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  • 特許-布帛および熱防護衣料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】布帛および熱防護衣料
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/04 20060101AFI20220404BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20220404BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20220404BHJP
   A41D 31/06 20190101ALI20220404BHJP
   A62B 17/00 20060101ALI20220404BHJP
   D04B 21/04 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
D04B1/04
A41D13/002
A41D31/00 502D
A41D31/00 503F
A41D31/06
A62B17/00
D04B21/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017218251
(22)【出願日】2017-11-13
(65)【公開番号】P2019090120
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤男
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-151778(JP,A)
【文献】実開平01-136125(JP,U)
【文献】特開2016-164322(JP,A)
【文献】特開2010-242239(JP,A)
【文献】特開2017-201063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
20/00
31/00-31/02
A62B7/00-33/00
D03D1/00-27/18
D04B1/00-39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性繊維を含み、少なくとも一方の面に凹凸構造を有する布帛であって、少なくとも一方の面に面積0.5mm以上かつ深さ0.3mm以上の凹部を有し、目付けが150~300g/mであり、かつ通気度が150~300cm/cm・secであり、布帛が以下の(1)~(4)のうちいずれかの編物組織を有し、凹凸構造が編組織により形成されていることを特徴とする布帛。
(1)丸編シンカーパイル
(2)丸編の両面編で、一方の面が凹凸構造を有し、他方の面が平坦である組織
(3)経編の2bar以上のシングルトリコットまたはシングルラッシェルで、一方の面が凹凸構造を有し、他方の面が平坦である組織
(4)経編で、ポールシンカーを用いたパイルトリコット
【請求項2】
前記難燃性繊維がメタ型全芳香族ポリアミド繊維である、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
布帛の厚さが0.5mm以上である、請求項1または請求項2に記載の布帛。
【請求項4】
布帛の厚さをT(mm)、目付けをW(g/m)とするとき下記式を満たす、請求項1~3のいずれかに記載の布帛。
0.001×T×W≧0.1
【請求項5】
布帛の一方の面が凹凸構造を有し、他方の面が平坦である、請求項1~4のいずれかに記載の布帛。
【請求項6】
ISO6942におけるRHTI24が7秒以上である、請求項1~5のいずれかに記載の布帛。
【請求項7】
ISO9151におけるHTI24が4秒以上である、請求項1~6のいずれかに記
載の布帛。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の布帛を用いてなる熱防護衣料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、遮熱性および通気性に優れる布帛および熱防護衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、十分なデッドエアを形成する遮熱層を有する耐熱性防護服が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
しかしながら、上記耐熱性防護服は消防防火服には適するが、通気度が低く、重量が大きいため、ワークウエアとして使用するには満足とはいえなかった。
また、耐熱性、難燃性繊維を用いた衣類や手袋において、肌面に意匠撚糸による空気層を形成する方法が提案されている(例えば特許文献5)。
しかしながら、上記のものでは形成される空気層が不十分であり、かつ重量が大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-339122号公報
【文献】特開2005-213709号公報
【文献】特開2009-280942号公報
【文献】特開2011-106070号公報
【文献】特開2007-23463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、難燃性、遮熱性および通気性に優れる布帛および熱防護衣料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、難燃性繊維を含む布帛において、布帛表面に凹凸構造を形成することにより、難燃性、遮熱性および通気性に優れる布帛が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「難燃性繊維を含む布帛であって、少なくとも一方の面に凹凸構造を有することを特徴とする布帛。」が提供される。
【0007】
その際、前記難燃性繊維がメタ型全芳香族ポリアミド繊維であることが好ましい。また、布帛の厚さが0.5mm以上であることが好ましい。また、布帛の目付けが360g/m以下であることが好ましい。また、通気度が150cm/cm・sec以上であることが好ましい。また、布帛の厚さをT(mm)、目付けをW(g/m)とするとき下記式を満たすことが好ましい。
0.001×T×W≧0.1
また、布帛の一方の面が凹凸構造を有し、他方の面が平坦であることが好ましい。また、布帛が編物組織を有することが好ましい。また、編物組織が以下の(1)~(4)のうちいずれかであることが好ましい。
(1)丸編シンカーパイル
(2)丸編の両面編で、一方の面が凹凸構造を有し、他方の面が平坦である組織
(3)経編の2bar以上のシングルトリコットまたはシングルラッシェルで、一方の面が凹凸構造を有し、他方の面が平坦である組織
