(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】熱交換器及び熱交換器のリーク箇所隔離方法
(51)【国際特許分類】
F28D 7/10 20060101AFI20220404BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20220404BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20220404BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20220404BHJP
F28F 11/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F28D7/10 Z
F28D7/16 D
F28F1/00 D
F28F9/02 J
F28F11/00 A
(21)【出願番号】P 2018002205
(22)【出願日】2018-01-10
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小田 拓央
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 喜之
(72)【発明者】
【氏名】原 伸英
(72)【発明者】
【氏名】笠原 二郎
(72)【発明者】
【氏名】鴨 和彦
(72)【発明者】
【氏名】平岡 賢
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-280864(JP,A)
【文献】特開2012-063067(JP,A)
【文献】特開2014-163655(JP,A)
【文献】特開昭61-125596(JP,A)
【文献】特開2014-040981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/00-7/16
F28F 1/00,9/02,11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一伝熱面を有し、第一の流体が流通する第一流通部と、
前記第一伝熱面と対向する第二伝熱面を有し、前記第一伝熱面との間が不活性空間とされ、前記第一の流体と異なる第二の流体が流通する第二流通部と、を備え、
前記第一の流体が供給される第一供給口、及び前記第一の流体が排出される第一排出口を有する筒状のケーシングと、
前記ケーシングの内部空間を通過するように延びるとともに、内側に前記第二の流体が流通する内管と、
前記内部空間を通過するように、前記内管を内側に収容して前記内管の延在方向に延びるとともに、前記内管との間が不活性空間とされた外管と、を有し、
前記第一伝熱面は、前記外管の内周面であり、
前記第二伝熱面は、前記内管の外周面であり、
前記外管の一端が接続された第二管板と、
前記外管の他端が接続され、前記ケーシングから独立して形成された第三管板と、を有し、
前記内管は、一の前記外管の内側に収容された第一直線部と、他の前記外管の内側に収容された第二直線部と、前記第一直線部と前記第二直線部とを接続するベンド部と、を有するU字状をなし、
前記第三管板と協働して前記ベンド部を収容するとともに、前記不活性空間と連通する第二不活性空間を形成するドーム部を有する熱交換器。
【請求項2】
前記第三管板及び前記ドーム部と、前記ケーシングとは、可撓性を有する接続部で接続されている請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第一直線部及び前記第二直線部を
支持する第一管板
を有する請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記接続部は、シール性を有し、前記ドーム部と前記ケーシングとの間の空間が不活性空間とされている請求項2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第二管板、前記内管、及び前記外管とは、同一の材料によって形成されている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の熱交換器のリーク箇所隔離方法であって、
前記外管にリークが発生した場合に、前記外管の内側に配置されている内管を引き抜く内管除去工程と、
前記外管の延在方向における前記外管のリーク箇所の前後に、可撓性を有する材料によって形成され、内部に流体を充填することにより膨張する封止部材を配置する封止部材配置工程と、
