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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】プランジャポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/16 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
F04B53/16 D
F04B53/16 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017238252
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2019105217
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593020913
【氏名又は名称】株式会社ナカリキッドコントロール
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】小田 憲男
(72)【発明者】
【氏名】田中 康裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆広
(72)【発明者】
【氏名】神林 優治
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-280741(JP,A)
【文献】特開2003-028052(JP,A)
【文献】特開平08-182951(JP,A)
【文献】特開2005-090296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/16
F04B 53/10
F04B 23/02
F04B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体タンク(16)と、液体貯留空間(18)と前記液体貯留空間(18)を前記液体タンク(16)に連結する吸入口(13)と前記液体貯留空間(18)の液体を外部に吐出する吐出口(12)と前記液体貯留空間(18)に連通する挿通口(14)とを有するポンプボディ(11)と、前記挿通口(14)に往復摺動自在に設けられたプランジャ(15)と、前記プランジャ(15)を往復摺動させる駆動手段(30)とを備え、
前記プランジャ(15)の往復動に伴って、前記液体貯留空間(18)の容積縮小により前記吐出口(12)から液体を吐出する一方、前記液体貯留空間(18)の容積拡大により前記液体タンク(16)から前記吸入口(13)を介して前記液体貯留空間(18)に液体を吸入するプランジャポンプにおいて、
前記プランジャ(15)は、前記液体貯留空間(18)に先端が達するように前記挿通口(14)に挿通された断面積が一定の第一棒状部(15a)を備え、
前記吸入口(13)は、前記プランジャ(15)の先端が係脱自在に構成された主吸入孔(13c)と、前記主吸入孔(13c)に並列に設けられた副吸入口(19)とを備え、
前記液体貯留空間(18)に連通する前記副吸入孔(19)と前記吐出口(12)とは前記液体貯留空間(18)を挟んで前記液体貯留空間(18)の両側に別々に形成され、
前記副吸入口(19)に、前記液体貯留空間(18)が負圧になると開く常閉の逆止弁(27)が配設された
ことを特徴とするプランジャポンプ。
【請求項2】
プランジャ(15)の先端は、第一棒状部(15a)の先端に同軸に形成され主吸引孔(13c)に挿脱可能であって前記第一棒状部(15a)と異なる一定断面積を有する第二棒状部(15b)であり、
前記第一棒状部(15a)の先端が達する液体貯留空間(18)を横断する上横孔(18a)が前記第一棒状部(15a)を支持する挿通口(14)の近傍に形成され、前記上横孔(18a)の前記液体貯留空間(18)を挟む両端に副吸入孔(19)と吐出口(12)が別々に連通して形成された
請求項1記載のプランジャポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出するプランジャポンプであって、特に中粘度から高粘度の液体を吐出するのに適したプランジャポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、図5及び図6に示すように、従来のプランジャポンプ1として、吐出口2a及び吸入口2bを備えたシリンダ2と、このシリンダ2に形成された挿通口2cに挿通され、往復動自在に構成されたプランジャ3と、吸入口2bを介してシリンダ2に液体を供給するタンク4とを備えたものが知られている。
