(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】タンクの構築方法
(51)【国際特許分類】
E04H 7/06 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
E04H7/06 303
(21)【出願番号】P 2017197617
(22)【出願日】2017-10-11
【審査請求日】2020-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】小松 駿也
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-031366(JP,A)
【文献】特開昭56-156371(JP,A)
【文献】特開昭57-130676(JP,A)
【文献】特開昭56-004577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 7/00 - 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎版の上に底部ライナーを敷設し、敷設した前記底部ライナーの上に底部保冷材を打設する底部保冷工事を行うタンクの構築方法であって、
前記底部保冷工事は、
前記基礎版の上に前記底部ライナーとして敷設された複数の底部ライナープレートのうち、一部を除き、隣り合う前記底部ライナープレート同士を溶接して、前記底部ライナープレートの溶接領域と非溶接領域とを形成する第1底部ライナープレート溶接工程と、
前記第1底部ライナープレート溶接工程の後、前記溶接領域の上に前記底部保冷材を打設する第1底部保冷材打設工程と、
前記第1底部保冷材打設工程の後、前記非溶接領域において隣り合う前記底部ライナープレート同士を溶接する第2底部ライナープレート溶接工程と、
前記第2底部ライナープレート溶接工程の後、前記非溶接領域の上に前記底部保冷材を打設する第2底部保冷材打設工程と、を有する、ことを特徴とするタンクの構築方法。
【請求項2】
前記第1底部ライナープレート溶接工程は、
前記基礎版の中心を通る直線状に前記溶接領域の第1領域を形成する第1溶接工程と、
前記第1溶接工程の後、前記第1領域によって前記基礎版の上で分けられた領域のそれぞれで前記溶接領域の第2領域を形成する第2溶接工程と、を有し、
前記第1領域と前記第2領域との間に、前記非溶接領域が形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のタンクの構築方法。
【請求項3】
前記第1領域は、前記基礎版の中心で直線が交差するように形成される、ことを特徴とする請求項2に記載のタンクの構築方法。
【請求項4】
前記非溶接領域において、前記第1領域の上に、前記第2領域の端部が重っており、
前記第2底部ライナープレート溶接工程では、前記第2領域の端部を前記第1領域の上に隅肉溶接する、ことを特徴とする
請求項2又は請求項3に記載のタンクの構築方法。
【請求項5】
前記第1底部保冷材打設工程では、前記第1領域の上に重なる前記第2領域の端部に向かって、前記第2領域の上に前記底部保冷材を打設する、ことを特徴とする請求項4に記載のタンクの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内槽と外槽とを有する二重殻構造のタンクは、LNG(液化天然ガス)やLPG(液化石油ガス)等の低温液体の貯蔵に用いられている。下記特許文献1には、金属製の内槽とコンクリート製の外槽とを有する円筒型タンクの構築方法が開示されている。この円筒型タンクの構築方法は、円筒型タンクの工期の短縮を図るため、金属製の内槽とコンクリート製の外槽とを同時に施工している。
【0003】
具体的に、この円筒型タンクの構築方法は、外槽の底部の外周縁部で外槽の側壁を組み上げていく工程と、外周縁部以外の前記外槽の底部上で外槽の屋根部を組み立てる工程と、外槽の側壁の組み上げ途中で、外槽の底部上にある外槽の屋根部をジャッキアップ装置により上昇させ、外槽の側壁に保持させる工程と、上昇により生じた外槽の屋根部の下方の空間で、外槽の屋根部と独立して内槽を組み立てる工程と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなタンクは、底部に保冷材を敷設すると共に、内外槽間に保冷材を充填することで、低温液体を貯蔵可能な構成となっている。このタンクの底部保冷材は、基礎版の上に敷設された底部ライナーの上に打設される。底部ライナーは、例えば、基礎版の上に溶接により固定されているが、その上に底部保冷材を打設していくと、底部ライナーに皺が寄って浮き上がり歪みが発生してしまうことがある。