前記封止部材を膨張させる封止部材膨張工程と、を有する熱交換器のリーク箇所隔離方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の熱交換器のリーク箇所隔離方法であって、
前記外管にリークが発生した場合に、前記内管の内側であって、前記外管の延在方向における前記外管のリーク箇所の前後に、可撓性を有する材料によって形成され、内部に流体を充填することにより膨張する封止部材を配置する封止部材配置工程と、
前記封止部材を膨張させる封止部材膨張工程と、を有する熱交換器のリーク箇所隔離方法。
【請求項8】
前記外管のリークを前記不活性空間に配置されて前記不活性空間の気体の濃度を検知する濃度センサによって検知する請求項6又は請求項7に記載の熱交換器のリーク箇所隔離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及び熱交換器のリーク箇所隔離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスタービンでは、翼を冷却する空気と、燃料ガスとの間で熱交換器を用いて熱交換を行い、省エネルギー化を図っている(例えば、特許文献1参照)。
熱交換器としては、例えば、シェルアンドチューブ式と呼ばれる多管式熱交換器が知られている。多管式熱交換器は、筒状のケーシングと、ケーシングの内部にケーシングの軸線と平行に配置された複数の伝熱管を有している。
上記した熱交換器では、伝熱管に高温の燃料ガスを通過させ、管板間に空気を通過させることによって熱交換を実施している。
【0003】
また、熱交換器としては、複数のプレートを有し、各々のプレート間に形成された流路に高温流体と低温流体とを流して熱交換するプレート式熱交換器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、伝熱管やプレートに不具合が発生した場合に、燃料ガスと空気とが混合するのを防止するために、様々な構造が検討されている。
また、熱交換器の運用に際しては、伝熱管の劣化などによる気体のリークを如何に隔離するかが課題となっている。
【0006】
この発明は、第一の流体が流通する第一流通部と、第一の流体と異なる第二の流体が流通する第二流通部とを備える熱交換器において、第一の流体と第二の流体との混合を防止することができる熱交換器及び熱交換器のリーク箇所隔離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、熱交換器は、第一伝熱面を有し、第一の流体が流通する第一流通部と、前記第一伝熱面と対向する第二伝熱面を有し、前記第一伝熱面との間が不活性空間とされ、前記第一の流体と異なる第二の流体が流通する第二流通部と、を備え、前記第一の流体が供給される第一供給口、及び前記第一の流体が排出される第一排出口を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部空間を通過するように延びるとともに、内側に前記第二の流体が流通する内管と、前記内部空間を通過するように、前記内管を内側に収容して前記内管の延在方向に延びるとともに、前記内管との間が不活性空間とされた外管と、を有し、前記第一伝熱面は、前記外管の内周面であり、前記第二伝熱面は、前記内管の外周面であり、前記外管の一端が接続された第二管板と、前記外管の他端が接続され、前記ケーシングから独立して形成された第三管板と、を有し、前記内管は、一の前記外管の内側に収容された第一直線部と、他の前記外管の内側に収容された第二直線部と、前記第一直線部と前記第二直線部とを接続するベンド部と、を有するU字状をなし、前記第三管板と協働して前記ベンド部を収容するとともに、前記不活性空間と連通する第二不活性空間を形成するドーム部を有する。
【0008】
このような構成によれば、第一の流体が流通する空間である第一流通部と、第二の流体
が流通する空間である第二流通部との間に不活性空間が存在することによって、第一の流体と第二の流体との混合を防止することができる。
さらに、このような構成によれば、より伝熱面積を大きくすることができる。また、複数の管と筒状のケーシングとからなる簡素な構造で熱交換器を製造することができる。
【0011】
上記熱交換器において、前記第三管板及び前記ドーム部と、前記ケーシングとは、可撓性を有する接続部で接続されてよい。
【0012】
このような構成によれば、第三管板及びドーム部が可撓性を有する接続部を介してケー
