(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】クレーンの実効カウンタウェイトを求めるための装置を備えたクレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/74 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
B66C23/74 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017222495
(22)【出願日】2017-11-20
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】10 2016 014 571.4
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597120075
【氏名又は名称】リープヘル-ヴェルク エーインゲン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Liebherr-Werk EhingenGmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィルム ハンス-ディーター
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-058978(JP,A)
【文献】特開2011-132002(JP,A)
【文献】特開平09-086878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B66F 9/00-11/04
G01L 7/00-23/32
G01L 27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン(10)の実効カウンタウェイトを求めるための少なくとも1つの装置を備えたクレーン(10)であって、
上記装置は、
少なくとも1つのカウンタウェイト体(3)を受けるように構成された少なくとも1つの受け部(2)と、
上記クレーン(10)の別の構造部に上記受け部(2)を旋回可能に連結するように構成された少なくとも1つの連結部(5)と、
上記受け部(2)の旋回範囲を制限するように構成された少なくとも1つの当接部(7)とを有しており、
上記当接部(7)の内部および/または外部に、上記受け部(2)によって上記当接部(7)に及ぼされる力を求めるように構成された少なくとも1つの力測定装置(6)が設けられて
おり、
上記力測定装置(6)は、油圧式のシリンダおよびピストン装置(61,62)を有する
ことを特徴とするクレーン。
【請求項2】
請求項
1において、
上記
シリンダおよびピストン装置(61,62)のシリンダ(61)内に上記
シリンダおよびピストン装置(61,62)のピストンロッド(62)の少なくとも一部を押し込むように構成された少なくとも1つのばね(63)を備える
ことを特徴とするクレーン。
【請求項3】
請求項
2において、
上記シリンダ(61)のシリンダ空間は、10~50バール、特に20~40バール、とりわけ30±5バールの系統圧力で予圧されている
ことを特徴とするクレーン。
【請求項4】
請求項
2または3において、
上記シリンダ(61)からの圧力媒体の逆流は、逆止弁(64)によってブロック可能である
ことを特徴とするクレーン。
【請求項5】
請求項
2~4のいずれか1項において、
上記力測定装置(6)は、上記シリンダ(61)内の圧力を測定するための圧力メータ(65)として構成されている
ことを特徴とするクレーン。
【請求項6】
請求項
5において、
上記測定された圧力から上記実効カウンタウェイトを計算するように構成されたクレーン制御部を備える
ことを特徴とするクレーン。
【請求項7】
請求項
2~6のいずれか1項において、
上記
力測定装置(6)が有する測定回路における最大圧力を特に400バールまでに制限するように構成された安全装置を備える
ことを特徴とするクレーン。
【請求項8】
請求項
2~7のいずれか1項において、
上記ピストンロッド(62)は、その支持面が球面状に設計されている
