(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】搬送装置およびこれを備えた印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20220404BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220404BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20220404BHJP
B65H 5/22 20060101ALI20220404BHJP
B41J 11/06 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 305
B65H5/02 S
B65H5/22 C
B41J11/06
(21)【出願番号】P 2017222492
(22)【出願日】2017-11-20
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 亜己夫
(72)【発明者】
【氏名】城岸 利行
(72)【発明者】
【氏名】大西 寛行
(72)【発明者】
【氏名】市川 智賀子
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-016637(JP,A)
【文献】特開2012-183756(JP,A)
【文献】特開2010-247362(JP,A)
【文献】特開2008-279752(JP,A)
【文献】特開2012-051331(JP,A)
【文献】特開2010-089425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0292145(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65H 5/02
B65H 5/22
B41J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドファスナー(5)の一対のテープ部(6A)に対してインクを吐出する印刷装置(1)における搬送装置(30)であって、
前記テープ部(6A)の一縁部には、エレメント(7)が設けられており、
前記
スライドファスナー(5)を搬送方向(X)に搬送する
二列の搬送ベルト(31A,31B)と、前記
二列の搬送ベルト(31A,31B)を支持する支持部材(32)とを備えており、
前記
二列の搬送ベルト(31A,31B)には、
前記テープ部(6A)を吸引する複数の吸着孔(311)が搬送方向(X)に沿って形成されており、
前記支持部材(32)には、前記
二列の搬送ベルト(31A,31B)を吸引する複数の第一吸引孔(325A,325B)と、前記複数の第一吸引孔(325A,325B)に対して、搬送方向(X)に交差する幅方向(Y)における一方側に配置された複数の第二吸引孔(326)とが、搬送方向(X)に沿って形成され
ており、
前記支持部材(32)のうち前記二列の搬送ベルト(31A,31B)間における位置には、前記エレメント(7)が非吸引状態で配置される凹溝(38)が搬送方向(X)に連続して延びて形成されている
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記支持部材(32)は、前記搬送ベルト(31A,31B)が配置されるベルトガイド溝(37A,37B)を備えており、
前記第一吸引孔(325A,325B)は、前記ベルトガイド溝(37A,37B)の底面に開口している
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第二吸引孔(326)は、前記ベルトガイド溝(37A,37B)に対して仕切り片部を隔てて幅方向(Y)における外側に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第一吸引孔(325A,325B)および前記第二吸引孔(326)は、搬送方向(X)に延びた長孔によって形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記複数の第一吸引孔(325A,325B)に対して搬送方向(X)に交差する幅方向(Y)における他方側には、前記一方側に向けて空気を吐出するブロワ(60)が更に設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記複数の第二吸引孔(326)を開閉移動可能に配置された開閉板(327)を更に備えている
ことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記支持部材(32)のうち前記複数の第二吸引孔(326)が形成された吸引領域には、フィルタ(328)が配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項8】
インクを吐出するプリンタヘッド(20)と、前記プリンタヘッド(20)から吐出したインクが付着される
スライドファスナー(5)を搬送する請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の搬送装置(30)と、前記搬送装置(30)の複数の第一吸引孔(325A,325B)および複数の第二吸引孔(326)に吸引力を与える吸引装置(40)とを備えている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
前記吸引装置(40)は、前記複数の第一吸引孔(325A,325B)側の第一減圧空間(41A)と前記複数の第二吸引孔(326)側の第二減圧空間(41B)とを区画した区画ケース(42A,42B)と、前記第一減圧空間(41A)を減圧可能に配置された第一ファン(43A)と、前記第二減圧空間(41B)を減圧可能に配置された第二ファン(43B)とを備えている
ことを特徴とする請求項
8に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シングルパス方式のインクジェットプリンタにおいて印刷媒体を吸着しながらベルト搬送する搬送装置およびこれを備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送ベルトによって吸着搬送される記録媒体(印刷媒体)に対して、記録ヘッドからインクを吐出するシングルパス方式のインクジェットプリンタが知られている(特許文献1参照)。
搬送ベルトには、その搬送方向に沿って記録媒体吸着用の複数の第1孔が形成された媒体吸着領域と、記録ヘッドから吐出したインクによって発生する空気中のインクミストを吸引する複数の第2孔が形成されたミスト吸引領域とが設けられている。複数の第1孔および複数の第2孔には、減圧装置によって搬送ベルトの内側へ向かって通過する空気の流れがつくられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、媒体吸着領域とミスト吸引領域とが搬送ベルトの搬送方向に並べて配置されているので、記録媒体は媒体吸着領域に納まる長さ寸法のものに限られてしまい、例えば記録媒体がスライドファスナー等の長さ寸法が大きいものである場合には媒体吸着領域から搬送方向にはみ出てしまって適切に吸着できなくなるおそれがある。
このようなスライドファスナーに対応するため、媒体吸着領域とミスト吸引領域とを搬送方向に並べて配置せずに、媒体吸着領域に対して搬送方向に直交する幅方向における両側でインクミストを吸引することが考えられる。しかし、この場合には、媒体吸着領域の幅方向における中央部分にあるインクミストが当該幅方向両側から吸引して引かれるので、中央部分にあるインクミストが吸引されずに残存し、搬送ベルトや記録媒体などに付着するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、スライドファスナー等の印刷媒体を吸着搬送可能であると共にインクミストを空気中から効率的に除去することができる搬送装置およびこれを備えた印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送装置は、印刷媒体を搬送方向に搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトを支持する支持部材とを備えており、前記搬送ベルトには、印刷媒体を吸引する複数の吸着孔が搬送方向に沿って形成されており、前記支持部材には、前記搬送ベルトを吸引する複数の第一吸引孔と、前記複数の第一吸引孔に対して、搬送方向に交差する幅方向における一方側に配置された複数の第二吸引孔とが、搬送方向に沿って形成されていることを特徴とする。
本発明の搬送装置によれば、支持部材を、搬送ベルトを支持する支持面とは反対側の面から吸引装置などによって吸引力を付与することで、支持部材の第一吸引孔および搬送ベルトの複数の吸着孔を介して印刷媒体を吸引し、当該印刷媒体を搬送ベルトに吸着支持する。このとき、複数の吸着孔は搬送方向に沿って形成されているので、印刷媒体がスライドファスナーであっても吸着支持して搬送することができる。