シングに支持されることによって、第三管板及びドーム部とケーシングとの間の熱伸び差
を吸収することができる。
上記熱交換器において、前記第一直線部及び前記第二直線部を支持する第一管板を有していてもよい。
【0013】
上記熱交換器において、前記接続部は、シール性を有し、前記ドーム部と前記ケーシングとの間の空間が不活性空間とされてよい。
【0014】
このような構成によれば、第三管板とドーム部とによって形成される第二不活性空間と、ドーム部とケーシングとの間の空間との圧力差を小さくすることができる。
【0015】
上記熱交換器において、前記外管の一端が接続された第一管板と、を有し、前記内管は、一の前記外管の内側に収容された第一直線部と、他の前記外管の内側に収容された第二直線部と、前記第一直線部と前記第二直線部とを接続するベンド部と、を有するU字状をなし、前記外管は、一の前記外管と、他の前記外管とを接続するとともに、前記ベンド部を内側に収容する外管ベンド部を有するU字状をなしてよい。
【0016】
このような構成によれば、第一の流体と第二の流体とが混合する可能性をさらに低減することができる。
【0017】
上記熱交換器において、前記第一管板、前記内管、及び前記外管とは、同一の材料によって形成されてよい。
【0018】
このような構成によれば、熱伸び差による内管、外管の摩耗を低減することができる。
【0019】
本発明の第二の態様によれば、熱交換器のリーク箇所隔離方法は、上記いずれかの熱交換器のリーク箇所隔離方法であって、前記外管にリークが発生した場合に、前記外管の内側に配置されている内管を引き抜く内管除去工程と、前記外管の延在方向における前記外管のリーク箇所の前後に可撓性を有する材料によって形成され、内部に流体を充填することにより膨張する封止部材を配置する封止部材配置工程と、前記封止部材を膨張させる封止部材膨張工程と、を有する。
【0020】
このような構成によれば、長さを有する伝熱管の外管がリークが発生した場合においても、リーク箇所を限定的に隔離することができる。また、外管に特化した封止部材を用いることによって、施工性を向上させることができる。
【0021】
本発明の第三の態様によれば、熱交換器のリーク箇所隔離方法は、上記いずれかの熱交換器のリーク箇所隔離方法であって、前記外管にリークが発生した場合に、前記内管の内側であって、前記外管の延在方向における前記外管のリーク箇所の前後に、可撓性を有する材料によって形成され、内部に流体を充填することにより膨張する封止部材を配置する封止部材配置工程と、前記封止部材を膨張させる封止部材膨張工程と、を有する。
【0022】
このような構成によれば、内管を引き抜くことなく、リーク箇所を隔離することができる。
【0023】
上記熱交換器のリーク箇所隔離方法において、前記外管のリークを前記不活性空間に配置されて前記不活性空間の気体の濃度を検知する濃度センサによって検知してよい。
【0024】
このような構成によれば、濃度センサを用いてリークを検出することによって、リークを早期に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、第一の流体が流通する空間である第一流通部と、第二の流体が流通する空間である第二流通部との間に不活性空間が存在することによって、第一の流体と第二の流体との混合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第一実施形態の熱交換器の断面図である。
【
図2】本発明の第二実施形態の熱交換器の断面図である。
【
図3】本発明の第三実施形態の熱交換器の断面図である。
【
図4】本発明の第四実施形態の熱交換器の断面図である。
【
図5】本発明の第五実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法を説明する断面図である。
【
図6】本発明の第五実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法を説明するフローチャートである。
【
図7】本発明の第六実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法を説明する断面図である。
【
図8】本発明の第六実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法を説明する断面図である。
【
図9】本発明の第七実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法を説明する断面図である。
