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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】光送信モジュール及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/015 20060101AFI20220404BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20220404BHJP
   G02F 1/025 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G02F1/015 505
H01S5/022
G02F1/025
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017235047
(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公開番号】P2019101346
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
(72)【発明者】
【氏名】中西 慧
(72)【発明者】
【氏名】山内 俊也
(72)【発明者】
【氏名】中井 義博
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 秀明
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003729(JP,A)
【文献】特開2014-036102(JP,A)
【文献】特表2007-525842(JP,A)
【文献】特開2013-008887(JP,A)
【文献】特開2012-243959(JP,A)
【文献】特開2003-068780(JP,A)
【文献】特開2011-103418(JP,A)
【文献】米国特許第06057954(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続光を発生する光源、
前記連続光を変調する少なくとも1つの変調器、
前記光源に接続すると共に前記光源へ供給される直流電流を流す直流電流線路対、及び
前記変調器に接続すると共に前記変調器へ供給される変調信号を印加する変調電流線路対、を含み、
前記直流電流線路対および前記変調電流線路対の一方は、
第一部材、第二部材、及び前記第一部材と前記第二部材とを接続する金属ワイヤを含む第一線路と、
第一直線部、第二直線部、及び前記第一直線部と前記第二直線部との間に一体的に延びる屈曲部を含む第二線路と、
を有し、
前記第一直線部は、前記第一部材と平行に延伸し、前記第二部材と共に一の直線上に存在し、
前記第二直線部は、前記第二部材と平行に延伸し、前記第一部材と共に一の直線上に存在し、
前記屈曲部は、前記金属ワイヤの下方に延び、
前記直流電流線路対および前記変調電流線路対の他方は、第三線路と、前記第三線路および前記第一部材と平行に延伸する第四線路と、を有する、
ことを特徴とする光送信モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光送信モジュールであって、前記直流電流線路対を構成する線路同士が少なくとも1回交差している、
ことを特徴とする光送信モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の光送信モジュールであって、
複数の変調器と、前記複数の変調器に各々接続される複数の変調電流対をさらに備える、
ことを特徴とする光送信モジュール。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光送信モジュールであって、一の半導体基板をさらに有し、
前記光源は、前記変調器と共に前記一の半導体基板上に集積されることで変調器集積型光源を構成する、
ことを特徴とする光送信モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の光送信モジュールであって、一のキャリアをさらに有し、
前記変調器集積型光源が前記一のキャリア上に搭載されている、
ことを特徴とする光送信モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光送信モジュールであって、一のキャリアをさらに有し、
前記変調器と前記光源が前記一のキャリア上に搭載されている、
ことを特徴とする光送信モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光送信モジュールであって、前記変調器は電界吸収型変調器である、ことを特徴とする光送信モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光送信モジュールであって、前記変調器はマハツェンダー型変調器である、ことを特徴とする光送信モジュール。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光送信モジュールであって、
前記金属ワイヤは、前記第三線路および前記第四線路に直交する、
