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特許7051397樹脂組成物、その製造方法、およびそれからなる動力伝達用成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物、その製造方法、およびそれからなる動力伝達用成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20220404BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20220404BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220404BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20220404BHJP
   C08L 77/10 20060101ALI20220404BHJP
   D01F 6/60 20060101ALI20220404BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C08L77/00
C08J3/20 Z CFG
C08K3/04
C08K7/02
C08L77/10
D01F6/60 371Z
F16C33/20 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017230121
(22)【出願日】2017-11-30
(65)【公開番号】P2019099640
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 尚光
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-112723(JP,A)
【文献】特開2007-023408(JP,A)
【文献】特開平06-341016(JP,A)
【文献】特開2006-213839(JP,A)
【文献】特表2006-519909(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098806(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 3/00-3/28
D01F 1/00-9/00
F16C 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、カーボンブラックを含有する芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂組成物であり、前記熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂であり、前記樹脂組成物100重量部中に前記芳香族ポリアミド繊維を5~30重量部を含み、前記芳香族ポリアミド繊維が以下の要件を満たすことを特徴とする樹脂組成物。
(1)前記芳香族ポリアミド繊維の繊維長が0.5~5.0mmの範囲であること。
(2)前記芳香族ポリアミド繊維がポリマーと添加物からなる芳香族ポリアミドを繊維としたものであり、芳香族ポリアミド中に5~30重量%のカーボンブラックが添加物として含まれること。
【請求項2】
前記芳香族ポリアミド繊維が、コポリパラフェニレン3,4’-オキシジフェニレンテ
レフタラアミドを含む繊維である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂の融点が200~300℃である請求項1、または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド系樹脂が、ナイロン6、またはナイロン66の少なくとも一方である請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂およびカーボンブラックを含有する芳香族ポリアミド繊維を溶融混練する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなる動力伝達用成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は部品同士が接触した場合にも、相手材への焼け、そして傷つけることが少なく、動力伝達用の部品等に用いることが最適である繊維強化された動力伝達用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属と比べ、樹脂組成物は加工性に優れ、特に繊維補強された樹脂組成物は、軽量性、高度な機械物性、易加工性、耐食性などの優れた特長を有するため、自動車部材など様々な用途において、動力伝達用の部材として利用され始めている。例えば特許文献1や特許文献2では、熱可塑性樹脂を、炭素繊維と有機繊維で補強した繊維強化樹脂成形品が挙げられている。
【0003】
しかしながら、動力伝達用部材の高回転駆動時に、相手材との摩擦により高温となり、さらには無機充填剤(例えば炭素繊維、ガラス繊維)により相手材を傷つけるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5633660号公報