(4)経編で、ポールシンカーを用いたパイルトリコット
本発明の布帛において、ISO6942におけるRHTI24が7秒以上であることが好ましい。また、ISO9151におけるHTI24が4秒以上であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の布帛を用いてなる熱防護衣料が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、難燃性、遮熱性および通気性に優れる布帛および熱防護衣料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明において、厚さT、凹凸の高さHを説明する図である。
図2】本発明において、採用することのできる編組織図(片面凹凸で片面平坦)の例である。
図3】本発明において、採用することのできる編組織図(片面凹凸で片面平坦)の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず、本発明の難燃性繊維としては、融点400℃以上の繊維が好ましい。特に、JIS L1091 E-2法によるLOIが26以上の繊維が好ましい。かかる繊維としてはメタ型全芳香族ポリアミド繊維が好ましい。
【0011】
ここで、メタ型全芳香族ポリアミド繊維とは、その繰返し単位の85モル%以上がm-フェニレンイソフタルアミドであるポリマーからなる繊維である。かかるメタ型全芳香族ポリアミドは、15モル%未満の範囲内で第3成分を含んだ共重合体であってもよい。
【0012】
このようなメタ型全芳香族ポリアミドは、従来から公知の界面重合法により製造することができ、そのポリマーの重合度としては、0.5g/100mlの濃度のN-メチル-2-ピロリドン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が1.3~1.9dl/gの範囲のものが好ましく用いられる。
【0013】
上記メタ型全芳香族ポリアミドにはアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩が含有されていてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルテトラデシルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩等の化合物が好ましく例示される。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、又はドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩は、入手しやすく、熱的安定性も良好なうえ、N-メチル-2-ピロリドンに対する溶解度も高いため特に好ましく例示される。
【0014】
上記アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩の含有割合は、十分な染色性の改良効果を得るために、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドに対して2.5モル%以上、好ましくは3.0~7.0モル%の範囲にあるものが好ましい。
【0015】
また、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドとアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を混合する方法としては、溶媒中にポリ-m-フェニレンイソフタルアミドを混合、溶解し、それにアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を溶媒に溶解する方法などが用いられそのいずれを用いてもよい。このようにして得られたドープは、従来から公知の方法により繊維に形成される。
【0016】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維に用いるポリマーは、染着性や耐変褪色性を向上させる等目的で、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1~10mol%となるように共重合させることも可能である。
【0017】
-(NH-Ar1-NH-CO-Ar1-CO)- ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位または平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【0018】
また、第3成分として共重合させることも可能であり、式(2)、(3)に示した芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、p-フェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、アセチルフェニレンジアミン、アミノアニシジン、ベンジジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノアゾベンゼン等が挙げられる。式(4)、(5)に示すような芳香族ジカルボン酸ジクロライドの具体例としては、例えば、テレフタル酸クロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’-ビフェニルジカルボン酸クロライド、5-クロルイソフタル酸クロライド、5-メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0019】
N-Ar2-NH ・・・式(2)
N-Ar2-Y-Ar2-NH ・・・式(3)
XOC-Ar3-COX ・・・式(4)
XOC-Ar3-Y-Ar3-COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子または官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【0020】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の結晶化度は、染料の吸尽性がよく、より少ない染料でまたは染色条件が弱くても狙いの色に調整し易いという点で、5~35%であることが好ましい。さらには、染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点および実用上必要な寸法安定性も確保できる点で15~25%であることがより好ましい。
【0021】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の優れた難燃性能を損なわない点で、0.1質量%以下(好ましくは0.001~0.1質量%)であることが好ましい。