このような浮き上がり歪みが発生すると、浮き上がった底部ライナーを切除し、平らになるように補修しなければならず、手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、底部保冷材を打設するときの底部ライナーの浮き上がり歪みの発生を抑制することができるタンクの構築方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、基礎版の上に底部ライナーを敷設し、敷設した前記底部ライナーの上に底部保冷材を打設する底部保冷工事を行うタンクの構築方法であって、前記底部保冷工事は、前記基礎版の上に前記底部ライナーとして敷設された複数の底部ライナープレートのうち、一部を除き、隣り合う前記底部ライナープレート同士を溶接して、前記底部ライナープレートの溶接領域と非溶接領域とを形成する第1底部ライナープレート溶接工程と、前記第1底部ライナープレート溶接工程の後、前記溶接領域の上に前記底部保冷材を打設する第1底部保冷材打設工程と、前記第1底部保冷材打設工程の後、前記非溶接領域において隣り合う前記底部ライナープレート同士を溶接する第2底部ライナープレート溶接工程と、前記第2底部ライナープレート溶接工程の後、前記非溶接領域の上に前記底部保冷材を打設する第2底部保冷材打設工程と、を有する、という手法を採用する。
【0008】
また、本発明においては、前記第1底部ライナープレート溶接工程は、前記基礎版の中心を通る直線状に前記溶接領域の第1領域を形成する第1溶接工程と、前記第1溶接工程の後、前記第1領域によって前記基礎版の上で分けられた領域のそれぞれで前記溶接領域の第2領域を形成する第2溶接工程と、を有し、前記第1領域と前記第2領域との間に、前記非溶接領域が形成される、という手法を採用する。
【0009】
また、本発明においては、前記第1領域は、前記基礎版の中心で直線が交差するように形成される、という手法を採用する。
【0010】
また、本発明においては、前記非溶接領域において、前記第1領域の上に、前記第2領域の端部が重っており、前記第2底部ライナープレート溶接工程では、前記第2領域の端部を前記第1領域の上に隅肉溶接する、という手法を採用する。
【0011】
また、本発明においては、前記第1底部保冷材打設工程では、前記第1領域の上に重なる前記第2領域の端部に向かって、前記第2領域の上に前記底部保冷材を打設する、という手法を採用する。
【0012】
また、本発明は、基礎版上に敷設された底部ライナーと、前記底部ライナーの上に打設された底部保冷材と、を有するタンクであって、前記底部ライナーは、複数の底部ライナープレートを有し、前記複数の底部ライナープレートは、前記基礎版の中心で直線が交差するように接合された第1領域と、前記第1領域によって前記基礎版の上で分けられた領域のそれぞれで接合されると共に、その端部が前記第1領域の上に重なる第2領域と、を形成し、前記第2領域の端部が前記第1領域の上に接合されている、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基礎版の上に底部ライナーを敷設するときに、溶接領域と非溶接領域とを形成し、底部保冷材を打設するときに蓄積される歪みを、非溶接領域において吸収させるため、底部ライナーの浮き上がり歪みの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態における構築方法の第1工程を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態における構築方法の第2工程を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施形態における構築方法の第3工程を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施形態における基礎版の上に敷設された底部ライナーを示す平面図である。
【
図5】本発明の実施形態における底部保冷工事の第1底部ライナープレート溶接工程を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施形態における底部保冷工事の第1底部保冷材打設工程を示す説明図である。
【
図7】本発明の実施形態における底部保冷工事の(a)第2底部ライナープレート溶接工程と、(b)第2底部保冷材打設工程とを示す説明図である。
【
図8】本発明の実施形態における構築方法の第4工程を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施形態における構築方法の第5工程を示す説明図である。
【
図10】本発明の実施形態における構築方法の第6工程を示す説明図である。
【