更に、搬送装置によって搬送される印刷媒体に向けてプリンタヘッドからインクを吐出した際に発生する空気中のインクミストは複数の第二吸引孔から吸引することができる。具体的には、前述した吸引装置の作動により、搬送ベルトの幅方向における一方側に位置する複数の第二吸引孔から吸着ガイドの支持面側における空気を吸引することで、印刷媒体若しくは搬送ベルトとプリンタヘッドとの間の空間に、搬送ベルトの幅方向に沿って第二吸引孔側に向かう空気の流れを発生させ、この空気の流れを利用して前記空間におけるインクミストを複数の第二吸引孔から吸引することができ、このようにしてインクミストを空気中から効率的に除去することができる。
【0007】
本発明の搬送装置では、前記支持部材は、前記搬送ベルトが配置されるベルトガイド溝を備えており、前記第一吸引孔は、前記ベルトガイド溝の底面に開口していることが好ましい。
このような構成によれば、ベルトガイド溝にガイドされる搬送ベルトの内周面を吸引することで搬送ベルトの搬送精度を向上することができる。また、本発明によれば、第一吸引孔の開口を搬送ベルトの吸着孔と容易に位置合わせすることができ、これにより、搬送ベルトに載置された印刷媒体を効率よく吸引して吸着支持することができる。
【0008】
本発明の搬送装置では、前記第二吸引孔は、前記ベルトガイド溝に対して仕切り片部を隔てて幅方向における外側に配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、第一吸引孔によるベルトガイド溝側での吸引に影響されずに第二吸引孔による吸引を行うことができ、インクミストを効率よく吸引することができる。
【0009】
本発明の搬送装置では、前記第一吸引孔および前記第二吸引孔は、搬送方向に延びた長孔によって形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、搬送方向に沿った大きな領域で搬送ベルトやインクミストを吸引することができる。
【0010】
本発明の搬送装置では、前記搬送ベルトは、二列設けられており、前記支持部材には、搬送方向に延びた凹溝が形成されており、前記凹溝は、前記二列の搬送ベルト間における位置に配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、印刷媒体がスライドファスナーである場合に、このスライドファスナーの両テープ部を二列の搬送ベルトによって吸着支持した状態で、エレメント(務歯)を二列の搬送ベルト間に位置する凹溝に配置することができる。これにより、スライドファスナーを吸着支持して搬送するのに特化した搬送装置を構成することができる。
また、前述したように、第二吸引孔から空気中のインクミストを吸引することで、搬送ベルトやスライドファスナーへのインクミストの付着を低減することができる。
【0011】
本発明の搬送装置では、前記複数の第一吸引孔に対して搬送方向に交差する幅方向における他方側には、前記一方側に向けて空気を吐出するブロワが更に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、第二吸引孔からの吸引による空気の流れの形成を、ブロワによる空気の吐出によって補助することができる。これにより、インクミストを、より効率的に空気中から除去することができる。
【0012】
本発明の搬送装置では、前記複数の第二吸引孔を開閉移動可能に配置された開閉板を更に備えていることが好ましい。
このような構成によれば、開閉板を開閉移動することで、開口状態とされる複数の第二吸引孔の孔数を調整することができ、これにより、複数の第二吸引孔における吸引力を調整することができる。
【0013】
本発明の搬送装置では、前記支持部材のうち前記複数の第二吸引孔が形成された吸引領域には、フィルタが配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、第二吸引孔によって吸引した空気中のインクミストをフィルタで回収することができる。また、目の粗さが異なる複数のフィルタを用意しておけば、複数のフィルタを適宜選択して前記吸引領域に配置することで、空気中のインクミストの吸引力を適宜調整することができる。
【0014】
本発明の印刷装置は、インクを吐出するプリンタヘッドと、前記プリンタヘッドから吐出したインクが付着される印刷媒体を搬送する前述した本発明の搬送装置と、前記搬送装置の複数の第一吸引孔および複数の第二吸引孔に吸引力を与える吸引装置とを備えていることを特徴とする。
本発明の印刷装置によれば、前述した本発明の搬送装置と同様の作用効果を発揮可能な印刷装置を構成することができる。
【0015】
