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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】アミンアダクト及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/24 20060101AFI20220404BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C08G59/24
C08L63/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018004890
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019123795
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】山形 憲一
(72)【発明者】
【氏名】立川 友晴
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/098431(WO,A1)
【文献】特開2014-065782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ成分(A)とアミン成分(B)とで形成されたアミンアダクトであって、エポキシ成分(A)が9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分(A1)を含み、アミン成分(B)が複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分(B1)を含むアミンアダクトであって、
前記アミン成分(B1)が、下記式(2a)
【化1】
(式中、R は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノエチル基、又はトリアジン-アルキル基を示し;R およびR は、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を示し、前記アルキル基はヒドロキシル基を有していてもよく;R は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を示し、前記アルキル基はヒドロキシル基を有していてもよい。)
で表されるアミン成分を含む、アミンアダクト
【請求項2】
エポキシ成分(A1)が、下記式(1)
【化2】
(式中、Zは芳香族炭化水素環、R及びRはエポキシ基に対して非反応性の置換基、Rは水素原子又はメチル基、Aは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、kは0~4の整数、m及びnは0以上の整数、pは1以上の整数を示す。)
で表されるエポキシ成分又はその多量体を含む請求項1記載のアミンアダクト。
【請求項3】
式(1)において、Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、RがC1-4アルキル基又はC6-10アリール基、Aが直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、k及びmが0~2の整数、nが0~10の整数、pが1又は2である請求項2記載のアミンアダクト。
【請求項4】
式(1)において、Zがナフタレン環、nが0、pが1である請求項2又は3記載のアミンアダクト。
【請求項5】
アミン成分(B1)の割合が、エポキシ成分(A1)のエポキシ基1モルに対して、0.3~3モルである請求項1~のいずれかに記載のアミンアダクト。
【請求項6】
軟化点が50~180℃である請求項1~のいずれかに記載のアミンアダクト。
【請求項7】
エポキシ樹脂(C)を硬化させるための硬化剤及び/又は硬化促進剤である請求項1~のいずれかに記載のアミンアダクト。
【請求項8】
エポキシ成分(A1)を含むエポキシ成分(A)と、アミン成分(B1)を含むアミン成分(B)とを混合して、請求項1~のいずれかに記載のアミンアダクトを製造する方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載のアミンアダクトと、エポキシ樹脂(C)とを含む硬化性組成物。
【請求項10】
エポキシ樹脂(C)が液状エポキシ樹脂である請求項記載の硬化性組成物。
【請求項11】
エポキシ樹脂(C)100重量部に対して、請求項1~のいずれかに記載のアミンアダクトを1~50重量部の割合で含む請求項又は10記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項11のいずれかに記載の硬化性組成物が硬化した硬化物。
【請求項13】
請求項11のいずれかに記載の硬化性組成物を加熱して硬化させ、請求項12記載の硬化物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分を含むエポキシ成分(A)と、複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分を含むアミン成分(B)とで形成されるアミンアダクト及びその製造方法、前記アミンアダクトを含む硬化性組成物、並びに、前記硬化性組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
良好な貯蔵安定性を有し、加熱により硬化するエポキシ樹脂組成物は、製造工程の簡略化につながることから、半導体実装などの工業分野において多くの需要がある。このようなエポキシ樹脂組成物の製造において、様々な潜在性硬化剤が提案されており、なかでもエポキシ成分とアミン成分とを反応させて得られるアミンアダクトを用いた潜在性硬化剤が知られている。
【0003】
特開平8-27402号公報(特許文献1)には、エポキシ樹脂と、アミンアダクトと、ホウ酸エステルと、フェノール化合物とを含むエポキシ樹脂粉体塗料組成物が開示されている。この文献には、前記組成物が良好な貯蔵安定性と優れた硬化特性とを発現できることが記載されている。
【0004】
また、特開2015-113426号公報(特許文献2)には、アミンアダクトを含むコアを樹脂で形成されるシェルに内包させたエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤が開示されている。この文献には、前記硬化剤が低温で硬化でき、優れた貯蔵安定性を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-27402号公報
【文献】特開2015-113426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の発明では、実用的な貯蔵安定性を有する硬化性エポキシ樹脂組成物を得るために、アミンアダクト以外に他の添加剤を混合したり、アミンアダクトに更なる化学的、物理的修飾を行う必要がある。このため、製造工程が煩雑化し生産性が低下し易い。
【0007】
従って、本発明の目的は、簡便に調製可能で、かつ優れた貯蔵安定性(又は保存安定性)を有するアミンアダクト及びその製造方法並びにその用途を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、比較的低温であってもエポキシ樹脂を迅速に硬化できる高い硬化特性と、高い貯蔵安定性とを両立できるアミンアダクト及びその製造方法並びにその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分と、複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分とを混合すると簡便にアミンアダクトを形成できること、このアミンアダクトをエポキシ樹脂の硬化剤及び/又は硬化促進剤として利用すると優れた保存安定性を示すことを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明のアミンアダクトは、エポキシ成分(A)とアミン成分(B)とで形成されたアミンアダクトであって、エポキシ成分(A)が9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分(A1)を含み、アミン成分(B)が複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分(B1)を含む。
【0011】
前記9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分(A1)は、下記式(1)で表されるエポキシ成分又はその多量体を含んでいてもよい。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、Zは芳香族炭化水素環、R及びRはエポキシ基に対して非反応性の置換基、Rは水素原子又はメチル基、Aは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、kは0~4の整数、m及びnは0以上の整数、pは1以上の整数を示す)。
【0014】
前記式(1)において、Zがベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環、RがC1-4アルキル基又はC6-10アリール基、Aが直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、k及びmが0~2の整数、nが0~10の整数、pが1又は2であってもよい。また、前記式(1)において、Zがナフタレン環、nが0、pが1であってもよい。
【0015】
前記複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分(B1)は、下記式(2)で表されるアミン成分を含んでいてもよい。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノエチル基、又はトリアジン-アルキル基を示し;R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を示し、前記アルキル基はヒドロキシル基を有していてもよく、RとRとは互いに結合して隣接する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成してもよく;qは0~3の整数を示し;実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示す)。
【0018】
前記複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分(B1)は、下記式(2a)及び/又は(2b)で表されるアミン成分を含んでいてもよい。
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、rは0~5の整数を示し;R~R及び実線と破線との二重線は前記に同じ)。
【0021】
前記アミンアダクトにおいて、複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分(B1)の割合は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分(A1)のエポキシ基1モルに対して、0.3~3モルであってもよい。前記アミンアダクトの軟化点は50~180℃であってもよい。前記アミンアダクトは、エポキシ樹脂(C)を硬化させるための硬化剤及び/又は硬化促進剤であってもよい。
【0022】
本発明は、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分(A1)を含むエポキシ成分(A)と、複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分(B1)を含むアミン成分(B)とを混合して、前記アミンアダクトを製造する方法を包含する。
【0023】
また、本発明は、前記アミンアダクトと、エポキシ樹脂(C)とを含む硬化性組成物も包含する。前記エポキシ樹脂(C)は液状エポキシ樹脂であってもよい。前記アミンアダクトの割合は、前記エポキシ樹脂100重量部に対して、1~50重量部であってもよい。
【0024】
本発明は、前記硬化性組成物が硬化した硬化物、及び前記硬化性組成物を加熱して硬化させ、前記硬化物を製造する方法も包含する。
【0025】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「アミンアダクト」は、エポキシ成分(A)にアミン成分(B)を混合して、エポキシ成分(A)のエポキシ基を開環(又は消費)させて得られる硬化物を意味する。そのため、アミンアダクトは、アミン成分(B)を、エポキシ基などとの反応により共有結合で硬化物中に組み込んだ形態、遊離可能なゲスト化合物として硬化物中に包接した形態、これらを組み合わせた形態などで保持していてもよい。
【0026】