図11】本発明の実施形態における底部保冷工事の第1底部保冷材打設工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のタンク及びタンクの構築方法について図面を参照して説明する。以下の説明では、LNGを貯蔵する地上式のPC(プレストレスコンクリート)二重殻貯槽の構築方法を例示する。なお、以下の図面において、説明の便宜上、いくつかの部分が拡大され又は省略されており、図面に表されている各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態における構築方法の第1工程を示す説明図である。なお、
図1(a)は、全体図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示す領域Aの拡大図である。
先ず、本手法では、
図1(a)に示すように、略円板状の基礎版1を構築する(基礎版構築工程)。基礎版1は、コンクリート製であり、その外周縁部には、内槽アンカーストラップ4、コーナーアングル100を埋設する。
【0017】
次に、本手法では、基礎版1上に外槽2を構築する(外槽構築工程)。外槽2は、
図1(a)に示すように、略円板状の基礎版1の周縁部に構築する。外槽2は、コーナーアングル100の上端に外槽側板3(側板)を溶接により組み上げつつ、この外槽側板3を内型枠としてコンクリート5を打設することで構築されるPC(プレストレスコンクリート)壁である。このため、外槽2の内壁面2aには、複数の外槽側板3が配列される。
【0018】
図1(b)に示すように、コーナーアングル100は、断面視L字状に形成されている。このコーナーアングル100の下部には、その上端に溶接される外槽側板3が傾倒しないように基礎版1に対して引き抜き荷重を作用させる頭付スタッド101が接合されている。なお、コーナーアングル100の背面には、外型枠200を設置するためのセパレータコーン102を接合してもよい。
【0019】
外槽側板3は、長方形の板状に形成されている。この外槽側板3のタンク内側を向く表面3aと反対側の裏面3bには、スティフナー110が接合されている。スティフナー110は、コンクリート5に埋設される。また、外槽側板3の裏面3bには、外型枠200を設置するためのセパレータコーン120が接合されている。外型枠200は、セパレータコーン120に接続されたセパレータ201を介して外槽側板3に連結される。
【0020】
外槽側板3は、スティフナー110として、横スティフナー110Aと、縦スティフナー110Bと、を有する。横スティフナー110Aは、水平方向に延在するようにコンクリート5に埋設され、プレストレスによる外槽側板3のせん断抵抗を上げる。縦スティフナー100Bは、鉛直方向に延在するようにコンクリート5に埋設され、コンクリート5の打設圧による外槽側板3のタンク内側への膨らみを抑制する。
【0021】
外槽側板3の組み上げと、コンクリート5の打設は、一定の間隔をあけた並行作業となる。これにより、コンクリート5を打設していない高さの外槽側板3の突出部分Pをある一定範囲に抑えることができる。突出部分Pは外槽側板3単体で風荷重を受ける部分であるため、このように突出部分Pを一定範囲に抑えることで、風荷重による外槽側板3の座屈を防止することができる。
【0022】
図2は、本発明の実施形態における構築方法の第2工程を示す説明図である。
本手法では、このような外槽2の組み上げと並行して、基礎版1上に底部ライナー6を敷設する。また、基礎版1の中央部に屋根架台7を組み立てる。また、外槽2の基端部に内槽側板9等を取り込むための工事口8を形成する。また、外槽2の基端部の内側に沿って、内槽側板組立用の門型架台10を複数設置する。門型架台10は、内槽側板9が複数組み合わされてなる円筒状の内槽が基礎版1上に最終的に下ろされるべき領域であるアニュラー領域Xを跨ぐように設置する。
【0023】
門型架台10の下では、アニュラー領域Xにパーライトコンクリートブロックや構造用軽量コンクリートブロック等の保冷構造体12を仮置きする。また、門型架台10の上では、外槽2にジャッキアップ装置19を複数台設置する。具体的には、門型架台10の設置位置よりも上方の外槽2の中段部に、吊側架台70を設置する。吊側架台70は、外槽2に埋め込んだ不図示のアンカープレートに着脱可能に締結固定する。また、門型架台10上で組んでいたナックルプレート11に、被吊側架台80を設置する。
【0024】
被吊側架台80には、ジャッキアップ装置19のジャッキ本体19aを連結する。また、吊側架台70には、ジャッキ本体19aの作動よりストロークするジャッキロッド19bを連結する。このようにジャッキアップ装置19を設置したら、門型架台10からナックルプレート11を吊り上げ、そのジャッキアップによりできた下部空間に、内槽側板9を搬入し、隣り合う内槽側板9同士を溶接して全体で円筒状になるように周方向に繋ぎ合わせる。次に、この内槽側板9の上端部を、ナックルプレート11の下端部に組み付ける。また、ナックルプレート11の上端部は、屋根架台7上で組んでいた内槽屋根14の外周縁部に組み付ける。