ことを特徴とする光送信モジュール。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の光送信モジュール、及び、前記光送信モジュールと接続されたプリント基板レンズを含むことを特徴とする光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信モジュール及びそれを内蔵した光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の信号源として光変調器と半導体レーザー素子が集積された半導体光変調器集積型発光素子が用いられている。半導体光変調器集積型発光素子はチップキャリアに搭載されて用いられている。チップキャリアには光変調器に高周波信号を印加する変調電流線路と、半導体レーザー素子に電流を流す直流電流線路が配置されている。
【0003】
特許文献1は、屈曲領域を有する差動伝送線路において2つの差動信号に生じる遅延時間差を抑制するために、差動伝送線路を構成する一対の伝送線導体が互いに交差する差動伝送回路を開示している。
【0004】
特許文献2は、小信号通過特性(S21)におけるピーキングの抑圧と小信号反射特性(S11)の低減の両立を可能にする単一電源駆動方式の光送信モジュール構造を実現するため、光変調器を有する光半導体素子が搭載され、接地電極と該光変調器へ電気信号を入力する入力伝送路と入力された電気信号に対する終端抵抗とが基板表面上に形成された光半導体素子搭載基板であって、前記光半導体素子の表面上にはボンディングワイヤにて前記接地電極と接続される前記光変調器のアノード電極が設けられており、前記終端抵抗の接地側の電極と前記光変調器のアノード電極とが他のボンディングワイヤにて接続される光半導体素子搭載基板を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-199904号公報
【文献】特開2007-286454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光変調器に印加される高周波信号が光源(半導体レーザー素子)に干渉し、光源への印加電流が変調されてしまい、光信号にノイズが生じることがある。具体的には高周波信号が光変調器に印加されるため、変調電流が流れ、その変調電流が変動する際に磁場が変動する。その磁場が光源に電流を流す直流ラインに起電力を生じさせることで、本来一定でなければならない光源の駆動電流が変動することで、光源の出力光の強度や波長が変動し、変動された光源の出力光を光変調器がさらに変調するために、光変調器から出力される光信号にノイズが発生してしまう。
【0007】
図8は従来技術に係る光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。変調器部2と光源部3を含む半導体光変調器集積型発光素子1、チップコンデンサ5、終端抵抗4、6個のビアホール6、変調電流線路23がチップキャリア101の接地(GND)パターン30上に設けられている。ここでは変調器部は電界吸収型変調器であり、光源部3は分布帰還型レーザーである。
【0008】
Auワイヤ11は、変調電流線路23、変調器部2、及び終端抵抗4を電気的に接続する。Auワイヤ12は、チップコンデンサ5と光源部3とを電気的に接続する。ビアホール6は、半導体光変調器集積型発光素子1が搭載されているチップキャリア101上のGNDパターン30とチップキャリア101の接地された裏面とを電気的に接続する。終端抵抗4は、Auワイヤ11を介して変調器部2へ供給される変調電流の反射を抑制するようにインピーダンス整合している。
【0009】
光源部3にチップコンデンサ5、Auワイヤ12を介して直流電流が注入され連続(CW:Continuous Waveform)光を出力する。変調器部2には変調電流線路23と接地パターン30に変調電圧が印可され、CW光を変調し光信号が生成される。この時、変調器部2へ流れる変調電流は、電磁誘導によって光源部3の駆動回路に起電力を発生させる。その起電力によって、光源部3へ供給される直流電流(駆動電流)は変調され、光源部3から出力される連続光にノイズが生じるおそれがある。
【0010】
このような光源部3から出力されるCW光のノイズを抑制するため、光源部3と該光源部3に駆動電流を供給する電源(不図示)との間にバイパスコンデンサとしてのチップコンデンサ5が設けられる。チップコンデンサ5は、光源部3への駆動電流に起電力が加わることで電圧が変調しても、電荷を蓄積又は放出することで電圧の変調を抑制することができる。その結果チップコンデンサ5は、光源部3の駆動電流を安定化させることでノイズを抑制し得る。
【0011】
しかしこのチップコンデンサは設置面積を必要とする上、複数の光源が実装される場合には、チップコンデンサは光源ごとに必要となる。そのためチップコンデンサは、光送信モジュールの小型化・高密度実装の妨げとなっていた。
【0012】
従って本発明は、ノイズを抑制しながら小型化・高密度実装を実現する光送信モジュールおよびそれを用いた光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の光送信モジュールは、連続光を発生する光源、前記連続光を変調する少なくとも1つの変調器、前記光源に接続すると共に前記光源へ供給される直流電流を流す直流電流線路対、及び前記変調器に接続すると共に前記変調器へ供給される変調信号を印加する変調電流線路対、を含む。前記直流電流線路対を構成する線路同士、又は、前記変調電流線路対を構成する線路同士のいずれか一方のみが、少なくとも1回交差している。
【0014】
(2)(1)に記載の光送信モジュールにおいて、前記直流電流線路対を構成する線路同士が少なくとも1回交差してよい。
【0015】