ことを特徴とするクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの実効カウンタウェイトを求めるための少なくとも1つの装置であって、少なくとも1つのカウンタウェイト体を受けるための少なくとも1つの受け部と、クレーンの別の構造部に受け部を旋回可能に連結するように構成された少なくとも1つの連結部と、受け部の旋回範囲を制限するように構成された少なくとも1つの当接部とを有する装置を備えたクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術より公知のクレーンでは、少なくとも1つのカウンタウェイトが、クレーンが支える負荷に抗するトルクを生じさせる。ここで、適用されるカウンタウェイトは、実質的にクレーンを安定させるのに役立つ。
【0003】
クレーンにおいて用いられる負荷トルク制限装置または負荷トルク制限方法は、クレーンの安定性に関する計算において、実効カウンタウェイト量または実効質量と、対応する実効レバーアームとを使用する。ここで、負荷トルク制限を実行するのに必要なデータを、クレーン操縦者または他の操作者が手動で入力することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このプロセスにおいて、意図しない誤入力がなされるおそれがある。これは、例えばクレーンのロングブームの組立中に起こり得る。既に準備の整ったクレーンによってクレーン作業を実行する場合、クレーンの組立過程とは違って、全ての吊されたバラストが必要とはされず、上部旋回体上の十分に大きなバラストがバランシングのために十分であり得る。存在するバラストによってクレーンに作用するトルクを大きくするために、クレーン操縦者は、例えば、クレーンの上部旋回体からバラストプレートを取り除き、それらを吊されたバラスト上に配置することができる。クレーンを組み立てた後、吊されたバラストは取り外されてもよく、クレーンは上部旋回体バラストのみを伴って作業可能である。しかしながら、ここで重要なのは、以前に改めて積み重ねたバラストプレートを、クレーン上部旋回体上に再び配置することである。別の例によると、クレーン制御部は、大きすぎる誤って記憶されたカウンタウェイトを有するおそれがある。この場合、ブームが過剰に持ち上げられるかも知れず、それによりクレーンが後方に傾いてしまうおそれがある。
【0005】
こうした背景に対して、本発明の課題は、特に独立して実効カウンタウェイトを求めることができる装置を提供することである。よって、本発明の課題は、負荷トルク制限の設定もしくはカウンタウェイトの設定に関する誤入力を回避すること、またはクレーン操縦者もしくは他の操作者の手動入力を、少なくとも再チェックもしくは妥当性チェックに付すことである。本発明の別の課題は、クレーン操縦者または他の操作者による入力を不要とする完全に自律的に作動する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、この課題は、請求項1の特徴を有するクレーンによって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。したがって、クレーンは、少なくとも1つの当接部の内部および/または外部に設けられ、受け部によって当接部に及ぼされる力を求めるように構成された少なくとも1つの力測定装置を備える。
【0007】
有利には、また、クレーン操縦者のいかなる介入も伴わずに、クレーンにどのカウンタウェイトが取り付けられたかが求められてもよい。カウンタウェイトの追加的な手動入力において、求められた値の助けを借りた妥当性チェックがなされてもよく、よってカウンタウェイトに基づいて実行される負荷トルク制限の信頼性が向上し得る。
【0008】
好ましい実施形態では、力測定装置が、特に油圧式のシリンダおよびピストン装置を有することが考えられる。ここで、シリンダおよびピストン装置は、受け部の旋回方向に対して接線方向に向いていてもよい。当該実施形態では、油圧式のシリンダおよびピストン装置として、クレーンに既存の油圧系の構成要素の少なくとも一部が、本発明を実施するために使用されるのが有利である。ここで、油圧式のシリンダおよびピストン装置は、受け部に設けられていてもよく、またはその代わりに、クレーンの残る構造部に設けられていてもよく、それにより受け部は、少なくとも1つの位置において、シリンダおよびピストン装置を介して、クレーンの残る構造部に支持される。
【0009】
別の好ましい実施形態では、シリンダ内にピストンロッドの少なくとも一部を押し込むように構成された少なくとも1つのばねを設けることが考えられる。よって、当該ばねは、シリンダ空間を、例えば30バールの、特定の系統圧力で永続的に予圧する機能を有する。シリンダ空間内の圧力は、ばねに抗するように作用し得る。システムの予圧は、当該システムが常に十分なオイルで満たされるという利点をもたらす。システムは、例えば漏れによって、時間の経過と共に単純に空になるおそれがなく、よって装置の機能性が損なわれない。また、ばねは、低温のシリンダ空間や低温のオイルで満たされたシリンダ空間が昇温する場合に補償を作り出す。これにより、シリンダを破壊し得るシリンダ空間における過剰圧力のリスクが回避される。考えられるピストンのストローク経路および/またはばねの変位は、ここでは例えば20mmに達する。