また、本願明細書及び特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。すなわち、例えば、炭素数が1のアルキル基は「Cアルキル」で示し、炭素数が6~10のアリール基は「C6-10アリール」で示す。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、所定のエポキシ成分(A)と所定のアミン成分(B)とを用いて簡便に(又は容易に)又は効率よくアミンアダクトを調製できる。また、特定の骨格を有するエポキシ成分と特定の骨格を有するアミン成分を組み合わせて用いるためか、得られるアミンアダクトは、優れた貯蔵安定性(又は保存安定性)を有する。さらに、本発明のアミンアダクトは、比較的低温であってもエポキシ樹脂を迅速に硬化できる高い硬化特性と、高い貯蔵安定性とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、実施例1のアミンアダクトのH-NMRスペクトルである。
図2図2は、実施例2のアミンアダクトのH-NMRスペクトルである。
図3図3は、実施例3のアミンアダクトのH-NMRスペクトルである。
図4図4は、実施例4のアミンアダクトのH-NMRスペクトルである。
図5図5は、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレンのH-NMRスペクトルである。
図6図6は、9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレンのH-NMRスペクトルである。
図7図7は、2-メチルイミダゾールのH-NMRスペクトルである。
図8図8は、2-エチル-4-メチルイミダゾールのH-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のアミンアダクト(アダクト体、エポキシアダクト、エポキシアミンアダクト、変性アミン、アミン変性エポキシ化合物又はアミン変性エポキシ樹脂ともいう)は、エポキシ成分(A)とアミン成分(B)とで形成されたアミンアダクトであって、エポキシ成分(A)が9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分(A1)を含み、アミン成分(B)が複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分(B1)を含んでいる。
【0030】
[エポキシ成分(A)]
(A1)9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分
9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分(又は第1のエポキシ成分)(A1)としては、前記骨格とエポキシ基(又はオキシラン骨格)とを有していればよく、1つのエポキシ基を有する単官能エポキシ成分であってもよいが、2以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ成分であるのが好ましい。第1のエポキシ成分(A1)として代表的には、例えば、下記式(1)で表されるエポキシ成分又はその多量体などが挙げられる。
【0031】
【化4】
【0032】
(式中、Zは芳香族炭化水素環、R及びRはエポキシ基に対して非反応性の置換基、Rは水素原子又はメチル基、Aは直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、kは0~4の整数、m及びnは0以上の整数、pは1以上の整数を示す)。
【0033】
前記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環(又はアレーン環)としては、ベンゼン環などの単環式芳香族炭化水素環、多環式芳香族炭化水素環に大別される。多環式芳香族炭化水素環としては、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素環(縮合多環式アレーン環)、環集合芳香族炭化水素環(環集合アレーン環)などが挙げられる。
【0034】
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン環、ナフタレン環などの縮合二環式C8-20アレーン環、好ましくは縮合二環式C10-16アレーン環など)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合二乃至四環式炭化水素環などが挙げられる。好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
【0035】
環集合アレーン環としては、ビアレーン環、例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環(1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環など)などのビC6-12アレーン環、テルアレーン環、例えば、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環などが例示できる。好ましい環集合アレーン環としては、ビC6-10アレーン環、特にビフェニル環などが挙げられる。
【0036】
2つの環Zの種類は、互いに同一又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。好ましい環Zとしては、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環が挙げられ、さらに好ましくはベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環、特に、ナフタレン環が好ましい。また、貯蔵安定性を顕著に向上できる観点から、環Zは、多環式アレーン環、なかでも縮合多環式アレーン環、特にナフタレン環などの縮合多環式C6-14アレーン環であるのが好ましい。この理由は定かではないが、9,9-ビス多環式アリールフルオレン骨格が、前記アミン成分(B1)などをより保持又は包接し易くなるためかと推測される。
【0037】
基Rとしては、エポキシ基に対する非反応性の置換基であれば特に限定されないが、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6-10アリール基)など]などが挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-12アルキル基などが挙げられる。好ましいアルキル基としては、以下、段階的に、直鎖状又は分岐鎖状C1-8アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基であって、特にメチル基などのC1-4アルキル基が好ましい。
【0038】
なお、置換数kが複数(2~4)である場合、複数の基Rの種類は、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン環を形成する異なるベンゼン環に置換した基Rの種類は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2及び7位などが挙げられる。好ましい置換数kは、0~1、特に0である。なお、2つの置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0039】
環Zに置換する置換基Rとしては、エポキシ基に対する非反応性基であればよく、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-12アルキル基、好ましくはC1-8アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6-10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1-8アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基)などの基-OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1-8アルキルチオ基など)などの基-SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1-6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1-4アルコキシ-カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基などが挙げられる。
【0040】
置換数mが1以上である場合、好ましい基Rとしては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5-8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6-10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6-8アリール-C1-2アルキル基)など]、アルコキシ基(直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基など)などが挙げられる。さらに好ましい基Rは、アルキル基[C1-4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6-10アリール基(特にフェニル基)など]などであり、特に、アルキル基であってもよい。なお、置換基Rがアリール基である場合、置換基Rは、環Zとともに、前記環集合アレーン環を形成してもよい。
【0041】
また、置換数mは、環Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば、0~8程度の範囲から選択できる。好ましい置換数mとしては、以下、段階的に、0~4、0~3、0~2であって、なかでも0又は1、特に0が好ましい。また、環Zがベンゼン環、繰り返し数nが0の場合、好ましい置換数mは、以下、段階的に、1~4、1~3、1~2であって、さらに好ましくは1であってもよい。なお、2つのmは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0042】
同一の環Zにおいて、mが複数(2以上)である場合、複数の基Rの種類は、互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rの種類は同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、基Rの置換位置は特に制限されない。
【0043】
アルキレン基Aとしては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基などが挙げられる。好ましいAとしては、以下、段階的に、直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基であって、特にエチレン基が好ましい。
【0044】
オキシアルキレン基[OA]の繰り返し数nは、0以上の整数であればよく、例えば、0~20程度の範囲から選択できる。好ましいnとしては、以下、段階的に、0~15、0~10、0~8、0~6、0~4、0~3、0~2であって、さらに好ましくは0~1、特に、0であってもよい。なお、nは分子集合体における平均値(又は平均付加モル数)であってもよく、その好ましい範囲は前記整数の範囲に対応して同様であってもよい。
【0045】
なお、オキシアルキレン基[OA]の繰り返しnが2以上であるとき、アルキレン基Aは異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、置換数pに対応する基[-O-(AO)-CH-CR(O-)-CH](以下、単にエポキシ含有基ともいう)において、異なるエポキシ含有基を形成するアルキレン基Aの種類は、同一又は異なっていてもよく、通常、同一であってもよい。
【0046】
基Rは、水素原子及びメチル基のいずれであってもよいが、反応性の観点から水素原子が好ましい。2つの基Rの種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一である。
【0047】
エポキシ含有基の置換数pは、環Zの種類に応じて適宜選択でき、例えば、1~4程度の範囲から選択してもよい。好ましいpとしては、以下、段階的に、1~3、1~2であって、特に1が好ましい。
【0048】
エポキシ含有基の置換位置は特に制限されず、環Zの適当な位置に置換できる。例えば、pが1、環Zがベンゼン環であるとき、2~6位のいずれであってもよく、2位、3位、4位などが挙げられ、好ましくは3位、4位、特に4位であってもよい。また、pが1、環Zがナフタレン環である場合には、ナフチル基の5~8位である場合が多く、例えば、フルオレンの9位に対してナフタレン環の1位又は2位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、好ましくは1,5位、2,6位などの関係、特に2,6位の関係で置換している場合が多い。また、pが1、環Zがビフェニル環である場合、フルオレンの9位に結合したアレーン環又はこのアレーン環に隣接するアレーン環に置換していてもよい。例えば、ビフェニル環の3位又は4位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環Zの3位がフルオレンの9位に結合しているとき、エポキシ含有基の置換位置は、2位、4~6位、及び2’~6’位のいずれであってもよく、通常、4位、5位、6位、3’位、4’位、好ましくは4位、6位、4’位、特に、6位に置換していてもよい。