【
図10】本発明の第八実施形態の熱交換器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態の熱交換器について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態の熱交換器は、シェルアンドチューブ式と呼ばれる多管式熱交換器である。熱交換器は、ケーシングの内部に複数の伝熱管を収容して、伝熱管の内側と外側とに異なる温度の流体を流すことで熱交換を行う。
本実施形態の熱交換器は、ガスタービンにおいて、燃料ガスと、冷却に用いられる空気との間で熱交換を行い、燃料ガスを加熱するとともに、空気を冷却する。ただし、熱交換器の用途はこれに限ることはない。
【0028】
図1に示すように、熱交換器1は、ケーシング2と、ケーシング2内に配置され、伝熱管として機能する複数の内管3と、及び内管3を内側に収容した複数の外管4と、を有している。本実施形態の熱交換器1の伝熱管の一部は二重管である。なお、
図1には、1本の内管3と、2本の外管4のみ示すが、本実施形態の熱交換器1は、複数の内管3と複数の外管4を有している。
【0029】
ケーシング2は、ドーム形状(半球形状)の第一ドーム部5と、筒状の筒部7と、ドーム形状の第二ドーム部6と、を有している。第一ドーム部5は、筒部7に筒部7の一端を封止するように接続され、第二ドーム部6は、筒部7に筒部7の他端を封止するように接続されている。
【0030】
第一ドーム部5と筒部7とは、第一管板9で仕切られており、第一ドーム部5と第一管板9とによって燃料ガス室12が形成されている。燃料ガス室12は、仕切板16によって第一燃料ガス室12aと第二燃料ガス室12bとに仕切られている。
第二ドーム部6と筒部7とは、第三管板11で仕切られており、第二ドーム部6と第三管板11とによって第一窒素ガス室13が形成されている。
【0031】
第一管板9、筒部7、及び第二管板10によって形成される空間は、第二管板10によって仕切られている。第二管板10は、第一管板9と第二管板10との距離が、第二管板10と第三管板11との距離よりも小さくなるように配置されている。
筒部7と第一管板9と第二管板10とによって第二窒素ガス室14が形成されている。
筒部7と、第二管板10と、第三管板11と、複数の外管4によって空気A(第一の流体)が導入される空気室15(第一流通部)が形成されている。
【0032】
第一ドーム部5には、第一燃料ガス室12aに燃料ガスFG(第二の流体)を供給する燃料ガス供給口18と、第二燃料ガス室12bから燃料ガスFGを排出する燃料ガス排出口19とが形成されている。
筒部7には、空気室15に空気Aを供給する空気供給口20(第一供給口)と、空気室15から空気Aを排出する空気排出口21(第一排出口)とが形成されている。また、筒部7には、第二窒素ガス室14から窒素ガスNGを排出する窒素ガス排出口23が形成されている。
第二ドーム部6には、第一窒素ガス室13に窒素ガスNGを供給する窒素ガス供給口22が形成されている。
【0033】
外管4は、空気室15内に、筒部7の軸線方向D(以下、単に軸線方向Dと言う。)に延びて第一窒素ガス室13と第二窒素ガス室14とを接続する配管である。外管4の一端は、第二管板10に接続され、外管4の他端は、第三管板11に接続されている。外管4の内側の空間を介して、第一窒素ガス室13と第二窒素ガス室14とは連通する。
外管4の内周面(第一伝熱面)は、空気室15の伝熱面として機能する。
【0034】
内管3は、U字型の配管である。内管3の一端3a及び内管3の他端3bは、第一管板9に接続されている。内管3は、第一燃料ガス室12a内の燃料ガスFGが内管3の一端3aを介して内管3の内側に流通し、内管3の他端3bを介して第二燃料ガス室12bに排出されるように配置されている。
【0035】
内管3は、直線状の第一直線部25及び第二直線部26と、第一窒素ガス室13内で第一直線部25と第二直線部26とを接続する弧状のベンド部27と、を有している。第一直線部25と第二直線部26とは、外管4の内側に収容されるようにして延在している。これにより、内管3の外周面(第二伝熱面)と、外管の内周面(第一伝熱面)とは対向するように配置される。
ベンド部27は、第一窒素ガス室13内に配置されている。外管4は、空気室15(ケーシング2の内部空間)を通過するように、内管3を内側に収容して内管3の延在方向である軸線方向Dに延びている。