【0025】
図3は、本発明の実施形態における構築方法の第3工程を示す説明図である。
その後、ジャッキアップ装置19によって、内槽屋根14、ナックルプレート11及び内槽側板9を含む揚体60を吊り上げたら、
図3に示すように、屋根架台7を撤去し、揚体60のジャッキアップ(内槽側板9の上下幅相当分)と、その揚体60の下端(内槽側板9)への次の内槽側板9の取り付け(溶接)とを交互に繰り返し、吊側のジャッキポイントを上方に盛り替えつつ、内槽側板9の最下段を除く第1の構造物9aを組み立てる。
【0026】
また、この工程中、内槽屋根14上で外槽屋根22を組み立てる。外槽屋根22は、内槽屋根14と不図示の連結材で連結され、内槽屋根14と一体的に組み立てられる。
門型架台10の下では、仮置きした保冷構造体12によるアニュラー部13の保冷工事を行う。アニュラー部13の保冷工事が完了したら、
図3に示すように、アニュラー部13よりもタンク内側に配置されていた門型架台10の脚部10aをアニュラー部13上に挿げ替える。
【0027】
このような挿げ替えによって、アニュラー部13よりもタンク内側には干渉物がなくなるため、基礎版1上の中央部の保冷工事を行うことができる。中央部の保冷工事では、底部ライナー6の上に底部冷熱抵抗緩和材となる底部保冷材39(例えば、パーライトコンクリートブロック)を打設し、その上に泡ガラス40を載置する。更に、その上に不図示のALC(軽量気泡コンクリート)と不図示の内槽底板を順に重ねて敷設する。
続いて、このような基礎版1の底部保冷工事について、
図4~
図7を参照して詳しく説明する。
【0028】
図4は、本発明の実施形態における基礎版1の上に敷設された底部ライナー6を示す平面図である。
底部ライナー6は、
図4に示すように、外アニュラプレート61と、底部ライナープレート62と、内アニュラプレート63と、を有する。外アニュラプレート61は、平面視で扇形に形成されている。外アニュラプレート61の外径側には、その外径側の円弧形状に沿って複数の孔部61aが間隔をあけて形成されている。孔部61aには、上述した内槽アンカーストラップ4が挿通されると共に、内槽アンカーストラップ4の下端部を収容する図示しないアンカーボックスが係合する。
【0029】
外アニュラプレート61は、基礎版1の最外周部1a(外槽2の内側)に沿って円環状に敷設される。円環状に敷設された外アニュラプレート61によって囲まれた基礎版1の中央部1bには、底部ライナープレート62が敷設される。底部ライナープレート62は、平面視で外形輪郭が多角形状に敷設される。円環状に敷設された外アニュラプレート61と多角形状に敷設された底部ライナープレート62との中間隙間部1cには、内アニュラプレート63が敷設される。内アニュラプレート63は、中間隙間部1cを覆う調整用のプレートであり、外アニュラプレート61と底部ライナープレート62とに跨って敷設される。このようにして、基礎版1の全面に、底部ライナー6が敷設される。
【0030】
底部ライナープレート62は、基礎版1の中心Oを通る直線状に接合された第1領域62Aと、第1領域62Aによって基礎版1の上で分けられた領域のそれぞれで接合された第2領域62Bと、を有する。第1領域62Aは、基礎版1の中心Oで直線が交差するように形成されている。本実施形態の第1領域62Aは、基礎版1の中心Oで二本の直線が直角且つ十字に交差するように形成されている。第2領域62Bは、この第1領域62Aで分けられた四つの領域のそれぞれに、四分円状に形成されている。
【0031】
第1領域62Aは、長方形状の底部ライナープレート62(以下、廊下板62aと称する場合がある)が、溶接により直線状に繋ぎ合わされて形成されている。一方、第2領域62Bは、長方形状の二種類の底部ライナープレート62(以下、畳板62b1,廊下板62b2と称する場合がある)が、溶接により繋ぎ合わされて四分円状に形成されている。畳板62b1と、廊下板62b2は、長手方向の向きが直交して敷設されており、十字継手を回避するように接合されている。
【0032】
第1領域62Aと第2領域62Bは、接合部64によって接合されている。接合部64は、第2領域62Bの端部62B1を第1領域62Aの上に隅肉溶接することで形成されている。具体的には、第1領域62Aの上に、第2領域62Bの端部62B1が重なり、その重なった端部62B1が第1領域62Aの上に隅肉溶接されている(所謂、ラップ溶接)。
【0033】
このように敷設された底部ライナープレート62の上には、
図3に示す底部保冷材39が打設される。次に、この基礎版1の底部保冷工事の工程について、
図5~
図7を参照して説明する。
【0034】
図5は、本発明の実施形態における底部保冷工事の第1底部ライナープレート溶接工程を示す説明図である。