本発明の印刷装置では、前記吸引装置は、前記複数の第一吸引孔側の第一減圧空間と前記複数の第二吸引孔側の第二減圧空間とを区画した区画ケースと、前記第一減圧空間を減圧可能に配置された第一ファンと、前記第二減圧空間を減圧可能に配置された第二ファンとを備えていることが好ましい。
このような構成によれば、第一ファンと第二ファンとの作動を別個独立に調整することで第一減圧空間および第二減圧空間の減圧状態をそれぞれ設定することができる。これにより、搬送ベルトの吸引力や印刷媒体の吸着力とインクミストの吸引力との差分を適宜調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スライドファスナー等の印刷媒体を吸着搬送可能であると共にインクミストを空気中から効率的に除去することができる搬送装置およびこれを備えた印刷装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタを示す模式図。
【
図3】前記実施形態に係るインクジェットプリンタの支持部材の要部を示す平面図。
【
図4】本発明の変形例に係るインクジェットプリンタを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~3において、本実施形態に係る印刷装置としてのシングルパス方式のインクジェットプリンタ1は、インクを吐出するプリンタヘッド20と、プリンタヘッド20から吐出したインクが付着される印刷媒体であるスライドファスナー5(
図2参照)を搬送方向Xに搬送する搬送装置30と、搬送装置30の後述する第一吸引孔325A,325Bおよび第二吸引孔326に吸引力を与える吸引装置40とを備えている。
インクジェットプリンタ1は、図示しない制御装置によってプリンタヘッド20によるインク吐出、搬送装置30による搬送および吸引装置40による吸引が制御される。
【0019】
プリンタヘッド20は、搬送方向Xに並んだ複数のヘッド部21を有しており、各ヘッド部21から下方にインクを吐出可能に構成されている。各ヘッド部21から吐出されるインク色はマゼンタ、イエロー、シアン、ブラック等に分けられており、搬送されるスライドファスナー5のテープ部6A,6Bにカラープリント可能である。
【0020】
搬送装置30は、
図1,2に示すように、二列の搬送ベルト31A,31Bと、搬送ベルト31A,31Bを支持する支持部材としての吸着ガイド32と、搬送ベルト31A,31Bを搬送方向Xに走行させる走行装置33とを備えている。
走行装置33は、従動プーリ34、駆動プーリ35および二つの補助プーリ36を備えており、これら各プーリ34~36に搬送ベルト31A,31Bが掛け回されている。従動プーリ34は、搬送方向Xにおいて吸着ガイド32よりも上流側に配置されている。駆動プーリ35は、搬送方向Xにおいて吸着ガイド32よりも下流側に配置されている。
【0021】
搬送ベルト31A,31Bは、互いに同様に構成されており、
図2に示すように、スライドファスナー5のテープ部6A,6Bを吸着支持する複数の吸着孔311が全周にそれぞれ形成されている。複数の吸着孔311は、搬送ベルト31A,31Bの長手方向に延びた長孔が当該方向に複数並んで配置されて列をなしていると共に、搬送方向Xに直交する幅方向Yに複数列が配置されている。なお、複数の吸着孔311は、本実施形態では前述した孔形状、配置、配列とされているが、これに限定されず、スライドファスナー5などの印刷媒体を吸着支持可能な孔形状、配置や配列とされていればよい。
【0022】
吸着ガイド32は、
図1に示すように搬送方向Xに沿っていると共にプリンタヘッド20に対して下方に配置されている。吸着ガイド32の前端部321は、プリンタヘッド20よりも搬送方向Xにおける上流側に位置しており、吸着ガイド32の後端部322は、プリンタヘッド20よりも搬送方向Xにおける下流側に位置している。
【0023】
吸着ガイド32の上面には、二列のベルトガイド溝37A,37Bと、幅方向Yにおけるベルトガイド溝37A,37B間に位置する凹溝38とが形成されている。
ベルトガイド溝37A,37Bおよび凹溝38はそれぞれ搬送方向Xに
連続して延びて形成されており
(図3参照)、ベルトガイド溝37Aおよび凹溝38間、並びにベルトガイド溝37Bおよび凹溝38間は、搬送方向Xに沿った仕切り片部39によってそれぞれ仕切られている。
また、ベルトガイド溝37Aよりも幅方向Yにおける外側の部分に仕切り片部39Aが形成されており、この仕切り片部39Aによって後述する第一吸引孔325A,325Bによる吸引領域と第二吸引孔326による吸引領域とが幅方向Yにおいて区分けされている。
【0024】
ベルトガイド溝37A,37Bは、搬送ベルト31A,31Bがそれぞれ配置可能な幅寸法とされていると共に、搬送ベルト31A,31Bの上面が仕切り片部39の上面と面一に配置される深さ寸法とされている。