【文献】特開2009-24057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高温での物性に優れ、さらには優れた耐摩耗性(相手材の焼き、傷つき)を改良した樹脂組成物、およびそれからなる動力伝達用成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)熱可塑性樹脂と、カーボンブラックを含有する芳香族ポリアミド繊維を含む樹脂組成物であり、前記の熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂であり、前記樹脂組成物100重量部中に前記芳香族ポリアミド繊維を5~30重量部を含み、前記芳香族ポリアミド繊維が以下の要件を満たすことを特徴とする樹脂組成物。
(I)前記芳香族ポリアミド繊維の繊維長が0.5~5.0mmの範囲であること。
(II)前記芳香族ポリアミド繊維がポリマーと添加物からなる芳香族ポリアミドを繊維としたものであり、芳香族ポリアミド中に5~30重量%のカーボンブラックが添加物として含まれること。
(2)熱可塑性樹脂、および芳香族ポリアミド繊維を溶融混練する工程を含む、上記(1)に記載の樹脂組成物の製造方法。
(3)上記(1)に記載の樹脂組成物からなる動力伝達用成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた耐摩耗性(相手材の焼き、傷つき)を改良した樹脂組成物、およびそれからなる動力伝達用成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、カーボンブラックを含む芳香族ポリアミド繊維を含有するものである。
【0009】
本発明の樹脂組成物に用いられる熱可塑性樹脂としては特に制限はないが、例えばポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ハロゲン化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリールスルホン樹脂、ポリアリールケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイドスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらを2種以上用いることもできる。これらの中でも、低温から高温までの幅広い範囲で使用できる耐熱性の観点から、ポリアミド系樹脂やポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)が好ましい。
【0010】
さらには本発明で用いる熱可塑性樹脂の融点としては、200~300℃であることが好ましく、特には220~260℃の範囲であることが好ましい。もっとも、融点が高いほど得られる繊維強化樹脂の耐熱性を高めることができるものの、高すぎると加工性は低下する傾向にある。このような耐熱性と加工性のバランスから、ポリアミド系樹脂が特に有用である。
【0011】
ポリアミド系樹脂のさらに具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、ナイロン6、ナイロン66がより好ましい。
【0012】
本発明の樹脂組成物は、上記のような熱可塑性樹脂に加え、カーボンブラックを含む芳香族ポリアミド繊維を含有することを必須としている。
【0013】
そして本発明の樹脂組成物に用いられる芳香族ポリアミド繊維としては、主骨格を構成する芳香環がアミド結合により結合されてなるものである。ここで繊維となる芳香族基は同一または相異なる芳香族基からなるものでも構わない。また、芳香族基の水素原子は、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基で置換されていても良い(以下「芳香族ポリアミド繊維」を「アラミド繊維」ということがある。)。
【0014】
特に好ましい芳香族ポリアミド繊維としては、ポリアミドを構成する繰返し単位の80モル%以上好ましくは90モル%以上が、芳香族ポリアミドからなる繊維である。さらに芳香族ポリアミド繊維としては、芳香環がパラの位置に結合されたパラ系芳香族ポリアミド繊維と、芳香環がメタの位置に結合されたメタ系芳香族ポリアミド繊維があり、本発明ではどちらも用いられるものの、強度に優れたパラ系芳香族ポリアミド繊維であることが好ましい。
【0015】
本発明に用いられるパラ系芳香族ポリアミド繊維は、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、あるいは、これに第3成分を共重合した繊維である。ポリパラフェニレンテレフタルアミド共重合体の一例として、下記式(1)に示すコポリパラフェニレン・3.4’-オキシジフエニレン・テレフタルアミドが例示される。
【0016】
【化1】
【0017】
(式中、mおよびnは、正の整数を表す。)
パラ系芳香族ポリアミド繊維のうち、ポリパラフェニレンテレフタルアミドからなる繊維としては、「トワロン」(帝人トワロン(株)製)、「ケブラー」(デュポン(株)製)などが例示される。
【0018】
また、上記式(1)で表されるコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミドからなる繊維としては、「テクノーラ」(帝人(株)製)が挙げられる。
【0019】
(特開平9-143821号公報より)
本発明に用いられるパラ系芳香族ポリアミド繊維は、カーボンブラックを含有するものであるが、前記カーボンブラックとしては、公知のものが使用でき、例えば、アセチレンブラック(デンカ社製、「デンカブラック」)、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。これらは、通常、微粉末としてマトリックスポリマーに分散して用いることができる。ここで、カーボンブラックの一次粒径は、好ましくは10~100nmである。
