の実施の形態に係るスリンガ3のフランジ部31と基本構造が同じであるが、内周側から外周側へ向かって直線的に延びる複数の放射状溝33に代えて、内周側から外周側へ向かって曲線的に渦巻き状に延びる複数の放射状溝43を有している点が異なる。
【0057】
この場合、第1の実施の形態における複数の放射状溝33とは異なり、内周側から外周側へ向かって曲線的に渦巻き状に延びる複数の放射状溝43の存在により、スリンガ3の外周側円盤部31bが軸回転方向(図中反時計回り方向)に回転した際、当該複数の放射状溝43が設けられている領域において振切作用に加えてポンプ作用を発生させることが可能である。なお、放射状溝43は渦巻き状に限らず、円状等の曲線であってもよい。この場合、複数の放射状溝43が設けられている領域では、振切作用およびポンプ作用が発生すると考えられるため、以下、振切ポンプ領域ともいう。
【0058】
放射状溝43は、フランジ部31の外周側円盤部31bにおいて、リップ接触部32よりも内周側の内周端縁31nから当該リップ接触部32よりも外周側の外周端縁31eにまで、渦巻き状の曲線で到達するような放射状に設けられている。すなわち、放射状溝43は、軸回転方向(図中反時計回り方向)に対して求心方向へ延びている。この場合も、端面リップ21のスリンガ接触部22aは、複数の放射状溝43を交差して横切るような位置で接触されるため、振切ポンプ領域の中に位置することになる。
【0059】
放射状溝43は、具体的には、フランジ部31の外周側円盤部31bには、リップ接触部32よりも内周側の内周端縁31nから当該リップ接触部32よりも外周側の外周端縁31eに到達した状態で、周方向へ一定間隔毎に曲線で放射状に延びる複数の山部43yが形成されている。またフランジ部31の外周側円盤部31bには、互いに隣接する複数の山部43y間の中心に位置し、内周端縁31nから外周端縁31eに到達した状態で、周方向へ一定間隔毎に曲線で放射状に延びる複数の谷部43tが形成されている。ここで、山部43yおよび谷部43tの曲率は内周側から外周側へ向かうに連れて同様の比率で次第に大きくなり、放射状溝43の溝幅が内周側よりも外周側に向かって拡がっている。ただし、これに限るものではなく、放射状溝43の溝幅が内周側よりも外周側に向かって拡がることなく一定であってもよい。
【0060】
なお、この場合も、放射状溝43は、周方向に12個設けられているが、これに限るものではなく、放射状溝43が振切作用およびポンプ作用を働かせる程度に応じて12個より多くてもよく、また少なくてもよい。なお、放射状溝43は、放射状溝33と同様に断面略V字状の断面形状を有し、その内角α等についても放射状溝33と同様である。
【0061】
本発明の第2の実施の形態によれば、振切作用に加えてポンプ作用も働くため、回転時の密封対象物の滲み出を抑制し、かつ、回転時の摺動抵抗の低減を図るとともに、非回転時における密封対象物の静止漏れを防止することができる。
【0062】
<第3の実施の形態>
次いで、本発明の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態においては、図11に示すように、第1の実施の形態におけるスリンガ3のフランジ部31に設けられた放射状溝33に加え、外側面31dにおいて当該放射状溝33よりも内周側の領域に渦巻き状に形成された複数のネジ溝50が設けられている点が異なる。すなわち、フランジ部31の外側面31dには、複数の放射状溝33による振切領域、および、複数のネジ溝50によるポンプ領域の双方が設けられている。
【0063】
この場合のスリンガ3のフランジ部31は、複数の放射状溝33の内周端縁31nと、複数のネジ溝50における外周側端50eとが接続された構成を有する。ここでネジ溝50は、軸回転方向(図中反時計回り方向)に対して求心方向へ延びている。
【0064】
このネジ溝50は、内周側端50nから外周側端50eにかけて渦巻き状の曲線で形成されており、振切効果を発生させる振切領域の放射状溝33よりも更に内周側においてポンプ効果を発生させるポンプ領域を構成している。なお、ネジ溝50は、内周側端50nから外周側端50eにかけて一定の溝幅を有しているが、これに限るものではなく、次第にその溝幅が狭くなっていてもよく、または、溝幅が内周側端50nから外周側端50eにかけて太くなっていてもよい。
【0065】
これにより、放射状溝33の振切領域よりも更に内周側から外周側へ流体を送り出すように複数のネジ溝50によるポンプ領域が広がっているため、放射状溝33の振切領域よりもさらに内周側に密封対象物が侵入した場合であっても、複数のネジ溝50によるポンプ作用が働いて放射状溝33に導くことができるので、複数のネジ溝50および複数の放射状溝33の双方の作用により密封対象物を密封対象物側に戻すことができる。
【0066】
本発明の第3の実施の形態によれば、スリンガ3における複数の放射状溝33による振切作用、および、複数のネジ溝50によるポンプ作用を利用することにより、回転時の密封対象物の滲み出をフランジ部31の外周側から内周側まで広範囲にわたって抑制し得、かくして、回転時の摺動抵抗の低減を図るとともに非回転時における密封対象物の漏洩を防止することができる。
【0067】
<他の実施の形態>
上述した第1乃至第3の実施の形態においては、直線的に延びる放射状溝33、および、曲線で延びる放射状溝43を対象とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、内周端縁31nから外周端縁31eにまで放射状に到達するのであれば、波形状、ジグザグ状等のその他種々の形状で延びる放射状溝であってもよい。
【0068】
また、上述した第1乃至第3の実施の形態においては、密封装置1において、弾性体部20は、ダストリップ28及び中間リップ29を有しているとしたが、弾性体部20は、ダストリップ28及び中間リップ29を有していなくてもよく、ダストリップ28及び中間リップ29のいずれか一方のみを有していてもよい。
【0069】
また、第1乃至第3の実施の形態に係る密封装置1は、エンジンのクランク孔に適用されるものとしたが、本発明に係る密封装置の適用対象はこれに限られるものではなく、他の車両や汎用機械、産業機械等、本発明の奏する効果を利用し得るすべての構成に対して、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1……密封装置、2……密封装置本体、3……スリンガ、10……補強環、11……筒部、11a……外周側円筒部、11b……内周側円筒部、11c……接続部、12,14……円盤部、13……錐環部、20……弾性体部、21……端面リップ、21a……先端、21b……根元、22……内周面、22a……スリンガ接触部、25……基体部、26……ガスケット部、27……後方カバー部、28……ダストリップ、29……中間リップ、31……フランジ部、31a……内周側円盤部、31b……外周側円盤部、31c……接続部、31d……外側面、32……リップ接触部、33……放射状溝、34……筒部、35……円筒部、35a……内周面、35b……外周面、100……ハウジング、101……軸孔、101a……内周面、102……軸、102a……外周面、S……挟空間、x……軸線。
図1
図2
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図11