(3)(2)に記載の光送信モジュールにおいて、複数の変調器と、前記複数の変調器に各々接続される複数の変調電流対をさらに備えてよい。
【0016】
(4)(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の光送信モジュールにおいて、一の半導体基板をさらに有してよい。前記光源は、前記変調器と共に前記一の半導体基板上に集積されることで変調器集積型光源を構成してよい。
【0017】
(5)(4)に記載の光送信モジュールにおいて、一のキャリアをさらに有してよい。前記変調器集積型光源が前記一のキャリア上に搭載されてよい。
【0018】
(6)(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の光送信モジュールにおいて、一のキャリアをさらに有してよい。前記変調器と前記光源が前記一のキャリア上に搭載されてよい。
【0019】
(7)(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の光送信モジュールにおいて、前記変調器は電界吸収型変調器であってよい。
【0020】
(8)(1)乃至(6)のいずれか一項に記載の光送信モジュールにおいて、前記変調器はマハツェンダー型変調器であってよい。
【0021】
(9)(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の光送信モジュールにおいて、前記直流電流線路対を構成する第一線路は、第一部材、該第一部材から分離する第二部材、及び前記第一部材と前記第二部材とを接続する金属ワイヤを含み、前記直流電流線路対を構成する第二線路は、第一直線部、第二直線部、及び前記第一直線部と前記第二直線部との間に位置する屈曲部を一体として有し、前記第一部材は、前記第一直線部と平行に延伸し、かつ、前記第二直線部と共に一の直線上に存在し、前記第二部材は、前記第二直線部と平行に延伸し、かつ、前記第一直線部と共に一の直線上に存在し、前記屈曲部と前記金属ワイヤとは、前記変調電流線路対の側方で交差してよい。
【0022】
(10)本発明による光モジュールは、(1)乃至(9)のいずれか一項に記載の光送信モジュール、及び、前記光送信モジュールと接続されたプリント基板をとレンズを含む。
【発明の効果】
【0023】
本願の光送信モジュールは、大型な部品を使用せず、変調器に印可される変調成分が光源に注入される直流電流へ影響することを抑制し、安定した直流電流を光源に注入させることで特性に優れ、かつ小型な光送信モジュールおよびそれを内蔵した光モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本願の第一実施形態に係る光モジュールが装着された光伝送装置の構成を示す模式図である。
図2】光送信モジュール、プリント基板及びフレキシブル基板を示す概略図である。
図3】本願の第一実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。
図4】本願の第二実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。
図5】本願の第三実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。
図6】本願の第四実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。
図7】本願の第五実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。
図8】従来技術に係る光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第一実施形態]
図1は、本願の第一実施形態に係る光モジュールが装着された光伝送装置の構成を示す模式図である。光伝送装置400に、複数の光モジュール200が、電気コネクタ202によりそれぞれ装着されている。光伝送装置400は、例えば、大容量のルータやスイッチである。光伝送装置400は、例えば交換機の機能を有しており、基地局などに配置される。光伝送装置400は、光モジュール200より受信用のデータ(受信用の電気信号)を取得し、回路基板204に搭載されるIC206などを用いて、どこへ何のデータを送信するかを判断し、送信用のデータ(送信用の電気信号)を生成し、該当する光モジュール300へそのデータを伝達する。
【0026】
光モジュール300は、プリント基板310と、フレキシブル基板312と、光信号及び電気信号を少なくとも一方から他方に変換するための光サブアッセンブリ314と、を備えている。プリント基板310は、柔軟性の無いリジッド基板である。プリント基板310と光サブアッセンブリ314とは、フレキシブル基板312を介して接続されている。プリント基板10から電気信号がフレキシブル基板312を介して光サブアッセンブリ314へ伝送される。また、光サブアッセンブリ314から電気信号がフレキシブル基板312を介してプリント基板310へ伝送される。光サブアッセンブリ314が有する光変換素子は、光信号又は電気信号のうち一方から他方へ変換する素子である。電気信号を光信号へ変換する光変換素子が発光素子であり、光信号を電気信号へ変換する光変換素子が受光素子である。光サブアッセンブリ314は、発光素子及び受光素子の少なくとも一方(例えば両方)を含んでいる。光信号の入出力のために、光サブアッセンブリ314には光ファイバ316が接続されている。
【0027】