ここで、一次粒径とは、粒子が凝集し二次粒子を形成する前の粒子径を言う。
【0020】
ポリパラフェニレンテレフタルアミドのような異方性溶液の場合はドープ中でポリマーが液晶を形成して緻密な構造となるのでカーボンブラックの如き添加物を取り込むためにはサイズが小さいことが必要である。これに対し、等方性溶液ではドープ中のポリマー構造がルーズなので添加物の取り込みが容易であり、添加剤のサイズの問題は少ない。しかし、以下の理由により、添加すべきカーボンの一次粒径は10~100nmとすることが好ましい。
【0021】
一次粒径が10nmより小さい場合は、表面エネルギーが高く凝集を起こし易いので、その対策として有機系の分散補助剤との併用が必要となり、その結果熱延伸工程で分散補助剤が熱分解することによる製糸性への悪影響が生ずる。
【0022】
一次粒径が100nmを超える場合は、二次構造単位であるストラクチャーまたはクラスターともよばれる、二次構造単位が繊維中で粗大凝集物として欠陥異物になり単糸切れによる毛羽や断糸の原因となり好ましくない。
【0023】
ここで、このようなカーボンブラックを含有するパラ系芳香族ポリアミド繊維を製造するには、パラ型アラミド含有ドープにカーボンブラックを添加し、これを、常法に従い、湿式紡糸、延伸すればよい。
尚、(以下「芳香族ポリアミド繊維」を「アラミド繊維」ということがある。)。
【0024】
パラ型アラミド繊維中へのカーボンブラックの添加量は、前記パラ型アラミド繊維100重量%中に、5~30重量%、好ましくは10~20重量%である。5重量%未満では、相手材との摩擦で発生する熱を繊維方向に拡散する効果が少なくなる。一方、30重量%を超えると、芳香族ポリアミド繊維の強力などの物性が低下する場合がある。
【0025】
本発明で用いられるアラミド繊維の繊維長は、0.5~5.0mmであることが必要であるが、1.0~3.0mmが好ましく、1.2~2.5mmがさらに好ましい。
【0026】
アラミド繊維の繊維長が0.5mmより短すぎると樹脂組成物の耐衝撃性が低下しやすく、また繊維が脱落し易い傾向にあり、逆に繊維長が5.0mmより長すぎると、樹脂組成物の破断時の断面積あたりのアラミド繊維の本数が少なくなるため、やはり耐衝撃性が低下する傾向にある。
【0027】
アラミド繊維のカットの方法としては、繊維の切断が可能ないずれのカッターを用いても良いが、具体的にはロータリーカッター、ギロチンカッター等を用いてカットすることが好ましい。
【0028】
アラミド繊維の単繊維繊度は、0.1~5.5dtex、好ましくは0.3~2.5dtexの範囲である。
【0029】
アラミド繊維の単繊維繊度が、0.1dtexより小さすぎると製糸技術上困難な点が多く、断糸や毛羽が発生して良好な品質の繊維を安定して生産することが困難になるだけでなく、コストも高くなるため好ましくない。一方、逆に繊度が5.5dtexより大きすぎても、繊維の機械的物性、特に強度低下が大きくなり、かつ繊維強化樹脂成形体とした時に、成形体中に均一に繊維を分散させることが困難となるため好ましくない。
【0030】
本発明の樹脂組成物に対するアラミド繊維の含有率は、樹脂組成物100重量部中に、5~30重量部が必要であり、8~25重量部がより好ましく、10~20重量部がさらに好ましい。
【0031】
アラミド繊維の含有量が5重量部少なすぎると、十分な耐衝撃性を得ることができず、逆に30重量部より多すぎると、繊維、特に繊維長の長いアラミド繊維を、樹脂中に均一に分散させることが困難になる。
【0032】
さらに本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分を含有してもよい。他の成分の例としては、炭素繊維以外の無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、あるいはカップリング剤などが挙げられる。
【0033】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、カーボンブラックを含有するポリアミド繊維を、熱可塑性樹脂と溶融混練して製造することである。
【0034】
そして、本発明の樹脂組成物の製造方法としては、2軸スクリューによる溶融混錬方式が好ましい。
【0035】
溶融混錬方法としては、本発明の樹脂組成物を構成する原料を、公知のブレンド方法にて均一にブレンドして、二軸押出機の供給口(ホッパー口)に投入し、シリンダー内に供給する。そして、シリンダー温度、スクリュー回転数、吐出量を適正な条件に設定し、二軸押出機にて溶融混錬する。
【0036】
原料のシリンダーへの投入法方法として、サイドフィーダーによる供給も好ましい。
特に、溶融混錬時のせん断による折れ、切断、割れが生じやすい繊維状、層状の原料は、サイドフィーダーによる供給が好ましい。
【0037】
次いで、溶融混錬された樹脂組成物を、ダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカットして樹脂組成物のペレットを得て、本発明の樹脂組成物を得る。
【0038】
さらに、本発明の樹脂組成物は、溶融、成形のプロセスを経て、成形品を得ることが可能であり、成形方法としては、ペレット状などの繊維含有樹脂組成物を直接プレス成形等を行っても良いが、再溶融して射出成形することが好ましい。
【0039】
このようにして得られる本発明の成形品は、高温時の耐摩耗性(相手材の焼き、相手材への傷つけ性)を大幅に改良し、特に動力伝達用の樹脂部品として好ましく用いることができる。