【0010】
別の好ましい実施形態では、シリンダのシリンダ空間が、10~50バール、特に20~40バール、とりわけ30±5バールの系統圧力で予圧されていることが考えられる。
【0011】
また、シリンダからの圧力媒体の逆流が、逆止弁を介してブロック可能であってもよい。ここで、逆止弁は、力測定装置によって求められまたは測定され得る、シリンダおよびピストン装置内での油圧の上昇をもたらし得る。
【0012】
別の好ましい実施形態では、力測定装置が、シリンダ内の圧力を測定するための圧力メータとして構成されていることが考えられる。また、測定された圧力から実効カウンタウェイトを計算するように構成されたクレーン制御部が設けられていてもよい。このために、クレーン制御部は、例えば、当接部の数、存在するレバーアーム、重心の距離や位置などのクレーンにおける幾何学的関係、およびばねのばね定数といった様々なパラメータを使用してもよい。
【0013】
別の好ましい実施形態では、測定回路における最大圧力を特に400バールまでに制限するように構成された安全装置が設けられていてもよい。これにより、測定回路に対するいかなる損傷をも回避または阻止することができる。
【0014】
別の好ましい実施形態では、ピストンロッドは、その支持面が球面状に設計されていてもよい。これにより、例えば、ピンとして設計された連結部回りにおける受け部の旋回動作中に当該ピストンロッドが傾きまたはブロックされるのが阻止され、それにより装置の測定精度を高めることができる。
【0015】
本発明は、また、クレーンの実効カウンタウェイトを求めるための装置であって、カウンタウェイトのための受け部の旋回範囲を制限するように構成された少なくとも1つの当接部を備えた装置に関する。装置は、クレーンに関連して上述した特徴のいずれかをさらに有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係るクレーンの上部旋回体の鋼構造の部分斜視図である。
【
図2a】
図2aは、本発明に係るクレーンを側方から見た概略的な細部図である(ここでは、右側の受け部のみが示されている)。
【
図2b】
図2bは、本発明に係るクレーンを上から見た概略的な細部図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るクレーンの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のさらなる詳細や利点について、図面に例示する実施形態に関連して説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るクレーン10の細部を示している。クレーン10は、当該クレーン10に設けられた実効カウンタウェイトを求めるための装置を備える。受け部2は、ここではクレーン10の残る構造部に連結されていて、
図2aに示す1つ以上のカウンタウェイト体3を受けるように構成されている。ここで、受け部2は、バラストパレット2と呼ばれてもよく、その上にカウンタウェイト体3が配置可能な少なくとも1つの水平ベース部と、この水平ベース部に対して実質的に垂直に設けられ、当該ベース部およびその上に配置可能なカウンタウェイト体3をクレーン10の残る構造部において保持する少なくとも1つの保持部とを有していてもよい。
【0019】
受け部2の上側領域には、当該受け部2をクレーン10の別の構造部に旋回可能に連結するための連結部5が設けられていてもよい。連結部は、受け部2またはクレーン10にピン5を有していてもよく、当該ピン5回りにおいて受け部2がクレーン10に対して旋回可能に連結される。
【0020】
クレーン10または受け部2の領域には、特にピン5と離間して、受け部2の旋回範囲を制限するように構成された少なくとも1つの当接部7が設けられている。力測定装置6は、当接部7の内部および/または外部に設けられていてもよく、受け部2によって、または受け部2に配置されたカウンタウェイト体3によって当接部7に及ぼされる力を求めまたは測定するように構成されている。
【0021】
バラストパレット2は、