図2は、光サブアッセンブリ、プリント基板及びフレキシブル基板を示す概略図である。光サブアッセンブリ314は、フレキシブル基板312の一方の端部に接続されている。フレキシブル基板312の他方の端部は、プリント基板310に重なって電気的に接続されている。本願の光送信モジュール300は、送信機能を有した光サブアッセンブリである。光送信モジュール300は、内部に光信号を生成する信号源(詳細は後述)とその出力光を光ファイバ316へ光学結合するためのレンズ(不図示)等を備えている。
【0028】
図3は、本願の実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された信号源である半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。変調器部2と光源部3を含む半導体光変調器集積型発光素子1、終端抵抗4、光源部3と電気的に接続する直流電流線路21,22、及び、変調器部2と電気的に接続する変調電流線路23,24がチップキャリア101上に設けられている。
【0029】
光源部3は、分布帰還型レーザー装置(Distributed Feedback Laser Diode:DFB-LD)であることが好ましいがこれに限定されない。また光源部3はCW光源である。
【0030】
変調器部2は光源部3から放出されるCW光を変調させるように設けられる。変調器部2は電界吸収(EA)型変調器又はマハツェンダー(MZ)型変調器であってよい。図示された実施形態では変調器部2はEA型変調器である。本実施形態では、光源(光源部3)と変調器(変調器部2)は一の半導体基板に集積された変調器集積型光源を構成している。そして光源部と変調器部のカソードは、半導体基板側で共通となっており、半導体基板の裏側(光源、変調器が形成されている面の逆面)にてチップキャリア101と接続されている。
【0031】
チップキャリア101は表面に導体膜が形成されたAlN等のセラミック基板である。半導体光変調器集積型発光素子1とチップキャリア101ははんだにて接合されている。
【0032】
図示されている実施形態では、変調器部2に接続する変調電流線路23,24(変調電流線路対)はそれぞれ変調器部2のアノード側変調電流線路及び変調器部2のカソード側変調電流線路である。また図示されている実施形態では、光源部3に接続する直流電流線路21,22はそれぞれ光源部3のカソード側直流電流線路及び光源部3のアノード側直流電流線路対である。
【0033】
終端抵抗4は、Auワイヤ11を介して変調器部2へ供給される変調電流の反射を抑制するようにインピーダンス整合している。本実施形態では50Ωである。Auワイヤ11は、変調電流線路23、変調器部2、及び終端抵抗4を電気的に接続する。Auワイヤ12は、直流電流線路22と光源部3とを電気的に接続する。Auワイヤ13は、直流電流線路21に含まれ、直流電流線路22と交差するように設けられる。
【0034】
直流電流線路21は、第一部材21a、第二部材21b、及び前記第一部材と前記第二部材とを接続するAuワイヤ13を含む。第一部材21aと第二部材21bとは空間的に分離する。Auワイヤ13は、第一部材21aと第二部材21bとを接続する。直流電流線路22は、直線部22a、直線部22b、及び直線部22aと直線部22bとの間に位置する屈曲部を一体として有する。第一部材21aは直線部22aと平行に延伸し、かつ、直線部22bと共に一の直線上に存在する。第二部材21bは、直線部22bと平行に延伸し、かつ、直線部22aと共に一の直線上に存在する。直流電流線路22の屈曲部はAuワイヤ13と変調電流線路23,24の側方で交差する。
【0035】
光源部3から放出されるCW光を変調させるため、変調電圧(変調信号)が印加される。その結果、変調電流線路23,24に変調器部2の変調電流が流れる。流れる変調電流の変動にともない周辺の磁場も変動する。この磁場変動により、直流電流線路21,22を含む光源部3の駆動電流回路に起電力が生じることで、光源部3の駆動電流が変動する。その結果、光源部3から放出される光信号にノイズが発生する。
【0036】
しかし本実施形態による光送信モジュールでは、直流電流線路21,22を含む駆動電流回路はAuワイヤ13により交差している。前記駆動電流回路は、直流電流線路21,22が交差する領域で2つの閉回路に分けられる。そのため周辺の磁場変動が一の閉回路内に生じさせる起電力の向きは、周辺の磁場変動が他の閉回路に内に生じさせる起電力の向きとは逆方向になるので、2つの起電力は互いに打ち消しあう。このように起電力同士が打ち消しあうことで、変調電流による誘導電流が抑制され、光源部3の駆動電流の変動も抑制される。その結果、光源部3から放出される光信号に生じるノイズは抑制され得る。
【0037】
光源部3の直流電流線路21,22を交差させることにより、光源部3の駆動電流は安定化し得る。そのため本実施形態による光送信モジュールでは、図8の従来構造で使用していたチップコンデンサ5は不要となり、その結果光送信モジュールのチップキャリアサイズを小さくすることが可能である。
【0038】
なお図示された実施形態では、半導体光変調器集積型発光素子1は1つの変調器部2しか含まないが、複数の変調器部2を含んでもよい。半導体光変調器集積型発光素子1が2個の変調器部2を含み、かつ各々に接続される二つの変調電流線路対が平行して配置されている場合において、図3で示すように光源部3に接続される直流電流線路対を交差させることで、2つの変調電流線路対に流れる変調電流を起因としたノイズの影響を抑制させることができる。また直流電流線路対は交差させず、2つの変調電流線路対の両者を交差させた場合においても同様の効果が得られる。さらに直流電流線路対は交差させず、2つの変調電流線路の内の1つの変調電流線路対のみを交差させた場合は、2つの変調電流線路対間のクロストークを抑制することが可能となり、かつ少なくとも交差させた変調電流線路対から直流電流線路対への影響は抑制させることが可能となる。なお変調器部は2つに限定されず複数の変調器部を有している場合も上記同様の効果が得られる。