【0049】
代表的な式(1)で表されるエポキシ成分(又はポリエポキシ化合物)としては、(A1-1)nが0である化合物と、(A1-2)nが1以上である化合物とに大別できる。前記式(1)においてnが0である化合物(A1-1)としては、例えば、9,9-ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9-ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど];9,9-ビス(アルキル-グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(3-メチル-4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC1-4アルキル-グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9-ビス(アリール-グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(3-フェニル-4-グリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC6-10アリール-グリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]などの9,9-ビス(グリシジルオキシ-置換フェニル)フルオレン類など};9,9-ビス(ポリグリシジルオキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9-ビス(ポリグリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9-ビス(3,4-ジグリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジグリシジルオキシフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ジ又はトリグリシジルオキシフェニル)フルオレンなど]など};9,9-ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン類{例えば、9,9-ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-グリシジルオキシ-1-ナフチル)フルオレンなど]など};これらの化合物のグリシジルオキシ基を2-メチルグリシジルオキシ基に置換した化合物などが挙げられる。
【0050】
前記式(1)において、nが1以上である化合物(A1-2)として具体的には、前記nが0である化合物(A1-1)として例示した化合物に対応してnが1以上である化合物、例えば、9,9-ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類{9,9-ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス[4-(2-グリシジルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(グリシジルオキシ(ポリ)C2-4アルコキシフェニル)フルオレンなど];9,9-ビス(アルキル-グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス[4-(2-グリシジルオキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-グリシジルオキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC1-4アルキル-グリシジルオキシ(ポリ)C2-4アルコキシフェニル)フルオレンなど];9,9-ビス(アリール-グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9-ビス[4-(2-グリシジルオキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC6-10アリール-グリシジルオキシ(ポリ)C2-4アルコキシフェニル)フルオレンなど]など};9,9-ビス(ポリグリシジルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類{例えば、9,9-ビス(ポリグリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9-ビス(3,4-ジ(2-グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジ(2-グリシジルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(ジ又はトリグリシジルオキシ(ポリ)C2-4アルコキシフェニル)フルオレンなど]など};9,9-ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類{例えば、9,9-ビス(グリシジルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9-ビス[6-(2-グリシジルオキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-グリシジルオキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなど]など};これらの化合物のグリシジルオキシ基を2-メチルグリシジルオキシ基に置換した化合物などが挙げられる。
【0051】
これらの前記式(1)で表されるエポキシ成分は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの前記式(1)で表されるエポキシ成分のうち、nが0である化合物(A1-1)が好ましく、なかでもpが1である9,9-ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン類、9,9-ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン類が好ましく、特に、9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン類が好ましい。
【0052】
前記式(1)で表されるエポキシ成分の多量体としては、複数の9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有していればよく、例えば、2つの9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有する二量体、3つの前記骨格を有する三量体、4つの前記骨格を有する四量体などの二乃至十量体であってもよい。なお、複数の9,9-ビスアリールフルオレン骨格は、通常、2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイル基などを介して連結されている。このような多量体は、慣用の方法で調製してもよく、例えば、前記式(1)において基Rを有するグリシジル基を水素原子に置き換えたポリヒドロキシ化合物と、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンとを、水酸化ナトリウムなどの強アルカリ存在下で反応させる一段法(タフィー法又は直接法)や;前記式(1)で表されるエポキシ成分と、前記ポリヒドロキシ化合物とを、アルカリ金属塩(水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化リチウムなど)などの付加触媒の存在下で反応させる二段法(Advanced法、溶融法又は間接法)などが挙げられる。前記式(1)で表されるエポキシ成分の多量体は、単独で用いてもよく、前記式(1)で表されるエポキシ成分(又は単量体)と組み合わせて用いてもよい。通常、前記式(1)で表されるエポキシ成分が汎用される。
【0053】
(A2)他のエポキシ成分
エポキシ成分(A)は、必ずしも必要ではないが、前記第1のエポキシ成分(A1)に属さない他のエポキシ成分(又は第2のエポキシ成分)(A2)を含んでいてもよい。
【0054】
第2のエポキシ成分(A2)としては、特に制限されず、慣用のエポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(ただし、前記式(1)で表されるエポキシ成分は除く)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、不飽和二重結合を酸化してエポキシ化したエポキシ樹脂などが挙げられ、具体的には、後述するエポキシ樹脂(C)に例示するエポキシ成分であってもよい。これらの第2のエポキシ成分(A2)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0055】
第1のエポキシ成分(A1)の割合は、エポキシ成分(A)全体に対して、例えば、10重量%以上(例えば、30~100重量%)程度の範囲から選択してもよい。好ましい範囲としては、以下、段階的に、50重量%以上(例えば、60~99重量%)、70重量%以上(例えば、80~95重量%)であってもよい。また、さらに好ましい範囲としては、90重量%以上(例えば、95~100重量%)、特に100重量%(実質的に第1のエポキシ成分(A1)のみ)であってもよい。
【0056】
前記式(1)のエポキシ成分及びその多量体の総量の割合は、第1のエポキシ成分(A1)全体に対して、例えば、10重量%以上(例えば、30~100重量%)程度の範囲から選択してもよい。好ましい範囲としては、以下、段階的に、50重量%以上(例えば、60~99重量%)、70重量%以上(例えば、80~95重量%)であってもよい。また、さらに好ましい範囲としては、90重量%以上(例えば、95~100重量%)、特に100重量%(実質的に前記式(1)で表されるエポキシ成分又はその多量体のみ)であってもよい。
【0057】
[アミン成分(B)]
(B1)複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分
複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分(第1のアミン成分ともいう)(B1)は、前記骨格を少なくとも内在していればよい。複素環骨格は、構成原子として複数の窒素原子(例えば、塩基性窒素原子)を含んでいる。複素環骨格を形成する窒素原子(例えば、塩基性窒素原子)の数は、例えば、2~5個、好ましくは2~4個、さらに好ましくは2~3個、特に2個であってもよい。複素環骨格を形成する原子数は特に制限されないが、通常、5又は6員複素環であることが多い。なお、複素環は、脂肪族性複素環(非芳香族性複素環)又は芳香族性複素環のいずれであってもよい。また、複素環は、他の炭化水素環又は複素環と縮合した縮合多環式複素環であってもよい。
【0058】
このような第1のアミン成分(B1)としては、例えば、単環式複素環骨格を有するアミン成分{例えば、ピペラジン類[例えば、ピペラジン;N,N’-ジメチルピペラジンなどのN,N’-ジアルキルピペラジン;N-(アミノエチル)ピペラジン;1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジンなどのN-ジアルキルアミノエチル-N’-アルキルピペラジンなど]、ピラゾール類、ピラジン類、ピリミジン類、ピリダジン類、トリアジン類(トリアジン、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジンなど)、ピラゾリジン類、ピラゾリン類、イミダゾリジン類、フラザン類など};縮合多環式複素環骨格を有するアミン成分[例えば、インダゾール類、プリン類、フタラジン類、ナフチリジン類、キノキサリン類、キナゾリン類、シンノリン類、プテリジン類、ペリミジン類、フェナントロリン類、フェナジン類、トリエチレンジアミン(DABCO;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)など]などが例示できる。好ましい第1のアミン成分(B1)としては、例えば、下記式(2)で表される化合物を含んでいてもよい。
【0059】
【化5】
【0060】
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、シアノエチル基、又はトリアジン-アルキル基を示し;R~Rは、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアシル基を示し、前記アルキル基はヒドロキシル基を有していてもよく、RとRとは互いに結合して隣接する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成してもよく;qは0~3の整数を示し;実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示す)。