図1に示すクレーン10の上部旋回体1において左側および右側の両方に設けられていてもよい。カウンタウェイト体3は、カウンタウェイトプレート3として形成されていてもよく、および/またはバラストパレット2上に積載可能であってもよい。ここで、カウンタウェイトプレート3を配置するために、クレーン10それ自体または補助クレーンを使用することができる。クレーンなしでカウンタウェイトプレート3を持ち上げるための複雑な油圧装置が、これにより省略可能である。
【0022】
力測定装置6は、油圧シリンダおよびピストン装置として構成されていてもよく、またはそれらで構成されていてもよい。当接部7の領域にひずみゲージなどの他の力メータが設けられ、当該メータで生じる力またはひずみを検出できるようにした代替的な実施形態も考えられる。
【0023】
図2aは、当接部7が実質的に連結部5またはピン5の下方に配置されてもよいことを示している。ここで、当接部7は、カウンタウェイト体3の重量力によって生じるトルクが当該当接部7に作用し得るように配置されていればよい。
【0024】
図2bは、圧力センサまたは圧力センサを接続するための流体ラインが、シリンダおよびピストン装置61,62のピストン側に設けられていてもよいことを示している。図示のように複数のシリンダおよびピストン装置61,62が設けられる場合、それらに作用する全ての力は、各装置61,62に作用する力の対応した加算によって求められてもよい。
【0025】
また、
図2bは、ピストンロッド62をシリンダ61内に押すように構成された少なくとも1つのばね63が設けられていてもよいことを示している。ばね63は、必要に応じて、シリンダ61のシリンダ空間を特定の系統圧力で予圧するものであってもよい。ここで、ばね63は、各シリンダおよびピストン装置61,62のロッド空間に設けられていてもよい。
【0026】
図2bに示す圧力メータ65は、安全装置を有していてもよく、または対応する安全装置に接続されていてもよい。当該安全装置は、測定回路における最大圧力を例えば400バールまでに制限して装置を保護するように構成されていてもよい。
【0027】
また、当接部7または連結部5などの装置の構成要素は、既存のクレーンに遡及的に設けられまたは組み込まれてもよく、それにより既存のクレーンに対する本発明に係る装置の後付けをシンプルに実現できる。
【0028】
図面からわかるように、バラストパレット2は、水平旋回軸4回りに旋回可能となるようにクレーン10の上部旋回体1に接続されていてもよい。補助クレーンは、そのフックにバラストパレット2をつないで、それらを旋回軸4を構成し得るピン5に吊すことができる。
【0029】
バラストパレット2は、当該バラストパレットがさらに下降すると当接部7に当接する。バラストパレット2は、続いて、さらなるカウンタウェイトプレート3を受けてもよい。ここで、ピン5における力Fyおよび当接部7における力Fxが常に増大する。
【0030】
力Fxを測定する力測定装置6が当接部7に設けられていてもよい。力Fxは、実効カウンタウェイトの重量力Gに応じて変化する。
【0031】
力測定装置6は、ピストンロッド62が出ているシリンダ61を有していてもよい。ピストンロッド62は、ばね63によってシリンダ61の空間内へ押されている。
【0032】
シリンダ空間は、例えば30バールの系統圧力において永続的に予圧されている。よって、シリンダ空間内の圧力は、ばね63に抗して作用する。ここでバラストパレット2がピストンロッド62に力Fxを及ぼすと、当該ピストンロッド62はシリンダ空間内にさらに入り込もうとする。しかしながら、油圧オイルの逆流は、逆止弁64によってブロックされる。圧力が上昇する。この上昇は、圧力メータ65において測定されてもよい。
【0033】
クレーンは、求められた測定値を受けて様々なパラメータに応じて実効カウンタウェイトの質量を求め、それを(組み立てられた状態の)クレーンの負荷トルク制限装置に提供してもよい。
【0034】
上記パラメータは、当接部7の数と、レバーアーム、重心の間隔や位置などの幾何学的関係と、ばね63のばね定数とであってもよい。
【0035】
測定回路における例えば400バールまでの圧力制限は、安全装置として設定されてもよい。また、ピストンロッド62は、その支持面621が球面状に設計されていてもよい。
【0036】
システムを30バールの圧力で予圧することにより、当該システムが常に十分なオイルで満たされるという利点がもたらされる。システムは、時間の経過と共に漏れによって空になることがなく、よって機能しなくなるおそれがない。他方、ばね63は、冷たいシリンダや冷えたオイルで満たされたシリンダが昇温する場合に補償を作り出す。これにより、シリンダを破壊し得るシリンダ空間における過剰圧力のリスクが回避される。ここで、考えられる経路は、例えばピストンの20mmのストロークであってもよい。