【0022】
かかるメタ型全芳香族ポリアミド繊維として、優れた耐光堅牢度を得る上で国際公開公報第2013/061901号パンフレットに記載されているような原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維が好ましい。
【0023】
すなわち、本発明に用いられる顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、ペリノン系、ペリレン系、アンスラキノン系等の有機顔料、あるいは、カーボンブラック、群青、ベンガラ、酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、メタ型全芳香族ポリアミドと顔料との混合方法は、アミド系溶媒中に顔料を均一分散したアミド系溶媒スラリーを作製し、当該アミド系溶媒スラリーをメタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液に添加する方法、あるいは顔料粉末を直接、メタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液に添加する方法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0025】
顔料配合量としては、メタ型全芳香族ポリアミドに対して10.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下である。10.0質量%より多く添加した場合には、得られる繊維の物性が低下するおそれがある。
【0026】
前記のようなメタ型全芳香族ポリアミド繊維は以下の方法により製造することができ、特に後述する方法により、結晶化度や残存溶媒量を上記範囲とすることができる。
【0027】
メタ型全芳香族ポリアミドポリマーの重合方法としては、特に限定する必要はなく、例えば特公昭35-14399号公報、米国特許第3360595号公報、特公昭47-10863号公報などに記載された溶液重合法、界面重合法を用いてもよい。
【0028】
紡糸溶液としては、とくに限定する必要はないが、上記溶液重合や界面重合などで得られた、芳香族コポリアミドポリマーを含むアミド系溶媒溶液を用いてもよいし、上記重合溶液から該ポリマーを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものを用いてもよい。
【0029】
ここで用いられるアミド系溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを例示することができるが、とくにN,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0030】
上記の通り得られた共重合芳香族ポリアミドポリマー溶液は、さらにアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含むことにより安定化され、より高濃度、低温での使用が可能となり好ましい。好ましくはアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩がポリマー溶液の全質量に対して1質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。その際、前記のような難燃剤を含ませることが好ましい。
【0031】
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液または原着メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
【0032】
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1000~30000個、紡糸孔径が0.05~0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
【0033】
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、20~90℃の範囲が適当である。
【0034】
繊維を得るために用いる凝固浴としては、実質的に無機塩を含まない、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45~60質量%の水溶液を、浴液の温度10~50℃の範囲で用いる。アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。一方、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このためやはり、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1~30秒の範囲が適当である。
【0035】
引続き、アミド系溶媒、好ましくはNMPの濃度が45~60質量%の水溶液であり、浴液の温度を10~50℃の範囲とした可塑延伸浴中にて、3~4倍の延伸倍率で延伸を行う。延伸後、10~30℃のNMPの濃度が20~40質量%の水溶液、続いて50~70℃の温水浴を通して十分に洗浄を行う。
【0036】
洗浄後の繊維は、温度270~290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ型全芳香族アラミド繊維を得ることができる。
【0037】
前記メタ型全芳香族アラミド繊維において、繊維は、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよい。特に、他の繊維と混紡する上で繊維長25~200mmの短繊維が好ましい。また、単繊維繊度としては1~5dtexの範囲が好ましい。
【0038】
また、前記メタ型全芳香族アラミド繊維がパラ型全芳香族ポリアミド繊維との混紡糸として布帛に含まれていると、布帛の強度が向上し好ましい。
【0039】
その際、パラ型全芳香族ポリアミド繊維としては、パラフェニレンテレフタラミド繊維またはコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維がより好ましい。
【0040】
前記混紡糸には、さらに導電性繊維など他の合成繊維が含まれていてもよい。その際、導電性繊維としては、導電性繊維の導電部の導電体として、カーボンブラック、導電性酸化チタン、導電性ウィスカー、およびカーボンナノチューブの少なくとも一つを含む繊維が好ましい。
【0041】