【0003】
この吐出口2aには、シリンダ2内部の圧力が正圧になると開く第一逆止弁5が配設され、挿通口2cの内壁面には、プランジャ3の外周面と摺接するシール部材7が設けられる。そして、このシール部材7は、シリンダ2内を密閉状態に保ち、液体が漏れるのを防止するように構成される。このようなプランジャポンプ1では、シリンダ2内に進入したプランジャ3の体積量で液体の吐出量が決まるようになっている。
【0004】
一方、近年では液体の塗布量を微少とする要求もあり、そのためには、プランジャ3の径や進入量を小さくする必要がある。しかし、プランジャ3の径を小さくすると、シール部材7との密着状態を維持するのが困難になるという問題があり、進入量を小さくすると、誤差が生じやすく吐出量にばらつきが生ずるという問題があった。
【0005】
この点を解消する為に、図5に示すように、プランジャ3の先端部が係合した状態で往復摺動自在な係合口2dをシリンダ2に形成し、その係合口2dを挿通口2cと異なる開口断面積にすることや、図6に示すように、プランジャ3の先端部を吸入口2bに直接係脱自在とし、吸入口2bの開口断面積を挿通口2cより小さくするプランジャポンプ1が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、係合口2dをシリンダ2に形成する図5では、シリンダ2における吸入口2bに、シリンダ2内部の圧力が負圧になると開く第二逆止弁6が配設される。
【0006】
このようなプランジャポンプ1では、係合口2dや吸入口2bの開口断面積を、挿通口2cの開口断面積より小さくすれば、挿通口2cからシリンダ2内部に進入するプランジャ3の進入量に、係合口2dや吸入口2bの開口断面積と、挿通口2cの開口断面積の差を乗じた量の液体を吐出口2aから吐出させることができ、係合口2dや吸入口2bの開口断面積と挿通口2cの開口断面積の差を小さくすることにより、吐出量が微少であっても高精度で液体の吐出を行うことができるとしている。
【0007】
そして、液体を吐出した後には、挿通口2cからプランジャ3を抜き出す方向に移動させて、シリンダ2内部の圧力を負圧とし、係合口2dをシリンダ2に形成している図5では、第二逆止弁6を開いて吸入口2bからタンク4の液体をシリンダ2内部に供給し、プランジャ3の先端部を吸入口2bに直接的に挿入している図6では、そのプランジャ3の先端部が離脱した吸入口2bからタンク4の液体をシリンダ2内部に供給するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-28052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、近年では、高粘度の液体を微少な量で吐出することも求められるに至った。このような高粘度の液体を従来のプランジャポンプ1におけるタンク4に貯留すると、その液体の吸入口2bからの迅速な吸入が期待できない。このため、このような高粘度の液体に対して、図5に示すように、プランジャ3の先端部が係合する係合口2dを外部に通じるようにシリンダ2に形成すると、挿通口2cからプランジャ3を抜き出して、シリンダ2内部の圧力を負圧とした場合に、挿通口2cとプランジャ3との気密性が損なわれると、その挿通口2cから外部の空気がシリンダ2内部に侵入するおそれがあった。
【0010】
また、図6に示すように、プランジャ3の先端部を吸入口2bに直接的に挿入している場合には、吸入口2bからの空気の直接的な流入は回避されるけれども、そのプランジャ3の先端部が吸入口2bから離脱するまで液体がシリンダ2内部に供給されることはない。このため、プランジャ3の先端部が吸入口2bから離脱までの間にシリンダ2の内部は著しい負圧となり、シリンダ2内部に残存する液体の一部がその気圧の著しい低下により気化してしまう現象があった。この気化により生じた気体は、そのプランジャ3の先端部が吸入口2bから離脱してシリンダ2内部に液体が供給され始めた後であってもシリンダ2内に残存する不具合を生じさせる。
【0011】
そして、シリンダ2内に気体が吸引され又は気化により発生すると、その気体の膨張又は収縮により、シリンダ2内部に進入するプランジャ3の進入量に比例した量の液体を吐出口2aから吐出させることが困難になるという、未だ解決すべき課題が残存していた。