基礎版1の底部保冷工事では、先ず、
図5に示す第1底部ライナープレート溶接工程を行う。第1底部ライナープレート溶接工程は、基礎版1の上に底部ライナー6として敷設された複数の底部ライナープレート62のうち、一部を除き、隣り合う底部ライナープレート62同士を溶接して、底部ライナープレート62の溶接領域(第1領域62A,第2領域62B)と非溶接領域65とを形成する工程である。
【0035】
第1底部ライナープレート溶接工程では、先ず、
図5(a)に示すように、基礎版1の中心Oを通る直線状に第1領域62A(溶接領域)を形成する(第1溶接工程)。第1領域62Aは、基礎版1の中心Oで直線が交差するように形成する。
次に、第1底部ライナープレート溶接工程では、
図5(b)に示すように、第1領域62Aによって基礎版1の上で分けられた領域のそれぞれで第2領域62B(溶接領域)を形成する(第2溶接工程)。
【0036】
第2領域62Bは、第1領域62Aによって四分割された領域のそれぞれに四分円状に形成され、その四分円状の半径方向に延びる端部62B1が第1領域62Aの上に重なるように形成される。この第1底部ライナープレート溶接工程では、未だ第2領域62Bの端部62B1が第1領域62Aに溶接されていない。すなわち、第1領域62Aと第2領域62Bとの間に、非溶接領域65が形成される。
【0037】
図6は、本発明の実施形態における底部保冷工事の第1底部保冷材打設工程を示す説明図である。
基礎版1の底部保冷工事では、次に、
図6に示す第1底部保冷材打設工程を行う。第1底部保冷材打設工程は、第1底部ライナープレート溶接工程の後、溶接領域である第2領域62Bの上に底部保冷材39aを打設する工程である。
【0038】
第1底部保冷材打設工程では、
図6(a)に示すように、四つの第2領域62Bのそれぞれの上に底部保冷材39aを打設する。底部保冷材39aを打設する向きは特に限定されないが、本実施形態では、従来技術において底部ライナープレート62の浮き上がり歪みを逃がす構造を取り難いとされた、基礎版1の外周から中心Oに向かって底部保冷材39aを打設するものとする。なお、逆に、基礎版1の中心Oから外周に向かって底部保冷材39aを打設する場合は、
図4に示す中間隙間部1c等で歪みを吸収することが可能である。
【0039】
底部保冷材39aの打設によって、基礎版1の中心Oに向かって蓄積された第2領域62Bの歪みは、
図6(b)のB-B断面に示すように、非溶接領域65において吸収される。すなわち、非溶接領域65では、第2領域62Bの端部62B1が第1領域62Aの上に重なっているため、第2領域62Bの端部62B1が第1領域62Aの上をスライドする(滑る)ことで、第2領域62Bの歪みが吸収される。すなわち、第2領域62Bの端部62B1が第1領域62Aの上に重なる領域が増えて、第2領域62Bの浮き上がり歪みの発生が抑制される。
【0040】
図7は、本発明の実施形態における底部保冷工事の(a)第2底部ライナープレート溶接工程と、(b)第2底部保冷材打設工程とを示す説明図である。
基礎版1の底部保冷工事では、次に、
図6(a)に示す第2底部ライナープレート溶接工程を行う。第2底部ライナープレート溶接工程は、第1底部保冷材打設工程の後、非溶接領域65において隣り合う底部ライナープレート62同士を溶接する工程である。すなわち、第2領域62Bの端部62B1を第1領域62Aの上に隅肉溶接することで、接合部64を形成する。
【0041】
基礎版1の底部保冷工事では、最後に、
図6(b)に示す第2底部保冷材打設工程を行う。第2底部保冷材打設工程は、第2底部ライナープレート溶接工程の後、非溶接領域65の上に底部保冷材39bを打設する工程である。すなわち、第2領域62Bの歪みを吸収するために、底部保冷材39aを打設しなかった残りの領域(非溶接領域65(接合部64)、及び第2領域62Bの端部62B1、並びに第1領域62A)に底部保冷材39bを打設する。
以上により、基礎版1の底部保冷工事が完了する。
【0042】
図8は、本発明の実施形態における構築方法の第4工程を示す説明図である。
本手法では、基礎版1の底部保冷工事の完了後、内槽側板9の最下段を、
図3で組み立てた第1の構造物9aとは別にアニュラー部13上に組み立てる。具体的には、門型架台10の解体後、内槽側板9の最下段をアニュラー部13上に載置したら、隣り合う内槽側板9同士を溶接し、全体で円筒状になるように周方向に繋ぎ合わせ、第2の構造物9bを組み立てる。第2の構造物9bを組み立てたら、基礎版1に設置された内槽アンカーストラップ4を取り付ける。また、外槽2の外部には、昇降階段23を設ける。また、外槽2の内側に、ポンプバレル25を搬入する。
【0043】
図9は、本発明の実施形態における構築方法の第5工程を示す説明図である。
次に、本手法では、