導電性繊維の形態は、繊維全体が導電部からなる構造でもよいし、非導電部と導電部が芯鞘、サンドイッチ、偏芯などの断面形状を有していてもよい。導電部、非導電部を形成する樹脂は、繊維形成性を有していれば、特段限定されるものではない。具体的には、ナイロン樹脂では、6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、66ナイロンなどが挙げられる。また、ポリエステル樹脂では、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレートおよびこれらの共重合体や酸成分(テレフタル酸)の一部をイソフタル酸で置き換えたものなどが挙げられる。
【0042】
市販されている導電性繊維としては、帝人社製「メタリアン」(商品名)、ユニチカファイバー製「メガーナ」(商品名)、東レ社製「ルアナ」(商品名)、クラレ社製「クラカーボ」(商品名)などが例示される。特に、導電性成分が鞘部に配された芯鞘型複合繊維が好ましい。かかる芯鞘型複合繊維としては、ソルシア社製「NO SHOCK(登録商標)」が好ましい。
【0043】
本発明の布帛を構成する糸条において、糸条がマルチフィラメント(長繊維)でもよいが、前記のような繊維が混紡された紡績糸であることが好ましい。紡績糸の場合、一般に衣料用で用いられる番手、たとえば英式綿番手20番から60番の間で選択可能である。また紡績糸は単糸で使用してもよいし撚糸後使用してもよい。
【0044】
本発明の布帛は少なくとも一方の面に凹凸構造を有する。かかる凹凸構造により空気層が形成され、遮熱性が向上する。従来、熱防護性を高めるためには高密度化、高目付化が一般的であり必然的に低通気度となり不快であったが、特に空気層を肌側に配置すれば通気度を上げても熱防護性を阻害しないという優れた効果を奏する。
【0045】
また、凹凸構造は両面に形成されていてもよいが、一方の面にのみ凹凸構造が形成され、他方の面が平坦であることが好ましい。また、メッシュ(複数の貫通穴を有する。)を有する布帛でもよい。
【0046】
本発明でいう凹凸構造とは、面積0.5mm以上かつ深さ0.3mm以上の凹部を有することであり、凹凸構造を有しない場合、平坦という。かかる凹凸構造はエンボス加工により形成されていてもよいが、織編組織により形成されていることが好ましい。また、凹凸構造はパターン状に形成されていることが好ましい。
【0047】
ここで、図1に示す、布帛の厚さTとしては0.5mm以上(より好ましくは0.5~5mmの範囲)が好ましい。また、凸部の高さ(凹部の深さ)Hとしては0.3mm以上(より好ましくは0.3~3mmの範囲)が好ましい。
【0048】
本発明の布帛は常法により製編織することができる。その際、布帛組織は織物組織でもよいが、編物組織が好ましい。丸編組織、経編組織いずれでもよく、ゲージ数の限定もないが、特に、編物組織が以下の(1)~(4)のうちいずれかであることが好ましい。
(1)丸編シンカーパイル
(2)丸編の両面編で、一方の面が凹凸構造を有し、他方の面が平坦である組織
(3)経編の2bar以上のシングルトリコットまたはシングルラッシェルで、一方の面が凹凸構造を有し、他方の面が平坦である組織
(4)経編で、ポールシンカーを用いたパイルトリコット
かかる布帛には、染色加工を施すことが好ましい。その際、着色手段としては公知の手段が可能である。すなわち全芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)は原着であってもよいし、キャリア剤を用いて染色してもよい。
【0049】
かくして得られた布帛において、布帛の目付けが360g/m以下(より好ましくは150~300g/m)であると、布帛の軽量性が向上し好ましい。
その際、布帛の厚さをT(mm)、目付けをW(g/m)とするとき下記式を満たすことが好ましい。
0.001×T×W≧0.1
【0050】
本発明の布帛は、前記の構成を有するので、難燃性、遮熱性および通気性に優れる。その際、通気度が150cm/cm・sec以上(より好ましくは150~400cm/cm・sec)であることが好ましい。
【0051】
また、ISO6942におけるRHTI24が7秒以上(より好ましくは7~30秒)であることが好ましい。また、ISO9151におけるHTI24が4秒以上(より好ましくは4~20秒)であることが好ましい。
【0052】
次に、本発明の熱防護衣料は前記の布帛を用いてなる熱防護衣料である。具体的には、消防服、防火服、執務服、モータースポーツ用レーシングスーツ、作業服、手袋、帽子、ベストなどが例示される。かかる熱防護衣料は前記の布帛を用いているため、難燃性、遮熱性および通気性に優れる。
【実施例
【0053】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(1)厚さ
JIS L 1096 A法により、普通編物用の条件である0.7kPaの荷重をかけ測定を行なった。
(2)目付け
JIS L 1096 A法により測定した。
(3)通気性
JIS L1096-1990通気性A法(フラジール法)で測定した。
(4)ISO6942
熱流束40kW/mにおいて、輻射熱暴露開始から銅製のセンサーが24℃上昇する時間、RHTI24を求めた。なお、平坦な面側に熱源を配置した。
(5)ISO9151
対流熱暴露開始からの銅製のセンサーが24℃上昇する時間、HTI24を求めた。なお、平坦な面側に熱源を配置した。
【0054】
以下の素材を用いて、公知の方法により表1、表2に示す紡績糸を製造した。
「メタ型全芳香族ポリアミド繊維原着単繊維」帝人株式会社社製、「コーネックス」(登録商標)、平均単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm(以下メタアラミド)
「パラ型全芳香族ポリアミド短繊維」帝人株式会社製、「テクノーラ」(登録商標)、平均単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm(以下パラアラミド)
【0055】
[実施例1~4、比較例1、2]
20ゲージ、釜径33インチのダブル丸編機を使用し、表1に示した糸使い、密度、編組織図で丸編物を得た。実施例1~4で得られたものは、一方の面が編組織により凹凸構造を有し、他方の面が平坦であった。また、比較例1、2で得られたものは両方の面が平坦であった。評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
[実施例5、6]
22ゲージの2barトリコット編機を使用し、表2に示した糸使い、密度、編組織図で経編物を得た。実施例5、6で得られたものは、一方の面が編組織により凹凸構造を有し、他方の面が平坦であった。評価結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、難燃性、遮熱性および通気性に優れる布帛および熱防護衣料が提供され、その工業的価値は極めて大である。
図1
図2
図3