【0039】
[第二実施形態]
図4は、本願の第二実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。本実施形態は、Auワイヤ13が変調電流線路23,24に対して垂直に配置されていることを除いて第一実施形態と同様である。
【0040】
Auワイヤ13は、直流電流線路22と交差するように直流電流線路21に含まれ、かつ、変調電流線路23,24と直交している。そのためAuワイヤ13には、変調器部2へ流れる変調電流の電磁誘導による起電力はほとんど発生しない。
【0041】
[第三実施形態]
図5は、本願の第三実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。本実施形態と第一実施形態との違いは、直流電流線路21,22および変調電流線路23、24、そして終端抵抗4の配置である。より詳しくは、直流電流線路21と変調電流線路24が半導体光変調器集積型発光素子1の後方(光源部3の出射端とは反対の位置)に配置され、かつ、Auワイヤ12,13が直流電流線路22に含まれておらず、また直流電流線路21にAuワイヤ13が含まれない。さらに直流電流線路21と22の配置が逆になっている。これは変調電流線路23,24も同様に第一実施形態とは配置が逆になっている。また終端抵抗4は、図5において半導体光変調器集積型発光素子1の右側に配置されている。
【0042】
直流電流線路21と変調電流線路24が半導体光変調器集積型発光素子1の後方に配置されることで、キャリア幅が低減されることが図からわかる。その結果、光送信モジュールのさらなる小型化・高密度実装が実現され得る。また第一実施形態と比較して変調器部2および光源部3に接続される電流線路のアノード側とカソード側の配置が逆となっているが、光源部3に接続される直流電流線路21,22が交差することで第一実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
[第四実施形態]
図6は、本願の第四実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。本実施形態は、直流電流線路21が、Auワイヤ13と交差する領域において外側へ向かって屈曲していること、及び、それに伴って直流電流線路21とAuワイヤ12,13の配置が異なること、そして終端抵抗4の配置を除いて第三実施形態と同様である。本実施形態も、図5に示された第三実施形態同様にキャリア幅を低減され低減させることで、光送信モジュールのさらなる小型化・高密度実装を実現し得る。そして、第三実施形態と直流電流線路の交差の向きが逆であるが、第三実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
[第五実施形態]
図7は、本願の第五実施形態による光送信モジュールのチップキャリアに搭載された半導体光変調器集積型発光素子の上面図を表している。本実施形態は、直流電流線路ではなく変調電流線路が交差している点で、第一実施形態と異なる。変調電流線路24がAuワイヤ14を含み、かつ、変調電流線路23はAuワイヤ14と交差する領域において外側へ向かって屈曲している。そして直流電流線路は変調電流線路の交差部の側部においては交差していない。
【0045】
前述したように変動電流が電磁誘導によって変調電流線路23,24を構成する各線路から生じる誘導磁場を生じさせ、その誘導磁場が光源部3と接続する直流電流線路21,22内に起電力を生じさせることで、光源部3及び直流電流線路21,22内にノイズが発生する。しかし変調電流線路23,24が交差することで、電磁誘導によって変調電流線路23,24を構成する各線路から生じる誘導磁場は互いに異なる向きに発生する。その結果、生じた誘導磁場は互いに打ち消しあい、光源部3及び直流電流線路21,22へのノイズが抑制される。このように、変調器部2もしくは光源部3に接続される線路のいずれか一方のみを交差させれば、本発明の効果が得られる。
【0046】
前述した第一乃至第五実施形態による光送信モジュールでは、変調器部2と光源部3は半導体光変調器集積型発光素子1上に設けられているが、変調器部2と光源部3は集積されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 半導体光変調器集積型発光素子、2 変調器部、3 光源部、4 終端抵抗、5 チップコンデンサ、6 ビアホール、11 Auワイヤ、12 Auワイヤ、13 Auワイヤ、14 Auワイヤ、21 直流電流線路、22 直流電流線路、23 変調電流線路、24 変調電流線路、30 GNDパターン、101 チップキャリア、200 光モジュール、202 電気コネクタ、204 回路基板、206 IC、300 光送信モジュール、310 プリント基板、312 フレキシブル基板、314 光サブアッセンブリ、316 光ファイバ、400 光伝送装置。
図1
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図7
図8