【0012】
本発明の目的は、気体の吸引や発生を防止して、高精度で液体の吐出を行うことができるプランジャポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、液体タンクと、液体貯留空間と液体貯留空間を液体タンクに連結する吸入口と液体貯留空間の液体を外部に吐出する吐出口と液体貯留空間に連通する挿通口とを有するポンプボディと挿通口に往復摺動自在に設けられたプランジャと、プランジャを往復摺動させる駆動手段とを備え、プランジャの往復動に伴って、液体貯留空間の容積縮小により吐出口から液体を吐出する一方、液体貯留空間の容積拡大により液体タンクから吸入口を介して液体貯留空間に液体を吸入するプランジャポンプの改良である。
【0014】
その特徴ある構成は、プランジャが、液体貯留空間に先端が達するように挿通口に挿通された断面積が一定の第一棒状部を備え、吸入口が、第二棒状部が係脱自在に構成された主吸入孔と、主吸入孔に並列に設けられた副吸入口とを備え、液体貯留空間に連通する副吸入孔と吐出口とは液体貯留空間を挟んで液体貯留空間の両側に別々に形成され、副吸入口に、液体貯留空間が負圧になると開く常閉の逆止弁が配設されたところにある。
【0015】
そして、プランジャの先端は、第一棒状部の先端に同軸に形成され主吸引孔に挿脱可能であって第一棒状部と異なる一定断面積を有する第二棒状部であり、その第一棒状部の先端が達する液体貯留空間を横断する上横孔が第一棒状部を支持する挿通口の近傍に形成され、その上横孔の液体貯留空間を挟む両端に副吸入孔と吐出口が別々に連通して形成されることが好ましい。

【発明の効果】
【0016】
本発明のプランジャポンプでは、挿通口にプランジャを往復摺動自在に挿通するけれども、そのプランジャを比較的太くすることにより、その挿通口との密着状態を維持することが容易となり、挿通口からの空気の流入を有効に防止することができる。そして、そのプランジャを移動させて液体貯留空間の容積を縮小させることにより、液体貯留空間の液体を吐出口から吐出させることができる。
【0017】
また、本発明のプランジャポンプでは、挿通口に往復摺動自在に挿通されたプランジャの先端を吸入口を構成する主吸入孔に係脱自在に挿入させるので、挿通口から液体貯留空間に挿脱されるプランジャの体積と、その液体貯留空間から主吸入孔に挿脱されるプランジャの先端における体積の差が吐出口からの液体の吐出量となる。このため、挿通口からの空気の流入を防止しつつ、液体の吐出量を微少化することができる。
【0018】
ここで、プランジャが、挿通口に挿通された第一棒状部と、主吸引孔に挿脱可能な第二棒状部を有するものであれば、液体貯留空間に進入する第一棒状部とその液体貯留空間から主吸入孔に退出する第二棒状部材との体積の差が吐出口からの液体の吐出量となるので、液体貯留空間に進入するプランジャの量と液体の吐出量を比例させることが可能となる。よって、吐出量の管理が容易となって、吐出量を高精度で大幅に微少化することが可能となる。
【0019】
一方、液体を吐出した後には、液体貯留空間の容積が拡大する方向にプランジャを移動させて、液体タンクから吸入口を介して液体貯留空間に液体を吸入させることになるけれども、本発明のプランジャポンプでは、副吸入口を主吸入孔に並列に設けたので、主吸入孔にプランジャの先端が挿入され、その主吸入孔を介した液体貯留空間への液体の供給が困難な状況であっても、この副吸入口を介して液体が液体貯留空間に流入するので、その液体貯留空間の気圧の著しい低下は回避され、その液体貯留空間に残存する液体が気化してしまうような事態を防止することができる。
【0020】
ここで、液体タンクにおける液体の粘度が高く、逆止弁が開いた副吸入口を介して液体貯留空間に流入する高粘度の液体の迅速な吸入が期待できずに、第二棒状部材が挿入された主吸入孔の気密性が損なわれても、その主吸入孔は液体タンクに連結しているので、この主吸入孔から液体貯留空間に流入するのは液体となるので、この主吸入孔から外部の空気が侵入するようなことはない。
【0021】
そして、液体タンクの内部圧力を高める圧縮エア供給口を液体タンクに形成すれば、液体タンクに貯蔵される液体の粘度が高いものであっても、その液体タンク内の圧力を高めることにより、この液体タンクから吸入口を介した液体の液体貯留空間への供給を速やかに行うことが可能となる。この結果、液体貯留空間の気圧の著しい低下に基づく液体の気化を有効に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態におけるプランジャポンプによる液体の吸引状態を示す図4のA部拡大断面図である。