【0061】
前記式(2)において、Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状C1-6のアルキル基であってもよい。
【0062】
で表されるシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが例示できる。好ましいシクロアルキル基は、C5-8シクロアルキル基、特にC5-6シクロアルキル基などであってもよい。
【0063】
で表されるアリール基としては、単環式又は多環式アリール基であってもよく、多環式アリール基は、完全不飽和のみならず、部分飽和の基であってもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基などのC6-16アリール基などが例示できる。好ましいアリール基はC6-10アリール基(フェニル基、ナフチル基など)であってもよい。
【0064】
で表されるアラルキル基(アリールアルキル基)としては、上記アリール基とアルキル基とが結合した基であり、例えば、ベンジル基、フェネチル基、3-フェニル-n-プロピル基、1-フェニル-n-へキシル基、ナフタレン-1-イルメチル基、ナフタレン-2-イルエチル基、1-(ナフタレン-2-イル)-n-プロピル基、インデン-1-イルメチル基などのC6-12アリールC1-6アルキル基などが例示できる。好ましいアラルキル基は、C6-10アリールC1-4アルキル基(ベンジル基、フェネチル基など)であってもよい。
【0065】
前記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1-6アルコキシ基など)、アシル基(ホルミル基;アセチル基、プロピオニル基などのC1-10アルキル-カルボニル基など)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(C1-4アルコキシ-カルボニル基など)、アルキル基(メチル基、エチル基などのC1-6アルキル基など)などが例示できる。
【0066】
で表されるトリアジン-アルキル基において、トリアジンは、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジンなどであってもよく、トリアジン環の炭素原子には、アミノ基、ヒドロキシル基などが置換していてもよい。代表的なトリアジン-アルキル基としては、例えば、4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン-2-イル-メチル基、4-アミノ-6-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル-メチル基、4,6-ジヒドロキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル-メチル基などの1,3,5-トリアジン-2-イル-C1-4アルキル基などが例示できる。好ましいトリアジン-アルキル基は、4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン-2-イル-C1-2アルキル基であってもよい。
【0067】
とRとが環を形成しない場合、好ましいRとしては、水素原子、C1-4アルキル基、C6-10アリール基、C6-10アリールC1-4アルキル基、シアノエチル基、又は1,3,5-トリアジン-2-イル-C1-2アルキル基などであってもよく、通常、水素原子、シアノエチル基などである場合が多い。
【0068】
~Rで表されるハロゲン原子には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。R~Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(パルミチル基)、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)などの直鎖状又は分岐鎖状C1-20アルキル基などが例示できる。好ましいアルキル基としては、以下、段階的に、直鎖状又は分岐鎖状C1-18アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1-12アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基、直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基であってもよい。
【0069】
また、アルキル基は、ヒドロキシル基を有していてもよい。ヒドロキシル基を有するアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基などのヒドロキシC1-20アルキル基などが例示できる。好ましいヒドロキシアルキル基としては、以下、段階的に、ヒドロキシC1-18アルキル基、ヒドロキシC1-16アルキル基、ヒドロキシC1-12アルキル基、ヒドロキシC1-8アルキル基、ヒドロキシC1-6アルキル基であって、より好ましくはヒドロキシC1-4アルキル基、さらに好ましくはヒドロキシC1-2アルキル基、特にヒドロキシメチル基であってもよい。
【0070】
~Rで表されるシクロアルキル基、アリール基、アラルキル基としては、前記置換基Rと好ましい態様を含めて同様の基が例示できる。
【0071】
~Rで表されるアシル基は、水素原子;又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はヘテロアリール基などの有機基と、カルボニル基とが結合した基であればよい。アシル基としては、例えば、ホルミル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、へプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3-メチルノナノイル基、8-メチルノナノイル基、3-エチルオクタノイル基、3,7-ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1-メチルペンタデカノイル基、14-メチルペンタデカノイル基、13,13-ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15-メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1-メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基、ヘナイコサノイル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-26アルキル-カルボニル基;アクリロイル基、メタクリロイル基、アリルカルボニル基、シンナモイル基などの置換基(アリール基など)を有していてもよいC2-6アルケニル-カルボニル基;エチニルカルボニル基、プロピニルカルボニル基などのC2-6アルキニル-カルボニル基;ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、ビフェニルカルボニル基、アントラニルカルボニル基などのC6-18アリール-カルボニル基;2-ピリジルカルボニル基、チエニルカルボニル基などのヘテロアリール-カルボニル基(例えば、非芳香族又は芳香族5~6員ヘテロアリール-カルボニル基など)などが例示できる。好ましいアシル基は、C1-20アルキル-カルボニル基であって、さらに好ましくはC1-6アルキル-カルボニル基であってもよい。
【0072】
とRとは互いに結合して隣接する窒素原子及び炭素原子とともに環を形成してもよい。前記環は、例えば、4~12員環程度の範囲から選択してもよく、好ましくは5~10員環であってもよい。
【0073】
繰り返し数qは0又は1~3の整数を示し、好ましくは0~2、さらに好ましくは0又は1であってもよい。
【0074】
実線と破線との二重線は単結合又は二重結合を示し、通常、RとRとが互いに結合して環(複素環)を形成する場合、単結合であってもよく、RとRとが環(複素環)を形成しない場合、二重結合である場合が多い。
【0075】
とRとが環を形成しない場合、好ましいRとしては、水素原子、アルキル基、アリール基が挙げられ、さらに好ましくはアルキル基であってもよい。
【0076】
好ましいR及び/又はRとしては、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基などが挙げられる。
【0077】
第1のアミン成分(B1)として、より具体的には、例えば、下記式(2a)で表されるアミン成分及び/又は下記式(2b)で表されるアミン成分を含んでいてもよい。
【0078】
【化6】
【0079】
(式中、rは0~5の整数を示し;R~R及び実線と破線との二重線は好ましい態様を含めて前記式(2)に同じ)。
【0080】
また、前記式(2a)において、Rのより好ましい態様としては、水素原子、シアノエチル基、トリアジン-アルキル基が挙げられ、さらに好ましくは水素原子が挙げられる。
【0081】
前記式(2a)において、Rのより好ましい態様としては、水素原子、直鎖状又は分岐鎖状C1-20アルキル基、C6-10アリール基が挙げられ、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-12アルキル基であって、なかでも、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基が好ましく、特に直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基が好ましい。
【0082】
前記式(2a)において、Rのより好ましい態様としては、水素原子、C1-8アルキル基、ヒドロキシC1-4アルキル基が挙げられ、さらに好ましくは水素原子、C1-6アルキル基であってもよく、なかでも水素原子、C1-4アルキル基が好ましく、特にC1-2アルキル基が好ましい。
【0083】
前記式(2a)において、Rのより好ましい態様としては、水素原子、ヒドロキシC1-4アルキル基が挙げられ、さらに好ましくは水素原子である。
【0084】
前記式(2a)において、R及びRが結合した炭素原子間の結合の種類は、単結合(イミダゾリン化合物)であってもよいが、二重結合(イミダゾール化合物)であるのが好ましい。
【0085】
前記式(2b)において、好ましい繰り返し数rは、1~5の整数であって、さらに好ましくは1~4の整数、特に1~3の整数である。
【0086】
式(2a)で表される化合物として代表的にはイミダゾリン化合物、イミダゾール化合物が挙げられ、イミダゾリン化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール;1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾールなどの1-アルキルイミダゾール;2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、2-イソブチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾールなどの2-アルキルイミダゾール;2-フェニルイミダゾールなどの2-アリールイミダゾール;4-メチルイミダゾール、4-エチルイミダゾールなどの4-アルキルイミダゾール;1,2-ジメチルイミダゾールなどの1,2-ジアルキルイミダゾール;2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどの2,4-ジアルキルイミダゾール;2-フェニル-4-メチルイミダゾールなどの2-アリール-4-アルキルイミダゾール;1-ベンジル-2-メチルイミダゾールなどの1-アラルキル-2-アルキルイミダゾール;1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールなどの1-アラルキル-2-アリールイミダゾール;1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールなどの1-シアノエチル-2-アルキルイミダゾール;1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールなどの1-シアノエチル-2-アリールイミダゾール;1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどの1-シアノエチル-2,4-ジアルキルイミダゾール;2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどの2-アリール-4-アルキル-5-ヒドロキシアルキルイミダゾール;2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾールなどの2-アリール-4,5-ビス(ヒドロキシアルキル)イミダゾールなどが例示できる。なお、イミダゾール化合物はR~Rのうち少なくとも1つの基が水素原子以外の置換基である場合が多く、好ましくはR~Rのうち少なくとも1つの基が水素原子以外の置換基であり、さらに好ましくはR又はRのうち少なくとも1つの基が水素原子以外の置換基であり、なかでも、少なくともRが水素原子以外の置換基であるのが好ましい。アミンアダクトをエポキシ樹脂(C)の硬化剤及び/又は硬化促進剤として利用する場合に、凝集(ゲル化又はゲル相が分離)することなく均一に硬化し易い点から、特に、R又はRの双方が水素原子以外の置換基であるのが好ましい。