凹溝38は、搬送されるスライドファスナー5のエレメント7(務歯)が配置可能な幅寸法および深さ寸法とされて
おり、この凹溝38には、エレメント7が非吸引状態で配置される構成とされている
(図4参照)。
【0025】
吸着ガイド32には、
図2,3に示すように、複数の第一吸引孔325A,325Bと、複数の第二吸引孔326とが形成されている。複数の第一吸引孔325A,325Bは、ベルトガイド溝37A,37Bの底面(支持面)および吸着ガイド32の下面で開口して形成されており、複数の第二吸引孔326は、複数の第一吸引孔325A,325Bに対して幅方向Yに仕切り片部39Aを隔てた位置において吸着ガイド32の上面および下面で開口して形成されている。
【0026】
複数の第一吸引孔325A,325Bは、吸着ガイド32の長手方向に延びた長孔が当該方向に複数並んで配置されて列をなしていると共に、幅方向Yに複数列が配置されている。なお、複数の第一吸引孔325A,325Bは、本実施形態では前述した孔形状、配置、配列とされているが、これに限定されず、搬送ベルト31A,31Bをそれぞれ吸引可能な孔形状、配置や配列とされていればよい。
【0027】
複数の第一吸引孔325Aは、そのうち幅方向Yにおいて最も外側に位置する第一吸引孔325Aの列を除いて、ベルトガイド溝37Aに配置された搬送ベルト31Aの複数の吸着孔311に対して幅方向Yにおける列位置が一致する配置とされており、搬送ベルト31Aの吸着孔311と連通する。前記最も外側の列位置にある第一吸引孔325Aは、吸着孔311と連通せずに搬送ベルト31Aの外側縁部を吸引可能に配置される。
【0028】
複数の第一吸引孔325Bは、そのうち幅方向Yにおいて最も外側に位置する第一吸引孔325Bの列を除いて、ベルトガイド溝37Bに配置された搬送ベルト31Bの複数の吸着孔311に対して幅方向Yにおける列位置が一致する配置とされており、搬送ベルト31Bの吸着孔311と連通する。前記最も外側の列位置にある第一吸引孔325Bは、吸着孔311と連通せずに搬送ベルト31Bの外側縁部を吸引可能に配置される。
【0029】
複数の第二吸引孔326は、吸着ガイド32の長手方向に延びた長孔が当該方向に複数並んで配置されて列をなしていると共に、幅方向Yに複数列が配置されている。なお、複数の第二吸引孔326は、本実施形態では前述した孔形状、配置、配列とされているが、これに限定されず、複数の第一吸引孔325Aに対して幅方向Yにおける一方側の位置で吸着ガイド32上の空気を吸引可能な孔形状、配置や配列とされていればよい。
【0030】
吸着ガイド32には、その上面のうち複数の第二吸引孔326が形成された吸引領域に沿って開閉移動可能な開閉板327が設けられている。開閉板327は、幅方向Yに進退可能であり、仕切り片部39A側に向かって前進することで仕切り片部39Aおよび開閉板327間の前記吸引領域の幅寸法A(
図3参照)を狭めることができ、仕切り片部39A側とは反対側に向かって後退することで幅寸法Aを拡げることができる。このように幅寸法Aを適宜調整し、開閉板327によって塞がれる第二吸引孔326の孔数を増減することで当該第二吸引孔326による空気中のインクミストの吸引力の強弱を調整可能である。
また、開閉板327および仕切り片部39A間には、空気中のインクミストを回収するフィルタ328が配設されており、目の粗さが異なる複数枚のフィルタ328を適宜選択して使い分けることによっても、空気中のインクミストの吸引力の強弱を調整可能である。
【0031】
吸引装置40は、吸着ガイド32に対して下方に減圧空間41を区画した区画ケース42と、区画ケース42に装着されたファン43とを備えている。
区画ケース42は、
図1に示すように搬送方向Xに沿って複数個が設けられていてもよいが、一個が設けられていてもよい。区画ケース42は、本実施形態では、
図2に示すように幅方向Yにおいて複数の第一吸引孔325A,325Bおよび複数の第二吸引孔326を下方から覆える幅寸法とされている。
ファン43は、
図2に示すように一個が設けられているが、複数個が設けられていてもよい。ファン43は、その作動により減圧空間41を減圧する。これにより、複数の第一吸引孔325A,325Bおよび複数の第二吸引孔326には吸引力が付与される。
【0032】
[本実施形態の動作]
以下、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の動作について説明する。