図2】そのプランジャポンプによる液体の吐出状態を示す図1に対応する図である。
図3】そのプランジャの先端が主吸入孔から離脱した状態を示す図1に対応する図である。
図4】そのプランジャポンプの正面図である。
図5】従来のプランジャポンプの構造を示す断面図である。
図6】従来の別のプランジャポンプの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳しく説明する。
【0024】
図1図4に本発明におけるプランジャポンプ10を示す。この実施の形態におけるプランジャポンプ10は、中粘度から高粘度の液体、例えば粘度が比較的高い接着剤を吐出するためのものであり、内部に液体貯留空間18(図1図3)が形成されたポンプボディ11と、ポンプボディ11に形成された挿通口14(図1図3)に往復摺動自在に設けられたプランジャ15とを備える。
【0025】
図4に示すように、ポンプボディ11は、上中下の3つに分割可能な分割片11a,11b,11cより構成され、この3つの分割片11a,11b,11cは図示しないボルト締結手段により連結されて一体化されるものとする。
【0026】
図1図3に示す様に、上分割片11aには上端から鉛直方向に挿通口14が形成され、その挿通口14の下方に連続して液体貯留空間18を構成する孔が同軸に形成される。
【0027】
挿通口14に挿通されるプランジャ15は、挿通口14に挿通される断面積が一定の第一棒状部15aと、その第一棒状部15aの先端に同軸に形成されて第一棒状部15aと異なる一定断面積を有する第二棒状部15bを備える。
【0028】
図3に示すように、この実施の形態における第一及び第二棒状部15a,15bは円柱状物であって、第一棒状部15aの直径D1より第二棒状部15bの直径D2が小さくなるように作られる。例えば、第一棒状部15aの直径D1が2.0mmであって、その先端に同軸に形成された第二棒状部15bの直径D2が1.9mmであるようなものが例示される。
【0029】
プランジャ15の先端となる第二棒状部15bが液体貯留空間18に達するように第二棒状部15bから挿通口14に挿入される。挿通口14には、第一棒状部15aの外周面との間の隙間を塞ぐパッキン28が設けられ、この第一棒状部15aがパッキン28と共に挿通口14に挿通される。
【0030】
図におけるパッキン28は、比較的長い組み合わせパッキンであって、この挿通口14を介して外部の空気が液体貯留空間18に流入すること及び液体貯留空間18から液体が流出することを確実に禁止し得るようなものが用いられる。
【0031】
また、本発明におけるプランジャポンプ10は液体タンク16を備え、ポンプボディ11にはその液体タンク16を液体貯留空間18に連結する吸入口13と、液体貯留空間18の液体を外部に吐出する吐出口12とが形成される。
【0032】
具体的に、この上分割片11aには、液体貯留空間18を構成する上横孔18aが形成され、この上横孔18aに上端が連通する上吐出孔12aと上副吸入孔19aが液体貯留空間18を挟むように、その液体貯留空間18に平行に形成される。
【0033】
中分割片11bには、液体タンク16の下端が連続するタンク取付片22が横方向に延びて取付けられ、このタンク取付片22には液体が流通する流通孔22aが形成される。このタンク取付片22が取付けられる中分割片11bには、その流通孔22aに連通する下横孔13aが形成される。そして、中分割片11bには、この下横孔13aに下端が連通し上端が上副吸入孔19aに連続する下副吸入孔19bと、この下横孔13aに下端が連通し上端が液体貯留空間18に連続する主吸入孔13cが形成される。
【0034】
従って、液体貯留空間18と液体タンク16を連結する吸入口13は、少なくとも、上横孔18a、上副吸入孔19aと、下副吸入孔19b、下横孔13a及び主吸入孔13cを含むものとなる。そして、液体貯留空間18に連続する主吸入孔13cは挿通口14と対向することになり、プランジャ15における第二棒状部15bは、この主吸入孔13cに挿入可能に構成される。
【0035】
即ち、液体タンク16を液体貯留空間18に連結する吸入口13は、プランジャ15における第二棒状部15bが係脱自在に構成された主吸入孔13cと別に、その主吸入孔13cに並列に設けられた副吸入口19を備える。この実施の形態では、下端が下横孔13aに連通する下副吸入孔19b、その下副吸入孔19bに連通する上副吸入孔19a、及びこの上副吸入孔19aを液体貯留空間18に連通させる上横孔18aが、副吸入口19を構成する場合を示す。