内管3の内側IS(第二流通部)は、燃料ガスFGとは異なる第二の流体である空気Aが流通し、内管3の外周面3s(第二伝熱面)は、伝熱面として機能する。
【0036】
外管4の外径は、例えば、内管3の外径の1.1倍から1.2倍とすることができる。外管4の外径は、内管3の外周面と外管4の内周面との間に所定の空間が形成されるように設定されている。
空気室15には、空気室15の空気Aの流れが外管4にできるだけ等しく当たるように、複数のバッフルプレート28が設けられている。バッフルプレート28は、外管4を支持する支持部材としても機能する。
【0037】
次に、本実施形態の熱交換器1の作用について説明する。
第一窒素ガス室13には、図示しない窒素ガス供給装置から窒素ガス供給口22を介して窒素ガスNGが供給される。第一窒素ガス室13に供給された窒素ガスNGは、内管3の外周面と外管4の内周面との間の空間に流入した後、第二窒素ガス室14に導入され、窒素ガス排出口23から排出される。
第一窒素ガス室13内、第二窒素ガス室14内、及び内管3の外周面と外管4の内周面との間の空間は、不活性ガスである窒素ガスNGで満たされた不活性空間NAとなる。また、第二ドーム部6と第三管板11とによって形成される第一窒素ガス室13も不活性空間である。
【0038】
燃料ガス供給口18を介して第一燃料ガス室12aに燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、内管3の一端3aから内管3の内側に流入した後、内側の他端3bから第二燃料ガス室12bに導入されて燃料ガス排出口19から排出される。
空気供給口20を介して空気室15に空気Aが供給されると、空気Aはバッフルプレート28に衝突しながら、空気室15内を流れた後、空気排出口21から排出される。
この間、燃料ガスFGと空気Aとの間で窒素ガスNGを介して熱交換が行われ、燃料ガスFGが加熱されるとともに、空気Aが冷却される。
【0039】
上記実施形態によれば、燃料ガスFGが供給される空間と空気Aが供給される空間との間に、不活性空間NAである窒素ガス空間が存在することによって、燃料ガスFGと空気Aとの混合を防止することができる。即ち、内管3と外管4の一方に不具合が発生して流体が漏れた場合においても、内管3と外管4との間が不活性空間NAとされていることによって、燃料ガスFGと空気Aとが混合して爆発する等の不具合を防止することができる。
【0040】
また、内管3のうちベンド部27が固定されていないため、内管3に発生する熱応力を発生させない構造とすることができる。
【0041】
なお、上記実施形態では、第一の流体を燃料ガスFG、第二の流体を空気Aとしたが、これに限ることはなく、例えば、第一の流体が酸化剤に、第二の流体が還元剤に該当する場合に適用することができる。
また、上記実施形態では、内管3と内管3と外管4との間を窒素ガスNGで満たす構成としたが、内管3と内管3と外管4との間は不活性空間NAであればよく、例えば、内管3と内管3と外管4との間を真空にしてもよい。
【0042】
〔第二実施形態〕
以下、本発明の第二実施形態の熱交換器1Bについて図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態のケーシング2Bは、第二ドーム部6の内側に配置された第三ドーム部30(ドーム部)を有している。
【0043】
第三ドーム部30は、第二ドーム部6の内側との間に空間S1を形成するように形成されている。本実施形態の第三管板11Bは、筒部7及び第二ドーム部6と接続されておらず、第三ドーム部30と接続されている。即ち、本実施形態の第三管板11Bは、ケーシング2Bから独立して形成されている。第三ドーム部30と第三管板11とによって第一窒素ガス室13が形成されている。内管3のベンド部27は、第三ドーム部30と第三管板11とによって形成されている第一窒素ガス室13内に配置されている。第三ドーム部30は、第三管板11Bと協働してベンド部27を収容している。
第三ドーム部30と第三管板11Bとによって形成される第一窒素ガス室13も不活性空間(第二不活性空間)であり、不活性空間NAと第一窒素ガス室13とは連通している。
【0044】
第三ドーム部30と筒部7とは、ベローズ31(接続部)によって接続されている。即ち、第三ドーム部30は、可撓性を有するベローズ31によって支持されている。ベローズ31は、筒部7の軸線の周方向に連続的に設けられている蛇腹状の部材である。
【0045】
上記実施形態によれば、第三管板11と筒部7とが接続されない構造となるため、外管4の熱伸びにより第三管板11などの構造に発生する熱応力を低減することができる。