【0087】
式(2b)で表される化合物(環状アミジン化合物)として代表的には、例えば、ジアザビシクロウンデセン(DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン)、ジアザビシクロノネン(DBN:1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン)などが例示できる。
【0088】
これらの第1のアミン成分(B1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの第1のアミン成分(B1)のうち、前記式(2a)で表される化合物が好ましく、なかでもイミダゾール化合物が好ましい。好ましいイミダゾール化合物としては、イミダゾール、アルキルイミダゾール、ジアルキルイミダゾール、アリールイミダゾール、アラルキル-アルキルイミダゾール、アリール-アルキル-ヒドロキシメチルイミダゾール、アリール-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾールが挙げられ、なかでも、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、又は2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾールなどが好ましい。通常、2-メチルイミダゾールなどの2-C1-6アルキルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどの2-C1-6アルキル-4-C1-6アルキルイミダゾールが汎用される。アミンアダクトをエポキシ樹脂(C)の硬化剤及び/又は硬化促進剤として利用する場合、凝集(ゲル化又はゲル相が分離)することなく均一に硬化し易い点から、特に、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどの2-C1-4アルキル-4-C1-4アルキルイミダゾールが好ましい。
【0089】
これらのアミン成分は、酸、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、イソシアヌル酸などの有機酸又は塩酸などの無機酸との塩であってもよい。
【0090】
(B2)他のアミン成分
アミン成分(B)は、必ずしも必要ではないが、前記第1のアミン成分(B1)に属さない他のアミン成分(又は第2のアミン成分)(B2)を含んでいてもよい。
【0091】
第2のアミン成分(B2)としては、特に制限されず、慣用のアミン化合物、例えば、脂肪族アミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類、複素環式アミン類(ただし、第1のアミン成分、すなわち、複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン化合物を除く)、変性アミン類などが挙げられ、具体的には、後述する他の硬化剤及び/又は硬化促進剤として例示するアミン系化合物などが挙げられる。これらの第2のアミン成分(B2)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0092】
第1のアミン成分(B1)の割合は、アミン成分(B)全体に対して、例えば、10重量%以上(例えば、30~100重量%)程度の範囲から選択してもよい。好ましい範囲としては、以下、段階的に、50重量%以上(例えば、60~99重量%)、70重量%以上(例えば、80~95重量%)であってもよい。また、さらに好ましい範囲としては、90重量%以上(例えば、95~100重量%)、特に100重量%(実質的に第1のアミン成分(B1)のみ)であってもよい。
【0093】
前記式(2)で表されるアミン成分の割合は、第1のアミン成分(B1)全体に対して、例えば、10重量%以上(例えば、30~100重量%)程度の範囲から選択してもよい。好ましい範囲としては、以下、段階的に、50重量%以上(例えば、60~99重量%)、70重量%以上(例えば、80~95重量%)であってもよい。また、さらに好ましい範囲としては、90重量%以上(例えば、95~100重量%)、特に100重量%(実質的に前記式(2)で表されるアミン成分のみ)であってもよい。
【0094】
前記式(2a)で表されるアミン成分の割合は、第1のアミン成分(B1)全体に対して、例えば、10重量%以上(例えば、30~100重量%)程度の範囲から選択してもよい。好ましい範囲としては、以下、段階的に、50重量%以上(例えば、60~99重量%)、70重量%以上(例えば、80~95重量%)であってもよい。また、さらに好ましい範囲としては、90重量%以上(例えば、95~100重量%)、特に100重量%(実質的に前記式(2a)で表されるアミン成分のみ)であってもよい。
【0095】
[アミンアダクトの製造方法]
本発明のアミンアダクトは、9,9-ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ成分(A1)を含むエポキシ成分(A)と、複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン成分(B1)を含むアミン成分(B)とを混合(又は反応)することにより調製できる。
【0096】
エポキシ成分(A)とアミン成分(B)との混合は、必要により溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エーテル類、例えば、2-メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)などのセロソルブ類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)などのカルビトール類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類など;ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ペンタノン、2-ヘキサノンなどの鎖状ケトン類、イソホロン、シクロヘキサノンなどの環状ケトン類など;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(エチルセロソルブアセテート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(エチルカルビトールアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテルエステル類;ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが例示できる。溶媒は、アミド類、スルホキシド類などの非プロトン性極性溶媒であってもよい。これらの溶媒は単独で又は2種以上の混合溶媒として使用できる。これらの溶媒のうち、エポキシ成分(A)及びアミン成分(B)の双方を相溶可能又は溶解可能な溶媒が好ましい。通常、メチルエチルケトンなどのケトン類が汎用される。
【0097】
アミン成分(B)の割合は、エポキシ成分(A)中のエポキシ基(又はオキシラン環)1モルに対して、例えば、0.5~5モル、好ましくは0.7~3モル、より好ましくは0.8~1.5モル、さらに好ましくは0.9~1.1モル、特に、実質的に等モルであってもよい。
【0098】
第1のアミン成分(B1)の割合は、第1のエポキシ成分(A1)中のエポキシ基(又はオキシラン環)1モルに対して、例えば、0.5~5モル、好ましくは0.7~3モル、より好ましくは0.8~1.5モル、さらに好ましくは0.9~1.1モル、特に、実質的に等モルであってもよい。
【0099】
また、アミン成分(B)の割合は、エポキシ成分(A)100重量部に対して、例えば、1~100重量部、好ましくは10~80重量部、より好ましくは20~60重量部、さらに好ましくは25~50重量部、特に30~45重量部であってもよい。
【0100】
第1のアミン成分(B1)の割合は、第1のエポキシ成分(A1)100重量部に対して、例えば、1~100重量部、好ましくは10~80重量部、より好ましくは20~60重量部、さらに好ましくは25~50重量部、特に30~45重量部であってもよい。
【0101】
混合又は反応は、例えば、室温(25℃程度)~180℃程度の範囲で行ってもよく、好ましくは50~150℃、より好ましくは70~130℃、さらに好ましくは70~100℃、特に75~90℃であってもよい。
【0102】
混合又は反応時間は、例えば、0.5~72時間程度の範囲で行ってもよく、好ましくは1~48時間、より好ましくは2~24時間、さらに好ましくは3~12時間であってもよい。
【0103】
混合又は反応終了後、溶媒は、必要に応じて、常圧蒸留、減圧蒸留などの慣用の方法で留去してもよい。
【0104】
溶媒留去後の混合物又は反応物は、必要によりさらに乾燥させてもよい。乾燥方法としては、減圧乾燥が好ましい。乾燥温度としては、例えば、50~100℃、好ましくは70~90℃であってもよい。
【0105】
乾燥後の混合物又は反応物は、必要に応じて粉砕してもよい。粉砕手法としては、特に制限されず、例えば、乳鉢、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、ハンマーミルなどを用いた慣用の粉砕手法を用いることができる。
【0106】
このようにして得られるアミンアダクトの軟化点は、例えば、40~200℃程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下、段階的に、50~180℃、60~170℃、70~160℃であって、特に80~150℃である。なかでも、より好ましいアミンアダクトの軟化点としては、以下、段階的に、100~175℃、110~165℃、120~155℃、125~145℃であって、特に130~140℃である。軟化点が低過ぎると貯蔵安定性が低下するおそれがあり、軟化点が高すぎると硬化性が低下するおそれがある。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、軟化点は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0107】
また、アミンアダクトの生成は、H-NMRなどにより、エポキシ成分(A)のオキシラン環(又はエポキシ基)の開環に由来するピークの消失又はシフトや、第1のエポキシ成分(A1)(又は9,9-ビスアリールフルオレン骨格)及び第1のアミン成分(B1)に由来するピークの残存などから確認できる。例えば、エポキシ成分(A)のオキシラン環(又はエポキシ基)の開環に由来するピークとしては、2.6~2.8ppm付近、2.8~2.9ppm付近及び3.1~3,4ppm付近に観測される場合が多く、これらのピークの消失又はシフトによりアミンアダクトの形成を確認してもよい。
【0108】
[硬化性組成物]
本発明のアミンアダクトでは、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)(C)の硬化剤として機能するアミン成分(B)、特に第1のアミン成分(B1)の複数の窒素原子を含む複素環骨格を、第1のエポキシ成分(A1)の9,9-ビスアリールフルオレン骨格が安定に包接するためか、エポキシ樹脂と混合しても低温(常温若しくは貯蔵温度)では長時間に亘り安定である。一方、アミンアダクトは、加熱に伴って前記第1のアミン成分(B1)を放出するためか、所定温度に加熱すると、エポキシ樹脂を迅速に硬化させることができる。また、本発明のアミンアダクトは、第1のアミン成分(B1)の複素環骨格として第二級アミノ基及び/又は第三級アミノ基を有しているためか、エポキシ樹脂の硬化剤として機能するとともに硬化促進剤として機能させることもできる。そのため、本発明のアミンアダクトは、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)(C)を硬化させるための硬化剤及び/又は硬化促進剤として有用である。さらに、アミンアダクト(硬化剤及び/又は硬化促進剤)は、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)(C)と組み合わせて硬化性組成物を調製するのに有用である。
【0109】