【0036】
そして、主吸入孔13の内壁面には、その第二棒状部15bの外周面と密着するシール部材29が設けられ、第二棒状部15bは、主吸入孔13cに挿入した状態で主吸入孔13cに往復摺動自在であって、シール部材29は、ポンプボディ11内における液体貯留空間18を密閉状態に保ち、その液体貯留空間18から液体が主吸引孔13c側に漏れるのを防止するように構成される。
【0037】
また、この中分割片11bには、下副吸入孔19bとともに主吸入孔13cを挟む中吐出孔12bが上吐出孔12aに連続するように、その主吸入孔13cに平行に形成される。
【0038】
下分割片11cには、中吐出孔12bに連続する下吐出孔12cが貫通して形成され、その下吐出孔12cの下端には、この下吐出孔12cを流下する液体を外部に排出するノズル24が吐出側逆止弁26を介して取付けられる。
【0039】
この吐出側逆止弁26は、弁体26a、弁座26b及びその弁体26aを弁座26bに当接付勢するバネ26cを有し、弁座26bが中分割片11bと下分割片11cとの間に介装される。弁体26aとバネ26cは下吐出孔12cに挿通され、ポンプボディ11における液体貯留空間18の圧力が正圧になると、図2に示すように、バネ26cの付勢力に抗して弁体26aが弁座26bから離間して開き、上横孔18a、上吐出孔12a、中吐出孔12b及び下吐出孔12cを介して液体貯留空間18からノズル24に流れる液体の流れを開放して、その液体をノズル24から外部に吐出するように構成される。
【0040】
従って、液体貯留空間18と上吐出孔12aとを連通させる上横孔18a、上吐出孔12a、中吐出孔12b及び下吐出孔12cが、液体貯留空間18の液体を外部に吐出する吐出口12を形成することに成る。そして、この吐出側逆止弁26は、ポンプボディ11における液体貯留空間18の圧力が負圧になるとバネ26cの付勢力により弁体26aが弁座26bに当接して下吐出孔12cを閉じ、この吐出口12を介して外部のエアが液体貯留空間18に向かって流れることを防止するように構成される。
【0041】
一方、上分割片11aにおける上副吸入孔19aの下端には吸入側逆止弁27が設けられる。この吸入側逆止弁27も吐出側逆止弁26と同様に、弁体27a、弁座27b及びその弁体27aを弁座27bに当接付勢するバネ27cとを有し、弁座27bが上分割片11aと中分割片11bとの間に介装される。
【0042】
弁体27aとバネ27cは上副吸入孔19aに挿通され、ポンプボディ11における液体貯留空間18の圧力が負圧になると、図1に示す様に、バネ27cの付勢力に抗して弁体27aが弁座27bから離間して開き、副吸入口19を上昇する液体を液体貯留空間18に案内するように構成される。
【0043】
逆に、この吸入側逆止弁27は、ポンプボディ11における液体貯留空間18の圧力が正圧になると、図2に示す様に、バネ27cの付勢力により弁体27aが弁座27bに当接して副吸入口19を閉じ、その副吸入口19を介して液体貯留空間18の液体が流出することを防止するように構成される。
【0044】
これらの他に、タンク取付片22と中分割片11bとの接合部、及び上分割片11aの上吐出孔12aと中分割片11bの中吐出孔12bとの接合部には、それぞれシール材10a,10bが設けられ、それらの接合部から外部への液体の流出、及びそれらの接合部において外部の空気が内部へ流入することを防止するように構成される。
【0045】
図4に示す様に、本発明のプランジャポンプ10は、プランジャ15を移動させる駆動装置30を備える。この実施の形態における駆動装置30は、ポンプボディ11の上部、即ちポンプボディ11における上分割片11aが下部に取付けられたハウジング31と、そのハウジング31にプランジャ15の軸方向に移動可能に取付けられた可動体32と、その可動体32に設けられプランジャ15の軸方向に延びるボールネジ33が螺合する雌ねじ34と、その雌ねじ34に螺合してハウジング31に軸芯を中心に回転可能に設けられたボールネジ33と、そのボールネジ33を回転させるサーボモータ35とを備える。
【0046】
図4では、そのハウジング31にプランジャ15の軸方向に平行に設けられたレール31bに可動体32が移動可能に取付けられ、サーボモータ35がハウジング31に平行に設けられる場合を示す。そして、このサーボモータ35の回転軸35aに第一プーリ36が設けられ、雌ねじ34に第二プーリ37が同軸に設けられ、この第一及び第二プーリ36,37にベルト38が掛け回されるものとする。