【0046】
〔第三実施形態〕
以下、本発明の第三実施形態の熱交換器1Cについて図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第二実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態の第三ドーム部30と筒部7とは、複数の薄板32によって接続されている。薄板32は、例えば、SUSのような金属によって形成されており、筒部7の軸線の周方向に連続的に形成されている。
薄板32は、自身が可撓性を有するような厚さに形成されている。薄板32の枚数は、第三ドーム部30を支持し得る強度を有するように設定される。薄板32はシール性を有しており、薄板32の一方側の空間S2(空気室15)と、薄板32の他方側の空間S3とを、流体的に区画する。
【0047】
薄板32の他方側の空間S3には、窒素ガス供給口22を介して窒素ガスNGが供給されており、空間S3は不活性空間NAとなる。即ち、複数の薄板32により、第二ドーム部6と第三ドーム部30との間の空間S3を不活性空間NAとすることができる。
【0048】
上記実施形態によれば、第三管板11と第三ドーム部30とによって形成される空間S4と、第二ドーム部6と第三ドーム部30との間の空間S3とをともに不活性空間NAとすることにより、これらの空間間の圧力差を小さくすることができる。
【0049】
〔第四実施形態〕
以下、本発明の第三実施形態の熱交換器1Cについて図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第二実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の外管4Cは、一の直線部4aと、他の直線部4aとを接続するとともに、内管3のベンド部27を内側に収容する外管ベンド部33を有するU字状をなしている。即ち、本実施形態の伝熱管は、ベンド部27,33も含めて、全長にわたって二重管とされている。
【0050】
本実施形態の内管3、外管4C、及びバッフルプレート28の材質は、同一である。内管3、外管4C、及びバッフルプレート28の材質は、例えば、インコネルとすることができる。
また、本実施形態の窒素ガス供給口22Cは、ケーシング2の第二窒素ガス室14に対応する位置に設けられている。
【0051】
上記実施形態によれば、燃料ガスFGと空気Aとが混合する可能性をさらに低減することができる。
【0052】
〔第五実施形態〕
以下、本発明の第五実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
本実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法は、気体の漏れが発生した場合に、封止装置35を用いて気体の漏れが発生した箇所を隔離することを特徴としている。
【0053】
図5に示すように、封止装置35は、キャップ部材36(封止部材)と、キャップ部材36に高圧水を供給する高圧水供給装置37と、を備えている。キャップ部材36は、可撓性を有し、かつ、高圧水による水圧に耐えうる材料、例えば、ステンレス、銅などによって形成されている中空円筒状の部材である。
【0054】
キャップ部材36は、円筒状の拡径部38と、拡径部38の一端及び他端を封止する封止部39と、を有している。一方の封止部39には、高圧水を導入するための貫通孔40が形成されている。拡径部38の外径は、外管4の内径よりもやや小さい。
高圧水供給装置37は、ホース41を介してキャップ部材36に高圧水(例えば、100MPa~300MPa)を充填する装置である。
【0055】
図6に示すように、本実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法は、リーク判定工程S1と、流入気体封止工程S2と、内管3を引き抜く内管除去工程S3と、キャップ部材配置工程S4(封止部材配置工程)と、キャップ部材膨張工程S5(封止部材膨張工程)と、を有している。
【0056】
リーク判定工程S1は、ガス検知器などの濃度センサCS(
図1参照)を用いて、リークが発生したか否かを判定する工程である。濃度センサCSは不活性空間NAに配置されており、窒素ガスNGの濃度を検出するセンサである。気体の漏れが発生した場合には、不活性空間NAの濃度が変化する。