【実施例
【0040】
以下実施例により、本発明を具体的に説明する。しかしながら本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下の実施例における評価および特性値は、以下の測定法により求めた。
【0041】
(1)アラミド繊維含有率
樹脂組成物1.0gを蟻酸(88%)に入れて、常温で24時間以上放置して、樹脂成分を溶解させた。これを濾過し、ギ酸を水洗、乾燥して、含有率測定用の残渣とした。
【0042】
(2)繊維長
上記(1)で得られた濾過後の繊維含有率測定用の残渣について、その残渣をシャーレに入れて、エタノールを加えて超音波で分散後、アラミド繊維の繊維長を、キーエンス社製光学顕微鏡(DEGITAL MICROSCOPE VHX-1000)を用いて、各々400本測定して、各繊維長の平均を求めた。
【0043】
(3)摺動性;
本発明の摺動性は、摺動面の温度(相手材の焼き)、相手材の表面粗さ(傷つき性)について以下方法にて評価した。
【0044】
摺動面の温度(相手材の焼き)
スラストシリンダー式摩耗試験法で実施した。得られた樹脂組成物から作製した試験片と、アルミ製筒とを、接触面圧:9.8MPa、滑り速度:0.5m/s、試験時間:30minの条件にてこすり合わせ、サーモグラフィで摺動面の温度を計測した。
摺動面の実温が80℃未満を◎、80~100℃未満を○、100℃以上を×と評価した。
【0045】
相手材の表面粗さ(傷つき性)
また、上記試験後に、相手材(アルミ製筒)の表面粗さを、レーザー顕微鏡にて計測した。
表面粗さが8μm未満の場合は◎、8~10μm未満の場合は○、10μm以上の場合は×と評価した。
【0046】
[実施例1]
芳香族ポリアミド繊維として、カーボンブラック(大日精化工業(株)製、MPS-1504B1ack(T)一次粒径:30nm)を前記芳香族ポリアミド100重量%中に5重量%含有するコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人株式会社製、繊維径12μm、繊度1,670dtex、繊維本数1000本)を、3本合わせてS方向に35回/mの撚りを加えた。次いで、ポリウレタン樹脂(DIC株式会社製「ボンディック8510」)をイオン交換水で固形分濃度20重量%に希釈した液に、この撚りコードを連続浸漬させて、温度150℃の乾燥機に1分間通し、処理剤付着量が13重量%の芳香族ポリアミド繊維を得た。次いで、この芳香族ポリアミド繊維を、ギロチンカッターで3mm長にカットし、共重合芳香族ポリアミド繊維短繊維を得た。
一方、熱可塑性樹脂としてポリアミド66樹脂(融点265℃)を用意した。
【0047】
次いで、二軸押出機の供給口にポリアミド樹脂66を85重量部供給し、サイドフィーダーより芳香族ポリアミド繊維15重量部を供給し、溶融混練をおこなった。押出機のシリンダー温度は280~300℃、スクリュー回転数は300rpm、吐出量は35kg/時間であった。
【0048】
次いで、溶融樹脂組成物をダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして樹脂組成物のペレットを得て、動力伝達用の樹脂組成物とした。
【0049】
得られたペレット(樹脂組成物)を用いて、射出成形機を用いて成形品(摺動部材)を作製して、この成形品の繊維含有率、繊維長を求めた。また、衝撃強度、摺動面の状態を評価した。
相手材への焼き、傷つき性ともに良好であった。評価結果を表1に示す。
【0050】
[実施例2]
芳香族ポリアミド繊維として、カーボンブラック(大日精化工業(株)製、MPS-1504B1ack(T)一次粒径:30nm)を10重量%含有するコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維に変更した以外は実施例1と同様にして、成形品(摺動部材)を作製・評価した。
相手材への焼き、傷つき性ともに良好であった。評価結果を表1に示す。
【0051】
[実施例3~5]
芳香族ポリアミド繊維として、前記カーボンブラックを、各15、18、22重量%含有するコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維に変更した以外は実施例1と同様にして、成形品(摺動部材)を作製・評価した。
相手材への焼き、傷つき性ともに良好であった。評価結果を表1に示す。
【0052】
[比較例1、2]
芳香族ポリアミド繊維として、前記カーボンブラックを、各0、40重量%含有するコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維に変更した以外は実施例1と同様にして、成形品(摺動部材)を作製・評価した。評価結果を表1に示す。
比較例2では、カーボンブラックの量が多すぎて、製糸することができなかった。
【0053】
[実施例6、7、比較例3]
芳香族ポリアミド繊維を各5、25、40重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、成形品(摺動部材)を作製・評価した。評価結果を表1に示す。
比較例3は、ポリアミド繊維の含量が多すぎて組成物が作成できなかった。
【0054】
[比較例4]
芳香族ポリアミド繊維の代わりにPAN系炭素繊維を15重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、成形品(摺動部材)を作製・評価した。評価結果を表1に示す。
相手材の表面粗さ(傷つき)が良くなかった。
【0055】
【表1A】
【0056】
【表1B】