【0047】
一方、ポンプボディ11の上端から上方に突出するプランジャ15は、その上端が可動体32に取付けられる。このため、サーボモータ35を駆動することによりボールネジ33が回転し、プランジャ15を可動体32に連結することにより、そのボールネジ33に螺合する雌ねじ34を有する可動体32と共にプランジャ15を軸方向に移動可能に構成される。
【0048】
なお、ハウジング31は、このプランジャポンプ10を移動させる図示しないロボットのアーム10cに取付けられるものとする。
【0049】
更に、本発明のプランジャポンプ10は、吸入口13を介してポンプボディ11に液体を供給する液体タンク16が設けられる。この実施の形態における液体タンク16は、上端が開放されて下端が先細りの容器本体38と、その容器本体38の上端開口部を封止する蓋体39とを有する。ハウジング31には容器本体38を保持する保持金具31aが取付けられ、容器本体38における先細りの下端がタンク取付片22の先端に取付けられる。
【0050】
具体的に、図1図3に示す様に、タンク取付片22の先端には、流通孔22aが上方に開口して形成され、その開口の周囲に雌ねじ22bが形成される。容器本体38における先細りの下端には、その雌ねじ22bに螺合する雄ねじ40bが周囲に形成された雄ねじ部材40が取付けられる。
【0051】
その雄ねじ部材40にはその中心軸に上下方向に貫通する貫通孔40aが形成され、この雄ねじ部材40を雌ねじ22bに螺合させることにより、容器本体38を鉛直にして、その先細りの下端がタンク取付片22の先端に取付けられるものとし、このように取付けられた状態では、容器本体38の内部と流通孔22aが雄ねじ部材40における貫通孔40aを介して水密に連通するように構成される。
【0052】
一方、塗布すべき液体はこの容器本体38に上端開口端から注入してこの容器本体38に貯留し、図4に示すように、この容器本体38の上端開口部を閉塞する蓋体39には容器本体38の内部を外部に連通させるエア供給口39aが形成される。液体は容器本体38に上端開口部から注入されるので、その液体は自重により容器本体38の下部に移動して貯留され、容器本体38の上部には空間が形成されることになる。
【0053】
よって、このように液体が下部に貯留された容器本体38の上端開口部を蓋体39により封止し、その蓋体39に形成されたエア供給口39aから圧縮エアを容器本体38内部に供給して液体上方に形成された容器本体38内部の空間の圧力を高めることにより、その圧力により液体は容器本体38の下部に設けられた雄ねじ部材40における貫通孔40aを介して流通孔22aに加圧流入させるように構成される。
【0054】
次に、上記のように構成されたプランジャポンプの動作について説明する。
【0055】
このプランジャポンプ10は、これを移動させる図示しないロボットのアーム10c(図4)に取付けられて用いられる。塗布すべき液体は液体タンク16における容器本体38の上端開口端から注入して、この容器本体38に必要な量の液体を貯蔵させる。そして、容器本体38の上端開口部には、その後に蓋体39により閉塞させる。
【0056】
次に、ポンプボディ11における吐出口12、吸入口13及び液体貯留空間18の全てをこの液体により満たす。この時、液体タンク16における貯留された液体の粘度が低い場合には、その蓋体39に形成されたエア供給口39aから圧縮エアを容器本体38内部に供給して容器本体38内部の空間の圧力を高めるだけで可能となる。
【0057】
即ち、図3に示すように、容器本体38内部の圧力により液体は容器本体38の下部に設けられた雄ねじ部材40における貫通孔40aを介して流通孔22aに流入し、その後、ポンプボディ11に形成された吸入口13から液体貯留空間18を経て吐出口12まで流通し、それらの全てに満たされる。この時、図3に示すように、プランジャ15における第二棒状部15bを主吸入孔13cから抜き出しておくことにより、その主吸入孔13cから液体貯留空間18への液体の流入を可能としておくことが、より速く液体を満たすために好ましい。
【0058】
一方、液体タンク16における貯留された液体の粘度が高い場合には、容器本体38内部の空間の圧力を高めるとともに、プランジャ15を往復移動させて液体貯留空間18の容積を増減させて、液体を吸引させる。
【0059】