リーク判定工程S1では、濃度センサCSが不活性空間NAの窒素ガスNGの濃度の変化を検知した場合にリークが発生したと判断する。リーク判定工程S1で、リークが発生したと判断された場合(YES)、作業者は、流入気体封止工程S2を実施する。
流入気体封止工程S2では、作業者は、所定のコーキング材等を用いてリークが発生した外管4に対応する内管3に流入する流体の流れを止める。
【0057】
内管除去工程S3では、作業者は、内管3を切断し内管3を引き抜く。これにより、
図5に示すように、外管4の内側から内管3が取り除かれる。
【0058】
キャップ部材配置工程S4では、作業者は、封止装置35のキャップ部材36を外管4の内側に配置する。この際、キャップ部材36の位置は、軸線方向Dにおいて、リーク箇所Lの前後のバッフルプレート28と同じ位置とする。具体的には、リーク箇所Lの軸線方向D一方側に隣接するバッフルプレート28の位置と、リーク箇所Lの軸線方向他方側に隣接するバッフルプレート28の位置にキャップ部材36を配置する。
【0059】
キャップ部材膨張工程S5では、作業者は、高圧水供給装置37を操作して、キャップ部材36の内部に高圧水を供給する。これにより、キャップ部材36の拡径部38が拡径し、外管4の内周面に密着する。これにより、リーク箇所Lを隔離することができる。
【0060】
上記実施形態によれば、長さを有する伝熱管の外管4がリークが発生した場合においても、リーク箇所を限定的に隔離することができる。
また、外管4に特化したキャップ部材36を用いることによって、施工性を向上させることができる。
また、濃度センサCSを用いてリークを検出することによって、リークを早期に検出することが可能となる。
【0061】
〔第六実施形態〕
以下、本発明の第六実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第五実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
【0062】
図7に示すように、本実施形態の封止装置35Bは、チューブ部43と、チューブ部43に高圧水を供給する高圧水供給装置37と、チューブ部43の軸線方向Dの膨張を拘束する拘束部44と、を備えている。
チューブ部43は、例えば、ナイロン、ウレタンゴム、軟質塩化ビニル、ニトリルゴムまたはフッ素ゴムなどによって形成されている中空円筒状の部材である。チューブ部43の外径は、内管3の内径よりもやや小さい。
【0063】
また、本実施形態の内管3のバッフルプレート28に対応する位置は、伸びやすい材料によって形成されている。
【0064】
本実施形態の熱交換器1のリーク箇所隔離方法は、第五実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法が、流入気体封止工程S2及び内管引き抜き工程S3を有するのと比較して、内管3を引き抜くことなくリーク箇所を隔離することを特徴としている。
【0065】
本実施形態の熱交換器1のリーク箇所隔離方法は、
図7に示すように、封止装置35Bのチューブ部43を内管3の内側に挿入した後、高圧水供給装置37を操作して、チューブ部43の内部に高圧水を供給することにより、
図8に示すように、チューブ部43を膨張させて内管3を内側から拡径させる。内管3の外周面と外管4の内周面とが接触するまで内管3を拡径させることにより、リーク箇所を隔離することができる。
【0066】
上記実施形態によれば、内管3を引き抜くことなく、リーク箇所を隔離することができる。
なお、封止装置35Bの構造は、上記した構造に限ることはない。例えば、棒状爆薬を用いて粘性物質を膨張させることによって内管3を拡径する構成としてもよい。
【0067】
〔第七実施形態〕
以下、本発明の第七実施形態の熱交換器のリーク箇所隔離方法について図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、上述した第六実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
図9に示すように、本実施形態の熱交換器1は、内管3のバッフルプレート28に対応する位置の外周面に嵌められているOリング45を有している。Oリング45は、例えば、合成ゴムによって形成されている環状部材である。Oリング45は、外管4の内周面に接着してもよい。
Oリング45を設けることにより、内管3を拡径させる際、内管3の外周面と外管4の内周面との間にOリング45が介在する。
【0068】