この硬化性組成物は前記アミンアダクト(第1の硬化剤及び/又は硬化促進剤ともいう)とエポキシ樹脂(C)とを含んでいればよく、必要により、慣用のエポキシ樹脂の硬化剤及び/又は硬化促進剤(第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤ともいう)を含んでいてもよい。このような硬化剤は、エポキシ樹脂のオキシラン環(又はエポキシ基)と反応してエポキシ樹脂を硬化させる化合物であれば、特に制限はなく、硬化促進剤もエポキシ樹脂の硬化反応を促進する化合物であれば、特に制限されない。このような硬化剤又は硬化促進剤としては、例えば、アミン系化合物(脂肪族アミン類、脂環式アミン類、芳香族アミン類、複素環式アミン類、変性アミン類など)、アミド系化合物、エステル系化合物、フェノール系化合物、アルコール系化合物、チオール系化合物、エーテル系化合物、チオエーテル系化合物、尿素系化合物、チオ尿素系化合物、ルイス酸系化合物、リン系化合物、酸無水物系化合物、オニウム塩系化合物(又はカチオン重合開始剤)、活性珪素化合物-アルミニウム錯体などが例示できる。
【0110】
具体的な第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤としては、例えば、以下の化合物などが挙げられる。
【0111】
脂肪族アミン類としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状アルキレンジアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類;ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミンなどのN,N-ジアルキルアミノアルキルアミン類;ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジエチレングリコールビスプロピルアミン、ポリプロピレングリコールジアミンなどの(ポリ)エーテルジアミン類;N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミンなどのN-アルキル置換アルキレンジアミン類;ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノールなどのアルカノールアミン類;モノ-t-アルキルアミンなどの直鎖状又は分岐鎖状アルキルアミン類などが挙げられる。
【0112】
脂環式アミン類としては、例えば、メンセンジアミン;イソホロンジアミン;ジメチルシクロヘキシルアミンなどのジアルキルシクロアルキルアミン類;3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのスピロ環又は橋架け環式アミン類;後述する芳香族アミン類の水添物[例えば、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンなどのビス(アミノシクロヘキシル)アルカン類;1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミンなどのシクロヘキサンジアミン;m-キシリレンジアミンの水添物;1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼンの水添物など]などが挙げられる。
【0113】
芳香族アミン類としては、例えば、フェニレンジアミン(o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン);m-キシリレンジアミン、1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼンなどのモノ乃至トリ(アミノメチル)ベンゼン類;2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのモノ乃至トリ(ジアルキルアミノメチル)フェノール類;ビス(4-アミノフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルフェニル)メタンなどのビス(アミノフェニル)アルカン類;ビス(4-アミノフェニル)スルホンなどのビス(アミノフェニル)スルホン類;フタロシアニンテトラミンなどのフタロシアニンアミン類;ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、(α-メチルベンジル)メチルアミン、(α-メチルベンジル)エチルアミンなどのベンジルアルキルアミン類などが例示できる。
【0114】
複素環式アミン類としては、例えば、1つの窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン類[ピリジン、ピコリンなどのピリジン類;ピペリジン、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのピペリジン類;ピロール、2H-ピロールなどのピロール類;ピロリジン類;ピロリン類;インドリジン類;インドール、3H-インドールなどのインドール類;イソインドール類;インドリン類;イソインドリン類;キノリジン類;キノリン類;イソキノリン類;カルバゾール、4H-カルバゾールなどのカルバゾール類;フェナントリジン類;アクリジン類;フェノキサジン類;フェノチアジン類;キヌクリジン類;モルホリン、メチルモルホリン、エチルモルホリンなどのモルホリン類など];第1のアミン成分(B)の項で例示した複数の窒素原子を含む複素環骨格を有するアミン類[単環式複素環骨格を有するアミン成分(ピペラジン類、ピラゾール類、ピラジン類、ピリミジン類、ピリダジン類、トリアジン類、ピラゾリジン類、ピラゾリン類、イミダゾリジン類、フラザン類、式(2a)で表される化合物として例示したイミダゾリン類;式(2a)で表される化合物として例示したイミダゾール類など)など];縮合多環式複素環骨格を有するアミン成分[インダゾール類、プリン類、フタラジン類、ナフチリジン類、キノキサリン類、キナゾリン類、シンノリン類、プテリジン類、ペリミジン類、フェナントロリン類、フェナジン類、トリエチレンジアミン(DABCO)、式(2b)で表される化合物として例示した環状アミジン類(DBU、DBNなど)など]などが挙げられる。
【0115】
変性アミン類としては、例えば、エポキシ化合物にアミンが付加したポリアミン(又はアミンアダクト)[ただし、本発明のアミンアダクトを除く]、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン(ケチミン)、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素-ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体などが例示できる。
【0116】
アミド系化合物としては、例えば、ダイマー酸[重合脂肪酸又は多量体化脂肪酸](例えば、不飽和高級脂肪酸の二量体~四量体)とポリアミン(例えば、アルキレンジアミン、ポリエチレンポリアミンなど)との縮合により得られるポリアミド(ポリアミノアミド)などが挙げられる。
【0117】
これらのアミン系化合物は、酸、例えば、2-エチルヘキシル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、イソシアヌル酸などの有機酸又は塩酸などの無機酸との塩であってもよい。
【0118】
エステル系化合物としては、例えば、カルボン酸のアリール及びチオアリールエステルなどの活性カルボニル化合物などが挙げられる。
【0119】
フェノール系化合物としては、例えば、フェノール樹脂硬化剤として、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂などのアラルキル型フェノ-ル樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂、これらの変性樹脂、例えば、エポキシ化又はブチル化したノボラック型フェノール樹脂などのフェノ-ル樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、パラキシレン変性フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂などの変性フェノール樹脂などが例示できる。
【0120】
また、アルコール系化合物、チオール系化合物、及びチオエーテル系化合物としては、例えば、ポリオール、ポリメルカプタン、ポリスルフィドなどが挙げられる。
【0121】
尿素系化合物、チオ尿素系化合物、ルイス酸系化合物としては、例えば、ブチル化尿素、ブチル化メラミン、ブチル化チオ尿素、三フッ化ホウ素などが挙げられる。
【0122】
リン系化合物としては、有機ホスフィン化合物、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィンなどのアルキルホスフィン、フェニルホスフィンなどのアリールホスフィンなどの第1ホスフィン類;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン、メチルエチルホスフィンなどのジアルキルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどのジアリールホスフィンなどの第2ホスフィン類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィンなどの第3ホスフィン類などが挙げられる。
【0123】
酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)などの芳香族ポリカルボン酸無水物;テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水ハイミック酸、無水メチルハイミック酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸(無水メチルナジック酸)などの脂環族ポリカルボン酸無水物;無水マレイン酸、テトラメチレン無水マレイン酸、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物などの脂肪族ポリカルボン酸無水物;無水ヘット酸(無水クロレンド酸)、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸などのハロゲン化酸無水物などが挙げられる。
【0124】
オニウム塩系化合物、及び活性珪素化合物-アルミニウム錯体としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アリールメチルスルホニウム塩(ベンジルメチルスルホニウム塩など)、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリフェニルシラノール-アルミニウム錯体、トリフェニルメトキシシラン-アルミニウム錯体、シリルペルオキシド-アルミニウム錯体、トリフェニルシラノール-トリス(サリシルアルデヒダート)アルミニウム錯体などが挙げられる。
【0125】
これらの硬化剤及び/又は硬化促進剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。本発明のアミンアダクト(第1の硬化剤及び/又は硬化促進剤)と、上記第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=100/0~30/70、好ましくは100/0~50/50、より好ましくは100/0~70/30、さらに好ましくは100/0~90/10、特に100/0(実質的に本発明のアミンアダクトのみ)が好ましい。
【0126】
(C)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂(又はエポキシ化合物)(C)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、不飽和二重結合を酸化してエポキシ化したエポキシ樹脂などであってもよい。
【0127】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(又は化合物)としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、s-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテルなどのアルカンモノオール類のグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどのアルカンポリオール類のポリグリシジルエーテル;ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノールなどの単核多価フェノール類又はそのアルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)付加体のポリグリシジルエーテル;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、ビスフェノール類{例えば、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール(ビスフェノールAD)、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミル)ベンゼン、9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン[例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンなど]など}、トリス又はテトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン[例えば、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど]、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ノボラック又はノボラック樹脂(フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラックなど)、テルペンフェノールなどの多核多価フェノール類又はそのアルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)付加体のポリグリジルエーテル;トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環化合物のポリグリジルエーテルなどが例示できる。