即ち、プランジャ15が挿通口14から液体貯留空間18側に挿入し、その液体貯留空間18の容積縮小によりその液体貯留空間18における空気又は液体を吐出口12から吐出させる。その一方、プランジャ15を挿通口14を介して液体貯留空間18から引き抜いて液体貯留空間18の容積拡大により液体タンク16から吸入口13を介して液体貯留空間18に液体を吸入させる。このようなことを繰り返して、ポンプボディ11における吐出口12、吸入口13及び液体貯留空間18の全てをこの液体により満たす。
【0060】
ポンプボディ11における内部空間の全てが液体により満たされた後には、図2に示すように、プランジャ15における第二棒状部15bの先端を主吸入孔13cに進入させてその主吸入孔13cを封止して、液体貯留空間18を密閉状態とする。これを初期状態としておく。そして、この状態から図示しないロボットはプランジャポンプ10を移動させ、そのノズル24を塗布位置に対向させる。
【0061】
塗布位置における液体の実際の塗布にあっては、プランジャ15を挿通口14から液体貯留空間18側に挿入させる。図2の実線矢印で示すように、初期状態からプランジャ15が移動すると、第二棒状部15bが液体貯留空間18から主吸入孔13cに退出していく一方、第一棒状部15aが液体貯留空間18に進入してくる。そして、液体貯留空間18の容積は、進入した第一棒状部15aの体積と退出した第二棒状部15bの体積との差だけ減少し、液体貯留空間18の圧力は正圧となる。
【0062】
すると、図2に示す様に、吸入側逆止弁27は、バネ27cの付勢力により弁体27aが弁座27bに当接して副吸入口19を閉じ、その副吸入口19を介して液体貯留空間18の液体が流出することを防止する。そして、液体貯留空間18における液体の圧力が上昇すると、吐出口12にあっては吐出側逆止弁26が開き、ノズル24を介して液体が吐出される。
【0063】
この時、異なる断面積を有する2つの棒状部15a,15bを有するプランジャ15を使用すれば、進入してくる第一棒状部15aの体積と、退出していく第二棒状部15bの体積との差が吐出量となるため、微少量の液体の吐出が可能となる。
【0064】
例えば、一棒状部15aと第二棒状部15bの断面積の差が0.3mm2であるプランジャ15を10mm移動させると、液体貯留空間18の容積は3mm3減少し、それに相当する量の液体をノズル24から吐出させることができる。従って、プランジャ15の直径及び進入量を小さくすることなく、高精度で微少量の液体を吐出することができる。
【0065】
所定量の液体を吐出した後には、プランジャ15の移動を停止し、ノズル24からの液体の吐出を停止する。すると、吐出口12に設けられた吐出側逆止弁26にあっては、バネ26cの付勢力により弁体26aが弁座26bに当接して吐出口12を閉じ、吐出口12を介して外部のエアが液体貯留空間18に向かって流れることを防止する。
【0066】
なお、吐出量を変更する場合には、プランジャ15の進入量を変更したり、或いは第一及び第二棒状部15a,15bの断面積の差を変更すればよいが、パッキン28との密着状態を適切に維持するため、断面が円形を成す第一棒状部15aの直径は1mm以上とするのが望ましい。
【0067】
液体を吐出した後には、液体貯留空間18の容積が拡大する方向にプランジャ15を移動させて、液体タンク16から吸入口13を介して液体貯留空間18に液体を吸入させることになる。
【0068】
具体的に、この液体の吸入にあっては、図1の実線矢印で示す様に、プランジャ15の液体貯留空間18への進入状態からそのプランジャ15を後退させて、ポンプボディ11の密閉状態の液体貯留空間18の容積を増大させ、その液体貯留空間18を負圧とさせる。
【0069】
この液体の吸入にあっては、主吸入孔13cにプランジャ15の先端である第二棒状部材15bが挿入され、その主吸入孔13cは封止されているので、その主吸入孔13cを介した液体貯留空間18への液体の供給は禁止される。
【0070】
しかし、本発明のプランジャポンプ10では、副吸入口19を主吸入孔13cに並列に設けたので、副吸入口19における吸入側逆止弁27では、液体貯留空間18の圧力が負圧になると、図1に示す様に、バネ27cの付勢力に抗して弁体27aが弁座27bから離間して開くことになる。すると、液体タンク16に貯留された液体は、吸入口13を構成する副吸入口19を介して液体貯留空間18に吸入されることになる。
【0071】