上記実施形態によれば、内管3と外管4とが直接接触することにより、これらが摩耗することを防止することができる。また、Oリング45により封止をより確実にすることができる。
【0069】
〔第八実施形態〕
以下、本発明の第八実施形態の熱交換器について図面を参照して詳細に説明する。
図10に示すように、本実施形態の熱交換器1Dは、プレート式熱交換器である。本実施形態の熱交換器1Dは、ケーシング50と、燃料ガスFGが流通する燃料ガス流通部55と、空気Aが流通する空気流通部56と、を有している。燃料ガス流通部55と空気流通部56とは、複数のプレート51,52,53,54によってケーシング2内に区画された部位である。
【0070】
燃料ガス流通部55は、第一プレート51と第一プレート51と対向する第二プレート52によって形成されている。燃料ガス流通部55には、燃料ガス供給口18Dを介して燃料ガスFGが供給され、燃料ガス排出口19Dを介して燃料ガスFGが排出される。
【0071】
空気流通部56は、第三プレート53と、第三プレート53と対向する第四プレート54によって形成されている。空気流通部56には、空気供給口20Dを介して空気Aが供給され、空気排出口21Dを介して空気Aが排出される。
【0072】
各々のプレート51,52,53,54は、熱伸び差を吸収するような形状をなしている。本実施形態のプレート51,52,53,54は、波形状である。更に詳しくは、プレート51,52,53,54は、正弦波形状をなしている。なお、プレート51,52,53,54の形状は、熱伸び差を吸収するような形状であればよく、例えば、矩形波形状としてもよい。
【0073】
燃料ガス流通部55の第二プレート52と、空気流通部56の第三プレート53とは、対向して配置されている。即ち、第二プレート52と第三プレート53は、共通のプレートではなく、第二プレート52と第三プレート53とは、間隔を開けて配置されている。
【0074】
第二プレート52の第三プレート53との間には、窒素ガス供給口22Dを介して窒素ガスNGが供給されている。即ち、第二プレート52と第三プレート53との間は、不活性空間NAとされている。また、第二プレート52と第三プレート53との間からは、窒素ガス排出口23Dを介して窒素ガスNGが排出される。
【0075】
上記実施形態によれば、燃料ガスFGが供給される空間と空気Aが供給される空間との間に、不活性空間NAである窒素ガス空間が存在することによって、燃料ガスFGと空気Aとの混合を防止することができる。即ち、プレート51,52,53,54に不具合が発生して流体が漏れた場合においても、燃料ガス流通部55と空気流通部56との間が不活性空間NAとされていることによって、燃料ガスFGと空気Aとが混合して爆発する等の不具合を防止することができる。
また、プレート51,52,53,54が波形状とされていることによって、伝熱が促進されるのみならず、熱伸び差を吸収することができる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、第四実施形態の熱交換器では、内管、外管、及びバッフルプレートの材質を同一としたが、その他の実施形態の熱交換器においても内管、外管、及びバッフルプレートの材質を同一としてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1,1B,1C,1D 熱交換器
2,2B ケーシング
3 内管
3s 内管の外周面
4 外管
4s 外管の内周面(第一の伝熱面)
5 第一ドーム部
6 第二ドーム部
7 筒部
9 第一管板
10 第二管板
11,11B 第三管板
12 燃料ガス室
12a 第一燃料ガス室
12b 第二燃料ガス室
13 第一窒素ガス室
14 第二窒素ガス室
15 空気室(第一流通部)
16 仕切板
18 燃料ガス供給口
19 燃料ガス排出口
20 空気供給口
21 空気排出口
22 窒素ガス供給口
23 窒素ガス排出口
25 第一直線部
26 第二直線部
27 ベンド部
28 バッフルプレート
30 第三ドーム部(ドーム部)
31 ベローズ(接続部)
32 薄板
33 外管ベンド部
35 封止装置
36 キャップ部材
37 高圧水供給装置
38 拡径部
39 封止部
40 貫通孔
41 ホース
43 チューブ部
44 拘束部
45 Oリング
50 ケーシング
51 第一プレート
52 第二プレート
53 第三プレート
54 第四プレート
55 燃料ガス流通部
56 空気流通部
A 空気(第一の流体)
CS 濃度センサ
FG 燃料ガス(第二の流体)
IS 内管の内側
NA 不活性空間
NG 窒素ガス