先ず、走行装置33を作動して搬送ベルト31A,31Bを走行させると共に、吸引装置40を作動して第一吸引孔325A,325Bおよび第二吸引孔326に吸引力を付与する。搬送ベルト31A,31Bは、第一吸引孔325A,325Bに吸引されつつ吸着孔311に吸引力が付与される。このようにしてインクジェットプリンタ1をスタンバイ状態にする。
【0033】
次に、搬送ベルト31A,31B上にスライドファスナー5を上流側から載置し、搬送方向Xに搬送する。このとき、テープ部6Aは、搬送ベルト31Aの吸着孔311に吸着支持され、テープ部6Bは搬送ベルト31Bの吸着孔311に吸着支持され、そして、エレメント7は凹溝38に配置される。
続いて、プリンタヘッド20を作動してインクを吐出し、搬送されるスライドファスナー5のテープ部6A,6Bに付着させる。このとき、プリンタヘッド20および搬送ベルト31A,31B間の空間にインクミストが発生するが、前記空間には第二吸引孔326からの吸引によって幅方向Yにおける第二吸引孔326側に向かう空気の流れが発生しており、この空気の流れを利用してインクミストを第二吸引孔326側に引き寄せてフィルタ328で回収する。
【0034】
最後に、搬送装置30の下流側からスライドファスナー5を取り出して、インクジェットプリンタ1によるプリントが完了する。
なお、インクジェットプリンタ1は、固定されたプリンタヘッド20に対し搬送装置30によって搬送されるスライドファスナー5等の印刷媒体にインクを付着させるシングルパス方式のものであるので、複数の印刷媒体を連続して搬送することでプリント効率がよい。
【0035】
[本実施形態の効果]
(1)前記実施形態では、搬送装置30は、スライドファスナー5を搬送方向Xに搬送する搬送ベルト31A,31Bと、搬送ベルト31A,31Bを支持する吸着ガイド32とを備えており、搬送ベルト31A,31Bには、スライドファスナー5を吸着支持する複数の吸着孔311が搬送方向Xに沿って形成されており、吸着ガイド32には、搬送ベルト31A,31Bを吸引する複数の第一吸引孔325A,325Bと、複数の第一吸引孔325A,325Bに対して、搬送方向Xに交差する幅方向Yにおける一方側に配置された複数の第二吸引孔326とが、搬送方向Xに沿って形成されていることを特徴とする。
上記構成を有しているため、吸着ガイド32を、搬送ベルト31A,31Bを支持する支持面とは反対側の面(下面)から吸引装置40によって吸引力を付与することで、吸着ガイド32の第一吸引孔325A,325Bおよび搬送ベルト31A,31Bの複数の吸着孔311を介してスライドファスナー5を吸引し、スライドファスナー5を搬送ベルト31A,31Bに吸着支持する。このとき、複数の吸着孔311は搬送方向Xに沿って形成されているので、長尺のスライドファスナー5であっても吸着支持して搬送することができる。
更に、搬送装置30によって搬送されるスライドファスナー5に向けてプリンタヘッド20からインクを吐出した際に発生する空気中のインクミストは複数の第二吸引孔326から吸引することができる。具体的には、吸引装置40の作動により、搬送ベルト31A,31Bの幅方向Yにおける一方側に位置する複数の第二吸引孔326から吸着ガイド32の上面側における空気を吸引することで、スライドファスナー5若しくは搬送ベルト31A,31Bとプリンタヘッド20との間の空間に、搬送ベルト31A,31Bの幅方向Yに沿って第二吸引孔326側に向かう空気の流れを発生させ、この空気の流れを利用して前記空間におけるインクミストを複数の第二吸引孔326から吸引することができ、このようにしてインクミストを空気中から効率的に除去することができる。
【0036】
(2)吸着ガイド32は、搬送ベルト31A,31Bが配置されるベルトガイド溝37A,37Bを備えており、第一吸引孔325A,325Bは、ベルトガイド溝37A,37Bの底面に開口している。
このため、ベルトガイド溝37A,37Bにガイドされる搬送ベルト31A,31Bの内周面を吸引することで搬送ベルト31A,31Bの搬送精度を向上することができる。また、第一吸引孔325A,325Bの開口を搬送ベルト31A,31Bの吸着孔311と容易に位置合わせすることができ、これにより、搬送ベルト31A,31Bに載置されたスライドファスナー5を効率よく吸引して吸着支持することができる。
【0037】
(3)第二吸引孔326は、ベルトガイド溝37A,37Bに対して仕切り片部30Aを隔てて幅方向Yにおける外側に配置されている。
このため、第一吸引孔325A,325Bによるベルトガイド溝37A,37B側での吸引に影響されずに第二吸引孔326による吸引を行うことができ、インクミストを効率よく吸引することができる。
【0038】
(4)第一吸引孔325A,325Bおよび第二吸引孔326は、搬送方向Xに延びた長孔によって形成されている。