【0128】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂(又は化合物)としては、例えば、バーサティック酸グリシジルエステルなどのモノカルボン酸類のモノグリシジルエステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸などの脂肪族、脂環族又は芳香族多価カルボン酸類のグリシジルエステル類、及びグリシジル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体などが例示できる。
【0129】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(又は化合物)としては、例えば、N,N-ジグリシジルアニリン、ビス(4-(N-メチル-N-グリシジルアミノ)フェニル)メタン、N,N-ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノールなどが例示できる。
【0130】
不飽和二重結合がエポキシ化したエポキシ化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペートなどの環状オレフィン類のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン共重合物などのエポキシ化共役ジエン重合体などが例示できる。
【0131】
これらのエポキシ樹脂(又は化合物)は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、エポキシ樹脂(又は化合物)は、単量体であってもよく、二量体~十量体程度の多量体を含んでいてもよい。また、アルカンモノオール類又はアルカンポリオール類のモノ又はポリグリシジルエーテル、モノカルボン酸類のグリシジルエステル、環状オレフィン類のエポキシ化物などは反応性希釈剤として使用する場合が多い。
【0132】
好ましいエポキシ樹脂としては、分子内に複数のエポキシ基(又はオキシラン環)を有するポリグリシジルエーテル、例えば、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール(ビスフェノールAD)、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレンなどのビスフェノール類又はそのアルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)付加体のポリグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0133】
さらに、エポキシ樹脂は、室温程度(例えば、10~30℃、好ましくは15~20℃)で流動性を有する液体、流動性に乏しい高粘度(又は高粘稠)の半固体又は固体であってもよく、通常、アミンアダクトと混合する温度(混合温度又は加工温度)において流動性を有しており、混合温度において液状又は粘稠な液状エポキシ樹脂であってもよい。
【0134】
本発明の硬化性組成物において、硬化剤及び/又は硬化促進剤の割合は、硬化方法などに応じて適宜選択でき、通常、硬化剤及び/又は硬化促進剤として使用される程度の割合であってもよい。
【0135】
硬化剤及び/又は硬化促進剤の総量(前記第1及び第2の硬化剤及び/又は硬化促進剤の総量)の代表的な割合として代表的には、エポキシ樹脂(C)100重量部に対して、例えば、0.1~100重量部程度の範囲から選択してもよく、好ましくは1~50重量部、より好ましくは5~40重量部、さらに好ましくは10~30重量部、特に15~25重量部であってもよい。
【0136】
本発明のアミンアダクト(第1の硬化剤及び/又は硬化促進剤)の割合として代表的には、エポキシ樹脂(C)100重量部に対して、例えば、0.1~100重量部程度の範囲から選択してもよく、好ましくは1~50重量部、より好ましくは5~40重量部、さらに好ましくは10~30重量部、特に15~25重量部であってもよい。
【0137】
なお、本発明のアミンアダクトは、第1のエポキシ成分(A1)として9,9-ビスアリールフルオレン骨格を含むためか、エポキシ樹脂(C)との相溶性も高く、非溶解性添加剤に対する分散性も高い。そのため、硬化性組成物がアミンアダクトを含んでいても、硬化物の特性に大きな悪影響を及ぼすこともない。
【0138】
本発明の硬化性組成物は、本発明のアミンアダクトを含む硬化剤及び/又は硬化促進剤成分と、エポキシ樹脂(C)とを混合することにより製造できる。例えば、アミンアダクトを含む硬化剤及び/又は硬化促進剤成分と、エポキシ樹脂(C)とを、ホモジナイザー、ミキサー又は混合機、混練機(ニーダーやロール、押出機など)、らいかい機(擂潰機)などを使用して、硬化反応(又はゲル化)が生じない又は抑制できる温度、時間で混合又は混練(例えば、溶融混練など)することにより調製してもよい。また、混合又は混練は加熱下(例えば、50~100℃程度)で行ってもよく、低温(例えば、0~50℃程度、好ましくは氷浴中)で混合又は混練し、加熱下での混合又は混練を省略してもよい。なお、前記アミンアダクトの製造方法の項に例示の溶媒の存在下で混合又は混練してもよい。
【0139】
本発明の硬化性組成物には、必要に応じて、種々の添加剤、例えば、シランカップリング剤、可塑剤、有機溶剤、反応性希釈剤、充填剤、補強剤、着色剤(顔料など)、難燃剤、離型剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、増量剤、増粘剤などを添加してもよい。
【0140】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが例示できる。
【0141】
可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、アジピン酸などのアルカンジカルボン酸系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などが例示できる。
【0142】
有機溶剤としては、前記アミンアダクトの製造方法の項に例示の溶媒などが例示でき、反応性希釈剤としては、前記例示のエポキシ化合物、例えば、n-ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンジエポキシドなどのエポキシ化合物、フェノール、クレゾール、t-ブチルフェノールなどのフェノール類などが例示できる。
【0143】
充填剤としては、例えば、重炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、天然シリカ、合成シリカ、溶融シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、カオリン、クレー、マイカ、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、セピオライト、ゾノトライトなどが例示できる。
【0144】
着色剤としては、カーボンブラックなどの黒色顔料、酸化チタンなどの白色顔料、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料などのいずれであってもよい。
【0145】
補強剤としては、例えば、有機繊維[セルロースファイバー(セルロースナノファイバーなど)などの天然繊維、ポリアルキレンアリレート繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維などの合成繊維など]、無機繊維[ガラス繊維、炭素繊維など]が例示できる。
【0146】
難燃剤としては、例えば、ヘキサブロモシクロデカン、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールA、トリス(ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、デカブロモジフェニルオキサイド、ビス(ペンタブロモ)フェニルエタン、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ポリブロモフェニルインダン、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネート、臭素化フェニレンエチレンオキシド、ポリペンタブロモベンジルアクリレートなどの臭素化物、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシリルジフェニルホスフェート、クレジルビス(ジ-2,6-キシレニル)ホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAビス(ジクレジル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジ-2,6-キシレニル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモプロピル)ホスフェート、ジエチル-N,N-ビス(2-ヒドロオキシエチル)アミノメチルホスホネートなどのリン酸エステル類、陰イオン蓚酸処理水酸化アルミニウム、硝酸塩処理水酸化アルミニウム、高温熱水処理水酸化アルミニウム、錫酸表面処理水和金属化合物、ニッケル化合物表面処理水酸化マグネシウム、シリコーンポリマー表面処理水酸化マグネシウム、プロコバイト、多層表面処理水和金属化合物、カチオンポリマー処理水酸化マグネシウムなどが例示できる。
【0147】
離型剤としては、例えば、脂肪酸系離型剤(高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウムなど)、ワックス類(例えば、カルナバワックス、ポリエチレン系ワックスなど)、シリコーンオイルなどが例示できる。
【0148】
さらに、本発明の硬化性組成物は、必要であれば、エポキシ樹脂の他に、エラストマー(又はエラストマー変性剤)、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、液状ポリブタジエン、ポリブタジエン(ブタジエンゴム、BR)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、変性シリコーンゴム、架橋NBR、架橋BR、アクリル系ゴム(コアシェル型アクリルゴムを含む)、ウレタンゴム、ポリエステルエラストマー、官能基含有液状NBR、液状ポリエステル、液状ポリスルフィド、ウレタンプレポリマーなどを含んでいてもよい。
【0149】
必要であれば、エポキシ樹脂の他に、他の樹脂、例えば、オレフィン系樹脂(高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、スチレン系樹脂(ポリスチレンなど)、アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニルなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などを含有していてもよく、樹脂は、エンジニアリングプラスチック(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ビスフェノールA型ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなど)であってもよい。
【0150】
これらの添加剤、エラストマー、及び樹脂は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの添加剤、エラストマー及び/又は樹脂の割合は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。
【0151】