即ち、本発明のプランジャポンプ10では、主吸入孔13cにプランジャ15の先端が挿入され、その主吸入孔13cを介した液体貯留空間18への液体の供給が困難な状況であっても、この副吸入口19を介して液体が液体貯留空間18に流入するので、その液体貯留空間18の気圧の著しい低下は回避され、その液体貯留空間18に残存する液体が気化してしまうような事態は防止されることになる。
【0072】
ここで、液体タンク16の内部圧力を高める圧縮エア供給口39aを液体タンク16に形成しているので、その液体タンク16内の圧力を高めることにより、この液体タンク16から吸入口13を介した液体の液体貯留空間18への供給を速やかに行うことが可能となる。
【0073】
例えば、気泡を発生させやすい液体が液体タンク16に貯留されている場合には、プランジャ15をすぐには後退させることなく(負圧を起こさせない)、先に液体タンク16内の圧力を高めることにより、正圧を液体タンク16にかけて、副吸入口19を介した液体の液体貯留空間18への流入を先に促す。その後にプランジャ15を後退させ、主吸入孔13cにプランジャ15の先端が挿入された状態を維持したまま、吐出開始位置まで戻すことができる。このように、プランジャ15を時間差をもって後退させることにより液体貯留空間18の気圧の低下は回避され、気泡発生しやすい液体の気化現象を確実に抑えることができ、微小塗布において精度の安定化が可能となる。
【0074】
また、プランジャ15における第二棒状部15bの外周面と密着するシール部材29は、第一棒状部15aの外周面と密着する比較的長い組み合わせパッキン28に比較して、そのシール性に劣ることになり、プランジャ15の先端である第二棒状部15bが挿入された主吸入孔13cの気密性が損なわれるようなことがあっても、その主吸入孔13cは吸入口13として液体タンク16に連結されているので、この主吸入孔13cから液体貯留空間18に流入するのは液体となる。このため、この主吸入孔13cから外部の空気が侵入するようなことはない。
【0075】
一方、液体タンク16に高粘度液体で気化に対して殆ど影響のない液体が貯留されている場合には、圧縮エア供給口39aから液体タンク16に圧縮エアを供給して液体タンク16内の圧力を高めることにより、その液体タンク16から液体を吸入口13に送り込む。それと同時にプランジャ15を後退させ、プランジャ15の先端、この実施の形態では第二棒状部15bを主吸入孔13cから脱離させて、その主吸入孔13cから液体貯留空間18へ液体を流入させる。これにより、流動性の悪い液体であっても速やか吸引が可能となって、液体貯留空間18の液体の速やかな充填が可能となる。
【0076】
よって、吸入口13が主吸入孔13cと別に副吸入口19を備える本発明のプランジャポンプ10では、気泡を発生させやすい液体であるか否かに関わらず気体の吸引や発生を防止しつつ高精度で微量の液体の吐出を行うことができ、低粘度から中粘度、高粘度までの液体の塗布に対応しうるものとなる。
【0077】
なお、上述した実施の形態では、断面が円形のプランジャ15を用いて説明したが、プランジャ15の断面形状は上記した円柱状のものに限られない。即ち、プランジャ15の先端部及び後端部と、これに対応するポンプボディ11に形成された開口(挿通口14と主吸入孔13c)とが一定断面積で往復摺動可能に構成され、しかも、プランジャ15の先端部と後端部との摺動部分が異なる断面積を有していれば、例えば、断面多角形の角柱状のものをプランジャとして使用してもよい。
【0078】
また、プランジャ15の中間部の構成も特に限定されることは無く、例えば、中間部の外径がテーパ状に変化し、先端部と後端部とで断面積が異なるように構成されたプランジャ15を用いてもよい。但し、加工性の観点からすれば、上記した断面積の異なる第一及び第二棒状部を有するプランジャ15を使用するのが好ましい。
【0079】
また、上述した実施の形態では、液体貯留空間18の圧力の上昇下降に伴ってバネにより開閉する逆止弁26,27を使用しているが、これ以外に、例えば制御装置により、プランジャ15の進入後退に同期して開閉するような逆止弁を用いてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 プランジャポンプ
11 ポンプボディ
12 吐出口
13 吸入口
13c 主吸入孔
14 挿通口
15 プランジャ
15a 第一棒状部
15b 第二棒状部
16 液体タンク
18 液体貯留空間
19 副吸入口
27 吸入側逆止弁(逆止弁)
30 駆動装置(駆動手段)
39a 圧縮エア供給口
図1
図2
図3
図4
図5
図6