このため、搬送方向Xに沿った大きな領域で搬送ベルト31A,31Bやインクミストを吸引することができる。
【0039】
(5)吸着ガイド32には、二列の搬送ベルト31A,31B間における位置に配置された凹溝38が搬送方向Xに沿って形成されている。
このため、スライドファスナー5のテープ部6A,6Bを搬送ベルト31A,31Bによって吸着支持した状態で、エレメント7を搬送ベルト31A,31B間に位置する凹溝38に配置することができる。これにより、スライドファスナー5を吸着支持して搬送するのに特化した搬送装置30を構成することができる。
【0040】
(6)複数の第二吸引孔326を開閉移動可能に配置された開閉板327を備えているので、開閉板327を開閉移動することで、開口状態とされる複数の第二吸引孔326の孔数を調整することができ、これにより、複数の第二吸引孔326における吸引力を調整することができる。
【0041】
(7)吸着ガイド32のうち複数の第二吸引孔326が形成された吸引領域には、フィルタ328が配置されているので、第二吸引孔326によって吸引した空気中のインクミストをフィルタ328で回収することができる。また、目の粗さが異なる複数のフィルタ328を用意しておけば、複数のフィルタ328を適宜選択して配置することで、空気中のインクミストの吸引力を適宜調整することができる。
【0042】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、吸着ガイド32の幅方向Yにおける一方側に第二吸引孔326が配置されているが、これに加えて、例えば
図4に示すように、幅方向Yにおける他方側にブロワ60が設けられていてもよい。ブロワ60は、幅方向Yにおいて第二吸引孔326側に向けて空気を吐出可能な向きに配置されている。このような構成を有するため、第二吸引孔326からの吸引による空気の流れの形成を、ブロワ60による空気の吐出によって補助することができる。これにより、インクミストを、より効率的に空気中から除去することができる。
【0043】
前記実施形態では、吸引装置40は、複数の第一吸引孔325A,325Bおよび複数の第二吸引孔326を下方から覆う区画ケース42を備えているが、これに代えて、例えば
図4に示すように、複数の第一吸引孔325A,325B側の第一減圧空間41Aを区画した区画ケース42Aと、複数の第二吸引孔326側の第二減圧空間41Bを区画した区画ケース42Bとを備えていてもよい。この場合、区画ケース42Aには第一ファン43Aが装着されており、区画ケース42Bには第二ファン43Bが装着される。第一ファン43Aの作動により第一減圧空間41Aが減圧されると、複数の第一吸引孔325A,325Bに吸引力が付与され、また、第二ファン43Bの作動により第二減圧空間41Bが減圧されると、複数の第二吸引孔326に吸引力が付与される。
このように、第一ファン43Aおよび第二ファン43Bの作動を別個独立に調整することで、第一減圧空間41Aおよび第二減圧空間41Bの減圧状態をそれぞれ設定することができる。これにより、搬送ベルト31A,31Bの吸引力や印刷媒体の吸着力とインクミストの吸引力との差分を適宜調整することができる。
【0044】
前記実施形態では、複数の第二吸引孔326を開閉移動により塞ぐことができる開閉板327を備えているが、この構成を省略してもよい。
また、前記実施形態では、フィルタ328を備えているが、これのほかにインクミストを回収するものがあれば、フィルタ328の構成を省略してもよい。
【0045】
前記実施形態では、スライドファスナー5のエレメント7が配置される凹溝38を吸着ガイド32に形成したが、スライドファスナー5ではない帯状、短冊状などの印刷媒体を搬送する場合には、凹溝38は形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…インクジェットプリンタ(印刷装置)、20…プリンタヘッド、21…ヘッド部、30…搬送装置、311…吸着孔、31A,31B…搬送ベルト、32…吸着ガイド(支持部材)、321…前端部、322…後端部、325A,325B…第一吸引孔、326…第二吸引孔、327…開閉板、328…フィルタ、33…走行装置、34…従動プーリ、35…駆動プーリ、36…補助プーリ、37A,37B…ベルトガイド溝、38…凹溝、39,39A…仕切り片部、40…吸引装置、41,41A,41B…減圧空間、42,42A,42B…区画ケース、43,43A,43B…ファン、5…スライドファスナー(印刷媒体)、60…ブロワ、6A,6B…テープ部、7…エレメント、A…幅寸法、X…搬送方向、Y…幅方向。