本発明は、前記硬化性組成物が硬化した硬化物も包含する。このような硬化物は、硬化性組成物の用途に応じて、前記硬化性組成物を加熱して硬化させることにより調製できる。例えば、前記硬化性組成物を、基材へ塗布して硬化させてもよく、所定部に注入又は封止して硬化させてもよく、注型して硬化させてもよく、基材(繊維基材)に含浸してプリプレグを調製し、このプリプレグを、重ね合わせや巻回などの方法で積層して所定形状に成形加工して硬化させてもよい。硬化における加熱温度は、例えば、100~250℃程度、好ましくは120~200℃、さらに好ましくは130~180℃であってもよい。本発明の硬化性組成物は、比較的低温であっても素早く硬化可能なため、加熱温度は、例えば、70~150℃、好ましくは80~120℃であってもよい。
【0152】
また、本発明の硬化性組成物のゲル化時間は、加熱温度100℃において、例えば、30分以下(例えば、0~25分)、好ましくは20分以下(例えば、0.1~15分)、さらに好ましくは13分以下(例えば、1~10分)であってもよい。
【0153】
本発明の硬化性組成物は、低温で素早く硬化できるにもかかわらず、意外にも貯蔵安定性(又は保存安定性)が高く、ポットライフは、例えば、1日以上(例えば、1日~1年)、好ましくは2日以上(例えば、3~180日)、さらに好ましくは5日以上(例えば、7~120日、特に10日以上(例えば、15~90日)であってもよい。
【0154】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、前記ゲル化時間及びポットライフは、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【実施例
【0155】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において各種特性は次のようにして測定した。
【0156】
H-NMR)
H-NMRは、アミンアダクトを、重クロロホルムに溶解し、ブルカー・バイオスピン社製「AVANCE III HD」(H共鳴周波数:300MHz)を用いて測定した。
【0157】
(軟化点)
軟化点は、日本ビュッヒ(株)製「M-565」を用いて測定した。
【0158】
<アミンアダクトの合成>
(実施例1)9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン及び2-メチルイミダゾールのアミンアダクト
2-メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製「2MZ-H」、8.2g、0.10mol)のメチルエチルケトン(150g)溶液に、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、23.0g、0.05mol)のメチルエチルケトン(150g)溶液を、80℃で160分かけて攪拌しながら滴下した。滴下後、さらに200分撹拌したのち、室温に冷却した。冷却後、メチルエチルケトンをロータリーエバポレータを用いて留去した。得られた濃縮物を減圧乾燥(80℃、終夜)した後、乳鉢ですりつぶし、黄白色粉末として表題のアミンアダクトを得た(収量 22.8g、軟化点 81.0℃)。得られたアミンアダクトのH-NMRを図1に示す。
【0159】
図5に示される9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレンのH-NMRにおいて、2.7ppm付近、2.9ppm付近及び3.3ppm付近にオキシラン環に対応するピークが存在するが、図1に示されるアミンアダクトのH-NMRスペクトルでは、これらのピークが消失している。また、図7に示される2MZ-HのH-NMRにおいて、2.4ppm付近にメチル基に対応するピークが存在するが、このピークは図1に示されるアミンアダクトのスペクトルでも確認される。これらのことから、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン及び2-メチルイミダゾールからなるアミンアダクトの形成が確認された。
【0160】
(実施例2)9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン及び2-エチル-4-メチルイミダゾールのアミンアダクト
2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製「2E4MZ」、11.0g、0.10mol)のメチルエチルケトン(150g)溶液に、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン(23.0g、0.05mol)のメチルエチルケトン(150g)溶液を、80℃で40分かけて攪拌しながら滴下した。滴下後、さらに240分撹拌したのち、室温に冷却した。冷却後、メチルエチルケトンをロータリーエバポレータを用いて留去した。得られた濃縮物を減圧乾燥(80℃、終夜)した後、乳鉢ですりつぶし、黄白色粉末として表題のアミンアダクトを得た(収量 23.0g、軟化点 81.2℃)。得られたアミンアダクトのH-NMRを図2に示す。
【0161】
図5に示される9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレンのH-NMRにおいて、2.7ppm付近、2.9ppm付近及び3.3ppm付近にオキシラン環に対応するピークが存在するが、図2に示されるアミンアダクトのスペクトルではこれらのピークが消失している。また、図8に示される2-エチル-4-メチルイミダゾールのH-NMRにおいて、1.3ppm付近、2.2ppm付近、2.7ppm付近にメチル基又はエチル基に対応するピークが存在するが、これらのピークは図2に示されるアミンアダクトのスペクトルでも確認される。これらのことから,9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン及び2-エチル-4-メチルイミダゾールからなるアミンアダクトの形成が確認された。
【0162】
(実施例3)9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレン及び2-メチルイミダゾールのアミンアダクト
2MZ-H(8.2g、0.10mol)のメチルエチルケトン(150g)溶液に、9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、28.1g、0.05mol)のメチルエチルケトン(150g)溶液を、80℃で150分かけて攪拌しながら滴下した。滴下後、さらに180分撹拌したのち、室温に冷却した。冷却後、メチルエチルケトンをロータリーエバポレータを用いて留去した。得られた濃縮物を減圧乾燥(80℃、終夜)した後、乳鉢ですりつぶし、黄白色粉末として表題のアミンアダクトを得た(収量 25.5g、軟化点 144.8℃)。得られたアミンアダクトのH-NMRを図3に示す。
【0163】
図6に示される9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレンのH-NMRにおいて、2.8ppm付近、2.9ppm付近及び3.4ppm付近にオキシラン環に対応するピークが存在するが、図3に示されるアミンアダクトのスペクトルでは、これらのピークが消失している。また、図7に示される2-メチルイミダゾールのH-NMRにおいて,2.4ppm付近にメチル基に対応するピークが存在するが、このピークは図3に示されるアミンアダクトのスペクトルでも確認される。これらのことから、9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレン及び2-メチルイミダゾールからなるアミンアダクトの形成が確認された。
【0164】
(実施例4)9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレン及び2-エチル-4-メチルイミダゾールのアミンアダクト
2E4MZ(11.0g、0.10mol)のメチルエチルケトン(150g)溶液に、9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレン(28.1g、0.05mol)のメチルエチルケトン(150g)溶液を、80℃で140分かけて攪拌しながら滴下した。滴下後、さらに160分撹拌したのち、室温に冷却した。冷却後、メチルエチルケトンをロータリーエバポレータを用いて留去した。得られた濃縮物を減圧乾燥(80℃、終夜)した後、乳鉢ですりつぶし、黄白色粉末として表題のアミンアダクトを得た(収量 34.5g、軟化点 133.4℃)。得られたアミンアダクトのH-NMRを図4に示す。
【0165】
図6に示される9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレンのH-NMRにおいて、2.8ppm付近、2.9ppm付近及び3.4ppm付近にオキシラン環に対応するピークが存在するが、図4に示されるアミンアダクトのスペクトルでは、これらのピークが消失している。また、図8に示される2-エチル-4-メチルイミダゾールのH-NMRにおいて、1.3ppm付近、2.2ppm付近、2.7ppm付近にメチル基又はエチル基に対応するピークが存在するが、これらのピークは図4に示されるアミンアダクトのスペクトルでも確認される。これらのことから、9,9-ビス(6-グリシジルオキシ-2-ナフチル)フルオレン及び2-エチル-4-メチルイミダゾールからなるアミンアダクトの形成が確認された。
【0166】
<硬化性組成物の調製及びその特性>
(実施例5)
液状エポキシ樹脂100重量部(jER828、三菱化学(株)製)に、実施例1で得られたアミンアダクト20重量部を加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製「エースホモジナイザーAM-10」)を用い、氷水で容器を冷却しながら、回転数15000rpmで15分撹拌し、硬化性組成物を調製した。
【0167】
(実施例6~8)
実施例1で得られたアミンアダクトに代えて、実施例6では実施例2で得られたアミンアダクトを、実施例7では実施例3で得られたアミンアダクトを、実施例8では実施例4で得られたアミンアダクトを用いること以外は、実施例5と同様にして硬化性組成物を調製した。
【0168】
(比較例1)
液状エポキシ樹脂100重量部(jER828、三菱化学(株)製)に、2MZ-H 3重量部を加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製「エースホモジナイザーAM-10」)を用い、氷水で容器を冷却しながら、回転数15000rpmで15分撹拌し、硬化性組成物を調製した。
【0169】
(比較例2)
液状エポキシ樹脂100重量部(jER828、三菱化学(株)製)に、2E4MZ 3重量部を加え、ホモジナイザー((株)日本精機製作所製「エースホモジナイザーAM-10」)を用い、氷水で容器を冷却しながら、回転数15000rpmで15分撹拌し、硬化性組成物を調製した。
【0170】
(ゲル化時間の測定)
ガラス製のサンプル管と、その外径と同じ径の穴をあけたアルミニウムブロックとを用意した。アルミニウムブロックは、ホットプレート上であらかじめ所定の温度に熱した。サンプル管に試料を取り、上記アルミニウムブロックの穴にサンプル管を挿入した。サンプル管中をスパチュラで毎分60回ほどの速度で円状に(円を描くように)かき混ぜ、試料がゲル状になりスパチュラに付着しなくなった点又は糸引きがなくなった点を終点とし、サンプル管の挿入から終点までにかかった時間を計測した。
【0171】
結果を表1にまとめる。なお、表1中に記載の「凝集」は、所定温度に昇温する間にゲル化してゲル相と液相とが分離したことを示す。
【0172】
【表1】
【0173】
(硬化性組成物の保存安定性)
前記の硬化性組成物を25℃で密閉容器にて保存し、所定時間毎にE型粘度計(東機産業(株)製「TVE-22L」)を用いて、25℃で粘度(mPa・s/25℃)を測定した。初期粘度(調製直後に測定した粘度)から2倍の粘度を示した時間をポットライフとした。結果を表2に示す。
【0174】
【表2】
【0175】
本発明のアミンアダクトを用いた硬化性組成物は、低温(80~120℃)で高い硬化特性を備え、なおかつ、優れた保存安定性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明のアミンアダクトは、エポキシ樹脂及び前記アミンアダクトを含む硬化性組成物において、貯蔵安定性(又は保存安定性)を顕著に向上でき、しかも加熱により迅速に硬化する特性を示すため、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤として有効に利用できる。そのため、本発明の硬化性組成物は、エポキシ樹脂が適用される種々の用途、例えば、絶縁材料、封止材料(半導体、発光ダイオードなどの電子部品の封止材料、例えば、半導体封止材など)、エポキシ樹脂積層板(ガラス布、紙、合成繊維布、銅箔などの基材とエポキシ樹脂との積層板、例えば、プリント配線板用積層板など)、複合材料(ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの補強繊維との繊維強化複合材料)、注型材料、コンクリート構造体の補修材料、接着剤、コーティング剤(例えば、ワニス、塗料(粉体塗料を含む)、インクなど)などの種々の用途に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8