図9に示すように、第1の構造物9aをジャッキダウンし、第1の構造物9aの下端部を第2の構造物9bの上端部に降ろし、第1の構造物9aと第2の構造物9bとを溶接し、内槽30を組み立てる。本手法では、ジャッキアップ装置19による内槽30の組み立てから、内槽30の最下段の組み立てを分離し、内槽30の最下段である第2の構造物9bのアニュラー部13上への固定を前倒しで行っている。したがって、本手法では、例えば1カ月程度かかる内槽30のアニュラー部13上への固定がクリティカルパスとならず、従来手法よりも工期の短縮化を図ることができる。
【0044】
内槽30が完成したら、外槽屋根22は、不図示の連結材による内槽屋根14との連結を解除し、最上段まで組み立てられた外槽2の上端部に据え付ける。また、外槽屋根22に屋根階段24を設ける。また、ポンプバレル25を設置する。
その後、被吊側架台80を取り外してジャッキアップ装置19を撤去する。その後、外槽2の緊張工事を行う。そして、工事口8の閉鎖後、水張りをして耐圧・気密試験を実施する。
【0045】
図10は、本発明の実施形態における構築方法の第6工程を示す説明図である。
最後に、
図10に示すように、内槽30と外槽2との間の内外槽間15に保冷材44を配置し、また、内槽屋根14と外槽屋根22の間にも保冷材44を配置して保冷工事を行い、その後、塗装工事、配管保冷工事を経てLNGタンク50が構築される。
【0046】
このように、上述した本実施形態によれば、基礎版1の上に底部ライナー6を敷設し、敷設した底部ライナー6の上に底部保冷材39を打設する底部保冷工事を行うLNGタンク50の構築方法であって、底部保冷工事は、基礎版1の上に底部ライナー6として敷設された複数の底部ライナープレート62のうち、一部を除き、隣り合う底部ライナープレート62同士を溶接して、底部ライナープレート62の溶接領域(第1領域62A,第2領域62B)と非溶接領域65とを形成する第1底部ライナープレート溶接工程と、第1底部ライナープレート溶接工程の後、溶接領域の上に底部保冷材39aを打設する第1底部保冷材打設工程と、第1底部保冷材打設工程の後、非溶接領域65において隣り合う底部ライナープレート62同士を溶接する第2底部ライナープレート溶接工程と、第2底部ライナープレート溶接工程の後、非溶接領域65の上に底部保冷材39bを打設する第2底部保冷材打設工程と、を有する、という手法を採用することによって、底部ライナー6の浮き上がり歪みの発生を抑制することができる。
【0047】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0048】
図11は、本発明の別実施形態における底部保冷工事の第1底部保冷材打設工程を示す説明図である。なお、
図11において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略している。
図11に示す第1底部保冷材打設工程では、第1領域62Aの上に重なる第2領域62Bの端部62B1に向かって、第2領域62Bの上に底部保冷材39aを打設している。この手法によれば、第2領域62Bの端部62B1に向かって歪みが蓄積されるため、非溶接領域65において歪みを吸収させ易くすることができる。
【0049】
また、
図1に示すように、第1領域62Aの両側から第1領域62Aに向かって底部保冷材39aを打設していけば、第1領域62Aは、一本の直線状であってもよい。なお、この手法では、底部保冷材39aを打設する向きが限定されるため、底部保冷材39aの打設工事に自由度を持たせる場合には、上述した実施形態の
図6(a)に示すように、基礎版1の中心Oで直線が交差するように第1領域62Aを形成することが好ましい。この第1領域62Aによれば、あらゆる方向(少なくともタンク径方向、タンク周方向)において第2領域62Bの歪みを吸収することができる。
【0050】
また、例えば、上記実施形態では、第1底部保冷材打設工程において、第2領域62Bの上に底部保冷材39aを打設したが、第1領域62Aにおける幅が十分に確保されている場合、非溶接領域65を避けつつ第1領域62Aの一部にも底部保冷材39aを打設してもよい。
【0051】
また、例えば、上記実施形態では、本発明をLNGタンクに適用した場合を例示したが、その他の低温液体(例えば、LPG等)を貯蔵するタンクにおいても本発明を適用可能である。
【0052】
また、例えば、本発明は、ジャッキアップ装置を用いたタンクの構築方法だけでなく、エアレイジング工法を用いたタンクの構築方法にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 基礎版
39 底部保冷材
39a 底部保冷材
39b 底部保冷材
62 底部ライナープレート
62A 第1領域
62B 第2領域
62B1 端部
65 非溶接領域
O 中心